説明

低級アルキルアルコールの発酵生産に有用なアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)

本発明は、イソブタノールを含む低級アルキルアルコールの生成に好適な候補ADH酵素に関する。本発明はまた、かかるADH酵素を含む組換え宿主細胞及びそれにおいて低級アルキルアルコールを生成する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業微生物学及びアルコール製造の分野に関する。具体的には、本発明は、微生物における人工的に改変した経路を介した低級アルキルアルコールの生産に好適なアルコールデヒドロゲナーゼに関する。より具体的には、本発明は、微生物における人工的に改変した経路を介したブタノール、特にイソブタノールの生産に好適なアルコールデヒドロゲナーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
ブタノールは重要な工業用化学物質であり、燃料添加剤として、プラスチック工業における化学品原料として、並びに食品及び香料工業における食品等級の抽出剤として有用である。毎年100〜120億ポンドのブタノールが石油化学的手段により生産され、この汎用化学製品の需要は今後ますます増大するものと思われる。
【0003】
イソブタノールの化学的合成方法は公知であり、オキソ合成、一酸化炭素の接触水素化(非特許文献1)及びメタノールのn−プロパノールとのゲルベ縮合(非特許文献2)などがある。これらの方法は石油化学品に由来する出発材料を使用し、概してコストが高く、環境に優しいものではない。
【0004】
イソブタノールは酵母発酵の副産物として生物学的に生成される。イソブタノールは、この真菌群によるアミノ酸の不完全な代謝の結果として形成される「フーゼル油」の一構成成分である。イソブタノールは具体的には、L−バリンの異化から生成される。いわゆるエールリッヒ経路の酵素類によりL−バリンのアミン基が窒素源として取り込まれた後、生じたα−ケト酸が脱炭酸され、イソブタノールに還元される(非特許文献3)。飲料の発酵中に得られるフーゼル油及び/又はその構成成分の収率は、典型的には低い。例えば、ビール発酵で生じるイソブタノールの濃度は16ppm未満であることが報告されている(非特許文献4)。Dickinson et al.,上記により記載されるとおり、外因性のL−バリンを発酵混合物に添加するとイソブタノールの収率は上昇し、同文献では、発酵混合物に20g/Lの濃度でL−バリンを提供することによって3g/Lのイソブタノールの収率が達成されることが報告されている。加えて、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)のアルギン酸カルシウム固定化細胞によるn−プロパノール、イソブタノール及びイソアミルアルコールの生成が示されている。L−Leu、L−Ile、L−Val、α−ケトイソカプロン酸(α−KCA)、α−ケト酪酸(α−KBA)又はα−ケトイソ吉草酸(α−KVA)のいずれかを補足した10%グルコース含有培地が用いられた(非特許文献5)。α−KCAによりイソブタノールレベルは上昇した。アミノ酸でも対応するアルコールが得られたが、その程度はケト酸より小さかった。成長培地にアミノ酸のロイシン、イソロイシン、及び/又はバリンを窒素源として添加すると、炭水化物からのC〜Cアルコールの収率が増加することが示された(特許文献1)。
【0005】
上述の方法は生物学的手段によるイソブタノール生産の可能性を示しているが、工業規模でイソブタノールを生産するには、これらの方法は費用があまりにも高額である。
【0006】
効率的な生合成方法のためには、最後の工程でイソブチルアルデヒドをイソブタノールに速やかに変換する最適な酵素が求められる。さらに、イソブチルアルデヒドが生成宿主に蓄積すると、通常、望ましくない細胞毒性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/040392号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th edition,2003,Wiley−VCHVerlag GmbH and Co.,Weinheim,Germany,Vol.5,pp.716−719
【非特許文献2】Carlini et al.,J.Molec.Catal.A:Chem.220:215−220,2004
【非特許文献3】Dickinson et al.,J.Biol.Chem.273:25752−25756,1998
【非特許文献4】Garcia et al.,Process Biochemistry 29:303−309,1994
【非特許文献5】Oaxaca,et al.,Acta Biotechnol.11:523−532,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)は、アルデヒドとアルコールとの相互変換を触媒する大規模な酵素群を含むタンパク質ファミリーであり(de Smidt et al.,FEMS Yeast Res.,8:967−978,2008)、種々のアルコール及びアルデヒドに対して様々な特異性を有する。組換え微生物における製品アルコールの形成を触媒するのに好適なADH酵素を同定することが必要とされている。また、イソブタノールの高い速度での形成を触媒し得る好適なADH酵素であって、イソブチルアルデヒドに対し基質として、及び高レベルのイソブタノールの存在下で特異的親和性を有するADH酵素を同定することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む組換え微生物宿主細胞に関し、ここでこのポリペプチドはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する。実施形態において、組換え微生物宿主細胞は低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路をさらに含み、ここでこの生合成経路は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドにより触媒される基質から生成物への変換を含む。実施形態において、ポリペプチドはアルコールデヒドロゲナーゼ活性と、以下の特徴のうちの1つ以上とを有する:(a)低級アルキルアルデヒドに対するK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;(b)そのポリペプチドについての低級アルキルアルコールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び(c)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは上掲の特徴の2つ以上を有する。実施形態において、ポリペプチドはNADHを補因子として選択的に使用する。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、上掲の特徴の3つを有する。実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はエタノール生合成経路である。一実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路はブタノール生合成経路である。
【0011】
従って本発明の一態様は、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞であって、生合成経路が、アルコールデヒドロゲナーゼ活性と、以下の特徴:(a)イソブチルアルデヒドに対するK値が、前記ポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;(b)前記ポリペプチドについてのイソブタノールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び(c)前記ポリペプチドについてのイソブチルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いことの1つ以上、2つ以上、又は全てとを有するポリペプチドにより触媒される基質から生成物への変換を含む、組換え微生物宿主細胞である。実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はエタノール生合成経路である。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号21、22、23、24、25、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは配列番号31のアミノ酸配列を有する。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、11、12、14、15、16、又は17のヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされる。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、又は少なくとも約20g/Lの濃度のイソブタノールの存在下でイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換を触媒する。
【0012】
実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、以下のステップ:(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;(d)α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び(e)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップの各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり;ここで前記微生物宿主細胞はイソブタノールを生成する。実施形態において、(a)ピルベートからアセトラクテートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.2.1.6を有するアセト乳酸シンターゼであり;(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.186を有するアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ(acetohydroxy acid isomeroreducatase)であり;(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.9を有するアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼであり;及び(d)α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.1.1.72を有する分枝鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼである。実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、以下のステップ:(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;(d)α−ケトイソバレレートからイソブチリルCoAへのステップ;(e)イソブチリルCoAからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び(f)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップの各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり;ここで前記微生物宿主細胞はイソブタノールを生成する。実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、以下のステップ:(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;(d)α−ケトイソバレレートからバリンへのステップ;(e)バリンからイソブチルアミンへのステップ;(e)イソブチルアミンからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び(f)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップの各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり;ここで前記微生物宿主細胞はイソブタノールを生成する。
【0013】
本明細書にはまた、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路と、配列番号21、22、23、24、25、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドとを含む組換え微生物宿主細胞も提供される。実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、以下のステップ:(a)ピルベートからα−アセトラクテートへのステップ;(b)α−アセトラクテートからアセトインへのステップ;(c)アセトインから2,3−ブタンジオールへのステップ;(d)2,3−ブタンジオールから2−ブタノンへのステップ;及び(e)2−ブタノンから2−ブタノールへのステップの各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む2−ブタノール生合成経路であり;ここで前記微生物宿主細胞は2−ブタノールを生成する。実施形態において、(a)ピルベートからアセトラクテートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.2.1.6を有するアセト乳酸シンターゼであり;(b)アセトラクテートからアセトインへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.1.1.5を有するアセト乳酸デカルボキシラーゼであり;(c)アセトインから2,3−ブタンジオールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.76又はEC番号1.1.1.4を有するブタンジオールデヒドロゲナーゼであり;(d)ブタンジオールから2−ブタノンへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.28を有するブタンジオールデヒドラターゼであり;及び(e)2−ブタノンから2−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.1を有する2−ブタノールデヒドロゲナーゼである。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
実施形態において、低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路は、以下のステップ:(a)アセチルCoAからアセトアセチルCoAへのステップ;(b)アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへのステップ;(c)3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへのステップ;(d)クロトニルCoAからブチリルCoAへのステップ;(e)ブチリルCoAからブチルアルデヒドへのステップ;及び(f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへのステップの各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む1−ブタノール生合成経路であり;ここで前記微生物宿主細胞は1−ブタノールを生成する。実施形態において、(a)アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.3.1.9又は2.3.1.16を有するアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼであり;(b)アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.35、1.1.1.30、1.1.1.157、又は1.1.1.36を有する3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼであり;(c)3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.17又は4.2.1.55を有するクロトナーゼであり;(d)クロトニルCoAからブチリルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.3.1.44又は1.3.1.38を有するブチリルCoAデヒドロゲナーゼであり;(e)ブチリルCoAからブチリルアルデヒドへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.2.1.57を有するブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼであり;及び(f)ブチリルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、1−ブタノールデヒドロゲナーゼである。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、細菌、シアノバクテリア、糸状菌及び酵母からなる群から選択される。実施形態において、宿主細胞は細菌細胞又はシアノバクテリア細胞である。実施形態において、宿主細胞の属は、サルモネラ属(Salmonella)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、バチルス属(Bacillus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、ザイモモナス属(Zymomonas)、大腸菌属(Escherichia)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア属(Serratia)、赤痢菌属(Shigella)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エルウィニア属(Erwinia)、パエニバチルス属(Paenibacillus)、及びザントモナス属(Xanthomonas)からなる群から選択される。実施形態において、本明細書に提供される宿主細胞の属は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、パキソレン属(Pachysolen)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ザイゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、ガラクトミセス属(Galactomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、トルラスポラ属(Torulaspora)、デバリオミセス属(Debayomyces)、ウィリオプシス属(Williopsis)、デッケラ属(Dekkera)、クロエケラ属(Kloeckera)、メチニコウイア属(Metschnikowia)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、及びカンジダ属(Candida)からなる群から選択される。
【0016】
本発明の別の態様はイソブタノールの生成方法であり、これは、(a)イソブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップであって、この経路が、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒する異種ポリペプチドを含み、このポリペプチドが配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するステップと;(b)イソブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップとを含む。実施形態において、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒する異種ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。別の態様は2−ブタノールの生成方法であり、これは、(a)2−ブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップであって、この経路が、配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する異種ポリペプチドを含むステップと;(b)2−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップとを含む。実施形態において、異種ポリペプチドは配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。別の態様は1−ブタノールの生成方法であり、これは、(a)1−ブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップであって、この経路が、配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する異種ポリペプチドを含むステップと;(b)1−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップとを含む。実施形態において、異種ポリペプチドは配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。
【0017】
本明細書にはまた、低級アルキルアルコールの生成方法も提供され、これは、(a)本明細書に提供される組換え宿主細胞を提供するステップと;(b)低級アルキルアルコールが生成される条件下で発酵培地において前記宿主細胞を発酵性炭素基質と接触させるステップと;(c)前記低級アルキルアルコールを回収するステップとを含む。実施形態において、前記発酵性炭素基質は、単糖類、オリゴ糖類、及び多糖類からなる群から選択される。実施形態において、単糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、キシロース、及びフルクトースからなる群から選択される。実施形態において、前記オリゴ糖は、スクロース、マルトース、及びラクトースからなる群から選択される。実施形態において、多糖は、デンプン、セルロース、及びマルトデキストリンからなる群から選択される。実施形態において、条件は、嫌気性、好気性、又は微好気性である。実施形態において、前記低級アルキルアルコールは、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、又は少なくとも約20g/Lの力価で生成される。実施形態において、前記低級アルキルアルコールは、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びエタノールからなる群から選択される。
【0018】
実施形態において、イソブタノールが生成される。実施形態において、イソブタノールの生成方法は、(a)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒し、且つ以下の特徴:(i)低級アルキルアルデヒドのK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;(ii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;(iii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いことのうちの1つ以上を有する異種ポリペプチドを含む組換え宿主細胞を提供するステップと;(b)イソブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップとを含む。
【0019】
実施形態において、1−ブタノールが生成される。実施形態において、1−ブタノールの生成方法は、(a)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒し、且つ以下の特徴:(i)低級アルキルアルデヒドに対するK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;(ii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルコールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び(iii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いことのうちの1つ以上を有する異種ポリペプチドを含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップと;(b)1−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップとを含む。
【0020】
本明細書にはまた、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する候補ポリペプチドのスクリーニング方法も提供され、前記方法は、a)候補ポリペプチドと、NADH及びNADPHからなる群から選択される補因子とを提供するステップと;b)候補ポリペプチドについて低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下でA340nmの経時的な変化を観察するステップと;c)A340nmの変化が低下である候補ポリペプチドを選択するステップであって、この低下が、低級アルキルアルコールの存在下における低下と比べて低級アルキルアルコールの非存在下でより速いステップとを含む。実施形態において、本方法はさらに、(d)配列番号21又は26のいずれかのアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドとNADHとを提供するステップと;(e)対照ポリペプチドについて低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下でA340nmの経時的な変化を観察するステップと;(f)(e)で観測された変化を(b)で観測された変化と比較するステップと;(g)低級アルキルアルコールの非存在下におけるA340nmの低下が対照ポリペプチドについて観測された低下より速い候補ポリペプチドを選択するステップとを含む。実施形態において、本方法はさらに、(d)配列番号21又は26のいずれかのアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドとNADHとを提供するステップと;(e)対照ポリペプチドについて低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下でA340nmの経時的な変化を観察するステップと;(f)(e)で観測された変化を(b)で観測された変化と比較するステップと;(g)低級アルキルアルコールの存在下におけるA340nmの低下が対照ポリペプチドについて観測された低下より速い候補ポリペプチドを選択するステップとを含む。
【0021】
本明細書にはまた、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換を触媒するための微生物宿主細胞における配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40のアミノ酸配列と少なくとも約80%の同一性を有するアルコールデヒドロゲナーゼの使用も提供され;ここで前記宿主細胞はイソブタノール生合成経路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】イソブタノールの存在下及び非存在下でADH候補酵素により触媒された、NAD(P)Hによるイソブチルアルデヒド還元を示す準生理学的経時変化アッセイの結果を示す。酵素活性は、340nmでの吸光度変化を追跡することにより計測する。各パネルにおいて、その酵素を除く他の全ての反応物の存在下におけるNADH又はNADPH単独でのA340nmを対照として使用した。パネルAは、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBについての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルBは、ウマ肝臓ADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。
【図1b】イソブタノールの存在下及び非存在下でADH候補酵素により触媒された、NAD(P)Hによるイソブチルアルデヒド還元を示す準生理学的経時変化アッセイの結果を示す。酵素活性は、340nmでの吸光度変化を追跡することにより計測する。各パネルにおいて、その酵素を除く他の全ての反応物の存在下におけるNADH又はNADPH単独でのA340nmを対照として使用した。パネルCは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH6についての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルDは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH7についての経時的な340nm吸光度変化を示す。
【図1c】イソブタノールの存在下及び非存在下でADH候補酵素により触媒された、NAD(P)Hによるイソブチルアルデヒド還元を示す準生理学的経時変化アッセイの結果を示す。酵素活性は、340nmでの吸光度変化を追跡することにより計測する。各パネルにおいて、その酵素を除く他の全ての反応物の存在下におけるNADH又はNADPH単独でのA340nmを対照として使用した。パネルEは、ベイジエリンキア・インディカ(Beijierickia indica)ADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルFは、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)ADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。
【図1d】イソブタノールの存在下及び非存在下でADH候補酵素により触媒された、NAD(P)Hによるイソブチルアルデヒド還元を示す準生理学的経時変化アッセイの結果を示す。酵素活性は、340nmでの吸光度変化を追跡することにより計測する。各パネルにおいて、その酵素を除く他の全ての反応物の存在下におけるNADH又はNADPH単独でのA340nmを対照として使用した。パネルGは、ドブネズミ(Rattus norvegicus)ADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルHは、サームス・エスピー(Therm.sp.)ATN1 ADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。
【図2】ウマ肝臓ADH及びアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBで観測されたイソブタノール阻害レベルを比較する準生理学的経時変化アッセイの結果を同じ図内に示す。これらのアッセイは、図1について記載したとおりである。
【図3】シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(1kolA)(配列番号79)、ウマ肝臓ADH(2ohxA)(配列番号21)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)ADH(1pedA)(配列番号29)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)L−トレオニン(theronine)3−デヒドロゲナーゼ(2d8aA)(配列番号80)、及びアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadB(配列番号26)のポリペプチド配列のアラインメントである。
【図4】(i)サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、大腸菌(E.coli)、ヒト(Homo sapiens)、C.エレガンス(C.elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及びシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)における類似配列についてのタンパク質BLAST検索、並びに(ii)ウマ肝臓ADH及びアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBを問い合わせ配列として使用した類似配列についての蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank:PDB)のタンパク質BLAST検索からヒットとして得られたオキシドレダクターゼ酵素の系統樹である。
【図5】アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBを問い合わせ配列として使用したNCBIの重複のないタンパク質配列データベース(nr)のタンパク質BLAST検索からのヒットのなかで、配列がアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBに対してより近縁関係にあるオキシドレダクターゼ酵素配列の系統樹である。
【図6】例示的なピルベートからのイソブタノールへの生合成経路の図である。
【図7】イソブチルアルデヒドの還元に関連する酵素の特性を表すミカエリス−メンテンプロットを示す。図7Aは、ADH6のイソブタノールに対するKを決定するアッセイの結果を示し、図7Bは、BiADHのイソブタノールに対するKを決定するアッセイの結果を示す。
【図8】図8Aは、図1について記載したとおりの準生理学的経時変化アッセイの結果を示す。パネルAは、フェニロバクテリウム・ズシネウム(Phenylobacterium zucineum)由来のADHについての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルBは、メチロセラ・シルベストリス(Methylocella silvestris)BL2についての経時的な340nm吸光度変化を示す。パネルCは、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)AYEについての経時的な340nm吸光度変化を示す。
【図9】pdc1::ilvD::FBA−alsS::trx1 A遺伝子座を示す。pdc1−trx1遺伝子間領域におけるalsS遺伝子のこの組込みは、ベクター、マーカー遺伝子及びloxP配列が失われているため「スカーレス(scarless)」な挿入と考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書と共に電子的に提出された、且つ参照により本明細書に援用される添付の配列表に提供される以下の配列は、米国特許法施行規則第1.821〜1.825条(「ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に準拠し、且つ世界知的所有権機関(WIPO)基準ST.25(2009年)並びにEPO及びPCTの配列表要件(規則5.2及び49.5(aの2)、並びに実施細則第208条及び付録C)に従う。ヌクレオチド及びアミノ酸配列データに使用する記号及び形式は、米国特許法施行規則第1.822条に定められる規則に準拠する。
【0024】
配列番号1及び7〜20は、コドン最適化ポリヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号2及び3は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のポリヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号4及び5は、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のポリヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号6は、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のポリヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号21〜40及び79〜80はポリペプチド配列である。
【0029】
配列番号41〜50及び52〜57及び59〜74及び77〜78はプライマーである。
【0030】
配列番号51は、pRS423::TEF(M4)−xpk1+ENO1−eutDプラスミドの配列である。
【0031】
配列番号58は、pUC19−URA3::pdc1::TEF(M4)−xpk1::kanプラスミドの配列である。
【0032】
配列番号75は、pLH468プラスミドの配列である。
【0033】
配列番号76は、BiADHコード領域(酵母用にコドン最適化)+5’GPM相同プロモーター及び3’ADH1相同ターミネーターである。
【0034】
配列番号81は、pRS426::GPD−xpk1+ADH−eutDプラスミドの配列である。
【0035】
本発明の詳細な説明
上記の問題は、本明細書に記載されるとおり、様々な候補ADH酵素の評価に好適なスクリーニング戦略を考案及び使用することにより解決される。このスクリーニング戦略を用いて、望ましい特徴を有するADH酵素を同定することができる。これらの同定されたADH酵素を使用して、イソブタノールなどの低級アルキルアルコールの生物学的生産を増進することができる。また、同定された望ましいADH酵素を発現する組換え宿主細胞、及びそれを使用した低級アルキルアルコールの生成方法も提供される。
【0036】
本発明は、高濃度のイソブタノールの存在下でイソブチルアルデヒドをイソブタノールに速やかに変換する能力に関して多数のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)酵素をスクリーニングする方法について記載する。また、本発明では、細菌ベイジェリンキア・インディカ・サブスピーシーズ・インディカ(Beijerinckia indica subspecies indica)ATCC 9039に存在する新規ADHについても記載する。ベイジェリンキア・インディカ(Beijerinckia indica)ADH酵素は、イソブチルアルデヒド供給源を有する組換え微生物におけるイソブチルアルデヒドからのイソブタノールの生成に使用することができる。
【0037】
本発明は、数多くの商業的及び工業的需要に対応する。ブタノールは、様々な用途を有する重要な工業的汎用化学製品であり、燃料又は燃料添加剤としてのその可能性は特に重要である。しかしながら、ガソリンと同様のエネルギー含量を有し、且ついかなる化石燃料とも混合できるのは、四炭素アルコールのブタノールのみである。ブタノールは標準的な内燃機関で燃焼させたときにCOしか生じず、SOもNOもほとんど又は全く生じないため、燃料又は燃料添加剤として好ましい。さらにブタノールは、これまで最も好ましい燃料添加剤とされるエタノールと比べ、腐食性が低い。
【0038】
ブタノールは、バイオ燃料又は燃料添加剤としてのその有用性に加え、新興の燃料電池工業における水素の配給問題に影響を与える可能性がある。現行の燃料電池は、水素の輸送及び配給に付随する安全上の懸念に悩まされている。ブタノールはその水素含有量に関して容易に改質することができ、及び燃料電池又は車両のいずれに求められる純度でも、既存のガソリンスタンドを介して配給することができる。
【0039】
本発明ではブタノールは植物由来の炭素源から生成され、標準的な石油化学的ブタノール生産方法に付随する環境への負の影響が回避される。一実施形態において、本発明は、イソブタノール生合成経路の最後の反応、すなわちイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換におけるフラックスを増加させるADH酵素の選択及び同定方法を提供する。一実施形態において、本発明は、1−ブタノール生合成経路の最後の反応、すなわちブチリルアルデヒドから1−ブタノールへの変換におけるフラックスを増加させるADH酵素の選択及び同定方法を提供する。一実施形態において、本発明は、2−ブタノール生合成経路の最後の反応、すなわち2−ブタノンから2−ブタノールへの変換におけるフラックスを増加させるADH酵素の選択及び同定方法を提供する。特に有用なADH酵素は、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換反応におけるフラックスを、既知の対照ADH酵素と比較したときより良好に増加させることが可能なものである。本発明はまた、そのように同定されたADH酵素を発現する組換え宿主細胞及びその使用方法も提供する。
【0040】
特許請求の範囲及び本明細書の解釈には、以下の定義及び略称を使用するものとする。
【0041】
用語「発明」又は「本発明」は、本明細書で使用されるとき、概して、提出されたとおりの、又は後に補正及び補足されるとおりの特許請求の範囲、又は本明細書に記載される本発明のあらゆる実施形態に適用されることが意図される。
【0042】
用語「イソブタノール生合成経路」は、ピルベートからイソブタノールを生成する酵素経路を指す。
【0043】
用語「1−ブタノール生合成経路」は、ピルベートから1−ブタノールを生成する酵素経路を指す。
【0044】
用語「2−ブタノール生合成経路」は、アセチルCoAから2−ブタノールを生成する酵素経路を指す。
【0045】
用語「NADH消費アッセイ」は、アルコールデヒドロゲナーゼ酵素の比活性を決定するための酵素アッセイを指し、この比活性は、Racker,J Biol.Chem.,184:313−319(1950)に記載されるとおり、酵素反応の補因子であるNADHの化学量論的な消失として計測される。
【0046】
「ADH」は、酵素アルコールデヒドロゲナーゼの略称である。
【0047】
用語「イソブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ」、「第二級アルコールデヒドロゲナーゼ」、「ブタノールデヒドロゲナーゼ」、「分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼ」、及び「アルコールデヒドロゲナーゼ」は同義的に使用され、EC番号EC 1.1.1.1を有する酵素を指し得る(Enzyme Nomenclature 1992,Academic Press,San Diego)。好ましい分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼはEC番号1.1.1.265により知られるが、他のアルコールデヒドロゲナーゼ(具体的には、EC 1.1.1.1又は1.1.1.2)のもとにも分類され得る。これらの酵素は電子供与体としてNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)及び/又はNADPHを利用する。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「異種」は、通常は宿主生物に見られないが、導入されるか、又はその他の形で修飾されるポリヌクレオチド、遺伝子又はポリペプチドを指す。「異種ポリヌクレオチド」には、対応する天然ポリヌクレオチドと異なる形態で宿主生物に再導入されるか、又はその他の形で修飾される宿主生物由来の天然コード領域、又はその一部、並びに異なる生物由来のコード領域、又はその一部が含まれる。「異種遺伝子」には、対応する天然遺伝子と異なる形態で供給源生物から再導入されるか、又はその他の形で修飾される天然コード領域、又はその一部、並びに異なる生物由来のコード領域が含まれる。例えば異種遺伝子には、天然宿主に再導入される非天然調節領域を含むキメラ遺伝子の一部である天然コード領域が含まれ得る。「異種ポリペプチド」には、対応する天然ポリペプチドと異なる形態で宿主生物に再導入されるか、又はその他の形で修飾される天然ポリペプチド、並びに異なる生物由来のポリペプチドが含まれる。
【0049】
用語「炭素基質」又は「発酵性炭素基質」は、本発明の宿主生物により代謝されることが可能な炭素源を指す。本発明で使用することのできる炭素源の非限定的な例としては、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、及び一炭素基質又はそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
用語「kcat」及び「K」及び「K」は当業者に公知であり、Enzyme Structure and Mechanism,2nd ed.(Ferst,W.H.Freeman:NY,1985;pp 98−120)に記載されている。用語「kcat」は「ターンオーバー数」と称されることが多く、単位時間当たりに1つの活性部位につき生成物分子に変換される最大基質分子数、又は酵素が単位時間当たりに代謝回転する回数として定義される。kcat=Vmax/[E]、式中[E]は酵素濃度である(Ferst,上記)。
【0051】
用語「触媒効率」は、酵素のkcat/Kとして定義される。「触媒効率」を用いて酵素の基質に対する特異性が定量化される。
【0052】
用語「比活性」は酵素単位/mgタンパク質を意味し、ここで酵素単位は、温度、pH、[S]等について特定の条件下で形成された生成物のモル/分として定義される。
【0053】
用語「遅い」、「より遅い」、「より速い」又は「速い」は、酵素活性に言及して使用されるとき、標準と比較した酵素のターンオーバー数に関する。
【0054】
用語「対照ポリペプチド」は、公知のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する公知のポリペプチドを指す。本発明での使用に好適な対照ポリペプチドの非限定的な例としては、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadB及びウマ肝臓ADHが挙げられる。
【0055】
用語「低級アルキルアルコール」は、1〜10個の炭素原子を有する任意の直鎖又は分枝状の飽和又は不飽和アルコール分子を指す。
【0056】
用語「低級アルキルアルデヒド」は、1〜10個の炭素原子を有する任意の直鎖又は分枝状の飽和又は不飽和アルデヒド分子を指す。
【0057】
用語「ブタノール」は、本明細書で使用されるとき、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、又はそれらの混合物を指す。
【0058】
用語「低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路」は、本明細書で使用されるとき、低級アルキルアルコールを生成する酵素経路を指す。例えば、イソブタノール生合成経路が、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0092957号明細書に開示されている。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「収率」は、g/g単位での炭素源量当たりの生成物量を指す。収率は、グルコースを炭素源として例証され得る。特に注記されない限り、収率は理論収率のパーセンテージとして表現されることが理解される。微生物又は代謝経路に関連して「理論収率」は、生成物の作製に使用される代謝経路の化学量論により決定されるとおりの、基質総量当たりに生じ得る最大生成物量として定義される。例えば、グルコースからイソプロパノールへの一つの典型的な変換についての理論収率は、0.33μgである。従って、グルコースからの29.7μgのイソプロパノールの収率は、理論値の90%又は90%理論収率として表され得る。本開示ではグルコースを炭素源とする収率が例証されるが、本発明は他の炭素源に適用することができ、収率は使用される炭素源に応じて異なり得ることが理解される。当業者は様々な炭素源に基づき収率を計算することができる。用語「NADH」は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味する。
【0060】
用語「NADPH」は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を意味する。
【0061】
用語「NAD(P)H」は、NADH又はNADPHのいずれかを指すために用いられる。
【0062】
本発明で使用されるポリペプチド及びポリヌクレオチド
本発明で使用されるADH酵素は、ポリペプチド及びその断片を含む。本明細書で使用されるとき、用語「ポリペプチド」は単数形「ポリペプチド」並びに複数形「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)により直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子に関する。用語「ポリペプチド」は2個以上のアミノ酸の任意の1つ又は複数の鎖を指し、特定の長さの生成物を指すものではない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2個以上のアミノ酸の1つ若しくは複数の鎖を指して用いられる任意の他の用語は「ポリペプチド」の定義の範囲内に含まれ、用語「ポリペプチド」はこれらの用語のいずれの代わりとしても、又はそのいずれとも同義的に、使用され得る。用語「ポリペプチド」はまた、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図され、そのような修飾としては、限定なしに、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾が挙げられる。
【0063】
本発明のポリペプチドは、約10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、又は2,000個以上のアミノ酸のサイズであってもよい。ポリペプチドは定義された三次元構造を有し得るが、必ずしもかかる構造を有しなくてもよい。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれていると称され、及び定義された三次元構造を有しない、むしろ多数の異なるコンホメーションをとり得るポリペプチドは、折り畳まれていないと称される。
【0064】
また、本発明のポリペプチドとしては、前述のポリペプチドの誘導体、類似体、又は変異体、及びそれらの任意の組み合わせも含まれる。用語「活性変異体」、「活性断片」、「活性誘導体」、及び「類似体」は本発明のポリペプチドを指し、低級アルキルアルデヒドの還元を触媒することが可能な任意のポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドの変異体には、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入によって改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。変異体は天然に存在するものであっても、又は天然に存在しないものであってもよい。天然に存在しない変異体は、当該技術分野で公知の突然変異生成技法を用いて産生され得る。変異体ポリペプチドは保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み得る。本発明のポリペプチドの誘導体は、天然ポリペプチドには見られないさらなる特徴を呈するように改変されているポリペプチドである。例としては融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドはまた、本明細書では「ポリペプチド類似体」とも称され得る。本明細書で使用されるとき、ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する対象のポリペプチドを指す。「誘導体」としてはまた、20種の標準アミノ酸の1つ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含むペプチドも含まれる。例えば、プロリンが4−ヒドロキシプロリンに置換されてもよく;リジンが5−ヒドロキシリジンに置換されてもよく;ヒスチジンが3−メチルヒスチジンに置換されてもよく;セリンがホモセリンに置換されてもよく;及びリジンがオルニチンに置換されてもよい。
【0065】
「断片」は、親配列と同じ配列だが、それより長さが短いADH酵素の固有の部分である。断片は、最大では、定義された配列の全長から1アミノ酸残基を引いたものを含み得る。例えば、断片は5〜1000個の連続するアミノ酸残基を含み得る。断片は、少なくとも5個、10個、15個、16個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、75個、100個、150個、250個又は少なくとも500個の連続するアミノ酸残基長さであり得る。断片は分子のある特定の領域から優先的に選択され得る。例えばポリペプチド断片は、ある特定の定義された配列で示されるとおりのポリペプチドの最初の100個又は200個のアミノ酸から選択されるある特定の長さの連続するアミノ酸を含み得る。明らかにこれらの長さは例示であり、配列表、表、及び図を含め、本明細書により裏付けられる任意の長さが本実施形態により包含され得る。
【0066】
或いは、遺伝子コードにおける「冗長性」を利用して、これらの同じ又は同様のポリペプチドをコードする組換え変異体を合成又は選択することができる。様々なコドン置換、例えば様々な制限部位を作り出すサイレント変異などが導入され、プラスミド若しくはウイルスベクターへのクローニング又は宿主細胞系における発現が最適化され得る。ポリヌクレオチド配列における突然変異は、ポリペプチドに反映されても、又はそのポリペプチドの任意の部分の特性を修飾するようポリペプチドに付加される他のペプチドのドメインに反映されてもよく、それにより低級アルキルアルデヒドに対するK、低級アルキルアルコールに対するK、低級アルキルアルコールに対するK等の特性を変化させ得る。
【0067】
好ましくは、アミノ酸「置換」は、あるアミノ酸を、同様の構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換える結果であり、すなわち保存的アミノ酸置換である。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の類似性に基づき行われ得る。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられ;正電荷を有する(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられ;及び負電荷を有する(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。「挿入」又は「欠失」は、好ましくは約1〜約20アミノ酸、より好ましくは1〜10アミノ酸の範囲である。許容される変動は、組換えDNA技法を用いてポリペプチド分子におけるアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を系統立てて設け、得られた組換え変異体を活性についてアッセイすることにより、実験的に決定され得る。
【0068】
本発明の問い合わせアミノ酸配列と少なくとも、例えば95%「同一」のアミノ酸配列又はポリペプチド配列を有するポリペプチドとは、対象のポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の100個のアミノ酸につき最大5個までのアミノ酸変化を含み得ることを除き、対象のポリペプチドのアミノ酸配列が問い合わせ配列と同じであることが意図される。換言すれば、問い合わせアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るには、対象の配列におけるアミノ酸残基の最大5%までが挿入されているか、欠失しているか、又は別のアミノ酸で置換されていてもよい。これらの参照配列の変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端若しくはカルボキシ末端位置に存在しても、又はそれらの末端位置の間にあるいずれかの箇所に、参照配列の残基間に個別に散在して、若しくは参照配列内の1つ以上の連続する基として存在してもよい。
【0069】
実際問題として、任意の具体的なポリペプチドが参照ポリペプチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるかどうかは、公知のコンピュータプログラムを使用して従来どおり決定することができる。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の全体としての最良のマッチを決定するための好ましい方法は、大域的配列アラインメントとも称され、Brutlag et al.,Comp.Appl.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントでは、問い合わせ配列及び対象配列は双方ともヌクレオチド配列であるか、又は双方ともアミノ酸配列であるかのいずれかである。前記大域的配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。FASTDBアミノ酸アラインメントで使用される好ましいパラメータは以下である:行列=PAM 0、k−tuple=2、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=20、無作為化グループ長さ=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ−0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象アミノ酸配列の長さのいずれか短い方。
【0070】
内部の欠失ではなく、N末端又はC末端の欠失のために対象配列が問い合わせ配列より短い場合、結果に対して手動で補正を加えなければならない。これは、FASTDBプログラムが大域的同一性パーセントを計算するときに対象配列のN末端及びC末端トランケーションを考慮しないためである。問い合わせ配列と比べてN末端及びC末端でトランケートされている対象配列については、対応する対象残基と一致/整列しない、対象配列のN末端側及びC末端側にある問い合わせ配列の残基の数を、問い合わせ配列の全塩基に対する割合として計算することにより、同一性パーセントが補正される。残基が一致/整列するかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。次にこの割合を、上記のFASTDBプログラムにより特定のパラメータを使用して計算された同一性パーセントから減じると、最終的な同一性パーセントスコアが得られる。この最終的な同一性パーセントスコアが、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/整列しない、対象配列のN末端及びC末端までの残基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的で考慮される。すなわち、対象配列の最も端にあるN末端残基及びC末端残基の外側にある問い合わせ残基位置のみである。
【0071】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を100残基の問い合わせ配列と整列させて同一性パーセントを決定する。対象配列のN末端に欠失が存在し、従ってFASTDBアラインメントはN末端における最初の10残基の一致/整列を示さない。10個の対をなさない残基は配列の10%に相当し(N末端及びC末端における一致しない残基の数/問い合わせ配列の残基総数)、そのためFASTDBプログラムにより計算された同一性パーセントスコアから10%が減じられる。残りの90残基が完全に一致したならば、最終的な同一性パーセントは90%となる。別の例において、90残基の対象配列を100残基の問い合わせ配列と比較する。このときは欠失は内部欠失であり、そのため対象配列のN末端又はC末端に問い合わせ残基と一致/整列しない残基はない。この場合、FASTDBにより計算された同一性パーセントが手動で補正されることはない。ここでもまた、手動で補正されるのは、FASTDBアラインメントにより示されるとおりの、問い合わせ配列と一致/整列しない、対象配列のN末端及びC末端の終端部の外側にある残基位置のみである。本発明の目的上、それ以外に手動での補正を行うことはない。
【0072】
本発明において有用なポリペプチドとしては、表5に示す配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるものが、その活性な変異体、断片、又は誘導体を含めて挙げられる。本発明はまた、保存的アミノ酸置換を有する表5のアミノ酸配列を含むポリペプチドも包含する。
【0073】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を有する。本発明の別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を有する。一実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、特定の宿主細胞での発現にコドン最適化されたポリヌクレオチドによりコードされる。
【0074】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号22と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号22のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0075】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号23と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号23のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0076】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号31と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号31のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0077】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞で発現させるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号29と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ポリペプチドは配列番号29のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0078】
本発明での使用に好適なADH酵素及びその断片はポリヌクレオチドによりコードされ得る。用語「ポリヌクレオチド」は、単数形の核酸並びに複数形の核酸を包含することが意図され、単離核酸分子又はコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは従来型のリン酸ジエステル結合又は非従来型の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含み得る。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在する任意の1つ以上の核酸セグメント、例えばDNA又はRNA断片を指す。本発明に係るポリヌクレオチドには、合成的に産生された分子がさらに含まれる。本発明のポリヌクレオチドは宿主細胞にとって天然であっても、又は異種であってもよい。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターなどの調節エレメントであってもよく、又はそれを含んでもよい。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「コード領域」又は「ORF」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在する場合にはそれはコード領域の一部であると見なすことができ、しかしながら任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域などは、コード領域の一部ではない。
【0080】
用語「プロモーター」は、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは全体として天然遺伝子に由来してもよく、又は自然界に見られる種々のプロモーターに由来する異なるエレメントから構成されても、若しくはさらには合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターが異なる組織又は細胞型の遺伝子、若しくは異なる発生段階にある遺伝子の発現、又は異なる環境条件若しくは生理学的条件に応答した遺伝子の発現を誘導し得ることは、当業者により理解される。ほとんどの細胞型でほぼ毎回遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。さらに、ほとんどの場合に調節配列の正確な境界は完全には定義されていないため、異なる長さのDNA断片が同じプロモーター活性を有し得ることが認識される。
【0081】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。DNAの場合、核酸を含むポリヌクレオチド(これがポリペプチドをコードする)は通常、1つ以上のコード領域に作動可能に連係されたプロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳制御エレメントを含み得る。作動可能な連係とは、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域が1つ以上の調節配列と、遺伝子産物の発現がその調節配列の影響下又は制御下に置かれるように連係しているときである。プロモーター機能が誘導されると所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合には、且つ2つのDNA断片間の連結の性質によって、遺伝子産物の発現を誘導する発現調節配列の能力が妨げられたり、又はDNA鋳型の転写される能力が妨げられたりすることがない場合には、その2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域と、それと連係したプロモーターなど)は「作動可能に連係」している。従ってプロモーター領域は、当該の核酸の転写にそのプロモーターが影響を及ぼすことが可能であるならば、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に連係していることになる。プロモーター以外の他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルが、ポリヌクレオチドと作動可能に連係し得る。好適なプロモーター及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。
【0082】
様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。それらとしては、限定はされないが、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び終止コドン、並びにウイルス系に由来するエレメント(特に内部リボソーム侵入部位、すなわちIRES、CITE配列とも称される)が挙げられる。
【0083】
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNA、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。本発明のRNAは一本鎖であっても、又は二本鎖であってもよい。
【0084】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードするさらなるコード領域と連係されてもよく、このようなペプチドは、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの分泌を誘導する。
【0085】
本明細書で使用されるとき、用語「形質転換」は、核酸断片が宿主生物のゲノムに移され、その結果遺伝的に安定して受け継がれることを指す。形質転換された核酸断片を含む宿主生物は、「組換え」又は「形質転換」生物と称される。
【0086】
用語「発現」は、本明細書で使用されるとき、本発明の核酸断片に由来するセンスRNA(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともある。
【0087】
用語「プラスミド」、「ベクター」、及び「カセット」は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を保有することの多い、通常は環状二本鎖DNA断片の形態である染色体外エレメントを指す。かかるエレメントは、任意の供給源に由来する一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAの直鎖状又は環状の自己複製配列、ゲノム組込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列であってよく、そこでは多数のヌクレオチド配列がつなぎ合わされ、又は組み換えられることで、プロモーター断片及び選択された遺伝子産物のDNA配列を適切な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することが可能な固有の構造となっている。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含み、且つ外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を促進するエレメントを有する特異的ベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含み、且つ外来遺伝子に加えて外来宿主中での当該遺伝子の発現を増進するエレメントを有する特異的ベクターを指す。
【0088】
用語「人工的」は、合成の、又は非宿主細胞由来の組成物、例えば化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを指す。
【0089】
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一」のヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、そのポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の100個のヌクレオチドにつき最大5つまでの点突然変異を含み得ることを除き、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同じであることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るには、参照配列におけるヌクレオチドの最大5%までが欠失しているか、若しくは別のヌクレオチドで置換されていてもよく、又は参照配列における全ヌクレオチドの最大5%までの数のヌクレオチドが参照配列に挿入されていてもよい。
【0090】
実際問題として、任意の具体的な核酸分子又はポリペプチドが本発明のヌクレオチド配列又はポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるかどうかは、公知のコンピュータプログラムを使用して従来どおり決定することができる。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の全体としての最良のマッチを決定するための好ましい方法は、大域的配列アラインメントとも称され、Brutlag et al.,Comp.Appl.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントでは、問い合わせ配列及び対象配列は双方ともDNA配列である。RNA配列はUをTに変換して比較され得る。前記大域的配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。同一性パーセントを計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントで使用される好ましいパラメータは以下である:行列=Unitary、k−tuple=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ−30、無作為化グループ長さ=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象ヌクレオチド配列の長さのいずれか短い方。
【0091】
内部の欠失ではなく、5’又は3’の欠失のために対象配列が問い合わせ配列より短い場合、結果に対して手動で補正を加えなければならない。これは、FASTDBプログラムが同一性パーセントを計算するときに対象配列の5’又は3’トランケーションを考慮しないためである。問い合わせ配列と比べて5’末端又は3’末端でトランケートされている対象配列については、対象配列の5’側又は3’側にある一致/整列しない問い合わせ配列の塩基の数を、問い合わせ配列の全塩基に対する割合として計算することにより、同一性パーセントが補正される。ヌクレオチドが一致/整列するかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。次にこの割合を、上記のFASTDBプログラムにより特定のパラメータを使用して計算された同一性パーセントから減じると、最終的な同一性パーセントスコアが得られる。この補正したスコアが、本発明の目的のために使用されるものである。FASTDBアラインメントにより示されるとおりの、問い合わせ配列と一致/整列しない、対象配列の5’塩基又は3’塩基の外側にある塩基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的で計算される。
【0092】
例えば、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と整列させて同一性パーセントを決定する。対象配列の5’末端に欠失が存在し、従ってFASTDBアラインメントは5’末端における最初の10塩基の一致/整列を示さない。10個の対をなさない塩基は配列の10%に相当し(5’末端及び3’末端における一致しない塩基の数/問い合わせ配列の塩基総数)、そのためFASTDBプログラムにより計算された同一性パーセントスコアから10%が減じられる。残りの90塩基が完全に一致したならば、最終的な同一性パーセントは90%となる。別の例において、90塩基の対象配列を100塩基の問い合わせ配列と比較する。このときは欠失は内部欠失であり、そのため対象配列の5’又は3’に問い合わせ塩基と一致/整列しない塩基はない。この場合、FASTDBにより計算された同一性パーセントが手動で補正されることはない。ここでもまた、手動で補正されるのは、問い合わせ配列と一致/整列しない、対象配列の5’側及び3’側にある塩基のみである。本発明の目的上、それ以外に手動での補正を行うことはない。
【0093】
本発明において有用なポリヌクレオチドとしては、以下の表4に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるものが、活性なアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするその変異体、断片又は誘導体を含めて挙げられる。
【0094】
用語「活性変異体」、「活性断片」、「活性誘導体」、及び「類似体」は、本発明のポリヌクレオチドを指し、低級アルキルアルデヒドの還元を触媒することが可能なポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドの変異体には、塩基対の置換、欠失、及び/又は挿入によって改変されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。変異体は天然に存在するものであっても、又は天然に存在しないものであってもよい。天然に存在しない変異体は、当該技術分野で公知の突然変異生成技術を用いて産生され得る。本発明のポリヌクレオチドの誘導体は、それによってコードされるポリペプチドが天然ポリペプチドには見られないさらなる特徴を呈するように改変されているポリヌクレオチドである。例としては、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。変異体ポリヌクレオチドはまた、本明細書では「ポリヌクレオチド類似体」とも称され得る。本明細書で使用されるときポリヌクレオチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化された1つ以上のヌクレオチドを有する対象のポリヌクレオチドを指す。「誘導体」としてはまた、1つ以上の天然に存在するヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオチドも含まれる。例えばシトシンが3−メチルシチジンに置換されてもよく;チミジンがリボチミジンに置換されてもよく;及びシトシンがN4−アセチルシチジンに置換されてもよい。
【0095】
「断片」は、親配列と同じ配列だが、それより長さが短いADH酵素をコードするポリヌクレオチドの固有の部分である。断片は、最大では、定義された配列の全長から1個のヌクレオチドを引いたものを含み得る。例えば、断片は5〜1000個の連続するヌクレオチドを含み得る。プローブ、プライマーとして、又は他の目的に使用される断片は、少なくとも5個、10個、15個、16個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、75個、100個、150個、250個又は少なくとも500個の連続するヌクレオチドであり得る。断片は分子のある特定の領域から優先的に選択され得る。例えば、ポリヌクレオチド断片は、ある特定の定義された配列で示されるとおりのポリヌクレオチドの最初の100個又は200個のヌクレオチドから選択されるある特定の長さの連続するヌクレオチドを含み得る。明らかにこれらの長さは例示であり、配列表、表、及び図を含め、本明細書により裏付けられる任意の長さが本実施形態により包含され得る。
【0096】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、及び配列番号20と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、及び配列番号20又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体からなる群から選択することができる。一実施形態において、ポリヌクレオチドは特定の宿主細胞での発現にコドン最適化されている。
【0097】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは配列番号2のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0098】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは配列番号3のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0099】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは配列番号11のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0100】
本発明の一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞での発現に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは配列番号9のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0101】
本明細書で使用されるとき、用語「コドン縮重」は、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列の変動を許容する遺伝子コードの性質を指す。当業者は、所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用において特定の宿主細胞が示す「コドンバイアス」について、十分に理解している。従って、宿主細胞における発現を改良するために遺伝子を合成するときには、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるように遺伝子を設計することが望ましい。
【0102】
本明細書で使用されるとき、用語「コドン最適化されたコード領域」は、少なくとも1つ、又は2つ以上、又は相当数のコドンを、当該の生物の遺伝子でより高頻度に使用される1つ以上のコドンで置き換えることにより、所与の生物の細胞での発現に適合された核酸コード領域を意味する。
【0103】
任意のポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列に偏りがあることで、遺伝子をコードする配列の変動が許容される。各コドンは3つのヌクレオチドからなり、且つDNAを含むヌクレオチドは4つの特定の塩基に限定されているため、ヌクレオチドの可能な組み合わせは64通りとなり、そのうち61通りがアミノ酸をコードする(残りの3つのコドンは、翻訳を終結させるシグナルをコードする)。「遺伝子コード」は、どのコドンがどのアミノ酸をコードするかを示すものであり、本明細書に表1として再掲する。結果として、多くのアミノ酸が2つ以上のコドンによって指定される。例えば、アミノ酸アラニン及びプロリンは4つのトリプレットにより、セリン及びアルギニンは6つのトリプレットによりコードされ、一方、トリプトファン及びメチオニンはただ1つのトリプレットによりコードされる。この縮重により、DNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列が変化することなしにDNA塩基組成が広範囲にわたり異なることが可能となる。
【0104】
【表1】

【0105】
多くの生物が、成長するペプチド鎖における特定のアミノ酸の挿入をコードするための特定のコドンの使用についてバイアスを示す。生物間でのコドン使用頻度の差であるコドン選択又はコドンバイアスは、遺伝子コードの縮重により得られ、多くの生物の間で十分に実証されている。コドンバイアスはメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関を有することが多く、次にはその効率が、とりわけ、翻訳されるコドンの特性及び特定の転移RNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている。細胞において特定のtRNAが優勢であることは、概してペプチド合成で最も高頻度に使用されるコドンを反映するものである。従って、コドン最適化に基づき、所与の生物における最適な遺伝子発現に遺伝子が適合され得る。
【0106】
多数の遺伝子配列が広範な種類の動物種、植物種及び微生物種に利用可能であることを所与とすれば、相対的なコドン使用頻度を計算することが可能である。コドン使用表は、例えばhttp://www.kazusa.or.jp/codon/で利用可能な「Codon Usage Database」で容易に入手可能であり、これらの表を数多くの方法で適応させることができる。Nakamura, Y.,et al.Nucl.Acids Res.28:292(2000)を参照のこと。GenBankリリース128.0[2002年2月15日]から計算した酵母についてのコドン使用表を以下に表2として再掲する。この表はmRNA命名法を使用し、従ってDNAに見られるチミン(T)の代わりに、表ではRNAに見られるウラシル(U)が用いられる。表は、64個の全コドンについてではなく、各アミノ酸について計算されるように適合されている。
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
この、又は同様の表を利用することにより、当業者はそれらの頻度を任意の所与のポリペプチド配列に適用して、ポリペプチドをコードしながらも所与の種に最適なコドンを使用するコドン最適化コード領域の核酸断片を作り出すことができる。
【0111】
所与のポリペプチド配列をコードするよう最適化された頻度でコドンを無作為に割り当てることは、アミノ酸毎にコドン頻度を計算し、次にそれらのコドンをポリペプチド配列に無作為に割り当てることにより、手動で行うことができる。加えて、当業者には、様々なアルゴリズム及びコンピュータソフトウェアプログラムが容易に利用可能である。例えば、DNAstar,Inc.,Madison,WIから利用可能なLasergene Packageの「EditSeq」機能、InforMax、Inc.,Bethesda,MDから利用可能なVectorNTI Suiteのバックトランスレーション(backtranslation)機能、及びAccelrys,Inc.,San Diego,CAから利用可能なGCG−Wisconsin Packageの「バックトランスレート(backtranslate)」機能。加えて、コード領域配列をコドン最適化するための様々なリソース、例えば、http://www.entelechon.com/bioinformatics/backtranslation.php?lang=eng(2008年4月15日にアクセス)の「バックトランスレーション(backtranslation)」機能、及びhttp://bioinfo.pbi.nrc.ca:8090/EMBOSS/index.htmlで利用可能な「バックトランセク(backtranseq)」機能が公的に利用可能である。所与の頻度に基づきコドンを割り当てるための基本的なアルゴリズムの構築もまた、当業者により基礎的な数学関数を用いて容易に達成することができる。
【0112】
コドン最適化コード領域は、「synthetic gene designer」(http://phenotype.biosci.umbc.edu/codon/sgd/index.php)などのソフトウェアパッケージを含め、当業者に公知の様々な方法により設計することができる。
【0113】
本明細書で使用される標準的な組換えDNA技術及び分子クローニング技術は当該技術分野において公知であり、Sambrook et al.(Sambrook,Fritsch,and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)(以下「Maniatis」);及びSilhavy et al.(Silhavy et al.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press Cold Spring Harbor,NY,1984);及びAusubel,F.M.et al.,(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,発行元Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,1987)により記載される。
【0114】
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)酵素
アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)は、細胞環境内の様々な経路の一部としてアルデヒドのアルコールとの相互変換を触媒する広範な酵素クラスである。ADH酵素は汎用的であり、アミノ酸配列の長さ又はそれらが使用する金属補因子の種類のいずれかに基づき複数のファミリーに分類される。
【0115】
様々なADH酵素について、タンパク質データバンク(Protein Data Bank:PDB)で150種を超える構造を利用することができる。これらの酵素は極めて多岐にわたり、種々のADHが異なるサブユニット組成を有するオリゴマーとして存在する。図4は、ウマ肝臓ADH及びアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBに関連するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、大腸菌(E.coli)、ヒト(Homo sapiens)、C.エレガンス(C.elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及びシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるオキシドレダクターゼ酵素の系統発生的な関係を示す。
【0116】
図5は、配列上、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBに対してより近縁関係にある特定のADH酵素配列の系統発生的な関係を示す。
【0117】
一実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、低級アルキルアルデヒドから対応する低級アルキルアルコールへの変換に対して極めて高いkcatを有する。別の実施形態において、使用に好適なADH酵素は、低級アルキルアルコールから対応する低級アルキルアルデヒドへの変換に対して極めて低いkcatを有する。別の実施形態において、使用に好適なADH酵素は、低級アルキルアルデヒドに対して低いKを有する。別の実施形態において、好適なADH酵素は低級アルキルアルコールに対して高いKを有する。別の実施形態において、好適なADH酵素は、還元反応中にNADHを補因子として選択的に使用する。別の実施形態において、好適なADH酵素は以下の特徴の1つ以上を有する:低級アルキルアルデヒドから対応する低級アルキルアルコールへの変換に対する極めて高いkcat;低級アルキルアルコールから対応する低級アルキルアルデヒドへの変換に対する極めて低いkcat;低級アルキルアルデヒドに対する低いK;低級アルキルアルコールに対する高いK;及び還元反応中の補因子としてのNADHの選択的な使用。別の実施形態において、好適なADH酵素は低級アルキルアルコールに対して高いKを有する。別の実施形態において、好適なADH酵素は上記の特徴の2つ以上を有する。
【0118】
一実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、低級アルキルアルコールの存在下及び非存在下で補因子を対照ポリペプチドより速く酸化する。一実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。
【0119】
別の実施形態において、好適なADH酵素は、低級アルキルアルデヒドに対するKが対照ポリペプチドと比べて低い。別の実施形態において、好適なADH酵素は、低級アルキルアルデヒドに対するKが対照ポリペプチドと比べて少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。一実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。一実施形態において、低級アルキルアルデヒドはイソブチルアルデヒドである。
【0120】
別の実施形態において、好適なADH酵素は、低級アルキルアルコールに対するKが対照ポリペプチドと比べて高い。別の実施形態において、好適なADH酵素は、低級アルキルアルコールKが対照ポリペプチドと比べて少なくとも約10%、50%、100%、200%、300%、400%、又は500%高い。一実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。一実施形態において、低級アルキルアルコールはイソブタノールである。
【0121】
別の実施形態において、好適なADH酵素は低級アルキルアルデヒドに対するkcat/Kが対照ポリペプチドと比べて高い。別の実施形態において、好適なADH酵素はkcat/Kが対照ポリペプチドと比べて少なくとも約10%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、800%、又は1000%高い。一実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。一実施形態において、低級アルキルアルデヒドはイソブチルアルデヒドである。
【0122】
別の実施形態において、好適なADH酵素は上記の特徴の2つ以上を有する。別の実施形態において、好適なADH酵素は上記の特徴の3つ以上を有する。別の実施形態において、好適なADH酵素は上記の特徴の4つ全てを有する。一実施形態において、好適なADH酵素はNADHを補因子として選択的に使用する。
【0123】
一実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、宿主細胞の生理学的条件で最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH4から約pH9まで最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH5から約pH8まで最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH6から約pH7まで最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH6.5から約pH7まで最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、又は9で最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、約pH7で最適に還元反応を触媒する。
【0124】
一実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、最高約70℃まで最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、好適なADH酵素は、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃で最適に還元反応を触媒する。別の実施形態において、好適なADH酵素は、約30℃で最適に還元反応を触媒する。
【0125】
一実施形態において、本発明での使用に好適なADH酵素は、最大約50g/Lまでの濃度の低級アルキルアルコールの存在下でアルデヒドからアルコールへの変換を触媒する。別の実施形態において、好適なADH酵素は、少なくとも約10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L、40g/L、45g/L、又は50g/Lの濃度の低級アルキルアルコールの存在下でアルデヒドからアルコールへの変換を触媒する。別の実施形態において、好適なADH酵素は、少なくとも約20g/Lの濃度の低級アルキルアルコールの存在下でアルデヒドからアルコールへの変換を触媒する。いくつかの実施形態において、低級アルキルアルコールはブタノールである。いくつかの実施形態において、低級アルキルアルデヒドはイソブチルアルデヒドであり、低級アルキルアルコールはイソブタノールである。
【0126】
ADH酵素発現用の組換え宿主細胞
本発明の一態様は、上記に概説した活性を有するADH酵素を発現する組換え宿主細胞に関する。本発明で使用される宿主細胞の非限定的な例としては、細菌、シアノバクテリア、糸状菌及び酵母が挙げられる。
【0127】
一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は細菌細胞又はシアノバクテリア細胞である。別の実施形態において、組換え宿主細胞は、サルモネラ属(Salmonella)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、バチルス属(Bacillus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、ノカルジア属(Nocardia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、ザイモモナス属(Zymomonas)、大腸菌属(Escherichia)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア属(Serratia)、赤痢菌属(Shigella)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エルウィニア属(Erwinia)、パエニバチルス属(Paenibacillus)、及びザントモナス属(Xanthomonas)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、組換え宿主細胞は大腸菌(E.coli)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、又はL.プランタルム(L.plantarum)である。
【0128】
別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は糸状菌細胞又は酵母細胞である。別の実施形態において、組換え宿主細胞は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、パキソレン属(Pachysolen)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ザイゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、ガラクトミセス属(Galactomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、トルラスポラ属(Torulaspora)、デバリオミセス属(Debayomyces)、ウィリオプシス属(Williopsis)、デッケラ属(Dekkera)、クロエケラ属(Kloeckera)、メチニコウイア属(Metschnikowia)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、及びカンジダ属(Candida)からなる群から選択される。
【0129】
一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は90%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約25%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約40%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約50%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約75%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞は、理論値の約90%より高い収率で低級アルキルアルコールを生成する。いくつかの実施形態において、低級アルキルアルコールはブタノールである。いくつかの実施形態において、低級アルキルアルコールはイソブタノールである。
【0130】
本発明の組換え宿主細胞により生成される低級アルキルアルコールの非限定的な例としては、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びエタノールが挙げられる。一実施形態において、本発明の組換え宿主細胞はイソブタノールを生成する。別の実施形態において、本発明の組換え宿主細胞はエタノールを生成しない。
【0131】
米国特許出願公開第2007/0092957 A1号明細書は、イソブタノール(2−メチルプロパン−1−オール)を生成するための組換え微生物の改変を開示する。米国特許出願公開第2008/0182308 A1号明細書は、1−ブタノールを生成するための組換え微生物の改変を開示する。米国特許出願公開第2007/0259410 A1号明細書及び同第2007/0292927 A1号明細書は、2−ブタノールを生成するための組換え微生物の改変を開示する。イソブタノール及び2−ブタノールの生合成については複数の経路が記載されている。3つ全ての生成物について記載される全ての経路で、最後のステップは、ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素による、より酸化された部分のアルコール部分への還元である。これらの文献に開示される方法は、本発明の組換え宿主細胞の改変に用いることができる。これらの文献に提供される情報は、本明細書によって全体として参照により援用される。
【0132】
実施形態において、組換え微生物宿主細胞はイソブタノールを生成する。実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、ピルベートからアセトラクテートへの変換;アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換;2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換;α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの変換、及びイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換からなる群から選択される基質から生成物への変換を触媒する酵素をコードする少なくとも2つの異種ポリヌクレオチドを含む。実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、ピルベートからアセトラクテートへの変換;アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換;2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換;α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの変換、及びイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換からなる群から選択される基質から生成物への変換を触媒する酵素をコードする少なくとも3つの異種ポリヌクレオチドを含む。実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、ピルベートからアセトラクテートへの変換;アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換;2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換;α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの変換、及びイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換からなる群から選択される基質から生成物への変換を触媒する酵素をコードする少なくとも4つの異種ポリヌクレオチドを含む。実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、ピルベートからアセトラクテートへの変換;アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換;2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換;α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの変換、及びイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換を触媒する酵素をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。実施形態において、(a)ピルベートからアセトラクテートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.2.1.6を有するアセト乳酸シンターゼであり;(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.186を有するアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ(acetohydroxy acid isomeroreducatase)であり;(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.9を有するアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼであり;及び(d)α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.1.1.72を有する分枝鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼである。
【0133】
実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、ピルベートからα−アセトラクテートへの変換;α−アセトラクテートからアセトインへの変換;アセトインから2,3−ブタンジオールへの変換;2,3−ブタンジオールから2−ブタノンへの変換;及び2−ブタノンから2−ブタノールへの変換からなる群から選択される基質から生成物への変換を触媒する酵素をコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドをさらに含み;ここで前記微生物宿主細胞は2−ブタノールを生成する。実施形態において、(a)ピルベートからアセトラクテートへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.2.1.6を有するアセト乳酸シンターゼであり;(b)アセトラクテートからアセトインへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.1.1.5を有するアセト乳酸デカルボキシラーゼであり;(c)アセトインから2,3−ブタンジオールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.76又はEC番号1.1.1.4を有するブタンジオールデヒドロゲナーゼであり;(d)ブタンジオールから2−ブタノンへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.28を有するブタンジオールデヒドラターゼである。実施形態において、(e)2−ブタノンから2−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.1を有する2−ブタノールデヒドロゲナーゼである。
【0134】
実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの変換;アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへの変換;3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへの変換;クロトニルCoAからブチリルCoAへの変換;ブチリルCoAからブチルアルデヒドへの変換;ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの変換からなる群から選択される基質から生成物への変換を触媒する酵素をコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドをさらに含み;ここで前記微生物宿主細胞は1−ブタノールを生成する。実施形態において、(a)アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号2.3.1.9又は2.3.1.16を有するアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼであり;(b)アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.35、1.1.1.30、1.1.1.157、又は1.1.1.36を有する3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼであり;(c)3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号4.2.1.17又は4.2.1.55を有するクロトナーゼであり;(d)クロトニルCoAからブチリルCoAへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.3.1.44又は1.3.1.38を有するブチリルCoAデヒドロゲナーゼであり;(e)ブチリルCoAからブチリルアルデヒドへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.2.1.57を有するブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼである。実施形態において、(f)ブチリルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドは、EC番号1.1.1.1を有する1−ブタノールデヒドロゲナーゼである。
【0135】
いくつかの実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、イソブタノール経路への炭素フローを改善する少なくとも1つの修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、1−ブタノール経路への炭素フローを改善する少なくとも1つの修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換え微生物宿主細胞は、2−ブタノール経路への炭素フローを改善する少なくとも1つの修飾をさらに含む。
【0136】
低級アルキルアルコールの生成方法
本発明の別の態様は、低級アルキルアルコールの生成方法に関する。これらの方法は、主に本発明の組換え宿主細胞を用いる。一実施形態において、本発明の方法は、上記に考察されるとおりの組換え宿主細胞を提供するステップと、低級アルキルアルコールが生成される条件下で発酵培地において組換え宿主細胞を発酵性炭素基質と接触させるステップと、低級アルキルアルコールを回収するステップとを含む。
【0137】
炭素基質としては、限定はされないが、単糖類(フルクトース、グルコース、マンノース、ラムノース、キシロース又はガラクトースなど)、オリゴ糖類(ラクトース、マルトース、又はスクロースなど)、多糖類、例えばデンプン、マルトデキストリン、若しくはセルロースなど又はそれらの混合物、並びに乳清透過液、コーンスティープリカー、シュガービート廃糖蜜、及び大麦モルトなどの再生可能原料由来の未精製混合物を挙げることができる。他の炭素基質としては、エタノール、ラクテート、スクシネート、又はグリセロールを挙げることができる。
【0138】
加えて、炭素基質はまた、一炭素基質、例えば二酸化炭素、又は主要な生化学的中間体への代謝変換が実証されているメタノールであってもよい。一炭素及び二炭素基質に加え、メチロトローフ生物もまた、メチルアミン、グルコサミン、及び代謝活性のための様々なアミノ酸などの数多くの他の炭素含有化合物を利用することが知られている。例えば、メチロトローフ酵母は、メチルアミンからの炭素を利用してトレハロース又はグリセロールを形成することが知られている(Bellion et al.,Microb.Growth C1 Compd.,[Int.Symp.],7th(1993),415 32,編者:Murrell,J.Collin;Kelly,Don P.発行者:Intercept,Andover,UK)。同様に、カンジダ属(Candida)の様々な種がアラニン又はオレイン酸を代謝する(Sulter et al.,Arch.Microbiol.153:485−489(1990))。従って本発明において利用される炭素源は、広範な種類の炭素含有基質を包含し得るとともに、生物の選択によってのみ制限されるであろうことが企図される。
【0139】
上述の炭素基質及びその混合物は全て、本発明において好適であることが企図されるが、好ましい炭素基質はグルコース、フルクトース、及びスクロースであり、又はそれらがキシロース及び/又はアラビノースなどのC5糖類と混合されたもの(C5糖類を使用するように修飾された酵母細胞用)である。スクロースは、サトウキビ、サトウダイコン、キャッサバ、スイートソルガム、及びそれらの混合物などの再生可能な糖類源から得られ得る。グルコース及びデキストロースは、トウモロコシ、小麦、ライ麦、大麦、オート麦、及びそれらの混合物などの穀類を含め、デンプンベースの原料の糖化を介して再生可能な穀類源から得られ得る。加えて、発酵性糖が、例えば参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0031918 A1号明細書に記載されるとおり、前処理及び糖化の過程を介して再生可能なセルロース系又はリグノセルロース系バイオマスから得られ得る。バイオマスは任意のセルロース系又はリグノセルロース系材料を指し、セルロースを含む材料、及び場合によりヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類及び/又は単糖類をさらに含む材料が含まれる。バイオマスはまた、タンパク質及び/又は脂質などのさらなる成分も含み得る。バイオマスは単一の供給源に由来してもよく、又はバイオマスは2つ以上の供給源に由来する混合物を含むこともできる;例えばバイオマスは、トウモロコシ穂軸とトウモロコシ茎葉との混合物、又は草と葉との混合物を含み得る。バイオマスとしては、限定はされないが、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、産業固形廃棄物、製紙スラッジ、庭ごみ、木くず及び林業廃棄物が挙げられる。バイオマスの例としては、限定はされないが、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ穂軸、作物残渣、例えばトウモロコシ皮、トウモロコシ茎葉、草、小麦、小麦わら、大麦、大麦わら、乾草、稲わら、スイッチグラス、古紙、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀類の製粉から得られる成分、樹木、枝、根、葉、木片、おが屑、潅木及び低木、野菜類、果実類、花、家畜糞尿、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0140】
炭素基質は、宿主細胞の成長及び繁殖に好適な任意の培地に提供され得る。使用することのできる培地の非限定的な例としては、M122C、MOPS、SOB、TSY、YMG、YPD、2XYT、LB、M17、又はM9最少培地が挙げられる。使用することのできる培地の他の例としては、リン酸カリウム及び/又はリン酸ナトリウムを含有する溶液が挙げられる。好適な培地は、NADH又はNADPHが補足され得る。
【0141】
低級アルキルアルコールを生成するための発酵条件は、使用される宿主細胞に応じて異なり得る。一実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は嫌気性条件下で実施される。一実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は好気性条件下で実施される。一実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は微好気性条件下で実施される。
【0142】
一実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は、少なくとも約20g/Lの低級アルキルアルコールの力価をもたらす。別の実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は、少なくとも約30g/Lの低級アルキルアルコールの力価をもたらす。別の実施形態において、低級アルキルアルコールの生成方法は、約10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L又は40g/Lの低級アルキルアルコールの力価をもたらす。
【0143】
本発明の方法により生成される低級アルキルアルコールの非限定的な例としては、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びエタノールが挙げられる。一実施形態では、イソブタノールが生成される。
【0144】
実施形態において、イソブタノールが生成される。実施形態において、イソブタノールの生成方法は以下を含む:
【0145】
(a)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒し、且つ以下の特徴の1つ以上を有する異種ポリペプチドを含む組換え宿主細胞を提供するステップ:
【0146】
(i)低級アルキルアルデヒドのK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;
【0147】
(ii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;
【0148】
(iii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
【0149】
(b)イソブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップ。
【0150】
実施形態において、2−ブタノールが生成される。実施形態において、2−ブタノールの生成方法は以下を含む:
【0151】
(a)2−ブタノンから2−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒し、且つ以下の特徴の1つ以上を有する異種ポリペプチドを含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップ:
【0152】
(i)低級アルキルアルデヒドに対するK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;
【0153】
(ii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルコールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
【0154】
(iii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
【0155】
(b)2−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップ。
【0156】
実施形態において、1−ブタノールが生成される。実施形態において、1−ブタノールの生成方法は以下を含む:
【0157】
(a)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から生成物への変換を触媒し、且つ以下の特徴の1つ以上を有する異種ポリペプチドを含む組換え微生物宿主細胞を提供するステップ:
【0158】
(i)低級アルキルアルデヒドに対するK値が、そのポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;
【0159】
(ii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルコールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
【0160】
(iii)そのポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K
値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
【0161】
(b)1−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップ。
【0162】
生合成経路
1−ブタノール生合成経路(Donaldson et al.,米国特許出願公開第20080182308A1号明細書、参照により本明細書に援用される)、2−ブタノール生合成経路(Donaldson et al.,米国特許出願公開第20070259410A1号明細書及び同第20070292927号明細書、及び同第20090155870号明細書、全て参照により本明細書に援用される)、及びイソブタノール生合成経路(Maggio−Hall et al.,米国特許出願公開第20070092957号明細書、参照により本明細書に援用される)を発現する組換え微生物生成宿主は、当該技術分野において記載がなされている。それらには、指示される基質から生成物への変換の触媒能を有する特定の好適なタンパク質が記載され、及び当該技術分野では他の好適なタンパク質が記載されている。当業者は、かかる経路ステップの活性を有するポリペプチドを様々な供給源から単離することができ、本明細書に開示される組換え宿主細胞に使用し得ることを理解するであろう。例えば、米国特許出願公開第20080261230号明細書及び同第20090163376号明細書、同第20100197519号明細書、及び米国特許出願第12/893077号明細書は、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼについて記載し;米国特許出願公開第20070092957号明細書及び同第20100081154号明細書は、好適なジヒドロキシ酸デヒドラターゼについて記載している。
【0163】
当業者は、本開示から学ぶことで、公的に利用可能な配列を利用して、本明細書に提供される宿主細胞における関連経路を構築することができるであろう。加えて当業者は、本開示から学ぶことで、他の好適なイソブタノール経路、1−ブタノール経路、又は2−ブタノール経路を理解するであろう。
【0164】
イソブタノール生合成経路
イソブタノールは、炭水化物源から組換え微生物によって様々な生合成経路を介して生成され得る。ピルベートをイソブタノールに変換する好適な経路には、図6に示す4つの完全な反応経路が含まれる。好適なイソブタノール経路(図6、ステップa〜e)は、以下の基質から生成物への変換を含む:
【0165】
a)例えばアセト乳酸シンターゼにより触媒されるとおりの、ピルベートからアセトラクテートへの変換、
【0166】
b)例えばアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼにより触媒されるとおりの、アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換、
【0167】
c)例えばアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼにより触媒されるとおりの、2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換、
【0168】
d)例えば分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼにより触媒されるとおりの、α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへの変換、及び
【0169】
e)例えば分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換。
【0170】
ピルベートからイソブタノールへの変換に好適な別の経路は、以下の基質から生成物への変換を含む(図6、ステップa、b、c、f、g、e):
【0171】
a)例えばアセト乳酸シンターゼにより触媒されるとおりの、ピルベートからアセトラクテートへの変換、
【0172】
b)例えばアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼにより触媒されるとおりの、アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換、
【0173】
c)例えばアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼにより触媒されるとおりの、2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換、
【0174】
f)例えば分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、α−ケトイソバレレートからイソブチリルCoAへの変換、
【0175】
g)例えばアシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、イソブチリルCoAからイソブチルアルデヒドへの変換、及び
【0176】
e)例えば分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換。
【0177】
この経路の最初の3ステップ(a、b、c)は、上記に記載されるものと同じである。
【0178】
ピルベートからイソブタノールへの変換に好適な別の経路は、以下の基質から生成物への変換を含む(図6、ステップa、b、c、h、i、j、e):
【0179】
a)例えばアセト乳酸シンターゼにより触媒されるとおりの、ピルベートからアセトラクテートへの変換、
【0180】
b)例えばアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼにより触媒されるとおりの、アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへの変換、
【0181】
c)例えばアセトヒドロキシ酸デヒドラターゼにより触媒されるとおりの、2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへの変換、
【0182】
h)例えばバリンデヒドロゲナーゼ又はトランスアミナーゼにより触媒されるとおりの、α−ケトイソバレレートからバリンへの変換、
【0183】
i)例えばバリンデカルボキシラーゼにより触媒されるとおりの、バリンからイソブチルアミンへの変換、
【0184】
j)例えばω−トランスアミナーゼにより触媒されるとおりの、イソブチルアミンからイソブチルアルデヒドへの変換、及び
【0185】
e)例えば分枝鎖アルコールデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換。
【0186】
この経路の最初の3ステップ(a、b、c)は、上記に記載されるものと同じである。
【0187】
第4の好適なイソブタノール生合成経路は、図6にステップk、g、eとして示す基質から生成物への変換を含む。
【0188】
1−ブタノール生合成経路
1−ブタノールの生成に好適な生合成経路の一例が、米国特許出願公開第2008/0182308 A1号明細書に開示される。この文献に開示されるとおり、開示される1−ブタノール生合成経路のステップは以下の変換を含む:
【0189】
−例えばアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼにより触媒されるとおりの、アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの変換;
【0190】
−例えば3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへの変換;
【0191】
−例えばクロトナーゼにより触媒されるとおりの、3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへの変換;
【0192】
−例えばブチリルCoAデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、クロトニルCoAからブチリルCoAへの変換;
【0193】
−例えばブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、ブチリルCoAからブチルアルデヒドへの変換;及び
【0194】
−例えばブタノールデヒドロゲナーゼにより触媒されるとおりの、ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの変換。
【0195】
2−ブタノール生合成経路
2−ブタノールの生成に好適な生合成経路の一例が、Donaldson et al.により米国特許出願公開第20070259410A1号明細書及び同第20070292927A1号明細書、並びに国際公開第2007/130521号パンフレット(これらは全て、参照により本明細書に援用される)に記載されている。好適な2−ブタノール生合成経路のステップは、以下の基質から生成物への変換を含む:
【0196】
a)ピルベートからα−アセトラクテートへの変換、例えばアセト乳酸シンターゼにより触媒され得る;
【0197】
b)α−アセトラクテートからアセトインへの変換、例えばアセト乳酸デカルボキシラーゼにより触媒され得る;
【0198】
c)アセトインから2,3−ブタンジオールへの変換、例えばブタンジオールデヒドロゲナーゼにより触媒され得る;
【0199】
d)2,3−ブタンジオールから2−ブタノンへの変換、例えばブタンジオールデヒドラターゼにより触媒され得る;及び
【0200】
e)2−ブタノンから2−ブタノールへの変換、例えば2−ブタノールデヒドロゲナーゼにより触媒され得る。
【0201】
追加的な修飾
本明細書に提供される細胞において有用であり得る追加的な修飾として、米国特許出願公開第20090305363号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるとおりの、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性及び/又はグリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性を還元する修飾、米国特許出願公開第20100120105号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるとおりの、エントナー・ドゥドロフ経路又は還元等価物の平衡を介した炭素フラックスの増加をもたらす宿主細胞に対する修飾が挙げられる。その活性にFe−Sクラスターの結合を必要とする異種タンパク質の活性が増加した酵母株が、米国特許出願公開第20100081179号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されている。他の修飾としては、米国仮特許出願第61/290,639号明細書に記載される、二元的役割のヘキソキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする内因性ポリヌクレオチドにおける修飾、米国仮特許出願第61/380563号明細書に記載される、ピルビン酸を利用する生合成経路のステップを触媒するポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの組込み(参照される仮出願は、双方とも全体として参照により本明細書に援用される)が挙げられる。本明細書の実施形態に好適であり得るさらなる修飾が、米国特許出願第12/893089号明細書に記載される。
【0202】
加えて、Fe−Sクラスター生合成に影響を及ぼすポリペプチドをコードする内因性遺伝子に、少なくとも1つの欠失、突然変異、及び/又は置換を含む宿主細胞が、米国仮特許出願第61/305333号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載され、並びにホスホケトラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びホスホトランスアセチラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞が、米国仮特許出願第61/356379号明細書に記載される。
【0203】
高活性ADH酵素の同定及び単離
本発明は、イソブタノール生産用に改変した宿主生物におけるイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換に関して戦略を考案し、及び優れた特性を有するいくつかのADH酵素を同定することに関する。ADH候補選択の過程には、自然界に存在する酵素における検索が関わる。酵素の同定は、その性質、すなわち好ましい基質としてアルデヒドを利用し、且つそのアルデヒドをそれぞれのアルコールへと、文献例により実証されるとおりの、対応するアルデヒド基質に対する適度に高いkcat値及び/又は低いK値で変換する性質に基づき行われる。一組の候補が同定されると、この戦略には、その一組を用いて近縁関係にある相同体をバイオインフォマティクス解析により分離することが関わる。従って一実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、候補ADH酵素に対してバイオインフォマティクス又は文献検索を行うステップを含む。一実施形態において、バイオインフォマティクス探索には系統発生解析が用いられる。
【0204】
候補遺伝子のタンパク質をコードするDNA配列は、宿主生物から直接増幅されるか、或いは大腸菌(E.coli)などの宿主細胞における発現用にコドン最適化された合成遺伝子として入手される。本明細書で利用される様々なADH候補を表3に掲載する。
【0205】
【表5】

【0206】
本発明は表3に掲載するADH酵素に限定されない。これらの候補との配列相同性に基づきさらなる候補を同定することができ、又はこれらの配列から突然変異生成及び/又はタンパク質進化によって候補を誘導することができる。好適なADH酵素には、本明細書
に提供される配列と少なくとも約95%の同一性を有するADH酵素が含まれる。
【0207】
表4及び表5は、表3に提供する候補ADH酵素の、それぞれポリヌクレオチド配列(配列番号2、3、4、5、及び6を除いては大腸菌(E.coli)での発現用にコドン最適化されている)及びポリペプチド配列を提供する。
【0208】
【表6】

【0209】
【表7】

【0210】
【表8】

【0211】
【表9】

【0212】
【表10】

【0213】
【表11】

【0214】
【表12】

【0215】
【表13】

【0216】
【表14】

【0217】
【表15】

【0218】
【表16】

【0219】
一実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する候補ポリペプチドのスクリーニング方法は以下を含む:
【0220】
(a)低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下で候補ポリペプチドについての低級アルキルアルデヒドによる補因子酸化速度を計測するステップ;及び
【0221】
(b)低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下で対照ポリペプチドより速く補因
子を酸化する候補ポリペプチドのみを選択するステップ。一実施形態において、(b)は、低級アルキルアルコールの存在下又は非存在下のいずれにおいても対照ポリペプチドより速く補因子を酸化する候補ポリペプチドのみを選択することを含む。一実施形態において、補因子はNADHである。別の実施形態において、補因子はNADPHである。さらに別の実施形態において、対照ポリペプチドは配列番号21のアミノ酸配列を有するHLADHである。さらに別の実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。別の実施形態において、ステップ(a)はA340nmの変化を観察することを含む。
【0222】
別の実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する候補ポリペプチドのスクリーニング方法は以下を含む:
【0223】
(a)候補ポリペプチドについての以下の値の1つ以上を計測するステップ:
【0224】
(i)低級アルキルアルデヒドに対するK値;
【0225】
(ii)低級アルキルアルコールに対するK値;及び
【0226】
(iii)kcat/K;及び
【0227】
(b)以下の特徴の1つ以上を有する候補ポリペプチドのみを選択するステップ:
【0228】
(i)低級アルキルアルデヒドに対するK値が対照ポリペプチドと比べて低い;
【0229】
(ii)低級アルキルアルコールに対するK値が対照ポリペプチドと比べて高い;及び
【0230】
(iii)低級アルキルアルデヒドに対するkcat/K値が対照ポリペプチドより高い。
【0231】
さらに別の実施形態において、対照ポリペプチドは、配列番号26のアミノ酸配列を有するアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadBである。別の実施形態において、選択される候補ポリペプチドは上記の特徴の2つ以上を有する。別の実施形態において、選択される候補ポリペプチドは上記の特徴の3つ以上を有する。別の実施形態において、選択される候補ポリペプチドはNADHを補因子として選択的に使用する。
【0232】
本発明の一実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、及び配列番号20と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、及び配列番号20又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体からなる群から選択することができる。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、特定の宿主細胞での発現用にコドン最適化されている。
【0233】
本発明の一実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適な候補ポリペプチドは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を有する。本発明の別の実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適な候補ポリペプチドは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40、又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。一実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適な候補ポリペプチドは、特定の宿主細胞での発現用にコドン最適化されている。
【0234】
本発明の一実施形態において、本発明のスクリーニング方法での使用に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは配列番号2のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0235】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用される候補ポリペプチドは、配列番号22と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、候補ポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0236】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法での使用に好適なポリヌクレオチド配列は、配列番号3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0237】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用される候補ポリペプチドは、配列番号23と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、候補ポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0238】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用されるポリヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号11のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0239】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用される候補ポリペプチドは、配列番号31と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、候補ポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0240】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用されるポリヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号9のヌクレオチド配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0241】
本発明の一実施形態において、本スクリーニング方法で使用される候補ポリペプチドは、配列番号29と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、候補ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列又はその活性な変異体、断片若しくは誘導体を含む。
【0242】
別の実施形態において、候補ポリペプチドのスクリーニング方法から、最高約70℃までの温度でアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃の温度でアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約30℃の温度でアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。
【0243】
別の実施形態において、候補ポリペプチドのスクリーニング方法から、約4〜約9のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約5〜約8のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約6〜約7のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約6.5〜約7のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、又は9のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約7のpHでアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。
【0244】
別の実施形態において、候補ポリペプチドのスクリーニング方法から、最大約50g/Lまでの濃度の低級アルキルアルコールの存在下でアルデヒドからアルコールへの変換を触媒することのできる選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、約10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、35g/L、40g/L、45g/L、又は50g/Lの濃度でアルデヒドからアルコールへの変換の触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。別の実施形態において、スクリーニング方法から、少なくとも約20g/Lの濃度でアルデヒドからアルコールへの変換を触媒能を有する選択された候補ポリペプチドが得られる。
【0245】
本発明のスクリーニング方法で使用することのできる低級アルキルアルコールの非限定的な例としては、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びエタノールが挙げられる。一実施形態において、スクリーニング方法で使用される低級アルキルアルコールはイソブタノールである。
【0246】
特に定義されない限り、本明細書で使用される科学技術用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。対立がある場合、定義を含む本願が優先される。また、別途文脈により必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、及び複数形の用語は単数を含むものとする。本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び他の参考文献は、あらゆる目的から全体として参照により援用される。
【実施例】
【0247】
本発明は、以下の実施例にさらに定義される。これらの実施例は本発明の実施形態を示しているが、例示として提供されるに過ぎないことは理解されなければならない。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、及びその趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な使用及び条件に適合させるためその様々な変更及び改良を実施することができる。
【0248】
一般的方法
本実施例で用いられる標準的な組換えDNA技術及び分子クローニング技術は当該技術分野において公知であり、Sambrook et al.(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1989,本明細書ではManiatisと称する)及びAusubel et al.(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,発行元Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,1987)により記載されている。
【0249】
細菌培養物の維持及び成長に好適な材料及び方法は、当該技術分野において公知である。以下の例での使用に好適な技法は、Manual of Methods for General Bacteriology(Phillipp et al.,eds.,American Society for Microbiology,Washington,DC.,1994)のなかに、又はThomas D. Brockにより(Brock, Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Second Edition,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989)のなかに記載されるとおりのものが見出され得る。細菌細胞の維持及び成長に使用される全ての試薬、制限酵素及び材料は、特記しない限り、Sigma−Aldrich Chemicals(St.Louis,MO)、BD Diagnostic Systems(Sparks,MD)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、HiMedia(Mumbai,India)、SD Fine chemicals(India)、又はタカラバイオ株式会社(日本国滋賀県)から入手した。
【0250】
略称の意味は以下のとおりである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「uL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mg/mL」はミリグラム毎ミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μモル」はマイクロモルを意味し、「kg」はキログラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、及び「ng」はナノグラムを意味し、「PCR」はポリメラーゼ連鎖反応を意味し、「OD」は光学濃度を意味し、「OD600」は600nmの波長で計測される光学濃度を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「g」はまた重力定数を意味することもあり、「bp」は塩基対を意味し、「kbp」はキロ塩基対を意味し、「kb」はキロベースを意味し、「%」はパーセントを意味し、「%w/v」は重量/体積パーセントを意味し、「%v/v」は重量/重量パーセントを意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、「g/L」はグラム毎リットルを意味し、「μg/L」はマイクログラム毎リットルを意味し、「ng/μL」はナノグラム毎マイクロリットルを意味し、「pmol/μL」はピコモル毎マイクロリットルを意味し、「RPM」は毎分回転数を意味し、「μmol/分/mg」はマイクロモル毎分毎ミリグラムを意味し、「w/v」は体積当たり重量を意味し、「v/v」は重量当たり重量を意味する。
【0251】
実施例1
可能性のあるスクリーニング用イソブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼの選択
この例は、効率的なイソブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼを同定するためのいくつかのADH候補酵素の選択基準について記載する。文献のエビデンスに基づき、分析用にクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)ブタノールデヒドロゲナーゼA及びB(BdhA及びBdhB)を選択した。1−ブタノールを含有する培地上で環境スラッジ試料を濃縮することにより、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)を選択した。次に生物を培養して、ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を含むタンパク質画分の精製に使用し、それに続いて米国特許出願公開第2009−0269823 A1号明細書に記載されるとおり、第二級アルコールデヒドロゲナーゼB(SadB)に対応する遺伝子をクローニングした。ウマ肝臓ADH酵素(HLADH)は市販されており、及びそれはイソブタノール酸化活性を有することが、Green et al.によりJ.Biol.Chem.268:7792(1993)に報告された。
【0252】
イソブタノール生成経路に理想的なイソブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ候補の望ましい特性は上記に記載した。
【0253】
広範な文献検索により、イソブチルアルデヒド若しくは他の密接な関係を有するアルデヒドに対して高いkcat値及び/又は低いK値を有するか、又はイソブタノール若しくは他の密接な関係を有するアルコールに対してより低いkcat及び/又はより高いKを有するかのいずれかである候補ADH酵素が同定された。ウマ肝臓ADH、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadB、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH6を問い合わせ配列としてそれぞれ使用して、NCBIにおいて重複のないタンパク質配列データベース(nr)に対するタンパク質BLAST検索を実施した。全てのBLASTヒットを収集して組み合わせ、そこから互いに95%より高い配列同一性を有する配列を除いた。残りの一組の95%−重複のない配列から多重配列アラインメント(MSA)を作成し、そのMSAから近隣結合法を用いて系統樹を生成し
た。同様に、複数の選択したADH酵素についてMSA及び系統樹を個別に生成し、各酵素の近縁関係にある相同体を同定し、ここでアラインメントは、標的酵素を問い合わせ配列として使用して得られたBLASTヒットのみからなった。それらの酵素には、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadB、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH6、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH7が含まれた。これらの分析に基づき、能力評価用のいくつかの候補を選択した(表3)。
【0254】
実施例2
クローニング、タンパク質発現及び精製、並びに好適なイソブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼのスクリーニング
この例は、過剰発現/精製用のADH遺伝子コンストラクトの調製及び経時変化アッセイを用いた酵素活性の計測について記載する。ウマ肝臓ADH(HLADH;A−6128)をSigmaから購入した。アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)SadB(SadB)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ADH6(ScADH6)及びADH7(ScADH7)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)ADH1(EhADH1)、ウシ(Bos taurus)アルデヒドレダクターゼ(BtARD)、ベイジェリンキア・インディカ・サブエスピー・インディカ(Beijerinckia indica subsp.Indica)ATCC 9039(BiADH)、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)ADH(CbADH)、ラナ・ペレジ(Rana perezi)ADH8(RpADH8)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)ADH1(RnADH1)、サーマス・エスピー(Thermus sp.)ATN1 ADH(TADH)、フェニロバクテリウム・ズシネウム(Phenylobacterium zucineum)HLK1 ADH(PzADH)、メチロセラ・シルベストリス(Methylocella silvestris)BL2 ADH(MsADH)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)AYE ADH(AbADH)、ゲオバチルス・エスピー(Geobacillus sp.)WCH70 ADH(GbADH)、バンデルワルトジマ・ポリスポラ(Vanderwaltozyma polyspora)DSM 70294 ADH(VpADH)、ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)ADH(McADH)、及びロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4 ADH(ReADH)が、タンパク質発現及び精製用にサブクローンを調製する候補であった。
【0255】
ADH候補を発現するプラスミドコンストラクトの構築
大腸菌(Escherichia coli)での発現用にコドンを最適化した後、EhADH1、BtARD、CbADH、BiADH、及びRpADH8の遺伝子コード領域をDNA 2.0(Menlo Park,CA)により合成し、RnADH1、TADH、PzADH、MsADH、AbADH、GbADH、VpADH、McADH、及びReADHの遺伝子コード領域をGENEART AG(独国)により合成した。これらの候補のアミノ酸配列はGenbankタンパク質データベースから入手し、コドン最適化のためDNA 2.0又はGeneart AGに提供した。各コード領域には、コード配列の5’末端及び3’末端でそれぞれXhoI部位及びKpnI部位が隣接した。これらのコンストラクトをクローニングし、DNA 2.0のベクターpJ201又はGeneartのpMAベクターのいずれかに供給した。
【0256】
プラスミドを化学的にコンピテントなTOP10細胞(Invitrogen)に形質転換し、それらの形質転換体を、25mg/mlカナマイシン又は100mg/mlアンピシリンのいずれかを含有する液体LB培地において成長させることにより増幅した。一晩培養物(37℃で成長させた)から精製したプラスミドをXhoI(NEB;R0146)及びKpnI(NEB;R0142)で制限処理し、タカラバイオ株式会社からのDNAライゲーションキット バージョン2.1(6022)を使用して、ベクターpBADHisA(Invitrogen;V43001)においてN末端ヘキサヒスチジンタグとインフレームで対応する部位にライゲートした。
【0257】
ライゲーション産物を化学的にコンピテントなTOP10細胞(Invitrogen;C4040−50)に形質転換した。形質転換細胞を、LB培地+100mg/mLアンピシリンを含有するプレートにストリーキングした。ADH挿入物を含有するクローンをXhoI/KpnIでの制限消化により確認した。正しい挿入物を有するプラスミドは、いずれの場合も予想される1.2kbpバンドを含んだ。クローニングした配列をDNA配列決定により確認した。得られたクローンは、それぞれpBADHisA::EhADH1、pBADHisA::BtARD、pBADHisA::CbADH、pBADHisA::BiADH、pBADHisA::RpADH8、pBADHisA::RnADH1、pBADHisA::TADH、pBADHisA::PzADH、pBADHisA::MsADH、pBADHisA::AbADH、pBADHisA::GbADH、pBADHisA::VpADH、pBADHisA::McADH、及びpBADHisA::ReADHと命名した。
【0258】
先に調べた酵素SadBを、製品マニュアルに記載される手順に従いpTrc99a::SadBからプライマーSadBXhoI−f(CCATGGAATCTCGAGATGAAAGCTCTGGTTTACC、配列番号41)及びSadBKpnI−r(GATCCCCGGGTACCGAGCTCGAATTC、配列番号42)を使用してKODポリメラーゼ酵素(Novagen)でPCR増幅し、それぞれ5’末端及び3’末端にXhoI部位及びKpnI部位を導入した。アガロースゲル電気泳動によりPCR産物を確認した後、1.2kbのPCR産物をXhoI及びKpnIで制限処理し、他の候補遺伝子に関して上記に記載したとおりpBADHisAにクローニングした。ScADH6及びScADH7の遺伝子の各々を、ScADH6についてはプライマーADH6_XhoI_f(CAAGAAAACTCGAGATCATGTCTTATCCTGAG、配列番号43)及びADH6_KpnI_r(GAGCTTGGTACCCTAGTCTGAAAATTCTTTG、配列番号44)を使用して、及びScADH7についてはADH7_XhoI_f(CTGAAAAACTCGAGAAAAAAATGCTTTACCC、配列番号45)及びADH7_KpnI_r(GAAAAATATTAGGTACCTAGACTATTTATGG、配列番号46)を使用して、酵母野生型BY4741株(ATCC 201388)の100ngのゲノムDNAから増幅した。戦略及びPCR条件はSadBの増幅と同じであった。次に遺伝子を、上記に記載する手順に従いpBADHisAのXhoI部位及びKpnI部位にクローニングした。SadB、ScADH6及びScADH7を含むプラスミドを、それぞれpBADHisA::SadB、pBADHisA::ScADH6及びpBADHisA::ScADH7と名付けた。
【0259】
大腸菌(E.coli)における組換えADHの発現
示されるデータについては、ADH酵素の過剰発現にBL21−CodonPlus(Invitrogen;230240)又は私有の大腸菌(E.coli)株のいずれかを用いた。しかしながら、市販の株、例えばBL21−codon plusが、ADH酵素の過剰発現に好適であると考えられる。
【0260】
Top10形質転換体の3mLの一晩培養物から、Qiaprep spin miniprepキット(Qiagen,Valencia CA;27106)を製造者の指示に従い使用して、ADH遺伝子を含む発現プラスミド(pBADHisAプラスミド)を調製した。1ngの各プラスミドをBL21−CodonPlus又は私有の大腸菌(E.coli)エレクトロコンピテント細胞のいずれかに、製造者の指示に従いBio RAD Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc,Hercules,CA)を使用して形質転換した。それらの形質転換細胞を、LB培地+各100μg/mLのアンピシリン及びスペクチノマイシンを含有する寒天プレートに播いた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。これらのプレートからのコロニーを、37℃で各100μg/mLのアンピシリン及びスペクチノマイシンを含有する3.0mLのLB培地に、250rpmで振盪しながら接種した。これらのスターター培養物(一晩成長させた)からの細胞を使用して1:1000希釈で1−L培地を接種した。培養物が約0.8のODに達した後、細胞を0.02%アラビノースで誘導した。誘導は250rpmで振盪しながら一晩37℃で実施した。次に、細胞を4℃で10分間、4000gで遠心することにより回収した。細胞を、完全なEDTA不含プロテアーゼ阻害薬カクテル錠剤(Roche;11873580001)及び1mg/mlのリゾチームの存在下に4℃で30分間ロッカーに置くことにより、40mlのBugBusterマスターミックス(Novagen;71456−4)で処理して溶解した。細胞残屑を4℃で20分間、16,000gで遠心することにより取り除いた。
【0261】
ブラッドフォード色素濃縮物(Bio−Rad)を使用するブラッドフォードアッセイにより、試料中の総タンパク質濃度を計測した。試料及びタンパク質標準(ウシ血清アルブミン、BSA)を、製造者のプロトコルに従い個別のキュベット(1mL反応物)又は96ウェルマイクロプレートのいずれかにセットアップした。Cary 100 Bio紫外可視分光光度計(Varian,Inc.)又はSpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices Corporation,Sunnyvale,CA)のいずれかを使用して計測した595nmでの吸光度の値から、タンパク質濃度を計算した。
【0262】
ADH酵素の精製及び活性アッセイ
上記に記載する手順に従い1リットル培養物から調製した無細胞抽出物を直接使用して、発現した様々なADH酵素をIMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)アフィニティークロマトグラフィーによって5mL HisTrap FFカラム(GE Healthcare Life Sciences;175255−01)で精製した。手順全体はAKTAexplorer 10 S(GE Healthcare Life Sciences;18−1145−05)FPLCシステムを使用して実施した。抽出物を30mMのイミダゾールと混合し、HisTrapカラムに負荷した。負荷後、30mMイミダゾールを含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.0(約10〜20カラム容量)でカラムを洗浄し、未結合のタンパク質及び非特異的に結合したタンパク質を除去した。次に30mM〜500mMイミダゾール勾配により20カラム容量でADHタンパク質を溶出した。ピーク画分を10%Bis−Tris SDS−PAGEゲル(Invitrogen;NP0301)においてInvitrogenのXCell SureLock Mini−Gel装置(EI0001)を使用して電気泳動した。クーマシー染色及び脱染を行うと、それらの画分は95%超の純度であり、ADHタンパク質のみを含むことを確かめることができた。活性アッセイを実施して精製したタンパク質が活性であることを確認した。
【0263】
ルーチンの実施技法として粗抽出物及び精製タンパク質をブタノール酸化活性についてアッセイすることで、全精製過程にわたり組換えタンパク質が活性であることを確認した。還元方向では、補因子としてのNADH又はNADPH及び過剰のイソブチルアルデヒド基質(40mM)を用いてイソブチルアルデヒド還元アッセイを実施した。いずれの場合も酵素活性は、Cary Bio 100紫外可視分光光度計(Varian Inc.)を使用して、反応でNADH/NADPHが消費されるのか(吸光度が低下する)、それとも生成されるのか(吸光度が上昇する)に応じて340nm吸光度の低下又は上昇を追うことにより、1ml反応物において30℃で1分間計測した。アルコール酸化活性はpH8.8の50mMリン酸ナトリウム緩衝液で実施し、アルデヒド還元反応はpH7.0の100mMリン酸カリウム緩衝液でアッセイした。酵素及び補因子のストックは、実施する反応の性質に応じてそれぞれのpHの反応緩衝液に希釈した。緩衝液又は私有の大腸菌(E.coli)株(ADHプラスミド無し)から調製した細胞抽出物のいずれかを、それぞれ精製タンパク質及び無細胞抽出物を含むアッセイの陰性対照として使用した。
【0264】
最初の実験では、EhADH1及びRpADH8でのタンパク質発現のレベルが不十分であった。続く活性アッセイでは、これらの酵素を発現する細胞抽出物においてADH活性を検出することができなかった。同様に当初、BtARDは良好なレベルのタンパク質発現を示し、タンパク質を均一になるまで精製することができたが、このアッセイに使用した条件下では検出可能な活性を有しなかった。当業者は、これらの候補に対して発現及びアッセイ条件をさらに最適化し得るものと考えられる。データを提供する他の酵素では、いずれも十分な量の活性タンパク質を精製することができた。それらの酵素全てで、イソブチルアルデヒド還元反応(上述の手順にあるとおり)においてNADH又はNADPHのいずれかを補因子として使用して補因子の特異性を計測した。いずれの場合も、NADH又はNADPHのいずれかを補因子として使用したときの活性の数値には、他の形態の補因子に対応する数値と比べて少なくとも10倍の差が認められた。表6は、一部のADH酵素の補因子選択を要約する。
【0265】
【表17】

【0266】
準生理学的経時変化アッセイを用いた精製ADH候補のスクリーニング
様々なADH候補を特徴付けて比較する理想的な方法は、完全な一組の反応速度定数、すなわちアルデヒド還元及びアルコール酸化についてのkcat値、イソブチルアルデヒド、イソブタノール、NAD(P)及びNAD(P)Hに対するK値、及びイソブチルアルデヒド及びイソブタノールに対するK値を計算して比較することであり得る。多数の候補を詳細に特徴付けるとなれば、多大な時間、労力及び費用をかけることが必要となる。従って、いくつかの候補の迅速で効率的な比較を可能にする定性的アッセイを開発した。様々な酵素の能力を比較する準生理学的アッセイを設計した。こうしたアッセイは、全ての反応を一定量の各酵素で開始することを伴う。この場合、1ugの各酵素を使用して、イソブチルアルデヒド及びNADHをそれぞれ1mM及び200μMの濃度で含む反応を開始した。各反応の経時変化は、反応が平衡に向かって進むときの340nm吸光度の低下を計測することにより、10分間追跡した。高いkcatの酵素は、低いkcatの酵素と比べて反応を平衡に向かってより速く駆動し得る。並行アッセイもまた、同じ条件下で、但し321mMのイソブタノール(24g/L)を反応に含めて実施した。この濃度のイソブタノールにより比較的阻害されない酵素は、イソブタノールが存在しない場合の経時変化に近似した経時変化を有し得る。図1は、これらのアッセイにおいてADH
候補酵素が示した経時変化を比較する。
【0267】
図1に提供される結果に基づけば、ベイジェリンキア・インディカ(Beijerickia indica)ADHがイソブチルアルデヒド還元反応に対して最も高いkcatを有する可能性があり、及び反応においてイソブタノールにより受ける阻害はADH6が最も小さい可能性があると推測される。
【0268】
実施例3
イソブチルアルデヒドに対するkcatが高く、且つKが低いベイジェリンキア・インディカ(Beijerinckia indica)ADHの同定
ADH酵素の反応速度定数を計算して比較することにより、イソブタノール生成用に人工的に改変した経路の最終ステップにおけるイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換に最も望ましい特性を有する候補ADH酵素を同定した。上記に記載するアッセイからの初速度を使用して、反応速度定数を決定するためのアッセイを実施した。NADHの減少は消費されるアルデヒドと相関し得る(Biochemistry by Voet and Voet,John Wiley & Sons,Inc.)。しかしながら、反応に使用される所与の酵素の量は0.1〜5μgの範囲であった。所与の酵素の濃度は、1分間の時間経過にわたり初速度の計測をもたらす濃度であった。各酵素について、広範囲の基質濃度でミカエリス・メンテンプロットを生成した。Kの概算を求め、それに基づき、そのK値の0.5〜10倍の範囲の基質濃度を用いるようにアッセイを設計し直して、適切な反応速度定数を得ることができるようにした。イソブチルアルデヒド(イソブタナール)還元反応を、200μMのNADHを含有する100mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0において30℃で実施した。イソブタノールに対するKを計算するときには、反応において様々な濃度のイソブタノールの存在下で(概して0〜535mM)同じ反応を実施した(例えば図7を参照のこと)。イソブタノール基質との反応は、7.5mMのNADを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.8において30℃で実施した。SigmaPlot 11(Systat Software,Inc.)の酵素反応速度モジュール(バージョン1.3)を使用してデータをミカエリス−メンテン式にフィットさせ、反応速度定数を計算した。指示されるADH酵素について得られた反応速度定数を表7に示す。kcat/Kはkcat及びKの個別の数値から得られるもので、実験的に決定される値ではない。SadBについての同じパラメータと比較したときの各候補酵素のK、K、及びkcat/Kの比を表9に示す。
【0269】
【表18】

【0270】
表7で星印を付した酵素については、個別の酵素調製物で少なくとも3アッセイを実施した。他の全ての数値は1つのアッセイからの値であるか、或いは同じ酵素試料で実施した2つのアッセイからの平均値である。
【0271】
ベイジェリンキア・インディカ(Beijerickia indica)ADH(BiADH)のデータは最も高いkcatの数値及び適度に高いkcat/Kを示し、好ましい。酵素RnADH1はイソブチルアルデヒドに対するK値が低いと見られ、結果的に高い触媒効率を有し得る。しかしながらK値が低いと、分光光度アッセイによるそのK値の正確な決定が妨げられる。しかしイソブチルアルデヒドの細胞内定常状態レベルがそのK値を超過する場合、イソブタノール生成宿主における酵素の能力はkcatによってさらに制限され得る。BiADHをSadBと比較すると、イソブチルアルデヒド還元に対するBiADHの触媒効率はSadBと比べて約12倍高く、しかしながらBiADHはSadBよりイソブタノールに対する感度が高い。ヌクレオチド補因子に関して、SadBはBiADHと比較したときNADHに対するK値がより低い。ScADH6はイソブタノールに対するK値が高いことから、この酵素は生体内で、イソブタノール生成宿主に予想される濃度のイソブタノールの存在に制限されずに機能する可能性があることが示唆される。これまでに分析した候補のなかで、イソブタノールの酸化に対する触媒効率はSadBが最小であり(kcat/KM=0.083)、それにBiADH(1.91)及びHLADH(12.5)が続く。
【0272】
実施例4
実施例2に記載されるものなどの方法に従い7つのさらなる候補ADH酵素を合成し、発現させてアッセイした。指示されるADH酵素(フェニロバクテリウム・ズシネウム(Phenylobacterium zucineum)HLK1 ADH(PzADH)、メチロセラ・シルベストリス(Methylocella silvestris)BL2 ADH(MsADH)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)AYE ADH(AbADH)、ゲオバチルス・エスピー(Geobacillus sp.)WCH70 ADH(GbADH)、及びムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)ADH(McADH))について得られた反応速度定数を表8に示す。SadBについての同じパラメータと比較したときの各候補酵素についてのK、K、及びkcat/Kの比較を、SadBについて決定された値(表7)に対する割合として表9に示す。100未満の割合は、SadBについて決定された値より低い値を示す;100より高い割合は、SadBについて決定された値より高い値を示す。これらのアッセイにおいて、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4 ADH(ReADH)では発現がなく、バンデルワルトジマ・ポリスポラ(Vanderwaltozyma polyspora)DSM 70294 ADH(VpADH)では検出可能な活性がなかった。
【0273】
【表19】

【0274】
【表20】

【0275】
実施例5
S.セレビシエ(S.cerevisiae)PNY2211株の構築
2010年9月7日に出願された米国仮特許出願第61/380,563号明細書及び以下の段落に記載されるとおり、S.セレビシエ(S.cerevisiae)PNY1507株からいくつかのステップでPNY2211を構築した。最初にこの株を、ホスホケトラーゼ(phosophoketolase)遺伝子を含むように修飾した。ホスホケトラーゼ遺伝子カセット及び組込み株の構築は、2010年6月18日に出願された米国仮特許出願第61/356,379号明細書に過去に記載がある。次に、過去に米国仮特許出願第61/308,563号明細書に記載された組込みベクターを使用して、この株にアセト乳酸シンターゼ遺伝子(alsS)を加えた。最後に、相同組換えを使用してホスホケトラーゼ遺伝子及び組込みベクター配列を除去すると、pdc1Δ::ilvD(過去に記載された、米国仮特許出願第61/308,563号明細書におけるPDC1 ORFの欠失/挿入)と染色体XIIの天然TRX1遺伝子との間の遺伝子間領域にalsSのスカーレスな挿入が得られた。PNY2211の得られた遺伝子型は、MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1tである。
【0276】
ホスホケトラーゼ遺伝子カセットを相同組換えによりPNY1507に導入した。組込みコンストラクトは以下のとおり生成した。プラスミドpRS423::CUP1−alsS+FBA−budA(米国特許出願公開第2009/0305363 A1号明細書に記載されるとおり)をNotI及びXmaIで消化して1.8kbのFBA−budA配列を除去し、クレノウ断片で処理後、ベクターを再度ライゲートした。次に、DNA2.0(Menlo Park,CA)のDNA合成及びベクター構築サービスによりCUP1プロモーターをTEF1プロモーター変異体(Nevoigt et al.Appl.Environ.Microbiol.72(8):5266−5273(2006)により記載されるM4変異体)で置換した。得られたプラスミドpRS423::TEF(M4)−alsSをStuI及びMluIで切断し(alsS遺伝子の一部とCYC1ターミネーターとを含む1.6kb部分を除去する)、pRS426::GPD−xpk1+ADH−eutD(配列番号81;プラスミドは米国仮特許出願第61/356,379号明細書に記載される)からプライマーN1176及びN1177(それぞれ配列番号47及び48)で生成した4kbのPCR産物及び酵母ゲノムDNA(ENO1プロモーター領域)からプライマーN822及びN1178(それぞれ配列番号49及び50)で生成した0.8kbのPCR産物DNAと合わせ、S.セレビシエ(S.cerevisiae)BY4741株(ATCC# 201388;ギャップ修復クローニング法、Ma and Botsteinを参照のこと)に形質転換した。形質転換体は、ヒスチジン不含の合成完全培地に細胞を播くことにより得た。予想されたプラスミド(pRS423::TEF(M4)−xpk1+ENO1−eutD、配列番号51)が適切に構築されたことを、PCRによりプライマーN821及びN1115(それぞれ配列番号52及び53)を使用して、及び制限消化(BglI)により確認した。続いて2つのクローンを配列決定した。3.1kbのTEF(M4)−xpk1遺伝子をSacI及びNotIで消化することにより単離し、米国仮特許出願第61/356,379号明細書(クローンA、AflIIで切断)に記載されるpUC19−URA3::ilvD−TRX1ベクターにクローニングした。クローニング断片をクレノウ断片で処理してライゲーション用の平滑末端を生成した。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換し、アンピシリン耐性について選択した。TEF(M4)−xpk1を、PCRによりプライマーN1110及びN1114(それぞれ配列番号54及び55)を用いて確認した。ベクターをAflIIで直鎖化し、クレノウ断片で処理した。米国仮特許出願第61/356,379号明細書に記載される1.8kbのKpnI−HincIIジェネティシン耐性カセットをクレノウ断片処理後にライゲーションによりクローニングした。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換し、アンピシリン耐性について選択した。ジェネティシンカセットの挿入を、PCRによりプライマーN160SeqF5及びBK468(それぞれ配列番号56及び57)を用いて確認した。プラスミド配列は配列番号58(pUC19−URA3::pdc1::TEF(M4)−xpk1::kan)として提供される。
【0277】
得られた組込みカセット(pdc1::TEF(M4)−xpk1::KanMX::TRX1)を単離し(AscI及びNaeI消化により、ゲル精製した5.3kbバンドが生じた)、Zymo Research Frozen−EZ酵母形質転換キット(カタログ番号T2001)を使用してPNY1507に形質転換した。YPE+50μg/ml G418に播くことにより形質転換体を選択した。予想された遺伝子座に組み込まれたことを、PCRによりプライマーN886及びN1214(それぞれ配列番号59及び60)を用いて確認した。次に、CreリコンビナーゼをコードするプラスミドpRS423::GAL1p−Creを使用してloxP隣接KanMXカセットを除去した(ベクター及び方法は米国仮特許出願第61/308,563号明細書に記載される)。カセットが適切に取り除かれたことをPCRによりプライマーoBP512及びN160SeqF5(それぞれ配列番号61及び62)を用いて確認した。最後に、米国仮特許出願第61/308,563号明細書(pUC19−kan::pdc1::FBA−alsS::TRX1、クローンA)に記載されるalsS組込みプラスミドを、取り込まれたジェネティシン選択マーカーを使用してこの株に形質転換した。2つの組込み体を、プラスミドpYZ090ΔalsS及びpBP915(米国仮特許出願第61/308,563号明細書に記載されるプラスミド、「Methods in Yeast Genetics」2005.Amberg,Burke and Strathernのプロトコル#2を用いて形質転換される)で形質転換し、グルコース含有培地における成長及びイソブタノール生成を評価することにより(成長方法及びイソブタノールの計測方法は、米国仮特許出願第61/308,563号明細書及び米国特許出願公開第2007/0092957 A1号明細書に記載される)、アセト乳酸シンターゼ活性について試験した。2つのクローンのうちの一方は陽性であり、PNY2218と命名した。プラスミドpYZ090ΔalsS及びpBP915を含むPNY2218の単離物をPNY2209と命名した。
【0278】
PNY2218をCreリコンビナーゼで処理し、得られたクローンを、PCRによりプライマーN886及びN160SeqR5(それぞれ配列番号59及び56)を用いてxpk1遺伝子及びpUC19組込みベクター配列の喪失についてスクリーニングした。これにより、xpk1の上流のDNA及び組込みベクターの挿入中に導入された相同DNAの組換え後、pdc1−TRX1遺伝子間領域には組み込まれたalsS遺伝子のみが残った(ベクター、マーカー遺伝子及びloxP配列は失われるため「スカーレス」挿入、図9を参照のこと)。この組換えは任意の点で行うことができたが、ベクターの組込みはジェネティシン選択がなくとも安定しているように見え、組換えイベントはCreリコンビナーゼの導入後にのみ観察された。一つのクローンをPNY2211と命名した。
【0279】
実施例6
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)PNY1540株の構築
この例の目的は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)PNY1540株のPNY2211株からの構築について記載することである。この株はCEN.PK 113−7D(CBS 8340;Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)Fungal Biodiversiry Centre,オランダ)から得たもので、上記の実施例5に記載される。PNY1540はアクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来の、PNY2211のPDC5遺伝子座に組み込まれていたsadB遺伝子の欠失を含む。この欠失はコード配列全体が完全に取り除かれたもので、標的遺伝子の上流及び下流の相同性領域及び形質転換体選択用のURA3遺伝子を含むPCR断片による相同組換えにより設けられた。URA3遺伝子を相同組換えにより取り除き、スカーレス欠失を作成した。
【0280】
スカーレス欠失手順はAkada et al.2006 Yeast v23 p399から構成した。スカーレス欠失用のPCRカセットは、オーバーラッピングPCRによって4つの断片A−B−U−Cを組み合わせることにより作製した。PCRカセットは、天然CEN.PK 113−7D URA3遺伝子からなる選択可能/逆選択可能なマーカーURA3(断片U)を、プロモーター(URA3遺伝子の上流250bp)及びターミネーター(URA3遺伝子の下流150bp)と共に含んだ。各500bp長の断片A及びCは、標的遺伝子の直ちに上流の500bp(断片A)及び標的遺伝子の3’の500bp(断片C)に対応した。断片A及びCを使用して相同組換えによりカセットを染色体に組み込んだ。断片B(254bp長)は標的遺伝子の直ちに下流の配列に対応し、カセットを染色体に組み込むと断片Bに対応する配列のダイレクトリピートが作成されたことで、断片Bを使用して相同組換えにより染色体からURA3マーカー及び断片Cを切り出した。PCR産物のABUCカセットを使用して、相同組換えによりURA3マーカーをまず染色体に組込み、次にその染色体から切り出した。最初の組込みで3’の500bpを除く遺伝子が欠失した。切り出しにより、遺伝子の3’の500bp領域もまた欠失した。
【0281】
sadB欠失
スカーレスsadB欠失のためのPCRカセット用の4つの断片は、Phusion High Fidelity PCR Master Mix(New England BioLabs;Ipswich,MA)を使用し、及び断片Uの鋳型としてCEN.PK 113−7DゲノムDNAを、且つ断片A、B、及びCの鋳型としてPNY1503ゲノムDNAを使用して増幅した。ゲノムDNAはGentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen;Valencia,CA)で調製した。sadB断片Aは、プライマーoBP540(配列番号63)、及びsadB断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP835(配列番号64)で増幅した。sadB断片Bは、sadB断片Aの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP836(配列番号65)、及びsadB断片Uの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP837(配列番号66)で増幅した。sadB断片Uは、sadB断片Bの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP838(配列番号67)、及びsadB断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP839(配列番号68)で増幅した。sadB断片Cは、sadB断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP840(配列番号69)、及びプライマーoBP841(配列番号70)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラッピングPCRによりsadB断片AとsadB断片Bとを混合し、プライマーoBP540(配列番号63)及びoBP837(配列番号66)で増幅して、sadB断片ABを作成した。オーバーラッピングPCRによりsadB断片UとsadB断片Cとを混合し、プライマーoBP838(配列番号67)及びoBP841(配列番号70)で増幅して、sadB断片UCを作成した。得られたPCR産物を、アガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。オーバーラッピングPCRによりsadB断片ABとsadB断片UCとを混合し、プライマーoBP540(配列番号63)及びoBP841(配列番号70)で増幅して、sadB ABUCカセットを作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0282】
PNY2211のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ Yeast Transformation IIキット(Zymo Research;Orange,CA)を使用してsadB ABUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を30℃の1%エタノールを補足したウラシル不含合成完全培地に播いた。sadBノックアウトを含む形質転換体を、プライマーUra3−end(配列番号71)及びoBP541(配列番号72)を用いたPCRによりスクリーニングした。正しい形質転換体をYPE(1%エタノール)で成長させ、30℃の5−フルオロ−オロチン酸(0.1%)を含む合成完全培地に播いて、URA3マーカーを欠く単離物を選択した。YeaStar Genomic DNA Kit(Zymo Research)で調製したゲノムDNAを使用して、欠失及びマーカーの除去をプライマーoBP540(配列番号63)及びoBP541(配列番号72)を用いるPCRにより確認した。欠失したsadBコード配列に特異的なプライマーのoBP530(配列番号73)及びoBP531(配列番号74)を使用したネガティブPCRの結果により、単離物にsadB遺伝子が存在しないことが実証された。正しい単離物をPNY1540株(BP1746)として選択した。
【0283】
実施例7
B.インディカ(B.indica)ADHをコードする遺伝子を保有する酵母シャトルベクター及び陰性対照ベクターの構築
米国特許出願公開第2009/0305363 A1号明細書に記載されるとおりのプラスミドpLH468(配列番号75)は、イソブタノール生成経路の一部を含む酵素(ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ、αKIVデカルボキシラーゼ及びイソブタノールデヒドロゲナーゼ)をコードする3つのキメラ遺伝子を保有する大腸菌(E.coli)/酵母シャトルベクターである。ギャップ修復クローニング法を用いて既存のイソブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子をB.インディカ(B.indica)ADHに置き換えた。最初に、好適な5’及び3’隣接配列を含むB.インディカ(B.indica)ADHコード領域を、酵母コドン最適化を伴うDNA合成(DNA2.0、Menlo Park,CA)によって得た。この配列は提供される(配列番号76)。ベクターpLH468をBsu36Iで直鎖化し、B.インディカ(B.indica)ADH(供給業者のクローニングベクターからEcoRI及びBamHIで放出される)と共に酵母BY4741株に形質転換した。形質転換体をヒスチジン不含合成完全培地(Teknova カタログ番号C3020)に播いた。いくつかの形質転換体からZymoprep(商標)酵母プラスミドミニプレップキット(Zymo Research カタログ番号D2004)を使用してプラスミドを調製した。PCR(プライマーN1092及びN1093、配列番号77及び78による)及び制限酵素消化(KpnIによる)を用いてBiADHが意図した位置に組み込まれたことを確認した。このプラスミドをpLH468::BiADHと称する。
【0284】
pLH468から元のイソブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(hADH)のほとんどを除去した第2のベクターを構築した。これは、Bsu36I及びPacIで消化して808bp断片を放出し、DNAの末端にクレノウ断片を埋め込み、及びベクターに再度ライゲートすることにより行った。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換した。hADH遺伝子が失われたことを、単離プラスミドクローン(cone)をEcoRI消化して確認した。一つの成功したクローンを、以下の実施例8に記載する実験用に選択した。このプラスミドをpLH468ΔhADHと称する。
【0285】
実施例8
BiADHを保有するイソブタノロゲン(Isobutanologen)株は対照株と比べてより良好なグルコース依存性成長、より高いグルコース消費並びにより高いイソブタノール力価及び収率を示す。
プラスミドpLH468::BiADH及びpLH468ΔhADHを、各々、第2のイソブタノール経路プラスミド(pYZ090ΔalsS、米国仮特許出願第61/380,563号明細書)と共にPNY1540に形質転換した。形質転換物を、1%エタノールを炭素源として含むヒスチジン及びウラシル不含合成完全培地に播いた。いくつかの形質転換体を新鮮なプレートにパッチした。48時間後、パッチ(各株から3つ)を使用して、0.3%グルコース及び0.3%エタノールを炭素源として含む合成完全培地(ヒスチジン及びウラシル不含)を接種した。24時間後、この培地での成長は、双方の株の全てのレプリケートについて同様であった。次に培養物を、2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含む合成完全培地(ヒスチジン及びウラシル不含)に継代培養した。培養物(開始時の600nm光学濃度(OD)は0.2であった、培養容量は125mlの密栓フラスコ中に20mlであった)を48時間インキュベートした。HPLC分析のための試料を継代培養時及びさらに48時間後に回収した。最終ODもまた決定した。BiADH株の48時間平均ODは3.3(±0.1)であり、それに対してADH無し対照は2.37(±0.07)であった。従ってBiADHを含めると、この条件下ではODが39%上昇した。同様に、グルコース消費(継代培養の直後に回収した試料と比較してHPLCにより評価される)は69%上昇した(81±1mM、それに対して47.9±0.6mM)。以下の表に示すとおり、イソブタノール力価は4倍高く、及びモル収率(すなわち消費されたグルコース1モル当たりのイソブタノールの収率)は2倍であった。ADH無し対照株では、イソブタノール経路からの多量の炭素がイソブチレートとして蓄積したことから、アルデヒドデヒドロゲナーゼがイソブチルアルデヒドに作用したことが示される。
【0286】
【表21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞であって、
生合成経路が、アルコールデヒドロゲナーゼ活性と、以下の特徴:
(a)イソブチルアルデヒドに対するK値が、ポリペプチドについて、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて低いこと;
(b)該ポリペプチドについてのイソブタノールに対するK値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;及び
(c)該ポリペプチドについてのイソブチルアルデヒドに対するkcat/K値が、配列番号26のアミノ酸配列を有する対照ポリペプチドと比べて高いこと;
のうちの1つ又はそれ以上とを有する該ポリペプチドにより触媒される基質から生成物への変換を含む、組換え微生物宿主細胞。
【請求項2】
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、又はエタノール生合成経路である、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項3】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号21、22、23、24、25、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項4】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが配列番号31のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項5】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、11、12、14、15、16、又は17のヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項1に記載の組換え宿主細胞。
【請求項6】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドがNADHを補因子として選択的に使用する、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項7】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、少なくとも約15g/Lの濃度のイソブタノールの存在下でイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換を触媒する、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項8】
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路がブタノール生合成経路である、請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞。
【請求項9】
請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞であって、
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、以下のステップ:
(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;
(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;
(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;
(d)α−ケトイソバレレートからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び
(e)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップ;
の各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり、
ここで、上記微生物宿主細胞がイソブタノールを生成する、上記微生物宿主細胞。
【請求項10】
請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞であって、
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、以下のステップ:
(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;
(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;
(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;
(d)α−ケトイソバレレートからイソブチリルCoAへのステップ;
(e)イソブチリルCoAからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び
(f)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップ;
の各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり、
ここで、上記微生物宿主細胞がイソブタノールを生成する、上記微生物宿主細胞。
【請求項11】
請求項1に記載の組換え微生物宿主細胞であって、
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、以下のステップ:
(a)ピルベートからアセトラクテートへのステップ;
(b)アセトラクテートから2,3−ジヒドロキシイソバレレートへのステップ;
(c)2,3−ジヒドロキシイソバレレートからα−ケトイソバレレートへのステップ;
(d)α−ケトイソバレレートからバリンへのステップ;
(e)バリンからイソブチルアミンへのステップ;
(e)イソブチルアミンからイソブチルアルデヒドへのステップ;及び
(f)イソブチルアルデヒドからイソブタノールへのステップ;
の各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含むイソブタノール生合成経路であり、
ここで、上記微生物宿主細胞がイソブタノールを生成する、上記微生物宿主細胞。
【請求項12】
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路と、配列番号21、22、23、24、25、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドとを含む組換え微生物宿主細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の組換え微生物宿主細胞であって、
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、以下のステップ:
(a)ピルベートからα−アセトラクテートへのステップ;
(b)α−アセトラクテートからアセトインへのステップ;
(c)アセトインから2,3−ブタンジオールへのステップ;
(d)2,3−ブタンジオールから2−ブタノンへのステップ;及び
(e)2−ブタノンから2−ブタノールへのステップ;
の各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む2−ブタノール生合成経路であり、
ここで、上記微生物宿主細胞が2−ブタノールを生成する、上記微生物宿主細胞。
【請求項14】
請求項12に記載の組換え微生物宿主細胞であって、
低級アルキルアルコールを生成するための生合成経路が、以下のステップ:
(a)アセチルCoAからアセトアセチルCoAへのステップ;
(b)アセトアセチルCoAから3−ヒドロキシブチリルCoAへのステップ;
(c)3−ヒドロキシブチリルCoAからクロトニルCoAへのステップ;
(d)クロトニルCoAからブチリルCoAへのステップ;
(e)ブチリルCoAからブチルアルデヒドへのステップ;及び
(f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへのステップ;
の各ステップについての基質から生成物への変換を触媒するポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドを含む1−ブタノール生合成経路であり、
ここで、上記微生物宿主細胞が1−ブタノールを生成する、上記微生物宿主細胞。
【請求項15】
前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項16】
前記アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主細胞の属が、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、パキソレン属(Pachysolen)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ザイゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、ガラクトミセス属(Galactomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、トルラスポラ属(Torulaspora)、デバリオミセス属(Debayomyces)、ウィリオプシス属(Williopsis)、デッケラ属(Dekkera)、クロエケラ属(Kloeckera)、メチニコウイア属(Metschnikowia)、イサチェンキア属(Issatchenkia)、及びカンジダ属(Candida)からなる群から選択される、請求項1又は12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項18】
イソブタノールの生産方法であって、
(a)イソブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を備えるステップが、その経路がイソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒する異種ポリペプチドを含み、ポリペプチドが配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、該ステップと、
(b)イソブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップと、
を含む、上記方法。
【請求項19】
イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒する異種ポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの基質から生成物への変換を触媒する異種ポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
2−ブタノールの生産方法であって、
(a)2−ブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を備えるステップが、その経路が配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する異種ポリペプチドを含む、該ステップと、
(b)2−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップと、
を含む、上記方法。
【請求項22】
異種ポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1−ブタノールの生産方法であって、
(a)1−ブタノール生合成経路を含む組換え微生物宿主細胞を備えるステップが、その経路が配列番号21、22、23、24、25、27、31、32、34、35、36、37、又は38のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する異種ポリペプチドを含む、該ステップと、
(b)1−ブタノールが生成される条件下で(a)の宿主細胞を炭素基質と接触させるステップと、
を含む、上記方法。
【請求項24】
異種ポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項23に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−515506(P2013−515506A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547274(P2012−547274)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062390
【国際公開番号】WO2011/090753
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】