説明

低構造カーボンブラックおよびその作製方法

30mg/gから200mg/gのヨウ素価、および20cc/100gから40cc/100gのDBPを有するカーボンブラック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低構造カーボンブラックおよびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、たとえば、トナー、インクジェット用インクおよびインクジェット可能なカラーフィルターをふくむ様々な媒体の顔料として使用されている。これらのブラックの構造および表面積は、マトリックス中のカーボンブラックの特定の充填レベルが可能になり、媒体の伝導度および電荷の蓄積が減少するように選択される。充填レベルが増加すると、媒体の光学濃度(OD)、材料の不透明度の度合いが増加する。しかし、媒体を製造するために使用されるコーティング組成物の粘度もまた増加する。構成しているカーボンブラックの構造を低構造化させることにより、粘度を減少させることができ、これにより、より薄い媒体層を欠陥なしで堆積することが可能になり、または、これにより、所与の粘度でより多くのカーボンブラックを取り入れることが可能になり、その結果、光学濃度がより高くなる。
【0003】
ファーネスカーボンブラックの構造を制御する一方法は、炭素を含んだ供給原料を燃焼させながらアルカリイオンを炉の中に加えることによる。たとえば、米国特許第5,456,750号明細書では、カーボンブラック炉へのカリウムの添加を減少させることにより、結果として得られたブラックを低構造化する。しかし、カーボンブラック中の結果として得られた金属組成物により伝導度が増加する可能性があり、媒体中の非カーボン材料は光学濃度に対して貢献しない。さらに、表面積を大きくすることにより、光学濃度もしくは着色力(tint)を増加させることができるが、表面積が増加するにしたがって、構造を低構造化することが、ますます難しくなる。たとえば、米国特許第5,456,750号明細書では、もっとも低いDBP(フタル酸ジブチル吸収)を有する、それらのカーボンブラックは、また、40よりも大きなDBPを有するカーボンブラックに比べて比較的低い着色力を有していた。着色力が低くなることは、所望の光学濃度を得るために、特定の媒体中のカーボンブラックの濃度を高くする必要があることを意味し、これにより媒体のコストが高くなり、カーボンブラックの濃度が高くなると、分散させるのが難しくなることが多いので、製造がより難しくなる。さらに、カリウムおよび他の金属元素を炉に添加するにしたがって、結果として得られるブラックは、表面により多くの荷電群を有するようになり、したがって、より酸性およびより親水性になる。ブラックがより親水性もしくは酸性(たとえば、6未満のpH)になると、コーティングもしくは印刷の用途で使用するために他の点で望ましいポリマーおよび他の組成物と、広い範囲で相溶性がなくなるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、低構造を有し、また、アルカリ金属の量が少なく、酸性度および親水性度が低く、カーボンブラックを組み入れるコーティング材、トナーもしくはインク組成物の光学濃度および粘度を損なうことがないカーボンブラックを作製する方法を見つけることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBPおよび、μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250、100,−50、−150もしくは−350)のIA族およびIIA族元素の全濃度を有するカーボンブラックを含む。たとえば、カーボンブラックは、20から40cc/100g、20から30cc/100g、30から39cc/100gのDBP、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のDBPを有してもよい。また、もしくは、さらに、カーボンブラックは、30から200mg/g、30から45mg/g、45から100mg/g、70から100mg/g、100から150mg/g、150から200mg/g、70から200mg/g、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のヨウ素価を有してもよい。1から1.25未満のM比、6から10のpH、多くて6mJ/m2の拡水圧力、または、式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90、たとえば、60から90または75から90)に従う着色力のうちの少なくとも1つによってカーボンブラックを特徴づけてもよい。カーボンブラックは、酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックであってもよい。
【0006】
別の態様では、本発明は、30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBPおよび1.00から1.25未満のM比を有するカーボンブラックを含む。たとえば、カーボンブラックは、20から40cc/100g、20から30cc/100g、30から39cc/100gのDBP、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のDBPを有してもよい。または、もしくは、さらに、カーボンブラックは、30から200mg/g、30から45mg/g、45から100mg/g、70から100mg/g、100から150mg/g、150から200mg/g、70から200mg/g、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のヨウ素価を有してもよい。6から10のpH、μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250、100、−50、−150、または−350)のIA族およびIIA族元素の全濃度、多くて6mJ/m2の拡水圧力、または、式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90、たとえば、60から90または75から90)に従う着色力のうちの少なくとも1つによってカーボンブラックを特徴づけるようにしてもよい。カーボンブラックは、酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックであってもよい。
【0007】
別の態様では、本発明は、30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBP、多くて6mJ/m2の拡水圧力および1.00から1.25未満のM比を有するカーボンブラックを含む。たとえば、カーボンブラックは、20から40cc/100g、20から30cc/100g、30から39cc/100gのDBP、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のDBPを有してもよい。または、もしくは、さらに、カーボンブラックは、30から200mg/g、30から45mg/g、45から100mg/g、70から100mg/g、100から150mg/g、150から200mg/g、70から200mg/g、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のヨウ素価を有してもよい。6から10のpH、μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250、100、−50、−150、または−350)のIA族およびIIA族元素の全濃度、多くて6mJ/m2の拡水圧力、または、式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90、たとえば、60から90または75から90)に従う着色力のうちの少なくとも1つによってカーボンブラックを特徴づけるようにしてもよい。カーボンブラックは、酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックであってもよい。
【0008】
別の態様では、本発明は、70から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから50cc/100gのDBPおよび多くて6mJ/m2の拡水圧力を有するカーボンブラックを含む。たとえば、カーボンブラックは、20から40cc/100g、20から50cc/100g、20から45cc/100g、20から30cc/100g、30から39cc/100g、30から45cc/100g、40から45cc/100g、45から50cc/100gのDBP値またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のDBPを有してもよい。また、もしくは、さらに、カーボンブラックは、70から100mg/g、100から150mg/g、150から200mg/g、70から200mg/g、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のヨウ素価を有してもよい。1.00から1.25未満のM比、6から10のpH、μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250、100、−50、−150、または−350)のIA族およびIIA族元素の全濃度、多くて6mJ/m2の拡水圧力、または、式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90、たとえば、60から90または75から90)に従う着色力のうちの少なくとも1つによってカーボンブラックを特徴づけるようにしてもよい。カーボンブラックは、酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックであってもよい。
【0009】
別の態様では、本発明は、30から200mg/gのヨウ素価および20cc/100gから40cc/100gのDBPを有するカーボンブラック製品を製造する方法を含む。たとえば、カーボンブラックは、20から40cc/100g、20から30cc/100g、30から39cc/100gのDBP、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のDBPを有してもよい。また、もしくは、さらに、カーボンブラックは、30から200mg/g、30から45mg/g、45から100mg/g、70から100mg/g、100から150mg/g、150から200mg/g、70から200mg/g、またはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内のヨウ素価を有してもよい。その方法は、予め加熱した空気流を燃料と反応させることによって、燃焼ガスの流れを生成するステップ、流れを形成し、その流れの中で供給原料の熱分解を開始させるために、一軸平面の既定の数の地点で、燃焼ガスの流れの中に供給原料を導入するステップ、一軸平面の既定の数の地点で、燃焼ガスの流れの中に補助的炭化水素を導入するステップ、少なくとも1種のIA族もしくはIIA族元素またはそれらを組み合わせたものを含む少なくとも1種の物質を、燃焼ガスの流れの中にさらに導入するステップ、および、逆浸透処理を行った水を使用して熱分解を冷却するステップを含み、供給原料および補助的炭化水素の注入地点が、軸面で交互であり、カーボンブラック製品中のIA族およびIIA族元素の全体が、μg/g単位で、多くて、y+15×ヨウ素価(式中、yは250、100、−50、−150または−350)である。全体の燃焼比率が少なくとも26%であってもよい。既定の数が3であってもよい。補助的炭化水素が、炭化水素を含み、補助的炭化水素の炭素含有量が、反応装置に注入された全ての燃料流の総炭素量の多くて約20重量%になるような量で導入されるようにしてもよい。補助的炭化水素が気体状の形態であってもよい。カーボンブラックが、1から1.25未満のM比、6から10のpH、多くて6mJ/m2の拡水圧力、または、式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90、たとえば、60から90または75から90)に従う着色力のうちの少なくとも1つによって特徴づけられるようにしてもよい。その方法は、カーボンブラックの表面の化学的性質または微細構造を改質するステップをさらに含んでもよい。その方法は、有機基を結合させてカーボンブラックを改質するステップ、カーボンブラックを酸化させるステップ、またはカーボンブラックを熱処理するステップをさらに含んでもよい。
【0010】
前述の全般的な記載と以下の詳細な記載との両方は、例示的であり、説明に役立てるだけのものであり、請求されている本発明のさらなる説明を提供することを意図していることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、図形のそれぞれの図を参照して記載されている。
【図1】図1は、本発明の例示的態様で使用するためカーボンブラックを製造するために使用できる、ファーネスカーボンブラック反応装置の1つのタイプの一部の断面図である。
【図2】図2は、カーボンブラック試料のアグリゲートの重量分率対所与の試料におけるストークス径のサンプルヒストグラムである。
【図3】図3は、本発明の例示的態様によるカーボンブラックを使用して製造したミルベースの粘度と市販のカーボンブラックを使用して製造したミルベースの粘度とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細は以下に記載されているように、特定の条件下で操作されているカーボンブラック炉の供給原料へのアルカリおよび/またはアルカリ土類塩の添加、たとえば、補助的炭化水素の添加と、増加された全体の燃焼割合とを組み合わせることによって、中から大の表面積、たとえば、30mg/gもしくは70mg/g〜200mg/gのヨウ素価で、低構造、たとえば、20cc/100g〜40cc/100gもしくは40cc/100g〜50cc/100gのDBPを有するカーボンブラックを得ることができることを我々は発見した。結果として得られたカーボンブラックは、中性から少し塩基性のpHであり、また、採用された反応条件から予測されるものよりも疎水性である。構造のレベルは、アルカリもしくはアルカリ土類添加剤または補助的炭化水素のみの使用を通して達成されるものに比べて著しく低い。さらに、カーボンブラック中のアルカリもしくはアルカリ土類金属の量は、中から大の表面積、たとえば、30〜200m2/gのヨウ素価を有する、より低構造のカーボンブラックについて通常見られるものよりも低い。低構造にもかかわらず、カーボンブラックは、比較的良好な着色力(tint)を有する。さらに、カーボンブラックは、同様な表面積もしくは構造を有する従来技術のブラックに比べて低いM比を示す。
【0013】
一態様では、カーボンブラックは、20cc/gから40cc/100g のDBPと30mg/gから200mg/gのヨウ素価とを有する。たとえば、カーボンブラックは、20cc/100gから40cc/100gの、20cc/100gから30cc/100gの、30cc/100gから39cc/100gのDBP、もしくはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲のDBPを有することができる。さらにまた、カーボンブラックは、 30mg/gから200mg/gの、30mg/gから45mg/gの、45mg/gから100mg/gの、70mg/gから100mg/gの、100mg/gから150mg/gの、150mg/gから200mg/gの、70mg/gから200mg/gの、もしくはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲のヨウ素価を有することができる。当業者に知られているように、一定の気孔率では、表面積が大きくなると、1次粒子サイズが小さくなる。
【0014】
別の態様では、カーボンブラックは、50cc/100g未満のDBPおよび70mg/gから200mg/gのヨウ素価を有することができる。たとえば、カーボンブラックは、20cc/100gから40cc/100gの、20cc/100gから50cc/100gの、20cc/100gから45cc/100gの、20cc/100gから30cc/100gの、30cc/100gから39cc/100gの、30cc/100gから45cc/100gの、40cc/100gから45cc/100gの、45cc/100gから50cc/100gのDBP値もしくはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲のDBPを有することができる。また、さらに、カーボンブラックは、70mg/gから100mg/gの、100mg/gから150mg/gの、150mg/gから200mg/gの、 70mg/gから200mg/gの、もしくはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲のヨウ素価を有することができる。
【0015】
本明細書に記載された態様のいずれにおいても、カーボンブラックの1次粒子は、本質的に全体が球形の形状であると近似することができる。
【0016】
カーボンブラックは、1種もしくは2種以上の以下の性質をさらに有することができ、それぞれの性質については、以下、詳細に検討する。アルカリおよびアルカリ土類元素(たとえば、IA族およびIIA族元素)の全濃度は、μg/g単位で、多くても(y+15×ヨウ素価)である。式中、yは250、100、−50、−150もしくは−350である。M比、カーボンブラック試料のストークス径の最頻値に対する媒体のストークス径の比率は、1.0から1.25未満の値、たとえば、1.22と1.24との間、もしくはこれらの端点のいずれかによって画定されるいずれの範囲内となり得る。以下の式で、カーボンブラックの着色力を定義することができる。
着色力=x+0.44×ヨウ素価
式中、xは45から90、たとえば、60から90もしくは75から90となり得る。カーボンブラックは、6から10、たとえば、6から8、8から10、7から9もしくはこれらの端点のいずれかによって画定されるいずれの範囲内となり得るpHを有することができる。水拡張圧(拡水圧力)(WSP)、カーボンブラック表面と水蒸気との間の相互作用エネルギーの大きさは、多くても6mJ/m2、たとえば、多くても5J/m2、多くても4mJ/m2、2から6mJ/m2、2から5mJ/m2、3から6mJ/m2、3から5mJ/m2、もしくは本明細書の端点のいずれかによって画定されるいずれの範囲内となり得る。
【0017】
我々は、大きな表面積、しかし以前から使用されてきたカーボンブラックに比べて少ない量のIA族およびIIA族金属元素を有する低構造カーボンブラックを製造することを可能とする作業条件をつきとめ、これにより、カーボンブラック製品中のこれらの金属の量を減少させた。一般に、所与の表面積を有するカーボンブラックの場合、金属元素の添加によって、その構造はある量まで低構造化するが、その後は、追加の金属元素の添加によって構造は影響を受けない。しかし、我々は、大きな表面積のブラックは言うまでもなく、中間の表面積のブラックで以前から達成可能であったカーボンブラックに比べて、著しく低い構造、たとえば、20cc/100g〜40cc/100g、もしくは20cc/100g〜50cc/100gのフタル酸ジブチル吸収(DBP)値を有するカーボンブラックを製造した。例示的な装置および反応条件は下記および例に記載されている。また、たとえば、米国特許第5,456,750号明細書、同第4,391,789号明細書、同第4,636,375号明細書、同第6,096,284号明細書および同第5,262,146号明細書に記載されたものを含む様々な他の装置を使用して本発明の様々な態様によるカーボンブラックを製造ことができる。他の装置で本発明の様々な態様によるカーボンブラックを製造するために、以下に記載される反応条件を適合させる方法を当業者は認識するであろう。
【0018】
一態様では、収束する直径11のゾーンを有する燃焼ゾーン10、移動ゾーン12、入り口部18および反応ゾーン19を有する、図1に描かれたものなどのモジュラーファーネスカーボンブラック反応装置2の中でカーボンブラックを製造する。収束する直径11のゾーンが始まる地点まで、燃焼ゾーン10の直径は、D−1として示され、ゾーン12の直径はD−2として示され、段のある入り口部18の直径はD−4、D−5、D−6およびD−7として示され、そして、ゾーン19の直径はD−3として示される。収束する直径のゾーン11が始まる地点までの燃焼ゾーン10の長さは、L−1として示され、収束する直径のゾーンの長さはL−2として示され、移動ゾーンの長さはL−3として示され、そして反応装置入り口部18における段の長さは、L−4、L−5、L−6およびL−7として示される。
【0019】
カーボンブラックを製造するため、空気、酸素、空気および酸素の混合ガスなどの好適な酸化体流に液体もしくは気体燃料を触れさせることによって、燃焼ゾーン10で高温燃焼ガスを発生させる。高温燃焼ガスを発生させるために、燃焼ゾーン10で好適な酸化体流を接触させる際に使用するための好適な燃料の中には、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコールもしくはケロシンなどの容易に燃焼するガス、液体流がある。しかし、高い含有量の炭素含有成分を有する燃料、特に炭化水素を使用するのが一般に好ましい。本発明のカーボンブラックを製造するために使用される天然ガスに対する空気の体積比は、好ましくは、約10:1から約100:1となり得る。高温燃焼ガスの発生を容易にするために、酸化体流をあらかじめ加熱しておいてもよい。ある態様では、全体の燃焼率は、少なくとも26% 、たとえば、26%から35%、28%から35 %、30%から35%、少なくとも28%もしくは少なくとも30%である。
【0020】
高温燃焼ガス流は、ゾーン10,11からゾーン12,18,19の中へダウンストリームを流す。高温燃焼ガスが流れる方向は、図の中で矢印によって示される。カーボンブラック生成供給原料30は、(ゾーン12に設けられた)地点32および/または(ゾーン11に設けられた)地点70で導入される。反応条件下で容易に揮発する、本明細書での使用に好適なカーボンブラック生成炭化水素供給原料には、アセチレンなどの不飽和炭化水素、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン、ベンゼンなどの芳香族、トルエンおよびキシレン、特定の飽和炭化水素およびケロシン、ナフタレン、テレペン、エチレンタール、芳香族循環油などの他の炭化水素などがある。
【0021】
収束する直径11のゾーンの端から地点32までの距離は、F−1として示される。一般に、カーボンブラック生成供給原料30は、素早くそして完全に分解して供給原料をカーボンブラックに変換するように、高温燃焼ガスによるカーボンブラック生成供給原料の速い混合速度および分散速度を保証するために、高温燃焼ガス流の内部の領域を通る複数の流れの形態で注入される。
【0022】
補助的炭化水素は、プローブ72を通って、もしくはカーボンブラック形成プロセスのゾーン12の境界を形成する壁の補助的炭化水素流路75を通って、もしくはカーボンブラック形成プロセスのゾーン18および/または19の境界を形成する壁の補助的炭化水素流路76を通って地点70で導入される。本明細書で使用されているように用語「補助的炭化水素」は、水素もしくは、供給原料の水素対炭素のモル比よりも大きな水素対炭素のモル比を有する任意の炭化水素を言い、気体でも液体でもよい。例示的な炭化水素には、燃料および/または供給原料として使用するのに好適な本明細書に記載されたそれらの材料があるが、これらに限定されない。本発明の特定の態様では、補助的炭化水素は天然ガスである。第1の段階の燃料の初期の燃焼反応のすぐ後の地点と、供給されるカーボンブラックの形成の終点のすぐ前の地点との間の任意の位置に補助的炭化水素を導入することができ、反応していない補助的炭化水素が反応ゾーンにやがて入る。ある好ましい態様では、供給原料と同じ軸平面で補助的炭化水素を導入する。以下に記載する例では、3つのオリフィスを通して、カーボンブラック生成供給原料流と同じ軸平面で補助的炭化水素を導入した。1つ目の供給原料、次の補助的炭化水素など、交互のパターンで、そのオリフィスを好ましくは配置し、セクション12の外側の周辺部の周りに均等に配置した。補助的炭化水素の炭素含有量が反応装置に注入される全ての燃料流の全体の炭素含有量の多くても約20重量%に、たとえば、約1から約5%、約5%から約10%、約10%から約15%、約15%から約20%、もしくはこれらの端点のいずれかによって境界をつけられるいずれの範囲内になるように、反応装置に加えられた補助的炭化水素の量を調節することができる。ある好ましい態様では、補助的炭化水素の炭素含有量は、反応装置に注入される全ての燃料流の全体の炭素含有量の約3重量%から約6重量%である。
【0023】
地点32から地点70間での距離はH−1で示される。
【0024】
ある態様では、結果として得られたカーボンブラック中のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の全体の濃度が低くなるような量のカーボンブラックに特定のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を構造調節材として加える。好ましくは、その物質は、少なくとも1種のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含む。ある例示的態様では、カリウムイオンを供給原料に添加し、やがてカーボンブラックの中に組み入れられる。一方、全体のIA族およびIIA族元素の濃度は低いままである。様々な態様で使用するために活用できるIA族およびIIA族元素の他の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムもしくはラジウム、またはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。その物質は、固体、溶液、分散液、気体もしくはこれらの組み合わせとなり得る。同じもしくは異なるIA族もしくはIIA族元素を有する2種以上の物質を使用することができる。もし、複数の物質を使用した場合、一緒に、分けて、連続的に、もしくは異なる反応場所にその物質を添加することができる。本発明の目的のため、その物質は、金属(金属イオン)自体、これらの元素のうちの1種もしくは2種以上を含む化合物となることが可能であり、これらの元素のうちの1種もしくは2種を含む塩などが含まれる。例示的塩には、有機塩および無機塩の両方、たとえば 、塩化物、酢酸塩、もしくはギ酸塩、または2種以上のそのような塩の組み合わせのいずれかを有するナトリウムおよび/またはカリウムなどの塩が挙げられる。好ましくは、その物質は、カーボンブラック製品を形成するために進行する反応の中に金属もしくは金属イオンを導入することが可能である。たとえば、完全に冷める前の任意の地点でその物質を添加することができ、それには、第1の段階のカーボンブラック生成供給原料の導入の前、第1の段階のカーボンブラック生成供給原料導入の間、第1の段階のカーボンブラック生成供給原料の導入の後、または、補助的炭化水素の導入の前、間、もしくはすぐ後、すなわち、完全に冷める前の任意の段階が含まれる。その物質の2以上の導入地点を使用できる。金属含有物質の量は、カーボンブラック製品を作製することができる限り、いずれの量でも可能である。上記で記載したように、IA族および/またはIIA族元素の全体の量(すなわち、カーボンブラック含まれるIA族およびIIA族元素の全濃度)が、μg/g単位で、多くても、
y+15×ヨウ素吸収量
であるような量でその物質の量を添加することができる。式中、yは、250、100、−50、−200もしくは−350となり得る。ある態様では、その物質はIA元素を導入する。たとえば、その物質は、カリウムもしくはカリウムイオンを導入することができる。従来の方法のいずれをも含むいずれのやり方でその物質を添加することができる。言い換えれば、カーボンブラック生成供給原料を導入したのと同じ方法で、その物質を添加することができる。気体、液体もしくは固体又はそれらの組み合わせとしてその物質を添加することができる。単一の地点もしくは複数の地点で、単一流もしくは複数流としてその物質を添加することができる。供給原料、燃料および/または酸化体に、それらの導入の前および/または間に、その物質を混合することができる。
【0025】
ある態様では、供給原料の中に塩溶液を導入することによって、少なくとも1種のIA族もしくはIIA族元素を含む物質を供給原料に導入する。ある好ましい態様では、全てのアルカリ金属および/またはアルカリ金属のイオンの濃度が約0から約1重量パーセントとなるように、供給原料と塩溶液を混合する。燃焼のとき、カーボンブラックの中にその金属イオンを組み入れることができる。
【0026】
カーボンブラック生成供給原料および高温燃焼ガスの混合物は、ゾーン12を通ってゾーン18に入って、その後ゾーン19に入るダウンストリームを流す。カーボンブラックが形成されたときの化学反応を停止させるために、地点62に配置され、水となり得る冷却流動体50を注入するクエンチ60を使用する。高温分解を停止させるための冷却地点を選択するための当該技術分野で知られているいずれかの方法で、地点62を決定することができる。高温分解を停止させるための冷却地点を決定するための一方法は、適格なスペクトロニック(Spectronic)20のカーボンブラックについての値が到達する地点を決定することによる。Qは、ゾーン18の初めから冷却地点62までの距離であり、クエンチ60の位置により変わるであろう。ある態様では、冷却している間にカーボンブラックに添加される余分の金属および他の元素の量を最小にするために、冷却流体として逆浸透水を使用する。
【0027】
高温燃焼ガスおよびカーボンブラック生成供給原料の混合物を冷却した後、冷却したガスはダウンストリームを通り、任意の従来の冷却および分離手段の中に入り、これによりカーボンブラックは回収される。ガス流からのカーボンブラックの分離は、集塵装置、サイクロン分離器もしくはバグフィルターなどの従来の方法によって容易に達成される。この分離の後に、たとえば、ペレット製造機を使用してペレット化してもよい。
【0028】
ある態様では、表面に有機基を結合させたり、酸化したり、もしくは熱処理を行ったりして、カーボンブラックを改質してもよい。カーボンブラックのグラファイト含有量を増加させるために、不活性雰囲気の中でカーボンブラックを熱処理してもよい。所望の量の黒鉛化を達成するために、熱処理の時間および温度を調整することができることを当業者は認識するであろう。
【0029】
極性基、イオン基、および/またはイオン性基を表面上に導入するために、表面に酸化剤を使用してカーボンブラックを酸化する。この方法で作製されたカーボンブラックは、かなりの量の酸素含有基を表面に有することがわかっている。酸化剤には、酸素ガスと、オゾンと、NO2(NO2と空気の混合ガスも含む)と、過酸化水素などの過酸化物と、ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム過硫化塩を含む過硫化塩と、ナトリウム次亜塩素酸塩、塩岩、ハロゲン酸塩もしくは過ハロゲン酸塩(たとえば、ナトリウム亜塩素酸塩、ナトリウム塩素酸塩もしくはナトリウム過塩素酸塩)などの次亜ハロゲン酸塩と、硝酸などの酸化酸と、過マンガン酸塩、オスミウム酸、酸化クロム、もしくは硝酸アンモニウムセリウムなどの酸化体を含有する遷移金属とが挙げられるが、これらに限定されない。また、酸化体の混合物、とくに酸素およびオゾンなどのガス状酸化体の混合ガスも使用することができる。さらにまた、塩素化およびスルホニル化などの顔料の表面にイオン基もしくはイオン性基を導入する他の表面改質方法を使用して作製されたカーボンブラックを使用することができる。
【0030】
有機化学基をカーボンブラックと結合させるような当業者に知られている任意の方法を使用して改質カーボンブラックを作製することができる。たとえば、米国特許第5,554,739号明細書、同第5,707,432号明細書、同第5,837,045号明細書、同第5,851,280号明細書、同第5,885,335号明細書、同第5,895,522号明細書、同第5,900,029号明細書、同第5,922,118号明細書および同第6,042,643号明細書ならびに国際公開第99/23174号パンフレットに記載されている方法を使用して改質カーボンブラックを作製することができ、これらの記載は、引用することにより本明細書に完全に組み込まれる。そのような方法により、たとえば、ポリマーおよび/または界面活性剤を使用する分散剤タイプの方法に比べて、カーボンブラック上への特性基の結合を安定にする。改質カーボンブラックを作製するための他の方法には、たとえば、引用により本明細書にそっくりそのまま組み込まれる米国特許第6,723,783号明細書に記載されているように、有機基を含む試薬を使用して有用な官能基を有するカーボンブラックを反応させることがある。上記の組み込まれる引用の中に記載されている方法を使用して、そのような官能基カーボンブラックを作製することができる。さらに、米国特許第6,831,194号明細書および同第6,660,075号明細書、米国特許出願公開第2003−0101901号明細書および同第2001−0036994号明細書、カナダ特許第2,351,162号明細書、欧州特許第1 394 221号明細書、ならびに国際公開第04/63289号パンフレット、ならびにN.Tsubokawa,Polym.Sci.,17,417,1992に記載されている方法で、結合した官能基を有する改質カーボンブラックもまた作製することができ、これらのそれぞれもまた、そっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0031】
炉の中で、バーナーの天然ガス流量、供給原料流量、金属塩濃度、および補助的炭化水素の流量を同時に調整することによって、カーボンブラックの特定のヨウ素価およびDBPを制御する。バーナー天然ガス流量を増加させることにより、供給原料の流量を減少させることにより、金属塩濃度を増加させることにより、および/または補助的炭化水素の流量を減少させることにより、ヨウ素価を増加させることができる。バーナー天然ガスの流量を増加させたり、(他の要因に基づいて)供給原料の流量を増加させたり、減少させたり、金属塩の濃度を減少させたり、および/または補助的炭化水素の流量を減少させたりすることによって、DBPを増加させることができる。たとえば、反応装置の中で全カーボン含有量の8%もしくは10%よりも多くのカーボンを補助的炭化水素が供給するように、補助的炭化水素を増加させる場合、結果として得られたカーボンブラックの表面積を維持もしくは増加させるために、反応装置の中で供給原料の総量を減少させるのが望ましいことがあり得る。これらの条件下、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の総量がより少ない低構造もまた達成することができる場合がある。本明細書で検討された変数は、また、着色力、WSP、pH、M比および残留金属含有量などのカーボンブラックの他の特性に影響を与える。所望の特性を有するカーボンブラックを作り出すために必要なそれぞれの変数の正確な量は、反応装置の形状および反応装置の中へそれぞれの化学種を注入する方法に基づく。さらに詳細に以下、例を記載する。
【0032】
供給原料中の特定の濃度のアルカリおよび/またはアルカリ土類元素と組み合わせた、小さくした注入オリフィスの直径、多くした供給量およびカーボンブラック生成供給原料と同じ軸平面での補助ガスの注入、ならびに様々な燃焼ゾーンでの特定の直径および長さを含む、補助ガスを導入するためのある条件により、我々は、低構造と大きな表面積との両方を有するカーボンブラックを製造できることを我々は思いがけなく発見した。さらに、カーボンブラックは、中位もしくは大きな表面積の、たとえば、30〜200m2/gもしくは70〜200m2/gのブラックで以前から達成可能であったものに比べて著しく低構造、たとえば、20cc/100g〜40cc/100gもしくは50cc/100gである。カーボンブラック中のアルカリもしくはアルカリ土類金属の総量が、中から大の表面積を有する、より低構造のカーボンブラックで通常見られるものに比べて少ない。結果として得られたカーボンブラックは低いDBPを有し、これにより、分散が容易になり、そして媒体の粘度が下がる。カーボンブラックから製造されたデバイス中の光学濃度を減少させ得る表面積の減少が起こることなく製造することを容易にするために、その媒体の中に、そのカーボンブラックを組み入れる。さらに、アルカリおよびアルカリ土類材料が低レベルであるので、抵抗性を犠牲にすることなくエレクトロニクスの用途に低DBPブラックを使用できる。これらのカーボンブラックによって示された増加した着色力により、所望の光学濃度を達成するためにキャリアーの中で使用しなくてはならないカーボンブラックの総量は減少する。
【0033】
また、1.25未満のM比を有するカーボンブラックを使用すると、同じ構造および表面積、しかし、より高いM比を有するカーボンブラックに比べてそのカーボンブラックを組み入れた材料の光学濃度が増加することを我々は思いがけなく発見した。これにより、所与の光学濃度を得るために使用するカーボンブラックの量をより少なくすることができ、ミルベースおよび上記材料を製造するために使用されるカーボンブラックを含有する他の流体媒体の粘度が減少する。
【0034】
酸性のpHよりはむしろ中性のpHもしくは少し塩基のpHを有するカーボンブラックは、コーティング材、インク、トナー、および他の媒体を製造するために使用できる一定のポリマーおよび他の材料と、より大きな相溶性を有する可能性があり、これらの用途のためにカーボンブラックと混合する組成物の範囲が広がる。さらに、そのようなカーボンブラックは、酸性のカーボンブラックと異なる相互作用を、ブラックマトリックスおよびレジストコーティング材の作製で一般に使用されるアルカリ現像液と起こすであろう。そして、レジスト、ブラックマトリックスおよびアルカリ現像液を使用する他のコーティング材の現像特性を改善することができる。
【0035】
これらのカーボンブラックによって示される、より低いWSPは、同じ表面積もしくは構造を有するが、従来技術の方法で作製されたカーボンブラックに比べて、WSPの低いカーボンブラックは、より疎水性であることを示す。たとえば、上述の範囲内の低い拡水圧力を有するカーボンブラックは、コーティング材、インク、トナーおよび他の材料を製造するために使用できる一定のポリマーおよび他の材料と、より大きな相溶性を有することができ、これらの用途のためにカーボンブラックと混合することができる組成物の範囲を広げることができる。さらに、そのようなカーボンブラックは、より親水性のカーボンブラックと異なる相互作用を、ブラックマトリックスおよびレジストコーティング材の作製で一般に使用されるアルカリ現像液と起こすであろう。そして、レジスト、ブラックマトリックスおよびアルカリ現像液を使用する他のコーティング材の現像特性を改善することができる。
【0036】
カーボンブラックを含む分散液、コーティング材、およびデバイスの性能は、様々な因子によるであろう。樹脂および低いレベルの、たとえば、20cc/100g〜40もしくは50cc/100gのDBPの構造を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含み、ニュートン流を維持しながらカーボンブラックの高い充填を有する分散液を製造することができることを我々は見い出した。さらに、同じ樹脂と、同じ、もしくは同様の表面積を有する、より高い構造のカーボンブラックとを含むコーティング材と比較して、改善された電気的、光学的特性を示すコーティング材を製造するために、そのような分散液を使用することができる。
【0037】
カーボンブラックの充填を増加させる能力は、トナー、インク、ブラックマトリックス、フォトレジストならびに、これらおよび他の製品を作製するために使用されるミルベースなどの材料に対して他の利益も提供する。上記の媒体中のカーボンブラックの濃度が増加するにしたがって、硬化性、現像性、パターン性、およびガラスへの付着性などの特性が影響を受ける。多くのケースでは、これらの特性の1つは、コーティング材中の許容できるカーボンブラックの濃度の上限を決め、このことは、逆にフィルムの達成可能な光学濃度の上限を課する。本発明のある態様による低構造カーボンブラックを開発することにより、高い抵抗およびフィルム平滑性を維持しながら、カーボンブラックのより高い充填を有するフィルムの製造を可能にする。
【0038】
カーボンブラックの分析的および物理的特性を評価する際、以下の試験手順を使用した。ASTMの試験方法D−1510−08に準拠して、カーボンブラックのヨウ素吸収量(I2 No.)を決定した。ASTMの試験方法D3265−07に準拠して、カーボンブラックの着色力(ティント)を決定した。ASTMのD2414−08で説明されている方法に準拠してカーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル値)を決定した。ASTMのD6556−07にしたがって窒素表面積およびSTSA表面積を測定した。ASTMのD1506−99にしたがって、灰分含有量を測定した。既知の量のカーボンブラックを水に分散させ、pHプローブ(ASTM D1512−05)を使用して水相のpHを測定することによってpHを決定した。ASTMのD1618−99にしたがって、「Spectronic 20」を測定した。誘導結合プラズマ(ICP)によって、NaおよびKの含有量を測定した。
【0039】
図2に示すような、米国特許第5,456,750号明細書に記載されているカーボンブラックの重量分率対カーボンブラックのアグリゲートのストークス径のヒストグラムから、ストークス径のメディアン径および最頻値を決定した。手短に言えば、英国のタインアンドウィアのJoyce Loebl Co.Ltd.で製造された遠心分離器などのディスク遠心分離器を使用して、ヒストグラムを作成するのに使用したデータを測定する。
【0040】
以下の手順は、1985年2月1日に発行された、Joyce Loeblのディスク遠心分離器の使用説明マニュアル(ファイルリファレンス DCF 4.008)に記載されていた手順を修正したものであり、これらの教示は参照により本明細書に取り込まれる。そして、データを測定する際にそれを使用した。重さを計った容器の中に入れて、カーボンブラック試料の重さ10mg(ミリグラム)を計り、その後、0.05%のNONIDET P−40界面活性剤(NONIDET P−40は、Shell Chemical Co.で製造され販売された界面活性剤について登録された商標である。)を、添加した10%無水エタノールおよび90%蒸留水の溶媒の50ccに加えた。ニュ−ヨーク州のファーミンデールのHeat System Ultrasonics Inc.で製造され販売されているSonifier Model No.W385を使用して、超音波エネルギーの方法で、結果として得られた懸濁液を15分間分散させる。
【0041】
ディスク遠心分離器の作動の前に、ディスク遠心分離器からのデータを記録するコンピューターに、以下のデータが入力される。
【0042】
1.カーボンブラックの比重(1.86g/ccとした)
【0043】
2.水およびエタノールの溶液の中で分散しているカーボンブラックの溶液の中の体積、この場合、0.5cc
【0044】
3.スピン流体の体積、この場合、水で10cc
【0045】
4.スピン流体の粘度、この場合、23℃で0.933センチポアズとする
【0046】
5.スピン流体の密度、この場合、23℃で0.9975g/cc
【0047】
6.ディスク速度、この場合、8000rpm
【0048】
7.データのサンプリング間隔、この場合、1秒
【0049】
ディスク遠心分離器は、ストロボスコープを作動させながら8000rpmで作動する。回転しているディスクに10ccの蒸留水をスピン流体として注入する。混濁度レベルを0に設定し、10%無水エタノールおよび90%蒸留水の溶液をバッファー液として1cc注入する。その後、ディスク遠心分離器のカットアンドブーストボタンを操作して、スピン流体とバッファー液との間になだらかな濃度勾配を作り出す。その勾配は視覚的に監視される。2つの流体の間の境界が見分けられないほど、その勾配がなだらかになったとき、エタノール水溶液中に分散したカーボンブラックを回転しているディスクに0.5cc注入し、すぐにデータ収集を開始する。もし、流動が発生した場合、作動を強制終了する。ディスクを20分間回転させ、その後、エタノール水溶液中に分散しているカーボンブラックを注入する。20分の回転に続いて、ディスクを停止し、スピン流体の温度を測定する。そして、作動の始めに測定したスピン流体の温度と、作動の終わりに測定したスピン流体の温度との平均を、ディスク遠心分離器からのデータを記録するコンピューターに入力する。標準ストークス方程式によりデータを分析し、以下の定義を使用してデータを示す。
【0050】
カーボンブラックアグリゲートとは、もっとも小さな分散可能な単位である、分離した、堅いコロイド状の存在物である。それは、広範囲に合体した粒子から構成される。
【0051】
ストークス径とは、ストークス方程式にしたがい、遠心力場もしくは重力場の中で粘性のある媒体の中で沈殿する球体の直径である。非球形対象物と同じ密度および沈降速度である平滑で堅い球体と同じように非球形対象物が動くと見なされる場合、ストークス径の用語でカーボンブラックアグリゲートなどの非球形対象物もまた表すことができる。ナノメートルの直径で慣習的な単位を表す。
【0052】
最頻値(報告上ではD最頻値)とは、ストークス径に関する分散曲線のピーク地点のストークス径(ここでは図2のA地点)である。
【0053】
メディアンストークス径(報告上では、Dストークス)とは、ストークス径の分散曲線上の地点であり、試料の50重量%がその地点よりも大きくなるか、もしくは小さくなる。したがって、それは測定のメディアン値を表す。
【0054】
制御された雰囲気から水が吸着するにしたがって試料の質量が増加するのを観察することによって拡水圧力を測定した。その試験では、試料の周りの相対湿度(RH)が0%(純粋な窒素)から100%(水が飽和している窒素)まで増加する。試料および雰囲気がいつも平衡状態にある場合、試料の拡水圧力(πe)を以下のように決定される
【数1】

式中、Rは気体定数、Tは温度、Aは試料の窒素表面積、Tは試料に吸着した水の量(モル/gmに変換)、Pは、その雰囲気中の水の分圧、そして、POはその雰囲気中の平衡蒸気圧である。実際、1つもしくは(好ましくは)複数の個別の分圧で表面への水の平衡吸着を測定し、その曲線の下の領域による積分が評価される。
【0055】
拡水圧力を測定するために、以下の手順を使用することができる。分析の前、分析のための100mgのカーボンブラックをオーブンで125℃、30分間、乾燥する。表面測定システムDVS1機器(カルフォルニア州のモナークビーチのSMS Instrumentsにより供給された)内のインキュベーターが25℃で2時間、安定していることを確実にした後、試料チャンバーおよび参照チャンバーの両方の中に試料カップを装填する。そのカップを乾燥させ、安定なベースラインを確立するために0%、10分間に目標RHを設定する。静電気を放電させ、はかりの風袋を測定した後、試料チャンバーの中のカップに約8mgのカーボンブラックを加える。試料チャンバーを密閉した後、試料が0%RHで平衡になるようにする。平衡になった後、試料の最初の質量を記録する。その後、約5、10、20、30、40、50、60、70、78、87および92%RHのレベルまで、それぞれのRHレベルで20分間、平衡状態にすることができるシステムを使用して、窒素雰囲気の相対的湿度を連続的に増加させる。それぞれの湿度レベルで吸着した水の質量を記録し、上の式を通して、それらから拡水圧力を計算する。
【0056】
実際は、例示的であることを意図している以下の例により本発明はさらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0057】
例1
上に記載され、図1に示されている反応装置で、表2で説明されている反応装置の条件および形状を使用してカーボンブラックを作製した(例C1は比較例)。燃焼反応のための燃料および補助的炭化水素の両方として天然ガスを使用した。アルカリ金属含有材料としてカリウムアセテートの水性溶液を使用し、反応装置の中へ注入する前に供給原料と混合した。逆浸透により精製した水を使用して反応を冷却で停止させた。液体供給原料は、以下の表1に示す特性を有していた。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

* 同じ軸平面で、反応装置の円周の周りに交互に連続的に、供給原料および補助的炭化水素のオリフィスを配置した。HC=炭化水素。
** nm3を標準立方メートルと呼ぶ。ここで「標準」とは、0℃および1atm気圧で補正された気体体積をいう。
*** バーナーの天然ガスと化学量論的に反応するのに必要な酸素の全総量と比較した反応装置に加えた酸素のパーセントとして、主要燃焼を定義する。
**** 反応装置に加えた燃料流の全てと化学量論的に反応するのに必要な酸素の全総量と比較した反応装置に加えた酸素のパーセントとして全燃焼を定義する。
【0060】
カーボンブラックのキャラクタリゼーション
本明細書の他のところに記載されているように、例1で製造されたカーボンブラックの様々な特性を測定した。30mLの水の中に3gの材料を分散させ、15分間沸騰して、室温に冷却し、pHプローブ(ASTM D1512−05)を使用して水相のpHを測定することにより、示されているpH値を決定した。ASTM D1618−99にしたがって、スペクトロニック(Spectronic)20を測定した。誘導結合プラズマ(ICP)分析を経てNaおよびKの濃度を測定した。以下の表3に示すように、カーボンブラックは、低構造、高純度(低抽出物および低[K+])、中性から少し塩基のpH、および低WSP(たとえば、それらは疎水性である。)を示す。
【0061】
【表3】

* メディアンストークス径
【0062】
粘度
PGMEA中に10から50wt%のカーボンブラックを有するミルベースを作製するために、例Aのカーボンブラックおよび、以下の表4にリスト表示された特性を有する市販のカーボンブラック(比較例C2)を使用した。ミルベースもまた界面活性剤(Solsperse 32500)を含む。界面活性剤とカーボンブラックとの間の比率を0.2に固定した。Skandexの実験用シェーカーを使用してその成分を4時間粉砕した。ミルベース中の顔料の平均体積粒径を測定し、ベースのカーボンブラックのアグリゲートの大きさに匹敵することがわかった。Solsperse32500は、Noveonから市販されているポリマーの分散剤であり、PGMEAは、Sigma−Aldrichから入手できるプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである。
【0063】
【表4】

* メディアンストークス径
【0064】
ミルベースの調合について、キュベット形状およびAR−G2(TA Instruments製)レオメーターを使用して粘度の測定を行った。
【0065】
ミルベース分散液はニュートン流体であった。50%の充填で、カーボンブラックC2を有する分散液は、非ニュートン挙動を示す。一方、カーボンブラックAを有する分散液は、調べたカーボンブラックの濃度の範囲全体でニュートニアンであった。低DBPのカーボンブラックの要所となる有利な点は、とくにカーボンブラックの充填が高いときの著しく低い粘度であり(図3を参照)、それは、(たとえば、スピンコーティングによる)処理と、フィルム特性(たとえば、より低い粘度のコーティングのより良好なレベリング性の結果によるフィルム平滑性)にとって有益である。
【0066】
本発明の好ましい態様の前述の記載は、説明および記載の目的のために表してきた。それは、論じ尽くされたこと、もしくは開示されたまさにその形態に本発明を限定することを意図していない。上記の教示の観点から修正や変形が可能であり、また、本発明の実施からもそれらを得ることができる。当業者が、意図する特定の使用に適するように本発明を様々な態様で、および様々に変形して利用できるように、本発明の原理およびその実際的な用途を説明するために、その態様は選択され記載された。本発明の範囲は、ここに付け加えられた特許請求の範囲およびそれらの均等によって画定されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBPおよび、μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250)のIA族およびIIA族元素の全濃度を有するカーボンブラック。
【請求項2】
1から1.25未満のM比を有するか、
6から10のpHを有するか、
多くて6mJ/m2の拡水圧力を有するか、または、
式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90)に従う着色力を有するかのうちの少なくとも1つによって特徴づけられる請求項1のカーボンブラック。
【請求項3】
酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックである請求項1のカーボンブラック。
【請求項4】
30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBPおよび1.00から1.25未満のM比を有するカーボンブラック。
【請求項5】
6から10のpHを有するか、
μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250)のIA族およびIIA族元素の全濃度を有するか、
多くて6mJ/m2の拡水圧力を有するか、または、
式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90)に従う着色力を有するかのうちの少なくとも1つによって特徴づけられる請求項4のカーボンブラック。
【請求項6】
酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックである請求項4のカーボンブラック。
【請求項7】
30から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから40cc/100gのDBP、多くて6mJ/m2の拡水圧力および1.00から1.25未満のM比を有するカーボンブラック。
【請求項8】
6から10のpHを有するか、
μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250)のIA族およびIIA族元素の全濃度を有するか、または、
着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90)に従う着色力を有するかのうちの少なくとも1つによって特徴づけられる請求項7のカーボンブラック。
【請求項9】
酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックである請求項7のカーボンブラック。
【請求項10】
70から200mg/gのヨウ素価、20cc/100gから50cc/100gのDBPおよび多くて6mJ/m2の拡水圧力を有するカーボンブラック。
【請求項11】
1から1.25未満のM比を有するか、
6から10のpHを有するか、
μg/g単位で、多くてy+(15×ヨウ素価)(式中、yは250)のIA族およびIIA族元素の全濃度を有するか、または、
式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90)に従う着色力を有するかのうちの少なくとも1つによって特徴づけられる請求項10のカーボンブラック。
【請求項12】
酸化したカーボンブラック、熱処理したカーボンブラックまたは結合した有機基を含む改質したカーボンブラックである請求項10のカーボンブラック。
【請求項13】
30から200mg/gのヨウ素価および20cc/100gから40cc/100gのDBPを有するカーボンブラック製品を製造する方法であって、
予め加熱した空気流を燃料と反応させることによって、燃焼ガスの流れを生成するステップ、
流れを形成し、その流れの中で前記供給原料の熱分解を開始させるために、一軸平面の既定の数の地点で、前記燃焼ガスの流れの中に前記供給原料を導入するステップ、
一軸平面の既定の数の地点で、燃焼ガスの流れの中に補助的炭化水素を導入するステップ、
少なくとも1種のIA族もしくはIIA族元素またはそれらを組み合わせたものを含む少なくとも1種の物質を、燃焼ガスの前記流れの中にさらに導入するステップ、および、
逆浸透処理を行った水を使用して前記熱分解を冷却するステップを含み、
前記供給原料および前記補助的炭化水素の前記注入地点が、前記軸面で交互であり、
前記カーボンブラック製品中のIA族およびIIA族元素の全体が、μg/g単位で、多くて、y+15×ヨウ素価(式中、yは250)である方法。
【請求項14】
全体の燃焼比率が少なくとも26%である請求項13の方法。
【請求項15】
前記既定の数が3である請求項13の方法。
【請求項16】
前記補助的炭化水素が、炭化水素を含み、前記補助的炭化水素の炭素含有量が、反応装置に注入された全ての燃料流の総炭素量の多くて約20重量%になるような量で導入される請求項13の方法。
【請求項17】
前記補助的炭化水素が気体状の形態である請求項13の方法。
【請求項18】
前記カーボンブラックが、
1から1.25未満のM比を有するか、
6から10のpHを有するか、
多くて6mJ/m2の拡水圧力を有するか、または、
式、着色力=x+0.44×ヨウ素価(式中、xは45から90)に従う着色力を有するかのうちの少なくとも1つによって特徴づけられる請求項13の方法。
【請求項19】
前記カーボンブラックの表面の化学的性質または微細構造を改質するステップをさらに含む請求項13の方法。
【請求項20】
有機基を結合させて前記カーボンブラックを改質するステップ、前記カーボンブラックを酸化させるステップ、または前記カーボンブラックを熱処理するステップをさらに含む請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525143(P2010−525143A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506235(P2010−506235)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005202
【国際公開番号】WO2008/133888
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】