説明

低品位炭乾燥装置およびこれを備えた石炭焚き火力発電設備

【課題】本来利用価値の小さい廃熱源等を用い、低品位炭利用システム全体の高エネルギー効率化を図ることにより、低品位炭の乾燥の消費エネルギーを抑えた低品位炭乾燥装置を提供することを目的とする。
【解決手段】低品位炭乾燥装置1は、減圧容器5内に、周囲環境に存在する海水等の冷熱源を冷媒とする凝縮器7と、減圧容器5内を減圧して非凝縮性ガスを吸引する減圧ポンプ15と、石炭焚き火力発電設備の100℃未満の低温廃熱源を温熱源とする熱媒管と、熱媒管によって加熱され、供給された石炭を攪拌して乾燥させる乾燥回転胴3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低品位炭乾燥装置に関し、より好ましくは、石炭焚き火力発電設備あるいは、石炭ガス化プラント等に用いられて低品位炭利用システム全体のエネルギー高効率化を図る石炭乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低品位炭の中には、褐炭や亜歴青炭などがあり、世界の石炭資源の約半分を占める。しかしながら、褐炭や亜歴青炭は石炭焚き火力発電設備等に使用され難い。その最大の理由は、水分含有量が高いことである。具体的には、亜歴青炭の水分量が約25wt%〜約45wt%であり、褐炭に至っては、水分量が約50wt%〜約70wt%である。したがって、低品位炭は、発電用燃料として高発熱量が要求されるにもかかわらず、重量当たりの発熱量が高品位炭に比べ低い。
【0003】
そこで、低品位炭の発熱量を改善する目的で、脱水技術の向上が図られてきており、実用化に向けて、大別して蒸発方式と非蒸発方式がある。前者は、特開昭61−250097号公報(特許文献1)のように、石炭を蒸発乾燥させる方法で、幾つか実用例はあるが、水から水蒸気へと相転移状態を経由するため、消費エネルギーが大きい。一方、後者は、石炭自体の性状を親水性から疎水性に変性して、その結果として脱水させる方法で、水相中での反応であるため、消費エネルギーは比較的小さいが、高温高圧容器を必要とするため、実用例は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−250097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された蒸発方式は、単位重量当たりの熱容量の高い過熱スチームを用いて、水分含有量の高い低品位炭を蒸発乾燥させるものである。これは、過熱スチームにより低品位炭を加熱することで、表面水分の水蒸気分圧を高くし、蒸発を促進するものである。しかし、過熱スチームを必要とするため、消費エネルギーが必然的に大きくなるという欠点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、本来利用価値の小さい廃熱源等を用い、低品位炭利用システム全体の高エネルギー効率化を図ることにより、低品位炭の乾燥の消費エネルギーを抑えた低品位炭乾燥装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の石炭乾燥装置は以下の手段を採用する。
本発明の石炭乾燥装置は、減圧が可能な筐体内に設けられ、供給された石炭を胴の外表面に敷設された熱媒管内に供給される100℃未満の熱媒によって加熱され、さらに胴自体を回転させることで内部の石炭を攪拌して乾燥させ、乾燥によって発生する排ガスを胴外部に排出する構造を有する乾燥回転胴と、前記乾燥回転胴から排出された排ガスに含まれる凝縮成分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器に接続され、前記排ガスに含まれる不凝縮成分を吸引する減圧ポンプとを備えている。
【0008】
上記筐体内に設けられている乾燥回転胴内に供給された石炭は、減圧下で攪拌されながら熱媒管内に供給される熱媒よって加熱されて乾燥する。乾燥によって石炭から発生したガスのうち、大部分の凝縮性ガスは凝縮器によって凝縮されて回収され、残りの微小量の非凝縮性ガスは減圧ポンプによって排気される。
【0009】
筐体内は、石炭を乾燥させた際に発生した凝縮性ガスを凝縮器によって凝縮することにより減圧しており、筐体内に非凝縮性ガスが残っている場合は、減圧ポンプによって非凝縮性ガスを排気することにより筐体内の減圧状態が維持される。筐体内は、減圧ポンプ及び凝縮器によって減圧状態が維持されているので、石炭表面の水の沸点が大気圧のときに比べて低下している。したがって、発電プラント等の周囲設備から100℃未満(更に言えば50℃〜80℃)の低温熱源を用いて石炭表面の水分を蒸発させることができる。また、蒸発した水分を凝縮させるには周囲環境に存在する海水等の冷熱源を用いれば良い。
【0010】
このように、石炭を加温する温熱源は、発電設備の100℃未満の低温熱源を使用し、蒸発した水分を凝縮させる冷熱源は、周囲の環境温度とされた海水等を使用するため、過剰な発生エネルギーを必要とする過熱スチームに比べ極めて消費エネルギーが少なく環境に優しい石炭乾燥機を提供することが出来る。
なお、「周囲環境に存在する海水等の冷熱源」は、周囲設備の近くに存在する海や河川等の水および冷却された清水等を用いることができ、また、空気も用いることが可能である。
【0011】
冷熱源として利用される上記冷却された清水等とは、例えばクーリングタワーを用いて冷却された清水のことであり、また、冷熱源として利用される上記空気とは例えば空冷コンデンサーを用いる場合に使用される空気である。
【0012】
さらに、本発明の石炭乾燥装置に供給された前記石炭は、前記乾燥回転胴の一端から連続的に供給され、該乾燥回転胴の他端から排出される。
【0013】
乾燥回転胴の一端から石炭を連続的に供給して他端から排出することとしたので、石炭の連続処理が可能となり、単位時間当たりの処理量が多い石炭乾燥装置を提供することが出来る。
【0014】
また、本発明の石炭焚き火力発電設備は、上記の石炭乾燥装置を備えているため、石炭焚き火力発電設備の低品位の廃熱源を上記の石炭乾燥装置の温熱源として利用出来るため、エネルギー効率の良い石炭焚き火力発電設備を提供することが出来る。
【0015】
また、本発明の石炭ガス化プラントは、上記の石炭乾燥装置を備えているため、石炭ガス化プラント設備の低品位の廃熱源を上記の石炭乾燥装置の温熱源として利用出来るため、エネルギー効率の良い石炭ガス化プラントを提供することが出来る。
なお、石炭ガス化プラントとしては、典型的には石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)プラントが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
石炭を加温する温熱源は、発電設備の100℃未満の低温熱源を使用し、蒸発した水分を凝縮させる冷熱源は、周囲の環境温度とされた海水等を使用する。よって、消費エネルギーが少なく環境に優しい石炭乾燥機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の低品位炭乾燥装置の一実施形態を示した縦断面図である。
【図2】本発明の図1の囲いIの拡大図である。
【図3】図1の低品位炭乾燥装置に対する熱源を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の低品位炭乾燥装置にかかる一実施形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
図1には、褐炭や亜瀝青炭等のように高含水率とされた低品位炭を乾燥させる低品位炭乾燥装置の縦断面が示されている。この低品位炭乾燥装置1は、例えば石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)プラントに併設されている。低品位炭乾燥装置1によって乾燥された低品位炭が、石炭粉砕機であるミルに供給されて粉砕された後、ガス化炉(図示せず)にてガス化される。
低品位炭乾燥装置1は、減圧容器(筐体)5内に、乾燥回転胴3と、低品位炭から蒸発した水分を凝縮させる凝縮器7とを備えている。凝縮器7は、減圧容器5の一部とされた凝縮槽8内に設けられている。凝縮槽8には、低品位炭から発生した非凝縮性ガスを排気する減圧ポンプ15が接続されている。
【0019】
乾燥回転胴3の乾燥前低品位炭の投入口は、ドラムフィーダまたはロータリーフィーダ11を介してホッパに接続されている。乾燥回転胴3はパッキン17でシール性を保ちながら、プーリーを介してモータ13で回転する。回転乾燥胴3の回転軸は、重力方向に対して傾いた角度で設けられている。また、温熱源(図3参照)として利用される温水も、シール性を保ちながら乾燥回転胴3に供給される。乾燥回転胴3の内部には、所定間隔で回転軸に対して略直角方向に立設され、螺旋状あるいはリング状である羽根9が設けられている。そして、乾燥回転胴3の乾燥後低品位炭の排出口は、それぞれドラムフィーダまたはロータリーフィーダ12を介してミルへと接続されている。
冷熱源(図3参照)としての海水等は、凝縮槽8の内部に設けられた凝縮器7へ供給される。凝縮槽8の底部は、凝縮器7によって凝縮された凝縮水が貯留される形状となっている。凝縮槽8の底部に貯留された凝縮水は、その下部に設けられた排出弁14を介して外部へと排出される。
【0020】
図2には、図1の囲いIで示した部分の拡大図が示されている。図2に示されているように、乾燥回転胴3は、部分的にメッシュ構造とされた胴本体3aの外面に対して、温水チューブ(熱媒管)19がコイル状に巻回された構成となっている。胴本体3aは、部分的にメッシュ構造とされているので、乾燥回転胴3の内部も減圧雰囲気となる。また、温水チューブ19の内部を流れる温水は、乾燥回転胴3が運転あるいは停止の状態に関わらず、供給することが可能となっている。
【0021】
図3に示すように、低品位炭乾燥装置1は、例えば海岸付近に建設された石炭ガス化複合発電プラント(周囲設備)21に設けられている。この石炭ガス化複合発電プラント21から低品位炭乾燥装置1の乾燥回転胴3へ温熱源となる温水が供給され、海から冷熱源となる海水が凝縮器7へ冷水が供給される。温熱源となる温水は、100℃未満(例えば50℃〜80℃)の低温廃熱源が用いられる。温熱源および冷熱源の流れる方向は、対象媒体の移動方向に対して向流が望ましいが、並流であっても良い。
【0022】
以上説明した本実施形態にかかる低品位炭乾燥装置1は、次のように作動する。
ホッパより導入された乾燥前の低品位炭は、乾燥回転胴3の内部の減圧雰囲気を変えることなく、入口付近のドラムフィーダ11から所定の時間間隔をおいて連続的に供給される。そして、低品位炭は、回転する乾燥回転胴3の内部を、図中の矢印で示すように羽根9に掬い上げられて斜めに上り、乾燥回転胴3の内部の上部位置から重力により落下する。この上下動を繰り返しながら、低品位炭は攪拌されながら断続的に下部位置へと移動する。この時、低品位炭の表面が、新たな面を露出するようになり、乾燥回転胴3の外面を構成する温水チューブ19内の温熱源により間接的に加熱されることにより、効率的に水分が蒸発する。
また、蒸発した水分は凝縮槽8に移行し、凝縮器7で凝縮し、底部に貯留される。凝縮槽8の底部に貯留された凝縮水は、所定の間隔で排出弁14を開けることにより、凝縮槽8下部から排出される。減圧容器5内に設けられている乾燥回転胴3の内部は、凝縮器7による凝縮性ガスの除去と、減圧ポンプ15による非凝縮性ガスの排気によって効率良く真空度が保たれる。
乾燥後の低品位炭は、乾燥回転胴3の内部の減圧雰囲気を変えることなく、出口付近のドラムフィーダ11から、連続的にミルへ排出される。また、減圧ポンプ15は、高真空を要求せず、温熱源の温度の水蒸気圧程度の真空度を保てる性能があれば良い。
【0023】
次に、低品位炭を乾燥させるために使用する熱源について説明する。
乾燥回転胴3に供給される温熱源として、スチームを用いると、スチームの発生に過剰なエネルギーを消費する。これに対して、本実施形態では、温熱源として、石炭焚き火力発電設備21で副産物として発生したような利用価値の低い100℃未満の温排水などを使用する。その温排水は高温であれば良いが、例えば50℃〜80℃程度でも利用は可能であり、低品位炭に含まれる水分を蒸発させる蒸発潜熱として使用し、新たなエネルギーを使用することなく供給する。また、凝縮槽8に供給される冷熱源は、周囲の環境温度として存在する海水、地下水、河川水、雪解け水などを使用する。従って、新たなエネルギーを殆ど必要としない。
【0024】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
低品位炭を加温する温熱源は、発電設備の100℃未満の低温廃熱源を使用し、蒸発した水分を凝縮させる冷熱源は、周囲の環境温度とされた海水等を使用したので、過剰な発生エネルギーを必要とする過熱スチームに比べ極めて消費エネルギーが少なく環境に優しい低品位炭乾燥装置1を提供することが出来る。
【符号の説明】
【0025】
1 低品位炭乾燥装置
3 乾燥回転胴
3a 胴本体
5 減圧容器(筐体)
7 凝縮器
8 凝縮槽
9 羽根
11、12 ドラムフィーダ(ロータリーフィーダ)
13 モータ
14 排出弁
15 減圧ポンプ
17 パッキン
19 温水チューブ(熱媒菅)
21 石炭ガス化複合発電プラント(周囲設備)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられ、周囲環境に存在する海水等の冷熱源を冷媒とする凝縮器と、
前記筐体内を減圧して非凝縮性ガスを吸引する減圧ポンプと、
周囲設備の100℃未満の低温廃熱源を温熱源とする熱媒管と、
前記筐体内に設けられるとともに、前記熱媒管によって加熱され、供給された石炭を攪拌して乾燥させる乾燥回転胴と、
を備えた石炭乾燥装置。
【請求項2】
前記石炭は、前記乾燥回転胴の一端から連続的に供給され、該乾燥回転胴の他端から排出される請求項1に記載の石炭乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の石炭乾燥装置を備えた石炭焚き火力発電設備。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の石炭乾燥装置を備えた石炭ガス化プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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