説明

低粘度疎水性ポリオール

本発明は、新規な低粘度疎水性ポリオール、その製造方法、及び床被覆のプライマーとして特に適している該ポリオールに基づく無溶媒バインダー混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度疎水性ポリオール、その製造方法、及び床被覆のプライマーとして特に適しているそれに基づく無溶媒バインダー混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の無溶媒二液型(2K)被覆系は、エポキシ樹脂(2KEP)系とポリウレタン(2KPU)系に大きく分けられる。
【0003】
2KEP系に基づく被覆では、良好な機械的強度と耐溶剤性及び耐薬品性とが組み合わせられている。加えて、2KEP系は、非常に良好な基材接着性に特徴がある。目立った欠点は、特に室温での小さい弾性である。その脆さの故に、被覆にまたがるクラックが生じ、その箇所から基材が攻撃される。別の欠点は、有機酸に対する耐性が非常に低いことである。この欠点は、とりわけ食品分野での用途において問題となる。何故なら、食品分野では、しばしば有機酸が廃棄物として放出されるからである。
【0004】
他方、バランスのよい硬さ及び弾性の組み合わせは、2KPU被覆の優れた性質であり、2KEP被覆と比べて最も重要な長所である。さらに、耐溶剤性及び耐薬品性は同等であるが、2KPU被覆の耐有機酸性は、2KEP被覆に比べて、実質的に優れている。
【0005】
環境上の理由から、塗料は、とりわけ厚膜用途(Dickschichtanwendungen)、例えば床被覆などの用途では、無溶媒でなければならない。このことは、バインダー成分の固有の粘度が低くなければならないことを意味する。
【0006】
2KPU系に基づく厚膜用途の場合、水−イソシアネート反応の結果発生する二酸化炭素により発泡する危険がある。従って、原料が非常に低い吸水性を示し、その結果、被覆が、湿潤条件下でも発泡することなく塗布できることが重要である。通常、ヒドロキシ官能性成分はポリイソシアネート成分より親水性であるので、特に、疎水性であるヒドロキシ官能性成分を使用することが非常に重要となる。
【0007】
2KPU被覆のヒドロキシ官能性バインダー成分は、種々の化学構造に基づいて、製造することができる。
【0008】
ポリエステルポリオールは、低い粘度と比較的小さい吸水性に特徴があるが、加水分解に対する安定性が低いので、金属製基材の腐食防止及び無機質(アルカリ性)基材の被覆に関しては、その実用性が極度に制限される。
【0009】
ポリアクリレートポリオールに基づく2KPU被覆は、加水分解に対する効果的な耐性に特徴があるが、その欠点は、比較的高い粘度である。従って、粘度を調節するために、常に、溶媒又は反応性希釈剤、例えばポリエーテルポリオール又は多官能性アルコールが添加される。これにも、ポリエーテルポリオールを単独で架橋剤として使用する場合と同様、吸水性挙動を増すという効果がある。
【0010】
従来技術において無溶媒ポリオールは、しばしば、ひまし油を用いて十分に疎水性にされる(例えば、Saunders, Frisch; Polyurethanes, Chemistry and Technology, Part 1 Chemistry, 48-53頁)。それを用いて製造された2KPU被覆は、しかしながら、加水分解に対して安定ではない。
【0011】
カシューナッツ殻液(CNSL (Cashew Nut Shell Liquid);カシューナッツ殻油)から誘導された樹脂は、塗料及び被覆に使用される(Shukia et al, Paintindia, February 2002, 29-32頁, Nayak, Natural Oil-Based Polymers: Opportunities and Challenges, J.M.S-Rev. Macromol. Chem. Phys., C40(1), 12-18, 2000)。そのような生成物は、非常に疎水性であり、エステル結合を含まないので、加水分解に対して安定である。CNSL系樹脂は、フェノール性OH基を含むが、このOH基は、ポリイソシアネートとの反応による架橋に利用することができる。この場合の欠点は、形成されたフェノール性ウレタン結合が、湿潤したアルカリ性条件下での再分解に対して安定でないことである。
【0012】
特公昭48−29530号公報は、CNSL−アルデヒド又はカルダノール−アルデヒドとアルキレンオキシド(例えば、ポリプロピレンオキシド)との反応を記載し、フェノール性OH基は、脂肪族的に結合されたヒドロキシル基になる。この生成物の欠点は、粘度が比較的高く、加工するには溶媒の添加が必要なことである。
【特許文献1】特公昭48−29530号公報
【非特許文献1】Saunders, Frisch; Polyurethanes, Chemistry and Technology, Part 1 Chemistry, 48-53頁
【非特許文献2】Shukia et al, Paintindia, February 2002, 29-32頁
【非特許文献3】Nayak, Natural Oil-Based Polymers: Opportunities and Challenges, J.M.S-Rev. Macromol. Chem. Phys., C40(1), 12-18, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、加工して無溶媒バインダー混合物を生成でき、特に厚膜用途分野で、被膜の耐性が無いというような上記の欠点を示さない、疎水性で低粘度のポリオール成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
所定の組成を有する、CNSLからのカルダノールとアルキレンオキシドの付加物は、要求されるポリオール特性を有することが見出された。
【0015】
すなわち、本発明は、
140〜220mgKOH/gのヒドロキシル価及び23℃で1000〜4000mPasの粘度を有する疎水性ポリオールの製造方法であって、
A)180〜300mgKOH/gのヒドロキシル含有量、
23℃で5000〜20000mPaの粘度及び
2.8〜4.5の平均ヒドロキシル官能価を有し、
5〜20質量%のカルダノール(3−ペンタデカジエニルフェノール)、
5〜10質量%のカルドール(3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)及び
1〜5質量%の6−メチルカルドール(2−メチル−3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)
を含む混合物(カルダノール、カルドール及び6−メチルカルドールと成分A)の残りの構成成分の和は100質量%である。)を、
B)アルキレンオキシド(AO)と、A)対B)の量比を1:9〜9:1として、反応させて、成分A)のAO反応性基にAOモノマーを付加させる
製造方法
また、本発明の方法により製造されたポリオールも、本発明により提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
工業的には、カルダノール(3−ペンタデカジエニルフェノール)は、カシューナッツ仁の殻及び/又はそれに含まれるCNSLから得られる。
【0017】
CNSLは、カシューナッツの核と殻との間の層から抽出される。この中間層は、主としてアナカルド酸(2−カルボキシ−3−ペンタデカジエニルフェノール)及び異なる二重結合含有量を有する関連する酸、並びにカルドール(m−ペンタデカジエニルレゾルシノール)を含む。該液は、加熱により中間層から抽出され、その際、酸は脱カルボキシル化される。このようにして得られた生成物は、カルダノール(I)、カルドール(II)及び異なる数の二重結合を有する関連する化合物を含む。そのような抽出物の典型的な組成は、次のとおりである:
【化1】

【0018】
飽和又はシス不飽和である側鎖は、重合によりさらに反応して、より高分子量の化合物(ポリマー)を生成し得る。
【0019】
最後に、カルダノールが蒸留によりCNSLから単離される。残った残渣は、高分子量有機化合物のみならず、典型的には、5〜20質量%のカルダノール残分、5〜10質量%のカルドール(3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)及び1〜5質量%の6−メチルカルドール(2−メチル−3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)も含む。
【0020】
成分A)において、カシューナッツ殻液(CNSL)から出発したカルダノールの製造により得られるそのような残渣を使用することが好ましい。この残渣は、上記の量のカルダノール、カルドール及び6−メチルカルドールと、典型的には60〜80質量%、好ましくは65〜75質量%の、700g/モルを超える数平均分子量Mnを有するフェノールOH官能であり得る有機化合物を含む(残渣のこれら成分の量の合計は100質量%)。
【0021】
好ましくは、成分A)の混合物は、200〜270mgKOH/gのOH含有量を有する。
成分A)の混合物は、好ましくは23℃で5000〜20000mPasの粘度、及び好ましくは3〜4の平均OH官能価を有する。
【0022】
カルドールの製造からのこの種の残渣は、NX−4670の商品名でCardolite Chemical N.V.(ベルギー)から入手することができる。この製品は、207〜250mgKOH/gのOH含有量及び23℃で5000〜20000mPasの粘度を有する。
【0023】
本発明の方法において、A)対B)の量比は、好ましくは1:5〜5:1である。
成分A)のアルコキシル化は、活性水素原子を含む成分A)の基への成分B)の化合物の重付加により行われる。
【0024】
使用されるアルキレンオキシドは、好ましくはエチレンオキシド、ブチレンオキシド及びこれらの混合物である。2種又はそれ以上のアルキレンオキシドを用いる場合、ブロック又はランダム重付加が起こり得る。更に詳細な説明は、Ullmanns Encyclopaedie der idustriellen Chemie, Volumn A21, 1992, 670頁以下に見出すことができる。
【0025】
重付加反応は、触媒の不存在下又は存在下に行うことができる。この目的に好ましいのは、当業者には既知の触媒系及び化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物又は複金属シアン化物触媒(DMC触媒)である。
【0026】
活性水素原子を含む化合物へのアルキレンオキシドの重付加方法は、当業者にはよく知られている。典型的には、化合物A)が最初に導入され、成分B)が重付加により付加される。
本発明の方法は、通常20〜200℃、好ましくは40〜180℃、より好ましくは50〜150℃の温度で行われる。反応は、0.001〜20バールの全圧で行うことができる。重付加は、連続的に、又は不連続的に、例えばバッチ法又は半バッチ法で、実施することができる。
【0027】
本発明の方法で得られるポリオールは、好ましくは、23℃で1000〜3500mPasの粘度、及び150〜220mKOH/gのOH価を有する。
【0028】
このようにして得られる本発明のポリオールは、特に高い疎水性に特徴がある。従って、このようなポリオールは、例えば建築分野での厚膜用途の為の2Kポリウレタン被覆系(2KPU系)に特に適している。
【0029】
そこで、本発明は更に、少なくとも
a)1種又はそれ以上の本発明のポリオール、及び
b)1種又はそれ以上のポリイソシアネート
を含む、ポリウレタン系(PU系)、好ましくは2KPU系を提供する。
【0030】
成分b)として使用されるポリイソシアネートは、典型的には、少なくとも2の平均NCO官能価及び少なくとも140g/モルの分子量を有する有機ポリイソシアネートである。特に適しているのは、(i)分子量140〜300g/モルの未変性有機ポリイソシアネート、(ii)分子量300〜1000g/モルのペイントポリイソシアネート、及び(iii)分子量が1000g/モルを超えるウレタン基含有NCOプレポリマー、又は(i)〜(iii)の混合物である。
【0031】
グループ(i)のポリイソシアネートの例は、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,5−ジイソシアナト−1,2−ジメチルペンタン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1−イソシアナト−1−メチル−4−(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,12−ジイソシアナトドデカン、シクロヘキサン−1,3−及び1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート異性体、トリイソシアナトノナン(TIN)、2,4−ジイソシアナトトルエン又はそれと2,6−ジイソシアナトトルエンとの混合物(好ましくは、混合物を基準に35質量%までの2,6−ジイソシアナトトルエンを含有)、2,2’−、2,4’−又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン又はジフェニルメタン系列の工業用ポリイソシアネート混合物、若しくは上記イソシアネートの所望の混合物である。中でも、ジフェニルメタン系列のポリイソシアネートを使用するのが好ましく、より好ましくはそれらの異性体混合物を使用する。
【0032】
グループ(ii)のポリイソシアネートは、自体既知のペイントポリイソシアネートである。用語「ペイントポリイソシアネート」は、本発明において、グループ(i)で例示した種類の単純ジイソシアネートを常套法によりオリゴマー化して得られる化合物又はそれらの混合物を意味する。適当なオリゴマー化反応の例には、カルボジイミド化、二量化、三量化、ビウレット化、尿素形成、ウレタン化、アロファネート化及び/又はオキサジアジン構造の形成を伴った環化が包含される。「オリゴマー化」においては、しばしば、上記反応の2つ又はそれ以上が同時に又は連続して起こる。
【0033】
「ペイントポリイソシアネート」(ii)は、好ましくは、単純ジイソシアネートに基づく、ビウレットポリイソシアネート、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、イソシアヌレート及びウレトジオン基含有ポリイソシアネート混合物、ウレタン及び/又はアロファネート基含有ポリイソシアネート、若しくはイソシアヌレート及びアロファネート基含有ポリイソシアネート混合物である。
【0034】
この種のペイントポリイソシアネートの調製方法は、既知であり、例えば、DE-A 1 595 273、DE-A 3 700 209及びDE-A 3 900 053 又はEP-A-0 330 966、EP-A-0 259 233、EP-A-0 377 177、EP-A-0 496 208、EP-A-0 524 501又はUS-A 4 385 171 に記載されている。
【0035】
グループ(iii)のポリイソシアネートは、一方で先に例示した単純ジイソシアネート及び/又はペイントポリイソシアネート(ii)と、他方で300g/モルを超える分子量の有機ポリヒドロキシ化合物に基づく、通常のイソシアナト官能性プレポリマーである。ウレタン基を含むグループ(ii)のペイントポリイソシアネートは、62〜300g/モルの分子量を有する低分子量ポリオール(適当なポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール又はこれらアルコールの混合物)の誘導体であるが、グループ(iii)のNCOプレポリマーは、300g/モルを超える、好ましくは500g/モルを超える、より好ましくは500〜8000g/モルの分子量Mnを有するポリヒドロキシ化合物を用いて調製される。特に、この種のポリヒドロキシ化合物は、1分子あたり2〜6個、好ましくは2〜3個のヒドロキシル基を有する化合物であり、エーテルポリオール、エステルポリオール、チオエーテルポリオール、カーボネートポリオール及びポリアクリレートポリオール並びにこれらポリオールの混合物から選択される。
【0036】
NCOプレポリマー(iii)の調製において、上記の比較的高い分子量のポリオールを上記の低分子量ポリオールとブレンドして使用することも可能であり、これにより、ウレタン基を含む低分子量ポリイソシアネート(ii)と比較的高い分子量のNCOプレポリマー(iii)の混合物が直接得られる。
【0037】
NCOプレポリマー(iii)又はそれとペイントポリイソシアネート(ii)との混合物を調製するために、先に例示した種類のジイソシアネート(i)又は先に例示したペイントポリイソシアネート(ii)を、比較的高い分子量のヒドロキシル化合物又はそれと上記した種類の低分子量ポリヒドロキシル化合物との混合物と、NCO/OH当量比が1.1:1〜40:1、好ましくは2:1〜25:1に保たれるようにして、反応させて、ウレタンを形成する。場合により、過剰の蒸留可能な出発ジイソシアネートを用いて、反応の後にそのジイソシアネートを蒸留により除去し、モノマーを含まないNCOプレポリマー、即ち、出発ジイソシアネート(i)及び純NCOプレポリマー(iii)の混合物を得る。
【0038】
上記ポリイソシアネートは、2KPU系が得られるように、好ましくは未ブロック状態で用いる。あるいは、ブロッキング剤を用いて上記ポリイソシアネートのNCO基をブロックし、本発明で必須のポリオールと共に処方して貯蔵安定性の1KPU系を得ることができる。
【0039】
本発明のPU系では、成分a)、b)及び任意の更なる成分の量は、NCO:OH当量比が0.5:1〜2.0:1、好ましくは0.8:1〜1.5:1となるように、選択される。
【0040】
成分a)及びb)に加えて、本発明のPU系は、更なる成分、例えば、付加的な高分子量ポリオール、触媒又は助剤及び添加剤を含むことができる。
【0041】
触媒として、NCO/OH反応を促進するためにポリウレタン化学において自体既知である化合物を使用することができる(“Kunststoff Handbuch 7, Polyurethane”, Carl-Hanser-Verlag, Munich-Vienna, 1984, 97-98頁参照)。
【0042】
そのような触媒には、以下の化合物が包含される:第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−エンドエチレンピペラジン、N−メチルピペラジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノシクロアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、又は金属塩、例えば塩化鉄(III)、塩化亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、オクタン酸スズ(II)、エチルカプロン酸スズ(II)、パルミチン酸スズ(II)、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)及びグリコール酸モリブデン、又はこれら触媒の所望の混合物。成分C)の化合物として、スズ化合物を使用するのが好ましい。
【0043】
PU系に使用し得る助剤及び添加剤の例には、界面活性剤、内部離型剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解防止剤、殺菌剤、均展剤、酸化防止剤(例えば、2,6−ジ−tert.−ブチル−4−メチルフェノール)、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール型のUV吸収剤、窒素原子において置換又は未置換のHALS化合物型の光安定剤(例えば、TinuvinTM 292及びTinuvinTM 770 DF(Ciba Spezialitaeten GmbH (ドイツLampertheim)製))、又は他の市販安定剤(例えば、“Lichtschtzmittel fuer Lacke”(A. Valet, Vincentz Verlag, Hanover, 1996)及び“Stabilization of Polymeric Materials”(H. Zweifel, Springer Verlag, Berlin, 1997, Appendix 3, 181-213頁)に記載の安定剤)が包含される。
【0044】
本発明のPU系を製造するために、成分a)、b)及び任意の架橋剤を、NCO:OH当量比が0.5:1〜2.0:1、好ましくは0.8:1〜1.5:1となるように、混合される。各成分の混合中又は後に、所望により、上記の助剤及び添加剤並びに触媒を混合することができる。
【0045】
本発明のPU系の適用は、当技術分野では常套の方法、例えば刷毛塗り、ナイフコーティング、噴霧及び浸漬により、行うことができる。
【0046】
本発明のPU系は、その非常に小さい吸水性、好ましくは7質量%未満、より好ましくは4質量%未満の吸水率に特徴がある。吸水率を測定するには、試料を、23℃の温度及び97%の雰囲気湿度において21日間、開放系で保管し、質量の増加を測定する。この卓越した性質に基づいて、本発明の系は、大きい膜厚でも、気泡を起こすことなく適用でき、硬化できる。
好ましい膜厚は、0.5〜10mm、好ましくは0.7〜6mmであるが、この膜厚は、より薄いまたはより厚い層の製造を排除するものではない。
【0047】
基本的に、本発明のPU系は、全ての種類の材料を被覆するのに使用することができる。挙げることができる材料の例には、ガラス、木材、金属、鉱物基材、例えばコンクリートが包含される。
【0048】
PU系は、好ましくは、金属製基材を物理的損傷や腐食から保護するために、また、コンクリートのような鉱物基材を環境の影響及び物理的損傷から保護するために、使用する。
【実施例】
【0049】
全ての%は、他に記載のない限り、質量%である。
動的粘度は、回転粘度計(Viscotester 550, Thermo Hakke GmbH(D76227 Karlsruhe))を用いて、23℃で、40s−1の剪断速度において、DIN 53019に従って測定した。
ショアD硬さは、DIN 53505に従って測定した。
吸水率は、試料を、23℃の温度及び97%の雰囲気湿度において21日間、開放系で保管した後の、質量の増加により決定する。
吸水率は、以下の式に従って計算される。
【数1】

【0050】
CardoliteTM NX-4670
カルダノールの製造における副生物(フェノール性OH基含有、OH価207〜250mgKOH/g、23℃での粘度5000〜20000mPa)。Cardolite Chemical N.V.(ベルギー)製。
DesmodurTM VL
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリイソシアネート(NCO含有量31.5質量%及び23℃での粘度90mPas)。Bayer AG(ドイツLeverkusen)製。
【0051】
ポリオールA−Iの調製
11のpHを有するCardoliteTM NX-4670 4000gを、10リットル反応器に充填した。反応器を窒素で不活性状態にし、130℃に加熱した。続いて、プロピレンオキシド2000gを4時間かけて加えた。反応の終了後、生成物を冷却し、反応器から取り出した。次いで、この生成物2000gを水66.6g及び濃度12%の硫酸と、80℃で60分間混合した。硫酸は、pH7になるまで加えた。得られた最終生成物は、188mgKOH/gのOH価、23℃で1770mPasの粘度、7.1のpH及び5.1質量%の吸水率を有していた。
【0052】
ポリオールA−IIの調製
11のpHを有するCardoliteTM NX-4670 4800gを、10リットル反応器に充填した。反応器を窒素で不活性状態にし、130℃に加熱した。続いて、プロピレンオキシド1200gを4時間かけて加えた。反応の終了後、生成物を冷却し、反応器から取り出した。次いで、この生成物2000gを水66.6g及び濃度12%の硫酸と、80℃で60分間混合した。硫酸は、pH7になるまで加えた。その後、存在する水を留去し、デプス・フィルターT 850(Seitz(ドイツ)製)を用いた濾過により、生成物から析出物を除去した。最終生成物は、200mgKOH/gのOH価、23℃で1416mPasの粘度、6.7のpH及び3.5質量%の吸水率を有していた。
【0053】
ポリオールA−IIIの調製
CardoliteTM NX-4670 2000gを水と混合し、濃度12%の硫酸を加えて、pHを7とした。その後、存在する水を留去し、デプス・フィルターT 850(Seitz(ドイツ)製)を用いた濾過により、生成物から析出物を除去した。最終生成物は、250mgKOH/gのOH価、23℃で2099mPasの粘度及び7.9のpHを有していた。
【0054】
実施例1〜3
本発明の2KPU系を製造するために、ポリオール成分を、NCO/OH比1:1で、ポリイソシアネート成分と混合し、混合物を、プラスチック基材に注ぎ、膜厚3〜5mmで塗布した。続いて、室温で硬化させた。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例3(比較)が示すように、アルコキシル化を行わないと、湿潤条件及びアルカリ性条件に対する十分な抵抗性が達成できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
140〜220mgKOH/gのヒドロキシル価及び23℃で1000〜4000mPasの粘度を有する疎水性ポリオールの製造方法であって、
A)180〜300mgKOH/gのヒドロキシル含有量、
23℃で5000〜20000mPaの粘度及び
2.8〜4.5の平均ヒドロキシル官能価を有し、
5〜20質量%のカルダノール(3−ペンタデカジエニルフェノール)、
5〜10質量%のカルドール(3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)及び
1〜5質量%の6−メチルカルドール(2−メチル−3−ペンタデカジエニルレゾルシノール)
を含む混合物を、
B)アルキレンオキシド(AO)と、A)対B)の量比を1:9〜9:1として、反応させて、成分A)のAO反応性基にAOモノマーを付加させる
製造方法。
【請求項2】
A)において、CNSL(カシューナッツ殻液)から出発するカルダノールの製造からの残渣を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
B)において、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの混合物を用いる請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
成分A)対成分B)の量比が1:5〜5:1である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる疎水性ポリオール。
【請求項6】
a)1種又はそれ以上の請求項5に記載の疎水性ポリオール、及び
b)1種又はそれ以上のポリイソシアネート
を少なくとも含むポリウレタン(PU)系。
【請求項7】
請求項5に記載の疎水性ポリオールを用いて得られる被覆、接着剤、シーラント又は成形用コンパウンド。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆により被覆された基材。

【公表番号】特表2007−524746(P2007−524746A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500101(P2007−500101)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001488
【国際公開番号】WO2005/082967
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】