説明

低モノマー有機ポリイソシアネートの製造方法

本発明は、二相系において有機ジイソシアネートをオリゴマー化することによって低モノマー有機ポリイソシアネートを製造するための新規な工業的方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二相系における有機ジイソシアネートのオリゴマー化による、低モノマー含量有機ポリイソシアネートの新規な工業的製法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴマーポリイソシアネートの製造は、長期間にわたって既知である(H.J.Laas他、J.Prakt.Chem.第336巻、第185〜200頁(1994年)、EP755954、EP798299、EP508313)。従って、存在する幾つかのイソシアネート基が、予備決定された変換率に達するまで反応によって消費され、その後、残存するモノマーを、例えば蒸留によって除去する、非常に幅広い種類のオリゴマー化反応が記載されている。オリゴマー化反応として、極めて幅広い種類の形成の機構が、触媒による三量体化、二量体化、カルボジイミド化、アロファネート化の形態で、有機ジイソシアネートのビウレット化、ウレア形成およびウレタン化の形態で確立され始めている。通常、溶媒または希釈剤を用いずに、バルク状態で、ジイソシアネート成分のイソシアネート基の10%〜40%をオリゴマー化反応させる。該反応を触媒の失活化によって停止させる場合には、通常、比較的多量の出発イソシアネートの画分が反応混合物中に残る。例えば、その後の蒸留分離は、薄膜蒸発器において、0.5%未満または場合によっては0.1%未満の残存モノマー含量を有する生成物が最終的に生じる。
【0003】
溶媒を用いない反応に影響を与える欠点は高い反応可能性であり、これは、未制御反応過程が、通常は高発熱性の(従って、反応混合物の温度の鋭い上昇を含む)反応の場合に生じることがあるため、プロセス工学的観点から複雑な操作の遮断機構により保護されなければならない。さらに、粘度の明確な上昇が反応の過程に存在するので、重大なプロセス工学的問題が生じる。全ての装置は、広い温度範囲および粘度範囲について設計されなければならないので、最適な範囲において操作されない。
【0004】
反応可能性を比較的多量の溶媒の添加により低下させる場合には、該溶媒は、反応混合物中に残存し、可能であれば、高価かつ不便な蒸留によって除去されなければならない。
【0005】
このような反応が1以上の撹拌容器中で連続的に行われる場合には、例えば、カスケード反応器中での逆混合の例は、反応が、得られるポリイソシアネートにおいて同一の特徴を得るためにバッチ反応の場合よりも早い段階で停止されなければならないことを意味する。この変換の損失(未反応出発ジイソシアネートの増加量)は、より高い蒸留性能およびかなり特別な複雑性および費用によって補われなければならない。この場合、より好ましいものは、オリゴマー化の間に新たなジイソシアネートの供給を伴わないバッチ反応である。しかしながら、該反応形態の様式、従ってバッチサイズは、熱除去についての必要性により、および技術的に実現可能な冷却系により制限される。
【0006】
イソシアネート反応を管反応器中で実施する場合には、管の広い表面積により、設備の早期の清掃の必要性を生じさせる深刻な沈殿および汚染現象が生じる。避けることのできない沈殿の形成により、管壁での低い温度遷移が生じるので、比較的鋭い温度不均一性が生じる。これは、品質(例えば色)だけでなく、製造下での生成物の収率に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第755954号明細書
【特許文献2】欧州特許第798299号明細書
【特許文献3】欧州特許第508313号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.J.Laas他、「J.Prakt.Chem.第336巻」、1994年、第185〜200頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、これらの欠点を排除する低モノマー含量ポリイソシアネートを製造するための汎用法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に詳細に記載した本発明の方法により、課題を達成することができることが証明された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
A)少なくとも60重量%の1以上のジイソシアネートおよび40重量%以下の1以上のモノイソシアネートおよび/または官能価≧3を有する1以上のイソシアネートから構成されるイソシアネート成分と、
B)必要に応じて、触媒B1)および/または必要に応じて反応性成分B2)とを、
液滴の形態で、希釈剤C)中で、0〜200℃の温度でオリゴマー化を伴って反応させ、次いで、相分離を行い、相分離前、相分離中または相分離後に前記反応を必要に応じて触媒毒D)の添加により中断し、次いでイソシアネート相中に存在するポリイソシアネートから過剰なモノマーを除去することを特徴とする、1.0重量%未満の残留モノマーイソシアネート含量を有するポリイソシアネートを製造するための方法を提供する。
【0012】
イソシアネート成分A)とは、全てのイソシアネート基含有有機化合物、および少なくとも、60重量%、好ましくは80重量%、より好ましくは95重量%のジイソシアネート含量を含む混合物を意味する。極めて特に好ましくは、イソシアネート成分は専らジイソシアネートのみを含有し、とりわけ1種のジイソシアネートのみを用いる。
【0013】
イソシアネート成分A)に用いることができるイソシアネートの例として、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的または芳香族的に結合したイソシアネート基を有する通常のモノイソシアネート、例えばステアリルイソシアネートおよびナフチルイソシアネート等、例えば、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を有するジイソシアネート、例えば1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアネート、IPDI)、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IMCI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、2,4−及び2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび高級同族体、1,5−ジイソシアナトナフタレン、「ジプロピレングリコールジイソシアネート」(2−(2−イソシアナトプロポキシ)−1−プロピルイソシアネート、1,1’−オキシジ−2−プロピルイソシアネートおよび2,2’−オキシジ−1−プロピルイソシアネート)等、例えば、トリイソシアネートおよび/または高級多官能性イソシアネート、例えば4−イソシアナトメチルオクタン1,8−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)または1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等、または例えばこのようなイソシアネート化合物の任意の所望の混合物が挙げられる。
【0014】
上記のイソシアネートの任意の所望の混合物を上記の重量制限内で用いることができる。
【0015】
好ましくは、脂肪族的に結合したイソシアネート基を含有するイソシアネート化合物を用いる。特に好ましくは、イソシアネート成分A)として、HDI、IPDI、2,4’−および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを用いる。
【0016】
触媒B1)として、H.J.Laas他、J.Prakt.Chem.第336巻、第185〜200頁(1994年)およびそこに記載の文献、EP755954、EP798299に例として規定の種類の任意の所望の三量体化、二量体化、カルボジイミド化およびアロファネート化触媒を用いることができる。触媒B1)の例として、以下のものを挙げ得る:酢酸鉛(II)、2−エチルヘキサン酸鉛(II)、マンニッヒ塩基、例えばフェノールとジメチルアミンとの反応生成物等、または必要に応じてエポキシドとの混合物の状態での第三級アミン、例えばジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン等、またはアルカリ金属化合物およびアルカリ土類化合物、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルコキシドまたはフェノキシド、ならびに必要に応じて直鎖状ポリエーテルまたはクラウンエーテルの存在下での錯化作用による弱脂肪族または脂環式カルボン酸の金属塩等。さらに、適当な触媒B1)は、例えば、必要に応じてフェノールまたはカルボン酸との付加化合物の形態でのトリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン(登録商標Polycat 41、製造業者:Air Products)である。触媒B1)として極めて適当なものは、第4級アンモニウム塩基、例えばトリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(登録商標Triton B、製造業者:Merck KGaA、独国)、メチルコリンまたはヒドロキシアルキルアンモニウムカルボキシレートまたは第4級アンモニウムフロライド等である。例示したアンモニウム塩の他に、相当するホスホニウム塩またはホスフィンを触媒B1)として用いることもできる。アミノシランは、触媒B)としての化合物のさらなる種類であり、その例はヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。
【0017】
触媒は、必要に応じて、溶媒または反応性化合物、例えばアルコール等中の溶液の状態で液滴形成前、または液滴形成後に計量投入される。この場合、その量は、イソシアネート成分を基準として、1ppm〜5%、好ましくは5ppm〜0.5%、より好ましくは10ppm〜0.1%の範囲である。通常、触媒は、液滴形成直前にイソシアネート成分中に導入される。しかしながら、まず、触媒を希釈剤中に(例えばノズルジェット分散器を用いて)溶解または分散させることも可能かつ有利である。次いで、該触媒を、微細に分割された形態でこの相からイソシアネート液滴中へ移行させる。代替的な手順としては、まず、イソシアネートおよび非溶媒希釈剤C)の不均一な混合物を調製し、該混合物を、イソシアネート液滴を含有する触媒B1)の撹拌混合物に計量投入することである。
【0018】
イソシアネート成分A)のオリゴマー化を、触媒B1)に代えて、反応性成分B2)の添加により、すなわち水、低分子量アルコールもしくはアミン、または1〜6の官能性単位を有する対応する混合物の添加により行うことも可能である。1〜3個のOH基および32および300g/モルの間の分子量を有するアルコールを用いることは好ましい。用いるアミンは好ましくは、350g/モルの分子量までのモノアミンおよびジアミンである。その量は、本発明では、ジイソシアネート成分A)の量を基準として30重量%まで、好ましくは1重量%および20重量%の間、極めて特に好ましくは2重量%および10重量%の間である。
【0019】
例えば反応性成分B2)としてのアミンとの反応の結果としてビウレット構造を含有するポリイソシアネートを調製する場合、該アミンは好ましくは、希釈剤C)中に予備分散し、次いで分散イソシアネート液滴と反応させる。しかしながら、イソシアネートを希釈剤C)中において液滴の形態で乳化し、アミンを該不均一混合物に高温で添加することも同様に可能である。
【0020】
アルコールは、二相反応の間に、ウレタンおよび/またはアロファネートを生じさせ、アミンはビウレット構造を生じさせる。
【0021】
上記手順により、反応性成分B2)だけでなく、当然ながら、イソシアネートとアルコールとの反応を促進させてウレタンおよび/またはアロファネートを形成するか、またはイソシアネートとアミンとの反応を触媒してビウレットを形成する触媒B1)を用いることも可能である。これに関する用途を見出すアロファネート化触媒は、上記の化合物である。用いることができるウレタン化触媒は、既知の化合物、例えばアミン、Sn、ZnまたはBi化合物のような金属塩、例えばジブチル錫ジラウレート(DBTL)またはビスマストリスネオデカノエート(Coscat 83)等である。
【0022】
イソシアネート液滴は、強撹拌によって、または例えば、通常、抽出法の場合と同様に、希釈剤C)前または希釈剤C)中への噴霧によって発生させることができる。例えば、ノズルジェット分散は、微細な液滴を生成する適切な方法である。液滴サイズは、この場合、直径5mmまでの範囲である。好ましくは、液滴サイズは0.1μm〜1mm、より好ましくは1μm〜1mm、極めて好ましくは10μm〜1mmである。一般的には、強撹拌は、反応の間、エマルションを特定の時間安定化させるために行うが、二相液体混合物をポンプ循環において再噴霧することも同様に可能である。
【0023】
希釈剤C)は、反応条件下で液体であり、イソシアネート成分A)と、形成されるポリイソシアネートのいずれも溶解させない全ての化合物である。希釈剤中におけるイソシアネート成分の残存溶解性は、10重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。反対に、イソシアネート成分A)中およびポリイソシアネート中における希釈剤の溶解性は、10重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。
【0024】
極性溶媒の例は水である。しかしながら、好ましくは、疎水性化合物、例えばシロキサン化合物、フルオロ(シクロ)アルキル化合物、パーフルオロ(シクロ)アルキル化合物、パークロロ(シクロ)アルキル化合物、クロロフルオロ(シクロ)アルキル化合物または炭化水素等を用いる。特に好ましいものは、フッ素化アルカンおよび/またはパーフッ素化アルカンを含むアルカンである。極めて特に好ましいものはパーフルオロオクタンである。
【0025】
適当なものは、使用の条件下で液体である非官能性ポリマー、例えば低分子量のポリマーおよび/またはアタクチック構造を有するポリマー等である。とりわけ、必要に応じてクロロ−および/またはフルオロ−置換されていてよい、低重合度を有する液体ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートは、極めて非混和性であり、従って希釈剤C)として適当である。
【0026】
希釈剤は、好ましくは、イソシアネート成分A)に対して未反応性である。
【0027】
反応の間、イソシアネート成分A)と希釈剤C)との重量比を、1:20〜5:1、好ましくは1:10〜1:1、より好ましくは1:5〜1:2に設定する。
【0028】
反応条件下では、希釈剤C)の密度は、イソシアネート成分A)の密度および得られた反応混合物の密度と異なっていなければならない。
【0029】
オリゴマー化反応は二相系において、0〜200℃、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜80℃の温度で行う。
【0030】
上記反応は必要に応じて、触媒毒D)の添加によって、希釈剤の分離前、分離中または分離後に停止する。この種の化合物は、例えばH.J.Laas他、J.Prakt.Chem.第336巻、第185〜200頁(1994年)およびそこに記載の文献、EP755954、EP798299に記載されている。触媒毒としてまたは停止剤と呼ばれる適当なものは、用いる触媒作用の性質に応じて、酸、酸誘導体、アルキル化剤またはアルコール、例えばリン酸または亜リン酸またはそのエステル等、塩酸、カルボン酸または塩化カルボニル(例えば塩化ベンゾイル)、メチルトルエンスルホネートまたは低級アルコール(例えばブタノール)等である。好ましい停止剤は、リン酸またはリン酸エステルである。しかしながら、化学的停止の他に、例えば60または80℃を越える温度に、例えば30分〜数時間加熱し、熱分解によって触媒を失活化させることによって、熱的に反応を停止することも可能である。好ましくは、反応を触媒毒の添加によって停止する。
【0031】
反応および適切な場合には触媒毒の添加による停止の後、二つの相は、液滴の統合によって二つの分離相に分離される。これは、例えば反応混合物を、沈静し、および分離すること、または半透過性分離層を用いて分離することにより行うことができる。次いで、このように製造され、および希釈剤から分離された粗製生成物は、例えば蒸留、例えば二段階流下薄膜/薄膜蒸発を用いて、ポリイソシアネート成分および出発ジイソシアネート中に分離される。この場合には、ポリイソシアネート成分中におけるモノマージイソシアネートの残存する画分は、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満である。しかしながら、ポリイソシアネートは、存在する粗製混合物を相分離させずに、希釈剤の蒸留分離、引き続くモノマージイソシアネートの蒸留分離によって単離することも同様に可能である。
【0032】
反応を連続的に二成分系において操作する場合には、イソシアネート成分A)は、例えば希釈剤で充填されたカラム(円筒)中に上方からまたは下方から噴霧することによって、液滴形態に変換することができる。予備決定した反応温度は、必要に応じて移動液滴に対して逆の流れでの希釈剤のポンプ循環および析出により、外部冷却または加熱により設定することができる。触媒または反応性成分は、予め混合によってイソシアネート成分中に導入することができる。他の可能性は、触媒を希釈剤中に別に溶解または分散させることである。
【0033】
連続モードの場合には、反応はカラムに沿って起こり、液滴は密度の違いにより底に沈むかまたは希釈剤に対して浮上する。次いで、上部または下部の境界で相分離が存在し、粗製ポリイソシアネート溶液を、さらなる仕上げ、適切な場合には停止のために取り出すことができる。相分離は、連続的または不連続的に分離容器中で行うこともできる。希釈剤は、汚染され得、相分離後に分離し、必要に応じて、同様に、例えば蒸留によって仕上げを行うことができる。
【0034】
該方法によって得られたポリイソシアネート樹脂は、室温で固体または液体である。これらを溶媒中に溶解させる場合が多い。
【0035】
溶媒として、ポリウレタン化学の範囲内での通常の任意の所望の希釈剤、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、クロロベンゼン、酢酸ブチル、酢酸エチル、エチルグリコールアセテート、ペンチルアセテート、ヘキシルアセテート、メトキシプロピルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、ホワイトスピリット、および例えば商品名Solvent Naphtha(登録商標)、Solvesso(登録商標)、Shellsol(登録商標)、Isopar(登録商標)、Nappar(登録商標)およびDiasol(登録商標)のもとで市販されている種類のより高度に置換された芳香族化合物等を用いることが可能である。溶媒混合物中に、必要に応じて、より少量の極性溶媒の画分、例えば重質ベンゼン(heavy benzene)、テトラリン、デカリンおよび6を越える炭素原子を有するアルカンならびにこれらの溶媒の混合物等を存在させることもできる。この場合、溶媒中におけるポリイソシアネートの濃度は、溶媒を用いる場合、30〜95重量%、好ましくは50〜90重量%固体に設定する。
【0036】
さらに、オリゴマー化反応、例えば二量体化反応および/または三量体化反応等の終了後、反応生成物を、例えば、低分子量の化合物および/またはポリマーヒドロキシル基を含有する化合物で、および/またはブロック剤でさらに変性し得る。
【0037】
本発明の方法によって製造されたポリイソシアネートは、周囲の湿気の影響下で硬化することができる有用な被覆材料である。これらは好ましくは、架橋剤として2成分系において通常のイソシアネート反応性化合物と共に用いる。これらには、例えば、ヒドロキシ官能性ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリブタジエンおよび上述のヒドロキシ官能性ポリマーのハイブリッド型または混合物が含まれる。さらに、低分子量ジオールおよびポリオール、ダイマー脂肪アルコールおよびトライマー脂肪アルコール、ならびにアミノ官能性化合物は、2成分系に使用することができる。
【0038】
ブロックトイソシアネート反応性化合物を用いて、1成分系を処方することも可能であり、さらに、本発明の方法により製造された生成物は、ブロックト形態でまたは被覆材料中で使用することもできる。この場合、例えば120℃〜約230℃を越える比較的高い温度で乾燥を行う。
【0039】
本発明の方法による生成物の他に、補助剤およびアジュバント、例えば通常の湿潤剤、流れ調整剤、皮張り防止剤、消泡剤、溶剤、艶消剤(例えばシリカ、アルミニウムシリケートおよび高沸点ワックス等)、粘度調整剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、熱分解および/または酸化分解に対する安定剤等を被覆物中に用いることができる。
【0040】
得られた被覆材料を用いて、任意の所望の基材、例えば木材、プラスチック、革、紙、織物、ガラス、セラミック、石膏、メーソンリー、金属またはコンクリート等をコートすることができる。それらは、通常の塗布方法、例えば噴霧、拡散、流し塗り、流し込み、浸漬およびロール塗り等により塗布することができる。被覆材料は、透明被覆材料の形態で、ならびに着色被覆材料の形態で用いることができる。
【0041】
本発明の生成物から製造される被覆物は、20℃で、通常、数分から数時間の期間で硬化して、高品質の被覆物を生じさせる。あるいは、硬化は、より低温(−5℃まで低下)で、または200℃までのより高温で促進された形態で、硬化を行い得る。
【実施例】
【0042】
以下の本発明による実施例および比較例は、本発明を説明することを意図しており、本発明を制限するものではない。「部」および「%」における全てのデータは、重量に関する。NCO含有量は、DIN53185に従って決定する。動的粘度は、23℃にて、Anton Paar MCR 51レオメーターを用いて板/円錐測定設定で決定した。異なったせん断速度での測定は、記載の本発明のポリイソシアネートのレオロジーが理想ニュートン液体のレオロジーに対応することを確実とする。従って、せん断速度を記載する必要はない。
【0043】
実施例1(本発明による)
頂上に取り付けられた冷却器および乾燥管、窒素装置、温度計および撹拌装置を有する1リットル4口丸底フラスコに100gのHDIと共に400gのペルフルオロオクタンを投入し、初期投入を60℃に加熱した。この時点で、撹拌装置を、イソシアネート成分の希釈剤への微細な分割(分散)を行うために高撹拌速度(400rpm)に設定した。60℃の一定温度が確立した際、反応混合物を、2gの触媒溶液(トリメチルベンジルアンモニウム水酸化物、メタノール/2−エチルヘキサノール中に1.0%強度)の滴下漏斗での添加により反応させた。温度を30分にわたって5℃上昇させた。撹拌をこの温度で継続した。90分の反応時間の間、反応混合物は極めて高い流動性のため、易撹拌性を保った。水浴での冷却により発熱の熱を取り除くことは容易であった。HDI相が39.0%のNCO含量に達した際、反応混合物を0.5gのジブチルホスフェートの添加により停止した。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌し、室温に冷却した。撹拌器を停止した後、相を分離した。得られたポリイソシアネート相の薄膜蒸留による仕上げにより以下の特性を有する生成物を得た:
NCO含量:21.7%
粘度:2800mPas
遊離HDI含量:0.1%(GC分析)
ペルフルオロオクタン含量:<0.05%(GC分析)
【0044】
実施例2(本発明ではない、比較実験)
実施例1の条件と同じ条件下で、500gのHDIを、ペルフルオロオクタンを添加せずに、60℃で、10gの触媒溶液(HDIを基準とした同じ触媒濃度)と反応させた。短いインキュベーション時間の後、温度を約40℃3分間にわたって上昇させ、水浴により60℃に低下させた。該反応混合物は黄色変色し、明らかに粘度が上昇した。わずか30分後に、NCO含量は31.6%の値に低下した。反応は、2gのジブチルホスフェートの添加により直ぐに停止した。低NCO含量は、実施例1と比べて、非常に高い分子量および高い粘度である生成物を示唆するので、著しく進行不足の混合物は仕上げを行わなかった。
【0045】
本発明による場合では(実施例1)、触媒の過剰な添加は、セーフティクリティカルな状況を生じさせず、温度をほぼ一定に保つことができ、および粘度の変化がないので、撹拌能力がある。効果的な熱吸収および熱の除去は、任意の時間で可能である。反対に、本発明によらない場合では(実施例2)、小規模にも拘わらず(広い表面積、従って効果的な冷却に関係)、かなりの負の温度効果および粘度効果が考えられる。この種の温度中断は工業的規模で管理し難い。
【0046】
実施例3(本発明による)
頂上に取り付けられた冷却器および乾燥管、窒素装置、温度計および撹拌装置を有する5リットル4口丸底フラスコに1200gのHDIを投入し、この初期投入を3時間減圧下で脱気し、いずれの場合にもNでブランケットした。2400gの軽質ベンゼン(沸点80〜95℃)を流し込み、該投入を60℃に加熱した。強撹拌を、希釈剤中のイソシアネート成分の微細な分割(分散)を行うために400rpmで行った。60℃の温度で開始の際、該二相反応混合物を、約60分間にわたる27gの触媒溶液(トリメチルベンジルアンモニウム水酸化物、2−エチルヘキサノール/2−エチル−1,3−ヘキサンジオール中に0.5%強度)の部分添加により反応させた。温度を60〜65℃で穏やかな冷却により温水浴を用いて維持した。顕著な発熱は観測されなかった。70分の反応時間の間、反応混合物は、極めて高い流動性のため、易撹拌性を保った。13.7%のNCO含量が混合物全体について達した際、反応混合物を5.5gのHDI中のジブチルホスフェートの2重量%強度溶液の添加により停止し、次いで30分間撹拌した。相分離に次いで、軽質ベンゼン相を分離し、まず、軽質ベンゼンで飽和したポリイソシアネート相から低ボイラーを80℃/10mbarで除去し、この後、粗製トリマーを薄膜蒸留によって仕上げを行う。これにより以下の特性を有するポリイソシアネートを得る:
NCO含量:19.9%
粘度:4300mPas
遊離HDI含量:<0.03%(GC分析)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0重量%未満の残留モノマーイソシアネート含量を有するポリイソシアネートの製造方法であって、
A)少なくとも60重量%の1以上のジイソシアネートおよび40重量%以下の1以上のモノイソシアネートおよび/または官能価≧3を有する1以上のイソシアネートから構成されるイソシアネート成分と、
B)必要に応じて、触媒B1)および/または必要に応じて反応性成分B2)とを、
液滴の形態で、希釈剤C)中において、0〜200℃の温度でオリゴマー化を伴って反応させ、次いで、相分離を行い、相分離前、相分離中または相分離後に前記反応を必要に応じて触媒毒D)の添加により中断し、次いでイソシアネート相中に存在するポリイソシアネートから過剰なモノマーを除去することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
成分A)として、専らHDI、IPDI、2,4’−および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンのみを用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
希釈剤C)として、必要に応じてフッ素化またはパーフッ素化されたアルカンを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
パーフルオロオクタンを、アルカンとしてC)に用いることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
イソシアネート成分A)と希釈剤C)との重量比を1:10〜1:1に設定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記重量比は1:5〜1:2であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応を連続的に行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2011−506693(P2011−506693A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538396(P2010−538396)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010281
【国際公開番号】WO2009/077085
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】