説明

低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法

【課題】
この発明は、原料穀物・原料雑穀を熱風発生機からの高温加湿熱風200℃〜320℃の温度帯で通過させる穀物類・雑穀類の処理室を設け、20秒〜200秒間加熱することによって好適な低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品を得ようとするものである。
【解決手段】
可食性の穀物類及び雑穀類を、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を20〜200秒間通過させて処理することにより、低発泡で膨化した穀物類及び雑穀類を得ることを特徴とする低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法に関し、従来の膨化製品の製造時に穀物類や雑穀類を水に浸漬する際に発生する排水の処理を不要とするとともに、焙煎等に際して必要であった長時間の前処理(前記水への浸漬処理)を不要として、作業時間の短縮や排水処理の合理化を図ることができる低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
現在、穀物類・雑穀類の膨化商品は加圧焙煎、直火焙煎によって製造されている商品がほとんどであるが、この焙煎による製法は加工前処理として浸漬(水に漬ける、一定温度管理の湯に漬ける)工程を設け、その後加熱して膨化させる必要がある。この場合、原料によって異なるが、数時間から数10時間の前処理が必要とされている。
さらに、浸漬に使われた水や温水は後に不用となって排水処理を施されるが、原料によっては栄養素の流出や、脱色水、汚水、異臭が排出されるため、それらの除去設備などの排水浄化設備が必要となる。
【0003】
そこで、上述のような問題点を解消する目的で、短時間加熱による穀物類の処理方法が種々提案されている。
例えば、特開2006−174756号公報(特許文献1)では、加熱玄米・玄米この製造において、無浸漬または浸漬した玄米を短時間に品温が120℃〜200℃に達するように急速加熱して栄養素の損失が少なく、適度に糊化度が高い膨化または過加熱玄米をつくり、更にこれを平均粒径が40μm以下に粉砕して、食感のよい、しかも酸化を抑制した保存性のよい、食品への利用性が高い玄米この製造方法が示されている。
その際の加熱温度は100℃〜200℃、加熱時間は1.5〜8分である。
【0004】
特開2005−229832号公報(特許文献2)では、小麦粒またはライ麦粒を水に浸漬し、乾燥し、小麦粒またはライ麦粒のパフ現象を伴いながら焙煎し、粉砕して製造される小麦粉食品用の焙煎小麦粉または焙煎ライ麦粉が示されている。
その際の加熱温度は約280〜350℃、加熱(焙煎)時間は約30〜60秒である。
【0005】
特開2004−97081号公報(特許文献3)では、原料として精白米を使用し、浸漬工程、蒸米工程、乾燥工程、常温冷却工程、膨化工程、粉砕工程の各工程を有し、米の水分は、浸漬工程で25〜35%、乾燥工程で12〜15%、膨化工程で2〜5%とし、膨化工程において、膨化機を使用して250〜350℃で10〜30秒膨化させることが示されている。
その際の加熱温度は約250〜350℃、加熱(焙煎)時間は約10〜30秒である。
【0006】
特開平2−69152号公報(特許文献4)では、胚芽に含水率が13.5〜20%になるよう加水した後、温度200〜250℃、時間10〜40秒間の条件下で加熱膨化処理することが示されている。
その際の加熱温度は約250〜350℃、加熱(焙煎)時間は約10〜30秒である。
【特許文献1】特開2006−174756号公報
【特許文献2】特開2005−229832号公報
【特許文献3】特開2004−97081号公報
【特許文献4】特開平2−69152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特開2006−174756号公報(特許文献1)、特開2005−229832号公報(特許文献2)、特開2004−97081号公報(特許文献3)および特開平2−69152号公報(特許文献4)のいずれの先行技術においても、浸漬工程を経た後に急速加熱することにおいて共通している。
したがって、やはり長時間の浸漬工程という前処理が必要であり、栄養素の流出という問題は何も解消されていなかった。
【0008】
そこで本発明者が鋭意研究した結果、雑穀加工にまったく実績のない水(噴霧水)と加熱のためのLPGバーナー熱を温度コントロールしながら焙煎するという加熱膨化処理が時前記問題点の解消に役立つことが判明し、この発明の完成に至ったものである。
すなわちこの発明は、原料穀物を熱風発生機からの高温加湿熱風200℃〜320℃の温度帯で通過させる穀物類・雑穀類の処理室を設け、20秒〜200秒間加熱することによって好適な低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法は、可食性の穀物類及び雑穀類を、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を20〜200秒間通過させて処理することにより、低発泡で膨化した穀物類及び雑穀類を得ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法は、前記低発泡における膨化度が、1.1〜2.5倍の穀物類及び雑穀類を得ることをも特徴とするものである。
【0011】
またこの発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法は、前記可食性の穀物類及び雑穀類が、白米または玄米からなる米、もち種またはうるち種からなる黒米、もち種またはうるち種からなる赤米、もち種またはうるち種からなるきび、もち種またはうるち種からなるあわ、もち種またはうるち種からなるひえ、たかきび、アマランサス、大麦、はと麦、そば種子、小豆、大豆類から選ばれてなることをも特徴としている。
【0012】
従来の一般的な加湿加熱方法は、ボイラーで作った沸点が大気圧下で100℃の飽和蒸気をさらに加熱してヒートアップさせた加熱水蒸気を利用するものであるが、この発明においては、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を20〜200秒間通過させて処理することを特徴とするものである。
そして、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を形成するに際しては、先ずバーナーの燃焼(LPG使用)と同時に、別途噴霧装置によりバーナーの炎に向けて高圧水を噴霧(1〜4リットル/分)することにより、従来の場合とは異なって燃焼温度の制御、水量の調整によって自由自在の温度及び湿度に調整した熱媒体(高温加湿熱風)を得る。
そして、この混合された熱媒体を製品処理装置へ送風し、その処理時間をコントロールすることにより、当初の目的としている低発泡雑穀類、低発泡穀物類からなる1次加工製品を完成することができた。
【発明の効果】
【0013】
この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法によれば、原料穀物を加湿熱風によって処理された加工品は香ばしく、また風味もよく、種々の用途に違和感なく使用することができる、低発泡の穀物類もしくは低発泡の雑穀類からなる1次加工製品を得ることができるようになった。
また、得られた低発泡の穀物類もしくは低発泡の雑穀類からなる1次加工製品は、低発泡によって微細な亀裂が発生し、炊飯時の吸水性に優れ、かつ遠赤外線効果や殺菌効果も認められた。
なお、原料穀物を加湿熱風によって処理するに際しては、LPG燃焼時に必要な空気を比例制御で行なっているため、加湿熱風内には酸素が激減しており、酸化や変色も少ない低発泡の穀物類もしくは低発泡の雑穀類からなる1次加工製品が得られることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法の実施の形態を実施例に基いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法は、可食性の穀物類及び雑穀類を、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を20〜200秒間通過させて処理することにより、低発泡で膨化した穀物類及び雑穀類を得るものである。
そこで、前記可食性の穀物類及び雑穀類として、黒米、赤米、いなきび、あわ、たかきび、アマランサス、大麦、はと麦、黒千石大豆、青大豆を選んだ上、発生炉温度を250℃に設定し、かつ3.2リットル/分の水量の高圧水を噴霧しつつ、30秒〜110秒間処理した。
その結果を表1に示す。得た一次加工製品は、低発泡における膨化度が、1.1〜2.5倍であり、そのまま食してもサクサクとおいしいものであった。
【表1】

【0016】
その後、前記可食性の穀物類及び雑穀類として、黒米、赤米、いなきび、あわ、たかきび、アマランサス、大麦、はと麦、黒千石大豆、青大豆、うるちあわ、ひえを選んだ上、再度発生炉温度を200〜320℃に設定し、かつ1〜4リットル/分の水量の高圧水を噴霧しつつ、20秒〜200秒間処理した。
その結果を表2に示す。

【表2】

【0017】
この実施例においても、黒米、赤米、いなきび、あわ、たかきび、アマランサス、大麦、はと麦、黒千石大豆、青大豆の結果はまったく差異が見られず、得た一次加工製品は、低発泡における膨化度が、1.1〜2.5倍であり、そのまま食してもサクサクとおいしいものであった。
また、うるちあわ、ひえも同様にそのまま食してもサクサクとおいしいものであった。
【0018】
図1〜図3は、前記実施例において用いられた可食性の穀物類及び雑穀類の加工前と加工後の変化を示す写真である。それぞれ以下のような結果が得られている。
はとむぎ:外観での形状、色などはほとんど変化がない。食感は硬いが食べられる。
大麦:色目は茶色っぽく変色するが、このまま食べられるレベルには仕上がっている。
そば実:表面の色が濃く変化する。食感はサクサクしていておいしい。
とうもろこし:加工時間を長めに設定するとポップコーンになるので要注意。
いなきび:黄色の色相は認められなくなるが食感は問題ない。色相を残した状態では食べたときに苦味が残る。
もちあわ:外観での違いはほとんど認められなかった。
アマランサス:膨化時2つに割れ、雪だるまのような形状になる。食感は非常に柔らかく食べやすい。
たかきび:外観での形状変化はほとんどない。色目は濃くなるが、食味は香ばしく良好。
もち黒米:膨化しやすい特性を持っている。全体的にきれいに仕上がる。
もち赤米:表面の色は非常に鮮やかになる。食味も香ばしくおいしい。
黒千石大豆:外皮は割れるものの剥がれることはない。食味は非常に良好である。
青大豆:外皮は割れるものの剥がれることはない。食味は非常に良好である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上のように構成したこの発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法は、前記実施例に示した以外の穀物類や雑穀類にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法を適用した可食性の穀物類及び雑穀類(第1グループ)の加工前と加工後の変化を示す写真である。
【図2】この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法を適用した可食性の穀物類及び雑穀類(第2グループ)の加工前と加工後の変化を示す写真である。
【図3】この発明の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法を適用した可食性の穀物類及び雑穀類(第3グループ)の加工前と加工後の変化を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性の穀物類及び雑穀類を、温度が200〜320℃の高湿度の熱風帯域を20〜200秒間通過させて処理することにより、低発泡で膨化した穀物類及び雑穀類を得ることを特徴とする低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法。
【請求項2】
前記低発泡における膨化度が、1.1〜2.5倍の穀物類及び雑穀類を得ることを特徴とする低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法。
【請求項3】
前記可食性の穀物類及び雑穀類が、白米または玄米からなる米、もち種またはうるち種からなる黒米、もち種またはうるち種からなる赤米、もち種またはうるち種からなるきび、もち種またはうるち種からなるあわ、もち種またはうるち種からなるひえ、たかきび、アマランサス、大麦、はと麦、そば種子、小豆、大豆類から選ばれてなることを特徴とする請求項1または2に記載の低発泡穀物類及び低発泡雑穀類製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−136656(P2010−136656A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315102(P2008−315102)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(504028067)株式会社オオキ (2)
【Fターム(参考)】