説明

低粘度機能性流体

グリコール、および、脂肪酸およびホスフェートエステル(例えばアルキル、アルケニルまたはアリールアルコールのホスフェートエステル)を含む添加剤パッケージを含む低粘度の機能性流体を記載する。該流体は、DOT 3またはDOT 4のブレーキ流体として使用するために特に良好に好適であり、そして強い潤滑性および腐食防止を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本件は、米国出願整理番号第61/112,466号(2008年11月7日出願)(これは全趣旨で参照により本明細書に組入れる)の出願日の利益を主張する。
【0002】
本開示は、種々の用途、および特にブレーキ流体として有用な低粘度の機能性流体に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
新たに開発された設備,例えば電子または自動のアンチロックブレーキシステム、安定制御システム、および回生ブレーキシステムは、適切な物理的および性能的な特性を有する高性能の液圧流体(例えばブレーキ流体)に対する要求を生じさせてきた。特に、高い潤滑性を有してブレーキノイズを低減または排除する一方、腐食を低減することによりブレーキの寿命を改善する、高性能のブレーキ流体に対する強い要求がある。米国政府は、DOT(Department of Transportation)指定(例えば、DOT 3,DOT 4,DOT 5.1等)のシステムを用い、ブレーキ流体として用いる機能性流体の指定および保証を支配する基準を発展させてきた。基準は、Federal Motor Vehicle Safety Standard 116(”FMVSS 116”)によって実施される。加えて、特定の基準設定機関,例えばSociety of Automotive Engineers(”SAE”)およびInternational Standards Organization(”ISO”)は、ブレーキ流体についてのこれら自身の基準および保証を開発してきた。SAE基準J1703は、以下に示すものを包含する特定の物理特性を有する非石油ブレーキ流体を網羅する。SAE基準J1704は、SAE J1703基準のものの上記の性能のレベルを実現する「ボレートエステル系ブレーキ流体」を網羅する。同様に、ISO 4925は、米国外で用いる多くのブレーキ流体指定,例えば「クラス3」、「クラス4」、「クラス5−1」、および「クラス6」を与える。
【0004】
FMVSS 116,SAE J1703,SAE J1704,およびISO 4925は、厳密な物理特性および性能要求を、特に最小乾燥平衡還流沸点(ERBP)、最小湿潤平衡沸点(WERBP)、および最大低温(−40℃)粘度に対して与える。これらはまた、適切な耐食性、安定性および他の特定の物理特性,例えばpH、保存アルカリ度、ゴム膨潤等の維持を要求する。SAE J1703(Rev.April 2004)およびJ1704(Rev.April 2004)およびFMVSS 116の全部を参照により本明細書に組入れる。
【0005】
ブレーキ流体についての最近の基準を以下に記載する。
【0006】
【表1】

【0007】
このような望ましい機能性流体を与えるための1つの例示的な解決は、共有の米国特許出願公開第2007/0027039号(発明の名称”Low Viscosity Functional Fluids”)で紹介された。そして全趣旨で参照により本明細書に組入れる。有利には、これらの先行技術の機能性流体の望ましい特性が、特に潤滑性および耐食性の領域で更に改善できることが見出されてきた。更に、このような改善は、顕著なコストを被ることなく実現できることを発見した。更に、新規な含有成分、更にこのような機能性流体の先行技術の含有成分または他の代替の含有成分の使用を経て実際にコストを低減することが可能である場合がある。
【0008】
多くのより新しいブレーキシステムマスターシリンダーは、ブレーキを作動させる際にマスターシリンダーピストンのゴムカップで係合されるプラスチックライニングを含む。多くの公知のブレーキ流体は、このような用途において不十分な潤滑性を与え、過度なノイズおよび摩耗をもたらすことを見出した。改質された機能性流体の使用を経て、このようなノイズおよび摩耗の低減が可能である場合がある。
【0009】
FMVSS 116,J1703,J1704,およびISO 4925は、各々、規定の試験手順(ここで、種々の金属の金属ストリップを、5%(体積基準)の水とブレーキ流体との混合物中に、特定時間(120時間)、特定温度(100℃)で浸す)に基づく腐食仕様を含む。FMVSS 116,J1703,J1704,およびISO 4925の基準は、実際の路面条件(これに多くのブレーキ流体を供する)を、特に米国の北部気候(しばしば冬には氷の蓄積を制御するための塩分が付与される)での路面について、信頼性よく再現しないことを見出した。結果として、腐食を評価するために用いる試験手順を、塩化物塩(例えばNaCl)を水/ブレーキ流体混合物に添加することによって改変することが提案されてきた。しかし、現在のブレーキ流体は、DOT 3,DOT 4,J1703,J1704およびISO 4925の流体のために必要な耐食性のレベルを、この改変された試験に供する場合に与えることができない。例えば、Shannon,米国特許第6,558,569号、およびPark,米国特許第6,339,050号は、アルキルグリコールボレートエステル、アルキルグリコール、および腐食防止剤パッケージを含むDOT 4ブレーキ流体を記載する。しかし、これらは、塩水でのブレーキ流体の汚染の問題を扱わず、そして、開示される流体が、塩水環境に供した場合にSAE J1703/J1704またはISO 4925の腐食基準に適合できることの示唆を与えない。よって、上記の問題を扱う機能性流体に対する要求が挙がっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要約
少なくとも1種のグリコールならびに少なくとも1種の脂肪酸および少なくとも1種のホスフェートエステルを含む添加剤パッケージを含む流体組成物を提供する。特定の例示の態様において、少なくとも1種の脂肪酸は、少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個、および更により好ましくは少なくとも15個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸である。別の例示の態様において、少なくとも1種の脂肪酸は、35個以下、好ましくは30個以下、および更により好ましくは25個以下の炭素原子を有する。更なる例示の態様において、脂肪酸はモノ不飽和である。添加剤パッケージ中の脂肪酸は、一般的には、流体組成物の少なくとも約0.01質量%、好ましくは少なくとも約0.04質量%、およびより好ましくは少なくとも約0.08質量%である量で存在する。脂肪酸は、一般的には、流体組成物の0.4質量%以下、より好ましくは約0.2質量%以下、および更により好ましくは約0.15質量%以下である量で存在する。
【0011】
ホスフェートエステルは、一般的には、アルコールおよびリン酸(H3PO4)のモノ、ジ−またはトリ−エステルである。アルコールは、好ましくは、式R1−R2−OHを有し、式中、R1は置換または非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であって少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、更により好ましくは少なくとも4個、および更により好ましくは少なくとも6個の炭素原子を有する。R1は、30個以下、好ましくは28個以下、更により好ましくは26個以下、および更により好ましくは24個以下の炭素原子を有する。R2は、好ましくはアルキル基またはアルコキシ基であって2〜6個の炭素原子を有する。1つの例示の態様において、R2は、エトキシ基(−O−CH2−CH2−)である。
【0012】
少なくとも1種のグリコールおよび添加剤パッケージを含み、流体を、ガラス繊維/ポリアミド66のコンポジットを含む第1の表面と、80ショアA硬度EPDMゴムを含む第2の表面との間に適用したときに、該第1の表面と該第2の表面との間の100秒間の摺り係合の後の摩擦係数が約0.07未満である、流体組成物もまた提供する。特定の例示の態様において、100秒間の摺り係合の後の摩擦係数は約0.03未満である。他の例示の態様においては、流体の平衡還流沸点が少なくとも約230℃である。別の例示の態様においては、流体の動粘度が、−40℃にて約1800cSt以下である。特定の例示の用途において、流体は、マスターシリンダー潤滑剤として用いる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の低粘度グリコール系流体、ならびにオレイン酸および/またはホスフェートエステルを含む2つの改質型の流体の摩擦データのプロットである。
【図2】図2は、第2の低粘度グリコール系流体、および種々の量のホスフェートエステルを含む流体の2つの改質版の摩擦データのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示は、1種以上のグリコール、ならびに少なくとも1種の脂肪酸およびホスフェートエステルを含む添加剤パッケージを含む機能性流体に関する。脂肪酸およびホスフェートエステルは、好ましくは、流体が塩水で汚染されている場合に、摩擦で係合された表面の潤滑を補助して腐食を防止するのに有効な量で存在する。
【0015】
本明細書に記載する機能性流体は、一般的には、約20質量%超の総グリコール、より好ましくは約40質量%超の総グリコール、および更により好ましくは約60質量%超の総グリコールを含む。総グリコール量が約70質量%超であることは更により好ましく、そして総グリコール量が約80質量%超であることは特に好ましい。グリコールの総量は、好ましくは総機能性流体組成物の100質量%未満であり、好ましくは総流体組成物の約99質量%以下である。
【0016】
グリコール成分は、1種、2種、3種またはこれより多いグリコール、ポリグリコール、または両者の一部、実質的に全部(少なくとも90質量%または少なくとも95質量%)または全部で形成できる。好ましくは、グリコール成分のグリコールまたはポリグリコールは、式Iの式:
【0017】
【化1】

【0018】
を有する。
【0019】
1、R2、R3、R4、R5の各々は、水素(H)、または1〜8個もしくはこれより多い炭素原子を含有するアルキル基、またはこれらの混合物のいずれかであり、例えば仮出願整理番号第60/976,010号(2007年9月28日出願)、発明の名称”Functional Fluid Composition”(全趣旨で参照により本明細書に組入れる)に開示されるものである。R1は、グリコールまたはポリグリコールがアルコキシグリコールエーテルである、1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基(例えば、アルキル末端封鎖グリコールエーテル)であることが好ましい(単にR1がHであるグリコールとは逆に)。典型的には、R1は、グリコール成分、流体組成物全体、または両者の、90質量%未満、より典型的には50質量%未満、および更に場合により30質量%未満または20質量%未満について、Hである。用語「ポリグリコール」は、グリコール,例えば、式Iでnが少なくとも2またはこれを超えるものを意味する。用語「グリコール」は、全てのポリグリコールを包含する。グリコール成分が、R1がアルキル基であるもの、およびR1がHであるものの両者のグリコールを包含できることを理解すべきである。
【0020】
グリコール成分は、n=1であるグリコールを包含できる。含まれる場合、このようなグリコールはグリコール成分の約5質量%未満である。好ましくは、グリコール成分のグリコールは、グリコール(例えばアルコキシグリコール)であってn=2であるもの、グリコール(例えばアルコキシグリコール)であってn=3であるもの、グリコール(例えばアルコキシグリコール)であってn=4またはこれより多いもの、またはこれらの任意の混合物である。より好ましいグリコール成分は、n=2、n=3、およびn=4またはこれより多い、グリコール(例えばアルコキシグリコール)の混合物を含む。n=2またはこれより多いグリコールがグリコール成分中および/または機能性流体全体中に、グリコール成分、機能性流体全体または両者の少なくとも約50質量%、より好ましくは少なくとも約60質量%、およびより好ましくは少なくとも約75質量%である量で存在することも好ましい。nが2またはこれより多いグリコールの量は、更により好ましくは少なくとも約90質量%である。
【0021】
n=2またはこれより多いグリコールが、グリコール成分中および/または機能性流体全体中に、約99質量%以下の量で存在することもまた好ましい。
【0022】
n=2のグリコールは、総グリコール成分の好ましくは少なくとも約0.5質量%、より好ましくは総グリコール成分の少なくとも約1質量%、および更により好ましくは総グリコール成分の少なくとも約2質量%である量で存在する。n=2であるグリコールは、総グリコール成分の好ましくは約10質量%以下、より好ましくは総グリコール成分の約8質量%以下、および更により好ましくは総グリコール成分の約7質量%以下である量で存在する。
【0023】
n=3であるグリコールは、総グリコール成分の好ましくは約80質量%以下、より好ましくは総グリコール成分の約70質量%以下、および更により好ましくは総グリコール成分の約66質量%以下である量で存在する。n=3であるグリコールは、総グリコール成分の好ましくは少なくとも約40質量%、より好ましくは少なくとも約50質量%、および更により好ましくは総グリコール成分の少なくとも約58質量%である量で存在する。
【0024】
n=4またはこれより多いグリコールは、総グリコール成分の好ましくは約45質量%以下、より好ましくは約40質量%以下、および更により好ましくは約35質量%以下である量で存在する。n=4またはこれより多いグリコールは、総グリコール成分の好ましくは少なくとも約15質量%、より好ましくは少なくとも約20質量%、および更により好ましくは少なくとも約25質量%である量で存在する。好ましいグリコール成分としては、R1基がメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはこれらの組合せを含むものが挙げられる。
【0025】
限定しないが、有用なグリコール(例えばアルコキシグリコールまたはその他)の例としては、メトキシトリグリコール、メトキシジグリコール、メトキシテトラグリコール、メトキシポリグリコール(例えば、メトキシトリグリコール、メトキシテトラグリコール、および他のグリコールであってR1がCH3でかつnが5またはこれより大きいもの、の混合物)、エトキシトリグリコール、エトキシジグリコール、エトキシテトラグリコール、プロポキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール(例えば、トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブトキシジグリコール(例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブトキシテトラグリコール、ブトキシポリグリコール(例えば、ブトキシトリグリコール、ブトキシテトラグリコール、および他のグリコールであってR1が4個の炭素原子を有するアルキルでかつnが5またはこれより大きいもの、の混合物)、ブトキシペントキシジグリコール、ペントキシトリグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、ならびにこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0026】
グリコール成分の好ましいグリコール(例えばアルコキシグリコール)としては、限定しないが、メトキシトリグリコール、メトキシジグリコール、メトキシポリグリコール、メトキシテトラグリコール、エトキシポリグリコール、エトキシトリグリコール、エトキシジグリコール、エトキシテトラグリコール、ブトキシポリグリコール、ブトキシトリグリコール、ブトキシジグリコール、ブトキシテトラグリコール、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはこれらの混合物が挙げられる。より好ましいアルコキシグリコール成分は、メトキシトリグリコール、メトキシジグリコール、メトキシポリグリコール、ブトキシトリグリコール、ブトキシジグリコール、ブトキシポリグリコール、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、またはこれらの混合物を含む。最も好ましいアルコキシグリコール成分は、メトキシポリグリコール、ブトキシジグリコール、ブトキシトリグリコール、ブトキシポリグリコール、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはポリプロピレングリコールモノブチルエーテルの2種以上の混合物を含む。
【0027】
有用なグリコールの更なる例(例えばアルコキシグリコール等)としては、限定しないが、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリブチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリブチレングリコールモノブチルエーテル、これらの組合せ等が挙げられる。
【0028】
限定しないが、有用なアルコキシグリコールの調製方法としては、アルキレンオキサイドをアルコールと反応させてアルコキシグリコールを生成するアルコキシ化反応が挙げられる。
【0029】
グリコール成分としてはまた、グリコールポリマーを挙げることができ、これはホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー等であることができる。グリコールコポリマーは好ましい。グリコールコポリマーは、典型的には、第1の構造を有する式Iの1種以上の第1の繰返し単位と、第2の構造を有する1種以上の第2の繰り返し単位とを含む。特に、グリコールコポリマーは、典型的には、式I(式中、R2、R3、R4およびR5が各々Hである)の少なくとも1種の第1の繰返し単位を含む。グリコールコポリマーはまた、典型的には、R2、R3、R4およびR5の少なくとも1つおよび典型的には1つのみであるが場合によっては2つ、3つまたは4つ全てが、各々、1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である、少なくとも1種の第2の繰返し単位を含む。グリコールコポリマーの好ましい第2の繰返し単位としては、R2基またはR3基、およびより好ましくはR4基またはR5基が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはこれらの組合せを含むものが挙げられる。グリコールコポリマーのより好ましい第2の繰り返し単位としては、R2基またはR3基、およびより好ましくはR4基またはR5基が、メチル基またはエチル基を含むものが挙げられる。グリコールコポリマーの更により好ましい第2の繰返し単位としては、R2基またはR3基、およびより好ましくはR4基またはR5基が、メチル基を含むもの(すなわち、プロピレンオキサイド繰返し単位)が挙げられる。
【0030】
1つの例示の態様において、グリコールポリマーは、下記式:
7−(O−(PO)m(EO)n−R8x
(式中、POは、プロピレンオキサイド単位であり;
EO、はエチレンオキサイド単位であり;
8は、水素またはヒドロカルビル基であり;
xは、少なくとも1であり;
7は、水素またはx価ヒドロカルビル基であり;
mは、少なくとも0の数であり;
nは、少なくとも0の数であり;そして
m+nは、0超である。)
を有する。
【0031】
グリコールポリマーは、分子量少なくとも約500g/mol、好ましくは少なくとも約750g/mol、およびより好ましくは少なくとも約900g/molを有する。グリコールポリマーは、分子量約2,000g/mol以下、より好ましくは約1,500g/mol以下、および更により好ましくは約1,110g/mol以下を有する。
【0032】
グリコールコポリマーの1つの例示の態様に従って、mおよびnは等しく、この場合、グリコールコポリマーは、等モルのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの繰返し単位を含有する。繰返しのエチレンオキサイド単位の数およびプロピレンオキサイド単位の数は、各々好ましくは2超、より好ましくは4超、および更により好ましくは8超である。1つの好適なグリコールコポリマーは、UCON(登録商標)50HB−260(The Dow Chemical Company)である。UCON 50 HB−260は、等しい数のプロピレンオキサイド単位およびエチレンオキサイド単位を含み、そして分子量約1,000g/molを有する。UCON 50 HB−260において、R7は1価アルキル基であり、xは1であり、そしてR8は水素原子である。
【0033】
用いる場合、グリコールボレートエステル成分としては、好ましくは、式:
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式Iに関して規定した任意の基であることができ、そしてnは、式Iに関して規定した通りであることができる。)
を有する少なくとも1種の含有成分が挙げられる。このように、グリコールボレートエステル成分は、本明細書において式Iに関して議論したようなグリコール成分の任意の繰返し単位を有することができる。グリコールボレートエステル成分および任意のボレート含有化合物をグリコール成分の一部とは考えず、別のものと考えることもまた理解される。
【0036】
任意のグリコールボレートエステル成分の例としては、アルコキシグリコールボレートエステル成分,例えばメトキシトリエチレングリコールボレートエステル、エトキシトリエチレングリコールボレートエステル、ブトキシトリエチレングリコールボレートエステルおよびこれらの混合物であって米国特許第6,558,569号(参照により本明細書に組入れる)に開示されるものが挙げられる。ボレートエステル成分が組成物中に存在する場合、これは好ましくは、機能性流体の約1質量%超である量で存在する。任意のボレートエステルはまた、好ましくは、機能性流体の、約10質量%未満、およびより好ましくは約4質量%未満である量で存在する。一態様において、機能性流体組成物は、任意のボレートエステル成分を、実質的に含まず(機能性流体の約0.5質量%未満)または完全に含まない。
【0037】
グリコールボレートエステル成分が、組成物中に含まれる場合、これは、典型的には、成分のグリコール基が、組成物全体の実質部分に相当する場合である。本明細書で規定するようなグリコール基は、式Iおよび式IIの一部であり、これらの式の(H)水素原子または(B)ホウ素原子に付いている。よって、このようなグリコール基は以下の通りである:
【0038】
【化3】

【0039】
これらのグリコール基は、組成物全体の少なくとも約50質量%、より好ましくは少なくとも約60質量%、更により典型的には少なくとも約80質量%、および更に場合によっては少なくとも約90質量%に相当することができる。
【0040】
上記の通り、本開示の機能性流体はまた、少なくとも1種の脂肪酸、少なくとも1種のホスフェートエステル、1種以上の腐食防止剤、ならびに以下:消泡剤、pH安定剤、キレート剤および酸化防止剤の1種以上、を含有する添加剤パッケージを含む。添加剤パッケージ中の腐食防止剤としては、好ましくは、錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮および銅の腐食を防止する化合物が挙げられ、これらの各々はSAE J1703,SAE J1704およびFMVSS 116に記載される腐食仕様を有する。しかし、特に好ましい態様において、腐食防止剤としてはまた、亜鉛の腐食を防止する1種以上の化合物が挙げられる。
【0041】
添加剤パッケージは、好ましくは、流体組成物の少なくとも約0.1質量%、より好ましくは流体組成物の少なくとも約0.2質量%、および最も好ましくは流体組成物の少なくとも約0.3質量%である量で存在する。添加剤パッケージは、好ましくは、流体組成物の約10質量%以下、より好ましくは流体組成物の約6.0質量%以下、および最も好ましくは流体組成物の約4.0質量%以下である量で存在する。
【0042】
添加剤パッケージ中の脂肪酸としては、好ましくは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個、および更により好ましくは少なくとも15個の炭素原子を有する、1種以上の脂肪族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸は、一般的には、35個以下、好ましくは30個以下、およびより好ましくは25個以下の炭素原子を有する。直鎖、単官能の脂肪酸が好ましく、そして、直鎖、不飽和、単官能の脂肪酸がより好ましい。モノ不飽和脂肪酸が特に好ましい。好適な脂肪酸としては、限定しないが、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトイン酸、エライジン酸、およびリノール酸が挙げられる。添加剤パッケージ中の脂肪酸は、一般的には、流体組成物の少なくとも約0.01質量%、好ましくは少なくとも約0.04質量%、およびより好ましくは少なくとも約0.08質量%である量で存在する。脂肪酸は、一般的には、流体組成物の約0.4質量%以下、より好ましくは約0.2質量%以下、および最も好ましくは約0.15質量%以下である量で存在する。
【0043】
添加剤パッケージ中の1種以上の添加剤は、一般的には、ホスフェートであり、そしてより具体的には、ホスフェートエステルである。ホスフェートエステルは、一般的には、アルコールおよびリン酸(H3PO4)のモノ−、ジ−、またはトリ−エステルである。アルコールは、好ましくは下記式:
式III R1−R2−OH
を有し、式中、R1は、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、更により好ましくは少なくとも4個、および更により好ましくは少なくとも6個の炭素原子を有する、置換または非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基である。R1は、好ましくは30個以下、より好ましくは28個以下、更により好ましくは26個以下、および更により好ましくは24個以下の炭素原子を有する。R2は、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する、アルキル基またはアルコキシ基である。1つの例示の態様において、R2は、エトキシ基(−O−CH2−CH2−)である。好適なホスフェートエステルとしては、限定しないが、RHODOFAC(登録商標)RM−510 (Rhodia),ジノニルフェノール,エトキシ化,ホスフェートエステル、LUBRHOPHOS(登録商標)LP−700 (Rhodia),エトキシ化フェノールのホスフェートエステル、LUBRHOPHOS(登録商標)LB−400(Rhodia),オレインアルコールのエトキシ化ホスフェートエステル、LUBRHOPHOS(登録商標)LK−500(Rhodia),エトキシ化ヘキサノールのホスフェートエステル、およびトリクレジルホスフェート、クレゾールのホスフェートトリエステルが挙げられる。
【0044】
ホスフェートエステルは、機能性流体の好ましくは少なくとも約0.05質量%、より好ましくは少なくとも約0.1質量%、および更に好ましくは少なくとも約0.15質量%である量で存在する。ホスフェートエステルは、機能性流体の好ましくは約0.4質量%以下、より好ましくは約0.3質量%以下、および更に好ましくは約0.25質量%以下である量で存在する。いずれの理論に拘束されることも望まないが、以下で更に説明するように、機能性流体添加剤パッケージ中のホスフェートエステルと脂肪酸との組合せは、機能性流体の潤滑性を予期せず改善するという相乗効果を与えると考えられる。
【0045】
腐食防止剤としては、好ましくは、少なくとも1種の複素環窒素含有化合物が挙げられ、例えばトリアゾール,例えばベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、およびこれらの混合物が挙げられる。トリアゾール化合物は、総流体質量の好ましくは少なくとも約0.01質量%、より好ましくは少なくとも約0.05質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.09質量%である量で存在する。トリアゾール化合物は総流体組成物の好ましくは約0.4質量%以下、より好ましくは約0.3質量%以下、および最も好ましくは約0.20質量%以下である量で存在する。いずれの理論に拘束されることも望まないが、トリアゾール化合物,例えばベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、および1,2,4−トリアゾアールは、銅の腐食を防止するのに特に有効であると考えられる。
【0046】
腐食防止剤としてはまた、好ましくは、トリアゾール以外のアミン化合物が挙げられ、例えばアルキルアミン(例えば、ジn−ブチルアミンおよびジn−アミルアミン)、シクロヘキシルアミン、ピペラジン(例えば、ヒドロキシエチルピペラジン)、およびこれらの塩が挙げられる。本開示の機能性流体組成物における腐食防止剤として特に有用な非トリアゾールアミン化合物としては、アルカノールアミン、好ましくは1〜3つのアルカノール基を含有し各アルカノール基が1〜6個の炭素原子を含有するものが挙げられる。有用なアルカノールアミンの例としては、モノ−、ジ−およびトリメタノールアミン、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、モノ−、ジ−およびトリプロパノールアミン、ならびにモノ−、ジ−およびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。好ましいアルカノールアミンとしては、ブチルジエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミン(「dipa」)が挙げられる。いずれの理論に拘束されることも望まないが、アルカノールアミンは、第一鉄化合物(例えば、鉄、鋼)の腐食を防止するために有用であると考えられ、そしてまたバッファーとして作用すると考えられる。
【0047】
非トリアゾールアミン化合物は、総流体組成物の好ましくは少なくとも約0.1質量%、より好ましくは少なくとも約0.5質量%、および更により好ましくは少なくとも約0.8質量%である量で存在する。非トリアゾールアミン化合物は、総流体組成物の好ましくは約3質量%以下、より好ましくは約2.0質量%以下、および最も好ましくは約1.5質量%以下である量で存在する。
【0048】
腐食防止剤としては、1種以上のアルケニル無水コハク酸を挙げることができる。好ましいアルケニル無水コハク酸としては、無水マレイン酸の誘導体が挙げられる。ドデセニル無水コハク酸は特に好ましい。機能性流体中に含有される場合、アルケニル無水コハク酸は、機能性流体組成物の好ましくは少なくとも約0.1質量%、より好ましくは少なくとも約0.12質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.14質量%である量で存在する。アルケニル無水コハク酸は、機能性流体組成物の好ましくは約0.5質量%以下、より好ましくは約0.3質量%以下、および最も好ましくは約0.2質量%以下である量で存在する。
【0049】
特定の好ましい態様において、腐食防止剤としてはまた、1種以上の無機ナイトレート、好ましくは硝酸ナトリウムが挙げられる。無機ナイトレートは、流体組成物の好ましくは少なくとも約0.01質量%、より好ましくは少なくとも約0.015質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.02質量%である量で存在する。無機ナイトレートは、流体組成物の好ましくは約0.06質量%以下、より好ましくは約0.05質量%以下、および最も好ましくは約0.04質量%以下である量で存在する。いずれの理論に拘束されることも望まないが、無機ナイトレートは、アルミニウムの腐食の防止において有効であると考えられる。
【0050】
腐食防止剤としては、1種以上の無機ボレート,例えば4ホウ酸ナトリウム(Boraxとして一般に公知)が挙げられる。無機ボレートは、好ましくは固体水和物として与えられる。特に好ましい無機ボレートは、4ホウ酸ナトリウム5水和物 Na247・5H2O(Borax 5Molとしても公知)である。別の例示の無機ボレートは、4ホウ酸ナトリウム10水和物(Na247・10H2O)である。存在する場合、無機ボレートは、流体組成物の好ましくは少なくとも約0.03質量%、より好ましくは少なくとも約0.05質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.07質量%である量で与えられる。無機ボレートは、流体組成物の好ましくは約0.1質量%以下、より好ましくは約0.09質量%以下、および最も好ましくは約0.08質量%以下である量で与えられる。いずれの理論に拘束されることも望まないが、無機ボレートは、第一鉄(例えば、鉄および鋼)の腐食を防止するのに有効であると考えられる。
【0051】
腐食防止剤はまた、任意に、1種以上のシリコーン化合物,例えばシリケートエステルを含むことができる。好ましいシリケートエステルとしては、ジアルコキシシロキサンのポリマーが挙げられ、限定されないが、ポリ(ジエトキシシロキサン)(例えば、PSI−021)が挙げられる。シリコーン腐食防止剤は、流体組成物の好ましくは少なくとも約0.001質量%、より好ましくは少なくとも約0.003質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.004質量%である量で与えられる。シリコーン腐食防止剤は、流体組成物の好ましくは約0.008質量%以下、より好ましくは約0.007質量%以下、および最も好ましくは約0.006質量%以下である量で与えられる。いずれの理論に拘束されることも望まないが、シリコーン腐食防止剤は、真鍮およびアルミニウムの腐食を防止すると考えられる。
【0052】
前記の腐食防止剤に加え、機能性流体添加剤パッケージはまた、他の添加剤化合物,例えば消泡剤、pH安定剤、キレート剤、酸化防止剤等を含むことができる。好ましい消泡剤としては、ポリ(ジメチルシロキサン)およびシリコーン系化合物,例えばSAG 100 Antifoam(GE Advanced Materialsの製品)が挙げられる。存在する場合、消泡剤は、流体組成物の好ましくは約0.00020質量%以下およびより好ましくは約0.00015質量%以下である量で与えられる。消泡剤は、好ましくは、流体組成物の少なくとも約0.00001質量%、およびより好ましくは少なくとも約0.00005質量%である量で存在する。
【0053】
好適な酸化防止剤としては、フェノール性化合物およびキノリン化合物が挙げられる。例示のフェノール性酸化防止剤としては、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン);2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(製造元 Great Lakes Chemical Corporation,名称Lowinox(登録商標)624にて) 2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)、2,6−ジ−tertiary−ブチル−4-sec−ブチルフェノール(製造元 SI Group,名称Isonox(登録商標)132にて)、およびビスフェノールAが挙げられる。例示のキノリン酸化防止剤としては、Agerite(登録商標)Resin D,重合トリメチルジヒドロキノリン化合物(製造元 RT.Vanderbilt Company)が挙げられる。酸化防止剤が添加剤パッケージ中に含まれる場合、これらは、流体組成物の好ましくは少なくとも約0.1質量%、より好ましくは少なくとも約0.2質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.25質量%である量で与えられる。酸化防止剤は、流体組成物の好ましくは約1.0質量%以下、より好ましくは約0.8質量%以下、および最も好ましくは約0.4質量%以下である量で与えられる。
【0054】
好適なキレート剤としては、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリブチル−ホスフェート、ジブチブチルホスフェート、DEHPA(ジ(2−エチルヘキシル)リン酸)およびプロパンジアミン/キシレン組成物,例えばDupont Metal Deactivator(N,N’−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミンおよびキシレン)が挙げられる。用いる場合、キレート剤は、好ましくは少なくとも約0.01質量%、より好ましくは少なくとも約0.05質量%、および最も好ましくは少なくとも約0.08質量%である量で存在する。キレート剤は、流体組成物の好ましくは約0.2質量%以下、最も好ましくは約0.15質量%以下、および最も好ましくは約0.13質量%以下である量で存在する。
【0055】
上記のように、SAE J1703およびJ1704は、それぞれDOT 3およびDOT 4のブレーキ流体についての腐食基準を記載する。両基準に関し、2セットの、6つの規定の金属腐食試験ストリップを研磨、清浄化および計量する。各セットを含む6つの金属ストリップを一端で一緒に固定する。各ストリップは、おおよその長さ8cm、幅1.3cm、厚み0.6mm以下であり、そして表面積25±5cm2を有する。規定の金属は、銅、真鍮、鋳鉄、アルミニウム、鋼、および錫めっき鉄である。2つのスチレンブタジエンゴム(「SBR」)カップを、FMVSS 116のセクション7.6ならびにSAE J1704(Rev.April 2004)の付録CおよびDに記載されるように用意し、そしてこれらのベース径を測定する。加えて、カップのInternational Rubber Hardness Degree(「IRHD」)値を、ASTM D1415試験法(その全部を参照により本明細書に組入れる)を用いて評価する。2つのSBRカップおよび2つの金属ストリップ組合せ物を、ブレーキ流体および5%(体積基準)の水を収容する瓶の中に入れ、ここで金属ストリップ組合せ物は各々、それぞれのカップの1つの中に入れる。瓶に蓋をして100℃のオーブンに120時間入れる。ストリップを次いで取り出し、そして23℃±2℃で1時間乾燥させる。乾燥後、ストリップを各々0.1mg単位で計量して、質量の変化を各ストリップについて算出する。ストリップの面積を次いで評価し、そして表面積の単位面積当たりの質量変化(mg/cm2単位)を算出する。カップの径およびIRHD値を次いで評価する。FMVSS 116に従い、DOT 4ブレーキ流体として認定されるように、単位表面積当たりの質量変化は以下の仕様(SAE J1703およびJ1704のものと同一である)を超えてはならない:
【0056】
【表2】

【0057】
加えて、FMVSS 116のSBRカップ仕様は、内側カップ径の増大が1.4mm以下および硬度の低減が15以下のInternational Rubber Hardness Degreesであることを必要とする。SAE J1704仕様は、これらがSBRカップ体積の増大16%以下(径の増大を規定することに代えて)を必要とすることを除いて、同一である。加えて、SAE J1703およびJ1704は、機能性流体が等体積の50%エタノール/50%蒸留水の混合物(pH7.0に中和されている)と混合される場合に、pHが7.0以上で11.5以下であることを必要とする。基準はまた、沈殿レベル(sediment level)が0.1体積%以下であることを必要とする。各基準はまた、低温外観要求(規定試験条件下での層化、沈殿、または結晶化の不存在を必要とする)を含む。
【0058】
上記のように、多くのブレーキ流体が供される環境をより良好にシミュレートするためにSAE J1703およびSAE J1704の試験手順を実施するために用いる、ブレーキ流体/水の組成物の改質が提案されてきた。特に、多くの地方は、冬場に路面に氷および雪がない状態を保つために路面塩を用いる。結果として、ブレーキ流体はしばしば水/塩溶液(これはブレーキ流体の性能を低下させる可能性がある)で汚染されるようになる。1つの好ましい態様において、本開示の機能性流体を、ブレーキ流体および5%水(体積基準)と25ppm塩化物イオンとの混合物を用いるJ1703/J1704腐食試験に供する場合、混合物はJ1703/J1704およびFMVSS 116腐食仕様に、錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮および銅についての表面積当たりの最大許容質量変化について適合する。
【0059】
これらの腐食防止特性に加え、本開示の流体組成物は、優れた水安定性を示し、そして高沸点および低粘度を比較的高い水レベルで維持できる。特定の好ましい態様において、流体組成物は、湿潤平衡還流沸点(WERBP)約140℃以上、好ましくは約150℃以上、より好ましくは約200℃以上、および更により好ましくは約220℃以上を維持する。特定の好ましい態様において、流体組成物は、乾燥平衡還流沸点(ERBP)約200℃以上、好ましくは約220℃以上、より好ましくは約230℃以上、および更により好ましくは約240℃以上を維持する。機能性流体は、好ましくは、−40℃での動粘度約1800cSt以下、より好ましくは約1400cSt以下、および最も好ましくは約1000cSt以下を有する。
【0060】

例1−ホスフェートエステルを有する、およびホスフェートエステル/オレイン酸の組合せを有する、機能性流体の腐食および潤滑性の性能
潤滑性および腐食の試験データは、市販で入手可能なDOT 3ブレーキ流体(PM6664)ベース流体、および、RHODOFAC(登録商標)RM 510ホスフェートエステルを含有する流体の2種の改質型について得る。改質型の流体の1つにおいて、ホスフェートエステルは、脂肪酸(オレイン酸)と組合せ、そして、他の型においては脂肪酸を含まない。配合は以下の通りである:
【0061】
【表3】

【0062】
表3において、「メトキシポリグリコール」(「MPG」)は、メトキシトリエチレングリコール(10質量%のMPG)メトキシテトラエチレングリコール(78.4質量%のMPG)、およびメトキシポリグリコールであって5またはこれより多い繰返しエチレングリコール単位を有するもの(10.9質量%のMPG)の混合物を意味する。LV−RG1およびLV−RG2の配合物は、以下の平衡還流沸点および粘度を有する:
【0063】
【表4】

【0064】
前記の流体の各々を、腐食防止について、SAE J1703およびJ1704の試験プロトコルを用いて試験する。両者は、機能性流体と混合される水への25ppm塩化物イオンの添加を伴いおよび伴わない。結果は以下の通りである:
【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
表3中の機能性流体もまた、潤滑性について、Cameron−Plint Reciprocating Sliding Wear Testerを用いて試験する。ここで80 Durometer EPDMゴムを含む上側の試料は、43質量%のガラス繊維で補強されたDu Pont ZYTEL(登録商標)70G43 ナイロン66レジンを含む下側の試料に対して振動する。結果を図1に与える。これは摩擦係数 対 時間をプロットする。図1が示すように、LV−RG1およびLV−RG2の両者の流体は、約90秒後に、ベースPM6664物質よりも良好な潤滑性(すなわちより低い摩擦係数)を実現する。上記で示すように、PM6664とは異なり、LV−RG1およびLV−RG2の両者の流体はホスフェートエステルを含む。しかし、LV−RG2はまたオレイン酸を含む。図1が示すように、オレイン酸とホスフェートエステルとを組合せることは、2倍を超える潤滑性の改善およびより着実な潤滑性を、試験期間に亘って与える。表4が示すように、LV−RG1およびLV−RG2の両者は、SAE J1703(ERBP230℃以上)およびSAE J1704(ERBP 205℃以上)の両者のERBP仕様に合致する。これらはまた、両基準の−40℃の動粘度仕様(1800cSt以下)およびSAE J1703のWERBP仕様(140℃以上)に適合する。加えて、25ppmの塩化物イオンの添加を伴っていても、LV−RG1およびLV−RG2の両者は、SAE J1703およびJ1704の両者の錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮、および銅の腐食仕様、更に両基準の硬度およびゴムカップ径の仕様に適合する。
【0068】
例2−種々の量のホスフェートエステルを有しかつ脂肪酸を有さない機能性流体の腐食および潤滑性の性能
この例において、潤滑性および腐食のデータを、市販のDOT 3ブレーキ流体(DBF 310 GC)および2種の改質型の流体であって種々の量のRHODOFAC(登録商標)RM−510(ジアルキルフェノールエトキシ化ホスフェートエステル)を添加したものについて得る。配合を表7に与える:
【0069】
【表7】

【0070】
表7において、「ブトキシポリエチレングリコール(「BPG」)は、ブトキシトリエチレングリコール(11.9質量%のBPG)、ブトキシテトラエチレングリコール(64.2質量%のBPG)およびブトキシポリエチレングリコールであって5またはこれより多い繰返しエチレンオキサイド単位を有するもの(21.9質量%のBPG)の混合物を意味する。「Diflash精製」は、ジエチレングリコール(22.8質量%のDiflash)、トリエチレングリコール(58.3質量%のDiflash)、テトラエチレングリコール(16.4質量%のDiflash)、およびエチレングリコールであって5またはこれより多い繰返しエチレンオキサイド単位を有するもの(1.8質量%のDiflash)の混合物を意味する。「Pusher精製」は、テトラエチレングリコール(65.3質量%のPusher)、ペンタエチレングリコール(29.2質量%のPusher)、ヘキサエチレングリコール(1.8質量%のPusher)、およびエチレングリコールであって7またはこれより多い繰返しエチレンオキサイド単位を有するもの(2.3質量%のPusher)の混合物を意味する。
【0071】
表7中の流体は、SAE J1703/J1704およびFMVSS 116腐食試験(機能性流体に添加される水への25ppm塩化物イオンの添加ありおよびなしの両者)に供する。結果を以下の表8および9に記載する:
【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
表8および9が示すように、0.1%RM−510および0.2%RM−510の両者の配合は、錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮、および銅についてのSAE J1703/1704腐食仕様、更に、これらの基準のゴムカップ径および硬度の仕様に合致する。
【0075】
表7の機能性流体もまた、潤滑性について、例1に関して先に記載したCameron−Plint装置を用いて試験する。Cameron−Plint装置で用いる表面は例1で用いるものである。得られる潤滑性データを図2に表す。図面が示すように、0.1%のRM−510の添加は、10秒から約230秒のより大きい潤滑性を与える。しかし、約230秒後、0.1%RM−510配合物は潤滑性の低下を被る。これに対し、0.2%RM−510を有する配合物は、摩擦係数約0.06未満を、試験期間全体に亘って維持する。表7中の両配合物は、ホスフェートエステル(RM−510)を含むが、これらのいずれも脂肪酸を含まない。これに対し、表3のLV−RG2配合物は、脂肪酸およびホスフェートエステルの両者を含む。図1および2の比較は、RM−510の量が一定に維持される場合であっても、オレイン酸とRM−510との組合せが潤滑性の実質的な増大を与えることを示し、脂肪酸およびホスフェートエステルの組合せが、潤滑性の相乗効果および予期しない改善を実現することを更に示す。
【0076】
本開示の機能性流体は、多くの機械的システム(例えば油圧リフト、クレーン、フォークリフト、ブルドーザー、油圧ジャッキ、ブレーキシステム、これらの組合せ等)のための液圧流体としての使用によく適合されている。これらの流体組成物の高い潤滑性、更にERBP、WERBP、および低温粘度は、これらを輸送手段(例えば固定翼および回転翼の飛行機、列車、自動車のクラス1〜8のもの、等)におけるブレーキシステムに対してよく適合されたものにする。これらのブレーキシステムとしては、アンチロックブレーキシステム(ABS)、安定制御システム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0077】
1つの例示の実施において、デプレッシブルアクチュエーター、マスターシリンダー、ピストン、および該ピストン上に配置されたゴムカップシールを含むブレーキシステムを提供する。本開示の機能性流体は、マスターシリンダーのボア内に配置され、そしてブレーキ機構(例えばブレーキパッドおよびローター)への圧力を伝達して乗用物を減速または停止させるのに用いる。アクチュエーターが押圧されるに従って、ピストンがマスターシリンダーの内側に沿って動き、流体をシリンダーボアから移す。この操作の間、ゴムカップは、マスターシリンダーの壁を摩擦で係合する。これはひいてはゴムカップが擦れ、ゴムカップの周囲の漏れおよびブレーキ性能の低下をもたらす原因となる可能性がある。特定の例示の用途において、マスターシリンダーはプラスチックに沿い、そして機能性流体は、ゴムカップおよびプラスチックマスターシリンダーライニングの摩擦での係合を潤滑する。図1および2に例示するように、少なくとも1種のグリコール、ならびに少なくとも1種の脂肪酸および少なくとも1種のホスフェートエステルを含む添加剤パッケージを含む機能性流体の使用は、ゴムとプラスチック表面との間の摩擦の量を有益に低減し、これにより、ゴムカップが被る擦れの程度を低減する。
【0078】
複数の成分またはステップの機能もしくは構造を単一の成分もしくはステップに組合せることができ、または、1つのステップもしくは成分の機能もしくは構造は複数のステップもしくは成分に分割できることが更に理解されよう。本開示は、これらの組合せの全てを意図する。特記がない限り、本明細書に表す種々の構造の寸法および配置は、開示が限定的であることを意図するものではなく、他の寸法または配置が可能である。複数の構造成分またはステップは、単一の一体化された構造またはステップによって与えることができる。これに代えて、単一の一体化された構造またはステップは、別個の複数の成分またはステップに分割してもよい。加えて、本開示の特徴を、例示の態様の1つのみの文脈で記載してきた場合があるが、このような特徴は任意の与えられる用途についての他の態様の1つ以上の他の特徴と組合せることができる。上記から、本明細書での特異な構造の製造およびその操作が本開示に関する方法をも構成することも理解されよう。
【0079】
本明細書で与えられる説明および例示は、他の当業者に開示、その原理およびその実際の適用を紹介することを意図する。当業者は、開示をその多くの形態で、特定の用途の要求に対して最良に適合できるように適合および適用することができる。従って、記載される本開示の具体的な態様は、排他的または限定的であることを意図しない。従って、開示の範囲は、上記記載の参照で決定するのではなく、特許請求の範囲の参照で、このような特許請求の範囲が与える均等の全範囲とともに決定すべきである。全ての論説および文献(例えば特許出願および公開公報)の開示は全趣旨で参照により組入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のグリコール;ならびに
少なくとも1種の脂肪酸およびホスフェートエステルを含む添加剤パッケージ;
を含む、流体組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のグリコールが、総流体組成物の約20質量%超の量で存在する、請求項1に記載の流体組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のグリコールが、総流体組成物の約99質量%未満の量で存在する、請求項1または2に記載の流体組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のグリコールが、式:
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、および1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基からなる群から選択され、そしてnは少なくとも1である。)
を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のグリコールが、n=2である第1のグリコール成分と、n=3である第2のグリコール成分とを含む、請求項4に記載の流体組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のグリコール成分が、R1が1個の炭素原子を含有するアルキル基である第1のグリコール成分と、R1が4個の炭素原子を含有するアルキル基である第2のグリコール成分とを含む、請求項4または5に記載の流体組成物。
【請求項7】
流体組成物の約70質量%未満である量で存在する少なくとも1種のグリコールボレートエステルを更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項8】
添加剤パッケージが、流体組成物の約10質量%未満である量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項9】
添加剤パッケージが、流体組成物の約0.1質量%超である量で存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の脂肪酸が、直鎖である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の脂肪酸が、モノ不飽和である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の脂肪酸が、流体組成物の少なくとも約0.01質量%の量で存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項13】
脂肪酸が、流体組成物の約0.4%以下の量で存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項14】
ホスフェートエステルが、式R1−R2−OH(式中、R1は置換または非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基からなる群から選択され、そしてR2はアルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択される)を有するアルコールのホスフェートエステルである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項15】
1が少なくとも2個の炭素原子を有する、請求項14に記載の流体組成物。
【請求項16】
1が30個以下の炭素原子を有する、請求項14または15に記載の流体組成物。
【請求項17】
1が、アルキル置換されたアリール基である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項18】
2がエトキシ基である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項19】
1が、非置換のアルケニル基である、請求項14〜16および18のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項20】
少なくとも1種のホスフェートエステルが、流体組成物の約0.05質量%以上の量で存在する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項21】
少なくとも1種のホスフェートエステルが、流体組成物の約0.4質量%以下の量で存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項22】
式:
7−(O−(PO)m(EO)n−R8x
(式中、POは、プロピレンオキサイド単位であり;
EOは、エチレンオキサイド単位であり;
7は、水素またはx価ヒドロカルビル基であり;
xは、少なくとも1であり;
8は、水素またはヒドロカルビル基であり;
mは、少なくとも0の数であり;
nは、少なくとも0の数であり;そして
m+nは、0超である。)
を有するポリアルキレングリコールを更に含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項23】
m=nである、請求項22に記載の流体組成物。
【請求項24】
流体組成物の平衡還流沸点が少なくとも約230℃である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項25】
流体組成物の動粘度が、−40℃にて約1800cSt以下である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項26】
組成物を水および塩化物塩と組合せて、水が総組成物の5体積%の量で存在しかつ塩化物イオンが総組成物の100万分の25質量部の量で存在する総組成物を得たときに、該総組成物が、SAE基準J1704に記載される錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮および銅についての最大許容質量変化仕様に適合する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項27】
流体組成物を、ポリアミド66および43質量%ガラス繊維とのコンポジットを含む第1の表面と、ショアA硬度80を有するEPDMゴムを含む第2の表面との間に適用し、そして該第1の表面が摺動自在に第2の表面を係合したときに、該第1の表面と該第2の表面との間の100秒間の摺り係合の後の摩擦係数が0.07未満である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項28】
ボアを有するマスターシリンダーを含み、請求項1〜27のいずれか1項に記載の流体組成物が該ボア内に配置されている、ブレーキシステム。
【請求項29】
マスターシリンダーが、ボアを規定する内側表面を有し、そして該内側表面がプラスチックライニングを有する、請求項28に記載のブレーキシステム。
【請求項30】
プラスチックライニングがポリアミドを含む、請求項29に記載のブレーキシステム。
【請求項31】
少なくとも1種のグリコールおよび添加剤パッケージを含む流体組成物であって、流体組成物を、ポリアミド66および43質量%ガラス繊維とのコンポジットを含む第1の表面と、ショアA硬度80を有するEPDMゴムを含む第2の表面との間に適用し、そして該第1の表面が摺動自在に第2の表面を係合したときに、該第1の表面と該第2の表面との間の100秒間の摺り係合の後の摩擦係数が約0.07未満である、流体組成物。
【請求項32】
該第1の表面と該第2の表面との間の100秒間の摺り係合の後の摩擦係数が、約0.03未満である、請求項31に記載の流体組成物。
【請求項33】
流体組成物の平衡還流沸点が少なくとも約230℃である、請求項31または32に記載の流体組成物。
【請求項34】
組成物の動粘度が、−40℃にて約1800cSt以下である、請求項31〜33のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項35】
組成物を水および塩化物塩と組合せて、水が総組成物の5体積%の量で存在しかつ塩化物イオンが総組成物の100万分の25質量部の量で存在する総組成物を得たときに、該総組成物が、SAE基準J1704に記載される錫めっき鉄、鋼、アルミニウム、鋳鉄、真鍮および銅についての最大許容質量変化仕様に適合する、請求項31〜34のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項36】
少なくとも1種のグリコールが、式:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、および1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基からなる群から選択され、そしてnは少なくとも1である。)
を有する、請求項31〜35のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項37】
少なくとも1種のグリコールが、n=2である第1のグリコール成分と、n=3である第2のグリコール成分とを含む、請求項36に記載の流体組成物。
【請求項38】
少なくとも1種のグリコール成分が、R1が1個の炭素原子を含有するアルキル基である第1のグリコール成分と、R1が4個の炭素原子を含有するアルキル基である第2のグリコール成分とを含む、請求項36または37に記載の流体組成物。
【請求項39】
流体組成物の約70質量%以下の量で存在する少なくとも1種のグリコールボレートエステルを更に含む、請求項31〜38のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項40】
式:
7−(O−(PO)m(EO)n−R8x
(式中、POは、プロピレンオキサイド単位であり;
EOは、エチレンオキサイド単位であり;
8は、水素またはヒドロカルビル基であり;
xは、少なくとも1であり;
7は、水素またはx価ヒドロカルビル基であり;
mは、少なくとも0の数であり;
nは、少なくとも0の数であり;そして
m+nは、0超である。)
を有する、少なくとも1種のポリアルキレングリコールを更に含む、請求項31〜39のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項41】
m=nである、請求項40に記載の流体組成物。
【請求項42】
添加剤パッケージが、少なくとも1種の脂肪酸および少なくとも1種のホスフェートエステルを含む、請求項31〜41のいずれか1項に記載の流体組成物。
【請求項43】
ボアを有するマスターシリンダーを含み、請求項31〜42のいずれか1項に記載の流体組成物が該ボア内に配置されている、ブレーキシステム。
【請求項44】
マスターシリンダーが、ボアを規定する内側表面を有し、そして該内側表面がプラスチックライニングを有する、請求項43に記載のブレーキシステム。
【請求項45】
プラスチックライニングがポリアミドコンポジットを含む、請求項44に記載のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−508283(P2012−508283A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534574(P2011−534574)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059184
【国際公開番号】WO2010/053641
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】