説明

位置特定装置、位置特定方法、位置特定プログラム、および位置特定システム

【課題】目標位置が移動により変更されたり、マーカの設置位置にずれがあったりしても、軽い処理負荷で且つ短時間にその位置を特定する。
【解決手段】建設資材に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを取得する画像データ取得部21と、画像データからマーカの画像を検出するマーカ画像検出部22と、マーカの画像から、所定のコードを検出するコード検出部23と、建設資材に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、所定のコードに基づいて建設資材に対応する目標位置情報を取得する目標位置情報取得部25とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定装置、位置特定方法、位置特定プログラム、および位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置により撮影されて得られた物体の画像の解析処理を実行することによって物体に設けられたターゲットを認識し、その画像上のターゲットを追尾することによって撮影装置と物体との位置関係を制御するビジュアルフィードバック技術が知られている。このビジュアルフィードバック技術は、クレーンのフックを資材の玉掛け可能位置に移動させる制御に応用されている。例えば、建設資材に設けられた特定のマーカ図形をターゲットとし、ビジュアルフィードバック技術を適用することによって、クレーンのフックを玉掛け可能位置に誘導するクレーン制御が知られている。
【0003】
また、物体の位置情報が記録されたバーコードまたはQRコード(登録商標)をターゲットとし、位置調整部がこれらバーコードまたはQRコード(登録商標)に記録されたコードから位置情報を読み取り、この位置情報に基づいて位置を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−36107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のビジュアルフィードバック技術においては、物体の撮像画像を時系列に取得し、各撮像画像について画像処理を実行してターゲットの位置をフィードバックさせる必要がある。よって、ビジュアルフィードバック技術では画像処理部の処理負荷が重いためコストが高く、また、位置合わせに時間がかかるという問題がある。また、ターゲットの設置位置の精度が重要であるため、この設置位置にずれがあると、誘導の誤差を生じさせることとなり、位置合わせに時間がかかってしまう。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術は、バーコードまたはQRコード(登録商標)に記録された位置情報が、所定の基準位置に対する上、下、左、右、右上、右下、左上、左下等の方向を示す情報であり、位置合わせの対象である二つの物体の相互の位置関係が大よそ既知であることが前提である。よって、例えば、建設現場や大規模倉庫のように建設資材の置き場所が変更される環境においては、バーコードまたはQRコード(登録商標)に固定的に記録された位置情報を用いることができないため、特許文献1に開示された技術を適用して、建設資材に対するクレーンのフックの位置合わせを行うことは実現できない。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、目標位置(ターゲットの位置)が移動により変更されたり、ターゲットの設置位置にずれがあったりしても、軽い処理負荷で且つ短時間にその位置を特定することができる、位置特定装置、位置特定方法、位置特定プログラム、および位置特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である位置特定装置は、物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、を備えることを特徴とする。
[2]上記[1]記載の位置特定装置において、前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、前記目標位置情報取得部は、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得することを特徴とする。
[3]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である位置特定方法は、物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを、画像データ取得部が取得する画像データ取得ステップと、前記画像データ取得ステップにおいて取得された前記画像データから、マーカ画像検出部が前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出ステップと、前記マーカ画像検出ステップにおいて検出された前記マーカの画像から、コード検出部が前記所定のコードを検出するコード検出ステップと、前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出ステップにおいて検出された前記所定のコードに基づいて、目標位置情報取得部が前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得ステップと、を有することを特徴とする。
[4]上記[3]記載の位置特定方法において、前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、前記目標位置情報取得ステップは、前記目標位置情報取得部が、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得することを特徴とする。
[5]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である位置特定プログラムは、コンピュータを、物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、として機能させる。
[6]上記[5]記載の位置特定プログラムにおいて、前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、前記目標位置情報取得部は、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得することを特徴とする。
[7]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である位置特定システムは、物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して画像データを生成する撮影部と、前記撮影部が生成した前記画像データを取り込む画像データ取得部と、前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理部と、前記位置情報管理部から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ターゲットの位置が移動により変更されたり、ターゲットの設置位置にずれがあったりしても、軽い処理負荷で且つ短時間にその位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である位置特定システムを、建設現場や資材置き場等において用いられるクレーン制御システムに適用した場合の、概略の全体構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における位置特定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】位置情報管理装置の記憶部に記憶される、位置情報テーブルのデータ構成を示す図である。
【図4】建設資材とこの建設資材に対する目標位置とを、模式的に示した図である。
【図5】位置特定装置および位置情報管理装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】建設現場において、2台の機械装置が建設資材を移送するクレーン制御システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である位置特定システムを、建設現場や資材置き場等において用いられるクレーン制御システムに適用した場合の、概略の全体構成を示すブロック図である。このクレーン制御システムは、置き場所が固定されない建設資材の位置を正確に特定し、建設資材の玉掛け位置または玉掛け可能範囲内にクレーンのフックを移動させるシステムである。なお、上記の、置き場所が固定されないとは、建設現場や資材置き場等のように、建設資材の保管場所が変更され得ることである。
【0012】
図1に示すように、クレーン制御システム1は、撮影装置(撮影部)10と、位置特定装置20と、ネットワーク30と、位置情報管理装置(位置情報管理部)40と、姿勢制御装置50と、機械装置60とを含んで構成される。位置特定装置20と、位置情報管理装置40と、姿勢制御装置50とは、ネットワーク30を介して接続されている。
【0013】
位置特定システムは、撮影装置10と、位置特定装置20と、ネットワーク30と、位置情報管理装置40とを含むものである。
【0014】
上記の建設現場には、マーカCが設けられた物品である建設資材Mが、移動可能に地面やパレット等に置かれている。マーカCは、所定のコードが視認可能に記録された印(マーク、マーキング)である。マーカCは、例えば、バーコードや二次元コードである。二次元コードとしては、例えばQRコード(登録商標)が適用可能である。所定のコードは、マーカCの識別情報(マーカ識別情報)と、位置情報管理装置40に登録された位置情報テーブルの所在地情報とを含んでいる。位置情報テーブルは、マーカCごとの目標位置情報を格納するデータテーブルである。この位置情報テーブルについては、その詳細を後述する。所在地情報は、ネットワーク上で当該位置情報テーブルを特定する情報であり、例えば、位置情報管理装置40が格納する位置情報テーブルを示すURL(Uniform Resource Locator)である。なお、所在地情報は、位置情報管理装置40のネットワーク上の所在地を少なくとも示すものである。マーカCは、建設資材Mの移動単位ごとに、外側から視認できる位置に、貼付、印刷等によって設けられる。単一の建設資材Mが移動単位である場合は、建設資材MごとにマーカCが設けられる。また、例えば、パレットに載置された4組の建設資材Mが移動単位である場合は、外側から見える一の建設資材MにマーカCが設けられる。
【0015】
建設資材Mは、建設用部材であり、例えば、プレキャストコンクリート(Precast Concrete;PC)板である。
【0016】
撮影装置10は、マーカCを撮影して得た画像データを位置特定装置20に供給する装置である。撮影装置10は、静止画像データを得るデジタルカメラ装置でもよいし、動画像データを得るデジタルビデオカメラ装置でもよい。また、撮影装置10は、モノクロ撮影機能を有するものでもよいし、カラー撮影機能を有するものでもよい。また、撮影装置10は、ネットワークに接続可能なカメラ装置により実現されるものであってもよい。ネットワークに接続可能なカメラ装置には、例えば、ウェブカメラ装置、スマートフォン等の撮影機能付携帯端末が含まれる。撮影装置10は、建設資材Mに設けられたマーカCを撮影可能な位置に、固定または可動に設けられる。または、撮影装置10は、利用者により保持される。
【0017】
位置特定装置20は、撮影装置10から供給される画像データを取り込み、この画像データからマーカCの画像を検出する。位置特定装置20は、例えば、公知のテンプレートマッチング法や、画像特徴量の抽出によるオブジェクト検出技術を適用して、画像データからマーカCの画像を検出する。
位置特定装置20は、検出したマーカCの画像から前述した所定のコードを読み取り、このコードに基づいて位置情報管理装置40から、マーカCに対応する目標位置情報を取得する。
位置特定装置20は、取得した目標位置情報が示す目標位置を、機械装置60の作業部(例えば、クレーンのフック)の移動先目標位置として指定した姿勢制御命令を生成し、この姿勢制御命令を姿勢制御装置50に供給する。
【0018】
ネットワーク30は、コンピュータネットワークを構成する電気通信回線であり、例えば、建設現場や建設工事会社に設けられたLAN(Local Area Network)やインターネットに接続される。
【0019】
位置情報管理装置40は、位置情報テーブルを記憶した記憶部を備えるサーバ装置である。記憶部は、磁気ハードディスク装置、半導体記憶装置等により実現される。位置情報管理装置40は、位置特定装置20から供給される、マーカCに対応する目標位置情報の取得要求を取り込む。位置情報管理装置40は、その取得要求に基づいて、記憶部に記憶された位置情報テーブルから目標位置情報を抽出し、この目標位置情報を要求元である位置特定装置20に供給する。
【0020】
姿勢制御装置50は、位置特定装置20から供給される姿勢制御命令を取り込み、この姿勢制御命令が示す移動先目標位置にフック等の作業部を移動させるよう、機械装置60の操作制御を行う。
機械装置60は、例えば、移動単位である、建設資材Mまたは建設資材Mの組み合わせを吊り上げるクレーンである。機械装置60は、姿勢制御装置50による制御によってフック等の作業部を移動させる。
【0021】
図2は、位置特定装置20の機能構成を示すブロック図である。
同図に示すように、位置特定装置20は、画像データ取得部21と、マーカ画像検出部22と、コード検出部23と、目標位置情報要求部24と、目標位置情報取得部25と、姿勢制御部26とを備える。
【0022】
画像データ取得部21は、撮影装置10から供給される画像データを取り込む。画像データが静止画像データである場合、画像データ取得部21は、取り込んだ画像データをフレーム画像データとしてマーカ画像検出部22に供給する。また、画像データが動画像データである場合、画像データ取得部21は、取り込んだ動画像データからキーフレームを検出し、このキーフレームのデータをフレーム画像データとして、順次またはあらかじめ決定された所定フレーム数おきにマーカ画像検出部22に供給する。
【0023】
マーカ画像検出部22は、画像データ取得部21から供給されるフレーム画像データを取り込んでこのフレーム画像データからマーカCの画像を検出し、このマーカCの画像をコード検出部23に供給する。マーカ画像検出部22は、例えば、マーカCの外形や全てのマーカCに共通に設けられる特徴的な図形を参照画像データ(テンプレート画像データ)としてあらかじめ保有しておく。マーカ画像検出部22は、フレーム画像データにおいて参照画像データと一致する画像があるか否かを探索することにより、フレーム画像データからマーカCの画像を検出する。
【0024】
コード検出部23は、マーカ画像検出部22から供給されるマーカCの画像を取り込む。そして、コード検出部23は、マーカCの画像から所定のコードを検出し、この所定のコードを目標位置情報要求部24に供給する。具体的には、コード検出部23は、マーカCの画像から、当該マーカCを識別するマーカ識別情報と、位置情報管理装置40に登録された位置情報テーブルの所在地情報とを読み取り、これらの情報を目標位置情報要求部24に供給する。
【0025】
目標位置情報要求部24は、コード検出部23から供給される所定のコードを取り込み、この所定のコードに基づいて、マーカCに対応する目標位置情報の取得要求を位置情報管理装置40に供給する。具体的には、目標位置情報要求部24は、所定のコードにおける所在地情報に基づき位置情報管理装置40にアクセスし、マーク識別情報を位置情報管理装置40に供給する。
目標位置情報取得部25は、マーカCに対応する目標位置情報の取得要求を取り込んだ位置情報管理装置40から供給される、前記の取得要求に対応した目標位置情報を取り込む。すなわち、目標位置情報取得部25は、マーク識別情報に基づいて位置情報管理装置40によって取得された目標位置情報を位置情報管理装置40から取得する。そして、目標位置情報取得部25は、取り込んだ目標位置情報を姿勢制御部26に供給する。
【0026】
姿勢制御部26は、目標位置情報取得部25から供給される目標位置情報を取り込む。そして、姿勢制御部26は、この目標位置情報が示す目標位置を、機械装置60の作業部の移動先目標位置として指定した姿勢制御命令を生成し、この姿勢制御命令を姿勢制御装置50に供給する。
【0027】
図3は、位置情報管理装置40の記憶部に記憶される、位置情報テーブルのデータ構成を示す図である。同図に示すように、位置情報テーブルは、マーカ識別情報と、資材情報と、日時情報と、目標位置情報との各項目を対応付けたデータテーブルである。位置情報管理装置40は、マーカ識別情報を主キーとして位置情報テーブルからレコードを抽出する。
【0028】
項目「マーカ識別情報」は、マーカCを識別する文字、数字、記号、またはこれらの組み合わせによる情報を格納する項目である。
項目「資材情報」は、マーカ識別情報に対応するマーカCが設けられた一または複数の建設資材Mを特定する情報を格納する項目である。資材情報は、例えば、建設資材Mの型番、シリアル番号等の情報である。
項目「日時情報」は、項目「目標位置情報」に目標位置情報が格納または更新(上書き)されるときの日時を示す情報を格納する項目である。日時情報は、例えば、年、月、日、時、分、および秒を示す情報である。
【0029】
項目「目標位置情報」は、マーカ識別情報に対応するマーカCが設けられた一または複数の建設資材Mについての、位置合わせの目標となる位置を示す位置情報である。目標位置情報は、図3に示すように、目標位置を示す緯経度および高度である。
なお、目標位置情報は、直交座標系によって特定される座標値としてもよい。直交座標系は、例えば、地球中心慣性ECI(Earth−Centered Inertial)座標系や、地球中心地球固定ECEF(Earth−Centered Earth−Fixed)座標系等である。
【0030】
図4(a),(b)は、建設資材とこの建設資材に対する目標位置とを、模式的に示した図である。同図(a)は、建設資材Mに設けられたフック掛けへの玉掛け位置を目標位置Pとした例である。位置情報管理装置40が保有する位置情報テーブルには、建設資材Mに設けられたマーカCのマーカ識別情報と、建設資材Mを特定する資材情報と、目標位置Pを示す目標位置情報と、この目標位置情報を位置情報テーブルに格納または上書きしたときの日時を示す日時情報とが格納される。建設資材Mに対するマーカCの設置位置の精度は問われるものではない。
また、同図(b)は、建設資材Mb1,Mb2,Mb3からなる一組の建設資材に掛けられるワイヤへの玉掛け可能な位置を目標位置Pとした例である。位置情報管理装置40が保有する位置情報テーブルには、建設資材Mb1に設けられたマーカCのマーカ識別情報と、建設資材Mb1,Mb2,Mb3からなる一組の建設資材を特定する資材情報と、目標位置Pを示す目標位置情報と、この目標位置情報を位置情報テーブルに格納または上書きしたときの日時を示す日時情報とが格納される。建設資材Mb1に対するマーカCの設置位置の精度は問われるものではない。
【0031】
次に、位置情報管理装置40が記憶する位置情報テーブルへのデータの登録および更新について説明する。このデータ登録および更新を実行する端末(例えば、コンピュータ装置)は、図1には図示していないが、ネットワーク30に接続されている。
【0032】
第1の例として、建設資材Mが建設現場に搬入されると、端末は、オペレータによる操作によって、建設資材Mに設けられたマーカCに対応するマーカ識別情報を指定した検索要求を位置情報管理装置40に供給する。
位置情報管理装置40は、端末から供給される検索要求を取り込むと、この検索要求に指定されたマーカ識別情報をキーとして、記憶部に記憶された位置情報テーブルを検索する。そして、キーがヒットするレコードが検出された場合、位置情報管理装置40は、そのレコードを抽出し、このレコードを検索応答として端末に供給する。一方、キーがヒットするレコードが検出されない場合、位置情報管理装置40は、マーカ識別情報に対応するレコードが無いことを示す情報を検索応答として端末に供給する。
【0033】
または、第2の例として、建設資材Mが建設現場に搬入されると、端末は、位置特定装置20を制御して、位置特定装置20から所定のコードを取得する。具体的には、端末は、位置特定装置20を制御し、撮影装置10にマーカCを撮影させて、撮影装置10から位置特定装置20に画像データを取り込ませる。そして、端末は、位置特定装置20が画像データから読み取った所定のコード、つまりマーカ識別情報と、位置情報管理装置40に登録された位置情報テーブルの所在地情報とを、位置特定装置20から取り込む。そして、端末は、取得した所定のコードを用いて位置情報管理装置40にアクセスする。
位置情報管理装置40は、端末からのアクセスを受けると、マーカ識別情報をキーとして、記憶部に記憶された位置情報テーブルを検索する。そして、キーがヒットするレコードが検出された場合、位置情報管理装置40は、そのレコードを抽出し、このレコードを検索応答として端末に供給する。一方、キーがヒットするレコードが検出されない場合、位置情報管理装置40は、マーカ識別情報に対応するレコードが無いことを示す情報を検索応答として端末に供給する。
【0034】
端末は、位置情報管理装置40から供給される検索応答を取り込む。そして、検索応答がマーカ識別情報に対応するレコードである場合、このレコードに、資材情報Mを特定する資材情報を格納する。一方、検索応答がレコード無しであることを示す情報である場合、レコードを生成し、このレコードに、マーカCに対応するマーカ識別情報と、資材情報Mを特定する資材情報とを格納する。
そして、端末は、建設資材Mが保管場所等に置かれた後に測定された目標位置を示す目標位置情報と、現在日時を示す日時情報とをレコードに記録または更新する。目標位置の測定については後述する。
端末は、データが格納または更新されたレコードを、位置情報管理装置40に供給する。そして、位置情報管理装置40は、端末から供給されるレコードを取り込み、このレコードを位置情報テーブルに追加したり、そのレコードで更新したりする。
【0035】
建設資材Mに対応する目標位置は、建設資材Mが移動されるたびに測定される。この目標位置の測定方法について説明する。
建設資材Mに対する目標位置は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機等の位置検出装置による位置測定によって得られる。つまり、建設資材Mに対応する目標位置に位置検出装置を設け、この位置検出装置が測定して得る位置を目標位置とする。
【0036】
次に、本発明の一実施形態におけるクレーン制御システムの動作について説明する。
図5は、位置特定装置20および位置情報管理装置40の処理の手順を示すフローチャートである。
まず、位置特定装置20の動作について説明する。
ステップS1において、画像データ取得部21は、撮影装置10から供給される画像データを受け付けている(S1:NO)。そして、画像データ取得部21は、撮影装置10から画像データの供給を受けると(S1:YES)、ステップS2の処理に移す。
【0037】
ステップS2において、画像データ取得部21は、画像データを取り込む。画像データが静止画像データである場合、画像データ取得部21は、取り込んだ画像データをフレーム画像データとしてマーカ画像検出部22に供給する。また、画像データが動画像データである場合、画像データ取得部21は、取り込んだ動画像データからキーフレームを検出し、このキーフレームのデータをフレーム画像データとして、順次またはあらかじめ決定された所定フレーム数おきにマーカ画像検出部22に供給する。
【0038】
次に、ステップS3において、マーカ画像検出部22は、取り込んだフレーム画像データからマーカCの画像を検出する。例えば、マーカ画像検出部22は、例えば、マーカCの外形や全てのマーカCに共通に設けられる特徴的な図形を参照画像データとしてあらかじめ保有しておく。マーカ画像検出部22は、取り込んだフレーム画像データにおいて参照画像データと一致する画像があるか否かを探索することにより、フレーム画像データからマーカCの画像を検出する。
ステップS4において、マーカ画像検出部22は、フレーム画像データからマーカCの画像を検出した場合(S4:YES)はステップS5の処理に移し、フレーム画像データからマーカCの画像を検出しない場合(S4:NO)はステップS1の処理に戻す。
【0039】
ステップS5において、コード検出部23は、検出したマーカCの画像から、前述した所定のコードを検出する。具体的には、コード検出部23は、マーカCの画像から、当該マーカCを識別するマーカ識別情報と、位置情報管理装置40に登録された位置情報テーブルの所在地情報とを読み取る。
次に、ステップS6において、目標位置情報要求部24は、ステップS5の処理において読み取った所定のコードに基づいて、マーカCに対応する目標位置情報の取得要求を位置情報管理装置40に供給する。具体的には、目標位置情報要求部24は、所定のコードにおける所在地情報に基づき位置情報管理装置40にアクセスし、マーク識別情報を位置情報管理装置40に供給する。
【0040】
次に、ステップS7において、目標位置情報取得部25は、マーカCに対応する目標位置情報の取得要求を取り込んだ位置情報管理装置40から供給される、前記の取得要求に対応した目標位置情報を取り込む。すなわち、目標位置情報取得部25は、マーク識別情報に基づいて位置情報管理装置40によって取得された目標位置情報を位置情報管理装置40から取得する。
次に、ステップS8において、姿勢制御部26は、取得した目標位置情報が示す目標位置を、機械装置60の作業部の移動先目標位置として指定した姿勢制御命令を生成し、この姿勢制御命令を姿勢制御装置50に供給する。
【0041】
次に、位置情報管理装置40の動作について説明する。
ステップS11において、位置情報管理装置40は、ステップS6の処理において目標位置情報要求部24から供給された取得要求を取り込む。
次に、ステップS12において、位置情報管理装置40は、取得要求に基づいて、記憶部に記憶された位置情報テーブルから目標位置情報を抽出する。
次に、ステップS13において、位置情報管理装置40は、抽出した目標位置情報を要求元である位置特定装置20の目標位置情報取得部25に供給する。
【0042】
以上説明したとおり、本実施形態において、建設資材Mに設けられるマーカCは、マーカ識別情報と、位置情報管理装置40に登録された位置情報テーブルの所在地情報(例えば、URL)とが含まれるコードを記録するものである。撮影装置10は、マーカCを撮影して得た画像データを位置特定装置20に供給する。そして、位置特定装置20は、撮影装置10から供給された画像データを取り込み、この画像データを解析してマーカCの画像を検出し、このマーカCの画像から、記録されたコードを読み出す。これにより、位置特定装置20は、マーカCを特定し、且つ位置情報テーブルの所在場所を把握する。
【0043】
本実施形態において、建設資材Mの移動単位、すなわち建設資材Mまたは建設資材Mの組み合わせに対応する目標位置情報は、位置情報管理装置40が記憶する位置情報テーブルによって管理される。つまり、建設資材Mや建設資材Mの組み合わせが移動されると、GPS受信機等の位置検出装置が、移動先における目標位置を測定する。そして、端末が、測定によって得られた目標位置情報を取り込み、この目標位置情報を位置情報管理装置40に供給する。そして、位置情報管理装置40が、供給された目標位置情報を取り込み、この目標位置情報で位置情報テーブルの該当する項目を更新する。これにより、位置情報管理装置40は、建設資材Mの移動単位についての目標位置を的確に管理する。
【0044】
本実施形態において、位置特定装置20は、特定したマーカCのマーカ識別情報と位置情報テーブルの所在場所を示す情報とに基づいて位置情報管理装置40にアクセスする。そして、位置情報管理装置40は、上記のマーカ識別情報に対応する目標位置情報を抽出し、この目標位置情報を要求元である位置特定装置20に供給する。これにより、位置特定装置20は、撮影装置10から取り込んだ画像データからマーカCの画像を検出し、このマーカCに記録されたコードを読み出して位置情報管理装置40にアクセスするだけで、位置情報管理装置40からマーカCが設けられた建設資材Mまたは建設資材Mの組み合わせに対応する目標位置情報を取得することができる。
【0045】
本実施形態によれば、マーカCには固定的な目標位置情報が記録されないため、マーカCは建設資材Mに対して位置精度を有する必要がない。また、マーカCの建設資材Mに対する大きさに制限がなく、例えば、建設資材Mと撮影装置10との距離に応じてマーカCの大きさを決めてもよい。つまり、建設資材Mと撮影装置10との距離が長くなる程、マーカCの大きさを大きくしてもよい。
したがって、本実施形態によれば、建設資材Mの移動単位の位置が移動により変更されたり、マーカCの設置位置にずれがあったりしても、軽い処理負荷で且つ短時間にその目標位置を特定することができる。
【0046】
本実施形態は、複数の機械装置60が設置された建設現場において、これら複数の機械装置60が、マーカCが設けられた建設資材Mを順次中継移動させることによって、建設資材Mを移送する作業に適用可能である。
図6は、建設現場において、2台の機械装置60が建設資材Mを移送するクレーン制御システムを模式的に示す図である。
同図に示すとおり、建設現場には、機械装置60−1および機械装置60−2が設置されている。このクレーン制御システムにおいて、機械装置60−1は、場所A1に載置された建設資材Mを場所A2まで移動させる。機械装置60−2は、場所A2に載置された建設資材Mを場所A3まで移動させる。
【0047】
建設資材Mが場所A1に載置されたとき、クレーン制御システムは、前述した、位置情報管理装置40に記憶された位置情報テーブルへのデータの登録および更新の処理によって、目標位置情報と現在日時を示す日時情報とを位置情報テーブルに登録または更新する。
機械装置60−1が、場所A1に載置された建設資材Mを場所A2まで移動させた場合、例えば、機械装置60−1の旋回角度、ジブ角度、ワイヤフック長等のクレーン情報に基づいて、クレーン制御システムは、場所A2における建設資材Mの目標位置を計算することができる。または、クレーン制御システムは、建設資材Mに設けられたGPS受信機等の位置検出装置による位置測定によって、建設資材Mの目標位置を得ることができる。よってクレーン制御システムは、前述した、位置情報管理装置40に記憶された位置情報テーブルへのデータの登録および更新の処理と同様に、新たに得た目標位置情報と現在日時を示す日時情報とを位置情報テーブルに登録または更新する。
【0048】
機械装置60−2が、場所A2に載置された建設資材Mを場所A3まで移動させる場合についても、機械装置60−1の場合と同様にして目標位置情報と日時情報とを引き継いで位置情報テーブルに更新していくことができる。
【0049】
このようにして、機械装置60−1,60−2が、マーカCが設けられた建設資材Mを順次中継移動させることによって、場所A1から場所A3まで建設資材Mを移送することができる。
このような、複数の機械装置60を有するクレーン制御システムは、例えば、作業者が操作可能な場所や安全が確保できる場所から、作業者が操作不可能な場所や安全の確保が困難である場所まで物品を移送する場合に有用である。
【0050】
なお、上述した実施形態である位置特定装置20の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するための位置特定プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録された位置特定プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて、このコンピュータシステムが実行することによって実現してもよい。なお、このコンピュータシステムとは、オペレーティング・システム(Operating System;OS)や周辺装置のハードウェアを含むものである。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに備えられる磁気ハードディスクやソリッドステートドライブ等の記憶装置のことをいう。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のコンピュータネットワーク、および電話回線や携帯電話網を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、さらには、その場合のサーバ装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記の位置特定プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 クレーン制御システム
10 撮影装置
20 位置特定装置
21 画像データ取得部
22 マーカ画像検出部
23 コード検出部
24 目標位置情報要求部
25 目標位置情報取得部
26 姿勢制御部
30 ネットワーク
40 位置情報管理装置
50 姿勢制御装置
60 機械装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、
前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、
前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、
を備えることを特徴とする位置特定装置。
【請求項2】
前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、
前記目標位置情報取得部は、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得する
ことを特徴とする請求項1記載の位置特定装置。
【請求項3】
物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを、画像データ取得部が取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データ取得ステップにおいて取得された前記画像データから、マーカ画像検出部が前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出ステップと、
前記マーカ画像検出ステップにおいて検出された前記マーカの画像から、コード検出部が前記所定のコードを検出するコード検出ステップと、
前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出ステップにおいて検出された前記所定のコードに基づいて、目標位置情報取得部が前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得ステップと、
を有することを特徴とする位置特定方法。
【請求項4】
前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、
前記目標位置情報取得ステップは、前記目標位置情報取得部が、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得する
ことを特徴とする請求項3記載の位置特定方法。
【請求項5】
コンピュータを、
物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して得られた画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、
前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、
前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理装置から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、
として機能させるための位置特定プログラム。
【請求項6】
前記所定のコードは、前記マーカの識別情報と前記位置情報管理装置の所在地を少なくとも示す所在地情報とを含み、
前記目標位置情報取得部は、前記所在地情報に基づいて前記位置情報管理装置にアクセスして前記識別情報を前記位置情報管理装置に供給し、前記識別情報に基づいて前記位置情報管理装置によって取得された前記目標位置情報を前記位置情報管理装置から取得する
ことを特徴とする請求項5記載の位置特定プログラム。
【請求項7】
物品に設けられた、所定のコードが視認可能に記録されたマーカを撮影して画像データを生成する撮影部と、
前記撮影部が生成した前記画像データを取り込む画像データ取得部と、
前記画像データ取得部が取得した前記画像データから前記マーカの画像を検出するマーカ画像検出部と、
前記マーカ画像検出部が検出した前記マーカの画像から、前記所定のコードを検出するコード検出部と、
前記物品に対応する目標位置を示す目標位置情報を管理する位置情報管理部と、
前記位置情報管理部から、前記コード検出部が検出した前記所定のコードに基づいて前記物品に対応する前記目標位置情報を取得する目標位置情報取得部と、
を備えることを特徴とする位置特定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82549(P2013−82549A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224941(P2011−224941)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】