説明

低空頭空間における穴の掘削方法

【課題】駅舎の増改築において、施工機械の占有面積を極力小さくして、列車や乗客の邪魔にならないようにして迅速に施工する。
【解決手段】プラットホーム10に開口1を形成し、地盤面にスタンドパイプ3を設置し、駆動装置5を設置する。傾倒式リーダ42を有するリバースサーキュレーション掘削機4を設置し、天井81を有する囲い8を設置する。リバースサーキュレーションホース6を連結して掘削を開始し、予めホームの下に準備しておいた短尺のロッド7を継ぎ足して所要の深度まで掘削する。所定の深度に達したところで、駆動装置5を引き上げてロッド7の連結を解除して回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道構造物の建設時のホーム下、線路間あるいは線路側のように、上部空間が狭い場所に杭などを構築する際の穴の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
営業中の鉄道の駅舎にホームを増設したり、また、駅ビルを増改築する場合、基礎工や土留工は、鉄道の営業の障害とならないよう、特に、利用者の障害とならないように運行終了後の夜間に実施せざるを得ず、また、レール上には電車用電源を供給する架線があるため、工事機械が接触しないようにしなければならないため、通常の施工機械が使用できず、工期がかかるという問題がある。
新たな基礎は、線路と線路の間やホームに構築することになるが、構築の際のホームの占有面積、特に占有幅を極力小さくして、乗客がホームを移動したり、待ち行列の形成を邪魔しないようにする必要がある。
【0003】
上部空間の小さい施工現場に適用可能な杭穴形成用掘削機として、特許第2645976号公報には、図6に示すように、短尺リーダマストを起伏自在にし、左右にシリンダーによる昇降脚を設けた駆動装置に筒状回転軸の下方を下側に突出させて上下に貫通させて立上げ、この駆動装置をリーダマストのリーダに昇降自在に係合させ、スクリューオーガ軸等の掘削軸に形成した把持ドラムを前記筒状回転軸内周に係止可能とした掘削機が開示されている。この掘削機は、回転軸内に上方より鋼管やオーガを吊り込み、回転軸の下部の把持ドラムに掘削軸を把持させて掘削を行い、1ピッチ分下降すると回転軸とのロックを解き、回転軸を昇降脚によって押し上げて次段の下方の尺取り虫式に掘削をおこなうものである。
しかしながら、この掘削機は、もり変え作業が煩雑であって時間がかかり、工期が長くなる。
【特許文献1】特許2645976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、作業空間の高さが低い施工現場において、迅速な掘削作業を可能とすると共に、施工機械の占有面積を極力小さくして、列車や乗客の邪魔にならないようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ホームに開口を設けてリバースサーキュレーション掘削機を地盤面に設置し、開口を覆う天井を有する囲いを設置し、囲い内においてリバースサーキュレーション用のロッドを継ぎ足して所定の深度まで掘削することによって、ホームの利用者への悪影響を解消し、施工を迅速におこなえるようにした。
また、ホーム下の地盤にピットを形成することによって、更にホームの占有面積を小さくして、ホーム利用者への影響を小さくしたものである。
【0006】
更に、線路の間にピットを形成し、ピット内にリバースサーキュレーション掘削機を設置してピットを覆う天井を有する囲いを設置し、ピット内でリバースサーキュレーション用のロッドを継ぎ足して所定の深度まで掘削することによって、列車の運行に支障を与えることなく地盤に穴を形成できるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明方法によれば、駅舎や鉄道線路内の低空頭の現場に基礎穴を形成する場合、迅速に施工することが可能であり、プラットホームの下の地盤を掘削する場合でも、占有幅が小さく、ホーム利用者の邪魔になることなく、かつ、工事用機器を架線に接触させることなく安全に工事を進めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例1
図1に示すように、鉄道駅のプラットホーム10に開口1を形成する。開口1は、線路の長手方向を長辺とし、ホームの幅方向を短辺として長方形であり、短辺を極力小さくしてホームを占有する幅を小さくし、ホームの利用者の往来等の障害にならないようにする。
【0009】
図2(1)に示すように、ホーム10の下の地盤面にスタンドパイプ3を設置し、内部を400〜600mm掘削し、スタンドパイプ3内に回転ビット41を設置する。リバースサーキュレーション掘削機4を開口1を通してホーム10の下に導入する。
【0010】
図2(1)に示すように、リバースサーキュレーション掘削機4をスタンドパイプ3の上に横移動して設置する。この掘削機4は、基台40に傾倒式リーダ42が設けてあり、傾倒式リーダ42を上下動するリバースサーキュレーション用の水中サンドポンプ51を内蔵する駆動装置5を有するものである。傾倒式リーダ42を倒した状態で開口1からホーム10の下に導入する。
図3に示すように、スタンドパイプ3の近傍には、リバースサーキュレーション用のロッド7を収納できる格納台車46を設置して、掘削深度に応じた必要本数のロッドを収納しておく。
【0011】
図3に示すように、掘削機4の設置が完了したら、高さ2m程度の天井81を有する囲い8をホーム上に設置し、ホーム利用者には、機械類が設置されているのが見えないようにすると共に、囲い8の内面にはフェルトやグラスウールからなる吸音・遮音材を設置し、機械音の騒音がホームの乗客に漏れ出ないようにする。
【0012】
図2(3)に示すように、駆動装置5にベント管61を介してリバースサーキュレーションホース6を連結し、駆動装置5によって回転ビット41を回転させ、スタンドパイプ3内に泥水を供給しながら掘削する。掘削土砂は駆動装置5に内臓された水中サンドポンプ51によって外部に排除される。掘削土砂と泥水は分離され、土砂は処分され、泥水は調整されて再使用される。
【0013】
移動可能なロッド車輪付格納台車46には、長さが1.5m程度のリバースサーキュレーション用のロッド7が掘削深さに間に合う数が搬入されて掘削位置の近くに取り出しやすいように準備してある。
回転ビット41によって地盤を掘進して駆動装置5が下降してリーダ42の下端に達したら、駆動装置5とベント管61の連結を解除して駆動装置5からはずし、図2(4)に示すように、ベント管61にロッド7を連結して図2(5)に示すように吊り上げて駆動装置5に連結し、図2(6)に示すように、回転ビット41によって更に地盤を掘削していく。
【0014】
図2(7)に示すように、回転ビット41による掘進によって駆動装置5がリーダ42の下端に達したら、ホース6とロッド7の連結を解いて、新たなロッド7を継ぎ足して掘削する。この作業を回転ビット41が所定の深度に達するまで繰り返す。
所定の深度に達したところで、掘削を停止し、駆動装置5を引き上げてロッド7の連結を解除して回収する。
掘削穴内に鉄筋籠を吊降ろし、コンクリートを打設して場所打杭を造成する。
【0015】
図4に示すように、ホーム10の下の地盤面を掘削してピット2を形成して掘削機4を設置する地盤面21を低くすることによって、ホームに設置する囲いを更に小さくすることができる。
【0016】
実施例2
図5に示すように、線路の間にピット2を形成し、ピット2内にケーシングをスタンドパイプ3としてピット底面21に設置し、スタンドパイプ3内に回転ビット41を設置する。
ピット2の深さは、掘削機4の頭部が列車の通過の障害とならないものとする。実施例1と同様に、リーダ42が傾倒可能なリバースサーキュレーション掘削機4を駆動装置5がスタンドパイプ3の上部に位置するようにセットし、傾倒式リーダ42を起立させ、駆動装置5をスタンドパイプ3内の回転ビット41に連結する。
【0017】
施工手順は、図3に示した実施例1と同じである。駆動装置5にリバースサーキュレーションホース6を連結し、駆動装置5によって回転ビット41を回転させてスタンドパイプ3内を掘削する。掘削土砂は駆動装置5に付設された水中サンドポンプ51によって吸引されて掘削土砂と泥水に分離され、土砂は外部に搬出される。分離された泥水は、調整されて再使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1を説明する平面図。
【図2】本発明の工程説明図。
【図3】本発明の実施例1を説明する正面図。
【図4】本発明の実施例1の変形例の正面図。
【図5】本発明の実施例2の正面図。
【図6】従来の低空頭用掘削機。
【符号の説明】
【0019】
1 開口
10 プラットホーム
2 ピット
3 スタンドパイプ
4 掘削機
42 傾倒式リーダ
8 囲い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームに開口を設けてリバースサーキュレーション掘削機を地盤面に設置し、開口に囲いを設置し、囲い内においてリバースサーキュレーション用のロッドを継ぎ足して所定の深度まで掘削する低空頭空間における穴の掘削方法。
【請求項2】
請求項1において、ホーム下の地盤にピットを形成してリバースサーキュレーション掘削機をピットの地盤面に設置する低空頭空間における穴の掘削方法。
【請求項3】
線路の間にピットを形成し、ピット内にリバースサーキュレーション掘削機を設置してピットを覆う囲いを設置し、ピット内でリバースサーキュレーション用のロッドを継ぎ足して所定の深度まで掘削する低空頭空間における穴の掘削方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−39921(P2007−39921A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223176(P2005−223176)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】