説明

低温貯蔵システム

【課題】冷媒を効率よく凍結させることができる低温貯蔵システムを提供すること。
【解決手段】温度センサ20,21により外気及び冷媒14aの温度を測定して、これらの温度情報に基づいて、自然冷気導入決定部22が自然冷気を氷室13内に取り入れるかどうかを決定する。制御部24は、この決定に基づいて外気導入ファン15を制御する。低温貯蔵システム1によれば、このように外気の取り入れを温度に応じて選択的に行うことにより、冷媒を効率よく凍結させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然冷気を利用した低温貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然の氷雪などによる冷気を利用した低温貯蔵庫は、貯蔵のための定常的電力を不要とするため、省エネ型の貯蔵施設として知られている。この低温貯蔵庫は、自然冷気(外気)を利用して冷媒を凍結させ、その冷媒から発生する冷気により貯蔵物を低温の環境下で貯蔵する施設である。まず、低温貯蔵庫10の構成の基本的な構成を、図1を参照して説明する。
【0003】
低温貯蔵庫10の内部は、隔壁11により氷などの冷媒を配置した氷室13と、貯蔵物18を貯蔵するための貯蔵室12の2つの部屋に仕切られている。氷室13内においては、自然冷気を利用して冷媒を凍結させている。一方、貯蔵室12には、農作物などの貯蔵物18が貯蔵されている。この2つの部屋は、貯蔵室冷却ファン16などによって連通されて、空気のやり取りができるように構成されている。すなわち、低温貯蔵庫10は、氷室13内で発生する冷気を貯蔵室12内へ供給することにより、貯蔵室12内の低温環境を実現しているのである。
【特許文献1】特開2003−185320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような低温貯蔵庫10において、冷媒の凍結温度より自然冷気の温度が高い場合にも自然冷気を取り入れてしまうと、効率よく冷媒を凍結できない。従って、効率よく冷媒を凍結させるために低温貯蔵庫10内に選択的に自然冷気を取り入れることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、冷媒を効率よく凍結させることができる低温貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、自然冷気を利用した低温貯蔵システムであって、貯蔵物を収容するための貯蔵室と、冷媒が設置された氷室と、該氷室に自然冷気を導入するための自然冷気導入部と、自然冷気の温度を検出する外気温度検出部と、前記検出された自然冷気の温度に基づいて、前記氷室に自然冷気を導入するかどうかを決定する自然冷気導入決定部と、自然冷気を導入すると決定された場合に前記自然冷気導入部を稼働させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、自然冷気の温度を測定して、その温度に基づいて冷気の取り入れを行うかどうかを決定することができるので、自然冷気により冷媒を効率よく凍結させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の低温貯蔵システムであって、前記低温貯蔵システムは、冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部を更に備え、前記自然冷気導入決定部は、前記自然冷気の温度と前記冷媒の温度とを比較し、その結果に基づいて自然冷気を取り入れるかどうかを決定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の低温貯蔵システムであって、前記換気決定部は、前記自然冷気の温度が前記冷媒の温度より低い場合に自然冷気を取り入れると決定をすることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、自然冷気の温度が冷媒の凍結温度より低い場合に自然冷気を取り入れて冷媒を冷却する。このように、温度に応じて自然冷気を選択的に取り入れることによって、冷媒を効率よく凍結させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒を効率よく凍結させることのできる低温貯蔵システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施形態である低温貯蔵庫10を示す図であり、図1は平面図、図2は正面断面図である。これらの図において低温貯蔵庫10は、例えば冬季の寒気を利用して庫内において野菜その他の食品などを蓄えるものである。このため低温貯蔵庫10は、作業者の出入口や適宜な換気経路を残して建物全体を覆土で覆うこととし、これにより低温貯蔵庫10の全体を地中に埋設する。つまり、覆土をもって断熱材とする。
【0014】
低温貯蔵庫10の内部は、隔壁11によって分割されている。このうち図面上で右半分が貯蔵室12であり、左半分が氷室13となっている。この氷室13には、潜熱水槽たる製氷容器14が複数設置されている。また、氷室13には、氷室13内部と外部空間とを連通する外気導入管30が設けられており、外気導入管30には、外気を氷室13に取り入れるための外気導入ファン15(自然冷気導入部)が取り付けられている。この外気導入ファン15により氷室13内へ取り入れられた外気(自然冷気)によって冷媒14aを凍結させる。
【0015】
氷室13内の製氷容器14は、氷室13内に例えば多段に積層されている。各製氷容器14間に角材を配して隙間を設けて積層することで、各製氷容器14によって氷室13のほとんどが占有される場合でも、熱交換面積を確保できるようになっている。なお、貯蔵室12の底面を二重底とし、ここに製氷容器14を設置してもよい。
【0016】
このような氷室13及び貯蔵室12は、隔壁11に設けられた配管34,36を介して連通している。これらの配管34,36にはそれぞれ貯蔵室冷却ファン16(冷媒冷気導入部)、貯蔵室排気ファン17が取り付けられている。これにより、氷室13中の製氷容器14に由来する冷気が、貯蔵室冷却ファン16を通って貯蔵室12に流入して対流をなし、貯蔵室12内の貯蔵物18を冷却する。貯蔵室12で温められた暖気は上昇して貯蔵室排気ファン17に取り入れられて配管を介して氷室13に還流する。
【0017】
本実施形態によれば、上述のように、製氷容器14に貯蔵された水に寒剤(凝固点降下剤)を溶解させて水の凝固点を低下させ、この冷媒に由来する冷気を貯蔵室12内へ供給する。これにより、貯蔵室12内を低温かつ低湿度に保つことができるようになる。
【0018】
凝固点降下剤としては、例えば、エチレングリコール、塩化ナトリウム、プロピレングリコールなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0019】
次に、冷媒の凍結温度を下げることによって、貯蔵室12内の湿度が低くなる理由について説明する。
【0020】
図3は、例えば0℃での相対温度が100%である場合(図中A)と−5℃での相対湿度が100%である場合(図中B)について温度と相対湿度との関係を示す図である。同図に示すように、相対湿度は、温度が高くなるほど減少する。そして、図中AとBとを比較して分かるように、湿度100%となる温度が低い場合(本例ではBの場合)の方が、同じ温度での相対湿度は低くなる。本発明は、このような温度と相対湿度との関係を利用したものである。すなわち、貯蔵室12内の温度(およそ0(℃)〜5(℃)の範囲内)において所望の低い湿度が得られるように、冷媒に凝固点降下剤を溶解させて飽和湿度を0℃よりも低温側にシフトさせている。
【0021】
冷媒の凝固点を下げれば、冷媒がより低温側で溶解し始めるので、氷室13内において0℃より低温での湿度が100%である空気を生成することができるようになる。この空気を貯蔵室12内に供給することによって、低温低湿度の貯蔵環境を実現することができるのである。
【0022】
図3の例を用いて説明すると、貯蔵室12内の温度は例えば0〜5(℃)程度なので、冷媒の凍結温度(つまり凝固点)を−5(℃)にすれば、同図Bの場合のように温度−5℃で湿度100%となり、貯蔵室12内の湿度を約70(%)〜80(%)の範囲内にすることができる。
【0023】
なお、本実施形態では、冷媒の凍結温度が0℃以下となるので、湿度が高くともより低い温度が必要な場合には、冷媒で冷やされて0℃以下となった状態の空気を貯蔵室12に導入することにより、貯蔵室12を0℃以下の低温にすることも可能である。
【0024】
次に、図4を参照して低温貯蔵システム1の構成及び処理プロセスを説明する。同図に示すように、低温貯蔵システム1は、温度センサ20,21(温度検出部)、自然冷気導入決定部22、制御部24などを設けて構成されている。この低温貯蔵システム1は、以下の処理プロセスにより、外気の温度に応じて選択的に氷室13内への外気の取り入れを行っている。
【0025】
すなわち、温度センサ20は冷媒14aの温度を、温度センサ21は外気の温度をそれぞれ測定する。自然冷気導入決定部22は、温度センサ20,21から提供された温度情報に基づいて氷室13内に外気を取り入れるかどうかを決定する。具体的には、例えば、外気が一定の温度以下である場合に外気を取り入れる決定を行うようにする。制御部24はこの決定に基づいて外気導入ファン15の動作を制御する。
【0026】
このように、氷室13内への外気の取り入れを選択的に行うようにすれば、より効率よく氷室13内を冷却することができる。
【0027】
なお、自然冷気導入決定部22は、冷媒の凝固点降下の大きさを考慮して、外気の取り入れを決定するようにしてもよい。すなわち、冷媒の凍結が進行するにつれて、未凍結の液体部分に含まれる凝固点降下剤の濃度が高くなり、凍結温度が次第に低下することがある。このため、冷媒の未凍結部分の温度を冷媒の凍結温度とみなして、外気がこの凍結温度以下の場合に外気を取り入れるようにしてもよい。なお、冷媒の凍結温度は、例えば、外気の温度と冷却時間とに基づいて推定してもよいし、同様に外気温と冷却時間とに基づいて推定した冷媒の凍結状況から凝固点降下剤の濃度を推定し、この濃度と冷媒の凍結温度の対応関係を用いて求めてもよい。或いは、凝固点降下剤濃度を測定し、上記の対応関係を用いて推定してもよい。
【0028】
以上のように、外気を選択的に取り入れることによって、貯蔵室12、及び氷室13内の冷却効率を高めることができる。また、無駄なファンの運転などがなくなるので、省エネルギーな低温貯蔵庫の設計が可能となる。
【0029】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0030】
[実施例1]
<<外気温度と冷媒温度との相関関係>>
外気温度と氷室内の冷媒温度との相関関係を調べるために、両者の温度変化を測定した。なお、冷媒としてはエチレングリコール;濃度6(vol%)、凍結温度−3(℃))溶液を用いた。
その結果を図5に示す。同図において、凝固点降下剤を溶解させることによって、2月末の時点で−5(℃)の氷を作ることができた。また、12月上旬から5月中旬までの期間内において、外気の温度は約−20(℃)〜25(℃)の温度範囲内であった。一方、氷室13内の冷媒の温度は、12月9日直後の冷媒冷却期間を除けば、−5(℃)〜0(℃)程度の温度範囲内であった。
以上より、本実施形態の低温貯蔵庫10は、氷室13内の冷媒の温度変化が小さいので、春先でも低温貯蔵庫内を低温度に保つことができる。
【0031】
[実施例2]
<<低温貯蔵庫の冷却性能>>
本実施形態の低温貯蔵庫10内の貯蔵環境を調べるために、貯蔵室12内の温度及び湿度の時間変化を測定した。
その結果を図6に示す。同図に示すように、4月上旬から6月上旬までの期間内において、貯蔵室12内の気温は、約2(℃)〜5(℃)の温度範囲内であった。さらに、貯蔵室12内の湿度は、60(%)〜75(%)の範囲内であった。
以上より、本実施形態の低温貯蔵庫10は、低温低湿度な貯蔵環境を実現できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】低温貯蔵庫の一実施形態を示す平面図である。
【図2】低温貯蔵庫の一実施形態を示す横断面図である。
【図3】温度と相対湿度との関係を示す図である。
【図4】低温貯蔵システムのシステム構成図である。
【図5】外気温度及び冷媒溶液温度の時間変化を示す図である。
【図6】本実施形態の低温貯蔵システム内の温度及び湿度の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 低温貯蔵システム
10 低温貯蔵庫
11 隔壁
12 貯蔵室
13 氷室
14 製氷容器
14a 冷媒
15 外気導入ファン
16 貯蔵室冷却ファン
17 貯蔵室排気ファン
18 貯蔵物
20,21 温度センサ
22 自然冷気導入決定部
24 制御部
30 外気導入管
34,36 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然冷気を利用した低温貯蔵システムであって、
貯蔵物を収容するための貯蔵室と、
冷媒が設置された氷室と、
該氷室に自然冷気を導入するための自然冷気導入部と、
自然冷気の温度を検出する外気温度検出部と、
前記検出された自然冷気の温度に基づいて、前記氷室に自然冷気を導入するかどうかを決定する自然冷気導入決定部と、
自然冷気を導入すると決定された場合に前記自然冷気導入部を稼働させる制御部と、
を備えることを特徴とする低温貯蔵システム。
【請求項2】
請求項1に記載の低温貯蔵システムであって、
前記低温貯蔵システムは、冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部を更に備え、
前記自然冷気導入決定部は、前記自然冷気の温度と前記冷媒の温度とを比較し、その結果に基づいて自然冷気を取り入れるかどうかを決定することを特徴とする低温貯蔵システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の低温貯蔵システムであって、
前記自然冷気導入決定部は、前記自然冷気の温度が前記冷媒の温度より低い場合に自然冷気を取り入れると決定をすることを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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