説明

低温液化ガスの気化システム

【課題】熱を有効に利用し、気化器海水ポンプ設備費、運転費を低減可能な低温液化ガスの気化システムを提供する。
【解決手段】低温液化ガスを気化させる2基以上の気化器11a、11b、11c、11dと、2基の気化器11a、11b(11c、11d)を一組とした、該気化器11a、11b(11c、11d)の熱媒ラインを直列に連結した1以上の連結熱媒ライン35a(35b)と、予備機を除き、前記気化器11a、11b、11c、11dの基数が偶数のときは前記連結熱媒ライン数と同数、前記気化器11a、11b、11c、11dの基数が奇数のときは前記連結熱媒ライン数に1を加算した数の気化器海水ポンプ15a、15b、15cと、を有し、各連結熱媒ライン35a(35b)及び/又は単独熱媒ラインそれぞれに、1台の気化器海水ポンプ15a、15b、15cから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガスを気化させる低温液化ガスの気化システムに関し、特に低温液化ガスを気化させる媒体に温海水を使用する低温液化ガスの気化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液化天然ガスを用いた複合発電設備が多く使用されている。液化天然ガスを用いた代表的な複合発電は、低温液化ガスの一種である液化天然ガス(以下LNGと記す)を燃料としてガスタービンを駆動し、排熱回収ボイラでガスタービンから排出される燃焼排ガスの熱を回収して、蒸気タービンを駆動し発電を行う。ガスタービンの燃料となるLNGは、メタンを主成分とする天然ガス(以下NGと記す)を冷却し液化させたもので、発電所等ではLNGタンクに貯留される。LNGは、約−162℃の温度で貯留されているため、これを燃料として使用するときは、加温、ガス化しNGとする必要がある。このLNGの気化には、オープンラック式気化器、シェルアンドチューブ型気化器など海水を熱媒とする気化器が多く使用されている。
【0003】
図4は、従来のLNGの気化システム1の概略的構成を示すフロー図である。従来のLNGの気化システム1は、主にLNGを気化させる気化器2(2a、2b、2c、2d)と気化器2に気化媒体である海水を供給する気化器海水ポンプ3(3a、3b、3c、3d、3e)、及び気化器2に海水を供給する管路から構成されている。気化器2は、シェルアンドチューブタイプの気化器で、気化媒体である海水から熱を得て、LNGを気化させる。気化器海水ポンプ3で取水された海水は、海水入口ヘッダー4を介して各気化器2に導かれ、LNGと熱交換し海水出口ヘッダー5を通じて海に戻される。
【0004】
図4に示すヘッダー方式のLNGの気化システム1は、気化器2が必要とする総海水流量を気化器海水ポンプ3全体で供給する。よってヘッダー方式のLNGの気化システム1においては、吐出量の大きいポンプを使用すると気化器海水ポンプ3の台数が減少する。このほか、従来から使用されているLNGの気化システムには、1基の気化器に対して1台の気化器海水ポンプで海水を送水する1対1対応方式もある。このシステムの場合、気化器と気化器海水ポンプとが1対1で対応するので、気化器の基数と気化器海水ポンプの台数は、予備機を除けば数が一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】該当なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1対1対応方式のLNGの気化システムは、気化器と気化器海水ポンプとが1対1で対応するため、プロセスフローが簡単で、運転が容易である。ところで低温液化ガスを利用する発電所等では、各所でエネルギーの回収、熱の有効利用が図られている。本発明者らも、低温液化ガスの冷熱を利用してガスタービンの燃焼用空気を冷却するシステムを開発し、特許出願(特願平10−314551)を行っている。しかしながら、低温液化ガスを気化させるシステムそのものに関しては、熱の有効利用を図ったシステムが開発されていないのが現状である。
【0007】
本発明の目的は、熱を有効に利用し、気化器海水ポンプの設備費、運転費を低減可能な低温液化ガスの気化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、低温液化ガスを気化させる2基以上の気化器と、2基の気化器を一組とした、該気化器の熱媒ラインを直列に連結した1以上の連結熱媒ラインと、温海水を前記気化器の熱媒として供給する気化器海水ポンプと、を備え、前記気化器海水ポンプは予備機を除き、前記気化器の基数が偶数のときは前記連結熱媒ライン数と同数、前記気化器の基数が奇数のときは前記連結熱媒ライン数に1を加算した数の気化器海水ポンプを有し、前記1以上の連結熱媒ライン、又は前記1以上の連結熱媒ライン及び連結熱媒ラインに連結されない単独熱媒ラインそれぞれに、1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする低温液化ガスの気化システムである。
【0009】
また本発明は、前記低温液化ガスの気化システムにおいて、さらに前記連結熱媒ラインをバイパスする前記連結熱媒ラインと同数の熱媒バイパスラインを備え、前記気化器海水ポンプは、前記熱媒バイパスラインへも温海水を供給可能であり、前記連結熱媒ラインには、各気化器の気化器熱媒入口弁、気化器熱媒出口弁が設けられ、前記熱媒バイパスラインには、熱媒入口弁及び熱媒出口弁が設けられ、上流側の前記気化器の気化器熱媒出口弁と下流側の前記気化器の気化器熱媒入口弁とを連結する管路と、前記熱媒入口弁と前記熱媒出口弁とを連結する管路とを連結する連絡路を有し、前記連絡路を介して前記連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスラインとを連通させ、これに連結する2基の気化器のうちいずれか1基の気化器にのみ1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記低温液化ガスの気化システムにおいて、前記連結熱媒ライン数が2以上のときは、前記熱媒バイパスラインは、2本の連結熱媒ラインに対して1本設けられ、2本の連結熱媒ラインそれぞれの上流側の前記気化器の気化器熱媒出口弁と下流側の前記気化器の気化器熱媒入口弁とを連結する管路と、前記熱媒入口弁と前記熱媒出口弁とを連結する管路とを連結する2本の連絡路と、を有し、前記2本の連絡路にはそれぞれ弁が介装され、前記連絡路を介して前記連結熱媒ラインのうちいずれか一方の連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスライン、又は前記連絡路を介して前記両方の連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスラインとを連通させ、これに連結する4基の気化器の中から任意の基数の気化器に温海水を供給可能であり、1基又は直列に接続される2基の気化器には1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記低温液化ガスの気化システムにおいて、前記気化器が、シェルアンドチューブタイプの気化器であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記低温液化ガスの気化システムにおいて、前記温海水が、蒸気を冷却する復水器を通過後の温海水を含む海水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の低温液化ガスの気化システムは、2基の気化器を一組とした、該気化器の熱媒ラインを直列に連結した1以上の連結熱媒ラインを有し、この連結熱媒ライン又はこの連結熱媒ライン及び単独熱媒ラインそれぞれに、1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なので、従来の低温液化ガスの気化システムに比較して、気化器海水ポンプの台数及び必要な海水流量が半減する。このように温海水の熱を有効に利用することで、気化器海水ポンプの設備費、運転費の低減及び気化器海水ポンプの設置面積の縮小が可能となる。また放水する海水温度も下げることができるので環境上好ましい。
【0014】
また本発明の低温液化ガスの気化システムは、さらに連結熱媒ラインをバイパスする連結熱媒ラインと同数の熱媒バイパスライン、及び連結熱媒ラインと熱媒バイパスラインとを連結する連絡路を備え、連結熱媒ラインと熱媒バイパスラインとを連通させ、これに連結する2基の気化器のうちいずれか1基の気化器にのみ1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なため1基の気化器を保守しつつ他の気化器の運転を継続することができる。
【0015】
また本発明の低温液化ガスの気化システムは、2つの連結熱媒ラインに共通の熱媒バイパスラインを有し、これに連結する4基の気化器の中から任意の基数の気化器に温海水を供給可能であり、1基又は直列に接続される2基の気化器には1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なため少ない配管系統で効率的に気化器を運転することができる。
【0016】
また本発明によれば、気化器は、シェルアンドチューブタイプの気化器であるので、2基の気化器の熱媒ラインを簡単に直列に接続することができる。これにより、気化器海水ポンプの設備費、運転費の低減及び気化器海水ポンプの設置面積の縮小が可能となる。また放水する海水温度も下げることができるので環境上好ましい。
【0017】
また本発明によれば、温海水は、蒸気を冷却する復水器を通過後の温海水を含む海水であるので、復水器を通過後の温海水が持つエネルギーを有効に利用することができる。本発明を適用することで、従来はそのまま無駄に捨てられていた熱を回収し、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態としてのLNG気化システム10の概略的な構成を示すフロー図である。
【図2】本発明の第二実施形態としてのLNG気化システム40の概略的な構成を示すフロー図である。
【図3】本発明の第三実施形態としてのLNG気化システム50の概略的な構成を示すフロー図である。
【図4】従来のLNGの気化システム1の概略的構成を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の第一実施形態としてのLNG気化システム10の概略的な構成を示すフロー図である。LNG気化システム10は、温海水の持つ熱を利用して、LNGを気化させるシステムであって、LNGを気化させる気化器11(11a、11b、11c、111d)と、LNGを気化させる媒体である温海水を気化器11に供給する気化器海水ポンプ15(15a、15b、15c)、気化器海水ポンプ15の送水する温海水を気化器11に導く管路を主に構成される。
【0020】
LNGを気化させる気化器11は、シェルアンドチューブタイプの気化器であり、4基の気化器は同一の仕様からなる。シェルアンドチューブタイプの気化器は、隔壁式熱交換器の一種であり、例えばチューブ側にLNGを供給し、シェル側に熱媒を供給することで、LNGは熱媒から熱を得て気化しNGとなる。シェルアンドチューブタイプの気化器は、オープンラック型気化器と異なり熱媒がシェル内を流通するので、2基の気化器の熱媒ラインを連結することで、2基の気化器に熱媒をシリーズに流すことができる。シェルアンドチューブタイプの気化器も種々のタイプのものが開発されているが、特に構造、型式などは限定されない。また4基の気化器は、必ずしも同一の仕様である必要はない。
【0021】
気化器(第一気化器)11aは、熱媒である温海水を受入れる熱媒入口管路21a、温海水を排出する熱媒出口管路22aと連結し、この二つの管路21a、22aで熱媒ラインを形成する。温海水は、熱媒入口管路21aを介して第一気化器11aに供給され、LNGと熱交換し温度を低下させた後、熱媒出口管路22aを通じて排出される。熱媒入口管路21aは、管路途中に気化器熱媒入口弁23aを、熱媒出口管路22aは、管路途中に気化器熱媒出口弁24aを有する。他の気化器(第二気化器)11b、気化器(第三気化器)11c、気化器(第四気化器)11dも同様に、熱媒である温海水を受入れる熱媒入口管路21b、21c、21d、温海水を排出する熱媒出口管路22b、22c、22dと連結する。また各熱媒入口管路21b、21c、21dは、管路途中に気化器熱媒入口弁23b、23c、23dを、各熱媒出口管路22b、22c、22dは、管路途中に気化器熱媒出口弁24b、24c、24dを有する。
【0022】
第一気化器11aの熱媒出口管路22aと、第二気化器11bの熱媒入口管路21bとは連結する。これにより第一気化器11aの熱媒ラインと第二気化器11bの熱媒ラインとが直列に連結され、第一連結熱媒ライン35aが形成される。同様に、第三気化器11cの熱媒出口管路22cと、第四気化器11bの熱媒入口管路21dとは連結する。これにより第三気化器11c熱媒ラインと第四気化器11dの熱媒ラインとが直列に連結され、第二連結熱媒ライン35bが形成される。さらに各気化器11は、気化器をバイパスする気化器バイパス管路25(25a、25b、25c、25d)を有する。各気化器バイパス管路25は、管路途中に弁26(26a、26b、26c、26d)を有する。
【0023】
第一気化器11aの気化器バイパス管路25aは、第二気化器11bの気化器バイパス管路25bと連結し、第一熱媒バイパスライン36aを形成する。さらに気化器バイパス管路25aは出口部を管路27と連結し、管路27は一端を、第一気化器11aの気化器熱媒出口弁24aと第二気化器11bの気化器熱媒入口弁23bとを連結する管路と連結する。同様に、第三気化器11cの気化器バイパス管路25cは、第四気化器11dの気化器バイパス管路25dと連結し、第二熱媒バイパスライン36bを形成する。さらに気化器バイパス管路25cは出口部を管路28と連結し、管路28は一端を、第三気化器11cの気化器熱媒出口弁24cと第四気化器11dの気化器熱媒入口弁23dとを連結する管路と連結する。
【0024】
気化器海水ポンプ15は、気化器11にLNGを気化させる温海水を供給するポンプであり、放水口などに設置される。ここで温海水とは、通常の海水温度に比較して温度の高い海水を言い、蒸気タービンの排気蒸気を冷却し温度を上昇させた復水器出口の温海水などを含む海水が例示される。本実施形態では、気化器海水ポンプ15は、ポンプ1台当たりの吐出量が、気化器1基が必要とする温海水を供給可能なポンプであり、気化器海水ポンプ15のうち1台は予備機である例を示す。本実施形態に示すLNGの気化システム10は、後述するように2基の気化器11の熱媒ラインを直列に連結し、2基の気化器11に対して1台の気化器が必要とする流量の温海水を送出するので、基本的には気化器海水ポンプ15の総海水流量は、従来のLNG気化システムの半分で済む。よって本実施形態のようにポンプ1台当たりの吐出量が、気化器1基が必要とする温海水を供給可能なポンプを使用すると、気化器海水ポンプ15の台数は、予備機を除き気化器11の基数の半分となる。
【0025】
放水口などに設置された気化器海水ポンプ15から送出される温海水は、各気化器海水ポンプ15の吐出管30(30a、30b、30c)を通じて、海水入口ヘッダー31に導かれる。気化器11に導かれLNGと熱交換し温度の低くなった温海水は、海水出口ヘッダー32を通じて海に戻される。第一気化器11aの熱媒入口管路21a、気化器バイパス管路25aは、入口部を海水入口ヘッダー31と連結し、海水入口ヘッダー31を通じて、海水を受け取る。同様に、第三気化器11cの熱媒入口管路21c、気化器バイパス管路25cも、入口部を海水入口ヘッダー31と連結し、海水入口ヘッダー31を通じて、海水を受け取る。
【0026】
第二気化器11bの熱媒出口管路22bは、出口部を海水出口ヘッダー32と連結し、温度の低くなった温海水を海水出口ヘッダー32へ送る。第二気化器11bの気化器バイパス管路25bは、出口部を第二気化器の熱媒出口管路22bに連結する。同様に、第四気化器11dの熱媒出口管路22dは、出口部を海水出口ヘッダー32と連結し、第四気化器11dの気化器バイパス管路25dは、出口部を第四気化器11dの熱媒出口管路22dに連結する。なお、第二気化器11b及び第四気化器11dの気化器バイパス管路25b、25dは、出口部を直接海水出口ヘッダー32と連結させてもよい。
【0027】
次に、以上の構成からなるLNGの気化システム10の使用方法を示す。気化器海水ポンプ15a、15bを駆動し、吐出管30a、30bに配設された吐出弁34a、34bを開け、海水入口ヘッダー31に温海水を送る。気化器11側の熱媒ラインは、第一連結熱媒ライン35a、第二連結熱媒ライン35bが開けられ、第一熱媒バイパスライン36a、第二熱媒バイパスライン36bが閉じられる。気化器熱媒入口弁23(23a、23b、23c、23d)、及び気化器熱媒出口弁24(24a、24b、24c、24d)を開け、弁26(26a、26b、26c、26d)を閉じることで、気化器11に温海水を供給する。
【0028】
第一気化器11aに供給された温海水は、第一気化器11aに送られるLNGと熱交換し、温度を低下させた後、第二気化器11bに送られる。第二気化器11bに送られた温海水は、ここでLNGと熱交換しさらに温度を低下させた後、海水出口ヘッダー32へ送られる。同様に、第三気化器11cに供給された温海水は、第三気化器11cに送られるLNGと熱交換し、温度を低下させた後、第四気化器11dに送られる。第四気化器11dに送られた温海水は、ここでLNGと熱交換しさらに温度を低下させた後、海水出口ヘッダー32へ送られる。海水出口ヘッダー32に送られた温度を低下させた温海水は、海水出口ヘッダー32を通じて海に戻される。一方、LNGは、温海水と熱交換しNGとなり、図示を省略したガスタービン等に送られる。
【0029】
本実施形態に示すLNG気化システム10では、2基の気化器の熱媒ラインを直列に連結し、2基の気化器に対して気化器1基分の流量の温海水、つまり1基の気化器に送られるLNGを気化させるに必要な流量の温海水を供給し、LNGを気化する方法を採用する。これは、LNGの気化媒体に温海水を使用し、この熱を有効に利用することで可能となったものである。従来のLNG気化システム1では、使用する海水温度が高くないので、1基の気化器を通った後の海水温度が低く、この海水を続けて第2基目の気化器に使用することができなかった。このため従来のLNG気化システム1では、各気化器に対して単独に気化器1基分の流量の海水を送水していた。これと比較すると、本実施形態に示すLNGの気化システム10は、海水の送水量は半分で済み、気化器海水ポンプ台数を半減することが可能で、設備費、運転費を低減することができる。また気化器海水ポンプの設置面積を縮小させることもできる。また海水出口ヘッダー32から排出される温度を低下させた温海水は、放水路の温海水と合流した後、海に戻されるので、放水する海水温度も低下させることが可能で、環境上好ましい。
【0030】
本発明は、温度の高い海水を使用することで可能となったシステムであるが、本発明では2基の気化器に使用するための温海水をわざわざ製造するのではなく、例えば復水器出口の温海水を使用するので、温海水の製造設備は不要である。従来、無駄に捨てられていた熱に着目し、この熱を有効に利用した優れたシステムと言える。
【0031】
また本実施形態のLNG気化システム10は、熱媒バイパスライン36(36a、36b)を備えるので、一部の気化器11を保守点検しながら、他の気化器11に温海水を供給することができる。気化器11bを保守点検する場合は、気化器11bの気化器熱媒入口弁23b及び気化器熱媒出口弁24bを閉じて行う。また第一熱媒バイパスライン36a途中の弁26aを閉じ、弁26bを開ける。ここで、弁26aは熱媒入口弁、弁26bは、熱媒出口弁として機能する。これにより第一気化器11aに供給された温海水は、管路27を介して第一熱媒バイパスライン36aに導かれ、海水出口ヘッダー32を通じて海に返送される。このように本実施形態のLNG気化システム10は、気化器11の熱媒バイパスライン36を備えるので、気化器11のいずれかが保守点検中であっても、運転を継続することができる。
【0032】
図2は、本発明の第二実施形態としてのLNG気化システム40の概略的な構成を示すフロー図である。図1と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に示す第一実施形態としてのLNG気化システム10では、気化器11の基数が4基であったが、第二実施形態に示すLNG気化システム40では、気化器11の基数が5基であり、気化器11eが一基増えている。また気化器海水ポンプも4台であり、図1に示す第一実施形態としてのLNG気化システム10に比較して気化器海水ポンプ15dが一台増えている。また気化器海水ポンプ15は、第一実施形態同様、ポンプ1台当たりの吐出量が、気化器1基が必要とする温海水を供給可能なポンプであり、気化器海水ポンプ15のうち1台は予備機である。
【0033】
本発明のポイントは、気化器11の熱媒に温海水を使用することで、2基の気化器11の熱媒ラインを直列に連結し、この連結熱媒ラインに気化器1基分の流量の温海水を送り液化低温ガスを気化させることにある。気化器海水ポンプ1台の吐出量が、1基の気化器が必要とする流量の温海水を送水可能なポンプであれば、本発明の場合、2基の気化器に対して1台の気化器海水ポンプ15で対応することができる。気化器11が偶数基の場合は、図1に示すように、2基の気化器11を一セットとして熱媒ラインを連結することができるけれども、気化器11が奇数基の場合は、1基の気化器11eの熱媒ラインは、図2に示すように単独の熱媒ライン37となる。
【0034】
気化器の基数が3基以上で奇数基であっても、本実施形態に示すように2基の気化器11の熱媒ラインを直列に連結し、各連結熱媒ライン35a、35b及び単独の熱媒ライン37に夫々、気化器1基分の流量の温海水を送水することで、従来の液化低温ガスの気化システムと比較すると気化器海水ポンプ15の設備費、運転費を減少させることが可能なことは、第一実施形態に示すLNG気化システム10と同じである。第二実施形態に示すLNG気化システム40の使用方法は、第一実施形態に示すLNG気化システム10と同じであり、その効果も基本的に同じである。
【0035】
図3は、本発明の第三実施形態としてのLNG気化システム50の概略的な構成を示すフロー図である。図1、図2と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図3に示す第三実施形態としてのLNG気化システム50は、図1に示す第一実施形態のLNG気化システム10と同様、気化器11の基数が4基であり、気化器のバイパスラインを備える点は共通するが、四基の気化器11に対して1の熱媒バイパスライン58しか備えていない点が異なる。なお気化器海水ポンプ15は、第一実施形態、第二実施形態と同様、ポンプ1台当たりの吐出量が、気化器1基が必要とする温海水を供給可能なポンプであり、気化器海水ポンプ15のうち1台は予備機である。
【0036】
第一気化器11aの気化器バイパス管路51は、管路途中に弁53を有し、一端を海水入口ヘッダー31と、他端を第二気化器11bの気化器バイパス管路52と連結する。気化器バイパス管路52は、管路途中に弁54を備え、一端を気化器バイパス管路51と他端を海水出口ヘッダー32と連結する。さらに気化器バイパス管路51と気化器バイパス管路52との連結部には、さらに管路55、管路56が連結されている。管路55は、管路途中に弁61を有し、一端を第一気化器11aの熱媒出口管路22aと第二気化器11bの熱媒入口管路21bとの連結部に連結する。同様に管路56は、管路途中に弁62を有し、一端を第三気化器11cの熱媒出口管路22cと第四気化器11dの熱媒入口管路21dとの連結部に連結する。このように気化器バイパス管路51と気化器バイパス管路52とは直列に連結され、熱媒バイパスライン58を形成する。この熱媒バイパスライン58は、第三気化器11c及び第四気化器11dの熱媒バイパスラインとしても機能し、気化器11(11a、11b、11c、11d)の共通の熱媒バイパスラインとして機能する。
【0037】
気化器11に温海水を供給する方法は、図1に示す第一実施形態と同一であるので、説明を省略する。一部の気化器11を保守点検しながら他の気化器11を運転する要領を示す。第二気化器11b、第四気化器11dの二基を同時に保守点検しながら、第一及び第三気化器11a、11cを運転する場合は、第一気化器11aから排出された温海水、及び第三気化器11cから排出された温海水を、各々管路55、56を介して熱媒バイパスライン58に導き、海水出口ヘッダー32を通じて海に温海水を返送する。
【0038】
具体的には、第二気化器11b、第四気化器11dを保守点検するため、気化器熱媒入口弁23b、23d、気化器熱媒出出口弁24b、24dを閉じる。第一気化器11aの気化器熱媒入口弁23a、気化器熱媒出口弁24a、第三気化器11cの気化器熱媒入口弁23c、気化器熱媒出口弁24c、弁61及び弁62を開け、熱媒バイパスライン58は、弁53を閉じ、弁54を開ける。ここで、弁53は、熱媒入口弁、弁54は熱媒出口弁として機能する。これにより、海水入口ヘッダー31を通じて送られた温海水は、第一気化器11a、第三気化器11cに導かれ、熱媒バイパスライン58を通じて海水出口ヘッダー32に送られる。
【0039】
次に第二気化器11bと第三気化器11cの二基を同時に保守点検しながら、第一気化器11a、第四気化器11dを運転する場合の運転要領を示す。第一気化器11aから排出された温海水を第四気化器11dに導き、海水出口ヘッダー32を通じて海に温海水を返送する。具体的には、第二気化器11b、第三気化器11cを保守点検するため、気化器熱媒入口弁23b、23c、気化器熱媒出出口弁24b、24cを閉じる。第一気化器11aの気化器熱媒入口弁23a、気化器熱媒出口弁24a、第四気化器11dの気化器熱媒入口弁23d、気化器熱媒出口弁24d、弁61及び弁62を開け、熱媒バイパスライン58は、弁53及び弁54を閉じる。これにより、海水入口ヘッダー31を通じて送られて温海水は、第一気化器11aに導かれた後、管路55、56を介して第四気化器11dに送られ、第四気化器11dの熱媒出口ライン22dを介して海水出口ヘッダー32に送られる。
【0040】
以上のように、第三実施形態に示すLNG気化システム50は、四基の気化器に共通の1つの熱媒バイパスライン58を備えるので、熱媒バイパスラインの本数が少なく設備費を抑制することができる。なお、四基の気化器に共通の1つの熱媒バイパスラインであっても、一部の気化器11を保守点検しながら他の気化器11を運転することが可能なことは上記の通りである。
【符号の説明】
【0041】
10 LNG気化システム
11a 第一気化器
11b 第二気化器
11c 第三気化器
11d 第四気化器
11e 第五気化器
15 気化器海水ポンプ
21 熱媒入口管路
22 熱媒出口管路
23 気化器熱媒入口弁
24 気化器熱媒出口弁
26a、26c 熱媒入口弁
26c、26d 熱媒出口弁
27、28 管路
35a 第一連結熱媒ライン
35b 第二連結熱媒ライン
36 熱媒バイパスライン
37 単独熱媒ライン
40、50 LNG気化システム
53 熱媒入口弁
54 熱媒出口弁
55、56 管路
58 熱媒バイパスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを気化させる2基以上の気化器と、
2基の気化器を一組とした、該気化器の熱媒ラインを直列に連結した1以上の連結熱媒ラインと、
温海水を前記気化器の熱媒として供給する気化器海水ポンプと、を備え、
前記気化器海水ポンプは予備機を除き、前記気化器の基数が偶数のときは前記連結熱媒ライン数と同数、前記気化器の基数が奇数のときは前記連結熱媒ライン数に1を加算した数の気化器海水ポンプを有し、前記1以上の連結熱媒ライン、又は前記1以上の連結熱媒ライン及び連結熱媒ラインに連結されない単独熱媒ラインそれぞれに、1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする低温液化ガスの気化システム。
【請求項2】
さらに前記連結熱媒ラインをバイパスする前記連結熱媒ラインと同数の熱媒バイパスラインを備え、
前記気化器海水ポンプは、前記熱媒バイパスラインへも温海水を供給可能であり、
前記連結熱媒ラインには、各気化器の気化器熱媒入口弁、気化器熱媒出口弁が設けられ、
前記熱媒バイパスラインには、熱媒入口弁及び熱媒出口弁が設けられ、
上流側の前記気化器の気化器熱媒出口弁と下流側の前記気化器の気化器熱媒入口弁とを連結する管路と、前記熱媒入口弁と前記熱媒出口弁とを連結する管路とを連結する連絡路を有し、
前記連絡路を介して前記連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスラインとを連通させ、これに連結する2基の気化器のうちいずれか1基の気化器にのみ1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする請求項1に記載の低温液化ガスの気化システム。
【請求項3】
前記連結熱媒ライン数が2以上のときは、前記熱媒バイパスラインは、2本の連結熱媒ラインに対して1本設けられ、
2本の連結熱媒ラインそれぞれの上流側の前記気化器の気化器熱媒出口弁と下流側の前記気化器の気化器熱媒入口弁とを連結する管路と、前記熱媒入口弁と前記熱媒出口弁とを連結する管路とを連結する2本の連絡路と、を有し、
前記2本の連絡路にはそれぞれ弁が介装され、
前記連絡路を介して前記連結熱媒ラインのうちいずれか一方の連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスライン、又は前記連絡路を介して前記両方の連結熱媒ラインと前記熱媒バイパスラインとを連通させ、これに連結する4基の気化器の中から任意の基数の気化器に温海水を供給可能であり、1基又は直列に接続される2基の気化器には1台の気化器海水ポンプから気化器1基分の流量の温海水を供給し、低温液化ガスを気化させることが可能なことを特徴とする請求項2に記載の低温液化ガスの気化システム。
【請求項4】
前記気化器は、シェルアンドチューブタイプの気化器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の低温液化ガスの気化システム。
【請求項5】
前記温海水は、蒸気を冷却する復水器を通過後の温海水を含む海水であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の低温液化ガスの気化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−52671(P2012−52671A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272869(P2011−272869)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【分割の表示】特願2007−103654(P2007−103654)の分割
【原出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】