説明

低ストラクチャーカーボンブラックを取り込んだ被膜組成物およびそれで形成された装置

ブラックマトリックスまたは被膜は、30mg/g〜200mg/gのI数および20cc/100g〜45cc/100gのDBPを有する第1のカーボンブラックを含む、カーボンブラックを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックを含む硬化性被膜組成物、硬化性被膜、および硬化被膜中での低ストラクチャーカーボンブラック、ならびにそれから生成できるブラックマトリックスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラックマトリックスは、個々のカラー画素を分離させることによる画像のコントラストを改善するために、カラーディスプレイで使用される材料の一般的な名称である。液晶ディスプレイ(LCD)では、ブラックマトリックスは、高い光遮蔽能力を有する薄膜であり、そしてカラーフィルターの3つの色要素の間に形成されている。薄膜トランジスター(TFT)を使用するLCDでは、ブラックマトリックスはまた、TFT内の反射光による光誘起電流の生成を防ぐ。
【0003】
液晶ディスプレイ中のブラックマトリックス層は、Cr/CrOの蒸着によって製造されてきた。クロム系膜は、優れた光遮蔽能力を有するが、金属蒸着プロセスは高価である。さらに、クロムの使用および処分は、ますます制約される環境規制に曝されている。クロム膜はまた、低い抵抗率を有し、LCDの電気設計を可能な設計形状のサブセットに制約する。
【0004】
カーボンブラック等の黒色顔料が、抵抗性ブラックマトリックスを製造するためにポリマー組成物中で使用された。これらのカーボンブラックのストラクチャーおよび表面積は、マトリックス中でのカーボンブラックの特別な配合レベルを可能にし、そして媒体中における電気伝導率および電荷蓄積を低下できるように選択される。配合レベルが増加すると、媒体の光学密度(OD)、材料の不透明性の尺度が増加するか、また、媒体中で使用される被膜組成物の粘度を上昇させる。従って、所望のバランスの全体的な特性を達成することが多くの場合難しい。例えば、カーボンブラック顔料を含有するブラックマトリックスは、必要な光遮蔽能力(すなわち、閾光学密度)を提供できるであろうが、この膜は、控えめな抵抗率のみを有することができ、光誘起電流を妨げる膜の能力を制限する。あるいは、高抵抗膜が製造される場合、このODは、低すぎて、商業的に実行可能でないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンブラック成分のストラクチャーを低下させると、粘度を低下させることができ、欠陥なく堆積されるより薄い層の媒体を可能とするか、またはカーボンブラックが所与の粘度で取り込まれることを可能にし、より高い光学密度となる。ファーネスカーボンブラックのストラクチャーの制御の一つの方法は、炭素質原料が燃焼している間に、炉にアルカリまたはアルカリ金属元素を加えることである。しかし、生じたカーボンブラック中の金属成分は、高められた電気伝導率に寄与でき、そして媒体中の非炭素材料は、光学密度に寄与しない。さらに、カリウムおよび他の金属元素が炉に加えられるにつれて、生じるカーボンブラックは、表面上にさらに荷電した基を有し、従ってさらに親水性である。従って、高められた電気伝導率およびカーボンブラック中の非炭素元素から生じる低い光学密度を代償として、ストラクチャーの低下が起こることができる。(例えば、6未満のpHの)さらに親水性または酸性のカーボンブラックは、広範なポリマー、およびそうでなければ、被膜または印刷用途における使用のために望ましいであろう他の成分と適合できないであろう。さらに、表面積を増加させることによって、光学密度または色合い(tint)を高められるが、表面積が増加するにつれて、DBPを低下させることはますます難しくなる。従って、低ストラクチャーを有するが、また低量のアルカリ金属および高い疎水性を有し、そして組成物における電気特性、光学密度および粘度を妥協していないカーボンブラックならびにこのカーボンブラックを取り込んだ装置を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの形態では、本発明は、少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックスを含む。この第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの全濃度の第IA族および第IIA族元素を有することができる。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/gのヨード数(I数)、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲を有することができる。第1のカーボンブラックは、1〜1.25未満のM比;6〜10のpH;最大でも6mJ/mの水拡散圧力(water spreading pressure);または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0007】
別の形態では、本発明は、少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックスを含み、この第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。第1のカーボンブラックは、1〜1.25未満のM比;6〜10のpH;最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの全濃度の第IA族および第IIA族元素;または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0008】
別の形態では、本発明は、少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックスを含み、この第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および6〜10のpHを有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、f25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。第1のカーボンブラックは、最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの全濃度の第IA族および第IIA族元素;1〜1.25未満のM比;最大でも6mJ/mの水拡散圧力;または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0009】
別の形態では、本発明は、少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックスを含み、この第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および1〜1.25未満のM比を有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。第1のカーボンブラックは、最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素;6〜10のpH;最大でも6mJ/mの水拡散圧力;または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。
【0010】
上記のいずれかの態様において、カーボンブラックは、式:色合い=x+0.44×I数(式中、xは、45〜90、例えば、60〜90または75〜90である。)に従う色合いを有することができる。ブラックマトリックスは、少なくとも50重量%のカーボンブラック、例えば、少なくとも55重量%のカーボンブラック、50%〜80重量%のカーボンブラック、55%〜80重量%のカーボンブラック、または60%〜80重量%のカーボンブラックを含むことができる。ブラックマトリックスは、1μm厚さで、少なくとも3、例えば、少なくとも4の光学密度を有することができる。ブラックマトリックスは、少なくとも60%のカーボン配合量で、少なくとも1012Ω/□の表面抵抗率を有することができる。
【0011】
上記のいずれかの態様において、ブラックマトリックスは、第2のカーボンブラックを含むことができる。第2のカーボンブラックは、表面積、ストラクチャー、一次粒径、アルカリ濃度および/もしくはアルカリ土類濃度、pH、スペクトロニック(Spectronic)20値、色合い、または酸素含有基の表面濃度、の1種または2種以上において、第1のカーボンブラックと異なることができる。第2のカーボンブラックは、酸化されたカーボンブラック、熱処理されたカーボンブラック、または結合した有機基を含む修飾されたカーボンブラックであることができる。
【0012】
別の形態では、本発明は、ビヒクル、硬化性樹脂、および少なくとも第1のカーボンブラックを含む硬化性被膜組成物を含む。第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。第1のカーボンブラックは、1〜1.25未満のM比;6〜10のpH;最大でも6mJ/mの水拡散圧力;または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。カーボンブラックは、式:色合い=x+0.44×I数(式中、xは、45〜90、例えば、60〜90または75〜90である。)に従う色合いを有することができる。硬化性被膜組成物が、少なくとも50重量%のカーボンブラック配合量を有する場合、硬化性被膜組成物は、ニュートン流動を示すことができる。硬化性被膜組成物は、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%のカーボンブラック配合量を有することができる。
【0013】
別の形態では、本発明は、樹脂、任意選択的分散剤、および少なくとも第1のカーボンブラックを含む被膜を含み、この第1のカーボンブラックは、25mg/g〜200mg/gのI数、20〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。被膜が60重量%のカーボンブラックを含む場合、被膜は、少なくとも1012Ω/□の表面電気抵抗率を有することができる。第1のカーボンブラックは、1〜1.25未満のM比;6〜10のpH;最大でも6mJ/mの水拡散圧力;または少なくとも80の色合い、の特徴の少なくとも1つによって特徴付けることができる。第1のカーボンブラックは、式:色合い=x+0.44×1数(式中、xは、45〜90、例えば、60〜90または75〜90である。)に従う色合いを有することができる。被膜は、1μm厚さで、少なくとも3、例えば、少なくとも4の光学密度を有することができる。被膜は、少なくとも50重量%のカーボンブラック、例えば、少なくとも55重量%のカーボンブラック、50%〜80重量%のカーボンブラック、55%〜80重量%のカーボンブラック、または60%〜80重量%のカーボンブラックを含むことができる。
【0014】
別の形態では、本発明は、第1のカーボンブラックを含む少なくとも20重量%のカーボンブラック、ビヒクル、および任意選択的分散剤を含むミルベース(millbase)を含む。第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×I数)(ここで、yは、250、100、−50、−150または−350である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。例えば、第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。あるいはまたさらに、第1のカーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のヨード数(I数)を有することができる。第1のカーボンブラックは、少なくとも、1〜1.25未満のM比;6〜10のpH;最大でも6mJ/mの水拡散圧力;または少なくとも80の色合い、の1つによって特徴付けることができる。カーボンブラックは、式:色合い=x+0.44×I数(式中、xは、45〜90、例えば、60〜90または75〜90である。)に従う色合いを有することができる。ミルベースが、50重量%のカーボンブラックを用いて調合されている場合、ミルベースは、ニュートン流体であることができる。ミルベースは、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、例えば、50重量%〜80重量%または60重量%〜80重量%のカーボンブラック、これらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲または任意の量のカーボンブラックを含むことができる。
【0015】
当然のことながら、先の一般的な記載および以下の詳細な記載の両者は、例示的および説明的なだけであり、そして請求項に記載した本発明の、さらなる説明を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の例示的な態様による使用のためのカーボンブラックおよび市販されているカーボンブラックの浸透曲線(percolation curve)を示すグラフである。
【0017】
【図2】図2は、本発明の例示的な態様において使用されるカーボンブラックを製造するために利用できる1つのタイプのファーネスカーボンブラック反応器の一部分の断面図である。
【0018】
【図3】図3は、所与のサンプルにおけるカーボンブラックサンプルの凝集の重量分率対ストークス直径のサンプルヒストグラムである。
【0019】
【図4】図4は、本発明の例示的な態様によるカーボンブラックおよび市販されているカーボンブラックを使用して製造したミルベースの粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
樹脂および低レベルのストラクチャー、例えば、20cc/100g〜45cc/l00gのDBPを有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む被膜が、同じ樹脂およびさらに高いストラクチャーのカーボンブラックを含む被膜と比較して、改善された電気特性を示しながら、より高配合量のカーボンブラックで製造できることを、我々は驚いたことに見いだした。さらに、抵抗率の抑制を保ちながら、低ストラクチャー、大表面積のカーボンブラックが、高い配合量のカーボンブラックを有する被膜およびブラックマトリックスの生産を可能にすることを、我々は予想外にも見いだした。
【0021】
一態様では、本発明によるブラックマトリックスは、少なくとも第1のカーボンブラックを含み、第1のカーボンブラックは、20cc/100g〜45cc/100gのフタル酸ジブチル吸収(DBP)値(顔料のストラクチャーまたは分枝の尺度)、および30mg/g〜200mg/gのヨード数を有する。
【0022】
ブラックマトリックス組成物のある態様において、および本明細書中の他の部分に記載された他の態様において用いられる第1のカーボンブラックは、20〜45cc/100g、20〜30cc/100g、25〜43cc/100g、25〜40cc/100g、30〜39cc/100g、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲のDBP値を有することができる。針状、板状等の他の形を有する炭素粒子をまた使用できるが、カーボンブラック一次粒子は、本質的に全体的に球状の形状に近づくことができる。
【0023】
ブラックマトリックス組成物および本明細書中の他の部分に記載された他の態様において用いられる第1のカーボンブラックは、カーボンブラックの所望の特性によりいずれかの広範な表面積を有することができる。例えば、カーボンブラックは、30〜200mg/g、例えば、30〜45mg/g、45〜100mg/g、60〜80mg/g、70〜100mg/g、100〜150mg/g、150〜200mg/g、70〜200mg/gのヨード数(I数)、またはこれらの終点のいずれかを境界とする任意の範囲を有することができる。当業者に公知のように、固定された気孔率において、表面積の増加は、より小さい一次粒径と相関関係がある。
【0024】
本発明のいずれかの態様において用いられる第1のカーボンブラックは、さらに以下の特性の1つまたは2つ以上を有し、下記にそれぞれのさらなる詳細を記載する。カーボンブラックは、最大でも(y+15×I数)(式中、yは、250、100、−50、−150、または−350である。)μg/gの全濃度のアルカリ元素およびアルカリ土類元素(例えば、第IAおよびIIA族元素)を有することができる。M比、すなわち、カーボンブラックサンプルの、メジアンストークス直径のモードストークス直径に対する比は、1.0〜1.25未満、例えば、1.22〜1.24またはこれらの終点のいずれかによって規定された任意の範囲であることができる。カーボンブラックは、少なくとも80の色合いを有することができる。カーボンブラックの色合いは、以下の式:
色合い=x+0.44×I
(式中、xは、45〜90、例えば、60〜90または75〜90であることができる。)によって規定できる。カーボンブラックは、6〜10のpH、例えば、6〜8、8〜10、7〜9、またはこれらの終点のいずれかによって規定された任意の範囲を有することができる。水拡散圧力(water spreading pressure:WSP)、すなわちカーボンブラックの表面と水蒸気との間の相互作用エネルギーの尺度は、最大でも6mJ/m、例えば、最大でも5mJ/m、最大でも4mJ/m、2〜6mJ/m、2〜5mJ/m3〜6mJ/m、3〜5mJ/m、またはこれらの終点のいずれかによって規定された任意の範囲であることができる。
【0025】
一般的に、具体的なカーボンブラックの配合量は、そのカーボンブラックを含む被膜の表面抵抗率に影響する。最初に、低い配合量ではカーボンブラックの量が増加しても、表面抵抗率は実質的に一定である。より高いレベルでは、充分なカーボンブラックが存在し、抵抗率における実質的な低下が生じる遷移が生じる。これは、多くの場合、浸透閾値(percolation threshold)とよばれる。カーボンブラックを超えてこの閾値を超えたレベルのカーボンブラックは、被膜の抵抗率にほとんど影響しない。多くのカーボンブラックは、類似の浸透性能を示す。従って、カーボンブラックのタイプに関わらず、カーボンブラック浸透曲線は、浸透点(すなわち、表面抵抗率が低下するカーボンブラックの配合量)が異なることを除いて、非常に類似している。図1は、同じ樹脂であるが、異なるカーボンブラックを用いて製造された2つの異なる被膜の浸透曲線を示す。浸透曲線は、カーボンブラックに共通で、比較的急勾配の遷移領域に繋がっている2つの相対的な高原を有する形を有する。
【0026】
幾つかの用途では、ターゲット表面抵抗率は、浸透曲線の最も急な点に位置する。実用的な観点からすると、この被膜の製造は、配合量における小さい変化が、観察される抵抗率に大きな効果を有するであろうので、カーボンブラックの配合量への厳しい管理を必要とするであろう。
【0027】
任意の特別な理論に拘束されないが、本発明の種々の態様において用いられる低ストラクチャーカーボンブラックは、カーボンブラックのより高い充填効率を可能にすると考えられている。より低ストラクチャーのカーボンブラックは、それらの充填された細孔容積の効果的な尺度であるDBP油吸収によって測定して、より高ストラクチャーのカーボンブラック粒子より、幾何学的により高い密度で充填できる。結果として、本発明のある態様において、予め選択された抵抗率が、曲線の最も急な部分から離れて生じることができるように、浸透曲線はシフトできる。従って、配合量における小さな変化は、抵抗率に大きな効果を有さない。
【0028】
カーボンブラック配合量を増加させる能力は、これらのおよび他の生成物を調製するのに使用されるトナー、インク、ブラックマトリックス、フォトレジスト、およびミルベース等の材料に他の利益を提供する。ミルベースおよびフォトレジストの性能は、カーボンブラックの含有量に依存する。カーボンブラックの濃度が高くなるにつれて、硬化可能性、展開可能性、パターン化可能性、およびガラスへの接着等の特性が影響される。多くの場合、これらの特性の1つは、被膜中に受け入れられるカーボンブラックの上限濃度を制約し、次いで膜の達成できる光学密度に上限を課す。本発明のある態様によって低ストラクチャーカーボンブラックを使用すると、ブラックマトリックスとしての性能に必要な特性のバランスを保ちながら、より高い配合量のカーボンブラックを有する膜の調製が可能になる。膜の光学密度は、そのカーボンブラック含有量に比例するので、最大の炭素配合量で調製されたこれらの膜が、従来のカーボンブラックで調製された膜より比較的高い光学密度を有するであろうことが予想される。
【0029】
さらに、より高濃度の低ストラクチャー、大きな表面積のカーボンブラックを用いて調製した分散体が、より高いストラクチャーまたはより小さな表面積のカーボンブラックを用いて調製された分散体より、比較的低い粘度を有することを、我々は予想外にも見いだした。これは、種々の装置の製造可能性を改善する。実際、これらの分散体が、より高いストラクチャーまたはより小さい表面積のカーボンブラックを有する分散体より、高い配合量でニュートン流量特性を有することを、我々は見いだした。低下した粘度は、最終の被膜における不規則性を低下させ、そして平滑性を高める被膜組成物の平準化を改善する。さらに、より薄い被膜がピンホールまたは他の欠陥のリスクなく堆積できる。
【0030】
同一ストラクチャーおよび表面積を有するが、より高いM比を有するカーボンブラックに対して、1.25未満のM比を有するカーボンブラックの使用が、カーボンブラックが取り込まれる材料の光学密度を高めることを、我々は予想外なことに見いだした。これは、所与の光学密度を得るのに使用されるカーボンブラックがより少ない量となることを可能にし、そうした材料を製造するために使用されるカーボンブラックを含むミルベースおよび他の流体媒体の粘度を低下させる。増加した色合いは、所望の光学密度を達成するためにキャリアー中で使用することが好ましいカーボンブラックの量を低下させる。
【0031】
中性のpH、または酸性のpHよりわずかに塩基性のpHを有するカーボンブラックは、ブラックマトリックス、被膜、ミルベース、インク、トナー、および他の媒体を製造するために使用できる、あるポリマーおよび他の材料とさらに相溶性であることができ、これらの用途のためのカーボンブラックを組み合わせることができる組成物の範囲を拡げる。さらに、そうしたカーボンブラックは、ブラックマトリックスの製造において典型的に用いられるアルカリ性の現像液、ブラックマトリックス、およびアルカリ性の現像液を用いた他の被膜と、酸性のカーボンブラックとは異なる相互作用をするであろう。
【0032】
より少ない量のアルカリ元素およびアルカリ土類元素を有するカーボンブラックは、それらが取り込まれる媒体に、より低い電気伝導率を示し、そして/またはより高い光学密度を示すことができる。
【0033】
より低いWSPは、より疎水性のカーボンブラックを表わす。低い水拡散圧力を有するカーボンブラック、例えば、さらに疎水性のカーボンブラックは、ブラックマトリックス、ミルベース、被膜、インク、トナー、および他の材料を製造ずるのに使用できる、あるポリマーおよび他の材料とさらに相溶性であることができ、これらの用途のためのカーボンブラックと組み合わせることができる組成物の範囲を拡げる。さらに、そうしたカーボンブラックは、ブラックマトリックスおよびレジスト被膜の生産において典型的に用いられるアルカリ性現像液と、さらに親水性のカーボンブラックとは異なる相互作用をするであろうし、そしてレジスト、ブラックマトリックス、およびアルカリ性の現像液を用いる他の被膜の開発特性を改善できる。
【0034】
ミルベース、分散体、硬化性被膜組成物、およびブラックマトリックス等の被膜が、比較的高いレベル、例えば、これらの本明細書中に記載された等の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも60%のカーボンブラックで調製できることを、我々は驚いたことに見いだした。これは、表面抵抗率、および光学密度等の改善されたバランスの電気特性を含む改善された全体的な特性を有する被膜およびブラックマトリックスの調製を可能にする。表面抵抗率は、電気伝導を妨げる材料の能力の尺度であり、そして、当該技術分野で知られている種々の技術を使用した測定であることができる。光学密度(OD)は、典型的には光学密度計(optical densitometer)を使用して測定される。ODは、膜の厚さを含む幾つかの因子に依存する。
【0035】
本明細書中に記載されたもの等のカーボンブラックは、ビヒクルおよび硬化性樹脂と組み合わせて、硬化性被膜組成物を生成することができる。硬化性被膜組成物は、例えば、高せん断混合の使用を含む、当業者に公知の任意の方法を使用して生成できる。さらに、組成物は、ミルベース等のビヒクル中のカーボンブラックの分散体を使用して調製できる。そうしたミルベースは、本明細書中に記載されたもの等のカーボンブラックを含む少なくとも20重量%、例えば、少なくとも30重量%のカーボンブラックを有することができる。ミルベースが、50重量%のカーボンブラックを含む場合、ミルベースは、ニュートン流体であることができる。好ましくは、カーボンブラック凝集体の形によって規定された空隙容積を実質的に満たすために、硬化被膜中に充分な樹脂がある。
【0036】
ビヒクルは、水性ビヒクルまたは非水性ビヒクルのいずれかであることができる。例は、1種または2種以上の、ブタノール(例えば、1種または2種以上の、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、およびイソブタノール)、2−ヘプタノン、ブチルアセテート、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、diエチレングリコール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ラクテートエステル、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合物を含む非水性ビヒクルを含む。例えば、水および水溶性アルコールを含む、水性溶媒をまた加えることができる。
【0037】
硬化性樹脂は、当該技術分野で知られている任意の樹脂であることができる。例えば、樹脂は、エポキシビスフェノールA樹脂またはエポキシノボラック樹脂であることができる。樹脂はまた、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、またはゼラチンであることができる。樹脂は、例えば、熱的または、例えば、赤外もしくは紫外線等の任意の照射源を含む種々の公知の方法のいずれかによって硬化できる。硬化性被膜組成物は、感光性(すなわち、照射によって硬化できる)または感熱性(すなわち、加熱によって等の、温度を変化させることによって硬化できる)であることができる。樹脂が照射により硬化性である場合、硬化性被膜組成物は、それぞれの顔料で光を吸収してラジカルを生成する、光開始剤をさらに含むことができる。
【0038】
硬化性被膜組成物またはミルベースは、最小の追加成分(添加物および/または共溶媒)および処理で生成できる。しかし、分散剤および共溶媒等の添加物をまた含むことができる。例えば、エポキシビスフェノールAまたはエポキシノボラック等の感光性樹脂が使用される場合、光開始剤をまた加えることができる。他の硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーをまた加えることができる。
【0039】
さらなる態様では、硬化性被膜は、硬化性被膜組成物から調製される。硬化性被膜は、硬化性樹脂および少なくとも1種のカーボンブラックを含むことができる。硬化性樹脂およびカーボンブラックは、上記でさらに詳細を記載したもののいずれかであることができる。硬化性被膜は、硬化被膜が硬化性被膜、または感熱性被膜を照射することによって加工できる、硬化被膜が硬化性被膜の熱処理によって加工される、感光性被膜であることができる。
【0040】
別の態様では、硬化被膜は、硬化性被膜組成物から調製される。硬化被膜は、樹脂、任意選択的分散剤、および本明細書中に記載されたもののいずれか等の少なくとも1種のカーボンブラックを含むことができる。被膜が、少なくとも60重量%のカーボンブラックを含む場合、表面電気抵抗率は、少なくとも1012Ω/□、例えば、1013Ω/□であることができる。被膜、例えば、ブラックマトリックスは、1μm厚さで、3以上、好ましくは4以上、およびさらに好ましくは、5以上、例えば、3.5〜10の光学密度をさらに有することができる。被膜は、被膜の用途によって、例えば、10〜100μm厚さを含むより厚い膜厚で、(抵抗率等の)類似の電気特性を有することができる。
【0041】
本発明はさらに、例えば、液晶ディスプレイ装置中のカラーフィルターに使用できるブラックマトリックスに関する。ブラックマトリックスは、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して形成できる。例えば、ブラックマトリックスは、基材の上へ第1のカーボンブラックを含む硬化性被膜組成物を適用する工程、生じた硬化性被膜を画像ごとに硬化させて、硬化被膜を製造する工程、および硬化被膜を現像し、そして乾燥させる工程によって形成できる。例えば、ブラックマトリックスは、本発明の硬化性被膜組成物、硬化性被膜、および/または硬化被膜から調製でき、そのそれぞれは、上記にさらに詳細を記載する。
【0042】
表面抵抗率および光学密度は、ブラックマトリックス材料のための重要な特性であり、そして詳細に上記に記載した。本発明のある態様によるブラックマトリックスは、本発明の硬化性被膜組成物から生成でき、本発明の硬化被膜を生成させるために使用され、ブラックマトリックスは、被膜との関係で上記の性能特性(表面抵抗率および光学密度)を有することができる。さらに、特に所望の全体的な性能属性を達成するために、特定のDBPを有するカーボンブラックを選択できる。
【0043】
上記の種々の媒体の性能は、種々の因子によるであろう。例えば、第1のカーボンブラックがさらなる表面改質に曝された場合でさえ、樹脂および第1のカーボンブラックを含む被膜が、高い抵抗率を保ちながら、より高い配合量のカーボンブラックで製造できることを、我々は驚いたことに見いだした。ある態様において、光学密度、カーボンブラックの配合量、表面抵抗率、平滑性、および他の性能要求を最適化することが望ましいことができる。
【0044】
本発明の種々の態様による被膜およびブラックマトリックスはまた、カーボンブラックのブレンドを使用して製造できる。例えば、カーボンブラックのブレンドは、異なる一次粒径を有する第1のカーボンブラックおよび第2のカーボンブラックを含むことができる。2つの粒径間の相違は、1nm〜25nm、例えば、5nm〜25nmであることができる。より小さい粒子は、より大きいカーボンブラック粒子間の隙間に適合できる。所与のサンプルのカーボンブラックでは、粒径が、特定の粒径辺りの粒径分布を実際に示すであろうことを、当業者は認識するであろう。別の態様では、異なる表面組成、表面積、ストラクチャーレベル、金属元素濃度、pH値、またはスペクトロニック 20の値を有するカーボンブラックを、混合できる。例えば、有機基を表面に結合させるために改質されていないか、または例えば、カーボンブラックのグラファイト含有量を増加させるために、酸化されたかもしくは熱処理に曝されたカーボンブラックは、そうした改質に曝されたカーボンブラックと混合できる。
【0045】
低ストラクチャーのカーボンブラックが、予め使用されたより、大きい表面積を有するが、より低量の第IA族および第IIA族金属元素を有して生成されることを可能にする処理条件を、我々は特定し、それによってカーボンブラック生成物中のこれらの金属の量を減少させる。一般的に、所与の表面積を有するカーボンブラックでは、ストラクチャーは、金属元素の添加によってある量に下げることだけが可能であり、その後は、さらなる金属元素の添加は、ストラクチャーにさらに影響しない。しかし、大表面積のカーボンブラックはいうまでもなく、中表面積のカーボンブラックで予め達成可能であったより、著しく低ストラクチャー、例えば、20cc/100g〜45cc/100gのフタル酸ジブチル吸収(DBP)値を有するカーボンブラックを、我々は製造した。例示的な装置および反応条件を下記および例に記載する。本発明の種々の態様による使用のためのカーボンブラックはまた、例えば、米国特許第5、456、750号明細書、米国特許第4、391、789号明細書;米国特許第4、636、375号明細書;米国特許第6、096、284号明細書;および米国特許第5、262、146号明細書に記載されたものを含む種々の他の装置を使用して製造できる。下記の反応条件をどのように適合させて、他の装置において本発明の種々の態様による使用のためのカーボンブラックを製造するかについて、当業者は理解するであろう。
【0046】
一態様では、カーボンブラックは、燃焼区画10を有し、燃焼区画10が、収束直径区画11、遷移区画12、入口区画18、および反応区画19を有する、図2に記載した等のモジュール式ファーネスカーボンブラック反応器2内で製造される。収束直径11の区画が始まる点までの燃焼区画10の直径は、D−1として示され;区画12の直径は、D−2として示され;階段状の入口区画18は、D−4、D−5、D−6、およびD−7として示され;そして区画19の直径は、D−3として示される。収束直径が始まる点11までの燃焼区画10の長さは、L−1として示され;収束直径の区画の長さは、L−2として示され;遷移区画の長さは、L−3として示され;そして反応器の入口区画18中の階段の長さは、L−4、L−5、L−6およびL−7として示される。
【0047】
カーボンブラックを製造するために、高温の燃焼ガスが、液体またはガス状燃料と、空気、酸素、空気と酸素との混合物またはその同類のもの等の好適な酸化剤流とを接触させることによって、燃焼区画10内で生成される。燃料の中で高温の燃焼ガスを生成させるために燃焼区画10中で酸化剤流と接触させる使用に好適なものは、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコール、またはケロシン等の容易に燃焼できる気体、蒸気または液体の流れのいずれかである。しかし、高含有量の炭素含有を成分有する燃料、そして特に、炭化水素を利用することが、一般的に好ましい。空気:本発明のカーボンブラックを生成させるために利用される天然ガスの体積比は、好ましくは、約10:1〜約100:1である。高温の燃焼ガスの生成を促進するために、酸化剤流は、予め加熱できる。いくつかの態様において、総燃焼比は、少なくとも26%、例えば、少なくとも30%または少なくとも35%である。
【0048】
高温の燃焼ガス流は、区画10および11から区画12、18、および19へと下流に流れる。高温の燃焼ガスの流れの方向を矢印によって図中に示した。カーボンブラック生成原料30を、(区画12中に位置する)点32、および/または(区画11中に位置する)点70で導入する。反応条件下で容易に揮発可能である、本明細書中でのカーボンブラックを与える炭化水素原料としての使用に好適なものは、アセチレン等の不飽和炭化水素;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族;ある飽和炭化水素;およびケロシン、ナフタレン、テルペン、エチレンタール、芳香族環原料およびその同類のもの等の他の炭化水素である。
【0049】
収束直径11の区画の終端から点32までの距離を、F−1として示す。一般的に、カーボンブラック生成原料30は、高温の燃焼ガス流の内部領域に浸透する複数の流れの形態で挿入され、原料をカーボンブラックに急速かつ完全に分解して転化するように、高い割合でのカーボンブラック生成原料の混合およびせん断を高温の燃焼ガスによって確かにする。
【0050】
補助炭化水素は、プローブ72を通って、またはカーボンブラックを生成する工程の区画12の境界を形成する壁の中の補助炭化水素通路75を通って、またはカーボンブラックを生成する工程の区画18および/または19の境界を形成する壁中の補助炭化水素通路76を通って、点70で導入される。「補助炭化水素」の用語は、本明細書中で使用される場合、水素、または原料における水素の炭素に対するモル比より大きい水素の炭素に対するモル比を有する任意の炭化水素をいい、そしてガスまたは液体であることができる。例示的な炭化水素は、燃料および/または原料としての使用に好適として本明細書中に記載されたこれらの材料を含むが、これらに限られない。本発明のある態様において、補助炭化水素は、天然ガスである。未反応の補助炭化水素が最終的に反応区画に入るという条件で、補助炭化水素は、第1のステージ燃料の初期燃焼反応のすぐ後の点と、カーボンブラックの生成が終わるすぐ後の点の間の任意の場所に、導入できる。ある好ましい態様では、補助炭化水素は、原料と同じ軸平面に導入される。下記の例では、補助炭化水素は、カーボンブラック生成原料流れと同じ軸平面内の3つのオリフィスを通して導入された。オリフィスは、好ましくは、1つは原料、次は補助炭化水素等で、区画12の外周の周りに均一な間隔で、交互パターンで並べられている。補助炭化水素の炭素含有量が反応器に注入される全ての燃料流の全炭素含有量の約20重量%未満、例えば、約1〜約5%、約5%〜約10%、約10%〜約15%、約15%〜約20%、またはこれらの終点のいずれかによって規定された任意の範囲であるように、反応器に加えられる補助炭化水素の量を調整できる。ある好ましい態様では、補助炭化水素の炭素含有量は、反応器に注入される全ての燃料流の全炭素含有量の約3%〜約6重量%である。
【0051】
点32から点70までの距離をH−1として示す。
【0052】
いくつかの態様において、アルカリ材料またはアルカリ土類材料の生じたカーボンブラックにおける全濃度が低い量で、特定のアルカリ材料またはアルカリ土類材料を、ストラクチャー改質剤としてカーボンブラックに加える。好ましくは、物質は、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、もしくはラジウム、またはこれらの2種または3種以上の任意の組み合わせを含む。この物質は、固溶体、分散体、気体、またはそれらいずれかの組み合わせであることができる。同じであるか異なる第IA族または第IIA族元素を有する1超の物質を使用できる。複数の物質が使用される場合、物質は、共に、別々に、連続して、または異なる反応場所に加えることができる。本発明の目的のためには、物質は、金属(または金属イオン)それ自身、これらの元素の1種または2種以上を含有する塩を含む、これらの元素の1種または2種以上を含有する化合物、およびその同類のものであることができる。例示的な塩は、有機塩および無機塩の両者、例えば、例えば、ナトリウムおよび/もしくはカリウムと、塩化物、酢酸、ギ酸との塩、または2種もしくは3種以上のそうした塩の組み合わせを含む。好ましくは、この物質は、金属または金属イオンを、カーボンブラック生成物を生成している反応に導入できる。例えば、この物質は、完全なクエンチングの前の、第1のステージにおけるカーボンブラック生成原料の導入の前;第1のステージにおけるカーボンブラック生成原料の導入の間;第1のステージにおけるカーボンブラック生成原料の導入の後;補助炭化水素の導入の前、間、もしくは直後;またはクエンチングを完了する前の任意の工程を含む任意の点で加えることができる。物質を導入する1超の点を使用できる。低い量のカーボンブラック生成物が生成できる限り、金属含有物質の量は任意の量であることができる。上記の様に、全量で第IA族および/または第IIA族元素(すなわち、カーボンブラックに含まれる第IA族および第IIA族元素の全濃度)が、最大でも
y+15×I
(式中、yは、250、100、−50、−200、または−350であることができる。)μg/gであるような量で、この量の物質を加えることができる。ある態様において、この物質は、第IA族元素を導入し;例えば、この物質は、カリウムまたはカリウムイオンを導入できる。この物質は、任意の従来手段を含む任意の様式で加えることができる。言い換えれば、カーボンブラック生成原料が導入されるのと同じ様式で、この物質を加えることができる。この物質は、気体、液体、もしくは固体、またはそれらいずれかの組み合わせとして加えることができる。この物質は、1つの点または幾つかの点で加えることができ、そして単一の流れまたは複数の流れとして加えることができる。この物質は、それらの導入の前および/または間に、原料、燃料および/または酸化剤と混合できる。
【0053】
ある態様において、少なくとも1種の第IA族または第IIA族元素を含有する物質が、原料への塩溶液の取り込みによって、原料に導入される。ある好ましい態様では、原料中ですべてのアルカリ金属および/またはアルカリ金属イオンの濃度が約0〜約1重量%であるように、塩溶液は、原料と混合される。燃焼により、金属イオンは、カーボンブラック中に取り込まれることができる。任意の特別な理論に拘束されることなく、金属イオンの電荷が個々のカーボンブラック粒子間での反発力を提供すると考えられている。この反発力は、粒子が凝集しないようにし、従ってカーボンブラックの全体的なストラクチャーを低下させることができる。
【0054】
カーボンブラック生成原料と高温の燃焼ガス流との混合物は、区画12を通って区画18へ、そして次に区画19へと流れる。水であることができるクエンチング流体50を注入する点62に位置するクエンチ60は、カーボンブラックが生成される場合に、化学反応を停止させるために利用される。点62は、熱分解を停止させるために、クエンチする位置を選択するために、当該技術で公知の任意の方法で決定できる。熱分解を停止させるために急冷する位置を決定するための一つの方法は、カーボンブラックで受け入れられるスペクトロニック 20の値に達した点で決定することによる。Qは区画18の始めからクエンチ点62までの距離であり、そしてQはクエンチ60の位置によって変化する。いくつかの態様において、クエンチングの間にカーボンブラックに加えられるさらなる金属および他の元素の量を最小化するために、逆浸透水は、クエンチング流体として使用される。
【0055】
高温の燃焼ガスとカーボンブラック生成原料との混合物が急冷された後で、冷却されたガスは、カーボンブラックを回収する任意の従来の冷却および分離手段に下流へと通される。ガス流からのカーボンブラックの分離は、集塵装置、サイクロン分離器またはバグフィルター等の従来の手段によって容易に達成される。この分離に続き、例えば、湿式ペレタイザーを使用したペレット化を行うことが1できる。
【0056】
炉内では、バーナー中の天然ガスの割合、原料の割合、カリウム濃度、および補助炭化水素の割合、および所望の特性を達成する場所を同時に調整することによって、カーボンブラックの具体的なヨード数およびDBPを制御する。バーナー中の天然ガスの割合を増加させ、原料の割合を減少させ、金属塩の濃度を増加させ、そして/または補助炭化水素の割合を減少させることによって、このヨード数を増加できる。バーナー中の天然ガスの割合を増加させ、(他の因子によるが)原料の割合を増加させるか、もしくは減少させ、金属塩の濃度を減少させ、そして/または補助炭化水素の割合を減少させることによって、DBPは増加できる。例えば、補助炭化水素が反応器中の全炭素含有量の8%または10%超を提供するように、補助炭化水素が増加する場合、生じるカーボンブラックの表面積を維持するか、または増加させるために、反応器中の原料の量を減少させることが望ましいことができる。これらの条件下では、より少ない量のアルカリ材料またはアルカリ土類材料を有する低ストラクチャーをまた達成できる。本明細書中に記載された変数はまた、色合い、スペクトロニック 20値、pH、M比、および残留金属含有量等のカーボンブラックの他の特徴に影響する。所望の特性を有するカーボンブラックを作るために必要なそれぞれの変数の正確なレベルは、反応器の形状および反応器へのそれぞれの種の注入方法に依存する。例を、下記でさらに詳細に記載する。
【0057】
原料中のアルカリ元素および/またはアルカリ土類元素の具体的な濃度、ならびに種々の燃焼区画のための具体的な直径および長さと組み合わせた、減少した注入オリフィス直径、増加した供給速度、およびカーボンブラック生成原料と同じ軸平面内の補助ガスの注入を含む補助ガスを導入するためのある条件が、低ストラクチャーおよび大表面積の両者を有するカーボンブラックの製造を可能にすることを、我々は予想外にも見いだした。このカーボンブラックはまた、用いた反応条件から期待したよりも疎水性であった。ストラクチャーのレベルは、アルカリまたはアルカリ土類の添加または補助炭化水素単独での使用を通して達成できるものより著しく低かった。さらに、カーボンブラックは、中間または大表面積のカーボンブラック、例えば、30〜200m/gで予め達成可能であったものより著しく低い、例えば、20cc/100g〜45cc/100gのストラクチャーを有する。カーボンブラック中におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の量は、中表面積から大表面積を有する低ストラクチャーカーボンブラックで通常見いだされるものより低い。生じたカーボンブラックは、分散を促進するより低いDBPを有し、そしてカーボンブラックが表面積の減少なく製造を容易にするために取り込まれる媒体の粘度を低下させ、これは、カーボンブラックから製造された装置中での光学密度を低下できる。さらに、低レベルのアルカリ材料およびアルカリ土類材料は、抵抗率を犠牲にすることなく電子装置で用いられる低DBPのカーボンブラックをさらに可能にする。これらのカーボンブラックによって示される増加した色合いは、所望の光学密度を達成するためにキャリアー中で使用されることが好ましいカーボンブラックの量を低下させる。
【0058】
いくつかの態様において、カーボンブラックは、表面に有機基を結合させるために改質され、酸化され、または熱処理に曝されることができる。カーボンブラックは、カーボンブラックのグラファイト含有量を増加させるために、不活性雰囲気中で熱処理できる。熱処理の時間および温度が所望の量の黒鉛化を達成するために、調整できることを、当業者は認識するであろう。
【0059】
酸化されたカーボンブラックは、表面に極性、イオン性、および/またはイオン化可能基を導入するために、酸化剤を使用して酸化できる。このように調製されたカーボンブラックは、表面上により高い度合いの酸素含有基を有することが見いだされた。酸化剤は、酸素ガス、オゾン、(NOと空気との混合物を含む)NO、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、または過硫酸アンモニウムを含む過硫酸塩等の過酸化物、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜ハロゲン酸塩、(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、または過塩素酸ナトリウム等の)ハライト、ハレート、またはパーハレート、硝酸等の酸化性酸、および過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム等の遷移金属含有酸化剤、または硝酸セリウムアンモニウムを含むがこれらに限られない。酸化剤の混合物、特に酸素およびオゾン等のガス状酸化剤の混合物をまた使用できる。さらに、顔料表面上にイオン性基またはイオン化可能基を導入するために、塩素化およびスルホニル化等の他の表面改質方法を使用した調製したカーボンブラックを使用できる。
【0060】
改質されたカーボンブラックは、有機化学基がカーボンブラックに結合するように、当業者に公知の方法を使用して調製できる。例えば、改質されたカーボンブラックは、米国特許第5、554、739号明細書、米国特許第5、707、432号明細書、米国特許第5、837、045号明細書、米国特許第5、851、280号明細書、米国特許第5、885、335号明細書、米国特許第5、895、522号明細書、米国特許第5、900、029号明細書、米国特許第5、922、118号明細書、および米国特許第6、042、643号明細書、および国際公開第99/23174号パンフレット(その記載を参照により本明細書中に全て取り込む。)に記載された方法を使用して調製できる。そうした方法は、例えば、ポリマーおよび/または界面活性剤を使用する分散剤タイプの方法に比較して、カーボンブラック上で、基のさらに安定な結合を提供する。改質されたカーボンブラックを調製するための他の方法は、有用な官能基を有するカーボンブラックと、例えば、米国特許第6、723、783号明細書(参照によりその全てを本明細書中に取り込む。)に記載された等の有機基を含む試薬とを反応させることを含む。そうした官能性カーボンブラックは、上記で取り込んだ参照文献を使用して調製できる。結合した官能基を含有するさらに改質されたカーボンブラックはまた、米国特許第6、831、194号明細書および米国特許第6、660、075号明細書、米国特許出願公開第2003−0101901号明細書および米国特許出願公開第2001−0036994号明細書、カナダ国特許第2、351、162号明細書、欧州特許第1394221号明細書、および国際公開第04/63289号パンフレット、ならびにN.Tsubokawa、Polym.Sci.、17、417、1992(そのそれぞれを、参照によりその全てを本明細書中に取り込む。)に記載された方法によって調製できる。
【0061】
カーボンブラックの分析的および物理的特性を評価するために、以下の試験手順を使用する。カーボンブラックのヨード吸着数(I数)を、ASTM試験手順 D−1510−08によって決定した。カーボンブラックの着色(Tint)強度をASTM試験手順 D3265−07により決定した。カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル値)をASTM D2414−08に記述されている手順により決定した。窒素表面積およびSTSA表面積をASTM D6556−07により測定した。灰(ash)含有量を、ASTM D1506−99により測定した。水中に知られた量のカーボンブラックを分散させ、そしてpHプローブ(ASTM D1512−05)を使用して水相のpHを測定することによってpHを測定した。スペクトロニック 20をASTM D1618−99により測定した。NaおよびK含有量を、誘導結合プラズマ(ICP)分析を介して測定した。
【0062】
図3に示すように、および米国特許第5、456、750号明細書に記載されたように、メジアンおよびモードストークス直径を、カーボンブラックの重量分率のヒストグラム対カーボンブラック凝集体のストークス直径から決定した。つまり、ヒストグラムを生成するために使用されたデータを、Joyce Loebl Co.Ltd.of Tyne and Wear、United Kingdomによって製造したもの等のディスク型遠心分離機の使用によって決定した。
【0063】
以下の手順は、1985年2月1日に出版されたJoyce Loebl ディスク型遠心分離機 参照ファイルDCF4.008の取扱説明書(その教示を参照により本明細書中に取り込む。)に記載された手順の改変であり、そしてデータを決定するために使用した。10mg(ミリグラム)のカーボンブラックサンプルを計量容器中で秤量し、次に0.05%のNONIDET(商標)P−40界面活性剤(NONIDET(商標)P−40:Shell Chemical Co.によって製造され、そして販売された界面活性剤の登録商標である。)で製造した10%の無水エタノールと90%の蒸留水の溶液50ccに加える。Heat Systems Ultrasonics Inc.、Farmingdale、N.Y.によって製造販売されているSonifier モデル No.W385を使用して、15分間超音波エネルギーによって、生じた懸濁液を分散させた。
【0064】
ディスク型遠心分離機を動かす前に、ディスク型遠心分離機からのデータを記録するコンピューターに以下のデータを入力した:
【0065】
1、1.86g/ccと考えられるカーボンブラックの比重;
【0066】
2、水およびエタノールの溶液中に分散したカーボンブラック溶液の体積、この例では0.5ccである;
【0067】
3、スピン流体の体積、この例では10ccの水である;
【0068】
4、スピン流体の粘度、この例では、23℃で、0.933センチポイズと考えられる;
【0069】
5、スピン流体の密度、この例では23℃で0.9975g/ccである;
【0070】
6、ディスク速度、この例では、8000回転/分である;
【0071】
7、データサンプリング間隔、この例では、1秒である。ストロボスコープが運転されている間は、ディスク型遠心分離機は、8000回転/分で運転される。10ccの蒸留水をスピン流体として回転盤に注入する。濁りレベルを0に設定し;そして10%無水エタノールおよび90%蒸留水の1cc溶液をバッファー液体として注入する。次に、ディスク型遠心分離機のカットアンドブースト(cut and boost)ボタンを開いて、スピン流体とバッファー液体との間の滑らかな濃度勾配を生成し、そして勾配を視覚的にモニターした。2つの流体の間に目立った境界が無いように勾配が滑らかになった場合に、0.5ccの水性エタノール溶液中に分散させたカーボンブラックを、スピンディスク中に注入し、そしてデータ収集を直ちに始めた。ストリーミング(streaming)が生じた場合は、運転を停止させた。水性エタノール溶液中に分散したカーボンブラックの注入に続き、ディスクを20分間回転させた。20分の回転に続き、ディスクを停止させて、スピン流体の温度を測定し、そして、運転の始めに測定したスピン流体の温度および運転の終わりに測定したスピン流体の温度の平均を、ディスク型遠心分離機からのデータを記録するコンピューターに入力した。データを標準のストークス式に従って分析し、そして以下の定義を使用して示した。
【0072】
カーボンブラック分散体:最も小さい分散単位である、離散した、剛体のコロイド実体、大規模集合になった粒子からなる。
【0073】
ストークス直径:遠心または重力場において、粘性のある媒体中でストークスの式によって沈降する球の直径。物体として同じ密度および沈降速度の滑らかな剛体球として挙動すると考えられる場合、カーボンブラック凝集体等の非球状物体はまた、ストークス直径で表わすことができる。伝統的な単位は、ナノメートル直径で表わされる。
【0074】
モード(報告目的ではDmode);ストークス直径の分布曲線のピーク(本明細書中では図3の点A)の点におけるストークス直径。
【0075】
メジアンストークス直径(報告目的では、Dst):サンプルの50重量%がより大きいかまたはより小さいかのいずれかであるストークス直径の分布曲線上の点。したがって、メジアンストークスは、測定のメジアン値を表わす。
【0076】
水拡散圧力は、制御された雰囲気から水を吸収するにつれた、サンプルの質量の増加を観察することによって測定される。試験において、サンプルの周囲雰囲気の相対湿度(RH)を、0%(純粋な窒素)から100%(水で飽和した窒素)に増加させた。サンプルおよび雰囲気が常に平衡にある場合、サンプルの水拡散圧力(π)は:
【数1】

(式中、Rは、ガス定数であり、Tは温度であり、Aはサンプルの窒素表面積であり、Fは(モル/gmに変換された)サンプル上の吸着水の量であり、Pは雰囲気中での水の分圧であり、そしてPoは、雰囲気中の飽和蒸気圧である。)と規定される。実際には、表面上の水の平衡吸着は、1つのまたは(好ましくは)幾つかの個々の分圧で測定し、そして曲線の下の面積によって全体を見積もる。
【0077】
水拡散圧力を測定するために以下の手順を使用できる。分析の前に、分析する100mgのカーボンブラックを、125℃のオーブンで30分間乾燥させる。(SMS Instrumentss、Monarch Beach、Californiaによって供給された)表面測定システムDVSl装置中の低温器が25℃で2時間安定であったことを確かにした後で、サンプルカップをサンプルチャンバーおよび参照チャンバーの両方に搭載する。ターゲットRHを0%、10分に設定して、カップを乾燥させ、そして安定な質量ベースラインを確立する。静的なバランスを取って風袋の重さを量った後で、約8mgのカーボンブラックを、サンプルチャンバー中のカップに加えた。サンプルチャンバーを閉じた後で、サンプルを0%RHで平衡させた。平衡後に、サンプルの初期の質量を記録した。次に、系をそれぞれのRHレベルで20分間平衡にさせて、窒素雰囲気の相対湿度を連続して約5、10、20、30、40、50、60、70、78、87、および92%RHのレベルに増加させた。それぞれの湿度レベルで水吸着の質量を記録し、それから水拡散圧力を上記の式を用いて計算した。
【0078】
本発明は、本来例示的のみであることを目的とする以下の例によって、さらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0079】
カーボンブラックの調製
表2に記述されている反応器の条件および配置を利用して、カーボンブラックを上記の様に、そして図2に示した反応器中で調製した。天然ガスを燃焼反応用燃料および補助炭化水素の両者として用いた。酢酸カリウムの水溶液をアルカリ金属含有材料として使用し、そして反応器中に注入する前に原料と混合した。反応逆浸透によって精製した水でクエンチした。この液体原料は、下記の表1に記載した特性を有した。
表1:原料の特性
【表1】

【表2】

*原料および補助炭化水素オリフィスを、反応器の外周の周りに交互の順序で同じ軸平面内に並べた。HC=炭化水素
**nmは、標準立方メートルをいい、こここで「標準」は、0℃および1気圧の圧力に修正したガスの体積をいう。
***一次燃焼は、バーナー中の天然ガスと反応するのに化学量論的に必要な酸素の全量と比較して、反応器に加えられた酸素のパーセンテージと規定される。
****総燃焼は、反応器に加えられた全ての燃料流と反応するのに化学量論的に必要な酸素の全量と比較した反応器に加えられた酸素のパーセンテージと規定される。
【0080】
カーボンブラックの特徴
例1で製造したカーボンブラックの種々の特性を本明細書中の他の箇所に記載したように測定した。30mLの水中に3gの材料を分散させ、15分間沸騰し、室温に冷却し、そしてpHプローブを用いて水相のpHを測定することによって、pH値を決定した(ASTM D1512−05)。下の表3に示すように、カーボンブラックは、低ストラクチャー、高純度(低い抽出可能性および低[K])、中性〜やや塩基性のpH、および低WSP(例えば、カーボンブラックは疎水性である。)を示した。
【表3】

*メジアンストークス直径
表3
【0081】
ミルベースの調製
例Aのカーボンブラックおよび下の表4に記載した特徴を有する市販されているカーボンブラックを、下の表5に記載した組成物を用いてミルベースを調製するために使用した。
表4:比較例のカーボンブラックの分析特性
【表4】

*メジアンストークス直径
表5
【表5】

【0082】
Solsperse 32500(商標)は、Noveonから市販されているポリマー分散剤であり、そしてPGMEAは、Sigma−Aldrichから入手可能であるプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである。
【0083】
Skandex lab shakerを使用して、成分を4時間粉砕した。ミルベース中の顔料の平均体積粒径を測定し、そして標準カーボンブラックの凝集サイズと、同程度であることを見いだした。
【0084】
レットダウン(Letdowns)の調製
溶媒なしの基準で50重量%のカーボンブラックを含む被膜組成物を調製するために、(Johnson Polymersから市販されている)Joncryl(商標)611のPGMEA中20重量%溶液を用いて、上記のミルベースのそれぞれをレットダウンした。
【0085】
被膜の調製
被膜を生成させるために、上記の被膜組成物をガラスウェハー上にスピンコートし、そしてこれらの被膜の特性を測定した。X−Rite 361T Transmission Densitometerを使用して光学密度を測定し、そしてKLA Tencor Α Step 500 Surface Profilometerを使用して厚さを測定した。Keithley Model 6517 Electrometer /High Resistance Meterを使用して被膜の表面抵抗率を測定した。それぞれの被膜の性能特性を下の表6に示す。
表6
【表6】

【0086】
これらの例は、効果性でない樹脂を使用したが、感光性樹脂または感熱性樹脂等の硬化性樹脂が使用される場合、類似の性能となることが予想された。したがって、これらの被膜は、ブラックマトリックスとして使用できるであろう。
【0087】
粘度
例Aおよび比較例C1のカーボンブラックを、PGMEA中で10〜50重量%のカーボンブラックを用いて、ミルベースを調製するために使用した。ミルベースはまた、分散剤(Solsperse(商標) 32500)を含んでいた。分散剤とカーボンブラックとの間の比を0.2に固定した。Skandex lab shakerを使用して成分を4時間粉砕した。ミルベース中での顔料の平均体積粒径を測定し、そして標準カーボンブラックの凝集体のサイズと同程度であること見いだした。
【0088】
キュベットジェオメトリー(cuvette geometry)およびAR−G2(TA Instruments)レオメーターを使用して、ミルベース調合物の粘度測定を行った。
【0089】
ミルベース分散体は、ニュートン流体であった。50%の配合量でカーボンブラックC1を有する分散体は、非ニュートン挙動を示し、一方、カーボンブラックAを有する分散体は、研究したカーボンブラックの濃度の全範囲でニュートン流体であった。低DBPカーボンブラックの重要な利点は、特に、より高いカーボンブラック配合量における、著しく低い粘度(図4を参照のこと)であり、(例えば、スピンコーティングによる)加工、および膜特性(例えば、低粘度被膜のより良い平準化から生じる膜の平滑性)に有益である。
【0090】
浸透曲線
例Aおよび比較例C1のカーボンブラックを使用して、上記の手順に従って、そして溶媒なしの基準で40重量%、50重量%、60重量%、70重量%のカーボンブラックを有するミルベース、レットダウン、および被膜を調製した。被膜の表面抵抗率を上記のように測定し、そして図3中に具体的に説明した。図3は、より低いストラクチャーのカーボンブラックを使用すると、より低い抵抗率または配合量レベルに対して高感度の表面抵抗率を作ることのいずれもなく、配合量のレベルを増加できたことを示す。
【0091】
本発明の好ましい態様の先の記載は、具体的な説明および記載の目的のために提供された。本発明を開示された正確な形態に減耗させ、または制限することを目的としない。上記の教示に照らして改質および変化が可能であり、または本発明の実施から得ることができる。本発明の原理を説明するため、および当業者が本発明の種々の態様において、および熟考された特別な用途に合うように種々改変して利用できるために、その実際的な用途を説明するために、態様が選択され、そして記載された。本発明の範囲が付属の請求項およびそれらの均等によって規定されることを意図する。
【0092】
請求の範囲は次のようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックス、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。
【請求項2】
該第1のカーボンブラックが、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比を有すること、
該カーボンブラックが6〜10のpHを有すること、
該カーボンブラックが最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1のブラックマトリックス。
【請求項3】
少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックス、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有する。
【請求項4】
該第1のカーボンブラックが、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比を有すること、
該カーボンブラックが6〜10のpHを有すること、
該カーボンブラックが最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項3のブラックマトリックス。
【請求項5】
少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックス、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および6〜10のpHを有する。
【請求項6】
該カーボンブラックが、
最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有すること、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比、最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項5のブラックマトリックス。
【請求項7】
少なくとも第1のカーボンブラックを含むブラックマトリックス、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および1〜1.25未満のM比を有する。
【請求項8】
該カーボンブラックが、
該カーボンブラックが最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有すること、または、
該カーボンブラックが6〜10のpH、最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項7のブラックマトリックス。
【請求項9】
該カーボンブラックが、式:色合い=x+0.44×1数(式中、xは45〜90である。)に従う色合いを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項10】
該ブラックマトリックスが、少なくとも50重量%のカーボンブラックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項11】
該ブラックマトリックスが、少なくとも55重量%のカーボンブラックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項12】
該ブラックマトリックスが、50%〜80重量%のカーボンブラックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項13】
該ブラックマトリックスが、55%〜80重量%のカーボンブラックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項14】
該ブラックマトリックスが、60%〜80重量%のカーボンブラックを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項15】
該ブラックマトリックスが、1ミクロンの厚さで、少なくとも3の光学密度を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項16】
該ブラックマトリックスが、1ミクロンの厚さで、少なくとも4の光学密度を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項17】
該ブラックマトリックスが、少なくとも60%のカーボン配合量で、少なくとも1012Ω/□の表面抵抗率を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項18】
該ブラックマトリックスが、第2のカーボンブラックを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のブラックマトリックス。
【請求項19】
該第2のカーボンブラックが、表面積、ストラクチャー、一次粒径、アルカリ濃度および/もしくはアルカリ土類濃度、pH、スペクトロニック 20値、色合い、または酸素含有基の表面濃度の1種または2種以上において、該第1のカーボンブラックと異なる、請求項18のブラックマトリックス。
【請求項20】
該第2のカーボンブラックが、酸化されたカーボンブラック、熱処理されたカーボンブラック、または結合した有機基を含む修飾されたカーボンブラックである、請求項18または請求項19のブラックマトリックス。
【請求項21】
ビヒクル、硬化性樹脂、および少なくとも第1のカーボンブラックを含む、硬化性被膜組成物、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。
【請求項22】
該第1のカーボンブラックが、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比を有すること、
該カーボンブラックが6〜10のpHを有すること、
該カーボンブラックが最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項21のブラックマトリックス。
【請求項23】
該カーボンブラックが、式:色合い=x+0.44×1数(式中、xは45〜90である。)に従う色合いを有する、請求項21の硬化性被膜組成物。
【請求項24】
樹脂、任意選択的分散剤、および少なくとも第1のカーボンブラックを含む、被膜、該第1のカーボンブラックは、25mg/g〜200mg/gのI数、20cc/100g〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。
【請求項25】
該被膜が60重量%のカーボンブラックを含む場合、該被膜が少なくとも1012Ω/□の表面電気の抵抗率を有する、請求項24の被膜。
【請求項26】
該第1のカーボンブラックが、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比を有すること、
該カーボンブラックが6〜10のpHを有すること、
該カーボンブラックが最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項24の被膜。
【請求項27】
該カーボンブラックが、式:色合い=x+0.44×1数(式中、xは45〜90である。)に従う色合いを有する、請求項24の被膜。
【請求項28】
第1のカーボンブラックを含む少なくとも20重量%のカーボンブラック、ビヒクル、および任意選択的分散剤を含む、ミルベース、該第1のカーボンブラックは、30mg/g〜200mg/gのI数、20〜45cc/100gのDBP、および最大でもy+(15×1数)(式中、yは250である。)μg/gの濃度の第IA族および第IIA族元素を有する。
【請求項29】
該第1のカーボンブラックが、
該カーボンブラックが1〜1.25未満のM比を有すること、
該カーボンブラックが6〜10のpHを有すること、
該カーボンブラックが最大でも6mJ/mの水拡散圧力を有すること、または、
該カーボンブラックが少なくとも80の色合いを有すること、
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項28のミルベース。
【請求項30】
該カーボンブラックが、式:色合い=x+0.44×1数(式中、xは45〜90である。)に従う色合いを有する、請求項28のミルベース。
【請求項31】
該ミルベースが50重量%のカーボンブラックを用いて調製されている場合、該ミルベースが、ニュートン流体である、請求項28のミルベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525142(P2010−525142A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506234(P2010−506234)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005201
【国際公開番号】WO2008/133887
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】