説明

低級アルデヒド類の吸着剤およびその製造法

【課題】本発明は、熱的に安定で、環境に対して安全であり、かつ低級アルデヒド類を長時間にわたり効率よく吸着除去することができる優れた低級アルデヒド類の吸着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む極少量の水溶液を30〜95℃に加温・溶解して活性炭1g当たり尿素を150〜800mgと酸性硫酸アンモニウム10〜300mg添着することで前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの低級アルデヒド類に対し優れた吸着性能を有し、使用期間中に添着薬品臭のしない吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの低級アルデヒド類は、いずれも特異な刺激臭を発する有害なガスである。ホルムアルデヒドは、空気中の許容濃度が0.3ppmと低く、かつ発ガン性を有すると言われている。また、アセトアルデヒドをはじめとしてC〜Cの脂肪族低級アルデヒド類は我が国では特定悪臭物質に指定され、いずれも嗅覚閾値が非常に低く悪臭公害を引き起こす物質である。
ホルムアルデヒドの発生源としては、ホルムアルデヒドの製造工場および尿素、メラミン、フェノールなどを原料とした樹脂の製造工場のほか、これらの樹脂の加工工場、さらにこれらの樹脂を使用した建材、家具など製造工場などが挙げられる。また、消毒剤としてのホルムアルデヒドや石油類の不完全燃焼排ガス、たばこの副流煙にも含まれている。最近では、室内においても新建材や家具などから発生するホルムアルデヒドが問題になっている。
アセトアルデヒドの発生源としては、アセトアルデヒドおよびその誘導体の製造工場のほか、下水汚泥の加熱処理時にも発生し、またたばこの主流煙中にも含まれている。
【0003】
近年、これら低級アルデヒド類に対して、作業環境の改善および生活環境の向上などの観点から、有害物質や臭気などが問題視され、この観点から気体、特に空気中の低級アルデヒド類を効率よく除去する吸着剤の開発が強く要望されている。
従来から低級アルデヒド類の吸着剤としては、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどが挙げられ、なかでも活性炭が広く使用されてきたが、これらの吸着剤自体は、その特性上、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの低級アルデヒド類に対する吸着容量が小さく、寿命が短いという欠点がある。
この改善策として、前記の吸着剤などに低級アルデヒド類と反応する化合物、たとえば、尿素、脂肪族アミン類、芳香族アミン類などの有機化合物を担持させたものなどが提案されている。
【0004】
たとえば、尿素と硫酸アンモニウムなどを活性炭に担持した吸着剤(特許文献1)、ヤシガラ活性炭に尿素などの尿素系化合物の酸含有溶液を含浸、担持させた吸着剤(特許文献2)などが提案されている。
しかしながら、従来の技術による低級アルデヒド類吸着剤は、いずれも低級アルデヒド類の除去に対して満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−313828号公報
【特許文献2】特開2006−272078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱的に安定で、環境に対して安全であり、かつ低級アルデヒド類を長時間にわたり効率よく吸着除去することができる優れた低級アルデヒド類の吸着剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究した結果、活性炭1g当たり尿素150〜800mgと酸性硫酸アンモニウム10〜300mgを添着させた吸着剤が、熱的に安定で、環境に対して安全であり、低級アルデヒド類を長期にわたり効率よく吸着除去することを見出した。尿素と酸性硫酸アンモニウムを添着する際に、これらの薬品を含む水溶液を30〜95℃に加温することにより、活性炭1g当たり100〜1000μLという極少量の水溶液で薬品必要量を完全に溶解できるので、所定量の尿素と酸性硫酸アンモニウムを活性炭に均一に、かつ簡単に添着することができ、しかも添着後乾燥工程なしにそのままの状態で低級アルデヒド類を非常によく吸着する吸着剤となる。
【0008】
本発明で使用される活性炭としては、木炭、コークス、石炭、ヤシ殻、樹脂などを原料として通常の方法により賦活されたものであれば、いかなるものでもよい。その形状は、破砕状、円柱状、球状、ハニカム状、繊維状などいかなるものでもよい。また、これらの活性炭の比表面積は、50m/g以上、好ましくは100〜2500m/gのものである。
活性炭は、予め酸化処理することにより低級アルデヒド類の吸着性能を著しく向上させることができる。活性炭を酸化する方法としては、たとえば、硝酸、窒素酸化物(NOx)、硫酸、硫黄酸化物(SOx)、三酸化硫黄、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、酸素含有ガス(たとえば、空気、燃焼排ガスなど)などの酸化剤で、液相あるいは気相で酸化するなどの方法が挙げられる。NOxやSOxなどの場合は、活性炭にNOxやSOx含有ガスの吸着、脱着を繰り返すなど方法で活性炭を酸化してもよい。また、酸素含有ガスによる気相酸化などのように活性炭に対する酸化力が弱い場合などでは、ガス中の酸素濃度にもよるが、常温以上の温度、たとえば、200℃以上、好ましくは200〜800℃、さらに好ましくは250〜600℃の温度で酸化処理を行うのが効率的である。また、大都市などの浄水場で行われているオゾン法高度浄水場で長年使用された使用済み活性炭は、液相におけるオゾン酸化でその表面に酸素含有基が多量に生成されており、このような活性炭は、本発明に有利に使用できる。
【0009】
このような酸化処理によって活性炭表面に酸素含有基が生成する。本発明での酸化処理において、活性炭に対するこれらの酸化剤使用量は、処理方法や酸化条件(たとえば、処理温度、時間など)などにもよるが、通常、活性炭1g当り酸素原子換算量で10mg以上、好ましくは、20mg以上、より好ましくは、30〜2000mgである。
これらの酸化処理により、活性炭表面に、例えばカルボニル基、カルボキシル基、フェノール性水酸基などの酸素含有基が生成される。この表面酸素含有基は、酸素原子として活性炭全体の1重量%以上、好ましくは、2重量%以上より好ましくは3〜80重量%である。
【0010】
本発明では、活性炭1g当たり尿素を150〜800mg、好ましくは200〜500mgと酸性硫酸アンモニウムを10〜300mg、好ましくは10〜200mgを添着するのが特徴の1つである。このようにすることによって、低級アルデヒド類の吸着性能が飛躍的に向上する。また、活性炭に尿素と酸性硫酸アンモニウムを添着する際にこれらの薬品を含む水溶液を30〜95℃に加温することも本発明の特徴の一つである。この加温によって活性炭1g当たり100〜1000μLという極少量の水溶液に薬品の必要量を完全に溶解できるので、水溶液を加温下で活性炭に接触させることによって、多量の尿素と酸性硫酸アンモニウムを短時間に活性炭に均一に添着することができ、かつ添着後乾燥しなくてもそのままで低級アルデヒド類を非常によく吸着する吸着剤となり得ることも本発明の大きな特徴である。
本発明に用いる酸性硫酸アンモニウムは、化学式(NH)HSOで表すことができるもので、市場での入手が可能であるが、硫酸と硫酸アンモニウムとの反応生成物、硫酸とアンモニア水と中和反応生成物をそのまま用いることできる。酸性硫酸アンモニウムとして中和反応生成物をそのまま使用する場合には、硫酸を中和反応に必要な理論量よりも過剰に用いることによって得られた吸着剤は、理論量を用いた場合よりも低級アルデヒドの吸着性能、特に初期の吸着性能が向上することも見出した。硫酸の過剰量は、理論量の1.2〜20倍量、好ましくは、1.2〜15倍量である。
【0011】
本発明の低級アルデヒド類吸着剤は、尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む水溶液を30〜95℃に加温して活性炭にこれらの薬品を添着することによって容易に得られる。尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む水溶液の加温は直接的あるいは間接的に行うことができる。尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む水溶液を30〜95℃に加温する時間は、特に限定されず、尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む水溶液の温度が所定の温度になればよい。尿素と酸性硫酸アンモニウムを含む水溶液の温度が95℃を越えるとこれらの薬品が変質したり、多量の水蒸気が発生したりするので好ましくない。また、30℃より低くなると薬品を完全に溶解させることが出来ない場合がある。
【0012】
本発明における除去対象の低級アルデヒド類は、炭素数が6以下で沸点が100℃以下のアルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、3−メチル−ブチルアルデヒドを指すが、代表的なものはホルムアルデヒドとアセトアルデヒドである。
本発明においては、上記のようにして得られたアルデヒド類吸着剤を空間内、装置内などに存在させて、アルデヒド類を効率よく除去する方法などが含まれる。アルデヒド類吸着剤を空間内に存在させる場合には、たとえば、アルデヒド類吸着剤をシート状などにしたり、建材に含ませたり、通常行われる方法などが挙げられる。また、装置内などに存在させる場合は、塔、容器などに充填したりして、これらにアルデヒド類を含むガスを通気する方法などが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルデヒド吸着剤は、それを使用する常温付近では、無臭で、かつ化学的及び熱的に安定な固体薬品である、尿素と酸性硫酸アンモニウムを活性炭に添着するので、熱的に安定で、環境に対して安全であり、かつ低級アルデヒド類を長時間にわたり効率よく吸着除去することができ、従来の低級アルデヒド吸着剤に比べて非常に優れた低級アルデヒド類の吸着剤である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0015】
8〜32メッシュの瀝青炭系活性炭A(BET比表面積1150m/g)に対して下記のような処理を施して尿素と各種の無機塩を均一に添着した試料を作成した。
試料No.1:水400μLに尿素150mgと酸性硫酸アンモニウム200mgを入れ、80℃に加温してこれらを完全に溶解し、この水溶液に活性炭A1gを入れてよく混合し均一に添着して、大気中に12時間放置した。
試料No.2:No.1において、尿素500mgと酸性硫酸アンモニウム15mgを用い、95℃に加温して調製した。
試料No.3:試料No.1において、尿素300mgと酸性硫酸アンモニウム40mgを用い、60℃に加温して調製した。
試料No.4:試料No.1において、尿素150mgと酸性硫酸アンモニウム10mgを用い、35℃に加温して調製した。
試料No.5:試料No.1において、尿素350mgと酸性硫酸アンモニウム20mgを用い、70℃に加温して調製した。
試料No.6:試料No.1において、尿素200mgと酸性硫酸アンモニウム25mgを用い、40℃に加温して調製した。
試料No.7:試料No.1において、尿素150mgと硫酸アンモニウム15mgを用い、60℃に加温して調製した。
試料No.8:水2000μLに尿素150mgと酸性硫酸アンモニウム15mgを入れ、25℃でこれらを溶解して、活性炭A1gを浸漬し、24時間浸漬した後、ろ過して、100℃で3時間乾燥し、試料を調製した。
これらの各試料200mgを3Lのテトラバッグに量り込み、空気で満たした。各テトラバッグに所定量のアセトアルデヒド水溶液を注入して、各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)を650ppmとした。24時間後の各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)を測定した。アセトアルデヒド除去性能として次式で求めた値を表1に示した。
アセトアルデヒド除去性能=(1−C/C)×100(%)
【0016】
【表1】

この結果から、本発明の吸着剤(No.1〜6)は、水400μLに尿素150〜500mgと酸性硫酸アンモニウム10〜200mgを入れ、35〜95℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭A1gに均一に添着し、大気中で12時間放置して、得られた吸着剤である。これらの吸着剤のアセトアルデヒド除去性能は、すべて100%となり非常に良好であった。
これに対して、対照の吸着剤No.7は、尿素150mgと硫酸アンモニウム15mgを水400μLに入れ、60℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭A1gに均一に添着し、大気中で12時間放置して得られたものであるが、アセトアルデヒドの除去性能は、85%と非常に低かった。
また、対照の吸着剤No.8は、従来技術よるアルデヒド吸着剤の調製法で、添着斑を防止するために、多量の水(2000μL)に尿素150mgと酸性硫酸アンモニウム15mgを入れ、25℃でこれらを溶解して、活性炭を24時間浸漬、ろ過、高温乾燥してでき上がったものである。従ってこの吸着剤は、ろ過操作により使用各品の一部が流出したため、活性炭Aに添着された尿素は95mg/g、酸性硫酸アンモニウムは9.1mg/gであった。即ち吸着剤No.8は本発明と同じ薬品を使用したにもかかわらず、水溶液量やその添着時の温度が異なるうえ、ろ過により薬品の一部が流出のために担着量も少なくなり、除去性能は75%と低下した。
【実施例2】
【0017】
実施例1の各試料50mgを3Lのテトラバッグに量り込み、空気で満たした。各テトラバッグに所定量のホルムアルデヒド水溶液を注入して、各テトラバッグ中のホルムアルデヒド濃度(C)を300ppmとした。24時間後の各テトラバッグ中のホルムアルデヒド濃度(C)を測定した。ホルムアルデヒド除去性能として次式で求めた値を表2に示した。
ホルムアルデヒド除去性能=(1−C/C)×100(%)
【0018】
【表2】

この試験においても、実施例1と同様な結果が得られた。
【実施例3】
【0019】
実施例1の瀝青炭系活性炭Aの各30gを55mmφの石英ガラス管に充填して、それぞれ250、400、500、および600℃の各温度でO−10.0vol%含有のNガスを線流速5cm/秒で20分間流通した後、Nガス中で常温まで冷却して、活性炭B、C、DおよびEを得た。
酸化処理をした活性炭B、C、DおよびEについて、次の方法で測定した表面酸化物又は酸素含有基に起因する表面酸素量は、それぞれ5.5重量%、8.9重量%、12.3重量%および16.1重量%であった。なお、酸化処理をしない活性炭Aの酸素量は0.7重量%であった。
【0020】
活性炭の表面酸素量の測定法
直径20mm×長さ1,000mmの石英カラムに試料活性炭3gを入れ、試料の前後は十分に乾燥させた石英ガラスウールに固定し、電気環状炉にセットした。また石英カラムにはゴム栓で前後に蓋をして窒素を導入するための孔と排出するための孔を空ける。100mL/分の流速で窒素を石英カラムに流しながら、100℃まで加熱昇温し、次いで、出口ガスをテトラバックに接続し、400℃/時間の昇温速度で900℃まで加熱昇温した。900℃になってから、さらに30分間900℃で保持した後、テトラバックを外し、捕集したガス量を測定するとともに、捕集されたガスにおけるCOとCO2の総濃度を、メタンコンバータ付きのFID検出器付ガスクロマトグラフィーで測定し、表面酸素量を算出した。
水400μLに尿素250mgと酸性硫酸アンモニウム40mgを入れ、80℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭AおよびB、C、DおよびEの各1gに対して均一に添着し、大気中で12時間放置した。これらの各試料100mgを3Lのテトラバッグに量り込み、空気で満たした。各テトラバッグに所定量のアセトアルデヒド水溶液を注入して、各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)を650ppmとした。24時間後の各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)を測定した。アセトアルデヒド除去性能として次式で求めた値を表3に示した。
アセトアルデヒド除去性能=(1−C/C)×100(%)
【0021】
【表3】

表3から明らかなように活性炭を酸素酸化処理することによって、アセトアルデヒドの除去性能が著しく向上することがわかる。
【実施例4】
【0022】
内径94mmφのアクリル製カラムに8〜32メッシュのヤシ殻系活性炭F(BET比表面積1200m/g)100mLをステンレス金網容器に入れて、活性炭充填層を形成した。この活性炭層にオゾン約180ppm含有の空気を流量5L/分で25日間流通し、気相でのオゾン酸化処理活性炭Gを得た。活性炭FおよびGの表面酸素量は、それぞれ0.5重量%および12.5重量%であった。
活性炭FおよびGについて実施例3と同様な方法で、水400μLに尿素250mgと酸性硫酸アンモニウム25mgを入れ、80℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭FおよびGの各1gに対して均一に添着し、大気中で12時間放置した。
このようにして得られた各試料100mgについて、実施例3と同様な方法でアセトアルデヒド除去性能を測定した。その結果を表4に示した。
【0023】
【表4】

表4からも明らかなとおり、活性炭をオゾン酸化することによってアセトアルデヒド除去性能が向上する。
【実施例5】
【0024】
500mLのビーカーに5重量%の過酸化水素水100mLを入れ、80℃の水浴中で80℃に加熱した。この過酸化水素水に実施例1の瀝青炭系活性炭A10gを入れて攪拌しながら30分間酸化した。酸化後の活性炭をろ過して100℃で乾燥した。酸化処理をした活性炭Hの表面酸素量は、8.5重量%であった。
活性炭FおよびGについて実施例3と同様な方法で、水400μLに尿素300mgと酸性硫酸アンモニウム40mgを入れ、80℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭AおよびHの各1gに対して均一に添着し、大気中で12時間放置した。
このようにして得られた各試料100mgについて、実施例3と同様な方法でアセトアルデヒド除去性能を測定した。その結果を表5に示した。
【0025】
【表5】

表5から明らかなように、過酸化水素酸化処理による効果が発揮されていることが明らかである。
【実施例6】
【0026】
実施例1の8〜32メッシュの瀝青炭系活性炭Aをオゾン法高度浄水処理場で3年間使用し、液相でオゾン酸化された活性炭を110℃で1時間乾燥した。この使用済み活性炭Iの表面酸素量は25.6重量%であった。
活性炭Aおよび活性炭Iについて実施例3と同様な方法で、水400μLに尿素300mgと酸性硫酸アンモニウム40mgを入れ、80℃に加温してこれらを完全に溶解し、活性炭Aおよび活性炭Iの各1gに対して均一に添着し、大気中で12時間放置した。
このようにして得られた各試料100mgについて、実施例3と同様な方法でアセトアルデヒド除去性能を測定した。その結果を表6に示した。
【0027】
【表6】

オゾン法高度浄水処理場で使用された活性炭には、表面酸素量が賦与されており、アセトアルデヒド除去性能を著しく向上させることが確認できた。
【実施例7】
【0028】
2660μLの水に3モル/Lの硫酸1161μL(HSOとして341mg含有)と5モル/Lのアンモニア水696μL(NHOHとして122mg含有)を加え常温で5分間攪拌して中和反応を完結させ、酸性硫酸アンモニウム400mgを生成させた。この水溶液に尿素3000mgを入れ、80℃に加温した後、2mmφの無煙炭系円柱状活性炭J(BET比表面積950m/g)の10gに添着し、大気中で12時間放置した試料No.9を調製した。
この試料200mgについて、実施例1と同様な方法でアセトアルデヒド除去性能を測定した結果、アセトアルデヒド除去率は、100%であった。この試料は、実施例1の試料No.3(活性炭1g当たりに尿素300mgと酸性硫酸アンモニウム40mgを添着したもの)と同様に非常に優れたアセトアルデヒド除去性能を発揮した。
【実施例8】
【0029】
実施例7において、3モル/Lの硫酸1161μL(HSOとして341mg含有)の代わりに3モル/Lの硫酸1625μL(HSOとして478mg含有)を用いた。本実施例では、硫酸量を中和反応に必要な理論量の1.4倍量として、実施例7と同様に試料No.10を調製した。本試料と実施例7の試料No.9の各100mgを3Lのテトラバッグに量り込み、空気で満たした。各テトラバッグに所定量のアセトアルデヒド水溶液を注入して、各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)を650ppmとした。3時間後と24時間後の各テトラバッグ中のアセトアルデヒド濃度(C)をそれぞれ測定した。アセトアルデヒド除去性能として3時間値と24時間値を次式で求めて、表7に示した。
アセトアルデヒド除去性能=(1−C/C)×100(%)
【0030】
【表7】

本結果から、硫酸を中和反応に必要な理論量よりも1.4倍量過剰に用いることによって、出来上がった吸着剤は、理論量を用いた場合よりもアセトアルデヒドの吸着性能、特に初期の吸着性能(3時間値)が非常に向上することが判明した。
【実施例9】
【0031】
実施例7と同様の方法で、3920μLの水に3モル/Lの硫酸580μL(HSOとして171mg含有)と硫酸アンモニウム229mgを加え常温で5分間攪拌して反応を完結させ、酸性硫酸アンモニウム400mgを生成させた。この水溶液に尿素3000mgを入れ、80℃に加温した後、2mmφの無煙炭系円柱状活性炭J(BET比表面積950m/g)の10gに添着し、大気中で12時間放置した試料No.11を調製した。
この試料200mgについて、実施例8と同様な方法でアセトアルデヒド除去性能として3時間値と24時間値を測定した。その結果、3時間値の除去率は、98%で、24時間値の除去率は、100%で、いずれも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る低級アルデヒドの吸着剤は、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド類が発生する工場、医療施設、下水処理場、喫煙室などで用いることにより、それらの低級アルデヒド類を極めて効率よく吸着除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭1g当たり尿素を150〜800mg及び酸性硫酸アンモニウムを10〜300mg添着させた低級アルデヒド類吸着剤。
【請求項2】
活性炭が予め酸化処理した活性炭である請求項1記載の低級アルデヒド類吸着剤。
【請求項3】
酸性硫酸アンモニウムが、硫酸と水酸化アンモニウムとの中和反応生成物である請求項1記載の低級アルデヒド類吸着剤。
【請求項4】
硫酸と水酸化アンモニウムとの中和反応生成物が水酸化アンモニウムに対して硫酸を理論量の1.2〜20倍量使用したものである請求項3記載の低級アルデヒド類吸着剤。
【請求項5】
活性炭に、尿素と酸性硫酸アンモニウムを溶解した30〜95℃の水溶液を接触させて、活性炭1g当たり尿素150〜800mgと酸性硫酸アンモニウム10〜300mgを添着させる低級アルデヒド類吸着剤の製造法。
【請求項6】
活性炭1g当たり、尿素150〜800mgと酸性硫酸アンモニウム10〜300mgを溶解した100〜1000μLの水溶液を30〜95℃に加温して接触させる請求項5記載の低級アルデヒド類吸着剤の製造法。

【公開番号】特開2010−240605(P2010−240605A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93846(P2009−93846)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(508197549)株式会社 永光 (12)
【Fターム(参考)】