説明

低脂肪スプレッド製造において有用な安定剤

本発明は乳タンパク質で安定化させた低脂肪スプレッドエマルションの製造方法に関する。水相は低カルシウム濃度の熱変性乳清タンパク質で安定化される。熱処理後、水相のpHを中性または酸性状態に調整する。本発明はまた、食品安定化成分として使用可能な乳清タンパク質製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定剤の分野に関する。特に、本発明は、乳由来の安定剤並びに乳由来のタンパク質で安定化した低脂肪スプレッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
できる限りバターに似せた味、口当たり、きめ、粘稠度などを有する低脂肪スプレッドを得るために、長年に亘って多くの試みが成されている。こうした「バター感」を得るためには、最終製品に多数の特徴:
・約5乃至25℃の温度での塗布性、
・内発的な水分離せず、塗布が容易であること、
・砂のようなきめ及び結晶性のきめのいずれもないクリーム状の感触、
・口の中で容易に溶けること、
・口の中でべたつき感のないこと、
・不快な味または異味のないこと、
・好ましくは乳由来でない添加剤を含まないこと、
・比較的に製造が容易で安価なこと、
・試験審査員の認定するところの「バター様」感、
が存在しなければならない。
【0003】
最後に、この製品は、当然にバターよりも著しく低い脂肪含量を有するべきである。
【0004】
然るに、所望の製品に到達するためには、多数の技術的問題が解決されねばならない。これまでは、これらの基準のほとんどもしくは全てを満足な程度に満たす製品を製造することは不可能であった。市販の低脂肪スプレッドが多数あること、肥満及び一般的なカロリー摂取過剰に対する懸念が増大していることにより、当業界における、消費者に満足のいく低脂肪スプレッド製品を提示する必要性が明示されている。
【0005】
当業界においては、塗布の際の水の分離及び相分離を回避するために低脂肪スプレッドエマルションの水相を安定化することが長年知られている。周知の安定剤には、澱粉、及びカラギーナンなのヒドロコロイド、並びにゼラチンなどのタンパク質が含まれる。
【0006】
非常に頻繁に、ゼラチンは(約3%の濃度で)低脂肪スプレッドの安定剤として使用される。ゼラチンを使用することの利点は、所望の粘稠度を達成するためには、非常に低いタンパク質濃度で十分なことである。別の利点は、このアプローチが比較的に安価であり、且つゼラチンタンパク質がほとんど無味であることである。欠点は、ゼラチンが動物由来であり、このため、例えばこうした製品に関連するBSEの危険性のために、とりわけゼラチンが牛骨から誘導されたものであれば、ゼラチンの食品成分としての使用を熟考している国もある。菜食主義者及び健康を気遣う消費者は、ゼラチンを避ける傾向にある。
【0007】
低脂肪スプレッドの水相をを乳由来のタンパク質で安定化することが周知である。
【0008】
SE-72116387には、高含量(水相中に12-13%)のNa-カゼイナートまたは、酸性化し、且つ沈降させたスキムミルクまたはバターミルクからin situにて生成させたNa-カゼイナートを使用することが開示されている。このアプローチの欠点は、タンパク質含量の増大と共に製造コストが増大することである。また、高Na-カゼイナート含量は、チョークのような(chalky)口当たり及び苦みをもたらす。
【0009】
乳清タンパク質「ゲル」を製造するための幾つかの方法が開示されている。当業界において既知である乳清タンパク質ゲルは、製パン製品及び食肉製品などの様々なタイプの製品の安定化のための食品成分として使用されている。
【0010】
Int. Dairy Journal 6 (1996), 171-184 には、低脂肪スプレッドの水相は、安定な水相をもたらすために1.7Pa・sの粘度を達成しており、そのためには約20乃至25%の天然乳清タンパク質を含むべきだと開示されている。この水相はまた、少なくとも約13%のNaカゼイナートの濃度によっても安定化可能である。しかしながら、最終生成物が高い(8%を超える)タンパク質含量を有する場合、これは望ましからぬ異味もしくは異臭を呈しがちである。同様に、製造コストは高いタンパク質含量に伴って増大する。従って、低濃度の乳由来のタンパク質で安定化した低脂肪スプレッドには、許容される製品を達成するために、さらなる付加的安定剤を添加する必要がある。
【0011】
然るに、これまでは、安定剤、増粘剤、香料、着色料などの様々な他の添加剤の添加が、低脂肪スプレッドにおいては必須であると考えられている。したがって、少量の(8%を超える)乳性タンパク質のみで安定化された低脂肪スプレッドは市販されていない。
【特許文献1】SE-72116387
【非特許文献1】Int. Dairy Journal 6 (1996), 171-184
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非乳製品添加剤の添加には、様々な欠点が関連する。非乳製品添加剤の種類は、例えば成分表示に列挙されねばならず、したがって当業界には、例えば乳由来のタンパク質のみで安定化可能な低脂肪スプレッドが求められている。この点で、ほとんどの消費者が天然産物を、好ましくは添加剤を含まないものをより好むのは注目に値する。さらにまた、当業界においてはこうした製品を製造するための比較的に安価で且つ単純な方法が求められている。
【0013】
食品業界においては、普遍的な応用範囲を有する安定化成分として有用な乳清タンパク質ゲルの、安価且つ有効な製造方法の開発もまた望まれている。
【0014】
EP459566 A1 には、10%の脂肪及び13乃至14%のカルシウムを含まない変性乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドが開示されている。水相の剪断を含む方法が、粒子凝集物の粘性溶液からなる透明なチキソトロピックゲル構造の製造のために開示されている。この文献におけるチキソトロピックゲルとは、ゲルの剪断を停止すればその粘度を徐々に回復するゲルであると解される。ゲルが生成した後には、脂肪相との混合を行って低脂肪スプレッドを得る。こうした生成した乳清タンパク質ゲルは、機械的に破壊されたタンパク質鎖のウェブからなる高濃度のタンパク質ゲルである。
【0015】
US858441には、35%未満の脂肪、0.05−0.5%の市販の熱変性乳清タンパク質、並びにゲル化剤(ゼラチン、澱粉など)、及び(任意の)増粘剤を含む低脂肪スプレッドが開示されている。この脂肪相を60℃に加熱する方法が開示されている。その後水性相を65℃に加熱し、ゆっくりと脂肪相に加える。油及び水性相が45℃にて混合される、別の操作も開示されている。
【0016】
EP 0076549 B1 には、20-60%の脂肪、0.1-2%の熱変性乳清タンパク質、並びに適当量の増粘剤、例えばゼラチンを含む低脂肪スプレッドが開示されている。この低脂肪スプレッドの調製方法もまた開示されており、前記方法は、まず乳清タンパク質を含む溶液と脂肪とを高圧下で混合し、次いでこのエマルションに熱処理を施し、pH3.5-6にpH調整を行う工程を含む。
【0017】
EP1065938B1には、50-85%の脂肪及び0.02-10%の熱処理バターミルクタンパク質並びに添加剤、例えば乳化剤及び香料を含む相転化水中油型低脂肪スプレッドが開示されている。乳化剤を含む低脂肪スプレッドを製造し、且つ脂肪相の過冷却を含む方法もまた開示されている。この方法では、乳化剤を含む脂肪相を、2.2-2.5%のバターミルク粉末を含む水相と混合し、次いでこのエマルションを75-80℃に加熱する。別の実施態様では、脂肪乳クリームをクエン酸または菌液を用いてpH5.2-5.3に酸性化する。このサワークリーム溶液を、その後脂肪と混合して所望の脂肪含量を達成させ、さらなる脂肪の添加の前及び/または後に75℃の温度にまで加熱する。
【0018】
Britten及び GirouxによるFood Hydrocolloids 15 (2001) 609-617には、乳清タンパク質の酸誘発性ゲル化に対するpH及びカルシウム濃度の影響が開示されている。ここに開示されるゲルは、O/Wエマルションタイプの乳製品、特にヨーグルトにおける安定化食品成分として使用可能である。0.6mMのカルシウム濃度を有し、1リットル当たり80gの乳清タンパク質の水溶液を、pH6.5、7.5、及び8.5にそれぞれ調整する方法が開示されている。前記溶液を90℃に15分間加熱し、次いで5℃に冷却する。冷却の後、pHを7.0に調節し、さらに希釈することなく前記溶液を20.000×gで15分間に亘って遠心分離にかけ、評価した全ての条件において生成した大型の不溶性タンパク質凝集物を除去する。カルシウム高含量ヨーグルトと混合すると即座にゲル形成が起こる。このゲルをヨーグルトと混合し、これにより前記ヨーグルトを増粘すると共にそのタンパク質含量を増大させる。
【0019】
US2003/0091722には、食品成分として有用な乳清タンパク質生成物が開示されている。 DAVISCO製のWPI(スプレー乾燥粗製乳清)はタンパク源として作用する、。カルシウムはこの生成物から除去されない。この生成物の仕様書において、DAVISCOは乳清粉末のカルシウム含量は約0.1%であると提示しており、これは4%タンパク質溶液中の約0.004%または約1.1.4mMのカルシウムに該当する。4%の乳清タンパク質を含む溶液をpH約8.0に調整する方法が開示されている。この溶液は、10-120分間で75-95℃に加熱し、その後室温に冷却する。熱処理した溶液を、引き続きタンパク質が約1.5-3.5%のタンパク質濃度に希釈し、pHを約5.0-8.0に調整し、次いで第二加熱工程を行う。この二段階の加熱方法により、第二加熱工程の後にゲル構造の即時の生成がもたらされることが開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、優れた官能特性を有する低脂肪スプレッドの製造方法であって、熱処理されカルシウムが低減された乳清タンパク質生成物によってエマルションの水相が安定化され、単一の加熱工程を含む方法に関する。
【0021】
水相を製造するための出発物質は、5-9%の乳清タンパク質を含み、約.0-1.4mMのカルシウム濃度を有する溶液である。この溶液のpHは7乃至9に調整する。この比較的に高いpH値及び低いカルシウム濃度は、後の加熱工程の間のジスルフィド結合(一次凝集)によるβラクトグロブリンの重合にとって有利であると考えられる。
【0022】
この溶液の加熱は、約50乃至100℃の温度にて、0.15乃至30分間行う。通常は、一次凝集物は迅速に二次凝集物を形成する。しかしながら、低カルシウム濃度と高いpH値(7以上)との組み合わせにより、二次凝集物の自然発生的な形成が妨げられる。加熱工程の後、この溶液は1乃至40℃の温度に冷却して、変性過程を阻止すると共に粒子形成を回避せねばならない。
【0023】
冷却した溶液を、pH値3乃至7に調整し、タンパク質濃度を4乃至7%に希釈する。この最終工程(酸誘発性のゲル化、任意にNaClの添加と組み合わせる)は、微細鎖(fine-stranded)ゲル構造(二次凝集)の形成を誘発すると思われる。この工程で得られるのは低粘性液体であって、これは約48時間の間に約4℃の温度において徐々にゲルに変化する。所望の低脂肪スプレッド製品を得るためには、低粘性タンパク質溶液をゲル生成が完了する前に脂肪相と混合することが好ましい。然るに、混合は、酸誘発性ゲル化の開始後2時間以内に行うことが好ましい。約48時間後、好ましくは約4℃にて、分散した水滴中でゲル生成が完了し、所望の特性を有する低脂肪スプレッドが得られる。
【発明の効果】
【0024】
このゲルは、O/Wタイプ並びにW/Oタイプのエマルション型の安定化における食品成分として応用可能である。
【0025】
本発明で達成されるのは、不可逆的乳清タンパク質ゲル構造によって安定化される低脂肪スプレッドの製造であり、然るに低脂肪スプレッドの安定化剤として例えばゼラチンなどを使用することに代替策を提供するものである。消費者による消費の際、この低脂肪スプレッドは、口の中でバターと同じように溶解する。別の添加剤が全く加えられないならば、非常に優れた官能特性を有する低脂肪スプレッドが得られ、ここで前記低脂肪スプレッドは乳由来の成分のみによって安定化されている。
【0026】
さらに、本発明は、少量のカルシウム低減熱処理乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドに関する。
【0027】
最後に、本発明は、乳清タンパク質生成物の製造方法並びに様々な製品タイプの安定化のためのこれら生成物の使用に関する。
図1は、低温ゲル化に対する塩の影響;pH6.5及び4%のタンパク質含量である。
図2は、熱処理の時間及び温度並びにタンパク質濃度の、カルシウム低減乳清タンパク質溶液のゲル硬さに対する相対重要性(回帰係数)を示す。誤差バーは、95%の信頼区間を表す。
図3は、A)脱灰加熱処理したWPC80(この生成物は製造の8週間後に6.5℃にて塗布した)、及びB)(比較例)WPI 9224(乳清タンパク質単離物)(この生成物は製造の8週間後に6.5℃にて塗布した)を用いて安定化させた、40%脂肪スプレッド生成物の塗布性を示す。
【0028】
本発明は、少量の乳清タンパク質を使用するのみで低脂肪スプレッドの安定化に適当な乳清タンパク質ゲルの製造を達成するための独自の理論に基づく。これは、熱変性乳清タンパク質製品の微細鎖ゲルを含む低カルシウム水相を作り出すことにより達成される。このゲルは、低タンパク質濃度にて非常に優れた水結合特性を有する。
【0029】
この微細鎖ゲルは、当業者には既に既知の「低温ゲル化」概念(De Wit, 1981)に基づく。塩誘発性並びに酸誘発性である低温ゲル化が例えばEP1281322A1などにあるように開示されている。これまでのところ、さらなる安定化剤の添加が必須ではない、低濃度の乳清タンパク質を有する低脂肪スプレッドを製造することは不可能であった。
【0030】
低脂肪スプレッドの製造における低温ゲル化方法に関しては、多数のパラメータが重要である。
・低カルシウムイオン濃度、
・タンパク質濃度、
・タンパク質タイプ、
・熱処理の間のpHが7以上または7より大であること、
・熱処理の温度、
・熱処理の時間、
・冷却、
・熱処理の後のタンパク質濃度の調整、
・熱処理後のpHを7以下または7未満とする調整、
・脂肪相との混合。
【0031】
水相のカルシウムイオン濃度は、低レベルに維持しなくてはならない。カルシウム含量が十分に低減されていない場合、水保持特性に劣る粒状ゲル構造が得られる。カルシウムは、あらゆる通常の操作、例えばイオン交換を用いて乳清タンパク質から除去可能である。乳清タンパク質製品中の遊離カルシウムの含量もまた、例えばクエン酸塩などの添加によって低減可能である。本発明による低脂肪スプレッドを製造するための出発物質として使用される、カルシウム低減乳清タンパク質の溶液は、0.0-1.4mM、好ましくは1.4; 1.3; 1.2; 1.1; 1.0; 0.9; 0.8; 0.7;または0.6mM以下、さらに好ましくは0.5;0.4;0.3;0.2mM以下、最も好ましくは0.10;0.09;0.08;0.07;0.06;0.05;0.04;0.03;0.02;または0.01.4mM以下である。ゲル生成に対するカルシウム濃度の効果を、実施例において評価する。
【0032】
ほどほど高いカルシウムイオン濃度(約1.5-10mM)において、アンフォールドしたタンパク質の二次凝集が起こり始め、ゲル粒子形成がもたらされる。高いタンパク質濃度によりさらにこの作用が増進される。カルシウム誘発性ゲル粒子形成は、通常は大きな孔を有して水保持特性に劣るゲル粒子をもたらし、これは低脂肪スプレッドの水相の安定化には適さない。二次凝集はまた、ナトリウムイオンによっても引き起こされるが、この過程はカルシウムイオンを用いるとおよそ100倍有効に触媒される。したがって、水保持特性に劣るゲルの生成を回避するために、とりわけカルシウム濃度およびタンパク質濃度を低く維持することに関心が寄せられている。カルシウムイオンは、いかなる定法によって除去してもよい。粗製の乳清タンパク質の脱灰は、好ましくは50-99.5%、より好ましくは95%を超えるカルシウム含量の減少をもたらす。
【0033】
遊離のカルシウムイオンの含量が十分に低い場合、引き続き「微細鎖ゲル」が形成されうる。微細鎖ゲルは、二次凝集の間に形成された小孔を含むことに特徴付けられる。このゲルタイプは、半透明であり、低脂肪スプレッドの塗布の際の機械的破断に耐え得る。
【0034】
カルシウム含量(4%のタンパク質溶液中のカルシウム(mM))は、様々な乳清タンパク質製品中において下記の通りである:WPC 35: 27; WPC 65: 6.8; WPC 80: 5.0; WPI (whey prot. isol.): 1.1; 脱灰WPC 80: 0.3。
【0035】
熱処理中のpHは7以上、好ましくは7より高くなければならない。比較的に高いpH値により、一次凝集の際に生じるアンフォールドしたβラクトグロブリンの遊離のチオールの反応性が増大する(Britten & Giroux)。低カルシウム含量により、生成した一次凝集物の安定性が増大する。好ましいpH値は、7-9の範囲であり、然るに、7.0; 7.1; 7.2; 7.3; 7.4; 7.5; 7.6; 7.7; 7.8; 7.9; 8.0; 8.1; 8.2; 8.3; 8.4; 8.5; 8.6; 8.7, 8.8; 8.9;及び9の値を含む。本発明はまた、この範囲から逸脱したpH値であっても機能しうる。
【0036】
熱処理前及び熱処理中の乳清タンパク質溶液のタンパク質濃度は、好ましくは約5-10%であるべきである。然るに、好ましいタンパク質濃度は、5.0; 5.1; 5.2; 5.3; 5.4; 5.5; 6.0; 6.1; 6.2; 6.3; 6.4; 6.5; 7; 7.5; 8; 8.5; 9; 及び10%を含む。このタンパク質濃度の範囲であれば、一次凝集過程で得られるタンパク質繊維は確実に可能な限り長くなる(Jul & Kilara J. Agric. Food Chem. (1988) 465: 3604-3608)。タンパク質繊維は、ゲル構造の基礎である。約9%を超えるタンパク質濃度では、高いpH値での熱処理の後に二次的構造が形成開始しうる。5%未満のタンパク質濃度では、タンパク質繊維はおそらく十分に長くはならないであろう。しかしながら、本発明がこの範囲から逸脱するタンパク質濃度であってさえも機能することが考えられる。
【0037】
熱処理
乳清タンパク質は、50-100℃で0.15-30分間変性させ、部分的にまたは完全なアンフォールドを得る。好ましい温度は、45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 90, 95, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 105, 110, 115, 120, 125° Cである。タンパク質のアンフォールドもしくは一次凝集、または熱処理の際のタンパク質繊維の生成は、いくつかのパラメータ、たとえばタンパク質のタイプ、温度、継続時間等に依存する。この概念は、PaulssonらによるThermochimica Acta, 1985, 435-440に説明されている。したがって、当然ながら、本発明は100℃より高いまたは50℃未満の温度を利用し、例えばそれぞれ非常に短時間または非常に長時間の時間を採用した場合でさえも機能するであろうことが想定される。然るに、本業界における使用に好適であることから、50ないし100℃の温度および0.15ないし30分間の時間が選択される。
【0038】
同様に、加熱工程の際に使用される温度により、時間は1, 2, 3, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, または30分間であってよい。当然ながら、加熱時間はより長くても、例えば1時間、1.5時間、2時間またはそれ以上であってもよいが、非常に長時間または非常に短時間では、本業界における使用に向かない場合がある。
【0039】
βラクトグロブリンは、低温ゲル化処理の際のゲル形成の主たる原因となる乳清由来のタンパク質タイプであると考えられる。然るに、乳清タンパク質の使用に加えて、または乳清タンパク質の使用に代えて、完全にまたは部分的に精製されたβラクトグロブリンを使用してよいことは当然である。乳清タンパク質がβラクトグロブリンで強化されている場合は、粗製の乳清タンパク質を用いる場合に比べて必要とされるタンパク質含量を上限約50%まで低減可能である。粗製の乳清タンパク質に代えてβラクトグロブリンを使用することは、本発明の場合にも好都合に(よりいっそう好都合に)作用すると思われるが、製造コストは増大する。粗製の乳清タンパク質は以下のタンパク質を含む:βラクトグロブリン(約50%)、αラクトアルブミン(約20%)、カッパカゼイン(15%)免疫グロブリン類(約5%)の開裂により生じるグルコマクロペプチド類、血清アルブミン(約5%)。然るに、βラクトグロブリンは、乳清タンパク質出発物質のタンパク質含量の約30, 40, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, または100%を構成してもよい。したがって、ここで使用される「タンパク質」なる語はβラクトグロブリン強化されている、またはされていない、乳清タンパク質を意味する。
【0040】
加熱工程中のpHが7以上、好ましくは7より高い場合には、分子間ジスルフィド結合による変性乳清タンパク質ポリマーの可溶性凝集物の形成が促進されると考えられ、実験的に確認された。これらの凝集物または繊維は準ミクロンサイズであり、通常は20-100ナノメートルであり、比較的にアルカリ性の条件下(pH7以上)において非常に安定な傾向がある。然るに加熱工程中の好ましいpH値には、7.0; 7.1; 7.2; 7.3; 7.4; 7.5; 7.6; 7.7; 7.8; 7.9; 8.0; 8.1; 8.2; 8.3; 8.4; 8.5; 8.6; 8.7; 8.8; 8.9; 及び9が含まれる。このpH範囲ではうまく機能することが判明しているが、本発明はこの範囲を逸脱するpH値であっても機能することが想定される。しかしながら、7未満のpH値では可溶性凝集物の形成が不可能であることが、従前に判明している。
【0041】
冷却
熱処理の後、二次凝集を回避するために溶液を冷却せねばならない。溶液は、0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 25, 30, 35, 40℃を含む、約0乃至40℃の温度に冷却せねばならない。好ましい温度範囲は、約1-25℃、より好ましい温度範囲は約1-17℃、もっとも好ましい温度範囲は約1-10℃である。冷却は、とりわけ最終冷却温度が比較的に高い、すなわち約30乃至40℃である場合には、迅速かつ有効な方法で行われることが好ましい。
【0042】
タンパク質濃度は、熱処理の後に調節せねばならない。好ましいタンパク質濃度には、3.0; 3.5; 4.0; 4.5; 4.6; 4.7; 4.8; 4.9; 5.0; 5.1; 5.2; 5.3; 5.4; 5.5, 5.6; 5.7; 5.8; 5.9; 6.0; 6.1; 6.2; 6.3; 6.4; 6.5;及び7.0%が含まれる。熱処理後のタンパク質濃度がこの範囲であれば、優れた特性を備えた(口の中で溶解する性能を維持しつつ適当なゲル強度を備えた)ゲルが得られることが判明しているが、本発明はこの範囲を逸脱するタンパク質濃度であっても機能することが想定される。
【0043】
熱処理後、溶液のpHを7以下、好ましくは7未満に調整する。このpH調整は、優れた水保持特性を備えたゲルをもたらす、微細鎖特性を有する二次乳性タンパク質凝集物の形成を促進すると考えられる。好ましいpH範囲は5.2-7であり、よって好ましいpH値には5.0; 5.1; 5.2; 5.3; 5.4; 5.5; 5.6; 5.7; 5.8; 5.9; 6.0; 6.1; 6.2; 6.3; 6.4; 6.5; 6.6; 6.7; 6.8; 6.9及び7が含まれる。本発明が7より高いpHでさえも機能しうると考えるのが妥当である。βラクトグロブリンの等電点は約5.2であり、このpH値及びこれ未満では、タンパク質は徐々に沈殿して優れた水保持特性を備えたゲル構造を形成するその能力を喪失する。しかしながら、本発明はまた5.2よりわずかに低いpHでも機能することが想定される。pHはいかなる酸、例えばクエン酸または乳酸で調整してもよい。
【0044】
こうして達成されるのは、タンパク質を含む低粘度水相である。発明者らは、驚くべきことに、本発明のアッセイ条件に従った場合には、この低粘度水相が約5℃にて約48時間以内に徐々に安定なゲルに変化することを見出した。低温ゲル化処理が完了する前に水相と脂肪相とを混合することによれば、脂肪相とより高粘度のタンパク質製品とを混合して達成されうるよりも、低粘度水相が脂肪相中にいっそう均一に分布可能であるため、従前に知られていた乳清タンパク質で安定化された低脂肪スプレッドの製造方法に対して有利である。
【0045】
かくして得られる低脂肪スプレッド製品は、おそらくはin situでゲル化された水相が不可逆的に口の中で破断するために、予期せぬことに、消費者にとって格段に優れたバター様感覚を提供する。熱処理した水相と脂肪相とを混合する時間範囲は、然るに0.1; 0.2; 0.3; 0.4; 0.5; 0.6; 0.7; 0.8; 0.9; 1; 2; 3; 4; 5; 6; 7; 8; 9; 10; 12; 14; 16; 18; 20; 22; 24; 26; 28; 30; 32; 34; 35; 38; 40; 42; 44, 46;及び48時間を含む0-48時間である。しかしながら、ゲル化処理が完了した後に二つの相が混合された場合でさえも、本発明は機能するであろう。
【0046】
同様に、前記ゲルは、普遍的な安定化食品成分として応用可能である。しかるに発明者らは低タンパク質濃度を備え、且つ安定なゲルには徐々に変化するのみであるという驚くべき特徴を備えた低粘度ゲルの製造方法を開発したのみならず、W/Oタイプ並びにO/Wタイプの製品を製造するための安定化食品成分として安定なゲルの製造方法をも開発したのである。O/Wタイプの食品には、クリームチーズ、フレッシュチーズ、クワルク(quarg)、イエローチーズ、デザート、マヨネーズ、ドレッシング、ブランチ製品(brunch product)、ヨーグルト、及び発酵乳製品が含まれる。
【0047】
ここに記載される乳清タンパク質ゲルは、例えば肉の安定剤としても同様に応用可能である。本発明による変性乳清タンパク質溶液を肉に注入することにより、調理損失に低減を生じうる。肉構造中に形成されたゲル構造のいっそう均一な分布がかくして得られる。加工肉製品、例えばソーセージもまた乳性タンパク質ゲルを用いて安定化してよい。
【0048】
水相を最後に脂肪相と混合し、任意に容器に充填する。二つの相は、好ましくは48時間以内に、より好ましくは24時間以内に、さらにいっそう好ましくは12時間以内に、もっとも好ましくは6, 5, 4, 3, 2,または1時間内に混合されるべきである。二つの相の混合は、乳製品もしくはマーガリン産業において使用されるいかなる標準装置を用いて行われてもよい。高強度撹拌により水相の包含がますます少量になる。撹拌の後、低脂肪スプレッドを0-30℃、好ましくは4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14または15℃で貯蔵する。ゲル化過程は比較的高い温度は非常に迅速に起こるが、脂肪相の粘度を増大させるため、且つ製品の貯蔵寿命を長くするためには、ゲル化処理の間は比較的に低温にて前記製品を貯蔵することが好ましい。確実にゲル化処理を完了させるか、またはほぼ完了させるために、撹拌した製品を販売及び/または消費する前に少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間、もっとも好ましくは少なくとも48時間貯蔵すべきである。
【0049】
(定義)
低温ゲル化:低温ゲル化とは、乳清タンパク質の変性/アンフォールドが時間的に二次凝集工程と分けられていることを意味する。これは、タンパク質が比較的に高いpH及び低いカルシウム濃度にて変性される場合である。二次凝集は、pHの低減、及び/またはNaCl等の円の添加によって開始される。低温ゲル化により、大きな孔を有する粒状ゲルよりも優れた水結合特性を備えた微細鎖乳清タンパク質ゲルが得られるが、二次凝集が高カルシウム濃度によって触媒されていたならば、逆の結果になるであろう。低温ゲル化は、本発明の方法で行われる工程によって達成される。
【0050】
熱処理の間には、カルシウム濃度が非常に低く維持され、タンパク質濃度が比較的に低く、且つpH値が7以上に維持されることがとりわけ重要である。熱処理の後、タンパク質濃度を調整し、pHを7以下に調整する。ここで達成されるのは、非常に優れた水保持特性を備え、徐々に硬いゲルに変化する低粘度タンパク質溶液である。ゲルが低脂肪スプレッド製造に使用されるならば、ゲル化処理を完了まで行う前にタンパク質を含有する水相と脂肪相とを混合することが有利である。然るに、乳清タンパク質ゲルはO/W並びにW/Oエマルションタイプを安定化するための普遍的な食品成分として有用である。
【0051】
本発明の乳清タンパク質ゲルは、「ウェブ」を形成する高分子タンパク質の糸からなる透明ゲルであり、小孔が約20-100nmの直径を有することによって特徴付けられる(Langton & Hermansson Food Hydrocolloids (1992) 5: 523-539; Fine-stranded and particulate gels of betalactoglobulin and whey protein at varying pH)。このゲルは非常に優れた水保持特性を有する。
【0052】
特にこのゲルは、「曇っている」かもしくは白色であり、ストリング上で互いに結合して粗いネットワークを形成する粒子を含むこと及び約1乃至10μmのサイズの孔を有することによって特徴付けられる。このゲルタイプは明らかに水保持特性に劣る。このゲルタイプは、ゲルが本発明に関して開示されたもの以外の方法で調製された場合にもっともしばしば形成される。
【0053】
低温ゲル化の理論は、例えばWit 1981, Neth. Milk Dairy Journal, 35, p 47-64、英国特許出願第2063273号、及びArno Altingによる論文(Wageningen Food Center, the Netherlands, 2003)により詳細に開示されている。
【0054】
乳清タンパク質:乳清は、乳由来のタンパク質(乳清タンパク質)を含む、チーズ製造の水性副産物であり、カゼインの除去の後に溶液中に残留するものである。本発明に関して使用される乳清タンパク質のための出発物質は、非変性乳清、または部分的にもしくは完全に精製された乳清タンパク質の形態であってよい。粉末並びに水性溶液を用いてよい。乳清タンパク質はさらにβラクトグロブリンで強化されていてよい。
【0055】
エマルションタイプ(W/O及びO/W):油中水型(W/O)エマルション中では、脂肪相が連続相であり、水相粒子はその中に含まれる。水中油型(O/W)エマルション中では、水が連続相であり、脂肪相粒子はその中に含まれる。低脂肪スプレッドはO/Wエマルションの形態であることが想定されるが、W/Oエマルションの形態であるのがもっとも一般的である。当業界においては、例えば冷却及び結晶化の際に転相の工程を採用することによって低脂肪スプレッドを製造することが周知である。
【0056】
低脂肪スプレッドは、水相と脂肪相とのエマルションである。低脂肪スプレッドはさらにバターと共通の特徴を有し、同様の応用、例えば製パン、調理、フライに、またはパン切れに塗って使用可能な製品タイプを呈する。低脂肪スプレッドのもっとも重要な特徴は、製品の脂肪含量がバターよりも著しく低いことである。通常は低脂肪スプレッドは少なくとも10%乃至80%の脂肪含量を有する。低脂肪スプレッドは、もっとも好ましくは約10, 15, 20, 25, 30, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75,または80% w/wの脂肪含量を有する。
【0057】
脂肪:脂肪相はあらゆる脂肪または油原料、好ましくはトリグリセリド形態、または植物及び/または動物由来のいずれのものによって構成されていてもよい。然るに脂肪相はあらゆる脂肪原料の混合物であってよい。脂肪原料の例には、以下に限定されるものではないが、乳脂肪、植物脂肪及び油、例えばパーム油、ココナッツ油、大豆油、サンフラワー油、オリーブ油、シスル油、グレープカーネル油、ごま油、菜種油などが含まれる。
【0058】
乳脂肪:乳脂肪は乳を分泌する哺乳類、例えばウシ、ヤギ、ヒツジ、またはラマ等から得られる乳より誘導される。乳脂肪は、例えばバター、クリーム、乳、クリームチーズ、またはバターオイルの形態で加えてよい。バターオイルが実質的に水を全く含まない一方で、バターは通常約10-20%の水を含む。
【0059】
バター:バターはウシ、ヒツジ、ヤギ、またはラマ由来のフレッシュクリームを撹乳することによって製造される乳製品である。これは脂肪のマトリックス中の水と乳タンパク質とのエマルションからなり、少なくとも80%が脂肪であり、さらに乳酸培養物及び/または塩を含んでよい。これは植物油またはラードとほぼ同様の方法で調味料として調理に使用される。バターは固体であるが室温では柔らかく、容易に溶解する。その色は一般的に淡い黄色であるが濃い黄色からほとんど白色まで変化しうる(バターは典型的には、例えば乳牛が新鮮な草ではなく貯蔵した干草を与えられている冬にはより色が薄い)。
【0060】
安定剤:安定剤及び増粘剤なる語は、本文献中においては同義的に用いられる。安定剤は従来使用されているあらゆる製品、例えばゼラチン、澱粉、イヌリン、ベータグルカン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ゲランガム、アガー、アルギネート、マルトデキストリン、大豆タンパク質、キサンタンガム、ローカストビーンガム、マイクロクリスタリンセルロース、カゼイナート、コンニャク、マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム(アラビアガム)、トラガカンス、タラガム、カラヤガム、加工オウケウマ(aucheuma)海草、デキストリン、及び漂白澱粉等を含む。
【0061】
最終製品中の非乳由来の安定剤の総量は、20%を超えてはならない。安定剤に加えて、この低脂肪スプレッド製品は、乳化剤、風味剤、色素、保存料等の他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0062】
フレッシュチーズは、ここではクワルク、クワルクデザート、クリームチーズ、フレッシュチーズ、フロマージュ・フレ等の広範囲のチーズを包含する乳製品のタイプであると理解される。然るに、フレッシュチーズは実質的に脂肪を含まないタイプの脂肪含量から上限30-40%の脂肪含量を有するチーズに亘るチーズを含む。凝固物の分離または限外ろ過の後に、チーズを例えば貯蔵寿命及び/または粘稠度を調製するために後処理にかけてよい。同様に、風味剤、香辛料、果物、野菜、ナッツ、チョコレートなどを前記製品に加えてもよい。
【0063】
発酵乳製品には、化学的及び/または生物学的発酵をさせた、例えばフレッシュチーズ、ヨーグルト、クレームフレッシュ、サワークリーム、イマー(ymer)等の広範囲の乳製品が含まれる。
【0064】
伝統的チーズには、例えばチェダー、ゴーダ、ダンボ、エメンタール、フェタ等のチーズタイプ等の広範囲の乳製品が含まれる。
【0065】
カビタイプのチーズには、例えばゴルゴンゾーラ、ダナブルー、ブリー、カマンベールなどのチーズタイプ等の広範囲の乳製品が含まれる。
【0066】
食品とは、あらゆる食用の加工食品として理解される。例としては、乳製品、加工肉製品、甘味、デザート、缶詰、フリーズドライ食品、ドレッシング、スープ、コンビニエンスフード、パン、ケーキ等が含まれる。
【0067】
然るに第一の態様においては、本発明は1-7%の乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドの製造方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:
(i)約5乃至10%の乳清タンパク質を含み、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度、及び約7乃至9のpH値を有する水溶液を調製する工程;
(ii)工程(i)から得られる溶液を、約0.15乃至30分間で約50乃至100℃の温度に加熱する工程;
(iii)工程(ii)から得られる溶液を約1乃至40℃に冷却する工程;
(iv)工程(iii)から得られる溶液を約4乃至7%のタンパク質濃度及び約5.2乃至7.0のpH値に調整する工程;
(v)工程(iv)から得られる溶液を脂肪相と混合して、低脂肪スプレッドを得る工程。
【0068】
この方法により製造される低脂肪スプレッドは、好ましくはW/Oタイプのエマルションである。低脂肪スプレッドは、好ましくは約10乃至60%の脂肪、より好ましくは約20乃至60%の脂肪を含む。これら低脂肪スプレッドのタンパク質含量は、好ましくは約2-5%である。低脂肪スプレッドは、約0.5乃至4.5%のNaClをさらに含んでも良い。この方法で使用されるタンパク質は、βラクトグロブリンでさらに強化されていて良い。
【0069】
別の実施態様においては、工程(iv)で得られる溶液と脂肪相とを5時間以内、より好ましくは2時間以内で混合し、容器に実装し、好ましくは約4乃至10℃にて該製品を販売及び/または消費する前に少なくとも24時間貯蔵する。このアプローチを用いる場合は、ゲル形成は製品の水滴中で起こる。
【0070】
本発明による方法の別の実施態様は、20-60%の脂肪及び2-5%の乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドの製造方法であり、前記方法は下記の工程を含む:
(i)3乃至10%の乳清タンパク質を含み、pH値が約7-9である水溶液であって、そのカルシウム濃度が少なくとも50%低減されており(1mM以下のカルシウム)、より好ましくは約95%低減されている水溶液を調製する工程;
(ii) 工程(i)から得られる溶液を、約0.15乃至30分間で約50乃至100℃の温度に加熱する工程;
(iii)工程(ii)から得られる溶液を約1乃至17℃に冷却する工程;
(iv)工程(iii)から得られる溶液を約5乃至7%のタンパク質濃度及び約5.5乃至7.0のpH値に調整する工程;及び
(v) 工程(iv)から得られる溶液を脂肪相と混合して、低脂肪スプレッドを得る工程。
【0071】
別の好ましい実施態様においては、該方法は約40%の脂肪及び約3%の乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドの製造方法であり、前記方法は下記の工程を含む:
(i)約7.9%の乳清タンパク質、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度、及び約8のpH値を含む溶液を調整する工程;
(ii)工程(i)から得られる溶液を、約15分間で約80℃の温度に加熱する工程;
(iii)工程(ii)から得られる溶液を約10℃に冷却する工程;
(iv)工程(iii)から得られる溶液を約5.7%のタンパク質濃度に調整し、乳酸水溶液の添加によって約5.7のpH値に調整し、さらにNaClwo 約1.9%の濃度にまで添加する工程;
(v)工程(iv)から得られる水相の約53部と、約27部のバターと、約17部の菜種油とを混合する工程。
【0072】
最も好ましい実施態様においては、低脂肪スプレッドは乳清タンパク質以外の安定剤は含まない。
【0073】
特定の実施態様において、低脂肪スプレッドは、ゼラチン、Naカゼイナート、イヌリン、β-グルカン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ゲランガム、アガー、アルギネート、マルトデキストリン、大豆タンパク質、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ミクロクリスタリンセルロース、カゼイナート、コンニャク、マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカンス、タラガム、カラヤガム、加工オウケウマ海草、デキストリン、澱粉、及び漂白澱粉からなる群より選択される、1つ以上の付加的安定剤を含む。
【0074】
第二の態様においては、本発明は本発明による方法によって得られる製品に関する。
【0075】
第三の態様においては、本発明は低脂肪スプレッドに関し、ここで水相は約1乃至7%の熱処理乳清タンパク質及び約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度を含み、ここで前記スプレッドは前記乳性タンパク質以外の安定剤を全く含まない。好ましくは、この低脂肪スプレッドの水相のpHは7未満である。この低脂肪スプレッドは、βラクトグロブリンで強化された乳清タンパク質をさらに含んでも良い。この低脂肪スプレッドは約0.5-4.5%のNaClをさらに含む。水相は好ましくは約100-300mMの塩を含む。この低脂肪スプレッドの脂肪フラクションは、0-100%の乳脂肪及び0-100%の植物脂肪を含む。
【0076】
好ましい実施態様においては、本発明による低脂肪スプレッドは約54%の水含量、約1%のNaCl含量、約3%のタンパク質含量、約3%の無脂肪固形分、及び約40%の脂肪含量を含む。好ましくは、脂肪フラクションは約50-60%の乳脂肪及び約40-50%の植物脂肪、好ましくは植物油を含む。
【0077】
第四の態様においては、約20乃至60%の脂肪を含む本発明は低脂肪スプレッドに関し、ここで水相は約1乃至7%の熱処理乳清タンパク質及び約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度を含み、ここで前記低脂肪スプレッドは、イヌリン、β-グルカン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ゲランガム、アガー、アルギネート、マルトデキストリン、大豆タンパク質、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ミクロクリスタリンセルロース、カゼイナート、コンニャク、マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカンス、タラガム、カラヤガム、加工オウケウマ海草、デキストリン、澱粉、及び漂白澱粉からなる群より選択される、1つ以上の付加的安定剤をさらに含む。
【0078】
好ましくは、低脂肪スプレッドの水相のpHは7未満である。この低脂肪スプレッドは、βラクトグロブリンで強化された乳清タンパク質をさらに含んで良い。この低脂肪スプレッドは、約0.5-4.5%のNaClをさらに含んで良い。この低脂肪スプレッドの脂肪フラクションは、0-100%の乳脂肪及び0-100%の植物脂肪を含む。
【0079】
好ましい実施態様においては、本発明による低脂肪スプレッドは約54%の水含量、約1%のNaCl含量、約3%のタンパク質含量、約3%の無脂肪固形分、及び約40%の脂肪含量を含む。好ましくは、脂肪フラクションは約50-60%の乳脂肪及び約40-50%の植物脂肪、好ましくは菜種油を含む。
【0080】
第五の態様においては、本発明は以下の工程を含む乳清タンパク質製品の製造方法に関する:
(vi)約5乃至10%の乳清タンパク質を含み、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度、及び約7乃至9のpH値を有する水溶液を調製する工程;
(vii)工程(vi)から得られる溶液を、約0.15乃至30分間で約50乃至100℃の温度に加熱する工程;
(viii)工程(vii)から得られる溶液を約1乃至40℃に冷却する工程;
(ix)工程(viii)から得られる溶液を約4乃至7%のタンパク質濃度及び約5.2乃至7.0のpH値に調整する工程。
【0081】
好ましい実施態様においては、この方法は以下の工程を含む:
(vi)約3乃至10%の乳清タンパク質を含み、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度、及び約7乃至9のpH値を有する水溶液を調製する工程;
(vii)工程(vi)から得られる溶液を、約0.15乃至30分間で約50乃至100℃の温度に加熱する工程;
(viii)工程(vii)から得られる溶液を約1乃至17℃に冷却する工程;
(ix)工程(viii)から得られる溶液を約5乃至7%のタンパク質濃度及び約5.5乃至7.0のpH値に調整する工程。
【0082】
好ましくは、乳清タンパク質はβラクトグロブリンで強化される。別の好ましい実施態様においては、前記ゲルは約0.5乃至4.5%のNaClをさらに含む。
【0083】
本発明は、前記方法によって得られるゲル製品にも関する。
【0084】
第六の態様においては、本発明は、本発明によって製造されるゲル製品の、O/Wタイプのエマルションの安定化ため、好ましくは発酵乳製品の安定化のための使用に関する。製品の例には、クリームチーズ、フレッシュチーズ、クワルク、イエローチーズ、デザート、マヨネーズ、ドレッシング、ブランチ製品(brunch product)、ヨーグルト、及び発酵乳製品が含まれる。本発明によるゲル製品は、加工肉製品及びあらゆる他の食品の安定化にも使用可能である。
【0085】
最後の態様において、本発明は、本発明による乳清タンパク質製品を含むあらゆる食品に関する。
【実施例】
【0086】
(実施例1:乳清タンパク質の低温ゲル化の際の、ゲル特性に対するカルシウム濃度の効果)
約20%の総固形分を有するWPC80濃縮物(硬質チーズ製造から得られる乳清製品、全固形分の80%のタンパク質を含有)を、乳のNa/K比を反映するNaとKとの混合イオン形態をロードした弱陽イオン交換器(Rohm & Haas製のImac HP336)に通した。カルシウム含量を、約95%の減少に相当する全固形分の約0.02%にまで低減させた。
【0087】
タンパク質含量を約8.0%に調整し、pHを約8.0に調整した。溶液を30分間に亘り80℃で加熱した。約15℃に冷却した後、この溶液をタンパク質が約4.0%となるように希釈し、pHを約6.5に調整した。カルシウム含量を脱灰したサンプル中に約0.3mMから7mMに増大させ、様々な濃度でさらに塩を添加した。サンプルを試験管に分け、冷蔵庫に入れた。冷蔵庫中に二日間おいた後、試験管の内容物を図1に示した下記の特徴について検査した。
【0088】
所望のゲルタイプは酸ゲル化の開始後に徐々に生成する半透明のゲルである。このタイプのゲルは微細鎖特性を有するが、このことは前記ゲルが優れた水結合性能を有することを意味する。このゲル構造が形成されるために必要とされるパラメータは、図1に示される通りである。適正な口当たりと安定性を備える十分な強度のゲルを得るために、水相中のより高いタンパク質含量、もしくは水相中に例えば5%が必要となりうる。
【0089】
図1に示される白色の粒状ゲル構造は、スプレッドの水相の安定化にはあまり適さない、水結合性能が低いゲルタイプを表す。
【0090】
6.5より低いpH、例えば5.7-6.0の半透明物では、微細鎖ゲルを得るためにはスプレッド製剤の水相中約0.3-0.5mMにまでカルシウム濃度を低減することが必須である。
【0091】
通常は、スプレッド中の塩含量は約1-1.2%である。これは40%の脂肪を含むスプレッドの水相中に約285-342mMのNaClに相当する。しかしながら、低脂肪スプレッドの塩濃度は、0.5乃至4.5%の範囲であって良い。然るに好ましい塩濃度には、1.0; 1.1; 1.2; 1.3; 1.4; 1.5; 2.0; 2.5; 3.0; 3.5; 4.0; 4.5%が含まれる。
【0092】
(実施例2:脱灰した乳清タンパク質ゲルの特性)
40℃にて、7.9%のカルシウム低減乳清タンパク質(表1)WPC80(実施例1に記載した組成物)及び0.1%のK-ソルベートを含む水性溶液を調製した。NaOHを用いてpHを約8に調整した。その後溶液を80℃に加熱し、80℃の加熱ジャケットを備えたタンクに移した。規定の保持時間(0.75または15分間)後、製品をタンクから押出、10℃に冷却した。入口速度と出口速度とのバランスをとり、加熱タンク中に定常状態のレベルを得るようにした。溶液の加熱及び冷却を、エネルギー伝達媒質として流水または氷水を用いてキサゲ面熱交換器で行った。冷却の後、乳酸及びNaClの水溶液を、pH値が約5.7-6.3に達するまでタンパク質溶液に加えた。この工程では、タンパク質溶液を実験デザインにしたがって5.1-6.3%に希釈した(表1)。 最終タンパク質溶液中のNaClの濃度は1.9℃であった。250または115mlのサンプルを回収し、5℃にて貯蔵した。
【0093】
【表1】

【0094】
ゲル硬さを製造の1週間後に、5℃にて、Texture Analyser (TA XT plus)で測定した。6.0mmのシリンダーを安定ゲル中に8mm押し込んだ。開始力は1.0gであり、試験速度は2.0mm/秒であった。
【0095】
図2は、ゲル硬さが、タンパク質濃度及び熱処理にどのように関連しているかを示す。5.7-6.3の範囲のpHはゲル硬さに全く影響を持たない一方で、タンパク質濃度及び熱処理(時間及び温度)はゲル硬さに著しい影響を及ぼした。然るに、ゲル硬さの著しい増大が、熱処理の時間及び温度の増大及びタンパク質濃度の増大によって得られた。
【0096】
(実施例3:熱処理乳清タンパク質溶液とバター/菜種油との乳化)
5.7%のWPC80溶液を、実施例2に従って調製した。熱処理を80℃にて15分間行い、該溶液をpH5.7に酸性化した。NaClの濃度は1.9%であった。
【0097】
10℃にて、APVバターブレンドパイロットプラント中、35.1部のスウィートバター(85.5%の脂肪、13.0%の水、及び1.5%の無脂乳固形分)を22.5部の菜種油、3.7部の乳酸培養物、及び69.7部のWPC80溶液と混合した。この生成物を250gのカップに入れて5℃で貯蔵した。その組成は表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
製造後2週間のブレンド製品の硬さを、7℃にて、Texture Analyser (TA XT plus)で測定した。60°の円錐を12mm/分の速度で製品中に8.0mm押し込んだ(表3)。
【0100】
【表3】

【0101】
7±2gの低脂肪スプレッド製品(温度:6.5℃)を、製造の4週間後にキッチンナイフで段ボール紙に塗布した。製品は均一であり、塗布の際に水が分離しなかった(図3A)。
【0102】
感覚試験を、製造の1週後及び10週後に行った。いずれの場合にも、製品は乳清タンパク質由来のナッツの香りを伴う純粋バターの味わいを有していた。口の中での溶解は迅速且つ完全であった。
【0103】
(実施例4:比較)
88%のタンパク質及び0.1%のカルシウムを含む市販の乳清タンパク質(Arla Foods Ingredient WPI 9224)を、実施例3に記載のように溶解させ、熱処理し、且つ脂肪相中に乳化させた。製品組成を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
実施例3と同様の条件下にある段ボール紙に塗布した場合、この製品は均一ではなく、水を滲出させた(図3B)。
【0106】
【表5】

【0107】
(実施例5:酸、塩、及び水の添加後の付加的な二次熱処理の効果)
5.7%のWPC80溶液を、実施例2に従って調製した。熱処理を80℃にて15分間行った。この溶液を、pH6.0に酸性化したところ、1.9%の塩含量を有していた。酸性化の後、この溶液を二つにわけ、半量を即座に回収し、もう半量には30℃にて15分間の二次熱処理を行い、引き続き10℃に冷却した。二次加熱処理は、この工程なしに製造されたゲルに比べてより硬さが低減されたゲルをもたらした(表6)。
【0108】
【表6】

【0109】
(実施例6:乳清タンパク質ゲルを用いた水相(ヨーグルト)の安定化)
全固体中80%のタンパク質を含む乳清タンパク質保持液を限外濾過によりスウィート乳清から製造した。この保持液を、イオン交換により脱灰して、全固形分に対して約0.03%のカルシウム含量に到達させ、実施例1に前述したようにタンパク質含量8%に希釈した。pHを7.5に調整し、この溶液を80℃にて15分間熱処理した。この濃縮物を即座に4℃に冷却した。
【0110】
0.5%の脂肪を含む100lの乳を、均質化し、ヨーグルト製造のための定法で95℃にて15分間熱処理した。熱処理したヨーグルトミルクに、8kgの熱処理しさらに冷却した脱灰乳清タンパク質濃縮物を、無菌方式で接種する直前に加えた。発酵を42℃で行った。発酵が終了し、20℃に冷却したところで、製品の穏やかな撹拌を行った。最終的にヨーグルトは、冷蔵庫温度に冷却した。
【0111】
この製品の粘稠度は、同量の未変性の乳清タンパク質濃縮物が乳の熱処理前に加えられた製品に比べて、著しく改善された。従来の回転式粘度計で測定した粘度は、脱灰した熱処理乳清タンパク質濃縮物を用いて製造した製品において80%高かった。3週間に亘る貯蔵の間の乳清分離に対する安定性もまた格段に向上していた。
【0112】
然るに、本発明の方法により製造された乳清タンパク質ゲルは、脂肪相の安定化に有用であるのみならず、予期せぬことにヨーグルトなどの水相の安定化にも有用であることが判明した。
【0113】
(実施例7:乳清タンパク質ゲルによる水相(フレッシュチーズ)の安定化)
低脂肪フレッシュチーズは、バターミルクの脂肪含量をクリームの添加により脂肪分約1.4%に標準化することによって製造される。標準化された乳はその後約200バールで約70℃にて均質化され、引き続き約95℃にて約5分間に亘り低温殺菌される。約1%の出発培養物及びレンネットを加え、ここで乳を18-24時間に亘り約21℃にて発酵させて、約4.6のpH値を達成させる。凝固した製品の限外濾過または伝統的な分離(クワルク分離器またはクリームチーズ分離器のいずれかを使用)を行う前に、これを約60℃に約3分間加熱する。カード化したチーズを、約40℃にて限界濾過し、約33%のクリームチーズ濃縮物の固体含量を達成させる。20%のNaCl水溶液をクリームチーズに添加して、製品中約0.775%の全塩含量を得る。製品の貯蔵寿命を増大させるため、加熱工程を約75℃にて実行する。かくして得られるクリームチーズは、約6%の脂肪含量を有する。
【0114】
乳清タンパク質溶液を、同時に調製する。40℃にて、7.9%のカルシウム低減乳清タンパク質WPC80(約0.6mMのカルシウム)及び0.1%のK-ソルベートを含む水溶液を調製する。NaOHを用いてpHを約8に調整する。この溶液を約80℃に加熱し、80℃の加熱ジャケットを備えたタンクに移す。任意にこの溶液を冷却する。
【0115】
以上のように得られるクリームチーズを、タンパク質溶液と約9:1の比率で混合する。クリームチーズのpH値が7未満であり、カルシウム濃度が比較的に高いことから、二つの相の混合はゲル生成を触媒してクリームチーズ製品の粘度増大をもたらす。例えば、Britten & Giroux, Food Hydrocolloids 15 (2001) 609-617も参照のこと。約5-10MPaでの均質化を、任意に行ってさらにチーズの硬さを増大させても良い。
【0116】
この製品は最終的に冷却して容器に実装する。5℃にて約一週間後には、この製品の流通及び販売に対する準備が整う。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、低温ゲル化に対する塩の影響;pHは6.5及び4%のタンパク質含量を示す図である。
【図2】図2は、熱処理の時間及び温度並びにタンパク質濃度の、カルシウム低減乳清タンパク質溶液のゲル硬さに対する相対重要性(回帰係数)を示す図である。
【図3】図3は、A)脱灰加熱処理したWPC80、B)(比較例)WPI 9224(乳清タンパク質単離物)を用いて安定化させた、40%脂肪スプレッド生成物の塗布性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−7%の乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドの製造方法であって、
(i)約5乃至10%の乳清タンパク質を含み、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度及び約7乃至9のpH値を有する水溶液を調製する工程;
(ii)工程(i)で得られる溶液を、約50乃至100℃の温度に約0.15乃至30分間に亘って加熱する工程、
(iii)工程(ii)で得られる溶液を、約1乃至40℃の温度に冷却する工程、
(iv)工程(iii)で得られる溶液を、約4乃至7%のタンパク質濃度及び約5.2乃至7.0のpH値に調整する工程、
(v)工程(iv)で得られる溶液を脂肪相と混合して低脂肪スプレッドを得る工程、
を含む方法。
【請求項2】
低脂肪スプレッドがW/Oタイプのエマルションである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低脂肪スプレッドが、約10乃至60%の脂肪、より好ましくは約20乃至60%の脂肪を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
低脂肪スプレッドが、約2乃至5%の乳清タンパク質を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
低脂肪スプレッドが、約0.5乃至4.5%のNaClを更に含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(iv)で得られる溶液と脂肪相とを5時間以下、好ましくは2時間以下に亘って撹拌し、容器に実装し、更に好ましくは約4乃至10℃にて少なくとも約24時間に亘り貯蔵する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乳清タンパク質が、βラクトグロブリンで強化されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
約20乃至60%の脂肪及び約2乃至5%の乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドの製造方法であって、
(i)約3乃至10%の乳清タンパク質を含み、約7乃至9のpH値及び1.4mM以下であるかまたは少なくとも約50%に低減されているカルシウム濃度を有する水溶液を調製する工程;
(ii)工程(i)で得られる溶液を、約50乃至100℃の温度に約0.15乃至30分間に亘って加熱する工程、
(iii)工程(ii)で得られる溶液を、約1乃至17℃の温度に冷却する工程、
(iv)工程(iii)で得られる溶液を、約5乃至7%のタンパク質濃度及び約5.5乃至7のpH値に調整する工程、
(v)工程(iv)で得られる溶液を脂肪相と混合して低脂肪スプレッドを得る工程、
を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)約7.9%の乳清タンパク質を含み、約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度及び約8のpH値を有する水溶液を調製する工程;
(ii)工程(i)で得られる溶液を、約80℃の温度に約15分間に亘って加熱する工程、
(iii)工程(ii)で得られる溶液を、約10℃の温度に冷却する工程、
(iv)工程(iii)で得られる溶液の、タンパク質濃度を約5.7%に調整し、乳酸水溶液の添加によりpH値を約5.7に調整し、更にNaClを濃度約1.9%となるまで加える工程、
(v)工程(iv)で得られる水相の53部を、27部のバター及び17部の菜種油と混合する工程、
を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
スプレッドが、前記乳清タンパク質以外の安定剤を含まない、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
スプレッドが、ゼラチン、Naカゼイナート、イヌリン、β-グルカン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ゲランガム、アガー、アルギネート、マルトデキストリン、大豆タンパク質、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ミクロクリスタリンセルロース、カゼイナート、コンニャク、マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカンス、タラガム、カラヤガム、加工オウケウマ海草、デキストリン、澱粉、及び漂白澱粉からなる群より選択される、1つ以上の付加的安定剤を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法によって得られる製品。
【請求項13】
約1乃至7%の熱処理乳清タンパク質を含む低脂肪スプレッドであって、水相のカルシウム濃度が約0.0乃至1.4mMであり、前記乳清タンパク質以外の安定剤を含まない、低脂肪スプレッド。
【請求項14】
水相のpHが7未満である、請求項13に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項15】
乳清タンパク質が、β-ラクトグロブリンで強化されている、請求項13または14に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項16】
低脂肪スプレッドが、約0.5乃至4.5%のNaClを含む、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項17】
脂肪フラクションが、0乃至100%の乳脂肪を含む、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項18】
脂肪フラクションが、0乃至100%の植物脂肪を含む、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項19】
前記スプレッドが、約54%の水含量、約1%のNaCl含量、約3%のタンパク質含量、約5.5%の無脂肪固形分含量、及び約40%の脂肪含量を有する、請求項13乃至18のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項20】
前記脂肪フラクションが、約50乃至60%の乳脂肪及び約40乃至50%の植物脂肪、好ましくは菜種油を含む、請求項19に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項21】
約20乃至60%の脂肪、約1乃至7%の熱処理乳清タンパク質、水相中に約0.0乃至1.4mMのカルシウム濃度、及び、イヌリン、β-グルカン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ゲランガム、アガー、アルギネート、マルトデキストリン、大豆タンパク質、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ミクロクリスタリンセルロース、カゼイナート、コンニャク、マンナン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカンス、タラガム、カラヤガム、加工オウケウマ海草、デキストリン、澱粉、及び漂白澱粉からなる群より選択される少なくとも1つの安定剤を含む低脂肪スプレッド。
【請求項22】
水相のpHが7未満である、請求項21に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項23】
乳清タンパク質が、β-ラクトグロブリンで強化されている、請求項21または22に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項24】
低脂肪スプレッドが、約0.5乃至4.5%のNaClを含む、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項25】
脂肪フラクションが、0乃至100%の乳脂肪を含む、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項26】
脂肪フラクションが、0乃至100%の植物脂肪を含む、請求項21乃至25のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項27】
前記スプレッドが、約54%の水含量、約1%のNaCl含量、約3%のタンパク質含量、約3%の無脂肪固形分含量、及び約40%の脂肪含量を有する、請求項21乃至26のいずれか一項に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項28】
脂肪フラクションが、約50乃至60%の乳脂肪及び約40乃至50%の植物脂肪、好ましくは菜種油を含む、請求項27に記載の低脂肪スプレッド。
【請求項29】
(vi)約5乃至10%の乳清タンパク質(カルシウム濃度が約0.0乃至1.4mM及びpH値が約7乃至9)を含む水溶液を調製する工程;
(vii)工程(vi)で得られる溶液を、約50乃至100℃の温度に約0.15乃至30分間に亘って加熱する工程、
(viii)工程(vii)で得られる溶液を、約1乃至40℃の温度に冷却する工程、
(ix)工程(viii)で得られる溶液を、約4乃至7%のタンパク質濃度及び約5.2乃至7.0のpH値に調整する工程、
を含む、乳清タンパク質製品の製造方法。
【請求項30】
(vi)約3乃至10%の乳清タンパク質(pH値は約7乃至9)を含む水溶液を調製する工程であって、この乳清タンパク質のカルシウム濃度が1.4mM以下であるかまたは、少なくとも約50%、更に好ましくは);
(vii)工程(vi)で得られる溶液を、約50乃至100℃の温度に約0.15乃至30分間に亘って加熱する工程、
(viii)工程(vii)で得られる溶液を、約1乃至40℃の温度に冷却する工程、
(ix)工程(viii)で得られる溶液を、約4乃至7%のタンパク質濃度及び約5.2乃至7.0のpH値に調整する工程、
を含む、乳清タンパク質製品の製造方法。
【請求項31】
乳清タンパク質が、β-ラクトグロブリンで強化されている、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
ゲルが、約0.5乃至4.5%のNaClを更に含む、請求項29乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項29乃至32のいずれか一項に記載の方法によって得られる乳清タンパク質製品。
【請求項34】
O/Wタイプのエマルションの安定化のための、請求項33に記載の乳清タンパク質製品の使用。
【請求項35】
発酵乳製品、伝統的チーズ、またはカビ熟成チーズからなる群より選択される製品の安定化のための、請求項33に記載の乳清タンパク質製品の使用。
【請求項36】
加工肉製品の安定化のための、請求項33に記載の乳清タンパク質製品の使用。
【請求項37】
請求項33に記載の乳清タンパク質製品を含む食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−509619(P2007−509619A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537069(P2006−537069)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000752
【国際公開番号】WO2005/041677
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(501295969)アルラ・フーズ・エイ・エム・ビィ・エイ (11)
【Fターム(参考)】