低油脂固形ルウ
【課題】適度な保形性を備え、しかも調理時にはダマを作ることなく速やかに溶解する、油脂含量の少ない低油脂固形ルウ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 澱粉質原料、油脂及び調味料を含み、かつ、油脂含量が10〜25質量%である、加圧成形された低油脂固形ルウであって、嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアCと、該コアC'の表面に設けられた保護層C'とを有する。
【解決手段】 澱粉質原料、油脂及び調味料を含み、かつ、油脂含量が10〜25質量%である、加圧成形された低油脂固形ルウであって、嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアCと、該コアC'の表面に設けられた保護層C'とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いる低油脂含量の低油脂固形ルウに関する。
【背景技術】
【0002】
カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いるルウとしては、多量の食用油脂を用いて小麦粉や調味料などを固めた固形ルウが一般的である。通常、固形ルウは、食用油脂、小麦粉、調味料などを加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを容器に流し込んで充填し、冷却固化することにより製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、従来の固形ルウの製造は次のステップを含む製造ラインが使用されている。
(1)加熱溶融ルウの調製→(2)溶融ルウを製品容器に充填→(3)溶融ルウを充填した製品容器を冷却して製品容器内で、製品容器内で連続した複数食分の固形ルウを作る。
【0004】
ところで、近時は低カロリー食品への指向性が強まっており、これに対応するものとして、特許文献2は油脂の含有量を低減したルウを提案している。特許文献2に開示の油脂含有量の少ないルウは水分を多量に含有するペースト状の形態のものである。
【特許文献1】特開平11-332526号公報
【特許文献2】特開2001-269144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ルウの市場は、圧倒的に固形ルウが占めているのが実情である。この実情を鑑み、本願発明者らは固形ルウに固執して油脂含量の少ない固形ルウを開発するために、従来の高油脂固形ルウの配合から油脂の配合量を減らして低油脂ルウを調製し、この低油脂ルウの性状を観察したところ、油脂含有量を低下させるに従ってルウの流動性が低下し、従来の高油脂の固形ルウを製造するラインを使用するのが困難になることが分かった。
【0006】
すなわち、現在市販の高油脂ルウは、これを調製した後のルウは液状であり適度な流動性を備えているが、油脂含有量を低下させた低油脂ルウでは、調製したルウがボソボソとした流動性に欠ける物性になることが分かった。このことから低油脂ルウを調製し、これを所定量に小分けしながら各製品容器に充填するのが難しいだけでなく、また、低油脂ルウを充填した製品容器を冷却しても、製品容器内で一定の形状を備えた固形ルウを形作るのは、事実上、無理であることが分かった。
【0007】
このことから、低油脂ルウを従来と同様に一定の形状を備えた固形ルウに成形するには、調製後のルウを加圧成形する必要がある。しかし製品容器は一般的にはプラスチック成型品であり肉薄に作られているため、加圧成形に耐えるものではないという問題がある。
【0008】
このことに加えて、加圧成形した場合、低油脂固形ルウが従来の高油脂固形ルウと同様に素早く溶けるか、という次の問題がある。すなわち、消費者は、従来の高油脂固形ルウの素早い溶解性に馴れており、低油脂固形ルウであっても家庭で調理するときに従来と同様にダマを作ることなく素早く溶けることを望むことは容易に想像できる。しかし、固形の低油脂ルウを成形するのに、ボソボソしたルウを押し固めて密度が均一な固形ルウを作るには堅固に押し固める必要があり、このことは固形ルウの溶解性を悪化させる要因になる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、調理時の素早い溶解性を確保し且つ形崩れを抑えることのできる、油脂含量の少ない低油脂固形ルウを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
澱粉質原料、油脂及び調味料を加熱調整したルウを用いて加圧成形された低油脂固形ルウであって、
嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、
前記低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する低油脂固形ルウを提供することにより達成される。
【0011】
本発明において「ルウ」とは、水と共に、肉や野菜などの食材を必要に応じて加え、煮込みなどの加熱調理をすることにより、カレー、ハヤシ、シチュー、スープ、ソースなどの所望の食品を調理するための食品素材である。また、「固形ルウ」とは、ブロック形状のルウをいい、粉粒などのルウは含まない。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態では、低油脂ルウを調製する材料として、澱粉質原料、油脂及び調味料を含み、かつ、油脂含量が10〜25質量%(以下、「質量%」を「%」と略記する)、好ましくは12〜25%、より好ましくは12〜22%、更に好ましくは15〜22%である原料を加熱混合してルウを調製する。油脂含量を上記範囲とすることにより、喫食時の香り立ちが良く、保形性があると共に、調理時に熱水に速やかに溶解する低油脂含量の固形ルウを製造することが可能になる。油脂含量が10%を下回ると調理時に熱水に溶解し難くなり、また、カレーやシチューを作ったときに調理感のある風味を得るのが難しくなる。尚、本発明において「油脂含量」は、固形ルウ中の油脂含量を指し、ソックスレー抽出法により測定したものをいう。
【0013】
低油脂ルウの原料として用いる澱粉質原料としては、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉などを挙げることができる。澱粉質原料の含有量としては、上記原料中に好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜35%であるのがよい。また、油脂としては、食用に使用される油脂であれば特に制限されるものではなく、天然油脂、加工油脂及びこれらの混合物のいずれをも使用することができる。具体的には、牛脂や豚脂などの動物油脂、パーム油や綿実油、コーン油などの植物油脂、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0014】
また、調味料としては、食塩、砂糖などの糖類、グルタミン酸ナトリウム、トマト、リンゴ、ニンジン、オニオン、チーズ、はちみつ、チャツネ、酵母エキス、フルーツ、ブイヨンなどの粉粒あるいはペースト、粉乳などが例示できる。調味料の含有量としては、所望により決定されるが、上記原料中に好ましくは20〜50%、より好ましくは30〜40%である。また、カレー粉などの香辛料を用いてもよく、香辛料の含有量としては、上記原料中に例えば1〜15%であるのがよい。
【0015】
また、上記成分の外にも、固形ルウの熱水への溶解性を高めるために、デキストリンを含ませることもできる。この場合、デキストリンとしては、DE値が5〜40のもの、より好ましくは5〜20のものを使用するとよい。これにより、カレー等の食品に風味上の影響を与えることなく、固形ルウの熱水への溶解性を好適に高めることができる。デキストリンを使用する場合の含有量としては、上記原料中、例えば3〜20%であるのが好ましく、5〜15%であるのが更に好ましい。また、この外にも、乳化剤、増粘剤、酸化防止剤、着香料、着色料などを用いることもできる。
【0016】
本発明の低油脂固形状ルウは、嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する。欠け易い部分に保護層を設けることより、コアを堅固に加圧成形する必要が無くなり、適度にエアを含んだ嵩密度で成形することができるため、調理時の溶解性を所望の速度に調整するのが容易になる。
【0017】
保護層は、低油脂ルウを成形したコアを成形するときに成形型を例えば50℃というように低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱した状態でコアの成形を行うことで、コアの表面に連続した油脂皮膜を形成し、この油脂皮膜で保護層を構成するようにしてもよい。変形例として、成形型の壁面の所望の箇所に油脂を塗布又は吹き付けた後にコアを加圧成形することでコアを覆う保護層を形成するようにしてもよい。更なる変形例として、コアを成形した後に、このコアの全表面のうち、所望の部分に液状の油脂を塗布又は吹き付けるようにしてもよい。更なる変形例として、成形したコアを液状油脂の中に浸漬してコアの表面に油脂皮膜の保護層を形成してもよい。保護層の厚みは任意であり、薄皮一枚の状態であってよいし、ある程度の厚みを有していてもよい。なお、この明細書において、油脂の融点は、上昇融点のことを指し、油脂の殆どが液相に転じ、残った僅かな量の固相が存在したまま全体が流動を開始する温度をいい、この温度は採用した油脂によって様々である。
【0018】
コアの全表面のうち、保護層を設ける部分つまり欠け易い部分として、立体形状のコアの角部分、縁部分を挙げることができる。例えば立方体形状のコアであれば、コアの上面と側面とが交差する上端縁や上角隅部が欠け易い部分であるといえる。したがって、コアの上面、側面に保護層を設けるのが好ましいが、上面のうち中心部分に保護層を設けるのを省いてもよい。このことは側面についても言え、側面のうち欠けや形崩れし難い部分は保護層を設けるのを省いてもよい。
【0019】
保護層を作る材料としては、コアの一部を構成する油脂と同じ油脂を使ってもよいし、異なる油脂を使ってもよいし、これに香辛料などを含有させてもよい。変形例として、コアを作る低油脂ルウとは別に調整した高油脂ルウを使ってもよいし、糖、澱粉、デキストリン、多糖類、タンパク質などコアの表面の一部又は全表面に保護膜を作ることのできる食材を任意に採用することができる。固形状ルウの調製に用いた油脂と同一の油脂を用いてもよいし、異なる油脂を用いてもよい。さらに、被覆する油脂に上述の澱粉質原料や調味料を含有させてもよく、さらに加熱処理してもよい。このように被覆する油脂に澱粉質原料や調味料を含有させることによって、更にはそれを加熱処理することによって、本発明の固形状ルウを用いて調理した食品の調理感を高めることができる。糖、澱粉、デキストリン、多糖類、タンパク質などの食材でコアの表面の一部又は全表面に保護層を作る場合には、例えば、これらの食材の溶液をコアの表面の一部又は全表面に付着させ、次いで、当該溶液を乾燥させることにより保護層を形成することができる。
【0020】
低油脂ルウを製造するに際して、上記原料を加熱混合してルウを調製するが、ここでの加熱混合は攪拌手段を有する加熱調理装置、具体的には、例えば特開平8−309171号公報に開示される混合攪拌装置(攪拌機付きクッカー)で行うのが好ましい。上記原料の加熱混合は、品温70〜130℃で10〜120分間行うのがよい。より好ましくは、品温80〜120℃で20〜90分間である。また、本発明においては、先ず、澱粉質原料及び油脂を加熱混合した後、さらに調味料を加えて加熱混合してもよい。この場合の澱粉質原料及び油脂の加熱混合は、品温110〜130℃で20〜120分間行うのがよい。調味料を加えた後の加熱混合は、品温70〜130℃で10〜120分間行うのがよい。より好ましくは、品温80〜120℃で20〜90分間である。
【0021】
低油脂ルウを調製した後、この低油脂ルウを成形型で加圧成形して固形ルウを成形するが、成形型には、調整した低油脂ルウから作った粉末ルウ、粒状ルウ、粉末ルウと粒状ルウとが混在した粉粒ルウを充填して成形するのが好ましい。このように、調整した低油脂ルウから作った粉末ルウ、粒状ルウ、粉粒ルウは流動性を有することから、成形型に均一に充填するのが容易である。
【0022】
粉粒ルウを成形型に充填することにより、過度に加圧しなくても均一な密度の固形ルウのコアを得ることが容易となり、このことにより適度のエアを含んだ嵩密度で成形することができる。そして、これにより得られる固形ルウのコアは溶解性が良好になる。例えば粉粒ルウであれば、この目的に適合した加圧条件として、好ましくは0.2〜80kg/cm3、より好ましくは0.5〜80kg/cm3、更に好ましくは1.0〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.35g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.35g/cm3であり、更に好ましくは0.95〜1.20g/cm3である。なお、この固形ルウは、熱水に速やかに溶解させる上で、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3であり、更に好ましくは10〜30cm3である。また、このコアは水分含量が1〜10%程度であるのがよい。
【0023】
粉粒ルウの場合、例えば目開き5000μmや4000μmのフィルタを使って、その最大大きさを約5mm又は4mmというように規定するのがよい。これにより、粉粒ルウは、約5mm又は4mmの最大大きさの粒体の他に、それよりも小さい様々な大きさの粒状及び粉末のルウが混在した存在となる。
【0024】
粉末だけでコアを作る場合には、適度な保形性を確保するのに、加圧条件として、好ましくは0.2〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.25g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.25g/cm3である。粉末だけでコアを作る場合には、その大きさの範囲としては、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3、更に好ましくは10〜30cm3である。
【0025】
粒状ルウだけでコアを作る場合には、その大きさの範囲としては、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3、更に好ましくは10〜30cm3である。
【0026】
粒状ルウだけでコアを作る場合の加圧条件としては、好ましくは0.2〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.25g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.25g/cm3である。
【0027】
粉粒ルウから低油脂固形ルウのコアを作る場合、粉粒ルウを得るのに、その具体的な手段に特に制限はなく、粉粒ルウを生成することのできる公知の粉砕機を採用可能であるが、好ましくは、粉粒ルウの大きさを5000μm(5mm)以下に規定することのできる粉砕機を採用するのがよく、これに好適な粉砕機は出口に目開きの大きさが規定されたスクリーンを備えているのが好ましい。具体的には、目開き5000μm以下(例えば目開き4000μm)のスクリーンを通じて粉粒ルウを通過させることで、この粉粒ルウの最大の大きさを規定することができる。したがって、調製した低油脂ルウから作る粉粒ルウの大きさを所定値以下に整えるという意味で、この第2次の工程を整粒化工程と呼ぶこともできる。そして、所定の目開き寸法の開口を備えたスクリーンを通過させて粉粒ルウの最大大きさを規定することで、粉粒ルウのなかに、その最大大きさよりも小さな粉粒状のルウも混在させることができる。このように最大大きさを規定しつつも、様々な大きさの粒状又は粉粒状のルウを混在した粉粒ルウを作ることで、堅固に押し固めたものではない、比較的低密度である適度な嵩密度の固形ルウのコアを作るのが容易となり、また、固形ルウのコアの溶解性を好ましいものにすることができる。
【0028】
加熱混合して調製した低油脂含量のルウは、通常の高油脂含量のルウと異なり流動性が低くてボソボソした物性になる。そのために特に粉粒ルウや粉末ルウを作る場合には、調整した低油脂ルウを段階的に小さくして、低油脂ルウの冷却を進めながら所望の大きさの粉粒ルウ又は粉末ルウを作るのがよく、これにより粉粒又は粉末ルウを生成装置(粉砕機)の内部に低油脂ルウが付着して粉砕機の作業効率を低下させるのを抑制することができる。
【0029】
成形型などを使ってコアの表面を加熱して保護層を形成する場合に、加熱処理は、低油脂ルウに含まれる油脂の融点より高い温度(加熱媒体の温度)で行うのがよい。より好ましくは、低油脂ルウの油脂の融点よりも10℃以上高い温度で加熱するのがよい。具体的には、例えば、油脂の融点が30〜60℃の場合には、ルウを70〜80℃で加熱するのがよい。
【0030】
本発明においては、表面層を備えた固形ルウを作った後に、製品容器に入れて容器入り固形ルウを得てもよい。この場合、2個以上の固形ルウを製品容器に収容するのに、製品容器に個々に独立した収容部を作り、各収容部に一つの固形ルウを収容するようにするのが、搬送中の固形ルウの部分的な崩壊を防ぐ上で好ましい。このように一つの製品容器に複数食分の固形ルウを入れることで、所望の人数分の調理を可能にする容器入り固形ルウを製造することができる。好ましくは、一人分の固形ルウを3〜15個の1つの製品容器に入れるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、固形の低油脂カレールウを製造するラインのフローを示す。この図1を参照して、第1工程S1で、小麦粉などの澱粉質原料、油脂、調味料、カレー粉などをクッカーの中に投入して、このクッカー内で攪拌しながら加熱することにより低油脂カレールウを調製する。次の第2工程S2では、クッカーからカレールウを取り出して、これを板状に延ばしながら冷却し、次いでこれを壊して塊状のルウを作る(S3)。そして、次の工程では、塊状のルウから第1次工程としてペレット状又は顆粒状のルウを作り、これに続く第2次工程で、最大大きさを整えた粉粒ルウを作る(第4工程S4)。この粉粒化により、低油脂カレールウは、その大きさが5000μ以下、好ましくは4000μ以下に整えられ、この大きさ以下の様々な粒状及び粉末状のルウが混在した状態となる。
【0032】
粉粒ルウは、第5工程S5で、別途用意された成形型に所定量だけ充填され、成形型で所定の嵩密度のコアCが成形される。このコアCの成形の際に、好ましくは、粉粒ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に成形型が加熱されており、これによりコアCの表面に油脂膜からなる保護層C'が形成される。次いで第6工程S6で、成形後の固形ルウが成形型から取り出され、取り出した固形ルウは製品トレーに収容される。そして、第7工程S7で製品トレーに剥離可能なフィルムが接着されて製品トレーのシールが行われ、次の第8工程のパッケージング工程で製品トレーの包装、これに続いて製品出荷のために段ボール詰めされる。尚、本発明の好ましい態様として、第6工程S6で固形ルウが成形型から取り出される前に、加熱された成形型を冷却するのがよい。ここで冷却する場合には、保護層に含まれる油脂の融点以下の温度に冷却するのが好ましい。より好ましくは、保護層を迅速に冷却するのに、保護層に含まれる油脂の融点よりも10℃以上低い温度に冷却するのがよい。具体的には、例えば、油脂の融点が30〜60℃の場合、ルウを5〜28℃に冷却するのがよい。
【0033】
図2は、低油脂カレールウの製造ラインのうち工程S1〜S3の第1次工程に相当する設備の概要を示す。この図2を参照して、参照符号1はクッカーであり、クッカー1は攪拌機2を備えている。クッカー1は、澱粉質原料、油脂及び調味料を含む原料を加熱混合してルウを調製するものであり、クッカー1に投入された原料を攪拌手段2で撹拝しながらジャケット(図示せず)により加熱するようになっている。
【0034】
クッカー1で低油脂カレールウを調製した後、この低油脂カレールウはクッカー1から取り出され、取り出した低油脂カレールウは、ベルト式冷却装置3に委ねられる。ベルト式冷却装置3は、クッカー1から受け取ったカレールウを冷却して塊状のルウを作るものである。このベルト式冷却装置3は、上下に一定の間隔を設けて並置された上側及び下側の2つの搬送コンベア4、5を含む。上下の搬送コンベア4、5は、夫々、駆動プーリ6、7と案内プーリ8、9とに掛け渡された金属製の無端ベルト10、11を有する。また、下側搬送コンベア5は、その上流端が上側搬送コンベア4の上流端よりも上流側に延長されており、この搬送コンベア5の上流端延長部でクッカー1からルウを受け取るようになっている。下側搬送コンベア5に移載された低油脂カレールウは、上側及び下側の無端ベルト10、11の搬送面で挟まれることにより板状に延ばされ、そして冷却されながら下流側に搬送される。
【0035】
ベルト式冷却装置3には、上下の無端ベルト10、11の搬送面の近傍に冷却手段12A、12Bが設けられており、冷却手段12A、12Bによって無端ベルト10、11の搬送面が冷却され、冷却された搬送面からの伝熱によってルウを搬送しながら冷却する。下側搬送コンベア4の下流端にはスクレパー14が近接して配置されている。搬送コンベア4、5の下流端まで搬送された板状のルウは、スクレパー14によって掻き取られることによって壊されて塊状となったルウがベルト式冷却装置3の終端から排出される。
【0036】
ベルト式冷却装置3から排出された塊状のルウは、数多くの小孔を備えたフィルタでペレット状又は顆粒状のルウを作る粗砕機14に投入される。粗砕機14から排出されたペレット状又は顆粒状のルウは、図3の整粒機15で最大大きさが整えられる。整粒機15は公知のものを任意に採用することができる。整粒機15の一例を示す図3を参照して、整粒機15は、上端を開放した投入口151を備えたボックス152を有し、このボックス152は、下端部が先細りの三角形の形状を有し、この三角形状の下端縁に、下方に向けて開放した排出口153が形成されている。
【0037】
整粒機15は、ボックス152の内部に配置された回転体154を有し、この回転体154は図外のモータによって一方向に回転駆動される。回転体154は、その両端に配置された前後一対の円形輪郭のディスク155と、ディスク155の外周に配置された複数の矩形断面のロッド156とで概略構成され、ロッド156は円周方向に等間隔に配設されている。ボックス152は、回転体154の周囲にスクリーン157が配設され、このスクリーン157には数多くのスリット157aが設けられている。
【0038】
投入口151を通じて整粒機15の内部に入り込んだ塊状及び/又は粗砕状のルウは、回転体154のロッド156と衝突し細粒化されながらスクリーン157の開口つまりスリット157aを通ることによって排出口153を通じて下方に排出される。このように整粒機15からは、スクリーン157の開口つまりスリット157aを通過することで粉粒ルウが排出され、粉粒ルウはその大きさが規定され、整粒機15から排出される粉粒ルウは、粒状及び粉末状のルウが混在している。この粉粒ルウは流動性を備えていることは勿論である。
【0039】
粉粒ルウの最大大きさは、主にスクリーン157のスリット157aによって制御することができる。実施例では、開口つまりスリット157aの大きさは4000μm(4mm)であったが、この数値に限定されるものではなく、5000μm(5mm)以下であるのがよい。
【0040】
整粒機15から排出された粉粒ルウは、成形工程S5で加圧成形装置25を使って所定の形状に成形され、これにより固形ルウとなる。図4は、成形装置25の概要を先ず説明するための図である。この図4を参照して、成形型26は、雌型26(A)と雄型26(B)とからなり水平方向に間欠的に移動する。また、雄型26(B)は上下に移動可能に設けられている。加圧成形装置25の動作について説明すると、先ず、ステップ1で、成形型26は、粉粒ルウ収容ボックス27の下方に位置決めされる。粉粒ルウ充填ボックス27には、上述した整粒機15から粉粒ルウが供給される。このステップ1では、雄型(B)が最下限ストローク位置に位置決めされて、雌型26(A)の側壁と雄型26(B)の天面によって上方が開口した成形キャビティ28が形成され、この成形キャビティ28の中に粉粒ルウ収容ボックス27から粉粒ルウが充填される。次いで、ステップ2で、成形型26が水平方向に移動し、このときに粉粒ルウ収容ボックス27の下端によって粉粒ルウが摺り切りされて、成形型26の成形キャビティ28内には所定量の粉粒ルウが充填される。
【0041】
次いで、ステップ3では、成形型26を押さえ板29の下方に移動させて成形キャビティ28の上端開口を塞ぎ、この状態で雄型26(B)を所定の成形ストローク位置まで上方に移動させて粉粒ルウを加圧することで成形してコアCを作る。ステップ4では、成形型26を更に移動させて再び上方を開口させて、この状態で雌型26(A)を最上限の位置にまで更に上昇させる。これにより成形型26から成型品である固形ルウRが上方に排出される。成形型26から排出されたコアCは、例えば払出し手段30によって成形型26から取り除かれる。ここに、ステップ3の好ましい態様として、成形型26及び抑え板29は、低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱して、コアCを成形する際にコアCの表面に油脂の皮膜を作り、これによりコアCの表面に保護層C'を形成するのがよい。ステップ3の更に好ましい態様として、成形型26及び抑え板29を低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱した後、今度は、成形型26及び抑え板29をこの油脂の融点以下の温度に冷却するのがよい。
【0042】
図5〜図10は、低油脂固形ルウを成形する工程(図1のS5)で採用可能な他の例の成形装置40を説明するための図である。成形装置40は、移動テーブル401などの移動手段に設けられた複数の成形型402を含む。移動テーブル401は、複数のステーションで停止して所定の作業を行った後に移動して次のステーションに進む間欠的な移動動作を行う。
【0043】
図5〜図10を参照して、移動テーブル401には、移動テーブル401の移動方向(例えば図5の矢印で示す方向)に離置した複数の成形型402、402が設けられている。図中、移動テーブル401の移動方向進み側の成形型402には参照符号「L」を付記し、遅れ側の成形型402には参照符号「T」を付して識別してある。
【0044】
各成形型402の雌型403は、移動テーブル401から下方に延びるスリーブで構成され、このスリーブ(雌型)403は断面略扇形である。この雌型403に対して雄型404が下方から挿入され、この雄型403を下方に変位させることにより成形キャビティ405が形成され、雄型403を上方に押し上げることにより成形キャビティ405内の粉粒ルウを加圧成形することができる。
【0045】
雄型403は下端フランジ404aを有し、この下端フランジ404aが移動テーブル401の下面と当接した上限位置まで持ち上げたときに、雄型403の上端面が移動テーブル401の上面と一致するように設計されている。また、雌型403の下端面と雄型403の下端フランジ404aとは永久磁石406によって吸着された状態が保持される。
【0046】
図5、図6は、成形型402に粉粒ルウを充填する粉粒ルウ充填ステーションST1を示し、図5は成形型402を粉粒ルウ収容ボックス27の下方に位置決めした状態を示し、図6は、次いで、成形型402の中に粉粒ルウを充填する工程を説明するための図である。粉粒ルウ充填ステーションST1には、上方に向けて延びるシリンダロッド408が配設されており、このシリンダロッド408の先端部には電磁石409が設けられ、この電磁石409が発揮する磁力は上述した永久磁石406よりも大きい。
【0047】
粉粒ルウ充填ステーションST1では、シリンダロッド408が上方に延びた状態で待機しており、成形型402が粉粒ルウ充填ステーションST1に位置決めされたときに、シリンダロッド408の上端が雄型404の下端面と当接した状態となり、この雄型404は、シリンダロッド408の上端面に電磁石409によって吸着される(図5)。次いで、図7に示すように、シリンダロッド408が雄型404を吸着した状態で下降動する。雄型404の下端ストローク位置は充填量調製プレート410によって規定される。
【0048】
充填量調製プレート410には、遅れ側の成形型402Tに対応する位置に、充填量微調製台411が配設されており、これにより、遅れ側成形型402Tの雄型403Tの型ストローク位置は進み側成形型402Lの雄型403Lの下端ストローク位置に比べて高い。したがって、遅れ側の成形型402Tに生成される成形キャビティ405Tの容積は進み側成形型402Lの成形キャビティ405Lの容積に比べて小さい。上述した雄型404の下方へのストロークに伴って各成形型402には、粉粒ルウ収容ボックス27から粉粒ルウが流入する。
【0049】
この粉粒ルウ充填ステーションST1での作業が終わると、移動テーブル401が移動し始めて成形型402が次のステーションST2に送り込まれるが、粉粒ルウ充填ステーションST1には、遅れ側成形型403Tの進み側先方にガイド412が配設されており、このガイド412は、遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aと係合して、雄型404Tを強制的に最下端ストローク位置まで下降させる。すなわち、粉粒ルウ充填ステーションST1での作業途中では、遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aは充填量微調製台411で若干持ち上げられた状態にあるが、移動テーブル401の移動が開始して遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aが充填量微調製台411から離脱した直後にガイド412と係合して、このガイド412によって遅れ側雄型404Tは強制的に充填量調製プレート410まで下降する。遅れ側雄型404Tがガイド412によって最下端ストローク位置まで下降するに従って、遅れ側雄型404Tには粉粒ルウ収容ボックス27から追加の粉粒ルウが流入する。
【0050】
このように、粉粒ルウ充填ステーションST1で粉粒ルウを成形型402に充填する段階で遅れ側成形型402Tの成形キャビティ405Tの容積を進み側成形型402Lよりも若干小さくし、移動テーブル401を移動させて成形型402を次のステーションST2に送り出す際に粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁を使って擦り切りで各成形型402内の粉粒ルウの量を制御する際に遅れ側成形型402Tの雄型404Tを下げて、この遅れ側成形型402Tの成形キャビティの容積を、進み側成形型402Lの容積と同じにすることで両成形型402L、402Tに充填した粉粒ルウの量を実質的に同じにすることができる。
【0051】
換言すれば、粉粒ルウ充填ステーションST1で、遅れ側及び進み側の成形型402T、402Lの成形キャビティ405T、405Lが最初から同じ容積であった場合には、粉粒ルウを成形型402T、402Lに充填した後、移動テーブル401を移動させながら粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁で擦り切りで各成形型402の量目を制御する際に、成形型402T、402Lと粉粒ルウ収容ボックス27との間の相対的な移動によって遅れ側成形型402Tに充填された粉粒ルウが圧縮される傾向になり、結果的に、遅れ側成形型402Tの方が進み側成形型402Lよりも多くの粉粒ルウが充填されてしまうという問題が発生する。これに対して、如上のように遅れ側成形型402Tの成形キャビティ405Tの容積を進み側成形型402Lよりも若干小さくし、移動テーブル401を移動させて成形型402を次のステーションST2に送り出す際に粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁で擦り切りで各成形型402の量目を制御する際に遅れ側成形型402Tの雄型404Tを下げて進み側成形型402Lの容積と共通にすることで両成形型402L、402Tに充填した粉粒ルウの量を同じにすることができる。
【0052】
このことは、油脂を含むか否かを問わず広く一般的に粉粒又は粉末に対しても適用することができる。すなわち、粉粒を入れた定置のボックスの下端縁と摺接して移動するテーブルに開口する複数の成形型を有し、この複数の成形型がテーブルの移動方向進み側と遅れ側に配置されて、テーブルを移動させることで、粉粒又は粉末収容ボックスの下端縁で成形型に充填した粉粒を擦り切りして成形型に充填した粉粒の量を制御する場合に、上記複数の成形型を粉粒又は粉末収容ボックスの下方に位置決めして、この粉粒又は粉末収容ボックスから複数の成形型の中に粉粒を流入させる際に、遅れ側の成形型の成形キャビティの容積を進み側の成形型の成形キャビティの容積よりも若干小さくし、次いで、テーブルを移動させて上記複数の成形型に流入した粉粒又は粉末を粉粒又は粉末収容ボックスの下端縁で擦り切りしながら、遅れ側の成形型の成形キャビティの容積を進み側の成形型の成形キャビティの容積と同一になるように修正することで、上記複数の成形型で成形する粉粒又は粉末の量を均一にすることができる。
【0053】
図8は、粉粒ルウを雄型404で押して所定形状のコアCに成形する成形ステーションST2を示す。成形ステーションST2には、前述した押さえ板29が水平状態で配設されている。成形型402が成形ステーションST2に到着すると、雌型403の上端開口は押さえ板29によって閉塞された状態になる。成形ステーションST2には、各雄型404に対応して上方に向けて延びるプレスシリンダのロッド420が配設されており、このプレスシリンダロッド420が上方に向けて伸長することで、成形型402内の粉体ルウが加圧成形される。この成形型402によるコアCの成形の際に、好ましくは、低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に雌型403及び押さえ板29が加熱されており、これにより、コアCの上面及び側面に油脂膜からなる保護層C'が形成される。この保護層C'の形成は、成形型402から取り出し後のコアCに例えば液状の油脂を吹き付ける、コアCを液状油脂の中に浸漬するなどの方法によりコアCを作った後に保護層C'を形成するようにしてもよい。
【0054】
図8の成形ステーションST2での成形作業が終わった後に、移動テーブル401が移動して、図9に示す、成形した固形ルウR(コアCとその表面層C'とからなる。)を成形型402から排出する製品排出ステーションST3に進む。製品排出ステーションST3には、排出用シリンダのシリンダロッド430が配設されており、この排出用シリンダのシリンダロッド430が上方に向けて伸長して、各雄型404を上端ストローク端まで押し上げることにより、各雌型403から固形ルウRを上方に排出する。成形型402から排出された固形ルウRは、適当な搬送手段を使って次の固形ルウを製品トレーに収容する工程S6(図1)に向けて搬送される。
【0055】
図10は、固形ルウRを取り除いた後に移動テーブル401が移動して次の待機ステーションST4に進む。この待機ステーションST4では、成形型26は、雄型404が上端ストローク端つまり雄型404の下端フランジ404aが雌型403の下端に永久磁石406で吸着された状態にある。この待機ステーションST4から移動テーブル401が移動すると、図6で説明した粉粒ルウ充填ステーションST1へ進む。
【0056】
図11は、低油脂固形カレールウを収容するためのプラスチック製の製品トレー50を示す。この製品トレー50は5つの固形ルウRを夫々収容するための上方に開放した5つの固形ルウ収容室501を有する。ここに、固形ルウRは、一例として平面視略扇形の形状に成形されており、各固形ルウRは、個々に独立した固形ルウ収容室50に収容される。ちなみに、平面視扇形の固形ルウRは、肉厚が約18mm、平面視した時の高さが約33mmであり、そして約20cm3の体積を備えており、一食分の分量(約19g)に相当する。したがって、製品トレー50は5食分の個々に分離した固形ルウRを独立して収容することができる。当業者であれば理解可能なように、製品トレー50に固形ルウRを収容した後に、製品トレー50は、その上端フランジ502に対してフィルム(図示せず)を剥離可能に接着することによりシールされ、その後の第8工程で製品トレー50を包装し、また段ボール詰めされることになるが、その過程で、固形ルウRを収容した製品トレー50の計量が行われる。この計量の結果、規定の重量よりも軽いとき又は重いときには、この結果がフィードバックされて図6を参照して説明した充填量調製プレート410の上げ下げが行われる。
【0057】
このフィードバック制御の概要を図12を参照して説明すると、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量が所定の閾値よりも軽いときには、充填量調製プレート410を下降させる制御が実行される。逆に、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量が所定の閾値よりも重いときには、充填量調製プレート410を上昇させる制御が実行される。この充填量調製プレート410を下降および上昇させる量は、実際にデータ取りして、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量偏差と充填量調製プレート410の移動量との関係をプログラムに組み込んでおけばよい。言うまでもないことであるが、充填量調製プレート410を下降させることにより、成形型402の成形キャビティ405の容積を拡大することができ、これにより成形型402へ充填する粉粒ルウの量を増量することができる。逆に、充填量調製プレート410を上昇させることにより、成形型402の成形キャビティ405の容積を小さくすることができ、これにより成形型402へ充填する粉粒ルウの量を減少させることができる。
【0058】
このように、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量を計量してその結果を充填量調製プレート410の高さ位置の制御にフィードバックすることにより、製品出荷の際に製品トレー50に収容されている固形ルウRの重量の均一性を確保することができる。
【0059】
図13は、図11を参照して説明した固形カレールウRを成形するのに用いた雄型26(B)の斜視図である。雄型26(B)は、その天井面261で粉粒ルウを加圧するものであるが、雄型26(B)は、3つの湾曲したコーナー部分262を含む略三角形状の天井面261と同じ形状の断面形状を備えた高さを有する立体形状を有し、この立体形状の縦方向に延びるコーナー部分263を除く3つの側壁264には、天井面261の近傍を残した部分が切り欠かれた切欠き形状部分264aが形成され、この切欠き形状部分264aは雄型26(B)の下端まで延びている。すなわち、切欠き形状部分264aは下方に開放している。なお、図13では、2つの切欠き形状部分264aが図示されているが、残る1つの切欠き形状部分264aは作図上の関係で図面には現れていない。
【0060】
如上のように雄型26(B)を天井面261の近傍及び縦方向に延びるコーナー部分263を残して下方に開放した切欠き形状部分264aを形成することで、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウによって雄型26(B)の上下動作が阻害されるのを防止することができる。
【0061】
すなわち、雄型26(B)から上記切欠き形状部分264aを省いて、その縦方向に全て天井面261と同じ断面形状にした場合には、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウが26(B)の壁面との間に噛み込で雄型26(B)の上下動作が阻害される可能性があるが、図13に図示のように、雄型26(B)に下方に開放した切欠き形状部分264aを設けることで、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウは、天井面261と切欠き形状部分264aとの間の上端帯状部分265が雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウを掻き落とす機能を果たし、この上端帯状部分265が果たす雌型26(A)の壁面の掃除機能によって雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウが26(B)の壁面との間に噛み込む現象の発生を抑制することができる。また、3つの縦方向に延びるコーナー部分263は天井面261の3つのコーナー部分262と同じ外形輪郭をもっているため、雄型26(B)が雌型26(A)の中で傾いてしまうのを防止することができる。
【0062】
このことは、平面視略三角形状の雄型(B)に限定されず、平面視略四角形などの多角形形状の雄型に対して同様に適用することができる。また、低油脂粉粒カレールウに限定されず、広く一般的に粉粒又は粉体の成形に対しても同様に適用することができる。
【0063】
(実施例1及び2):
下記表1に示す原料を用いて固形ルウを製造した。すなわち、先ず、牛脂、小麦粉及びコーンスターチを撹拝調理装置1に投入して加熱混合を開始し、品温が120℃に達したら、この温度で30分間保持し、更にこれに他の原料を加えて加熱混合を継続し、品温が100℃に達したら、この温度で20分間保持してルウを調製した。次いで、得られたルウを搬送コンベア5の上流端に移し、搬送コンベア4、5で搬送しながら品温20℃に冷却し、スクレパー12で掻きとって塊状と粗砕状の混在したルウを調製した。なお、ここでの冷却は、搬送コンベア4、5の搬送面に冷却手段(シャワー)12、13から10℃の冷却水を吹き付け、搬送コンベア4、5の搬送面からの伝熱で行った。
【0064】
次いで、塊状と粗砕状の混在したルウを粉砕機15に投入し、この粉砕機15内で4mmの開口を数多く備えたスクリーンを通過させて4000μmパスの粉末状ルウを調製した。次いで、得られた粉末状ルウを、成形型20に充填し(ステップ1)、摺り切りして量目を調整し(ステップ2)、その後、雄型20(B)を上方に移動させて表2に示した加圧条件で加圧成形しながら、表2に示した加熱処理条件で加熱溶融し、次いで20℃まで冷却して固形ルウを得た。得られた固形ルウの嵩密度、表面硬さ及び体積は表2に示す通りとなった。また、得られた固形ルウの成形性及び溶解性はいずれも良好であった。なお、表面硬さは、レオメーター(YAMADEN社製RE-3305)を用い、直径2mmプランジャーで、テーブルスピード1mm/秒の条件で測定した。
【0065】
(比較例1及び2):
表2に示した加圧条件を用いて実施例1と同様にして固形ルウを得た。ただし、加熱処理は行わなかった。得られた固形上ルウの嵩密度、表面硬さ及び体積は表2に示す通りとなった。
【表1】
(表中、部は質量部を表す。)
【表2】
【0066】
成形性※1: 製品容器内に独立して個々独立して収容した包装済みルウをダンボール詰めし(総重量約15kg相当)、これを振動試験機に固定して、上下方向に振動(加速度:9.8m/s2)を与える。次に、このダンボールを35cmの高さから底面2回、天面1回、各側面1回落下させた後、ルウ中に砕けているものがない場合には「○」、ルウ中に砕けているものがある場合には「×」と評価した。
【0067】
溶解性※2:具(人参)と熱水(95℃)とを同じ割合で入れた鍋にルウを投入し、1秒おきにスプーンで前後に一往復させて4分間経過後にルウが完全に溶けていた場合は「○」、溶けていない場合は「×」と評価した。尚、「◎」は2分間以内に完全に溶解したものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例の低油脂固形ルウの製造工程図である。
【図2】低油脂ルウを調製した後に、これを粗砕してペレット状又は顆粒状のルウを作る一連の設備の概要を説明するための図である。
【図3】ペレット状又は顆粒状のルウから粉粒ルウを生成するための整粒機の一例の概要を説明するための図である。
【図4】粉粒ルウから固形ルウを生成する一連の工程を説明するための図である。
【図5】低油脂固形ルウを成形するための成形機を第1ステーションに移動させた直後の状態を示す図である。
【図6】第1ステーションで、粉粒ルウを成形機に充填している状態を示す図である。
【図7】第1ステーションから次のステーションに移行する過程で、遅れ側成形機の雄型を強制的に下げて進み側成形機と同じ高さ位置に雄型の高さ位置を調整した状態を示す図である。
【図8】第2ステーションで加圧成形している状態を示す図である。
【図9】第3ステーションで固形ルウを成形型から排出した状態を示す図である。
【図10】待機ステーションの成形型の状態を説明するための図である。
【図11】具体例として、5個入り製品トレーの5つの独立したルウ収容室の各々に低油脂固形ルウを収容することを説明するための図である。
【図12】図11のX12−X12線に沿った低油脂固形ルウの断面図である。
【図13】第1ステーションで成形機に充填する粉粒ルウの量のフィードバック制御を説明するための図である。
【図14】成形機の雄型の斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いる低油脂含量の低油脂固形ルウに関する。
【背景技術】
【0002】
カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いるルウとしては、多量の食用油脂を用いて小麦粉や調味料などを固めた固形ルウが一般的である。通常、固形ルウは、食用油脂、小麦粉、調味料などを加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを容器に流し込んで充填し、冷却固化することにより製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、従来の固形ルウの製造は次のステップを含む製造ラインが使用されている。
(1)加熱溶融ルウの調製→(2)溶融ルウを製品容器に充填→(3)溶融ルウを充填した製品容器を冷却して製品容器内で、製品容器内で連続した複数食分の固形ルウを作る。
【0004】
ところで、近時は低カロリー食品への指向性が強まっており、これに対応するものとして、特許文献2は油脂の含有量を低減したルウを提案している。特許文献2に開示の油脂含有量の少ないルウは水分を多量に含有するペースト状の形態のものである。
【特許文献1】特開平11-332526号公報
【特許文献2】特開2001-269144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ルウの市場は、圧倒的に固形ルウが占めているのが実情である。この実情を鑑み、本願発明者らは固形ルウに固執して油脂含量の少ない固形ルウを開発するために、従来の高油脂固形ルウの配合から油脂の配合量を減らして低油脂ルウを調製し、この低油脂ルウの性状を観察したところ、油脂含有量を低下させるに従ってルウの流動性が低下し、従来の高油脂の固形ルウを製造するラインを使用するのが困難になることが分かった。
【0006】
すなわち、現在市販の高油脂ルウは、これを調製した後のルウは液状であり適度な流動性を備えているが、油脂含有量を低下させた低油脂ルウでは、調製したルウがボソボソとした流動性に欠ける物性になることが分かった。このことから低油脂ルウを調製し、これを所定量に小分けしながら各製品容器に充填するのが難しいだけでなく、また、低油脂ルウを充填した製品容器を冷却しても、製品容器内で一定の形状を備えた固形ルウを形作るのは、事実上、無理であることが分かった。
【0007】
このことから、低油脂ルウを従来と同様に一定の形状を備えた固形ルウに成形するには、調製後のルウを加圧成形する必要がある。しかし製品容器は一般的にはプラスチック成型品であり肉薄に作られているため、加圧成形に耐えるものではないという問題がある。
【0008】
このことに加えて、加圧成形した場合、低油脂固形ルウが従来の高油脂固形ルウと同様に素早く溶けるか、という次の問題がある。すなわち、消費者は、従来の高油脂固形ルウの素早い溶解性に馴れており、低油脂固形ルウであっても家庭で調理するときに従来と同様にダマを作ることなく素早く溶けることを望むことは容易に想像できる。しかし、固形の低油脂ルウを成形するのに、ボソボソしたルウを押し固めて密度が均一な固形ルウを作るには堅固に押し固める必要があり、このことは固形ルウの溶解性を悪化させる要因になる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、調理時の素早い溶解性を確保し且つ形崩れを抑えることのできる、油脂含量の少ない低油脂固形ルウを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
澱粉質原料、油脂及び調味料を加熱調整したルウを用いて加圧成形された低油脂固形ルウであって、
嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、
前記低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する低油脂固形ルウを提供することにより達成される。
【0011】
本発明において「ルウ」とは、水と共に、肉や野菜などの食材を必要に応じて加え、煮込みなどの加熱調理をすることにより、カレー、ハヤシ、シチュー、スープ、ソースなどの所望の食品を調理するための食品素材である。また、「固形ルウ」とは、ブロック形状のルウをいい、粉粒などのルウは含まない。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態では、低油脂ルウを調製する材料として、澱粉質原料、油脂及び調味料を含み、かつ、油脂含量が10〜25質量%(以下、「質量%」を「%」と略記する)、好ましくは12〜25%、より好ましくは12〜22%、更に好ましくは15〜22%である原料を加熱混合してルウを調製する。油脂含量を上記範囲とすることにより、喫食時の香り立ちが良く、保形性があると共に、調理時に熱水に速やかに溶解する低油脂含量の固形ルウを製造することが可能になる。油脂含量が10%を下回ると調理時に熱水に溶解し難くなり、また、カレーやシチューを作ったときに調理感のある風味を得るのが難しくなる。尚、本発明において「油脂含量」は、固形ルウ中の油脂含量を指し、ソックスレー抽出法により測定したものをいう。
【0013】
低油脂ルウの原料として用いる澱粉質原料としては、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉などを挙げることができる。澱粉質原料の含有量としては、上記原料中に好ましくは10〜40%、より好ましくは20〜35%であるのがよい。また、油脂としては、食用に使用される油脂であれば特に制限されるものではなく、天然油脂、加工油脂及びこれらの混合物のいずれをも使用することができる。具体的には、牛脂や豚脂などの動物油脂、パーム油や綿実油、コーン油などの植物油脂、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0014】
また、調味料としては、食塩、砂糖などの糖類、グルタミン酸ナトリウム、トマト、リンゴ、ニンジン、オニオン、チーズ、はちみつ、チャツネ、酵母エキス、フルーツ、ブイヨンなどの粉粒あるいはペースト、粉乳などが例示できる。調味料の含有量としては、所望により決定されるが、上記原料中に好ましくは20〜50%、より好ましくは30〜40%である。また、カレー粉などの香辛料を用いてもよく、香辛料の含有量としては、上記原料中に例えば1〜15%であるのがよい。
【0015】
また、上記成分の外にも、固形ルウの熱水への溶解性を高めるために、デキストリンを含ませることもできる。この場合、デキストリンとしては、DE値が5〜40のもの、より好ましくは5〜20のものを使用するとよい。これにより、カレー等の食品に風味上の影響を与えることなく、固形ルウの熱水への溶解性を好適に高めることができる。デキストリンを使用する場合の含有量としては、上記原料中、例えば3〜20%であるのが好ましく、5〜15%であるのが更に好ましい。また、この外にも、乳化剤、増粘剤、酸化防止剤、着香料、着色料などを用いることもできる。
【0016】
本発明の低油脂固形状ルウは、嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する。欠け易い部分に保護層を設けることより、コアを堅固に加圧成形する必要が無くなり、適度にエアを含んだ嵩密度で成形することができるため、調理時の溶解性を所望の速度に調整するのが容易になる。
【0017】
保護層は、低油脂ルウを成形したコアを成形するときに成形型を例えば50℃というように低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱した状態でコアの成形を行うことで、コアの表面に連続した油脂皮膜を形成し、この油脂皮膜で保護層を構成するようにしてもよい。変形例として、成形型の壁面の所望の箇所に油脂を塗布又は吹き付けた後にコアを加圧成形することでコアを覆う保護層を形成するようにしてもよい。更なる変形例として、コアを成形した後に、このコアの全表面のうち、所望の部分に液状の油脂を塗布又は吹き付けるようにしてもよい。更なる変形例として、成形したコアを液状油脂の中に浸漬してコアの表面に油脂皮膜の保護層を形成してもよい。保護層の厚みは任意であり、薄皮一枚の状態であってよいし、ある程度の厚みを有していてもよい。なお、この明細書において、油脂の融点は、上昇融点のことを指し、油脂の殆どが液相に転じ、残った僅かな量の固相が存在したまま全体が流動を開始する温度をいい、この温度は採用した油脂によって様々である。
【0018】
コアの全表面のうち、保護層を設ける部分つまり欠け易い部分として、立体形状のコアの角部分、縁部分を挙げることができる。例えば立方体形状のコアであれば、コアの上面と側面とが交差する上端縁や上角隅部が欠け易い部分であるといえる。したがって、コアの上面、側面に保護層を設けるのが好ましいが、上面のうち中心部分に保護層を設けるのを省いてもよい。このことは側面についても言え、側面のうち欠けや形崩れし難い部分は保護層を設けるのを省いてもよい。
【0019】
保護層を作る材料としては、コアの一部を構成する油脂と同じ油脂を使ってもよいし、異なる油脂を使ってもよいし、これに香辛料などを含有させてもよい。変形例として、コアを作る低油脂ルウとは別に調整した高油脂ルウを使ってもよいし、糖、澱粉、デキストリン、多糖類、タンパク質などコアの表面の一部又は全表面に保護膜を作ることのできる食材を任意に採用することができる。固形状ルウの調製に用いた油脂と同一の油脂を用いてもよいし、異なる油脂を用いてもよい。さらに、被覆する油脂に上述の澱粉質原料や調味料を含有させてもよく、さらに加熱処理してもよい。このように被覆する油脂に澱粉質原料や調味料を含有させることによって、更にはそれを加熱処理することによって、本発明の固形状ルウを用いて調理した食品の調理感を高めることができる。糖、澱粉、デキストリン、多糖類、タンパク質などの食材でコアの表面の一部又は全表面に保護層を作る場合には、例えば、これらの食材の溶液をコアの表面の一部又は全表面に付着させ、次いで、当該溶液を乾燥させることにより保護層を形成することができる。
【0020】
低油脂ルウを製造するに際して、上記原料を加熱混合してルウを調製するが、ここでの加熱混合は攪拌手段を有する加熱調理装置、具体的には、例えば特開平8−309171号公報に開示される混合攪拌装置(攪拌機付きクッカー)で行うのが好ましい。上記原料の加熱混合は、品温70〜130℃で10〜120分間行うのがよい。より好ましくは、品温80〜120℃で20〜90分間である。また、本発明においては、先ず、澱粉質原料及び油脂を加熱混合した後、さらに調味料を加えて加熱混合してもよい。この場合の澱粉質原料及び油脂の加熱混合は、品温110〜130℃で20〜120分間行うのがよい。調味料を加えた後の加熱混合は、品温70〜130℃で10〜120分間行うのがよい。より好ましくは、品温80〜120℃で20〜90分間である。
【0021】
低油脂ルウを調製した後、この低油脂ルウを成形型で加圧成形して固形ルウを成形するが、成形型には、調整した低油脂ルウから作った粉末ルウ、粒状ルウ、粉末ルウと粒状ルウとが混在した粉粒ルウを充填して成形するのが好ましい。このように、調整した低油脂ルウから作った粉末ルウ、粒状ルウ、粉粒ルウは流動性を有することから、成形型に均一に充填するのが容易である。
【0022】
粉粒ルウを成形型に充填することにより、過度に加圧しなくても均一な密度の固形ルウのコアを得ることが容易となり、このことにより適度のエアを含んだ嵩密度で成形することができる。そして、これにより得られる固形ルウのコアは溶解性が良好になる。例えば粉粒ルウであれば、この目的に適合した加圧条件として、好ましくは0.2〜80kg/cm3、より好ましくは0.5〜80kg/cm3、更に好ましくは1.0〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.35g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.35g/cm3であり、更に好ましくは0.95〜1.20g/cm3である。なお、この固形ルウは、熱水に速やかに溶解させる上で、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3であり、更に好ましくは10〜30cm3である。また、このコアは水分含量が1〜10%程度であるのがよい。
【0023】
粉粒ルウの場合、例えば目開き5000μmや4000μmのフィルタを使って、その最大大きさを約5mm又は4mmというように規定するのがよい。これにより、粉粒ルウは、約5mm又は4mmの最大大きさの粒体の他に、それよりも小さい様々な大きさの粒状及び粉末のルウが混在した存在となる。
【0024】
粉末だけでコアを作る場合には、適度な保形性を確保するのに、加圧条件として、好ましくは0.2〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.25g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.25g/cm3である。粉末だけでコアを作る場合には、その大きさの範囲としては、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3、更に好ましくは10〜30cm3である。
【0025】
粒状ルウだけでコアを作る場合には、その大きさの範囲としては、その体積が5〜60cm3であるのが好ましく、より好ましくは10〜50cm3、更に好ましくは10〜30cm3である。
【0026】
粒状ルウだけでコアを作る場合の加圧条件としては、好ましくは0.2〜50kg/cm3である。そして、得られる固形ルウのコアは、その嵩密度が0.70〜1.25g/cm3であるのが好ましく、より好ましくは0.90〜1.25g/cm3である。
【0027】
粉粒ルウから低油脂固形ルウのコアを作る場合、粉粒ルウを得るのに、その具体的な手段に特に制限はなく、粉粒ルウを生成することのできる公知の粉砕機を採用可能であるが、好ましくは、粉粒ルウの大きさを5000μm(5mm)以下に規定することのできる粉砕機を採用するのがよく、これに好適な粉砕機は出口に目開きの大きさが規定されたスクリーンを備えているのが好ましい。具体的には、目開き5000μm以下(例えば目開き4000μm)のスクリーンを通じて粉粒ルウを通過させることで、この粉粒ルウの最大の大きさを規定することができる。したがって、調製した低油脂ルウから作る粉粒ルウの大きさを所定値以下に整えるという意味で、この第2次の工程を整粒化工程と呼ぶこともできる。そして、所定の目開き寸法の開口を備えたスクリーンを通過させて粉粒ルウの最大大きさを規定することで、粉粒ルウのなかに、その最大大きさよりも小さな粉粒状のルウも混在させることができる。このように最大大きさを規定しつつも、様々な大きさの粒状又は粉粒状のルウを混在した粉粒ルウを作ることで、堅固に押し固めたものではない、比較的低密度である適度な嵩密度の固形ルウのコアを作るのが容易となり、また、固形ルウのコアの溶解性を好ましいものにすることができる。
【0028】
加熱混合して調製した低油脂含量のルウは、通常の高油脂含量のルウと異なり流動性が低くてボソボソした物性になる。そのために特に粉粒ルウや粉末ルウを作る場合には、調整した低油脂ルウを段階的に小さくして、低油脂ルウの冷却を進めながら所望の大きさの粉粒ルウ又は粉末ルウを作るのがよく、これにより粉粒又は粉末ルウを生成装置(粉砕機)の内部に低油脂ルウが付着して粉砕機の作業効率を低下させるのを抑制することができる。
【0029】
成形型などを使ってコアの表面を加熱して保護層を形成する場合に、加熱処理は、低油脂ルウに含まれる油脂の融点より高い温度(加熱媒体の温度)で行うのがよい。より好ましくは、低油脂ルウの油脂の融点よりも10℃以上高い温度で加熱するのがよい。具体的には、例えば、油脂の融点が30〜60℃の場合には、ルウを70〜80℃で加熱するのがよい。
【0030】
本発明においては、表面層を備えた固形ルウを作った後に、製品容器に入れて容器入り固形ルウを得てもよい。この場合、2個以上の固形ルウを製品容器に収容するのに、製品容器に個々に独立した収容部を作り、各収容部に一つの固形ルウを収容するようにするのが、搬送中の固形ルウの部分的な崩壊を防ぐ上で好ましい。このように一つの製品容器に複数食分の固形ルウを入れることで、所望の人数分の調理を可能にする容器入り固形ルウを製造することができる。好ましくは、一人分の固形ルウを3〜15個の1つの製品容器に入れるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、固形の低油脂カレールウを製造するラインのフローを示す。この図1を参照して、第1工程S1で、小麦粉などの澱粉質原料、油脂、調味料、カレー粉などをクッカーの中に投入して、このクッカー内で攪拌しながら加熱することにより低油脂カレールウを調製する。次の第2工程S2では、クッカーからカレールウを取り出して、これを板状に延ばしながら冷却し、次いでこれを壊して塊状のルウを作る(S3)。そして、次の工程では、塊状のルウから第1次工程としてペレット状又は顆粒状のルウを作り、これに続く第2次工程で、最大大きさを整えた粉粒ルウを作る(第4工程S4)。この粉粒化により、低油脂カレールウは、その大きさが5000μ以下、好ましくは4000μ以下に整えられ、この大きさ以下の様々な粒状及び粉末状のルウが混在した状態となる。
【0032】
粉粒ルウは、第5工程S5で、別途用意された成形型に所定量だけ充填され、成形型で所定の嵩密度のコアCが成形される。このコアCの成形の際に、好ましくは、粉粒ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に成形型が加熱されており、これによりコアCの表面に油脂膜からなる保護層C'が形成される。次いで第6工程S6で、成形後の固形ルウが成形型から取り出され、取り出した固形ルウは製品トレーに収容される。そして、第7工程S7で製品トレーに剥離可能なフィルムが接着されて製品トレーのシールが行われ、次の第8工程のパッケージング工程で製品トレーの包装、これに続いて製品出荷のために段ボール詰めされる。尚、本発明の好ましい態様として、第6工程S6で固形ルウが成形型から取り出される前に、加熱された成形型を冷却するのがよい。ここで冷却する場合には、保護層に含まれる油脂の融点以下の温度に冷却するのが好ましい。より好ましくは、保護層を迅速に冷却するのに、保護層に含まれる油脂の融点よりも10℃以上低い温度に冷却するのがよい。具体的には、例えば、油脂の融点が30〜60℃の場合、ルウを5〜28℃に冷却するのがよい。
【0033】
図2は、低油脂カレールウの製造ラインのうち工程S1〜S3の第1次工程に相当する設備の概要を示す。この図2を参照して、参照符号1はクッカーであり、クッカー1は攪拌機2を備えている。クッカー1は、澱粉質原料、油脂及び調味料を含む原料を加熱混合してルウを調製するものであり、クッカー1に投入された原料を攪拌手段2で撹拝しながらジャケット(図示せず)により加熱するようになっている。
【0034】
クッカー1で低油脂カレールウを調製した後、この低油脂カレールウはクッカー1から取り出され、取り出した低油脂カレールウは、ベルト式冷却装置3に委ねられる。ベルト式冷却装置3は、クッカー1から受け取ったカレールウを冷却して塊状のルウを作るものである。このベルト式冷却装置3は、上下に一定の間隔を設けて並置された上側及び下側の2つの搬送コンベア4、5を含む。上下の搬送コンベア4、5は、夫々、駆動プーリ6、7と案内プーリ8、9とに掛け渡された金属製の無端ベルト10、11を有する。また、下側搬送コンベア5は、その上流端が上側搬送コンベア4の上流端よりも上流側に延長されており、この搬送コンベア5の上流端延長部でクッカー1からルウを受け取るようになっている。下側搬送コンベア5に移載された低油脂カレールウは、上側及び下側の無端ベルト10、11の搬送面で挟まれることにより板状に延ばされ、そして冷却されながら下流側に搬送される。
【0035】
ベルト式冷却装置3には、上下の無端ベルト10、11の搬送面の近傍に冷却手段12A、12Bが設けられており、冷却手段12A、12Bによって無端ベルト10、11の搬送面が冷却され、冷却された搬送面からの伝熱によってルウを搬送しながら冷却する。下側搬送コンベア4の下流端にはスクレパー14が近接して配置されている。搬送コンベア4、5の下流端まで搬送された板状のルウは、スクレパー14によって掻き取られることによって壊されて塊状となったルウがベルト式冷却装置3の終端から排出される。
【0036】
ベルト式冷却装置3から排出された塊状のルウは、数多くの小孔を備えたフィルタでペレット状又は顆粒状のルウを作る粗砕機14に投入される。粗砕機14から排出されたペレット状又は顆粒状のルウは、図3の整粒機15で最大大きさが整えられる。整粒機15は公知のものを任意に採用することができる。整粒機15の一例を示す図3を参照して、整粒機15は、上端を開放した投入口151を備えたボックス152を有し、このボックス152は、下端部が先細りの三角形の形状を有し、この三角形状の下端縁に、下方に向けて開放した排出口153が形成されている。
【0037】
整粒機15は、ボックス152の内部に配置された回転体154を有し、この回転体154は図外のモータによって一方向に回転駆動される。回転体154は、その両端に配置された前後一対の円形輪郭のディスク155と、ディスク155の外周に配置された複数の矩形断面のロッド156とで概略構成され、ロッド156は円周方向に等間隔に配設されている。ボックス152は、回転体154の周囲にスクリーン157が配設され、このスクリーン157には数多くのスリット157aが設けられている。
【0038】
投入口151を通じて整粒機15の内部に入り込んだ塊状及び/又は粗砕状のルウは、回転体154のロッド156と衝突し細粒化されながらスクリーン157の開口つまりスリット157aを通ることによって排出口153を通じて下方に排出される。このように整粒機15からは、スクリーン157の開口つまりスリット157aを通過することで粉粒ルウが排出され、粉粒ルウはその大きさが規定され、整粒機15から排出される粉粒ルウは、粒状及び粉末状のルウが混在している。この粉粒ルウは流動性を備えていることは勿論である。
【0039】
粉粒ルウの最大大きさは、主にスクリーン157のスリット157aによって制御することができる。実施例では、開口つまりスリット157aの大きさは4000μm(4mm)であったが、この数値に限定されるものではなく、5000μm(5mm)以下であるのがよい。
【0040】
整粒機15から排出された粉粒ルウは、成形工程S5で加圧成形装置25を使って所定の形状に成形され、これにより固形ルウとなる。図4は、成形装置25の概要を先ず説明するための図である。この図4を参照して、成形型26は、雌型26(A)と雄型26(B)とからなり水平方向に間欠的に移動する。また、雄型26(B)は上下に移動可能に設けられている。加圧成形装置25の動作について説明すると、先ず、ステップ1で、成形型26は、粉粒ルウ収容ボックス27の下方に位置決めされる。粉粒ルウ充填ボックス27には、上述した整粒機15から粉粒ルウが供給される。このステップ1では、雄型(B)が最下限ストローク位置に位置決めされて、雌型26(A)の側壁と雄型26(B)の天面によって上方が開口した成形キャビティ28が形成され、この成形キャビティ28の中に粉粒ルウ収容ボックス27から粉粒ルウが充填される。次いで、ステップ2で、成形型26が水平方向に移動し、このときに粉粒ルウ収容ボックス27の下端によって粉粒ルウが摺り切りされて、成形型26の成形キャビティ28内には所定量の粉粒ルウが充填される。
【0041】
次いで、ステップ3では、成形型26を押さえ板29の下方に移動させて成形キャビティ28の上端開口を塞ぎ、この状態で雄型26(B)を所定の成形ストローク位置まで上方に移動させて粉粒ルウを加圧することで成形してコアCを作る。ステップ4では、成形型26を更に移動させて再び上方を開口させて、この状態で雌型26(A)を最上限の位置にまで更に上昇させる。これにより成形型26から成型品である固形ルウRが上方に排出される。成形型26から排出されたコアCは、例えば払出し手段30によって成形型26から取り除かれる。ここに、ステップ3の好ましい態様として、成形型26及び抑え板29は、低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱して、コアCを成形する際にコアCの表面に油脂の皮膜を作り、これによりコアCの表面に保護層C'を形成するのがよい。ステップ3の更に好ましい態様として、成形型26及び抑え板29を低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に加熱した後、今度は、成形型26及び抑え板29をこの油脂の融点以下の温度に冷却するのがよい。
【0042】
図5〜図10は、低油脂固形ルウを成形する工程(図1のS5)で採用可能な他の例の成形装置40を説明するための図である。成形装置40は、移動テーブル401などの移動手段に設けられた複数の成形型402を含む。移動テーブル401は、複数のステーションで停止して所定の作業を行った後に移動して次のステーションに進む間欠的な移動動作を行う。
【0043】
図5〜図10を参照して、移動テーブル401には、移動テーブル401の移動方向(例えば図5の矢印で示す方向)に離置した複数の成形型402、402が設けられている。図中、移動テーブル401の移動方向進み側の成形型402には参照符号「L」を付記し、遅れ側の成形型402には参照符号「T」を付して識別してある。
【0044】
各成形型402の雌型403は、移動テーブル401から下方に延びるスリーブで構成され、このスリーブ(雌型)403は断面略扇形である。この雌型403に対して雄型404が下方から挿入され、この雄型403を下方に変位させることにより成形キャビティ405が形成され、雄型403を上方に押し上げることにより成形キャビティ405内の粉粒ルウを加圧成形することができる。
【0045】
雄型403は下端フランジ404aを有し、この下端フランジ404aが移動テーブル401の下面と当接した上限位置まで持ち上げたときに、雄型403の上端面が移動テーブル401の上面と一致するように設計されている。また、雌型403の下端面と雄型403の下端フランジ404aとは永久磁石406によって吸着された状態が保持される。
【0046】
図5、図6は、成形型402に粉粒ルウを充填する粉粒ルウ充填ステーションST1を示し、図5は成形型402を粉粒ルウ収容ボックス27の下方に位置決めした状態を示し、図6は、次いで、成形型402の中に粉粒ルウを充填する工程を説明するための図である。粉粒ルウ充填ステーションST1には、上方に向けて延びるシリンダロッド408が配設されており、このシリンダロッド408の先端部には電磁石409が設けられ、この電磁石409が発揮する磁力は上述した永久磁石406よりも大きい。
【0047】
粉粒ルウ充填ステーションST1では、シリンダロッド408が上方に延びた状態で待機しており、成形型402が粉粒ルウ充填ステーションST1に位置決めされたときに、シリンダロッド408の上端が雄型404の下端面と当接した状態となり、この雄型404は、シリンダロッド408の上端面に電磁石409によって吸着される(図5)。次いで、図7に示すように、シリンダロッド408が雄型404を吸着した状態で下降動する。雄型404の下端ストローク位置は充填量調製プレート410によって規定される。
【0048】
充填量調製プレート410には、遅れ側の成形型402Tに対応する位置に、充填量微調製台411が配設されており、これにより、遅れ側成形型402Tの雄型403Tの型ストローク位置は進み側成形型402Lの雄型403Lの下端ストローク位置に比べて高い。したがって、遅れ側の成形型402Tに生成される成形キャビティ405Tの容積は進み側成形型402Lの成形キャビティ405Lの容積に比べて小さい。上述した雄型404の下方へのストロークに伴って各成形型402には、粉粒ルウ収容ボックス27から粉粒ルウが流入する。
【0049】
この粉粒ルウ充填ステーションST1での作業が終わると、移動テーブル401が移動し始めて成形型402が次のステーションST2に送り込まれるが、粉粒ルウ充填ステーションST1には、遅れ側成形型403Tの進み側先方にガイド412が配設されており、このガイド412は、遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aと係合して、雄型404Tを強制的に最下端ストローク位置まで下降させる。すなわち、粉粒ルウ充填ステーションST1での作業途中では、遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aは充填量微調製台411で若干持ち上げられた状態にあるが、移動テーブル401の移動が開始して遅れ側成形型403Tの雄型404Tの下端フランジ404aが充填量微調製台411から離脱した直後にガイド412と係合して、このガイド412によって遅れ側雄型404Tは強制的に充填量調製プレート410まで下降する。遅れ側雄型404Tがガイド412によって最下端ストローク位置まで下降するに従って、遅れ側雄型404Tには粉粒ルウ収容ボックス27から追加の粉粒ルウが流入する。
【0050】
このように、粉粒ルウ充填ステーションST1で粉粒ルウを成形型402に充填する段階で遅れ側成形型402Tの成形キャビティ405Tの容積を進み側成形型402Lよりも若干小さくし、移動テーブル401を移動させて成形型402を次のステーションST2に送り出す際に粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁を使って擦り切りで各成形型402内の粉粒ルウの量を制御する際に遅れ側成形型402Tの雄型404Tを下げて、この遅れ側成形型402Tの成形キャビティの容積を、進み側成形型402Lの容積と同じにすることで両成形型402L、402Tに充填した粉粒ルウの量を実質的に同じにすることができる。
【0051】
換言すれば、粉粒ルウ充填ステーションST1で、遅れ側及び進み側の成形型402T、402Lの成形キャビティ405T、405Lが最初から同じ容積であった場合には、粉粒ルウを成形型402T、402Lに充填した後、移動テーブル401を移動させながら粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁で擦り切りで各成形型402の量目を制御する際に、成形型402T、402Lと粉粒ルウ収容ボックス27との間の相対的な移動によって遅れ側成形型402Tに充填された粉粒ルウが圧縮される傾向になり、結果的に、遅れ側成形型402Tの方が進み側成形型402Lよりも多くの粉粒ルウが充填されてしまうという問題が発生する。これに対して、如上のように遅れ側成形型402Tの成形キャビティ405Tの容積を進み側成形型402Lよりも若干小さくし、移動テーブル401を移動させて成形型402を次のステーションST2に送り出す際に粉粒ルウ収容ボックス27の下端縁で擦り切りで各成形型402の量目を制御する際に遅れ側成形型402Tの雄型404Tを下げて進み側成形型402Lの容積と共通にすることで両成形型402L、402Tに充填した粉粒ルウの量を同じにすることができる。
【0052】
このことは、油脂を含むか否かを問わず広く一般的に粉粒又は粉末に対しても適用することができる。すなわち、粉粒を入れた定置のボックスの下端縁と摺接して移動するテーブルに開口する複数の成形型を有し、この複数の成形型がテーブルの移動方向進み側と遅れ側に配置されて、テーブルを移動させることで、粉粒又は粉末収容ボックスの下端縁で成形型に充填した粉粒を擦り切りして成形型に充填した粉粒の量を制御する場合に、上記複数の成形型を粉粒又は粉末収容ボックスの下方に位置決めして、この粉粒又は粉末収容ボックスから複数の成形型の中に粉粒を流入させる際に、遅れ側の成形型の成形キャビティの容積を進み側の成形型の成形キャビティの容積よりも若干小さくし、次いで、テーブルを移動させて上記複数の成形型に流入した粉粒又は粉末を粉粒又は粉末収容ボックスの下端縁で擦り切りしながら、遅れ側の成形型の成形キャビティの容積を進み側の成形型の成形キャビティの容積と同一になるように修正することで、上記複数の成形型で成形する粉粒又は粉末の量を均一にすることができる。
【0053】
図8は、粉粒ルウを雄型404で押して所定形状のコアCに成形する成形ステーションST2を示す。成形ステーションST2には、前述した押さえ板29が水平状態で配設されている。成形型402が成形ステーションST2に到着すると、雌型403の上端開口は押さえ板29によって閉塞された状態になる。成形ステーションST2には、各雄型404に対応して上方に向けて延びるプレスシリンダのロッド420が配設されており、このプレスシリンダロッド420が上方に向けて伸長することで、成形型402内の粉体ルウが加圧成形される。この成形型402によるコアCの成形の際に、好ましくは、低油脂ルウに含まれる油脂の融点以上の温度に雌型403及び押さえ板29が加熱されており、これにより、コアCの上面及び側面に油脂膜からなる保護層C'が形成される。この保護層C'の形成は、成形型402から取り出し後のコアCに例えば液状の油脂を吹き付ける、コアCを液状油脂の中に浸漬するなどの方法によりコアCを作った後に保護層C'を形成するようにしてもよい。
【0054】
図8の成形ステーションST2での成形作業が終わった後に、移動テーブル401が移動して、図9に示す、成形した固形ルウR(コアCとその表面層C'とからなる。)を成形型402から排出する製品排出ステーションST3に進む。製品排出ステーションST3には、排出用シリンダのシリンダロッド430が配設されており、この排出用シリンダのシリンダロッド430が上方に向けて伸長して、各雄型404を上端ストローク端まで押し上げることにより、各雌型403から固形ルウRを上方に排出する。成形型402から排出された固形ルウRは、適当な搬送手段を使って次の固形ルウを製品トレーに収容する工程S6(図1)に向けて搬送される。
【0055】
図10は、固形ルウRを取り除いた後に移動テーブル401が移動して次の待機ステーションST4に進む。この待機ステーションST4では、成形型26は、雄型404が上端ストローク端つまり雄型404の下端フランジ404aが雌型403の下端に永久磁石406で吸着された状態にある。この待機ステーションST4から移動テーブル401が移動すると、図6で説明した粉粒ルウ充填ステーションST1へ進む。
【0056】
図11は、低油脂固形カレールウを収容するためのプラスチック製の製品トレー50を示す。この製品トレー50は5つの固形ルウRを夫々収容するための上方に開放した5つの固形ルウ収容室501を有する。ここに、固形ルウRは、一例として平面視略扇形の形状に成形されており、各固形ルウRは、個々に独立した固形ルウ収容室50に収容される。ちなみに、平面視扇形の固形ルウRは、肉厚が約18mm、平面視した時の高さが約33mmであり、そして約20cm3の体積を備えており、一食分の分量(約19g)に相当する。したがって、製品トレー50は5食分の個々に分離した固形ルウRを独立して収容することができる。当業者であれば理解可能なように、製品トレー50に固形ルウRを収容した後に、製品トレー50は、その上端フランジ502に対してフィルム(図示せず)を剥離可能に接着することによりシールされ、その後の第8工程で製品トレー50を包装し、また段ボール詰めされることになるが、その過程で、固形ルウRを収容した製品トレー50の計量が行われる。この計量の結果、規定の重量よりも軽いとき又は重いときには、この結果がフィードバックされて図6を参照して説明した充填量調製プレート410の上げ下げが行われる。
【0057】
このフィードバック制御の概要を図12を参照して説明すると、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量が所定の閾値よりも軽いときには、充填量調製プレート410を下降させる制御が実行される。逆に、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量が所定の閾値よりも重いときには、充填量調製プレート410を上昇させる制御が実行される。この充填量調製プレート410を下降および上昇させる量は、実際にデータ取りして、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量偏差と充填量調製プレート410の移動量との関係をプログラムに組み込んでおけばよい。言うまでもないことであるが、充填量調製プレート410を下降させることにより、成形型402の成形キャビティ405の容積を拡大することができ、これにより成形型402へ充填する粉粒ルウの量を増量することができる。逆に、充填量調製プレート410を上昇させることにより、成形型402の成形キャビティ405の容積を小さくすることができ、これにより成形型402へ充填する粉粒ルウの量を減少させることができる。
【0058】
このように、固形ルウRを収容した製品トレー50の重量を計量してその結果を充填量調製プレート410の高さ位置の制御にフィードバックすることにより、製品出荷の際に製品トレー50に収容されている固形ルウRの重量の均一性を確保することができる。
【0059】
図13は、図11を参照して説明した固形カレールウRを成形するのに用いた雄型26(B)の斜視図である。雄型26(B)は、その天井面261で粉粒ルウを加圧するものであるが、雄型26(B)は、3つの湾曲したコーナー部分262を含む略三角形状の天井面261と同じ形状の断面形状を備えた高さを有する立体形状を有し、この立体形状の縦方向に延びるコーナー部分263を除く3つの側壁264には、天井面261の近傍を残した部分が切り欠かれた切欠き形状部分264aが形成され、この切欠き形状部分264aは雄型26(B)の下端まで延びている。すなわち、切欠き形状部分264aは下方に開放している。なお、図13では、2つの切欠き形状部分264aが図示されているが、残る1つの切欠き形状部分264aは作図上の関係で図面には現れていない。
【0060】
如上のように雄型26(B)を天井面261の近傍及び縦方向に延びるコーナー部分263を残して下方に開放した切欠き形状部分264aを形成することで、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウによって雄型26(B)の上下動作が阻害されるのを防止することができる。
【0061】
すなわち、雄型26(B)から上記切欠き形状部分264aを省いて、その縦方向に全て天井面261と同じ断面形状にした場合には、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウが26(B)の壁面との間に噛み込で雄型26(B)の上下動作が阻害される可能性があるが、図13に図示のように、雄型26(B)に下方に開放した切欠き形状部分264aを設けることで、雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウは、天井面261と切欠き形状部分264aとの間の上端帯状部分265が雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウを掻き落とす機能を果たし、この上端帯状部分265が果たす雌型26(A)の壁面の掃除機能によって雌型26(A)の壁面に付着した粉粒ルウが26(B)の壁面との間に噛み込む現象の発生を抑制することができる。また、3つの縦方向に延びるコーナー部分263は天井面261の3つのコーナー部分262と同じ外形輪郭をもっているため、雄型26(B)が雌型26(A)の中で傾いてしまうのを防止することができる。
【0062】
このことは、平面視略三角形状の雄型(B)に限定されず、平面視略四角形などの多角形形状の雄型に対して同様に適用することができる。また、低油脂粉粒カレールウに限定されず、広く一般的に粉粒又は粉体の成形に対しても同様に適用することができる。
【0063】
(実施例1及び2):
下記表1に示す原料を用いて固形ルウを製造した。すなわち、先ず、牛脂、小麦粉及びコーンスターチを撹拝調理装置1に投入して加熱混合を開始し、品温が120℃に達したら、この温度で30分間保持し、更にこれに他の原料を加えて加熱混合を継続し、品温が100℃に達したら、この温度で20分間保持してルウを調製した。次いで、得られたルウを搬送コンベア5の上流端に移し、搬送コンベア4、5で搬送しながら品温20℃に冷却し、スクレパー12で掻きとって塊状と粗砕状の混在したルウを調製した。なお、ここでの冷却は、搬送コンベア4、5の搬送面に冷却手段(シャワー)12、13から10℃の冷却水を吹き付け、搬送コンベア4、5の搬送面からの伝熱で行った。
【0064】
次いで、塊状と粗砕状の混在したルウを粉砕機15に投入し、この粉砕機15内で4mmの開口を数多く備えたスクリーンを通過させて4000μmパスの粉末状ルウを調製した。次いで、得られた粉末状ルウを、成形型20に充填し(ステップ1)、摺り切りして量目を調整し(ステップ2)、その後、雄型20(B)を上方に移動させて表2に示した加圧条件で加圧成形しながら、表2に示した加熱処理条件で加熱溶融し、次いで20℃まで冷却して固形ルウを得た。得られた固形ルウの嵩密度、表面硬さ及び体積は表2に示す通りとなった。また、得られた固形ルウの成形性及び溶解性はいずれも良好であった。なお、表面硬さは、レオメーター(YAMADEN社製RE-3305)を用い、直径2mmプランジャーで、テーブルスピード1mm/秒の条件で測定した。
【0065】
(比較例1及び2):
表2に示した加圧条件を用いて実施例1と同様にして固形ルウを得た。ただし、加熱処理は行わなかった。得られた固形上ルウの嵩密度、表面硬さ及び体積は表2に示す通りとなった。
【表1】
(表中、部は質量部を表す。)
【表2】
【0066】
成形性※1: 製品容器内に独立して個々独立して収容した包装済みルウをダンボール詰めし(総重量約15kg相当)、これを振動試験機に固定して、上下方向に振動(加速度:9.8m/s2)を与える。次に、このダンボールを35cmの高さから底面2回、天面1回、各側面1回落下させた後、ルウ中に砕けているものがない場合には「○」、ルウ中に砕けているものがある場合には「×」と評価した。
【0067】
溶解性※2:具(人参)と熱水(95℃)とを同じ割合で入れた鍋にルウを投入し、1秒おきにスプーンで前後に一往復させて4分間経過後にルウが完全に溶けていた場合は「○」、溶けていない場合は「×」と評価した。尚、「◎」は2分間以内に完全に溶解したものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例の低油脂固形ルウの製造工程図である。
【図2】低油脂ルウを調製した後に、これを粗砕してペレット状又は顆粒状のルウを作る一連の設備の概要を説明するための図である。
【図3】ペレット状又は顆粒状のルウから粉粒ルウを生成するための整粒機の一例の概要を説明するための図である。
【図4】粉粒ルウから固形ルウを生成する一連の工程を説明するための図である。
【図5】低油脂固形ルウを成形するための成形機を第1ステーションに移動させた直後の状態を示す図である。
【図6】第1ステーションで、粉粒ルウを成形機に充填している状態を示す図である。
【図7】第1ステーションから次のステーションに移行する過程で、遅れ側成形機の雄型を強制的に下げて進み側成形機と同じ高さ位置に雄型の高さ位置を調整した状態を示す図である。
【図8】第2ステーションで加圧成形している状態を示す図である。
【図9】第3ステーションで固形ルウを成形型から排出した状態を示す図である。
【図10】待機ステーションの成形型の状態を説明するための図である。
【図11】具体例として、5個入り製品トレーの5つの独立したルウ収容室の各々に低油脂固形ルウを収容することを説明するための図である。
【図12】図11のX12−X12線に沿った低油脂固形ルウの断面図である。
【図13】第1ステーションで成形機に充填する粉粒ルウの量のフィードバック制御を説明するための図である。
【図14】成形機の雄型の斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質原料、油脂及び調味料を加熱調整したルウを用いて加圧成形された低油脂固形ルウであって、
嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、
前記低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する低油脂固形ルウ。
【請求項1】
澱粉質原料、油脂及び調味料を加熱調整したルウを用いて加圧成形された低油脂固形ルウであって、
嵩密度が1.35g/cm3以下であるコアと、
前記低油脂固形ルウの表面のうち、少なくとも欠け易い部分に設けられた保護層とを有する低油脂固形ルウ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−240329(P2009−240329A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174541(P2009−174541)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【分割の表示】特願2006−138097(P2006−138097)の分割
【原出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【分割の表示】特願2006−138097(P2006−138097)の分割
【原出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】
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