説明

低反発軟質ポリウレタンフォーム

【課題】フィンガーマーク(ポリウレタンフォームを脱型したときに生じる手形等)の発生が十分に抑制された低反発軟質ポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームの密度が65〜95kg/mの範囲内にあり、且つ、
前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、52.5〜62.5質量%のジフェニルメタンジイソシアネートと、16.5〜38.5質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートと、9.0〜21.0質量%のジフェニルメタンジイソシアネートカルボジイミド変性体とを含有するものであることを特徴とする低反発軟質ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反発軟質ポリウレタンフォームに関し、より詳しくは、椅子のクッション材、枕、寝具用マットレス等に好適に使用することが可能な低反発軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、家具や自動車座席用等のクッション材、工業用シール材といった幅広い用途に用いられているが、近年、従来は要求されていなかったような高水準の低反発性を有するポリウレタンフォーム(以下、「低反発性ポリウレタンフォーム」という)が開発され、低反発性ポリウレタンフォームを椅子のクッション材、枕、寝具用マットレス等に使用するという技術が注目されている。このような低反発性ポリウレタンフォームとして、例えば、特開平11−286566号公報(特許文献1)には、ポリオール、有機ポリイソシアネート、触媒及び発泡剤を含有するウレタンフォーム組成物を反応させて得られる、特定の粘弾性特性を有する低反発性ポリウレタンフォームが開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のような低反発性ポリウレタンフォームにおいては、ポリウレタンフォームの反応性が不十分であるため、ポリウレタンフォームを脱型するときに手形等(いわゆるフィンガーマーク)が発生してしまうという問題があった。また、このような低反発性ポリウレタンフォームにおいては、原料として揮発性が高く人体に有害であるために特定化学物質に指定されているトリレンジイソシアネートが主として用いられているという問題もあった。
【0004】
一方、出願人である日本ポリウレタン工業株式会社は、特開平6−271644号公報(特許文献2)において、有機活性水素化合物、有機ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、及び所望により整泡剤からポリウレタンフォームを製造する方法を開示しており、その方法で用いる有機ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートの一部をウレタン変性したポリイソシアネート(A)と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの一部をウレタン変性したポリイソシアネート(B)との混合物を開示している。しかしながら、特許文献2において開示したポリウレタンフォームは、その実施例で作製したものの密度が0.68〜0.71g/cmであることからも明らかなように、自動車の内装部品等に使用される一般的な反発性を有するものである。一般的な反発性を有するポリウレタンフォームとしては多種多様の組成を有するものが存在しており、このような数多のポリウレタンフォームの中で特許文献2に記載のポリウレタンフォームが低反発性ポリウレタンフォームの開発に転用又は利用できるといったことは、当業者と言えども決して想起できるものではなかった。
【特許文献1】特開平11−286566号公報
【特許文献2】特開平6−271644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、フィンガーマーク(ポリウレタンフォームを脱型したときに生じる手形等)の発生が十分に抑制された低反発軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめて低反発性の軟質ポリウレタンフォームを得るにあたり、有機ポリイソシアネート(A)として特定の組成のものを用い、且つ得られる軟質ポリウレタンフォームの密度を特定の範囲とすることにより前記目的を達成することができる低反発軟質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームは、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームの密度が65〜95kg/mの範囲内にあり、且つ、
前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、52.5〜62.5質量%のジフェニルメタンジイソシアネートと、16.5〜38.5質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートと、9.0〜21.0質量%のジフェニルメタンジイソシアネートカルボジイミド変性体とを含有するものであることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームにおいては、前記ポリオール(B)が、1〜2.3の範囲内の公称平均官能基数を有しており、且つ1000〜2500の範囲内の数平均分子量を有しているものであることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームにおいては、反発弾性率が10〜25%の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィンガーマークの発生が十分に抑制された低反発軟質ポリウレタンフォームを提供することが可能となる。また、本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームを製造する場合には、揮発性が高く人体に有害であるために特定化学物質に指定されているトリレンジイソシアネートを用いていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームは、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームの密度が65〜95kg/mの範囲内にあり、且つ、
前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、52.5〜62.5質量%のジフェニルメタンジイソシアネートと、16.5〜38.5質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートと、9.0〜21.0質量%のジフェニルメタンジイソシアネートカルボジイミド変性体とを含有するものであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明にかかる有機ポリイソシアネート(A)は、このような有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、52.5〜62.5質量%(好ましくは、55〜60質量%)のジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「ピュアMDI」という)と、16.5〜38.5質量%(好ましくは、22〜33質量%)のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(以下、場合により「ポリメリックMDI」という)と、9.0〜21.0質量%(好ましくは、12〜18質量%)のジフェニルメタンジイソシアネートカルボジイミド変性体(以下、場合により「MDIカルボジイミド変性体」という)とを含有するものである。このような有機ポリイソシアネート(A)におけるピュアMDIの含有比率が52.5質量%未満では、混合液を反応発泡せしめる際に独立気泡(独泡)の割合が多くなりやすく、シュリンクが発生しやすくなり、他方、62.5質量%を超えると、混合液を反応発泡せしめてポリウレタンフォームを得るときにフォームの陥没が発生しやすくなる。また、このような有機ポリイソシアネート(A)におけるポリメリックMDIの含有比率が16.5質量%未満では、混合液を反応発泡せしめてポリウレタンフォームを得るときにフォームの陥没が発生しやすくなり、他方、38.5質量%を超えると、混合液を反応発泡せしめる際に独泡の割合が多くなりやすく、シュリンクが発生しやすくなる。さらに、このような有機ポリイソシアネート(A)におけるMDIカルボジイミド変性体の含有比率が9.0質量%未満では、混合液を反応発泡せしめる際に独泡の割合が多くなりやすく、シュリンクが発生しやすくなり、他方、38.5質量%を超えると、混合液を反応発泡せしめてポリウレタンフォームを得るときにフォームの陥没が発生しやすくなる。
【0014】
なお、本明細書において、ピュアMDIとは、純粋なジフェニルメタンジイソシアネート(多核体を含まない)のことをいい、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製のミリオネート(登録商標)MTとして入手できるものである。また、ポリメリックMDIとは、ベンゼン環を3個以上有する多核体からなるポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートのことをいい、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製のミリオネート(登録商標)MR−100等に含まれているものである。さらに、MDIカルボジイミド変性体とは、ジフェニルメタンジイソシアネートをカルボジイミド化触媒により変性したもののことをいい、カルボジイミド基を有するものの他に、カルボジイミド基に更にイソシアネート基が付加してウレタンイミン構造に達したものもこれに含まれる。例えば、日本ポリウレタン工業(株)製のミリオネート(登録商標)MTL−S等に含まれているものである。
【0015】
また、このような有機ポリイソシアネート(A)におけるイソシアネート基含有量(NCO含有量)は27〜32質量%の範囲であることが好ましい。かかるNCO含有量が前記下限未満では、発泡倍率が低下してしまい、金型内にポリウレタンフォームを良好に充填することができず、低密度化しにくくなる傾向にある。
【0016】
本発明にかかるポリオール(B)としては、軟質ポリウレタンフォームの作製に用いられる公知のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリアミン、ポリブタジエンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、蔗糖、ビスフェノールA、水、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等のような活性水素原子を少なくとも2個有する少なくとも1種の化合物を開始剤としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等の少なくとも1種のモノマーを用いて公知の方法により付加重合することによって製造されるものが挙げられる。
【0017】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ソルビトール等の如くヒドロキシル基を2個以上有する少なくとも1種の化合物と、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等のカルボキシル基を2個以上有する少なくとも1種の化合物とを使用し、公知の方法によって製造されるものが挙げられる。また、カプロラクトンの開環重合によって得られるようなポリエステルポリオールであってもよい。
【0018】
さらに、ポリエーテルポリアミンとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の低級アルキレンオキシド又はそれらの混合物を付加重合することにより得られるヒドロキシル基末端ポリオールをアミノ化することにより製造されるものが挙げられる。このようなポリエーテルポリアミンとして、より具体的には、テキサコケミカル社のジェファミン、ポリオキシアルキレンアミンが挙げられる。
【0019】
また、このようなポリオール(B)としては、1〜2.3の範囲内(より好ましくは、1.9〜2.3の範囲内)の公称平均官能基数を有しており、且つ1000〜2500の範囲内(より好ましくは、1500〜2000の範囲内)の数平均分子量を有しているものを用いることが好ましい。公称平均官能基数が前記下限未満では、イソシアネートとの未反応物が発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、混合液を反応発泡せしめる際に独立気泡(独泡)の割合が多くなりやすく、シュリンクが発生しやすくなる傾向にある。また、数平均分子量が前記下限未満では、得られるポリウレタンフォームが硬くなる傾向にあるため、低反発性のポリウレタンフォームが得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、混合液を反応発泡せしめて低反発軟質ポリウレタンフォームを得るときにフォームの陥没が発生しやすくなる傾向にある。また、このようなポリオール(B)の配合量は、イソシアネートインデックス(NCOインデックス)が後述する範囲内となるような量とすることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる鎖延長剤(C)としては、軟質ポリウレタンフォームの作製に用いられる公知の鎖延長剤を使用することができ、例えば、分子量50〜500の範囲のジオール類、ポリオール類、ポリエーテル類が挙げられ、より具体的には、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオールジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の低分子ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の低分子の3官能以上のポリオール類;活性水素化合物を開始剤としてアルキレンオキシドを付加重合することによって得られるヒドロキシル基末端ポリエーテル類;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の窒素原子(アミノ基)を含む低分子のポリオール類が挙げられる。これらの鎖延長剤(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このような鎖延長剤(C)の添加量としては、前記ポリオール(B)100質量部に対して、1〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明にかかる触媒(D)としては、軟質ポリウレタンフォームの作製に用いられる公知の各種ウレタン化触媒や三量化触媒が挙げられ、より具体的には、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン;ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型三級アミン又はこれらの有機酸塩;1−メチイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の三量化触媒が挙げられる。これらの触媒(D)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このような触媒(D)の添加量としては、前記ポリオール(B)100質量部に対して、1〜3質量部の範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明にかかる発泡剤(E)としては、軟質ポリウレタンフォームの作製に用いられる公知の発泡剤を使用することができ、例えば、水等の反応性発泡剤;アセトン、メチレンクロライド、ハイドロフルオロカーボン(例えば、HFC−141B)等の不活性低沸点溶剤が挙げられる。これらの発泡剤(E)の中でも、地球環境への影響が少ないという観点から水が好ましい。これらの発泡剤(E)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、このような発泡剤(E)の添加量としては、前記ポリオール(B)100質量部に対して、1〜5質量部の範囲であることが好ましい。なお、発泡剤(E)として水を用いる場合、水の添加量としては、前記ポリオール(B)100質量部に対して、1〜4質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜3質量部の範囲であることがより好ましい。水の添加量が前記下限未満では、得られるポリウレタンフォームの低密度化が困難となると共に、低反発性のポリウレタンフォームが得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるポリウレタンフォームが硬くなる傾向にあり、低反発性のポリウレタンフォームが得られにくくなる傾向にある。
【0023】
本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームを製造するための混合液は、上述の有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有するものである。また、このような混合液は、必要に応じて他の物質、例えば製泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、無機及び有機充填剤、滑剤、帯電防止剤、補強材を更に含有していてもよい。
【0024】
また、本発明においては、このような混合液中のイソシアネートインデックス〔{(イソシアネート基)/(イソシアネート反応性基)}×100(当量比)〕が、50〜110の範囲であることが好ましく、70〜90の範囲であることがより好ましい。NCOインデックスが前記下限未満では、得られるポリウレタンフォームの表面にべと付き感が生じやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるポリウレタンフォームが硬くなる傾向にあり、低反発性のポリウレタンフォームが得られにくくなる傾向にある。
【0025】
本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームは、前記混合液を反応発泡せしめてなるものである。このように混合液を反応発泡せしめる具体的な方法は特に限定されないが、例えば、前記混合液を金型に注型し、金型中で反応発泡せしめた後、脱型する方法を採用することができる。また、このように混合液を反応発泡せしめるあたり、金型の温度や反応時間は特に限定されないが、一般的には、金型の温度が40〜50程度、反応時間が1〜5分間程度の条件が好適に採用される。そして、このように反応発泡によって得られた本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームにおいては、密度が65〜95kg/mの範囲内(好ましくは、70〜80kg/mの範囲内)にあることが必要である。密度が65kg/m未満では、ポリウレタンフォームを製造する際にフィンガーマークの発生を十分に防止できなくなる。他方、密度が95kg/mを超えると、十分な低反発性を有するポリウレタンフォームが得られなくなる。また、このような本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームの反発弾性率は10〜25%の範囲(より好ましくは、15〜20%の範囲)であることが好ましい。なお、ポリウレタンフォームの密度及び反発弾性率はJIS K6400(1997)に記載の方法に準拠して測定することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。また、実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
【0027】
(使用原料)
<イソシアネート>
C−1104:ポリメリックMDI含有量が55%、ピュアMDI含有量が45%で、ピュアMDI中の4,4’−MDIの含有量が88%のもの、日本ポリウレタン工業社製。
MR−400:ポリメリックMDI含有量が72%、ピュアMDI含有量が28%で、ピュアMDI中の4,4’−MDIの含有量が100%のもの、日本ポリウレタン工業社製。
MT:ピュアMDIの含有量が100%で、ピュアMDI中の4,4’−MDIの含有量が100%のもの、日本ポリウレタン工業社製。
MTL−S:MDIカルボジイミド変性体含有量が30%、ピュアMDI含有量が70%で、ピュアMDI中の4,4’−MDIの含有量が100%のもの、日本ポリウレタン工業社製。
【0028】
<ポリオール>
FA−703:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数3、数平均分子量5000、三洋化成工業社製。
PP−1000:ポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数2、数平均分子量1000、三洋化成工業社製。
【0029】
<鎖延長剤>
1,4−BD:1,4−ブタンジオール、三菱化学社製。
【0030】
<触媒>
TEDA−L33:トリエチレンジアミン33%DPG溶液、東ソー社製。
DMEA:N,N−ジメチルエタノールアミン、日本乳化剤(株)製、商品名「アミノアルコール2Mabs」。
【0031】
<製泡剤>
L3151:製泡剤、モーメンティブ社製。
【0032】
(実施例1〜6及び比較例1〜4)
<軟質ポリウレタンフォームの作製>
実施例1においては、以下のようにして軟質ポリウレタンフォームを得た。すなわち、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、MTL−Sを500部及びC−1104を500部仕込んだ後に混合して有機ポリイソシアネートを調製した。得られた有機ポリイソシアネートにおけるNCO含有量は29.8%であった。一方、FA−703を200部、P−1000を800部、1,4−BDを30部、L3151を10部、DMEAを12部、TEDA−L33を5部、及び水を22部容器に仕込んだ後に混合してポリオールプレミックスを得た。次に、前記有機ポリイソシアネートと前記ポリオールプレミックスとを22〜24℃で温調し、それらをNCOインデックスが70となる割合で混合し、3000rpmで7秒間攪拌しつつ混合した。その後、得られた混合液を40〜50℃の金型(長さ300mm×幅300mm×厚さ100mm)に注型し、5分間反応発泡(キュア)せしめた後、脱型することにより軟質ポリウレタンフォームを得た。
【0033】
また、実施例2〜5においては、有機ポリイソシアネート及びポリオールプレミックスの組成をそれぞれ表1に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを得た。また、実施例6においては、有機ポリイソシアネート及びポリオールプレミックスの組成をそれぞれ表1に記載の通り変更すると共に、用いる金型の体積を変更した以外は実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを得た。さらに、比較例1〜4においては、有機ポリイソシアネート及びポリオールプレミックスの組成をそれぞれ表2に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームの作製を試みた。なお、比較例4においては、軟質ポリウレタンフォームを作製することができたが、比較例1〜3においては、混合液を反応発泡せしめた際にフォームが陥没を起こしてしまい、軟質ポリウレタンフォームを得られなかった。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
<軟質ポリウレタンフォームの成形性の評価>
実施例1〜6及び比較例1〜4について、軟質ポリウレタンフォームの成形性を下記の基準に基づいて評価した。得られた結果を表3に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜4における有機ポリイソシアネートの組成〔ピュアMDI、ポリメリックMDI及びMDIカルボジイミド変性体の各含有比率(単位:質量%)〕及びNCO含有量、並びにポリオールの公称平均官能基数及び数平均分子量を表3に示す。
◎:成形性が良好であった。
○:成形の際にやや独泡が強い(独泡の割合が多い)傾向にあった。
△:成形の際に独泡が強く、シュリンクを防止する目的でクラッシングが必要であった。
×:成形の際にフォームが陥没を起こしてしまった。
【0037】
【表3】

【0038】
<軟質ポリウレタンフォームの物性測定及びフィンガーマークの評価>
実施例1〜6及び比較例4で得られた軟質ポリウレタンフォームについて、以下の方法により軟質ポリウレタンフォームの物性を測定し、さらにフィンガーマークの有無を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0039】
(i)フォーム物性の測定方法
得られた軟質ポリウレタンフォームについて、以下のようにして諸物性(フォーム物性)を測定した。すなわち、JIS K6400(1997)に記載の方法に準拠して以下の諸物性〔密度(コア密度)、反発弾性率、機械的物性(引張強度、破断時伸び率、引裂強度)、圧縮永久歪み〕について測定を行った。
【0040】
(ii)フィンガーマークの評価方法
得られた軟質ポリウレタンフォームの表面を目視にて観察することによりフィンガーマークを評価した。すなわち、製造後5分経過した軟質ポリウレタンフォームを試料とし、肉眼による観察により試料の表面にフィンガーマーク(ポリウレタンフォームを脱型したときに生じる手形等)の存在が確認された場合を「×」と判定し、フィンガーマークの存在が確認されなかった場合を「○」と判定した。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示した結果から明らかなように、本発明の軟質ポリウレタンフォーム(実施例1〜6)は、反発弾性率が17〜20の範囲内という低反発性のフォームでありながら、フィンガーマークの発生が十分に抑制されたものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、フィンガーマークの発生が十分に抑制された低反発軟質ポリウレタンフォームを提供することが可能となる。
【0044】
したがって、本発明の低反発軟質ポリウレタンフォームは、椅子のクッション材、枕、寝具用マットレス等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、鎖延長剤(C)、触媒(D)及び発泡剤(E)を含有する混合液を反応発泡せしめてなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記軟質ポリウレタンフォームの密度が65〜95kg/mの範囲内にあり、且つ、
前記有機ポリイソシアネート(A)が、該有機ポリイソシアネート(A)100質量%に対して、52.5〜62.5質量%のジフェニルメタンジイソシアネートと、16.5〜38.5質量%のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートと、9.0〜21.0質量%のジフェニルメタンジイソシアネートカルボジイミド変性体とを含有するものであることを特徴とする低反発軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記ポリオール(B)が、1〜2.3の範囲内の公称平均官能基数を有しており、且つ1000〜2500の範囲内の数平均分子量を有しているものであることを特徴とする請求項1に記載の低反発軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
反発弾性率が10〜25%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低反発軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−185155(P2009−185155A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25565(P2008−25565)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】