説明

低フィッシュアイ・ポリアセタール樹脂の製造方法

【課題】紡糸性に優れ、フィルムやシートに成形した場合の光学ムラ等も少ない成形性に優れたポリアセタール樹脂の提供。
【解決手段】重合後の不安定末端部分を有する粗ポリアセタール樹脂を加熱溶融処理して安定化するポリアセタール樹脂の製造方法において、加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲であることを特徴とするポリアセタール樹脂の製造方法。Z>−0.0227X+1.29Y−201(1)、Z≧1,Y≦X≦260(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシュアイ等の異物が少なく、押出成形性、製品外観性などに優れたポリアセタール樹脂(以下、低フィッシュアイ・ポリアセタール樹脂ともいう。)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び成形性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、その他の精密機械部品、建材・配管部材、生活・化粧用部品、医用部品などの分野において広く利用されている。また、用途の拡大及び多様化に伴って、ポリアセタール樹脂を押出成形用の材料として利用することに大きな期待が寄せられている。
【0003】
ポリアセタール樹脂を溶融紡糸して繊維としたものは種々提案されており、例えば、使用するポリアセタール樹脂の結晶化速度等を制御し、溶融紡糸において吐出ノズルから吐出される繊維状物を制御された温度雰囲気下で加熱することにより、高強度高弾性率のポリアセタール繊維を得る方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、ポリアセタール樹脂をフィルムとして製造する方法としては、例えば、溶融押出されたポリアセタール樹脂をスリット状のダイスより膜状に流出させ、ローラーで圧延させた後、急冷してポリアセタールフイルムを得る方法が開示されている(特許文献2参照)。また、押出機に付設した環状のダイスより溶融したポリアセタールのチューブを押出し、ダイスの直径に近い状態で該チューブを移送し、次いで膨張変形させてポリアセタールフィルムを得る方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、上記した製造方法には、細繊化に関する記載やフィルムの製品外観に関する記載がなく、押出成形性、製品外観性に優れたポリアセタール繊維およびフイルムの製造方法は提案されていなかった。
【特許文献1】特開2003−089925号公報
【特許文献2】特開昭48−12878号公報
【特許文献3】特開昭64−26423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紡糸性に優れ、フィルムやシートに成形した場合の光学ムラ等も少ない成形性に優れたポリアセタール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、粗ポリアセタール樹脂を公知の方法で加熱溶融処理する際の溶融状態が不十分であると、繊維やフィルムに加工した際にフィッシュアイとして影響を及ぼすことを突き止め、ポリアセタール樹脂中の異物であるフィッシュアイの個数を低減することにより、押出成形性、製品外観性の改善されたポリアセタール樹脂を製造することが可能となった。すなわち、本発明は以下に示すポリアセタール樹脂の製造方法に関する。
【0008】
(1)重合後の不安定末端部分を有する粗ポリアセタール樹脂を加熱溶融処理して安定化するポリアセタール樹脂の製造方法において、
加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲であることを特徴とするポリアセタール樹脂の製造方法。
Z>−0.0227X+1.29Y−201 (1)
Z≧1,Y≦X≦260 (2)
(2)加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲であることを特徴とする(1)記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
Z>−0.0801X+0.792Y−97 (3)
Z≧1,Y≦X≦260 (4)
(3)ポリアセタール樹脂が、トリオキサン100重量部に対し0.2〜30.0重量部の1種種以上のコモノマーを共重合したものである(1)又は(2)に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により、ポリアセタール樹脂中の異物であるフィッシュアイの個数を低減し、押出成形性、製品外観性の改善されたポリアセタール樹脂を製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−0CH)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー又はポリオキシメチレン、オキシメチレン単位以外に、他のコモノマー単位を少なくとも一種含有するポリアセタールコポリマーなどが代表的な樹脂である。
さらに、ポリアセタール樹脂には、慣用のポリアセタール樹脂、例えば、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入された共重合体、更には、オキシメチレン基の繰返しを構成単位として有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0011】
コポリーマーの製造に用いるコモノマーとしては環状ホルマールやエーテルが用いられる。例えば、1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−ブチルー1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニルー2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−ブチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキカビシクロ[3,4,0]ノナン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、およびオキセパン等が挙げられる。これらの中でも1,3ージオキソランが特に好ましい。
【0012】
コモノマーの添加量は、トリオキサン100重量部に対して0.2〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜20重量部である。コモノマーの使用量がこれより多い場合は重合収率が低下し、少ない場合は熱安定性が低下する。
【0013】
本発明の重合触媒としては、一般のカチオン活性触媒が用いられる。このようなカチオン
活性触媒としては、(1)ルイス酸、特にホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモン等のハロゲン化物、例えば三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素および五フッ化アンチモン、およびその錯化合物または塩の如き化合物、(2)プロトン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸、プロトン酸のエステル、殊にパークロル酸と低級脂肪族アルコールとのエステル、プロトン酸の無水物、特にパークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物、あるいはトリエチルオキソニウムへキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルヘキサフルオロアルゼナート、アセチルへキサフルオロボラート、ヘテロポリ酸またはその酸性塩、イソポリ酸またはその酸性塩などが挙げられる。特に三フッ化ホウ素を含む化合物、あるいは三フッ化ホウ素水和物および配位錯体化合物が好適であり、エーテル類との配位錯体である三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートは特に好ましい。
【0014】
前記触媒の使用量は、トリオキサン1モルに対して、通常1×10−7〜1×10−3モルであり、好ましくは1×10−7〜1×10−4モルである。触媒の使用量が1×10−3モルより多いと熱安定性が低下し、1×10−7より少ないと重合収率が低下する。
【0015】
ポリアセタール樹脂の分子量調節のために、必要に応じて適当な分子量調節剤を用いても良い。分子量調節剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、アミド、イミド、フェノール類、アセタール化合物などが挙げられる。特にフェノール、2,6−ジメチルフェノール、メチラール、ポリアセタールジメトキシドは好適に用いられ、最も好ましいのはメチラールである。分子量調節剤は単独あるいは溶液の形で使用される。溶液で使用する場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。一般に、これら分子量調整剤は目標とする分子量に応じて、モノマーに対して0〜1.0重量部の範囲で添加量が調整される。これら分子量調節剤は、通常、トリオキサンとコモノマーの混合原料液に供給される。添加位置に特に制限はないが、カチオン活性触媒を該混合原料液に供給する前に供給するのが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる連続式重合装置としては、重合時の急激な固化、発熱に対処可能な強力な攪拌能力、緻密な温度制御、さらにはスケールの付着を防止するセルフクリーニング機能を備えた二一ダー、2軸スクリュー式連続押出混練機、2軸のパドル型連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサンの連続重合装置が使用可能で、2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。これらのうちでも、互いに同方向に回転する1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う凸レンズ型、あるいは擬三角形型のパドルが多数はめ込まれた連続式横型反応器が好ましい。
【0017】
重合時間は、3〜120分が選ばれ、特に5〜60分とするのが好ましい。重合時間が3分より短いと重合収率又は熱安定性が低下し、120分より長いと生産性が悪くなる。重合時間には、重合収率又は熱安定性の面からコモノマーの割合によって好ましい下限が存在し、コモノマーの割合が増加するに伴い重合時間も長くする必要がある。
【0018】
本発明の触媒失活剤としては、三価の有機リン化合物、有機アミン系化合物、アルカリ金属やアルカリ上類金属の水酸化物などが使用できる。失活剤として用いられる有機アミン系化合物としては、一級、二級、三級の脂肪族アミンや芳香族アミン、ヘテロ環アミン等が使用でき、具体的には、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノーn−ブチルアミン、ジーn−ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリーn−ブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、アニリン、ジフエニルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、メラミン、メチロールメラミン等が挙げられる。これら例示され
る触媒失活剤の中でも3価の有機リン化合物および3級アミンが好ましい。3価の有機リン化合物の中で、特に好ましい化合物は熱的に安定でかつ熱による成形品の着色弊害を及ぼさないトリフェニルホスフィンである。3級アミンの中で、特に好ましい化合物はトリエチルアミンおよびN,N−ジメチルブチルアミンである。失活剤は完全に触媒を失活させるを量入れる必要は無く、後述の有機アミン添加加熱保持時に粗ポリアセタール樹脂の分子量低下が製品の許容範囲に抑えられるようにすればよい。失活剤の使用量は、使用触媒のモル数に対して、通常0.01〜500倍、好ましくは0.05〜100倍である。失活剤を溶液、懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶剤は特に限定されるものではない。
例えば、水、アルコール類、原料モノマー、コモノマー、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の脂肪族または芳香族の各種有機溶媒が挙げられる。これらは、混合して使用することも可能である。
【0019】
本発明における失活処理は、粗ポリアセタール樹脂が微細な粉粒体であることが好ましく、重合反応機は塊状重合物を充分粉砕する機能を有するものが好ましい。また、重合後の粗ポリアセタール樹脂を別に粉砕機を用いて粉砕した後に失活剤を加えてもよく、あるいは、失活剤の存在下で粉砕と攪拌を同時に行ってもよい。粗ポリアセタール樹脂が微細な粉粒体でない場合は、樹脂中に含まれる触媒が十分に失活されず、従って残存した活性を有る触媒によって徐々に解重合が進行し分子量低下を生じる。触媒失活が十分ではなく、最終製品の分子量が低くなってしまう場合は、予め分子量低下を考慮し、分子量調整剤量を調整し粗ポリアセクール樹脂の分子量を高くしておき、最終製品の分子量を調節する方法がとられる。
【0020】
本発明において重合触媒の失活を行った粗ポリアセタール樹脂は、加熱溶融処理し、不安定構造を熱的に分解除去し、造粒される。加熱処理の方法は特に制約はなく、押出機を1台もしくはそれ以上直列で接続し、加熱溶融させる方法、押出機と表面更新型の2軸反応機とを組合せて加熱溶融させる方法、更には、一旦造粒した後、更に押出機や2軸反応にて繰り返し加熱処理を行う方法などの何れの方法を用いても良い。この時に、ポリアセタール樹脂に対して、公知の酸化防止剤、熱安定剤等の添加剤を1種又は2種以上を添加することができる。
【0021】
以下にその好適な方法の詳細を示す。
【0022】
単軸または2軸以上のベント付押出機で触媒失活処理を施した粗ポリアセタール樹脂を減圧脱揮しながら加熱溶融処理することが好ましく、単軸または2軸以上のベント付押出機で触媒失活処理を施した粗ポリアセタール樹脂を溶融させ、減圧脱揮処理機に導入し、所定時間減圧脱揮することがより好ましい。
【0023】
減圧脱揮は9.33X10〜1.33X10−3kPaの圧力下(減圧圧力は絶対圧を示す。以下同様)において溶融混練しながらおこなわれる。減圧度は6.67X10〜1.33×10−3kPaの範囲が好ましく、2.67X10〜1.33X10−3kPaの範囲がより好ましく、1.33X10〜1.33X10−3kPaの範囲が最も好ましい。
【0024】
減圧脱揮処理機は縦型あるいは横型の高粘度タイプの重合機が用いることができる。縦型重合機の場合、攪拌翼に特に限定はないが、溶融ポリアセタール樹脂が均一に混合できる高粘度攪拌翼が好ましく、リボン翼、格子翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼およびこれらの改良翼等が例示される。横型重合機としては、好ましくは単軸あるいは2軸以上の攪拌翼の設置された表面更新性の優れたセルフクリーニング型の横型重合機であり、日立製作所(株)製メガネ翼、格子翼型リアクター、三菱重工業(株)製SCR、NSCR型反応機、(株)栗本鉄鋼所製KRC二−ダー SCプロセッサー、住友重機械工業(株)製BIVOLAK等が例示される。
【0025】
上記工程において、加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、及び加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲でなければならない。
Z>−0.0227X+1.29Y−201 (1)
Z≧1,Y≦X≦260 (2)

かかる特定の条件で、粗ポリアセタール樹脂を、加熱溶融処理し造粒することにより、厚さ30μmのフィルムで測定した際に、長軸が30μm以上のフィッシュアイ数が、100個/25cm以下である、低フィッシュアイ・ポリアセタール樹脂を製造することができる。
【0026】
さらに、フィッシュ数を低減し、10個/25cm以下にするためには、加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲にする必要がある。
Z>−0.0801X+0.792Y−97 (3)
Z≧1,Y≦X≦260 (4)
【0027】
使用できる酸化防止剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールービス〔3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールービス−3−(3−t−ブチルー4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチルーテトラキス−3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルー4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチルー4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2.4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸、1,6−ヘキサンジイルエステル等の立体障害性フェノール類が挙げられる。これら立体障害性フェノール類の添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.01〜5.0重量部が好ましく、0.01〜2.0重量部がより好ましい。
【0028】
熱安定剤としては、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、シアノグアニジン、N,N−ジアリールメラミン等のアミン置換トリアジン類、ポリアミド類、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、ウレタン類等およびナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの無機酸塩、水酸化物、有機酸塩等が例示される。これらアミン置換トリアジン類の添加量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0029】
また、本発明の方法により製造されたポリアセタール樹脂には、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、又はペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル系又はシリコン系化合物等の離型剤、摺動剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系のような光安定剤等の添加剤を所望により添加することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0031】
なお、実施例中で示された評価試験は、以下の方法で行った。
[処理条件]
処理条件は次の通り判定した。請求項1に記載の数式(1)を用いて得られる処理時間をZ100、請求項2に記載の数式(2)を用いて得られる処理時間をZ10としたとき、実際の処理時間Zが、Z>Z10のときを◎、Z100<Z<Z10のときを○、Z<Z100のときを×として示した。
[フィッシュアイ測定]
表1に記載の方法で得られたポリアセクール樹脂を、Tダイで厚み30μmのフィルムに成形し、5cm角中に含まれる長軸の長さが30μm以上のフィッシュアイを目視で確認した。
【0032】
〈実施例1〜4、6〜12、比較例1、3〜6〉
二つの円が一部重なった内断面を有し、内断面の長径が20cmであり、周囲にジャケットを有する、長いケース内に1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う擬三角形板が多数はめ込まれ、擬三角形板の先端でケース内面および相手の擬三角形板の表面をクリーニングできる連続混合機を重合装置として2台、更には、シャフトには互いにかみ合う擬三角形板の代わりにスクリュー様の羽根が多数はめ込まれた構造を有し、供給口部分から停止剤溶液を注入し、連続的に重合体と混合せしめる停止剤混合機を直列に接続したものを使用し、オキシメチレン共重合体の製造を実施した。
第1段目の重合機の入口に、80kg/hr(889kmo1/hr)のトリオキサンおよび表1に示した量の1,3−ジオキソランと、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートのベンゼン溶液を用い、モノマー合計量に対して三フッ化ホウ素として20ppmになるように連続的に供給した。また分子量調節剤としてメチラールを、極限粘度1.1〜1.5dl/gに調節するのに必要な量を連続的に供給した。ベンゼンの合計使用量はトリオキサンに対して1重量%以下であった。また、停止剤混合機の入口より、使用した触媒量の2倍モルのトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液で連続的に供給して重合を停止し、出口より粗共重合体を収得した。なお、連続重合機は、各々シャフト回転数を約40rpmとし、また第1段目ジャケット温度を65℃、、第2段目および停止剤混合機ジャケット温度を各々40℃に設定して重合運転を行った。また、得られた粗共重合体100重量部に、トリエチレングリコールービス[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名イルガノックス245)0.3重量部、メラミン0.025重量部を添加、混合した後、ベント付同方向回転型二軸押出し機と二軸攪拌翼型重合機とを組み合わせて、表1に記載の条件で加熱溶融した。その後、ギアポンプで抜き出し水中下で冷却してペレット化した。得られたペレットを120℃、24時間熱風乾燥機で乾燥して最終サンプルとした。
【0033】
〈実施例5、比較例2〉
二つの円が一部重なった内断面を有し、内断面の長径が20cmであり、周囲にジャケットを有する、長いケース内に1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う擬三角形板が多数はめ込まれ、擬三角形板の先端でケース内面および相手の擬三角形板の表面をクリーニングできる連続混合機を重合装置として2台、更には、シャフトには互いにかみ合う擬三角形板の代わりにスクリュー様の羽根が多数はめ込まれた構造を有し、供給口部分から停止剤溶液を注入し、連続的に重合体と混合せしめる停止剤混合機を直列に接続したものを使用し、オキシメチレン共重合体の製造を実施した。第1段目の重合機の入口に、80kg/hr(889kmo1/hr)のトリオキサンおよび表1に示した量の1,3−ジオキソランと、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートのベンゼン溶液を用い、モノマー合計量に対して三フッ化ホウ素として20ppmになるように連続的に供給した。また分子量調節剤としてメチラールを、極限粘度1.1〜1.5dl/gに調節するのに必要な量を連続的に供給した。ベンゼンの合計使用量はトリオキサンに対して1重量%以下であった。また、停止剤混合機の入口より、使用した触媒量の2倍モルのトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液で連続的に供給して重合を停止し、出口より粗共重合体を収得した。なお、連続重合機は、各々シャフト回転数を約40rpmとし、また第1段目ジャケット温度を65℃、第2段目および停止剤混合機ジャケット温度を各々40℃に設定して重合運転を行った。また、得られた粗共重合体100重量部に、トリエチレングリコールービス(3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名イルガノックス245)0.3重量部、メラミン0.025重量部を添加混合した後、ベント付同方向回転型二軸押出し機で表1に記載の条件で、加熱溶融した。その後、ギアポンプで抜き出し水中下で冷却してペレット化した。得られたペレットを120℃、24時間熱風乾燥機で乾燥して最終サンプルとした。
【0034】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合後の不安定末端部分を有する粗ポリアセタール樹脂を加熱溶融処理して安定化するポリアセタール樹脂の製造方法において、
加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲であることを特徴とするポリアセタール樹脂の製造方法。
Z>−0.0227X+1.29Y−201 (1)
Z≧1,Y≦X≦260 (2)
【請求項2】
加熱溶融処理温度X(℃)、ポリアセタール樹脂の融点Y(℃)、加熱溶融処理時間Z(分間)との関係が、下式で示される範囲であることを特徴とする請求項1記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
Z>−0.0801X+0.792Y−97 (3)
Z≧1,Y≦X≦260 (4)
【請求項3】
ポリアセタール樹脂が、トリオキサン100重量部に対し0.2〜30.0重量部の1種種以上のコモノマーを共重合したものである請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−13519(P2010−13519A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173150(P2008−173150)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】