説明

低スコーチレベルの、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体

【課題】低スコーチレベルの、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】本発明は、難燃剤として、少なくとも1種のポリアリールホスフェートと少なくとも1種のモノアリールホスフェートとからなる混合物を含む、低スコーチレベルの、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体に、ならびにこれらの発泡体の製造方法に、およびそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤として、少なくとも1種のポリアリールホスフェートと少なくとも1種のモノアリールホスフェートとの混合物を含む、低スコーチレベルの、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体に、ならびにまたこれらの発泡体の製造方法に、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、家具、マットレス、輸送、建設および工業絶縁体などの、多くの部門で使用されるプラスチックである。厳しい難燃性要件、例えば、自動車部門、鉄道部門および航空機室内設備部門などの部門での材料について、およびまた建物での絶縁体について要求されるものを満たすために、ポリウレタン発泡体は一般に、難燃剤で改質されなければならない。多種多様な異なる難燃剤がこの目的のために公知であり、商業的に入手可能である。しかしながら、それらの使用は、多種多様なかなりの用途関連問題または毒性学的懸念によって複雑にされる。
【0003】
例えば、固体難燃剤、例えば、メラミン、ポリリン酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムが使用されるとき、沈降または凝集のために計量供給の技術的な問題が発生し、これらは多くの場合に発泡工場設備の修正、すなわち、複雑なリエンジニアリングおよび改造を必要とする。
【0004】
頻繁に使用される難燃剤トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェートおよびトリス(ジクロロイソプロピル)ホスフェートは、計量供給するのが容易である液体であるが、自動車室内設備用の開放気泡可撓性ポリウレタン発泡体系に最近課せられる増大しつつある要件は、これらの発泡体からのガス状排出物(揮発性有機化合物、VOC)、特に凝縮性排出物(フォギング)が低い閾値を超えるべきはないことである。上述の液体は、それらが過度の揮発度を有するので、これらの要件を現在満たすことができない。
【0005】
フォギングは、自動車の室内設備から蒸発した揮発性成分の、特にフロントガラス上の、ガラスの窓枠上への望ましくない凝縮である。DIN 75 201(ISO 6452に相当する、自動車におけるトリム材料のフロントガラスフォギング特性の測定に関する独国工業規格(German Industrial Norm))は、この現象の定量的評価を可能にする。自動車業界の典型的な要求は、フォギング凝縮物がDIN 75201 B方法によって1mg未満でなければならないことである。
【0006】
環境毒性学上の理由で、かつまた、煤煙濃度および煤煙毒性に関して、火災の場合の副作用を改善するために、ハロゲンを含まない難燃剤がまた好ましい。ハロゲンを含まない難燃剤はまた、用途関連上の理由でも特に興味のあるものであり得る。例えば、ハロゲン化難燃剤が使用されるとき、厳しい腐食現象が、ポリウレタン発泡体のフレーム積層のために使用される工場設備構成部品上で観察される。これは、ハロゲン含有ポリウレタン発泡体のフレーム積層中に発生するハロゲン化水素排出物に起因し得る。
【0007】
フレーム積層は、発泡体シートの一側面の初期溶融のためにフレームを使用し、次に直ちに織物ウェブをこの側面上に押し付けることによる織物と発泡体との結合プロセスに対して用いられる用語である。
【0008】
自動車業界および家具業界は、使用される難燃剤が、特に開放気泡ポリウレタン発泡体においてスコーチレベルを最低限にすることを益々要求中である。
【0009】
用語スコーチは、ポリウレタン発泡体中のコアの望ましくない変色に対して用いられる。スコーチのあり得る原因は、水の存在下でのポリウレタン発泡体の熱分解および酸化分解である。機構研究は、コアの変色が、イソシアネート基の加水分解から生じる芳香族アミンの酸化生成物に起因することを示してきた[(非特許文献1);(非特許文献2)]。スコーチは一般に、これが長期間の上昇内部温度にさらされる領域であるので、ポリウレタン発泡体スラブの中心において観察される。
【0010】
難燃剤は、ポリウレタン発泡体のスコーチ挙動にかなりの影響を及ぼすことができる。臭素化ジフェニルエーテル、テトラブロモフタル酸ジアルキルおよびアリールホスフェートは、低スコーチ難燃剤である。従って、アリールホスフェートのみが、低スコーチレベルとハロゲン不存在との組み合わせを提供する。
【0011】
トリフェニルホスフェートは、容易に入手可能なアリールホスフェートであり、一例として(特許文献1)からポリウレタン発泡体において極めて有効な難燃剤として公知である。しかしながら、トリフェニルホスフェートの融点が49℃であるという、かつ、約20℃の処理温度で、それがそれ故固体難燃剤の使用について上に記載された付随する問題を有するという事実は、重大な欠点と考えなければならない。
【0012】
アルキル置換アリールホスフェート、例えば、ジフェニルクレジルホスフェート(特許文献2)は一般に液体であり、それ故、ポリウレタン発泡体用の難燃剤として処理するのが容易である。(特許文献3)は、トリフェニルホスフェートと、アルキル化トリフェニルホスフェートとポリオール架橋剤との組み合わせからなるポリウレタン発泡体用の液体難燃剤を記載している。(特許文献4)は、ポリウレタン発泡体用のアルキル置換トリアリールホスフェートのリン含有難燃剤との混合物を記載している。(特許文献5)は、様々なホスフェート含有率のアルキル化フェニルホスフェートを含む、低いスコーチレベルの難燃性ポリウレタン発泡体を記載している。
【0013】
アルキル置換アリールホスフェートは、トリフェニルホスフェートより少ないリンを含有する。より低いリン含有率は、より低いレベルの難燃効果につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 170 206 A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A 0 308 733号明細書
【特許文献3】国際公開第A 2006/119369号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第A 1 506 256号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/060573 A1号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Luda、M.P.、Bracco、P.Costa、L.、Levchik、S.V.著、Discoloration in Fire Retardent Flexible Polyurethane Foam.Part I.Characterization、Polym.Degrad.Stab.、83(2004)、215−220ページ
【非特許文献2】Levchik、S.V.、Luda、M.P.、Bracco、P.、Nada、P.、Costa、L.著、Discoloration in Fire Retardent Flexible Polyurethane Foam、J.Cellular Plast.、41(3)(2005)、235−250ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
低スコーチレベルと共に低いフォギング値を特色とするハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体を提供することが本発明の目的である。この目的のために必要とされる難燃剤は、処理することが容易である容易に入手可能な液体であること、および使用される量が少ないときでさえ高い有効性を提供できることが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目標は、
難燃剤として、
a)一般式(I)
【化1】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化2】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物を含む難燃性ポリウレタン発泡体によって達成される。
【0018】
用語「ハロゲンを含まない」は、ポリアリールホスフェートとモノアリールホスフェートとが0.1%より大きい重量割合の元素フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素を含まないことを意味する。
【0019】
明確にするために、本発明の範囲は一般論としてかまたは好ましい範囲で下に述べられる定義およびパラメーターの任意の所望の組み合わせを包含することが指摘されるべきである。
【0020】
式(I)および(II)によれば、部分R、R、R、R、RおよびR、ならびにまた橋架けアルキリデン部分R−CH:は、互いに独立して、C−O結合に対して6員環上でオルト−、メタ−および/またはパラ−位を有することができる。
【0021】
、R、R、R、RおよびRは互いに独立して、Hまたはメチルであることが好ましく、R、R、R、R、RおよびRはHであることが特に好ましい。
【0022】
はH、メチルまたはフェニルであることが好ましく、RはHであることが特に好ましい。
【0023】
式(I)のポリアリールホスフェートは、一例として数nで、部分R、R、R、R、R、RおよびRで、および/または前記部分の置換のタイプ、すなわち、オルト、メタもしくはパラで異なる複数の構造上類似の成分からなる混合物であることが好ましい。これらの混合物は、式(I)の線状のポリアリールホスフェートのみならず、分岐している、星形である、もしくは環式である、または幾つかの他の様式で架橋しているさらなるポリアリールホスフェートを含むことができる。
【0024】
難燃剤およびスコーチ防護ポリウレタン発泡体は好ましくは、全体ポリウレタンを基準として、
a)0.1〜20重量%の式(I)のポリアリールホスフェートと、
b)0.1〜20重量%の式(II)のモノアリールホスフェートと
を含む。
【0025】
本発明の特に好ましい形態では、ポリウレタン発泡体は、
a)0.5〜16重量%の式(I)のポリアリールホスフェートと、
b)0.5〜16重量%の式(II)のモノアリールホスフェートと
を含む。
【0026】
ポリアリールホスフェートからおよびモノアリールホスフェートからなる混合物は処理温度で液体であることが好ましい。用語処理温度はここでは、発泡工場設備の計量供給および混合アセンブリ中へポリウレタン原材料が導入される温度を意味する。20〜80℃の温度が一般にここでは、成分の粘度のおよび計量供給アセンブリのデザインの関数として選択される。ポリアリールホスフェートからおよびモノアリールホスフェートからなる液体混合物の20℃での粘度は10mPas〜5000mPas、好ましくは50mPas〜2000mPasであることが好ましい。
【0027】
本発明によるポリウレタン発泡体中に存在するポリアリールホスフェートおよびモノアリールホスフェートは、当業者に公知であり、容易に入手可能である。一例として、それらは、式(II)のモノアリールホスフェートが化学量論量のアルデヒドR−CHO(ここで、Rは上記の通り定義される)と、またはこれらの誘導体と水を除去しながら反応させられる場合に混合物の形態で特に有利に得ることができる。これは、一例として欧州特許出願公開第0 001 215 A1号明細書に記載されている。
【0028】
本発明による難燃性ポリウレタン発泡体は好ましくは、ハロゲンを含まない式(I)のポリアリールホスフェートと式(II)のモノアリールホスフェートとの存在下に、通常の発泡剤、安定剤、活性剤、および/またはさらなる通常の助剤および添加剤を使用して、有機ポリイソシアネートを、イソシアネートとよく反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物と反応させることによって製造される。
【0029】
ポリウレタン発泡体は、ウレタン基および/またはイソシアヌレートおよび/またはアロファネート基および/またはウレチジオン基および/またはウレア基および/またはカルボジイミド基を主として有するイソシアネートベースの発泡体である。イソシアネートベースの発泡体の製造は公知であり、一例として、独国特許出願公開第A 16 94 142号明細書(=英国特許第1 211 405号明細書)、独国特許出願公開第A 16 94 215号明細書(=米国特許第3,580,890号明細書)および独国特許出願公開第A 17 20 768号明細書(=米国特許第3,620,986号明細書)にならびにまた、G.Oertel編、Kunststoff−Handbuch[Plastics Handbook]Volume VII、Polyurethane[Polyurethanes]、Carl Hanser Verlag Munich、Vienna、1993年に記載されている。
【0030】
ポリウレタン発泡体は、可撓性発泡体と剛性発泡体とに広く分類される。可撓性および剛性発泡体は原則として、おおよそ同じ外皮密度および構成を有することができるが、可撓性ポリウレタン発泡体は低い程度の架橋を有するにすぎず、圧力下の変形に対して低い抵抗性を有するにすぎない。これとは対照的に、剛性ポリウレタン発泡体の構造は、高度に架橋した単位からなり、剛性ポリウレタン発泡体は、圧力下の変形に対して非常に高い抵抗性を有する。典型的な剛性ポリウレタン発泡体は、閉じた気泡タイプのものであり、低い熱伝導率を有する。ポリオールのイソシアネートとの反応によって進行する、ポリウレタンの製造において、発泡体のその結果生じた構造およびその特性は、ポリオールの構造およびモル質量によっておよびまたポリオール中に存在するヒドロキシ基の反応性および数(官能性)によって主として影響を及ぼされる。剛性および可撓性発泡体とそれらの製造のために使用することができる出発原料とに関する、ならびにまたそれらの製造方法に関するさらなる詳細は、Norbert Adam、Geza Avar、Herbert Blankenheim、Wolfgang Friederichs、Manfred Giersig、Eckehard Weigand、Michael Halfmann、Friedrich−Wilhelm Wittbecker、Donald−Richard Larimer、Udo Maier、Sven Meyer−Ahrens、Karl−Ludwig Noble and Hans−Georg Wussow著、「Polyurethanes」、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry Release 2005、Electronic Release、第7版、第7章(「Forms」)、Wiley−VCH、Weinheim 2005に見いだされる。
【0031】
本発明のポリウレタン発泡体の外皮密度は好ましくは、10〜130kg/mである。それらの外皮密度は特に好ましくは15〜40kg/mである。
【0032】
以下の出発成分が、本発明によって保護されるべきイソシアネートベースの発泡体の製造のために使用される。
【0033】
1.脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族および複素環式ポリイソシアネート(例えば、Justus Liebigs Annalen der Chemie、562、pp.75−136でのW.Siefken)、好ましくは式Q(NCO)(式中、n=2〜4、好ましくは2〜3であり、Qは、2〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜15個、好ましくは5〜10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜15個、好ましくは6〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または8〜15個、好ましくは8〜13個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素である)のもの。工業的に容易にアクセスできる、かつ、トリレン2,4−および/または2,6−ジイソシアネートにまたはジフェニルメタン4,4’−および/または2,4’−ジイソシアネートに由来するポリイソシアネートが一般に特に好ましい。
【0034】
2.イソシアネートとよく反応する少なくとも2個の水素原子を有する、かつ、そのモル質量が400〜8000g/モルである化合物(「ポリオール成分」)。これらは、アミノ基、チオ基またはカルボキシ基を有する化合物のみならず、好ましくはヒドロキシ基を有する化合物、特に2〜8個のヒドロキシ基を有する化合物である。ポリウレタン発泡体が可撓性形態であることを意図される場合には、そのモル質量が2000〜8000g/モルであり、かつ、1分子当たり2〜6個のヒドロキシ基を有するポリオールを使用することが好ましい。対照的に、意図が剛性発泡体を製造することである場合には、そのモル質量が400〜1000g/モルであり、かつ、1分子当たり2〜8個のヒドロキシ基を有する高分岐ポリオールを使用することが好ましい。ポリオールは、均一および気泡ポリウレタンの製造のためにそれ自体公知であるように、および一例として独国特許出願公開第A28 32 253号明細書に記載されているように、ポリエーテルおよびポリエステル、ならびにまたポリカーボネートおよびポリエステルアミドである。本発明によれば、少なくとも2個のヒドロキシ基を有するポリエステルおよびポリエーテルが好ましい。
【0035】
本発明のポリウレタン発泡体は、それ故、先行技術で容易に見いだされる方法で適切に出発原料を選択することによって剛性または可撓性発泡体の形態で製造することができる。
【0036】
好ましい一実施形態では、さらなる出発成分は、イソシアネートとよく反応する少なくとも2個の水素原子を有する、かつ、32〜399の分子量を有する化合物である。ここで再び、これらは、ヒドロキシ基および/またはアミノ基および/またはチオ基および/またはカルボキシ基を有する化合物、好ましくはヒドロキシ基および/またはアミノ基を有する化合物であり、ここで、これらの化合物は連鎖延長剤または架橋剤としての機能を果たす。これらの化合物は一般に、イソシアネートとよく反応する2〜8個、好ましくは2〜4個の水素原子を有する。例はここでも同様に、独国特許出願公開第A 28 32 253号明細書(=米国特許第4,263,408号明細書)に記載されている。
【0037】
3.発泡剤として、水および/または揮発性物質、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、トリクロロメタン、塩化メチレンまたはクロロフルオロアルカンなどのハロゲン含有アルカン、COなどのガス、および他の化合物。複数の発泡剤の混合物を使用することもまた可能である。
【0038】
4.別の好ましい実施形態では、それ自体公知のタイプの触媒、乳化剤および泡安定剤などの界面活性剤添加剤、反応抑制剤、例えば、塩酸もしくは有機ハロゲン化アシルなどの酸性物資、あるいはパラフィンもしくは脂肪アルコールおよびジメチルポリシロキサンなどの、それ自体公知のタイプの気泡調整剤、ならびにまた顔料もしくは染料およびさらなる難燃剤、あるいは老化および気候の影響から保護するための安定剤、コア変色防止剤、可塑剤ならびに静真菌性および静菌性物質、ならびにまた硫酸バリウム、ケイ藻土、カーボンブラックもしくは白亜などの、フィラーなどの、助剤および添加剤が併用される(独国特許出願公開第A 27 32 292号明細書=米国特許第4,248,930号明細書)。存在することができる特定のコア変色防止剤は、立体障害のあるトリアルキルフェノール、3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアルキルエステル、ベンゾフラン−2−オン、第二級芳香族アミン、ホスファイト、フェノチアジンまたはトコフェロールである。
【0039】
特に好ましい一実施形態では、ポリウレタン発泡体中にポリアリールホスフェートからおよびモノアリールホスフェートからなる混合物と一緒に存在することができるさらなる難燃剤は、
a)有機リン化合物、特に脂肪族トリエチルホスフェート、ビスホスフェート、ネオペンチルグリコールビス(ジフェニルホスフェート)、塩素含有リン酸エステル、例えば、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェートまたはトリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、ジメチルメタンホスホネート、ジエチルエタンホスホネート、ジメチルプロパンホスホネート、オリゴマーホスフェートまたはホスホネート、ヒドロキシ基を含有するリン化合物、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−オキシド誘導体;
b)無機リン含有塩、特にリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ジアルキルリン酸の金属塩、アルカンリン酸の金属塩;
c)窒素化合物、特にメラミン、メラミンシアヌレート;
d)塩素および臭素化合物、特にテトラブロモ安息香酸のアルキルエステル、テトラブロモ無水フタル酸から製造された臭素含有ジオール、臭素および/または塩素含有ポリオール;
e)無機難燃剤、特に水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、膨張性グラファイトまたは粘土鉱物。
【0040】
適切な場合、界面活性剤添加剤および泡安定剤ならびにまた気泡調整剤、反応抑制剤、安定剤、難燃性物質、可塑剤。染料およびフィラーならびにまた静真菌性または静菌性作用を有する物質の形態で、本発明に従って併用されるべき材料の他の例は、これらの添加剤の使用およびそれらの作用機序に関する詳細と同様に、Kunststoff−Handbuch[Plastics Handbook]Volume VII、Carl Hanser Verlag、Munich、1993年、104−123ページに記載されている。
【0041】
本発明はまた、難燃剤として、
a)ポリオール成分の100部を基準として0.1〜40部、好ましくは1〜30部の一般式(I)
【化3】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)ポリオール成分の100部を基準として0.1〜40部、好ましくは1〜30部の一般式(II)
【化4】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物が使用されることを特徴とする、20〜80℃での、有機ポリイソシアネートの、イソシアネートとよく反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物との、および場合により発泡剤、安定剤、活性剤ならびにさらなる助剤および添加剤との反応による難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法を包含する。
【0042】
本方法の好ましい一実施形態では、式(I)および(II)に従って部分R、R、R、R、RおよびRが、互いに独立して、Hまたはメチルである、ポリアリールホスフェートおよびモノアリールホスフェートが使用される。部分R、R、R、R、RおよびRはHであることが特に好ましい。
【0043】
本方法の別の好ましい実施形態では、式(I)に従って部分RがH、メチルまたはフェニルであるポリアリールホスフェートが使用される。部分RはHであることが特に好ましい。
【0044】
ポリアリールホスフェートは、一例として数nにおいて、部分R、R、R、R、R、RおよびRにおいておよび/またはこれらの部分の置換のタイプ、すなわち、オルト、メタもしくはパラにおいて異なる複数の構造上類似の成分からなる混合物であることが好ましい。
【0045】
ポリウレタン発泡体の製造方法の実施:
上記の反応成分は好ましくは、多くの場合米国特許第2,764,565号明細書に記載されているタイプなどの装置を用いて、それ自体公知の一段階法によって、プレポリマー法によってまたは半プレポリマー法によって反応させられる。本発明によってまた用いることができる処理設備に関する詳細は、一例としてG.Oertel編、Kunststoff−Handbuch[Plastics Handbook]Volume VII、Polyurethane[Polyurethanes]、Carl Hanser Verlag Munich、Vienna、1993年の139−192ページに記載されている。
【0046】
本発明によれば、低温硬化発泡体を製造することもまた可能である(英国特許第11 62 517号明細書、独国特許出願公開第A 21 53 086号明細書)。しかしながら、勿論、スラブ発泡によって、またはそれ自体公知の二軸コンベア−ベルト法によって発泡体を製造することもまた可能である。ポリイソシアヌレート発泡体は、この目的のために公知の方法および条件を用いて製造される。
【0047】
本発明による方法は、連続もしくは回分式製造方法による、剛性もしくは可撓性発泡体の形態での、または成形発泡製品の形態での難燃性ポリウレタン発泡体の製造を可能にする。本発明による方法は、スラブ発泡法によって製造される可撓性発泡体の製造に好ましい。
【0048】
本発明によって得ることができる生成物は、一例として次の用途に使用される:家具パッディング、織物インサート、マットレス、シート、好ましくは航空機シートもしくは自動車シート、肘掛けおよびモジュール、ならびにまた工業設備を覆うシートカバーおよびクラッディング。
【0049】
しかしながら、本発明はまた、
a)一般式(I)
【化5】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化6】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物の、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体におけるスコーチの回避のための、およびハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体からのフォギングの回避のための使用を提供する。
【0050】
最後に、本発明はまた、難燃剤として、
a)一般式(I)
【化7】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化8】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物が使用されることを特徴とする、難燃性ポリウレタン発泡体からのフォギングの回避、または難燃性ポリウレタン発泡体におけるスコーチの回避方法を提供する。
【0051】
下記の実施例は、本発明のさらなる説明を提供するが、本発明をそれによって限定するという意図は全くない。
【実施例】
【0052】
述べられる部は、重量基準である。
【0053】
【表1】

【0054】
可撓性ポリウレタン発泡体の製造
ジイソシアネート(成分G)を除いて表1に明記される成分を、発泡体タイプに応じて、表2に記載される量割合で混合して均一な混合物を生成した。ジイソシアネートを次に加え、短時間の、激しい混合によって組み入れた。15〜20秒のクリーム時間および190〜210秒の全立ち上り時間後に、生成物は、その外皮密度が、調合の関数として、それぞれ26および33kg/mである可撓性ポリウレタン発泡体であった。
【0055】
難燃効果の測定
可撓性ポリウレタン発泡体を、Federal Motor Vehicle Safety Standard(連邦自動車安全規格)FMVSS−302の仕様に従って試験した。この試験では、水平ホルダーに固定した寸法210mm×95mm×15mm(L×W×H)の試験検体発泡体に、高さ40mmでガスバーナー炎を使って15秒間短いエッジの中間にて着火し、着火火炎の除去後に火炎の広がりを観察した。試験検体の燃焼が続くのかどうかおよびどの程度続くのかの関数として、検体を、燃焼クラスSE(自己消火、検体の38mm未満に影響を与える燃焼)、SE/NBR(60秒内に自己消火/所定の燃焼速度なし)、SE/B(自己消火/測定できる燃焼速度)、BR(検体の端まで燃焼、測定できる燃焼速度)、およびRB(速い燃焼、測定できない燃焼速度)に割り振った。各実施例について、燃焼試験を5回実施した。表2は、各シリーズの5つのうちの最悪の結果を示す。
【0056】
フォギングの測定
可撓性ポリウレタン発泡体のフォギング挙動を、DIN 75201 Bに従って検討した。この試験では、寸法80mm×10mm(φ×H)の円筒形の発泡体検体を100℃に16時間加熱し、試験検体を覆って置かれた21℃に冷却したアルミ箔上に沈着した凝縮物の量を秤量した。表2は、測定された凝縮物の量を示す。
【0057】
スコーチレベルの測定
成分を混合し、次に20×20×14cm紙型中へ注ぎ、発泡手順(発泡体のコア中で到達する温度は約135℃である)の終了5分後に、発泡体を電子レンジ中で4分間300Wで照射した(Mars 5、CEM)。発泡体を次に取り出し(発泡体内温度は約160℃である)、一夜冷却した。発泡体を次に半分にカットし、スコーチについて検討した。このために、発泡体を、比色計(CR−400/410、コニカミノルタ)を用いて分析した。比色計は、検討発泡体の3つの色特性:明度(L)、赤および緑色相(a)ならびに黄および青色相(b)を測定した。スコーチなしの対照発泡体と比較して差dL、daおよびdbを測定した。次に、これらのデータを使用して、対照発泡体と比較して検討発泡体の色の変化(dE)を計算した:dE=(dL+da+db0.5
【0058】
【表2】

【0059】
結果
難燃剤が存在しないと(比較例CE1、表2)、可撓性ポリウレタン発泡体は、燃焼によって急速に消費されるが(FMVSS燃焼クラスRB)、非常に低いフォギング値を有した。トリス(ジクロロイソプロピル)ホスフェート(比較例CE2)は、自動車業界によって要求されるフォギング値、多くとも1mgの凝縮物を遵守し、燃焼試験のあらゆる繰り返しにおいて最良のFMVSS燃焼クラスSE(自己消火性)を達成した。しかしながら、トリス(ジクロロイソプロピル)ホスフェートは、ハロゲン含有難燃剤について上に記載した付随する欠点を有した。ハロゲンを含まない難燃剤ジフェニルクレジルホスフェートの使用(比較例CE3)は前記問題を回避し、FMVSS試験で低クラス合格を与えるが、フォギング値は高かった。ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)の使用(比較例CE4)は、低いフォギング値を与えるが、燃焼挙動は、分類RBで不満足であった。
【0060】
実施例IE1およびIE2は、本発明によるハロゲンを含まない可撓性ポリウレタン発泡体が燃焼試験の全ての繰り返しにおいて適正な燃焼クラスBRおよび非常に低いフォギング値を特色とすることを示した。
【0061】
【表3】

【0062】
難燃剤の不存在下では、ポリウレタン発泡体(CE5、表3)はほんの低いdE値、すなわち、低いスコーチレベルを有した。トリス(ジクロロイソプロピル)ホスフェートの添加(CE6)は、高いdE値、すなわち、高いスコーチレベルの発泡体を生成した。ハロゲンを含まない難燃剤ジフェニルクレジルホスフェート(CE7)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(CE8)を使用したとき、発泡体はほんの低いスコーチレベルを示した。
【0063】
発明実施例IE3およびIE4は、本発明によるハロゲンを含まない可撓性ポリウレタン発泡体が低いスコーチレベルを特色とすることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤として、
a)一般式(I)
【化1】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化2】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物を含む難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
、R、R、R、RおよびRが、互いに独立して、Hまたはメチルであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
がH、メチルまたはフェニルであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項4】
0.1〜20重量%の式(I)のポリアリールホスフェートと0.1〜20重量%の式(II)のモノアリールホスフェートとを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項5】
0.5〜16重量%の式(I)のポリアリールホスフェートと0.5〜16重量%の式(II)のモノアリールホスフェートとを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項6】
ポリアリールホスフェートとモノアリールホスフェートとからなる前記混合物が20℃〜80℃の温度範囲で液体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項7】
ポリアリールホスフェートとモノアリールホスフェートとからなる前記混合物の20℃での粘度が10mPas〜5000mPasであることを特徴とする請求項6に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項8】
可撓性発泡体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項9】
さらなる難燃剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の難燃性ポリウレタン発泡体。
【請求項10】
難燃剤として、
a)ポリオール成分の100部を基準として0.1〜40部の、一般式(I)
【化3】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)ポリオール成分の100部を基準として0.1〜40部の、一般式(II)
【化4】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物が使用されることを特徴とする、20〜80℃での、有機ポリイソシアネートの、イソシアネートとよく反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物との、および場合により発泡剤、安定剤、活性剤またはさらなる助剤および添加剤との反応による難燃性ポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項11】
家具パディング、織物インサート、マットレス、シート、肘掛け、モジュール、ならびにまた工業設備を覆うシートカバーおよびクラッディングでの請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタン発泡体の使用。
【請求項12】
a)一般式(I)
【化5】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化6】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物の、ハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体におけるスコーチの回避のための、およびハロゲンを含まない難燃性ポリウレタン発泡体からのフォギングの回避のための使用。
【請求項13】
難燃剤として、
a)一般式(I)
【化7】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないポリアリールホスフェートと、
b)一般式(II)
【化8】

の少なくとも1種のハロゲンを含まないモノアリールホスフェートと
からなる混合物であって、
式中、
、R、R、R、RおよびRが、各場合において、互いに独立して、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜Cアルキル部分またはフェニルであり、
が、Hまたは直鎖、分岐もしくは環式のC〜C10炭化水素部分であり、そして
nが1〜20の数である
混合物が使用されることを特徴とする、難燃性ポリウレタン発泡体からのフォギングの回避、および/または難燃性ポリウレタン発泡体におけるスコーチの回避方法。

【公開番号】特開2010−43262(P2010−43262A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−188020(P2009−188020)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】