説明

低度の水溶性ポリマーを含む改変血液因子

本発明は、血液因子にコンジュゲートされている低レベルの水溶性ポリマー分子を含むが、より多くの数の水溶性ポリマー部分を有する分子に類似した、またはより優れた生物活性を示す、改変血液因子の調製のための材料および方法に一般に関する。本発明は、少量の水溶性ポリマーを含む血液因子変異体を生成するための材料および方法を目的とする。一態様では、本発明は、組換え血液因子および血液因子1分子につき少なくとも1個かつ10個以下の水溶性ポリマー部分を含む改変血液因子分子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低レベルの水溶性ポリマー分子を含むが、より多くの水溶性ポリマー部分を有する分子に類似した生物活性を示す、改変血液因子の調製のための材料および方法に一般に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、一連の成分、特にフィブリノーゲン、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子およびフォン・ヴィレブランド因子の連続的な相互作用を含む複雑な過程である。これらの成分の1つが欠損し、またはその機能性が阻害されると、血液凝固傾向の増加または凝固不能が引き起こされることがあり、そのいずれも一部の患者では生命にかかわることがある。
【0003】
第VIII因子は、血液凝固をもたらす反応カスケードにおいて第X因子を第Xa因子に変換する第IXa因子のコファクターである。血液中の第VIII因子活性量の欠乏は、主に男性に影響を及ぼす遺伝性の状態である凝固障害、血友病Aをもたらす。現在、血友病Aは、ヒト血漿に由来するかまたは組換えDNA技術を使って製造される、第VIII因子の治療調製物によって治療される。そのような調製物は、制御不能の出血を防ぐ(予防)ために、出血事例に応じて、または頻繁に一定の間隔をおいて投与される。
【0004】
フォン・ヴィレブランド因子(VWF)は、第VIII因子と複合体を形成して血漿中を循環し、それは第VIII因子タンパク質を安定化し、このタンパク質をタンパク質分解から保護する。VWFは、血小板凝集において機能するため、血液凝固を直接に妨害もする。フォン・ヴィレブランド欠乏症(VWD)(別名フォン・ヴィレブランド症候群)は、VWFの欠乏または過剰発現のいずれかから生じる。VWFの欠乏は、VWFコファクターを欠く第VIII因子が速やかに分解するため、血友病に類似した疾患をもたらす。
【0005】
血友病Aおよびフォン・ヴィレブランド症候群の治療では、患者を精製された第VII因子、VWFまたは第VIII因子/VWF複合体で治療するいくつかの試みがあった。しかし、投与された外因性タンパク質に対する抗体の発生が治療効力を低下させることが明らかになっており、これらの患者の治療を困難にしている。例えば、50%の頻度で抗FVIII抗体を生じる重度および中等度の血友病患者で、抗FVIII抗体が特に多発する(非特許文献1;非特許文献2)。in vivoでより高い効力を有する治療用タンパク質をより低い用量で投与すれば、投与される血液因子に対する抗体の出現を減少または制限するのに役立つであろう。
【0006】
治療用タンパク質の薬物動態学的および免疫学的特性は、ポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性ポリマーとのコンジュゲーションによって改善することができる。詳細には、生理的活性タンパク質を生理的に許容されるポリマー分子に結合させることにより、そのin vivo半減期をかなり延長することができる。分子のPEG化は、酵素的分解に対する薬剤の耐性の増加、投薬頻度の低下、免疫原性の低下、物理的および熱的安定性の増加、溶解性の増加、液体安定性の増加、ならびに凝集の減少をもたらすこともできる。
【0007】
特許文献1は、第VIII因子(FVIII)にポリマー分子(デキストラン)をコンジュゲートさせることにより、FVIIIタンパク質は、トロンビンによって活性化可能になり、抗原性および免疫活性が相当低下し、哺乳動物の血流中でのin vivo保持時間が相当延長することを記載している。特許文献2は、FVIIIを生理的に許容されるポリマー分子にコンジュゲートさせることにより、(i)FVIIIのin vivo加水分解に対する耐性を増加させ、したがって投与後のFVIIIの活性を延長すること、(ii)未改変タンパク質よりもFVIIIのin vivo循環寿命を相当延長すること、および(iii)FVIIIの血流中への吸収時間を増加させることによってFVIIIのin vivo機能が改善されることを記載する。特許文献3は、タンパク質がそのタンパク質のカルボニル基を介してポリ(アルキレンオキシド)に共有結合している、FVIIIと第IX因子(FIX)のコンジュゲートを記載する。さらに、特許文献4には、生理的に許容されるポリマー分子、特にポリ(エチレングリコール)(「PEG」)にコンジュゲートさせることにより、FIXのin vivo機能が改善されることが記載されている。特許文献5には、比活性を保持するPEG化FVIIIが開示された。
【0008】
タンパク質などの活性剤への水溶性ポリマーのコンジュゲーションは、安定なポリマー−タンパク質コンジュゲート、あるいは水溶性ポリマーが遊離可能な共有結合(プロドラッグの概念)、すなわち加水分解性、分解性または遊離可能なリンカーを介してタンパク質に結合しているポリマー−タンパク質コンジュゲートを調製することによって実施することができる。例えば、遊離可能なPEG部分は、2つのPEG鎖を含む9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)コンジュゲーション系(Nektar Inc.、Huntsville AL)を用いて開発されている。さらに、タンパク質のリシン残基の化学的修飾に有用であるN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)基を、メトキシカルボニル基を介してフルオレン環系に連結させて、遊離可能なPEG部分を生成することができる。特許文献6(参照により本明細書に組み込まれる)は、遊離可能なPEGの概念に基づく、一連のPEG化された組換えFVIII変異体を記載する。
【0009】
治療用タンパク質に対して比較的高い程度の修飾および水溶性ポリマー含量をもたらす化学プロセスは、調製に必要とされる試薬が多量であるため経済的ではない。さらに、高い程度の水溶性ポリマー、例えばPEGは、ポリマーおよびリンカーが多量であるため、毒物学的または免疫学的リスクの増加をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,970,300号明細書
【特許文献2】国際公開第94/15625号
【特許文献3】米国特許第6,037,452号明細書
【特許文献4】国際公開第94/29370号
【特許文献5】国際公開第2007/126808号
【特許文献6】国際公開第2008/082669号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gillesら、Blood 82巻:2452〜61頁、1993年
【非特許文献2】Lacroix−Desmazesら、J Immunol. 177巻:1355〜63頁、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当技術分野では、結果として生じる毒性または免疫学的影響を伴わずに治療用タンパク質の半減期および安定性を改善する水溶性ポリマーを含む治療組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少量の水溶性ポリマーを含む血液因子変異体を生成するための材料および方法を目的とする。一態様では、本発明は、組換え血液因子および血液因子1分子につき少なくとも1個かつ10個以下の水溶性ポリマー部分を含む改変血液因子分子を提供する。一実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき少なくとも2、3、4、5、6、7、8または9個の水溶性ポリマー部分を含む。
【0014】
さらなる実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき4個以上8個以下の水溶性ポリマー部分(すなわち、4、5、6、7および8個のポリマー部分を含む)を含む。一部の実施形態では、血液因子は、血液因子1分子につき1個以上4個以下の水溶性ポリマーを含む。他の実施形態では、血液因子は、血液因子1分子につき4個以上6個以下の水溶性ポリマーを含む。さらに他の実施形態では、血液因子は、血液因子1分子につき1〜2個のポリマーを含む。
【0015】
関連する実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき8個の水溶性ポリマー部分を含む。さらなる実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき5個の水溶性ポリマー部分を含む。別の実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき4個の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき2個の水溶性ポリマー部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、血液因子1分子につき1個の水溶性ポリマーを含む。
【0016】
水溶性ポリマー部分は、安定なリンカーを介して、または遊離可能もしくは分解可能なリンカーを介して血液因子分子に結合していることが想定される。一実施形態では、遊離可能なリンカーは、加水分解性リンカーである。
【0017】
一実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン(polyphosphasphazene)、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー類、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖類、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、デンプンもしくはデンプン誘導体、ヒアルロン酸、キチン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリシアル酸(PSA)およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
関連する実施形態では、水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。PEG分子は直鎖状PEG部分または分枝状PEG部分であることがさらに企図される。
【0019】
別の実施形態では、PEGは3kD〜200kDの分子量を有する。関連する実施形態では、PEGの平均分子量は、約3〜200キロダルトン(「kDa」)、約5kDa〜約120kDa、約10kDa〜約100kDa、約20kDa〜約50kDa、約10kDa〜約25kDa、約5kDa〜約50kDa、または約5kDa〜約10kDaの範囲である。
【0020】
本発明は、改変血液因子が、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンからなる群から選択されることを企図する。一実施形態では、血液因子分子は第VIII因子である。一実施形態では、血液因子分子は第VIIa因子である。一実施形態では、血液因子分子は第IX因子である。さらなる実施形態では、血液因子分子はヒトのものである。
【0021】
一実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき少なくとも4個かつ10個未満のPEG部分を含む。別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上8個以下のPEG部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個以上4個以下のPEG部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のPEG部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個または2個のPEG部分を含む。
【0022】
さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個以上4個以下のPSA部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のPSA部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個または2個のPSA部分を含む。
【0023】
別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のPEGまたはPSA部分を含み、ポリマーは、遊離可能なリンカーまたは加水分解性のリンカーによって連結される。別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個または2個のPEGまたはPSA部分を含み、ポリマーは、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性のリンカーによって連結される。
【0024】
別の実施形態では、改変血液因子は、FVIIa1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施形態では、改変血液因子は、FVIIa1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施形態では、水溶性ポリマーは、PEGまたはPSAからなる群から選択される。一実施形態では、ポリマーは、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性のリンカーを介して連結される。
【0025】
さらに別の実施形態では、改変血液因子は、FVIIa1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む。なおさらなる実施形態では、改変血液因子は、FIX1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む。特定の実施形態では、水溶性ポリマーは、PEGまたはPSAからなる群から選択される。一実施形態では、ポリマーは、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性のリンカーを介して連結される。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の改変血液因子を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、その血液因子分子にコンジュゲートされている少数の水溶性ポリマーを有する改変血液因子分子を作製する方法であって、前記血液因子分子への少なくとも1個かつ10個未満の水溶性ポリマーの結合を可能にする条件下で、前記血液因子分子を、血液因子分子に対して30M過剰以下の水溶性ポリマーであるモル濃度過剰の水溶性ポリマーと接触させる工程を含む方法を企図する。
【0028】
一実施形態では、モル濃度過剰の水溶性ポリマーは、2M過剰〜30M過剰である。別の実施形態では、モル濃度過剰の水溶性ポリマーは、10M過剰〜25M過剰である。さらに別の実施形態では、モル濃度過剰の水溶性ポリマーは、約2M、約5M、約10M、約15M、約20M、約25Mまたは約30M過剰である。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載の改変血液因子の治療的有効量を患者に投与する工程を含む、血液凝固障害を起こしている被験体を治療する方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、血液凝固障害は、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド症候群、第X因子欠乏症、第VII因子欠乏症、アレキサンダー病、ローゼンタール症候群(血友病C)および第XIII因子欠乏症からなる群から選択される。
【0031】
関連する実施形態では、血液凝固障害は血友病Aであり、改変血液因子は第VIII因子分子を含む。
【0032】
さらなる実施形態では、本方法で用いられる水溶性ポリマーは、上記の水溶性ポリマーである。関連する実施形態では、水溶性ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0033】
さらに別の実施形態では、本方法で用いられる血液因子は、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンからなる群から選択される。一実施形態では、血液因子分子は第VIII因子である。さらに別の実施形態では、血液因子はFVIIaである。さらなる実施形態では、血液因子はFIXである。さらなる実施形態では、血液因子分子はヒトのものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】図1は、低モル濃度過剰のPEGを使用して調製した低度にペグ化された第VIII因子のSDS−PAGEゲルを示す。図1A:抗FVIII抗体を用いて染色、図1B:抗PEG抗体を用いて染色。
【図1B】図1は、低モル濃度過剰のPEGを使用して調製した低度にペグ化された第VIII因子のSDS−PAGEゲルを示す。図1A:抗FVIII抗体を用いて染色、図1B:抗PEG抗体を用いて染色。
【図2】図2は、FVIII欠乏マウスモデルにおいてin vivoで検出された低度にペグ化されたFVIIIの薬物動態プロファイルを示す。このデータは、200U/kgに用量調節している。
【図3】図3は、FVII欠乏マウスモデルにおいてin vivoで検出された、ペグ化されたタンパク質のAUC(図3A)、半減期(HL、図3B)、および平均滞留時間(MRT、図3C)と相関させたFVIIIのペグ化度の比較を示す。
【図4】図4は、FVIII欠乏マウスモデルにおいてin vivoで検出された低度にポリシアル酸化されたrFVIIIの薬物動態プロファイルを示す。このデータは、200U/kgに調節している。
【図5】表1である。
【図6】表2である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、少量の水溶性ポリマーを含む血液因子変異体を生成するための材料および方法を目的とし、この水溶性ポリマー、例えばPEGの量は、分子の半減期を延長するのに十分である。少量の水溶性ポリマーを含む改変血液因子は、標準の調製プロトコールを用いて調製される血液因子分子と比較して毒性が低いことを実証することが企図される。
【0036】
他に定義されていない場合は、本明細書で用いるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、この発明で用いられる用語の多くの一般的定義を当業者に提供する:Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版1994年);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker編、1988年);THE GLOSSARY OF GENETICS、第5版、R. Riegerら(編)、Springer Verlag(1991年);およびHaleおよびMarham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991年)。
【0037】
本明細書で引用される各刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それが本開示と矛盾しない程度に参照によりその全体が組み込まれる。
【0038】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数体を含む。
【0039】
本明細書で用いるように、以下の用語は、特に明記しない限りそれらに付される意味を有する。
【0040】
用語「改変血液因子」は、水溶性ポリマーへのコンジュゲーション、追加の炭水化物部分へのコンジュゲーションなどの1つまたは複数の改変を有するか、さもなければ天然または野生型の血液凝固因子から改変された血液因子を指す。本明細書で用いる「血液因子」または「血液凝固因子」は、凝固カスケードに関与するものを含む、被験体で血液凝固に関与するタンパク質を指す。血液因子には、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
用語「タンパク質」は、任意のタンパク質、タンパク質複合体またはポリペプチドを指し、ペプチド結合を介して連結されるアミノ酸残基で構成される組換えタンパク質、タンパク質複合体およびポリペプチドを含む。タンパク質は、in vivo源(すなわち、天然に存在する)からの単離によって、合成法によって、または組換えDNA技術によって得られる。合成ポリペプチドは、例えば自動ポリペプチドシンセサイザーを用いて合成される。本発明によって用いられる組換えタンパク質は、本明細書で下に記載される、当技術分野で公知である任意の方法によって生成される。一実施形態では、タンパク質は生理活性タンパク質であり、治療タンパク質またはその生物活性誘導体を含む。用語「生物活性誘導体」は、そのタンパク質の実質的に同じ機能的および/または生物学的特性を有するタンパク質の誘導体を指す。用語「タンパク質」は、大きなポリペプチドを一般的に指す。用語「ペプチド」は、短いポリペプチドを一般的に指す。相違に関係なく、本明細書で用いるように、ポリペプチド、タンパク質およびペプチドは互換的に用いられる。
【0042】
ポリペプチドの「断片」は、完全長ポリペプチドまたはタンパク質発現生成物よりも小さな、ポリペプチドの任意の部分を指す。一態様では、断片は、1つまたは複数のアミノ酸残基が完全長ポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端から除去されている、完全長ポリペプチドの欠失類似体である。したがって、「断片」は、下に記載される欠失類似体のサブセットである。
【0043】
「類似体(analogue)」、「類似体(analog)」または「誘導体」は、化合物、例えばペプチドであり、特定の例では異なる程度にではあるが、天然に存在する分子に構造が実質的に類似し、同じ生物活性を有するポリペプチドを指す。類似体は、その類似体が由来する天然に存在するポリペプチドと比較して、(i)そのポリペプチドの1つまたは複数の末端および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つまたは複数の内部領域における1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失、(ii)そのポリペプチドの1つまたは複数の末端(一般的に「付加」類似体)および/または天然に存在するポリペプチド配列の1つまたは複数の内部領域(一般的に「挿入」類似体)における1つまたは複数のアミノ酸の挿入または付加、あるいは(iii)天然に存在するポリペプチド配列での1つまたは複数のアミノ酸の他のアミノ酸に代えての置換を含む1つまたは複数の変異に基づき、それらのアミノ酸配列の組成が異なる。
【0044】
一態様では、類似体は、所与の化合物、例えばペプチドと約70%の配列類似性であるが、100%未満の配列類似性を示す。一態様では、そのような類似体または誘導体は、それらに限定されないが例として、ホモアルギニン、オルニチン、ペニシラミンおよびノルバリンを含む天然に存在しないアミノ酸残基、ならびに天然に存在するアミノ酸残基で構成される。別の態様では、そのような類似体または誘導体は、1つまたは複数のD−アミノ酸残基で構成されるか、または2つ以上のアミノ酸残基の間で非ペプチド相互連結(interlinkage)を含む。本明細書で用いる用語「に由来する」は、野生型または天然に存在するポリペプチド配列またはペプチド配列の改変形(アミノ酸置換または欠失を含む)であって、その誘導体配列が、野生型または天然に存在する配列と約70%、しかし100%未満の配列類似性を共有するように、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失を有するポリペプチドまたはペプチド配列を指す。一実施形態では、誘導体は、その断片が、野生型ポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸の長さにわたって実質的に相同(すなわち、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%相同)である、ポリペプチドの断片であることができる。
【0045】
配列比較のために、一般的に、1つの配列が参照配列の役割を演じ、それと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づき、参照配列と比較した試験配列(複数可)の配列同一性割合を次に計算する。
【0046】
比較のために最適な配列の整列は、例えば、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2巻:482頁(1981年)のローカルホモロジーアルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48巻:443頁(1970年)のホモロジーアラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁(1988年)の類似性検索法、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピュータによる実行、または目視検査によって実行することができる。有用なアルゴリズムの一例はPILEUPであり、それはFengおよびDoolittle、J. Mol. Evol. 35巻:351〜360頁(1987年)のプログレッシブアラインメント法の簡略化したものを使い、HigginsおよびSharp、CABIOS 5巻:151〜153頁(1989年)によって記載されている方法に類似する。配列の複数の整列を生成するのに有用な別のアルゴリズムは、Clustal W(Thompsonら、Nucleic Acids Research 22巻:4673〜4680頁(1994年))である。配列同一性割合および配列類似性を決定するために適するアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムである(Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁(1990年)、HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:10915頁(1989年)、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873〜5787頁(1993年))。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公開されている。
【0047】
置換は、置換されるアミノ酸およびそれを置換するアミノ酸の物理化学的または機能的関連性に基づき、保存的であるかまたは非保存的である。この種の置換は、当技術分野において周知である。あるいは、本発明は、非保存的でもある置換を包含する。例示的な保存的置換が、Lehninger、(Biochemistry、第2版、Worth Publishers, Inc.、New York(1975年)、71〜77頁)に記載され、下に提示される。
【0048】
【数1】

あるいは、例示的な保存的置換をすぐ下に提示する。
【0049】
【数2】

用語「変異体」は、通常その分子の一部ではない追加の化学物質部分を含むように改変される、タンパク質またはその類似体を指す。そのような部分は、様々な態様で、例えば、それらに限定されないが、分子の溶解性、吸収および生物学的半減期を改善する。あるいはそれらの部分は、分子の毒性を低減させること、分子の任意の望ましくない副作用を除去するかまたは減弱させることなどができる。そのような効果を媒介することができる部分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980年)に開示されている。そのような部分を分子に結合させる手順は、当技術分野で周知である。特定の態様では、非限定的に、変異体は、グリコシル化、PEG化またはポリシアリル化によって改変されるポリペプチドである。
【0050】
タンパク質またはポリペプチドに適用される用語「天然に存在する」は、天然で見られるタンパク質を指す。例えば、天然源から単離され、研究室で人によって故意に改変されていない生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。用語「天然に存在する」および「野生型」は、全体を介して互換的に用いられる。
【0051】
タンパク質またはポリペプチドに適用される用語「血漿由来」は、被験体の血漿または血清で見られる、天然に存在するポリペプチドまたはその断片を指す。
【0052】
用語「水溶性ポリマー」は、水溶液に実質的に溶解性であるかまたは懸濁液の形態で存在し、薬学的に有効な量での前記ポリマーにコンジュゲートされたタンパク質の投与後に哺乳動物に実質的にいかなる悪影響も及ぼさず、生体適合性であるとみなすことができるポリマー分子を指す。一実施形態では、生理的に許容される分子は、約2〜約300個の反復単位を含む。例示的な水溶性ポリマーには、それらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などのポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー類、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストラン、デンプンもしくはデンプン誘導体、ヒアルロン酸およびキチン、ポリ(メタ)アクリレート、ならびに上のいずれかの組合せが含まれる。
【0053】
水溶性ポリマー分子は特定の構造に限定されず、特定の態様では、分枝状、多重アーム、樹状であるか、または、分解可能、遊離可能もしくは加水分解性の結合を有する。さらに、ポリマー分子の内部構造は、さらに他の態様では、任意の数の異なるパターンで組織され、それらに限定されないが、ホモポリマー、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互トリポリマー、ランダムトリポリマーおよびブロックトリポリマーからなる群から選択される。
【0054】
用語「PEG化(ペグ化)」は、1つまたは複数のPEG部分に結合しているタンパク質、タンパク質複合体またはポリペプチドを指す。本明細書で用いる用語「PEG化」は、1つまたは複数のPEGをタンパク質に結合する工程を指す。一実施形態では、前記PEGの分子量は、2〜200kDa、5〜120kDa、10〜100kDa、20〜50kDa、10〜25kDa、5kDa〜10kDa、または2kDa〜5kDaの範囲にある。
【0055】
用語「ポリシアリル化」は、1つまたは複数のポリシアル酸(PSA)部分に結合しているタンパク質、タンパク質複合体またはポリペプチドを指す。本明細書で用いる用語「ポリシアリル化」は、1つまたは複数のPSA部分をタンパク質に結合する工程を指す。一実施形態では、前記PSAの分子量は、2〜80kDa、5〜60kDa、10〜40kDa、または15〜25kDaの範囲にある。
【0056】
用語「リンカー」は、水溶性ポリマーを生物活性分子に連結する分子断片を指す。断片は、別のリンカーに、または直接に生物活性求核体に結合させるかまたはそれと反応するように活性化することができる、2つの官能基を一般に有する。例えば、リシンなどのω−アミノアルカン酸が一般に用いられる。本発明では、リンカーには、安定なリンカー、遊離可能なリンカー、分解可能なリンカーおよび加水分解性のリンカーが含まれる。
【0057】
用語「医薬組成物」は、ヒトおよび哺乳動物を含む被験体動物での医薬使用に適する組成物を指す。医薬組成物は、ポリマー−ポリペプチドコンジュゲートの薬理学的に有効な量を含み、さらに、薬学的に許容される担体を含む。医薬組成物は、有効成分(複数可)、および薬学的に許容される担体を構成する不活性成分(複数可)、ならびに、成分の任意の2つ以上の組合せ、複合体化または集合から直接または間接に生じる任意の生成物を含む組成物を包含する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはコンジュゲートおよび薬学的に許容される担体を混ぜることによって作製される任意の組成物を包含する。
【0058】
用語「薬学的に許容される担体」は、任意のそしてすべての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤ならびに賦形剤、例えばリン酸緩衝生理食塩水、デキストロースの5%水溶液、ならびに乳剤、例えば水中油型乳剤または油中水型乳剤、ならびに各種の湿潤剤および/またはアジュバントを含む。適する薬学的担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Co.、Easton、1995年)に記載されている。組成物のために有用な薬学的担体は、活性剤の意図される投与様式によって決まる。一般的な投与様式には、経腸(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは腹腔内の注射、または局所、経皮もしくは経粘膜投与)が含まれるが、これらに限定されない。「薬学的に許容される塩」は、薬学的使用のために化合物またはコンジュゲートに製剤化することができる塩であり、例えば金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)およびアンモニアまたは有機アミンの塩が含まれる。
【0059】
用語「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、生物学的に、または他の種類で望ましくないことはない物質を意味し、すなわち、その物質は、下記のように当技術分野で周知の経路を用いて投与された場合に、いかなる望ましくない生物学的作用も引き起こさずに、またはそれが含まれる組成物の成分のいずれとも有害な方法で相互作用することなく個体に投与することができる。
【0060】
用語「血液凝固障害」または「出血障害」は、被験体で血液が効率的に血塊を形成することができないことおよび以降の異常な出血をもたらす、いくつかの血液凝固因子の遺伝性欠乏症または発達した欠乏症のいずれかを指す。血液凝固障害には、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド症候群、第X因子欠乏症、第VII因子欠乏症、アレキサンダー病、ローゼンタール症候群(血友病C)および第XIII因子欠乏症が含まれるが、これらに限定されない。血液凝固障害の処置とは、予防的処置または治療的処置を指す。
【0061】
「処置」とは、予防的処置または治療的処置を指す。「予防」処置は、病状の発生の危険を低減させるために、疾患の徴候を示さないか、または初期の徴候だけを示す被験体に投与される処置である。本発明の化合物またはコンジュゲートは、病状の発生の可能性を低減させるか、または発生した場合に病状の重症度を最小にするための予防的処置として与えることができる。「治療」処置は、病状の徴候または症状を低減または除去するために、病状の徴候または症状を示す被験体に投与される処置である。徴候または症状は、生化学的、細胞学的、組織学的、機能的、主観的または客観的であってよい。本発明の組成物は、治療処置として、または診断のために与えることができる。
【0062】
本明細書で用いるように、用語「被験体」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には、それらに限定されないが、哺乳動物綱の任意のメンバー、すなわち、ヒト、ヒト以外の霊長類、例えばチンパンジー、および他の類人猿およびサルの種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの畜産動物;ウサギ、イヌおよびネコなどの家畜動物;齧歯動物、例えばラット、マウスおよびモルモットを含む実験動物などが含まれる。非哺乳動物の例には、鳥、魚などが含まれるがこれらに限定されない。本用語は、特定の年齢または性別を表さない。
【0063】
用語「有効量」は、被験体の健康状態、病状および疾患に対して所望の結果を生成するのに十分な、または診断目的のために十分な投薬量を意味する。所望の結果は、投薬のレシピエントにおける主観的または客観的な改善を含むことができる。「治療的有効量」は、健康に対する意図する有益な効果を生成するのに有効な薬剤の量を指す。任意の個々の場合での適当な「有効な」量は、当業者が通常の実験を用いて決定することができる。
【0064】
タンパク質およびタンパク質複合体
医薬組成物で用いることが企図されるタンパク質には、被験体への投与に有用な生理活性血液凝固因子が含まれる。血液凝固因子は、タンパク質、またはそのタンパク質の治療活性または生物活性の一部、実質的にすべて、またはすべてを依然として保持するそのようなタンパク質の任意の断片、類似体または変異体である。一部の実施形態では、血液凝固因子は、発現もしくは生成されない場合、または発現もしくは生成が実質的に減少する場合、疾患を引き起こすであろうものである。一態様では、血液凝固因子は、哺乳動物に由来するかまたはそれから得られる。
【0065】
本発明の様々な実施形態では、水溶性ポリマーにコンジュゲートされる血液凝固因子は、血液凝固因子またはそのタンパク質の生物活性を有するその断片であり、ヒトまたは哺乳動物のタンパク質の対応する部分のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、コンジュゲートの血液凝固因子は、ヒトまたは哺乳動物の種に本来備わっているタンパク質である。他の実施形態では、血液凝固因子またはその断片は、対応するヒトまたは哺乳動物のタンパク質の天然配列に実質的に相同である(すなわち、活性剤の少なくとも10、25、50、100、150または200アミノ酸の長さまたは全長にわたって、アミノ酸配列が少なくとも80%、85%、90%、95%、より好ましくは98%、または最も好ましくは99%同一である)。
【0066】
タンパク質の作製方法
組換えタンパク質の作製方法は、当技術分野で周知である。組換えタンパク質をコードするDNAまたはRNAを発現する、哺乳動物の細胞を含む細胞を生成する方法は、米国特許第6,048,729号、第5,994,129号および第6,063,630号に記載されている。これらの出願のそれぞれの教示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0067】
ポリペプチドまたはその断片、変異体もしくは類似体を発現するために用いられる核酸構築物は、一態様では、トランスフェクトされた哺乳動物細胞で染色体外(エピソーム)に発現されるもの、または、レシピエント細胞のゲノムにランダムに、もしくは相同組換えを介して前選択された標的部位に組み込まれるものである。染色体外に発現される構築物は、ポリペプチドをコードする配列に加えて、細胞でのタンパク質の発現に十分な配列、および任意選択で、構築物の複製に十分な配列を含む。それは、プロモーター、ポリペプチドをコードするDNA配列および/またはポリアデニル化部位を任意選択で含む。タンパク質をコードするDNAは、その発現がプロモーターの支配下にあるように構築物中に位置する。任意選択で、構築物は、追加の成分、例えば以下の1つまたは複数を含む:スプライス部位、エンハンサー配列、適当なプロモーターの支配下の選択可能なマーカー遺伝子、および適当なプロモーターの支配下の増幅可能なマーカー遺伝子。
【0068】
DNA構築物が細胞のゲノムに組み込まれる実施形態では、一態様では、それはポリペプチドをコードする核酸配列だけを含む必要がある。任意選択で、構築物は、プロモーターおよびエンハンサー配列、1つまたは複数のポリアデニル化部位、1つまたは複数のスプライス部位、選択可能な1つまたは複数のマーカーをコードする核酸配列、増幅可能なマーカーをコードする核酸配列、および/またはゲノム中の選択部位へのDNAの組込みを標的にするためのレシピエント細胞中のゲノムDNAに相同なDNA(ターゲティングDNAまたはDNA配列)を含む。
【0069】
宿主細胞
組換えタンパク質を生成するのに用いられる宿主細胞は、それらに限定されないが、例えば細菌、酵母、昆虫、非哺乳類脊椎動物または哺乳動物の細胞である。哺乳動物の細胞には、それらに限定されないが、ハムスター、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヒトの細胞が含まれる。宿主細胞は不死化細胞(細胞系)または非不死化(一次もしくは二次)細胞であり、多種多様の細胞型、例えばそれらに限定されないが、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞(例えば、乳房上皮細胞、腸上皮細胞)、卵巣細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞すなわちCHO細胞)、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の形成要素(例えば、リンパ球、骨髄細胞)、筋細胞、肝細胞およびこれらの体細胞型の前駆体のいずれかである。一般に用いられる宿主細胞には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:グラム陰性またはグラム陽性の細菌などの原核生物の細胞、すなわち、E.coli、Bacillus、Streptomyces、Saccharomyces、Salmonellaなどの任意の株;CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞などの真核生物の細胞;乳仔ハムスター腎臓(BHK)細胞;ヒト腎臓293細胞;COS−7細胞;D.Mel−2、Sf4、Sf5、Sf9、およびSf21およびHigh5などの昆虫細胞;植物細胞ならびにSaccharomycesおよびPichiaなどの様々な酵母細胞。
【0070】
ポリペプチドをコードするDNAまたはRNAを含む宿主細胞は、細胞の増殖およびDNAまたはRNAの発現に適当な条件下で培養される。ポリペプチドを発現する細胞は公知の方法を用いて同定され、組換えタンパク質は公知の方法を用いて単離および精製されるが、ポリペプチド生成の増幅を伴っても伴わなくてもよい。同定は、それらに限定されないが、例えばタンパク質をコードするDNAまたはRNAの存在を示す表現型を提示する遺伝子改変哺乳動物細胞のスクリーニング、例えばPCRスクリーニング、サザンブロット分析によるスクリーニングまたはタンパク質の発現についてのスクリーニングを介して実施される。タンパク質をコードするDNAを組み込んでいる細胞の選択は、例えば、DNA構築物中に選択可能なマーカーを含ませ、選択可能なマーカー遺伝子を発現する細胞だけの生存に適当な条件下で、選択可能なマーカー遺伝子を含むトランスフェクトまたは感染させた細胞を培養することによって達成される。導入されたDNA構築物のさらなる増幅は、増幅に適当な条件下で遺伝子改変細胞を培養すること(例えば、増幅可能なマーカー遺伝子の複数のコピーを含む細胞だけが生存することができる薬剤濃度の存在下で増幅可能なマーカー遺伝子を含む遺伝子改変細胞を培養すること)によって影響を受ける。
【0071】
生理活性タンパク質または治療タンパク質である組換えタンパク質には、それらに限定されないが、サイトカイン、増殖因子、血液凝固因子、酵素、ケモカイン、可溶性細胞表面受容体、細胞接着分子、抗体、ホルモン、細胞骨格タンパク質、マトリックスタンパク質、シャペロンタンパク質、構造タンパク質、代謝タンパク質、および当業者に公知である他の治療タンパク質が含まれる。
【0072】
治療薬として用いられる例示的な組換え血液凝固因子には、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンが含まれるが、これらに限定されない。関連する実施形態では、タンパク質複合体は、1つまたは複数の血液因子を含む複合体である。
【0073】
血液因子
第VIII因子(FVIII)は、哺乳動物の肝臓で生成される約260kDa分子量の血漿糖タンパク質(Genbank受託番号NP_000123)である。それは、血液凝固をもたらす凝固反応カスケードの重要な成分である。このカスケードの中には、第IXa因子が、FVIIIと一緒に第X因子(Genbank受託番号NP_000495)を活性型の第Xa因子に変換する工程がある。FVIIIはこの工程でコファクターとして働き、第IXa因子の活性のためにカルシウムイオンおよびリン脂質と共に必要とされる。2つの最も一般的な血友病障害は、機能的FVIII(血友病A、全症例の約80%)または機能的第IXa因子(血友病Bまたはクリスマス因子疾患)の欠乏に起因する。FVIIIは血漿中で非常に低い濃度で循環し、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)に非共有結合で結合している。止血の間、FVIIIは、VWFから分離し、カルシウムおよびリン脂質または細胞膜の存在下、活性化速度を上昇させることによって、活性化第IX因子(FIXa)媒介第X因子(FX)活性化のコファクターとしての役割を果たす。
【0074】
FVIIIは、ドメイン構造A1−A2−B−A3−C1−C2を有する約270〜330kDの単鎖前駆体として合成される。血漿から精製すると、FVIIIは重鎖(A1−A2−B)および軽鎖(A3−C1−C2)で構成される。軽鎖の分子量は80kDであるが、重鎖は、Bドメイン中のタンパク質分解のために90〜220kDの範囲である。
【0075】
FVIIIは、出血障害での治療的使用のための組換えタンパク質としても合成される。治療薬としての組換えFVIII(rFVIII)の潜在効力を判定するために、様々なin vitroアッセイが考案されている。これらのアッセイは、内因性FVIIIのin vivo効果を模倣する。in vitroアッセイによって測定すると、FVIIIのin vitroトロンビン処理は、そのプロコアギュラント活性の速やかな増加および以降の減少をもたらす。この活性化および不活化は、FVIIIの異なる結合性エピトープの利用可能性を変化させる、例えばFVIIIをVWFから解離させてリン脂質表面に結合させるか、または特定のモノクローナル抗体への結合能力を変化させる、重鎖および軽鎖の両方での特異的タンパク質限定分解と一致する。
【0076】
最近までは、血友病Aの標準の治療は、ヒトドナーの血漿に由来するFVIII濃縮製剤の頻繁な注入を含んでいた。この補充療法は全般的に有効であるが、そのような治療は、肝炎およびエイズなどのウイルス伝染性の疾患の危険に患者を置く。この危険は、モノクローナル抗体を用いる免疫精製による血漿からのFVIIIのさらなる精製によって、および有機溶媒または熱による処理でウイルスを不活性化することによって低減されたが、そのような製剤は治療費を大いに増加させ、危険がないわけではない。これらの理由から、患者は予防的にではなく対症療法的に治療されてきた。さらなる課題(complication)は、約15%の患者が血漿由来のFVIIIに対する阻害抗体を発達させることである。FVIIIレベルが1%未満にある重度の血友病Aを有する患者は、投薬間に1%を上回るFVIIIを維持する目的で一般に予防療法を受ける。様々なFVIII製品の循環中の平均半減期を考慮すると、通常、週につき2〜3回のFVIIIの投与によってこれを達成することができる。
【0077】
血友病Aの治療における重要な進歩は、ヒトFVIIIの完全な2,351アミノ酸配列をコードするcDNAクローンの単離(Woodら、Nature、312巻:330頁(1984年)および米国特許第4,757,006号を参照)ならびにその生成のためのヒトFVIII遺伝子DNA配列および組換え方法の提供であった。血友病の治療のためのFVIII製品には、それらに限定されないが、ADVATE(登録商標)(抗血友病因子(組換え)、血漿/アルブミンを含まない方法、rAHF−PFM)、組換え抗血友病因子(BIOCLATE(商標)、GENARC(登録商標)、HELIXATE FS(登録商標)、KOATE(登録商標)、KOGENATE FS(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)):MONOCLATE−P(登録商標)、第VIII因子:Cの精製調製物、抗血友病因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体(ヒト)HUMATE−P(登録商標)およびALPHANATE(登録商標)、抗血友病因子/フォン・ヴィレブランド因子複合体(ヒト);ならびにHYATE C(登録商標)、精製ブタ第VIII因子が含まれる。ADVATE(登録商標)は、CHO細胞で生成され、Baxter Healthcare Corporationによって製造される。ADVATE(登録商標)の細胞培養工程、精製または最終製剤で、ヒトおよび動物の血漿タンパク質およびアルブミンは加えない。
【0078】
フォン・ヴィレブランド因子は、1×10〜20×10ダルトンの分子量の一連のマルチマーの形で血漿に存在する。VWF(Genbank受託番号NP_000543)は、主に哺乳動物の内皮細胞で形成され、その後循環中に分泌される糖タンパク質である。この関係で、約220kDの分子量を有するポリペプチド鎖から開始する、550kDの分子量を有するVWF二量体は、いくつかの硫黄結合の形成によって細胞内で生成される。最高20,000,000ダルトンまでの増大する分子量を有するVWFのさらなるポリマーは、VWF二量体の連結によって形成される。特に高分子VWFマルチマーが、血液凝固で本質的重要性を有すると推定される。
【0079】
VWF症候群は、VWFの過少生産または過剰生産がある場合に臨床上明らかになる。VWFの過剰生産は、血栓症(血液の流れを妨げる血管内側の血塊または血栓の形成)の増加を起こすが、高分子形態のVWFのレベルの低下または不足は、血小板凝集および創傷閉鎖の阻害による出血の増加および出血時間の延長を起こす。
【0080】
VWFは機能的第VIII因子の必要不可欠な成分であるので、VWFの欠乏は表現型の血友病Aを引き起こし得る。これらの例では、第VIII因子の半減期は、血液凝固カスケード中でのその機能が損なわれる程度まで短くなる。フォン・ヴィレブランド疾患(VWD)またはVWF症候群の患者は、第VIII因子欠乏症をしばしば示す。これらの患者では、低下した第VIII因子活性は、X染色体遺伝子の欠損の帰結でなく、血漿中のVWFの定量的および定性的変化の間接的帰結である。血友病AとVWDとの間の区別は、通常、VWF抗原の測定、またはリストセチン−コファクター活性の測定によって達成することができる。VWF抗原含量およびリストセチンコファクター活性の両方は、ほとんどのVWD患者で低下するが、それらは血友病A患者では正常である。VWF症候群の治療のためのVWF製品には、それらに限定されないが、HUMATE−P、IMMUNATE(登録商標)、INNOBRAND(登録商標)および8Y(登録商標)が含まれ、それらは血漿からのFVIII/VWF濃縮物を含む療法である。
【0081】
セリンプロテアーゼ酵素である第VII因子(プロコンベルチン)は、血液凝固カスケード中の中心的タンパク質の1つである(Genbank受託番号NP_000122)。第VII因子(FVII)の主要な役割は、組織因子(TF)といっしょになって凝固過程を開始することである。血管損傷後、TFは血液および循環第VII因子に曝露させられる。FVIIは、TFに結合すると、種々のプロテアーゼによってFVIIaに活性化されるが、それらのプロテアーゼには、トロンビン(第IIa因子)、活性化第X因子およびFVIIa−TF複合体自体が含まれる。組換えヒト第VIIa因子(NOVOSEVEN(登録商標))は、補充(replacement)凝固因子に対する阻害因子を発達させた血友病患者において、制御不能の出血で使用するために導入されている。
【0082】
第IX因子(FIX、クリスマス因子)(Genbank受託番号NP_000124)は、第XIa因子または第VIIa因子(組織因子経路の)によって活性化されない限り不活性である、セリンプロテアーゼである。第IXa因子に活性化されると、それは、第X因子のアルギニン−イソロイシン結合を加水分解することによって作用し、第Xa因子を形成する。第VIII因子は、FIXプロテアーゼ活性のための必要なコファクターである(Lowe GD、Br. J. Haematol. 115巻:507〜13頁、2002年)。第IX因子の欠乏は、血友病Bすなわちクリスマス病を引き起こす。
【0083】
追加の血液因子には、その欠乏が血栓症および異常プロトロンビン血症を引き起こす第II因子(トロンビン)(Genbank受託番号NP_000497)、その欠乏が出血性素因、または活性化プロテインC耐性として知られる形態の血栓形成傾向を引き起こす第V因子(Genbank受託番号NP_000121)、その欠乏がローゼンタール症候群(血友病C)を引き起こす第XI因子(Genbank受託番号NP_000119)、ならびにその欠乏がI型欠乏症(AおよびBサブユニット両方の欠乏)およびII型欠乏症(Aサブユニット単独の欠乏)として特徴付けられ、そのいずれも生涯の出血傾向、創傷治癒の欠陥および習慣性流産をもたらし得る第XIII因子サブユニットA(Genbank受託番号NP_000120)およびサブユニットB(Genbank受託番号NP_001985)が含まれる。
【0084】
ポリペプチド類似体または変異体
ポリペプチドの断片、変異体または類似体を調製する方法は、当技術分野で周知である。ポリペプチドの断片は、酵素切断(例えば、トリプシン、キモトリプシン)を含む方法を用いて、さらに特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片を生成する組換え手段を用いて調製される。断片は、一態様では、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、二量体化もしくは多量体化ドメイン、または当技術分野で公知である任意の他の識別可能なドメインを含むように生成される。
【0085】
類似体は、特定の態様では、その類似体が由来する天然に存在するポリペプチドに実質的に相同であるかまたは実質的に同一であり、本発明によって企図される類似体は、前記した天然に存在するポリペプチドの生物活性の少なくとも一部を保持するものである。
【0086】
置換類似体は、一般的にタンパク質中の1つまたは複数の部位で野生型の1つのアミノ酸を別のものと交換し、他の機能または特性の喪失なしで、タンパク分解性切断に対する安定性などの、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節するように設計することができる。この種の置換は、一般に保存的である。「保存的なアミノ酸置換」は、類似した化学特性の側鎖を有するアミノ酸によるアミノ酸の置換を意味する。保存的な置換を作製するための類似したアミノ酸には、酸性側鎖(グルタミン酸、アスパラギン酸);塩基性側鎖(アルギニン、リシン、ヒスチジン)、極性アミド側鎖(グルタミン、アスパラギン);疎水性の脂肪族側鎖(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン);芳香族側鎖(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン);小さな側鎖(グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン);または脂肪族ヒドロキシル側鎖(セリン、スレオニン)を有するものが含まれる。
【0087】
ポリヌクレオチドの類似体および断片は、天然に存在する分子に同じであるかまたは類似した生物活性を有する、天然に存在する分子の生物活性断片または類似体をコードするように、当分野の実施者(worker of skill)によって容易に生成される。通常実施される方法には、PCR技術、タンパク質分子をコードするDNAの酵素消化、および異種ポリヌクレオチド配列とのライゲーションなどが含まれる。例えば、PCRおよび当分野で周知である他の技術を用いる点変異誘発は、どのアミノ酸残基がタンパク質活性に関連する特定の活性で重要であるかについて詳細に特定するために使用することができる。したがって、当業者は、変化したコドンおよびミスセンス変異をもたらすように、DNA鎖で単一の塩基の変化を生成することができる。
【0088】
タンパク質またはポリペプチドが、ポリペプチドである第二の薬剤をさらに含む本明細書に記載のタンパク質、すなわち融合タンパク質である類似体を作製するように改変されることが、さらに企図される。一実施形態では、ポリペプチドである第二の薬剤は、サイトカイン、増殖因子、血液因子、酵素、ケモカイン、可溶性の細胞表面受容体、細胞接着分子、抗体、ホルモン、細胞骨格タンパク質、マトリックスタンパク質、シャペロンタンパク質、構造タンパク質、代謝タンパク質、および当業者に公知である他の治療タンパク質、または、上記のタンパク質の断片または活性ドメイン、もしくは当技術分野で公知である任意の他の型のタンパク質の断片または活性ドメインである。関連する実施形態では、第二の薬剤は、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンなどの血液凝固因子である。企図される融合タンパク質は、当技術分野で周知である化学的または組換えの技術によって作製される。
【0089】
企図されるタンパク質変異体には、ユビキチン化、グリコシル化、治療剤もしくは診断剤へのコンジュゲーション、標識化(例えば、放射性核種もしくは様々な酵素による)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有結合性ポリマー結合、非加水分解性結合の導入、および化学合成によるオルニチンなどのアミノ酸の挿入もしくは置換のような技術によって化学的に改変されるポリペプチドが含まれ、それらは、ヒトタンパク質では通常発生しない。変異体は、本発明の非改変分子の結合特性を保持する。
【0090】
本発明の方法で有用な追加のポリペプチド変異体には、ポリシアリル化された(PSA)部分を含むポリペプチドが含まれる。ポリシアリル化ポリペプチドを調製する方法は、米国特許出願公開第20060160948号およびSaenkoら、Haemophilia 12巻:42〜51頁、2006年に記載されている。
【0091】
水溶性ポリマー
一実施形態では、本発明は、そのタンパク質またはポリペプチドの生成、生存に有益な効果を提供する化学部分に連結されている、化学改変されたタンパク質またはポリペプチドを企図する。例えば、ポリペプチドへの水溶性ポリマー、例えばPEGまたはPEOの非特異的または部位特異的(例えば、N末端)コンジュゲーションは、免疫原性、腎クリアランスを潜在的に低減させることによって、および/またはプロテアーゼ抵抗性を改善することによって半減期を改善することが当技術分野で公知である。一部の実施形態では、本発明に用いられるポリペプチドは、その分子の半減期および/または安定性を向上させるためにペプチドのN末端またはC末端に共有結合で連結される、PEGなどの水溶性ポリマーを含む。
【0092】
タンパク質またはペプチドの安定性またはサイズを増加させるために、水溶性ポリマー、例えばそれらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体などのポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストラン、デンプンもしくはデンプン誘導体、ヒアルロン酸およびキチン、ポリ(メタ)アクリレート、ならびにポリシアル酸(PSA)、および上のいずれかの組合せが、タンパク質またはペプチドに通常コンジュゲートされる。
【0093】
高分子化学的改変は、一態様では、非特異的方法(誘導体化された種類の混合物をもたらす)で、または部位特異的方法(野生型高分子反応性に導かれる誘導体化および/または部位特異的変異誘発および化学的改変の組合せを用いる部位選択的改変に基づく)で、あるいは発現タンパク質ライゲーション方法を用いて実施される(Curr Opin Biotechnol. 13巻(4号):297〜303頁(2002年))。
【0094】
本発明は、型、コンジュゲーション、結合および長さが異なる水溶性ポリマー、例えばPEGまたはPEO分子の使用を企図する。特定の実施形態では、PEG−タンパク質コンジュゲートには、それらに限定されないが、直鎖または分枝状のコンジュゲート、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)−またはアルデヒドに基づく化学物質によって連結されるポリマー−タンパク質コンジュゲート、水溶性ポリマー鎖とコンジュゲーション部位との間に異なる化学結合を有する変異体、および長さが異なる変異体が含まれる。一実施形態では、水溶性ポリマーがPEGである場合、PEGの平均分子量は、約2〜200キロダルトン(「kDa」)、約5kDa〜約120kDa、約10kDa〜約100kDa、約20kDa〜約50kDa、約10kDa〜約25kDa、約5kDa〜約50kDa、約5kDa〜約10kDaまたは約2kDa〜約5kDaである。
【0095】
一態様では、本発明は、NHSにコンジュゲートし、長さが−(CH2−CH2−O)n−であってn=10〜2000である直鎖状PEG−タンパク質コンジュゲート、アルデヒドにコンジュゲートし、長さが−(CH2−CH2−O)n−であってn=10〜2000である直鎖状PEG−タンパク質コンジュゲート、NHSにコンジュゲートし、長さが10〜2000である2アーム分枝および多重アームのPEG−タンパク質コンジュゲート、ならびにNHSにコンジュゲートしている3アーム分枝PEG−タンパク質コンジュゲートからなる群から選択されるPEG−タンパク質コンジュゲートを企図する。本発明は、そのコンジュゲーション部位とPEG鎖との間に異なる化学結合、例えば−CO(CH2)n−、および−(CH2)n−(式中、n=1〜5)を含むPEG−タンパク質コンジュゲートも企図する。本発明は、それらに限定されないが、例えば、カルボキシ化、硫酸化およびリン酸化された化合物(アニオン性)を含む、腎クリアランスを低減させるための荷電された、アニオン性PEG−タンパク質コンジュゲートをさらに企図する(Caliceti、Adv Drug Deliv Rev 55巻:1261〜77頁、2003年、Perlman、J Clin Endo Metab 88巻:3227〜35頁、2003年、Pitkin、Antimicrb Ag Chemo 29巻:440〜44頁、1986年、Vehaskari、Kidney Intl 22巻:127〜135頁、1982年)。さらなる実施形態では、ペプチドは、ビスホスホネート、炭水化物、脂肪酸またはさらなるアミノ酸を含む部分に、任意選択でコンジュゲートされる。
【0096】
PEGおよびPEOには、分子量の分布を有する、すなわち多分散の分子が含まれる。サイズ分布は、その重量平均分子量(Mw)およびその数平均分子量(Mn)によって統計的に特徴付けることができ、それらの比率は多分散指数(Mw/Mn)と呼ばれる。MwおよびMnは、質量分析によって測定することができる。PEG−タンパク質コンジュゲートのほとんど、特に1KDよりも大きなPEGにコンジュゲートしているものは、親PEG分子の多分散の性質のために様々な分子量を示す。例えば、mPEG2K(Sunbright ME−020HS、NOF)の場合には、実際の分子量は1.5〜3.0KDの範囲に分散し、多分散指数は1.036である。例外は、MS(PEG)n(N=4、8、12または24、例えばPEO4、PEO12)に基づく試薬(Pierce)にコンジュゲートしているタンパク質であり、それらは、別々の鎖長および既定の分子量を有する単分散の混合物として特別に調製される。
【0097】
ペプチドのin vivo治療的半減期がPEG化から利益を受けるかどうか判定するために、様々な異なるPEG−タンパク質コンジュゲートを合成して、薬物動態についてin vitroおよびin vivoで特徴付ける。
【0098】
一般に、本発明のPEG化タンパク質の調製方法は、(a)PEGがそのタンパク質のN末端/C末端に結合する条件下で目的のタンパク質をポリエチレングリコールと反応させる工程、および(b)反応生成物(複数可)を得る工程を含む。タンパク質のPEG化は、タンパク質の固有の活性をかなり変化させるかもしれないので、異なる型のPEGが探究される。タンパク質のPEG化のために用いることができる化学物質には、メトキシ−PEG(O−[(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)−メチル]−O’−メチルポリエチレングリコール)のNHSエステルを用いる、タンパク質の一級アミンのアシル化が含まれる。メトキシ−PEG−NHSまたはメトキシ−PEG−SPAによるアシル化は、元の一級アミンから電荷を除去するアミド結合を生じる(同じく、C末端のBoc−PEGも)。リボソームタンパク質の合成と異なり、合成ペプチドの合成は、C末端からN末端にかけて進行する。したがって、Boc−PEGは、ペプチドのC末端にPEGを結合する1つの方法(すなわち、tert−ブチルオキシカルボニル(tert−(B)utyl(o)xy(c)arbonyl)(Boc、t−Boc)合成を用いる)である(R. B. Merrifield(1963年)、「Solid Phase Peptide Synthesis. I. The Synthesis of a Tetrapeptide」、J. Am. Chem. Soc. 85巻:2149〜2154頁)。あるいは、側鎖保護基を除去するためにフッ化水素酸の危険な使用を必要としないので、フルオレニルメトキシカルボニル((F)luorenyl−(m)eth(o)xy−(c)arbonyl)(FMOC)化学(Atherton, E.、Sheppard, R.C.(1989年)、Solid Phase peptide synthesis: a practical approach、Oxford, England:IRL Press.)が用いられる。
【0099】
一実施形態では、水溶性ポリマーがPSAである場合、PSAの平均分子量は、約2〜80kDa、5〜60kDa、10〜40kDaまたは15〜25kDaの範囲である。
【0100】
目的のポリペプチドへの水溶性ポリマーのコンジュゲーションを促進することができる例示的な安定なリンカーには、それらに限定されないが、アミド、アミン、エーテル、カルバメート、チオ尿素、尿素、チオカルバメート、チオカーボネート、チオエーテル、チオエステルおよびジチオカルバメート結合、例えばω,ω−アミノアルカン、N−カルボキシアルキルマレイミドまたはアミノアルカン酸、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸、N−カルボキシメチルマレイミドN,N’−ジスクシンイミジルオキサレートおよび1,1’−ビス[6−(トリフルオロメチル(trifluoromethy))ベンゾ−トリアゾリル]オキサレートが含まれる。
【0101】
他の実施形態では、水溶性ポリマーは、遊離可能、分解可能または加水分解性のリンカーを用いてポリペプチドにコンジュゲートされる。加水分解性の結合は、生理的条件の下で水と反応する(すなわち、加水分解される)比較的弱い結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2つの中心原子を連結する結合の一般型だけでなく、これらの中心原子に結合する置換基にも依存する。加水分解性リンカーを有する水溶性ポリマーを含むコンジュゲートの作製方法は、米国特許第7,259,224号(Nektar Therapeutics)および米国特許第7,267,941号(Nektar Therapeuticsおよびアメリカ国立衛生研究所)に記載されている。例えば、加水分解を受けるエステル結合をポリマー骨格に有するPEGを調製することができる。この加水分解は、より低い分子量の断片へのポリマーの切断をもたらす。加水分解的に不安定、遊離可能または分解可能である適当な結合には、それらに限定されないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール類、ケタール類、アシルオキシアルキルエーテル、イミン類、オルソエステル類、ペプチド類およびオリゴヌクレオチド類、チオエステル類、チオールエステル類ならびに炭酸エステル類が含まれる。ポリマー骨格に含ませることができる加水分解的に分解可能な結合には、カルバメート、カルボネート、サルフェートおよびアシルオキシアルキルエーテル結合;例えばアミンおよびアルデヒドの反応から生じるイミン結合(例えば、Ouchiら、Polymer Preprints、38巻(1号):582〜3頁(1997年)を参照);カルバミン酸エステル、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、ケタールまたはオルソエステル結合、例えばアセトン−ビス−(N−マレイミドエチル)ケタールリンカー(MK)が含まれる。
【0102】
本方法は、ポリマー−:タンパク質コンジュゲートの実質的に均質の(homogenous)混合物を提供する。本明細書で用いる「実質的に均質の」は、ポリマー−タンパク質コンジュゲート分子だけが観察されることを意味する。ポリマー−タンパク質コンジュゲートは生物活性を有し、本「実質的に均質の」PEG化タンパク質調製物は、均質の調製物の利点、例えば臨床適用におけるロット間の薬物動態の予測可能性の容易さを提示するのに十分均質であるものである。
【0103】
本明細書に記載される結合方法での使用が企図されるポリマー分子は、水溶性ポリマーまたはその混合物の中から選択することができる。重合度を調節することができるように、ポリマーは、単一の反応基、例えばアシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒドを有することができる。水溶性ポリマー、または所望によりその混合物は、例えば、PEG、モノメトキシ−PEG、PEO、デキストラン、デンプンもしくはデンプン誘導体、ポリ−(N−ビニルピロリドン)、プロピレングリコールホモポリマー類、脂肪酸類、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えば、グリセロール)、HPMA、FLEXIMAR(商標)、およびポリビニルアルコール、モノ−(C1〜C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−スクシンイミジルカーボネートPEG、セルロース、他の炭水化物に基づくポリマー類、またはそれらの混合物からなる群から選択することができる。選択されるポリマーは、それが結合するタンパク質が、水性環境、例えば生理的環境で沈殿しないように水溶性であるべきである。ポリマーは、分枝状でも非分枝状でもよい。好ましくは、最終生成物の調製物の治療的使用のために、ポリマーは薬学的に許容される。PEG部分を含むペプチドを生成する方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,824,784号を参照。
【0104】
用語PEGは、モノ−(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールなどの他のタンパク質を誘導体化するのに用いられているPEGの形態のいずれも包含するものとする。PEGポリマーは、分枝状でもよくまたは非分枝状でもよい。好ましくは、最終生成物の調製物の治療的使用のために、ポリマーは薬学的に許容される。一実施形態では、反応性アルデヒドは、水安定性のPEG−プロピオンアルデヒド、またはモノ−C1〜C10アルコキシもしくはそのアリールオキシ誘導体である(米国特許第5,252,714号を参照)。
【0105】
本発明は、それらに限定されないが10〜2000個の反復単位(−CH2−CH2−O−)を含むいくつかの異なる直鎖状PEGポリマー長、または2アーム分枝状PEGポリマーのコンジュゲートを企図する。12〜50個の単位を有する、NHSまたはアルデヒドに基づくPEG−(CH2CH2O)nがさらに企図される。一般に、本明細書で企図されるPEG化反応のために、加えられるPEG部分の平均分子量は、約1kDa〜約60kDa(用語「約」は±1kDaを示す)である。より好ましくは、平均分子量は約10〜40kDaである。
【0106】
本発明は、タンパク質にコンジュゲートしている低度の水溶性ポリマーを有する血液因子などの改変タンパク質を提供する。タンパク質の低度PEG化形態は、コンジュゲーション反応において、タンパク質に対して低下したモル濃度過剰の水溶性ポリマーを用いて生成される。例えば、タンパク質をPEG化する一般的な方法は、目的のタンパク質に対して61.8M過剰のPEGを用いる。本明細書で記載される低度PEG化タンパク質は、標準の技術で用いられるものよりも小さいモル濃度過剰を反応で用いて生成されることが企図される。一実施形態では、水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。PEGが直鎖状または分枝状のPEGであり、本明細書に記載される分子量および特徴を有することができることが企図される。
【0107】
さらに、本明細書に記載の低度PEG化タンパク質が、血液因子1分子につき少なくとも1個かつ10個以下の水溶性ポリマー部分を含むことが企図される。一実施形態では、改変タンパク質は、タンパク質1分子につき少なくとも2、3、4、5、6、7、8または9個の水溶性ポリマー部分を含む。別の実施形態では、改変タンパク質は、タンパク質1分子につき4個以上8個以下の水溶性ポリマー部分を含む(すなわち、4、5、6、7および8個のポリマー部分を含む)。一部の実施形態では、改変タンパク質は、血液因子である。さらなる実施形態では、改変血液因子は、タンパク質1分子につき1個以上4個以下の水溶性ポリマー部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、タンパク質1分子につき4個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む。さらなる別の実施形態では、改変血液因子は、タンパク質1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む。
【0108】
本明細書で用いるように、用語「の間」は、水溶性ポリマーの数との関連で用いられる場合、例えば「4〜8個の水溶性ポリマーを含む」は、挙げられた数字、および挙げられた数字の間の数字を含む。例えば、4〜8個の水溶性ポリマーは、4個、5個、6個、7個および8個の水溶性ポリマーを指す。
【0109】
関連する実施形態では、血液因子は、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンからなる群から選択される。さらなる実施形態では、血液因子分子は、第VIII因子である。さらなる実施形態では、血液因子分子はヒトのものである。関連する実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき少なくとも4個かつ10個未満のPEG部分を含む。まださらなる実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4、5、6、7、8、9または10個の水溶性ポリマー部分を含む。
【0110】
別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上8個以下のPEG部分、4個以上6個以下のPEG部分、または1個以上4個以下のPEG部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個または2個のPEG部分を含む。PEG分子は、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して血液因子に連結またはコンジュゲートすることが企図される。
【0111】
さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個以上4個以下のPSA部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のPSA部分を含む。さらに別の実施形態では、改変血液因子は、第VIII因子1分子につき1個または2個のPSA部分を含む。PSA分子は、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して血液因子に連結またはコンジュゲートすることが企図される。
【0112】
別の実施形態では、改変血液因子はFVIIaである。関連する実施形態では、改変血液因子は、FVIIa1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む。一部の実施形態では、改変血液因子は、FVIIa1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施形態では、水溶性ポリマーは、PEGまたはPSAからなる群から選択される。特定の実施形態では、ポリマーは、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して連結される。
【0113】
さらに他の実施形態では、改変血液因子はFIXである。一実施形態では、改変血液因子は、FIX1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む。一部の実施形態では、改変血液因子は、FIX1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む。関連する実施形態では、水溶性ポリマーは、PEGまたはPSAからなる群から選択される。一実施形態では、ポリマーは、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して連結される。
【0114】
医薬組成物
本発明は、本発明のタンパク質または誘導体生成物の有効量を、薬学的に許容される希釈剤、安定剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体と一緒に含む医薬組成物を企図する。そのような組成物は、様々な緩衝剤含量(例えば、トリス−HCl、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および可溶化剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、Thimerosol、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18版(1990年、Mack Publishing Co.、Easton, Pa.)1435頁:1712頁を参照。有効成分の有効量は、治療的、予防的にまたは診断上有効な量であり、それは、体重、年齢および治療目標などの因子を考慮することによって当業者が容易に決定することができる。
【0115】
本発明のポリマー−タンパク質組成物は、溶液のpHを所望の範囲内に維持するために、緩衝剤を含むこともできる。好ましい剤には、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムが含まれる。これらの緩衝剤の混合物を用いることもできる。組成物で有用な緩衝剤の量は、用いる特定のバッファーおよび溶液のpHに大きく依存する。例えば、アセテートはpH6よりもpH5でより効率的なバッファーであるので、pH6よりもpH5の溶液でより少ないアセテートを用いることができる。本発明の組成物のための好ましいpH範囲は、pH3.0〜7.5である。
【0116】
本発明の組成物は、溶液を等張性にして注射により適合させるために、等張性調節剤をさらに含むことができる。最も好ましい作用物質(agent)は、0〜150mMの濃度範囲内の塩化ナトリウムである。
【0117】
本明細書に記載の方法は、上記の分子を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル、および任意選択で他の治療成分および/または予防成分と一緒に含む医薬組成物を用いる。そのような賦形剤には、例えば、水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノール、シクロデキストリン類、改変シクロデキストリン類(すなわち、スルホブチル(sufobutyl)エーテルシクロデキストリン類)などの液体が含まれる。非液体製剤のために適する賦形剤も、当業者に公知である。
【0118】
薬学的に許容される塩を本発明の組成物で用いることができ、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような無機酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような有機酸塩が含まれる。薬学的に許容される賦形剤および塩に関する完全な解説は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版(Easton, Pennsylvania:Mack Publishing Company、1990年)で入手できる。
【0119】
さらに、補助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、生物学的緩衝物質、界面活性剤、などがそのようなビヒクルに存在してもよい。生物学的バッファーは、薬理学的に許容され、所望のpH、すなわち生理的許容範囲のpHを有する製剤を提供する、実質的に任意の溶液であってもよい。バッファー溶液の例には、食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝食塩水、Hankの緩衝食塩水、などが含まれる。
【0120】
キット
追加の態様として、本発明は、本発明の方法を実施するためのそれらの使用を促進する方法でパックされる、1つまたは複数の化合物または組成物を含むキットを含む。一実施形態では、そのようなキットは、密封されたボトルまたは容器などの容器にパックされている、本明細書に記載の化合物または組成物(例えば、低度PEG化第VIII因子などの改変血液因子を含む組成物)を含み、ラベルがその容器に貼付されるか、またはその方法を実施する際のその化合物または組成物の使用法を記載するパッケージに含まれる。好ましくは、化合物または組成物は、単位剤形でパックされる。キットは、特定の投与経路によって組成物を投与するのに適する用具をさらに含むことができる。好ましくは、キットは、改変血液因子組成物の使用法を記載するラベルを含む。
【0121】
本発明の追加の態様および詳細は以下の実施例から明らかであり、それらは限定ではなく例示することが目的である。
【実施例】
【0122】
(実施例1)
低度にペグ化された(PEGylated)第VIII因子の合成
治療用タンパク質として投与される分子の半減期を延長し、安定性を改善するために、水溶性ポリマー加えることによって血液凝固因子の改変を行った。しかし、水溶性ポリマーが高度に結合することにより、in vivoの毒性が強くなる恐れがある。したがって、治療用分子の有効性を改善するために、水溶性ポリマーのコンジュゲートの程度を低下させるための実験を行った。
【0123】
インタクトなBドメインを含有するペグ化されたrFVIIIの合成は、米国特許公開第20070244301号および国際特許公開第WO2007/126808号パンフレットに記載されている。このインタクトなBドメインを含有するペグ化されたrFVIIIは、実験条件下で、in vitro特性およびin vivo特性の改善を示し、少なくとも部分的にペグ化されたrFVIII分子の軽鎖(A3−C1−C2)がもたらされた。
【0124】
しかし、治療用タンパク質の比較的高度な改変をもたらす化学的なプロセスは、大量の試薬を必要とするため、経済的でない。さらに、高度なペグ化度は、大量のポリマーおよびリンカーによる毒性学的危険性の増加をもたらす。したがって、低度のPEG部分を有する分子を生成するために、調製プロセスにおける試薬濃度を減らし、試薬濃度を61.8M過剰(標準)から、それぞれ、30M過剰、25M過剰、20M過剰および15M過剰まで減らすことによって異なるPEG−rFVIIIを調製した。
【0125】
当技術分野で記載されるペグ化変異体は、変化する遊離特性ならびに異なる分子量のPEG鎖を有する。例えば、WO2008082669およびUS20080234193(Nektar TherapeuticsおよびBaxter Healthcare)を参照されたい。61.8M過剰の遊離可能なPEG試薬を使用することにより、長時間の遊離特性を持つ、PEG鎖の分子量が20kDである分枝(分枝長Lys20K)を有するペグ化されたrFVIII変異体の1つを調製した。このペグ化されたrFVIIIを、この分子がin vitroおよびin vivoのデータにおいて測定されたので、ペグ化度を改変するための主要な候補として選択した。最初のペグ化されたrFVIII候補について、61.8M過剰のPEGを使用してコンジュゲートを調製した際に、当技術分野で記載されるHPLC法を使用することにより(例えば、Chenら、Bioconjug Chem.、18巻:371〜8頁、2007年を参照されたい)、ペグ化度11.1PEG/rFVIII(mol/mol)が測定された。
【0126】
rFVIIIをペグ化するためのプロセスは以下の通りであった:室温、pH7.2+/−0.2で2時間、rFVIIIをペグ化(c=2mg/ml);試薬濃度(試薬3.9mg/mgタンパク質−61.8M過剰);グリシンを加えることによる反応の停止/クエンチ;QセファロースHPでの精製。約0.5MのNaClを用いる溶出:UF/DFおよびペグ化された分子の最終製剤化。低PEGコンジュゲートを、指示されたモル濃度過剰のPEGポリマーを使用して上記の通り調製した。使用したPEG−rFVIII試料は以下の通りであった:15M過剰:VIEHLUFB08007PHR;20M過剰:VIEHLUFB08016PHR;25M過剰:VIEHLUFB08017PHR;30M過剰:VIEHLUFB08008PHR、VIEHLUFB08009PHR、VIEHLUFB07029PHR;61.8M過剰(当技術分野で標準のプロトコール)および天然のFVIII:VIEHLUFB08018PHR、ORHLUFB07016PHR、ORHLUFB07017PHR、ORHLUFB08001PHR、ORHLUFB08002PHR。
【0127】
再合成された候補について、8PEG/rFVIII度が決定された。低PEG−FVIIIを、以下の実施例に記載の通りin vitroおよびin vivoでさらに特徴付けた。
【0128】
(実施例2)
In Vitroにおける低度にペグ化された血液因子分子の分析
一態様では、低PEG試料を、PEG−FVIII分子の分子量および一般構造について、ならびにPEGをコンジュゲートしたFVIII分子の比活性について分析した。PEG−FVIII構造のSDS−PAGE分析をWO 2007/126808にある通りに行った。簡単に述べると、天然のrFVIIIを、Invitrogen(Carlsbad、California、USA)から入手した4〜12%のポリアクリルアミド勾配ゲルを製造者の説明書に従って使用することにより、還元条件下でSDS−PAGEによって特徴付けた。分子量マーカー(MW)として、Bio−Rad(Hercules、CA、USA)から入手したPrecision Plusマーカー(10kD〜250kD)を使用した。次いで、タンパク質を、Bio−Rad(Hercules、CA、USA)から入手したPVDF膜に電気ブロッティングによって移し、その後、Cedarlane(Hornby、Ontario、Canada)から入手したポリクローナルヒツジ抗ヒトFVIII:C抗体と一緒にインキュベートした。免疫染色手順の最後の工程は、Accurate(Westbury、NY、USA)から入手したアルカリホスファターゼ(ALP)をコンジュゲートした抗ヒツジ抗体と一緒にインキュベートした後、ALP基質キット(Bio−Rad、Hercules、CA、USA)を使用することによって最終的に可視化することであった。
【0129】
そのうえ、FVIII分子の比活性を、WO2007/126808に記載の通り、FVIII色素形成アッセイ(Rosen S, Scand J Haematol 33巻:(追補40):139〜45頁、1984年)を使用してアッセイした。この方法は、Ph. Eur. 第5版(5.05)2.7.4 Assay of Blood Coagulation Factor VIIIに基づいている。第VIII因子を含有する試料を、カルシウムを含有するバッファー中でトロンビン、活性化第IX因子(FIXa)、リン脂質および第X因子(FX)と混合する。FVIIIは、トロンビンによって活性化され、その後、リン脂質、FIXaおよびカルシウムイオンと複合体を形成する。この複合体が第X因子を第Xa因子に活性化し、今度はそれが色素形成基質FXa−1(AcOH*CH3OCO−D−CHA−Gly−Arg−pNA)を切断する。遊離したパラ−ニトロアニリン(pNA)の時間経過を、マイクロプレートリーダーを用いて405nmにおいて測定する。反応の傾きは、試料中の第VIII因子の濃度に比例する。FVIIIの抗原価を、市販のELISAシステム(Cedarlane、Hornby、Ontario、Canada)を軽度に改変して使用することにより測定した。これらの値から、FVIII色原体/FVIII抗原の比を算出した。調製物中のタンパク質含有量を、280nmにおける光学濃度を測定することによって決定した。これらのデータから、タンパク質含有量を算出した。
【0130】
SDS−PAGEの結果を図1に示す。FVIII特異的抗体を使用したFVIII含有量のSDS−PAGE評価により、より低いモル濃度過剰のPEG分子(15M過剰、20M過剰、25M過剰および30M過剰)と組み合わせたFVIIIが、天然のFVIIIと比較してより低い分子量の分子を産生したが、検出されたFVIII分子は、より過剰なPEG分子(61.8M過剰)を使用した場合に現れるFVIII分子と同様であることが実証されている。PEG特異的抗体を用いたSDS−PAGEの探索により、試験したすべてのPEG試料においてより高い分子量種のPEG−FVIIIが検出された。
【0131】
低度にペグ化されたFVIIIの比活性の分析(および関連産物データ)を表1に示す。これらの結果は、低度にペグ化されたFVIIIの比活性は、高モル濃度過剰を使用して調製したPEG−FVIIIよりも天然のFVIIIに類似していることを示している。例えば、天然のFVIIIの比活性、3706IU/mgと比較して、たった15M過剰のPEGを使用して調製したPEG−FVIII試料の比活性は2221IU/mgであることが実証された。対照的に、一般的なペグ化プロトコール(61.8M過剰のPEGを有する)を使用して調製した試料は、398IU/mgの高さから104IU/mgの低さまでの比活性を示した。したがって、15M過剰のPEGを使用して調製したPEG−FVIIIは、標準のプロトコール(61.8M過剰)を使用して調製したPEG−FVIIIの最高活性よりもおよそ5.5倍強い活性を示した。同様に、20M過剰のPEGを用いて調製したFVIIIは、標準のプロトコールを使用して調製したFVIIIよりも少なくとも3.8倍強い活性を示し、25M過剰のPEG−FVIII分子は、標準の調製プロトコールよりも少なくとも3.2倍強い活性を示し、30M過剰のPEG−FVIII(969IU/ml)は、標準の(61.8M過剰のPEG)調製プロトコールよりも少なくとも2.4倍強い活性を示した。
【0132】
これらの結果は、FVIIIに対する低モル濃度過剰のPEGの比率を使用してペグ化したFVIIIタンパク質により、天然のFVIIIのおよそ9分の1より低い比活性を示す、高モル濃度過剰のPEGを使用して調製したPEG−FVIIIと比較して、天然のFVIIIタンパク質の生物活性と近い生物活性を有する低PEG−FVIIIがもたらされることを例示している。比活性が増加し、PEG分子数がより低減することにより、毒性副作用の可能性が減少したより有効な治療用分子がもたらされる。
【0133】
(実施例3)
低度にペグ化された分子のin vivoにおける薬物動態
in vivoにおける低度にペグ化されたrFVIIIの薬物動態を決定するために、FVIII欠乏ノックアウトマウスモデルを使用した。Biら(Nat Genet 1995年;10巻:119〜21頁)に記載のFVIII欠乏マウスを重度のヒト血友病Aのモデルとして使用した。
【0134】
マウス(n=6)に、実施例1に従って調製した低PEG−FVIIIまたは天然のrFVIIIのいずれかを20〜30μg/kg体重の用量で用いた、尾静脈を経由したボーラス投与を受けさせた。使用したPEG−rFVIII試料は以下の通りであった:rFVIIIPEGH07001FC(8.5PEG度−mol/mol、結合PEG)、297μg/kg;VIEHLUFB07029PHR(7.9PEG度−mol/mol、結合PEG)、144μg/kg;VIEHLUFB08007PHR(4.4PEG度−mol/mol、結合PEG)、66μg/kg。注射の5分後、3時間後、6時間後、9時間後、16時間後、24時間後および32時間後、および場合によっては48時間後、56時間後および72時間後の間隔でそれぞれの群から、麻酔した後、心臓穿刺によってクエン酸塩血漿を調製した。FVIIIの活性レベルを血漿試料において測定した。MicroMath Scientist、薬物動態ライブラリーからのモデル1(MicroMath、Saint Louis、MO、USA)を用いて半減期の算出を行った。
【0135】
この実験の結果を図2および3および表2に示す。結果は、終末半減期はペグ化度が4.4〜8.5のPEG−rFVIIIと同様であること示している(図3および表2)。表2は、低度にペグ化されたrFVIIIの半減期(HL)および平均滞留時間(MRT)が天然のFVIIIと比較して増加することを例示している。そのうえ、曲線下面積(AUC)は、低度にペグ化されたFVIIIでは天然のFVIIIと比較して増加し、これは、天然のrFVIIIと比較して低度にペグ化されたFVIII変異体の薬物動態が改善されたことを示している。さらに、所望のFVIII活性用量を得るためのタンパク質負荷は、ペグ化度が低いPEG−rFVIII変異体でより低い。
【0136】
ペグ化度に対するAUC、半減期およびMRTのデータのプロット(図4)は、AUCおよびMRTとペグ化度に、およそ8PEG/FVIIIまで直線的な相関があり、ペグ化がより増加するとさらなる増加のないことを示している。終末半減期は、FVIII当たりのPEG分子の数が5PEG/FVIIIを超えたときに、わずかに増加する。
【0137】
要約すれば、それらのデータにより、15M過剰、20M過剰、25M過剰および30M過剰のPEGを使用して調製した、低度にペグ化されたrFVIII変異体が、標準のプロセス(61.8M過剰のPEG)に従って調製したPEG−rFVIIIと比較して改善されたin vivoにおける性質およびin vitroにおける性質を有することが示唆される。FVIIIの低度にペグ化された形態の活性は、以前の高PEG−FVIII調製物よりも天然の分子の活性に類似しており、これにより、治療の間、低PEG血液因子を低用量で使用することができ、それによって血液因子に対する中和抗体が発生する可能性が減少し、組成物の毒性が減少することが示唆される。
【0138】
(実施例4)
低度にペグ化されたrFIXの調製
本明細書に記載のように、他の血液因子タンパク質を水溶性ポリマーにコンジュゲートすることが意図されている。例えば、組換えFIX(rFIX)を、NHS基を含有する20kDの直鎖状ペグ化試薬を使用することによってペグ化する。この種の試薬の例は、NOF(日油株式会社、東京、日本)からのSUNBRIGHT(登録商標)MEシリーズである。rFIXを、ヘペスバッファー(20mMのヘペス、150mMのNaCl)中、pH7.4、タンパク質濃度2mg/mlおよび試薬濃度5mg/mlでペグ化する。ペグ化反応は、穏やかな振とう下、室温で2時間行う。次いで、グリシンを加えることによって(最終濃度:10mM)反応を停止させ、室温で1時間インキュベートする。次いでその混合物を、天然のrFIXおよび微量のジペグ化rFIXおよびトリペグ化rFIXから、1つのPEG残基のみを含有するモノペグ化rFIXを精製し、分離するために、QセファロースHPカラム(GE−Healthcare、Uppsala、Sweden)に適用する。最後に、モノペグ化rFIXを含有する画分を採取して、再生セルロースでできた30kDの膜(Millipore)を使用した限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)に供する。
【0139】
(実施例5)
低度にペグ化されたrFVIIaの調製
組換えFVIIa(rFVIIa)を、NHS基を含有する20kDの直鎖状ペグ化試薬を使用することによってペグ化する。この種の試薬の例は、NOF(日油株式会社、東京、日本)からのSUNBRIGHT(登録商標)GSシリーズである。rFVIIaを、ヘペスバッファー(20mMのヘペス、150mMのNaCl)中、pH7.4、タンパク質濃度2mg/mlおよび試薬濃度5mg/mlでペグ化する。ペグ化反応は、穏やかな振とう下、室温で2時間行う。グリシンを加えることによって(最終濃度:10mM)反応を停止させ、室温で1時間インキュベートする。最後に、PEG−rFVIIaコンジュゲートを、QセファロースFF(GE Healthcare)を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。溶液を、1mMのCaClを含有する20mMのヘペスバッファー、pH7.4を用いて予め平衡化したカラムにローディングする(ローディング能(loading capacity):タンパク質1.5mg/ゲル1ml)。コンジュゲートを1mMのCaClおよび500mMの塩化ナトリウムを含有する20mMのヘペスバッファーで溶出する。溶出物は、主にモノペグ化rFVIIaを含有する。最後に、溶出物を、ポリエーテルスルホンでできた30kDの膜(Millipore)を使用したUF/DFによって濃縮する。
【0140】
(実施例6)
低度にポリシアル酸化されたrFVIIIの調製
ペグ化に加え、血液因子タンパク質を、他の水溶性ポリマーにコンジュゲートする。
【0141】
rFVIIIを、Serum Institute of India (Pune、India)から入手した、サイズ分布が狭く(PD≦1.1)、MWが20kDである酸化型のポリシアル酸(PSA)を使用した還元的アミノ化によってポリシアル酸化した。
【0142】
PSAとrFVIIIのコンジュゲーションを、低温室内、+4℃で行った。コンジュゲーションを、2mg/mlの濃度のrFVIIIを用いて、および200倍のモル濃度過剰の酸化PSAを用いて行った。ヘペスバッファー(50mMのヘペス緩衝剤、5mMのCaCl、350mMのNaCl、pH7.4)にPSAを溶解させて最終濃度をPSA200mg/mlにした。PSA溶液をrFVIII溶液に加え、必要量のNaCNBHをヘペスバッファー中80mg/mlの溶液、pH7.4に加えて最終濃度を50mMにした。反応混合物を穏やかに混合し、0.5MのNaOHを液滴によってpH7.4まで加えることによってpHを7.4に調整した。反応混合物を、低温室内、暗闇の中、+4℃で16時間、穏やかに振とうした。次いでコンジュゲートを、フェニルセファロースFF(GE Healthcare)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製した。化学反応後、反応混合物を、ヘペスバッファー(50mMのHepes、350mMのNaCl、5mMのCaCl、pH6.9)中8MのNHAcで希釈して、最終濃度を2.5Mにし、0.5MのNaOHを加えることによって、pHをpH6.9に補正した。次いで、試料をHICカラムにローディングした。カラムをおよそ2.5カラム体積(CV)の洗浄バッファー(50mMのHepes中2.5MのNHAc、350mMのNaCl、5mMのCaCl、pH6.9)で洗浄し、その後およそ10CVの洗浄バッファー(50mMのHepes中3MのNaCl、5mMのCaCl;pH6.9)で洗浄した。カラムを、6CVの溶出バッファー(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH7.4)で溶出した。コンジュゲートを含有する画分を、30kDの膜(再生セルロース/Millipore)を使用したUF/DFに供した。
【0143】
(実施例7)
低度にポリシアル酸化されたrFVIIIの、In vitroおよびin vivoにおける特徴付け
実施例7に従った還元的アミノ化によって調製した、ポリシアル酸化度が低いPSA−rFVIIIコンジュゲートを、in vitroおよびin vivoにおけるタンパク質活性についてアッセイした。
【0144】
PSA−rFVIII調製物を、タンパク質含有量(BCAアッセイ)およびFVIIIの色素形成活性を測定することによって分析的に特徴付けた。この調製物について、2469IU/mgの比活性が算出された。これは、rFVIII出発原料と比較して44%である。ポリシアル酸化度を、レゾルシノールアッセイを使用することによって決定した(Svennerholm L、Biochim Biophys Acta 24巻:604〜11頁;1957年)。PSA2.1分子/FVIII単量体のポリシアル酸化度が測定された。
【0145】
PSA−rFVIIIもまた、血友病マウスにおける薬物動態(PK)研究に使用した。血友病マウス6匹の群に、FVIII200IU/kg体重の用量の、尾静脈を経由したボーラス投与を受けさせた。注射の5分後、3時間後、6時間後、9時間後、16時間後、24時間後、32時間後、および場合によっては42時間後に、それぞれの群から、麻酔した後、心臓穿刺によってクエン酸塩血漿を調製した。FVIIIの活性レベルを血漿試料において測定した。MS Excelを用いて半減期および曲線下面積(AUC)の算出を行った。この実験の結果を図4に例示する。この消失曲線について、FVIIIに対して0.054(IU×h/ml)/(IU/kg)、PSA−rFVIIIコンジュゲートに対して0.076(IU×h/ml)/(IU/kg)の用量調整AUCを測定した。この結果は、PSA−rFVIIIが、天然のrFVIIIよりも長く循環し、対応するPSA−rFVIIIのAUCは1.4倍だけ増加することを示している。
【0146】
(実施例8)
低度にポリシアル酸化されたrFIXの調製
組換えFIX(rFIX)を、Serum Institute of India(Pune、India)から入手することができる、サイズ分布が狭く(PD≦1.1)、MWが20kDである酸化ポリシアル酸(PSA)を使用した還元的アミノ化によってポリシアル酸化した。
【0147】
PSAとrFIXのコンジュゲーションを、低温室内、+4℃で行った。コンジュゲーションを、2mg/mlの濃度のrFIXを使用し、160倍のモル濃度過剰の酸化PSAを用いて行った。ヘペスバッファー(50mMのヘペス緩衝剤、5mMのCaCl、350mMのNaCl、pH7.4)にPSAを溶解させて最終濃度をPSA200mg/mlにした。PSA溶液をrFIX溶液に加え、必要量のNaCNBHをヘペスバッファー中80mg/mlの溶液、pH7.4に加えて最終濃度を50mMにし、0.5MのNaOHを液滴によって加えることによって得られた溶液のpHを7.4に調整した。反応混合物を、低温室内、暗闇の中、+4℃で16時間、穏やかに振とうした。次いでコンジュゲートを、ブチルセファロースFF(GE Healthcare)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製した。化学反応後、反応混合物を、ヘペスバッファー(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH6.9)中5MのNaClで希釈して、最終濃度を3Mにし、0.5MのNaOHを使用してpHをpH6.9に調整した。試料をHICカラムにローディングし、10カラム体積(CV)の平衡化バッファー(50mMのHepes中3.0MのNaCl、5mMのCaCl、pH6.9)で洗浄した。その後、PSA−rFIXコンジュゲートを6CVの溶出バッファー(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH7.4)内で溶出した。コンジュゲートを含有する画分を、30kDの膜(再生セルロース/Millipore)を使用したUF/DFに供した。調製物は主にモノPSA化rFIXまたはジPSA化rFIXを含有すると予想される。
【0148】
(実施例9)
低度にポリシアル酸化されたrFVIIaの調製
rFVIIaを、Serum Institute of India(Pune、India)から入手することができる、サイズ分布が狭く(PD≦1.1)、MWが20kDである酸化ポリシアル酸(PSA)を使用した還元的アミノ化によってポリシアル酸化する。
【0149】
PSAとrFVIIaのコンジュゲーションを、低温室内、+4℃で行った。コンジュゲーション反応を、2mg/mlの濃度のrFVIIaを使用し、125倍のモル濃度過剰の酸化PSAを用いて行う。ヘペスバッファー(50mMのヘペス緩衝剤、5mMのCaCl、350mMのNaCl、pH7.4)にPSAを溶解させ、2MのNaOHを液滴によって加えることによりpHを7.4に調整して最終濃度を150mg/mlにする。PSA溶液をrFVIIa溶液に加え、必要量のNaCNBHをヘペスバッファー中80mg/mlの溶液、pH7.4に加えて最終濃度を50mMにする。反応混合物を穏やかに混合し、pHを再度7.4に調整する。反応混合物を、暗闇の中で16時間、穏やかに振とうする。次いでコンジュゲートを、ブチルセファロースFF(GE Healthcare)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製する。化学反応後、反応混合物を、ヘペスバッファー(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH6.9)中5MのNaClで希釈して、最終濃度を3Mにする。次いで、試料をHICカラムにローディングし、10カラム体積(CV)の平衡化バッファー(50mMのHepes中3.0MのNaCl、5mMのCaCl、pH7.4)で洗浄する。その後、PSA−rFVIIaコンジュゲートを10CVの溶出バッファー(50mMのHepes、5mMのCaCl、pH7.4)で溶出する。コンジュゲートを含有する画分を合わせ、30kDの膜(再生セルロース/Millipore)を使用したUF/DFに供する。最後に、溶出物をポリエーテルスルホンでできた30kDの膜(Millipore)を使用したUF/DFによって濃縮する。調製物は主にモノペグ化rFVIIaまたはジペグ化rFVIIaを含有すると予想される。
【0150】
(実施例10)
低度の水溶性ポリマーを用いて改変した血液因子を使用した血液凝固障害の治療
血液凝固因子の欠乏症を有する被験体を、本明細書に記載の改変血液因子組成物を用いて治療する。低度の水溶性ポリマーを有する改変血液因子(複数可)を血液凝固障害の動物モデルに投与すること、および血液障害に罹患したヒトを治療するために当技術分野で公知のプロトコールを使用することにより、被験体に本明細書に記載の改変血液因子(複数可)を単独で、または他の治療剤、例えば化学療法剤もしくは放射線治療剤、サイトカイン、成長因子、および他の一般的に使用される治療法と組み合わせて投与するための基礎が提供される。
【0151】
例えば、FVIIIの欠乏症を有する血友病Aの患者を、処置する医師が容易に決定することができるような治療有効量の、低度にペグ化されたFVIIIを用いて治療する。例えば、重度の血友病の患者への2つの異なるFVIII補充調製物の投与および比較について記載されている、Di Paolaら、Haemophilia. 13巻:124〜30頁、2007年を参照されたい。
【0152】
さらなる実施形態では、FVIIIタンパク質の欠乏症を有する可能性がある、またはFVIIIタンパク質の欠乏症を有さない可能性がある血友病患者(例えば、血友病BまたはCの患者)もまた、改変VWF、改変FVII、改変FIX、改変FXIなどの他の改変血液因子または疾患の状態に適した改変血液因子を用いて治療する。例えば、精製FVIIaを用いた、FVIIIおよびFIXに対する阻害因子を発生した血友病患者の治療について記載されている、Konkleら、J Thromb Haemost. 5巻:1904〜13頁、2007年を参照されたい。
【0153】
フォン・ヴィレブランド病に罹患した患者を治療するために、精製VWFが使用されている(Majumdarら、Blood Coagul Fibrinolysis. 4巻:1035〜7頁、1993年)。本明細書に記載の低度の水溶性ポリマーを有する改変VWFは、VWF補充が有効である患者を治療するために、当業者に公知のレジメンにおいて使用される。
【0154】
あるいは、当技術分野で公知の他の血液凝固障害、例えば、第X因子欠乏症、第VII因子欠乏症、アレキサンダー病、および第XIII因子欠乏症が、治療有効量の適切な改変血液因子(複数可)を用いて治療できる。
【0155】
改変血液因子の投与は、1〜24時間、またはそれより長く続いてよく、通例の実験法を使用して最適化しやすい。改変血液因子は、治療の延長を必要としない期間の間に与えることもできる。そのうえ、改変血液因子組成物は、当業者によって決定可能になるよう、毎日、週に1回、1週間に2回、または他の効果的な頻度で投与することができる。
【0156】
改変血液因子を、他の治療法と組み合わせて、例えば他の化学療法剤もしくは放射線治療剤と組み合わせて、または成長因子もしくはサイトカインと組み合わせて患者に投与することが意図されている。別の薬剤と組み合わせて与える場合、改変血液因子の量はそれに応じて減少させ得る。第2の薬剤は、ヒトの疾患を改善させるのに安全かつ有効であると決定された量を投与する。
【0157】
サイトカインまたは成長因子、および化学療法剤または放射線治療剤を改変血液因子と同じ製剤で投与し、同時に与えることが意図されている。あるいは、薬剤は、別々の製剤で投与してもよく、さらに改変血液因子と同時に投与してもよい。本明細書では、同時とは、薬剤が互いに30分以内に与えられることを指す。第2の薬剤は、改変血液因子を投与する前に投与してもよい。投与する前とは、改変血液因子での処置の1週間前から改変血液因子を投与する30分前までの範囲内に薬剤を投与することを指す。第2の薬剤を改変血液因子の投与の後に投与することもさらに意図されている。後に投与するとは、改変血液因子での処置の30分後から改変血液因子を投与した1週間後までに投与することの記載を意味している。改変血液因子組成物は、治療をしている医師によって処方された治療を行っている、血液凝固障害、および癌の一形態を有する被験体における放射線治療のレジメンと組み合わせて投与することもできる。
【0158】
上記の例示的な実施例に示したように、当業者により、本発明の多数の改変および変形が想起されることが予想される。したがって、添付の特許請求の範囲において見られるような限定のみが、本発明に設けられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え血液因子および血液因子1分子につき少なくとも1個かつ10個以下の水溶性ポリマー部分を含む、改変血液因子分子。
【請求項2】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき少なくとも2、3、4、5、6、7、8または9個の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項3】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき8個の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項4】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき4個以上8個以下の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項5】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき1個以上4個以下の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項6】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき4個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項7】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき1個または2個の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項8】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき5個の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項9】
前記改変血液因子が血液因子1分子につき4個の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項10】
前記水溶性ポリマー部分が遊離可能なリンカーを介して前記血液因子分子に結合している、請求項1から9のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項11】
前記遊離可能なリンカーが加水分解性リンカーである、請求項10に記載の改変血液因子分子。
【請求項12】
前記水溶性ポリマー部分が安定なリンカーを介して前記血液因子分子に結合している、請求項1から9のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー類、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL−アラニン)、多糖類、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、デンプンもしくはデンプン誘導体、ヒアルロン酸、キチン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリシアル酸(PSA)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項13に記載の改変血液因子分子。
【請求項15】
前記PEGが直鎖状PEG部分である、請求項14に記載の改変血液因子分子。
【請求項16】
前記PEGが分枝状PEG部分である、請求項14に記載の改変血液因子分子。
【請求項17】
前記PEGが2kD〜200kDの分子量を有する、請求項14から16のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項18】
前記血液因子が、第II因子、第III因子、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、フォン・ヴィレブランド因子およびフィブリノーゲンからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項19】
前記血液因子分子がヒトのものである、請求項18に記載の改変血液因子分子。
【請求項20】
前記血液因子分子が第VIII因子である、請求項18に記載の改変血液因子分子。
【請求項21】
前記改変血液因子が第VIII因子1分子につき少なくとも4個かつ10個未満のPEG部分を含む、請求項20に記載の改変血液因子分子。
【請求項22】
前記血液因子分子が第VIIa因子である、請求項18に記載の改変血液因子。
【請求項23】
前記血液因子分子が第IX因子である、請求項18に記載の改変血液因子。
【請求項24】
第VIII因子1分子につき4個以上8個以下のポリエチレングリコール部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項25】
第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のポリエチレングリコール部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項26】
第VIII因子1分子につき1個以上4個以下のポリエチレングリコール部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項27】
前記ポリエチレングリコール部分が、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して結合している、請求項25または26に記載の改変血液因子分子。
【請求項28】
第VIII因子1分子につき1個または2個のポリエチレングリコール部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項29】
前記ポリエチレングリコール部分が安定なリンカーを介して結合している、請求項28に記載の改変血液因子分子。
【請求項30】
第VIII因子1分子につき4個以上6個以下のポリシアル酸部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項31】
第VIII因子1分子につき1個以上4個以下のポリシアル酸部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項32】
前記ポリシアル酸部分が、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して結合している、請求項30または31に記載の改変血液因子分子。
【請求項33】
第VIII因子1分子につき1個または2個のポリシアル酸部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項34】
前記ポリシアル酸部分が安定なリンカーを介して結合している、請求項33に記載の改変血液因子分子。
【請求項35】
第VIIa因子1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項36】
第IX因子1分子につき1個以上6個以下の水溶性ポリマー部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項37】
前記水溶性ポリマー部分が、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して結合している、請求項35または36に記載の改変血液因子分子。
【請求項38】
第VIIa因子1分子につき1個または2個の水溶性部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項39】
第IX因子1分子につき1個または2個の水溶性部分を含む、請求項1に記載の改変血液因子分子。
【請求項40】
前記水溶性ポリマー部分が、安定なリンカー、遊離可能なリンカーまたは加水分解性リンカーを介して結合している、請求項38または39に記載の改変血液因子分子。
【請求項41】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリシアル酸(PSA)からなる群から選択される、請求項35から40のいずれか一項に記載の改変血液因子分子。
【請求項42】
請求項1から41のいずれか一項に記載の改変血液因子を含む医薬組成物。
【請求項43】
少数の水溶性ポリマーとコンジュゲートしている改変血液因子分子を作製する方法であって、前記血液因子1分子に対して少なくとも1個かつ10個未満の水溶性ポリマーの結合を可能にする条件下で、前記血液因子分子を、血液因子1分子に対して30M過剰以下の水溶性ポリマーであるモル濃度過剰の水溶性ポリマーと接触させる工程を含む方法。
【請求項44】
前記モル濃度過剰の水溶性ポリマーが2M過剰〜30M過剰である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記モル濃度過剰の水溶性ポリマーが10M過剰〜25M過剰である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項43から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記血液因子が第VIII因子である、請求項43から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1から41のいずれか一項に記載の改変血液因子の治療的有効量を患者に投与する工程を含む、血液凝固障害に罹患している被験体を治療する方法。
【請求項49】
前記血液凝固障害が、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド症候群、第X因子欠乏症、第VII因子欠乏症、アレキサンダー病、ローゼンタール症候群(血友病C)および第XIII因子欠乏症からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記血液凝固障害が血友病Aであり、前記改変血液因子が第VIII因子分子を含む、請求項48に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2012−505917(P2012−505917A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532289(P2011−532289)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061023
【国際公開番号】WO2010/045568
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】