説明

低膨潤性生体適合性ヒドロゲル

【課題】 括約筋を増大するためのシステムを提供すること。
【解決手段】 上記システムは、カテーテルを備えるカテーテルアセンブリであって、該カテーテルは、該カテーテルの近位端において注射器に結合されており、そして該カテーテルの遠位端において組織穿刺針に結合されている、カテーテルアセンブリ、
を備え;該カテーテルは、患者に導入されるように構成されており;該針は、括約筋の外側表面を穿刺するように構成されており、そして該括約筋内に、ある距離だけ前進させられるように構成されており、該カテーテルアセンブリは、該括約筋に、第1の官能基を有する第1の合成前駆体および第2の合成前駆体を導入するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2007年3月5日に出願された米国特許出願番号11/714,028の一部継続出願である。この米国特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本開示は、ヒドロゲル(ある実施形態では、生体吸収性の共有結合で架橋されたヒドロゲル)を用いる外科処置に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロゲルは、シールすること、癒着予防、または薬物送達などの適用のために身体中で用いられ得る。ヒドロゲルは、一般に、水和されるとき、高い程度の膨潤を示し得る。
【0004】
しかし、特定の医療適用は、高い程度の膨潤には耐えない。例えば、GELFOAM(登録商標)吸収性ゼラチン(Pharmacia&Upjohn、Kalamazoo、MI)は、止血のような出血表面への適用のための水不溶性で多孔性の柔軟な形態のゼラチンである。しかし、GELFOAM(登録商標)は、脊柱の周りの適用には適さず、そして一旦、止血が達成されると、椎弓切除術手順および骨中の孔近傍の使用に対して禁忌が示される。この禁忌は、GELFOAM(登録商標)が、生理学的流体を吸収した後に膨潤し得、そして区画された骨質スペース内の圧力により神経損傷を生じ得るので存在する。GELFOAM(登録商標)のパッキングは、特に骨質腔内では避けられるべきである。なぜなら、膨潤が、正常機能を妨害し得、そして/または恐らくは、周辺組織の圧縮壊死を生じ得るからである。
【0005】
過剰な膨潤はまた、美容整形および再構築の外科手術用途(しわの充填、ならびに括約筋の増大および規定された体積の領域(手根管が挙げられる)へのヒドロゲルの導入が挙げられる)において望ましくないかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、低い膨潤を有するヒドロゲルが、多くの用途(美容整形および組織の空隙の充填が挙げられる)のために依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
【0008】
(項目1A)
カテーテルを備えるカテーテルアセンブリであって、該カテーテルは、該カテーテルの近位端において注射器に結合されており、そして該カテーテルの遠位端において組織穿刺針に結合されている、カテーテルアセンブリ、
を備え;
該カテーテルは、患者に導入されるように構成されており;
該針は、括約筋の外側表面を穿刺するように構成されており、そして該括約筋内に、ある距離だけ前進させられるように構成されており、
該カテーテルアセンブリは、該括約筋に、第1の官能基を有する第1の合成前駆体および第2の合成前駆体を導入するように構成されており、該第2の合成前駆体は、約3個〜約12個のアームを有するコアを有する複数アーム前駆体を含み、該アームの各々は、約250〜約5000の分子量を有するポリエチレングリコールを含み、そして該アームの端部に第2の官能基を有し、
該第1の官能基は、該第2の官能基と架橋し、これによって、約−50%〜約50%膨潤するヒドロゲルを形成する、括約筋を増大するためのシステム。
【0009】
(項目2A)
上記第1の前駆体と上記第2の前駆体とが接触した後に、約10秒未満で、上記ヒドロゲルが架橋してゲルを形成する、上記項目に記載のシステム。
【0010】
(項目3A)
上記第1の官能基が求核試薬を含み、そして上記第2の官能基が求電子試薬を含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0011】
(項目4A)
上記第1の合成前駆体が、ジリジン、トリリジン、およびテトラリジンからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0012】
(項目5A)
上記第1の合成前駆体が、少なくとも2つのリジン基を含む約5個以下の残基のオリゴペプチド配列を含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0013】
(項目6A)
上記第2の前駆体のコアが、ポリエーテル、ポリアミノ酸、タンパク質、およびポリオールからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0014】
(項目7A)
上記第2の前駆体のコアが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド、co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、タンパク質、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0015】
(項目8A)
上記複数アーム前駆体が、約4個〜約8個のアームを有する、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0016】
(項目9A)
上記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約750〜約20000である、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0017】
(項目10A)
上記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約5000〜約18000である、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0018】
(項目11A)
上記第1の前駆体および上記第2の前駆体と一緒に導入される生物活性薬剤をさらに備える、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0019】
(項目12A)
上記第1の前駆体および上記第2の前駆体と一緒に導入される可視化剤をさらに備える、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0020】
(項目13A)
上記可視化剤が、FD&C Blue#1、FD&C Blue#2、FD&C Blue#3、D&C Green#6、メチレンブルー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される色素を含む、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0021】
(項目14A)
上記ヒドロゲルが、約1%〜約50%の重量減少で収縮する、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0022】
(項目15A)
上記ヒドロゲルが、約5%〜約30%の重量減少で収縮する、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0023】
(項目16A)
上記括約筋が、尿道括約筋、肛門括約筋、および食道括約筋からなる群より選択される、上記項目のいずれかに記載のシステム。
【0024】
本発明は、さらに以下の項目も提供する:
(項目1B)
カテーテルを備えるカテーテルアセンブリを提供する工程であって、該カテーテルは、該カテーテルの近位端において注射器に結合されており、そして該カテーテルの遠位端において組織穿刺針に結合されている、工程;
該カテーテルを患者に導入する工程;
括約筋の外側表面を該針で穿刺する工程;
該針を該括約筋内に、ある距離だけ前進させる工程;ならびに
該カテーテルアセンブリを利用して、該括約筋に、第1の官能基を有する第1の合成前駆体および第2の合成前駆体を導入する工程であって、該第2の合成前駆体は、約3個〜約12個のアームを有するコアを有する複数アーム前駆体を含み、該アームの各々は、約250〜約5000の分子量を有するポリエチレングリコールを含み、そして該アームの端部に第2の官能基を有する、工程、
を包含し、
該第1の官能基は、該第2の官能基と架橋し、これによって、約−50%〜約50%膨潤するヒドロゲルを形成する、括約筋を増大する方法。
【0025】
(項目2B)
上記第1の前駆体と上記第2の前駆体とを接触させた後に、約10秒未満で、上記ヒドロゲルが架橋してゲルを形成する、上記項目に記載の方法。
【0026】
(項目3B)
上記第1の官能基が求核試薬を含み、そして上記第2の官能基が求電子試薬を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0027】
(項目4B)
上記第1の合成前駆体が、ジリジン、トリリジン、およびテトラリジンからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0028】
(項目5B)
上記第1の合成前駆体が、少なくとも2つのリジン基を含む5個以下の残基のオリゴペプチド配列を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0029】
(項目6B)
上記第2の前駆体のコアが、ポリエーテル、ポリアミノ酸、タンパク質、およびポリオールからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0030】
(項目7B)
上記第2の前駆体のコアが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド、co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、タンパク質、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0031】
(項目8B)
上記複数アーム前駆体が、約4個〜約8個のアームを有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0032】
(項目9B)
上記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約750〜約20000である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0033】
(項目10B)
上記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約5000〜約18000である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0034】
(項目11B)
上記第1の前駆体および上記第2の前駆体と一緒に生物活性薬剤を投与する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0035】
(項目12B)
上記第1の前駆体および上記第2の前駆体と一緒に可視化剤を投与する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0036】
(項目13B)
上記可視化剤が、FD&C Blue#1、FD&C Blue#2、FD&C Blue#3、D&C Green#6、メチレンブルー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される色素を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0037】
(項目14B)
上記ヒドロゲルが、約1%〜約50%の重量減少で収縮する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0038】
(項目15B)
上記ヒドロゲルが、約5%〜約30%の重量減少で収縮する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0039】
(項目16B)
上記括約筋が、尿道括約筋、肛門括約筋、および食道括約筋からなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0040】
本開示のいくつかの局面は、組織にインサイチュで接着する低膨潤性生分解性ヒドロゲルを形成することにより、組織を処置する方法に関する。ある実施形態において、このヒドロゲルは、負の膨潤(すなわち、収縮)を示す。このような処置は、美容整形および再構築外科、括約筋増大、神経炎症の処置などにおいて、利用され得る。
【0041】
(要旨)
本開示のいくつかの局面は、低膨潤性生分解性ヒドロゲルをインサイチュで形成することにより、組織を処置する方法に関する。ある実施形態において、このヒドロゲルは、負の膨潤(すなわち、収縮)を示す。ある実施形態において、このような処置は、括約筋の増大において利用され得る。
【0042】
例えば、ある実施形態において、本開示の方法は、カテーテルを備えるカテーテルアセンブリを提供する工程であって、このカテーテルは、その近位端において注射器に結合され、そしてその遠位端において組織穿刺針と結合されている、工程;このカテーテルを患者に導入する工程;括約筋の外側表面をこの針で穿刺する工程;この針をこの括約筋の内側に、ある距離だけ前進させる工程;このカテーテルアセンブリを利用して、この括約筋に、第1の合成前駆体および第2の合成前駆体を導入する工程により、括約筋を増大することを包含し得る。この第1の合成前駆体は、第1の官能基を有し、この第2の合成前駆体は、約3個〜約12個のアームを有するコアを有する複数アーム前駆体を含み、これらのアームの各々は、約250〜約5000の分子量を有するポリエチレングリコールを含み得、そしてこれらのアームの端部に第2の官能基を有する。これらの第1の官能基は、これらの第2の官能基と架橋し、これによって、約−50%〜約50%膨潤するヒドロゲルを形成する。
【0043】
このヒドロゲルは、第1の前駆体と第2の前駆体とを接触させた後に、迅速に(ある実施形態においては、約10秒未満で)架橋して、ゲルを形成し得る。
【0044】
ある実施形態において、本開示のヒドロゲルは、約1%〜約50%の重量減少で収縮し得る。
【0045】
ある実施形態において、生物活性薬剤および/または可視化剤が、第1の前駆体および/または第2の前駆体と一緒に投与され得る。
【0046】
本開示に従って処置され得る括約筋としては、例えば、尿道括約筋、肛門括約筋、および食道括約筋が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、異なる数のアームおよびアームの異なる合計分子量を有する複数アーム前駆体を用いて形成された、本開示のヒドロゲルの膨潤の程度を図示するグラフである。
【図2】図2は、異なる数のアームおよびアームの異なる合計分子量を有する複数アーム前駆体を用いて形成された、本開示のヒドロゲルの圧縮強度を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中で以下に記載される。
【0049】
(詳細な説明)
ほとんど膨潤しないこと、または低い膨潤が望ましい領域における使用に適切であり得るヒドロゲルが本明細書に記載されている。これらヒドロゲルは、組織に対して良好な粘着を有し、インサイチュ(in situ)で形成され得、必要に応じて生分解性であり、そしてこのヒドロゲルが規定された体積の領域(例えば、脊柱または手根管)内に配置される場合に軟組織が過度に圧縮されないように、配置後低膨潤性を示す。神経は、従来のヒドロゲルが膨潤し、そして神経を骨に対して圧縮するとき、特に、無防備であり得る。それ故、本明細書に記載される低膨潤性ヒドロゲル組成物は、骨領域中の神経の周りの組織を処置するために新たな治療可能性を生成し得る。
【0050】
ヒドロゲルは、例えば、止血物質、シーラント、保護バリアなどのような使用のために外科手順における有用な補助物であり得る。患者におけるインサイチュでのヒドロゲルの生成は、組織をコートし、その形状に一致し、そして三次元スペースに充填され/一致するヒドロゲルの生成を可能にし得る。このような材料は、患者の動き、組織のシフト、組織中に存在する静水圧などによって引き起こされるひずみに耐えるために適切な機械的性質を有する。同時に高い含水率は、生体適合性のために有用であり得る。
【0051】
(ヒドロゲル系概説)
種々の組織に対する付着、外科医がヒドロゲルを正確かつ便利に配置することを可能にする迅速な設置時間、生体適合性のための高い含水率、シーラントにおける使用のための機械的強度、および/または配置後の破壊に耐える丈夫さのような特定のヒドロゲル性質は有用であり得る。したがって、容易に滅菌され、そして天然材料の使用に関連する疾患伝達の危険を避ける合成材料が、用いられ得る。実際、合成の前駆体を用いて作製された特定のインサイチュで重合可能なヒドロゲルは、例えば、FOCALSEAL(登録商標)(Genzyme、Inc.)、COSEAL(登録商標)(Angiotech Pharmaceuticals)、およびDURASEAL(登録商標)(Confluent Surgical、Inc.)のような市販の製品で用いられているように、当業者の範囲内である。その他の公知のヒドロゲルは、例えば、米国特許第6,656,200号;同第5,874,500号;同第5,543,441号;同第5,514,379号;同第5,410,016号;同第5,162,430号;同第5,324,775号;同第5、752,974号;および同第5,550,187号に開示のヒドロゲルを含む。
【0052】
COSEAL(登録商標)およびDURASEAL(登録商標)の膨潤が、フィブリンシーラントと比較してインビトロモデルを用いて測定された(Campbellら、Evaluation of Absorbable Surgical Sealants:In vitro Testing、2005)。3日間の試験に亘り、COSEAL(登録商標)は、平均約558重量%膨潤し、DURASEAL(登録商標)は、平均約98重量%増加し、そしてフィブリンシーラントは約3%だけ膨潤した。すべての軸に沿う均一な膨張を仮定すると、単一の軸における増加%は、COSEAL(登録商標)、DURASEAL(登録商標)、およびフィブリンシーラントについてそれぞれ87%、26%、および1%であると算出された。より少なく膨潤するヒドロゲルが、脊柱またはその近傍、規定された体積を有する領域、および過剰な膨潤が回避されるべき箇所(例えば、括約筋の増大、しわの充填、吻合シーリング、眼の内部および周囲のシーリングなど)における適用には所望され得る。フィブリンシーラントは、COSEAL(登録商標)、DURASEAL(登録商標)、および本明細書に開示されるその他のヒドロゲルに劣る接着、シーリング、および機械的性質を有するタンパク質様接着剤である。さらに、それは、代表的には、潜在的に汚染されている生物学的供給源由来であり、このクラスのヒドロゲルとは別個の機構によって身体から排除され、そして代表的には、貯蔵される間に冷蔵を必要とする。
【0053】
本開示のインサイチュで重合可能なヒドロゲルは、前駆体から作製され得る。この前駆体は、モノマーまたはマクロマーであり得る。1つのタイプの適切な前駆体は、エチレン性不飽和である官能基を有し得る。エチレン性不飽和官能基は、反応を開始するために開始剤を用いて重合され得る。少なくとも2つのエチレン性不飽和官能基をもつ前駆体は、架橋ポリマーを形成し得る。いくつかの組成物は、これら前駆体を架橋するために唯一のこのような官能基をもつ特定の前駆体、および複数の官能基をもつさらなる架橋前駆体を有する。エチレン性不飽和官能基は、種々の技法(フリーラジカル、縮合、および/または付加重合)によって重合され得る。ヒドロゲルは、1つの前駆体(フリーラジカル重合によるように)、2つの前駆体から形成され得るか、またはヒドロゲルを形成するために架橋に関与する前駆体のうちの1つ以上を使用して、3つ以上の前駆体で作製され得る。
【0054】
利用され得る別のタイプの前駆体は、求電子性または求核性であり得る官能基を有する。求電子試薬は、求核試薬と反応し、共有結合を形成する。共有架橋または共有結合は、異なるポリマーを互いに共有結合により結合するために役立つ異なるポリマー上の官能基の反応により形成される化学基をいう。特定の実施形態では、第1の前駆体上の第1のセットの求電子性官能基は、第2の前駆体上の第2のセットの求核性官能基と反応し得る。これら前駆体が、(例えば、pHまたは溶媒に関するような)反応を許容する環境で混合されるとき、これら官能基は互いと反応し、共有結合を形成し、そしてこれら前駆体を一緒に結合する。これら前駆体は、少なくともいくつかの前駆体が1つ以上のその他の前駆体と反応し得るとき、架橋されるようになる。例えば、第1のタイプの2つの官能基をもつ前駆体は、この第1のタイプの官能基と反応し得る少なくとも3つの第2のタイプの官能基を有する架橋前駆体と反応され得る。
【0055】
(ヒドロゲルおよび前駆体材料)
本開示に従う使用のために適切なヒドロゲルは、その中に水および小さな親水性分子が容易に拡散し得る高分子およびポリマー材料を含む。目的のヒドロゲルは、例えば:ポリエーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)−co−ポリ(ポリプロピレンオキシド)ブロックコポリマーのようなポリアルキレンオキシド;ポリ(ビニルアルコール);およびポリ(ビニルピロリドン)の架橋により調製されるヒドロゲルを含む。それらの高い程度の生体適合性およびタンパク質吸着に対する抵抗性のために、ポリエーテル由来のヒドロゲルがいくつかの実施形態で有用であり得、ポリ(エチレングリコール)由来ヒドロゲルを含む。
【0056】
天然ポリマー、例えば、タンパク質、多糖、またはグリコサミノグリカン、およびそれらの誘導体、例えば、ヒアルロン酸、デキストラン、硫酸コンドロイチン、ヘパリン、硫酸ヘパリン、アルギネート、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、ポリアミノ酸、コラーゲン、フィブリノーゲン、アルブミン、フィブリン、デンプン、硫酸デルマタン、硫酸ケラタン、硫酸デキストラン、ポリ硫酸ペントサン、キトサン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、およびそれらの活性ペプチドドメインがまた用いられ得る。このようなポリマーは、それらのアミノ酸上のアミン、チオール、またはカルボキシルのような官能基を経由して反応され得るか、または活性化可能な官能基を有するように誘導体化され得る。天然ポリマーが、本開示の低膨潤性ヒドロゲルで用いられ得るが、それらのゲル化時間、および最終的な機械的性質は、さらなる官能基の適切な導入、および適切な反応条件、例えば、pHの選択により制御されるはずである。例えば、フィブリンを形成するためにフィブリノーゲンの重合に依存するフィブリン接着剤は、限られた範囲の機械的性質、限られた範囲の分解性を有し、そしてそれ故、本明細書に記載されるような低膨潤性ヒドロゲルが処方されるとき利用可能であるすべての治療適用には適切でないかもしれない。しかし、このような天然材料がいくつかの実施形態で利用され得ることが企図される。
【0057】
本開示の低膨潤性ヒドロゲルを形成するために利用される前駆体は、生体適合性でかつ水溶性のコア基を有し得る。本明細書で用いられるとき、水溶性は、水中で少なくとも約1g/lの溶解度をいう。このコア基は、最小で3つのアームをもつ水溶性分子である。ヒドロゲル前駆体上のアームは、架橋可能な官能基を、ポリマーアームの重合を開始する多官能中心に連結する化学基の線状鎖をいう。この多官能中心と付着されたアームとの組み合わせは、コア基を形成し得る。ヒドロゲル前駆体アーム上の架橋可能な官能基は、2つのヒドロゲル前駆体アーム間の共有結合性架橋反応に参加する化学基を含み得る。
【0058】
実施形態では、上記コア基は、水溶性ポリマーであり得る。用いられ得るこのようなポリマーの例は、例えば:ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、co−ポリエチレンオキシドブロックまたはランダムコポリマーのようなポリアルキレンオキシド;ポリビニルアルコール(「PVA」);ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);デキストラン;およびタンパク質、ならびに前述の誘導体および前述の組み合わせを含む。
【0059】
その他の実施形態では、多官能中心は、実施形態では、次いで架橋可能な基で官能化され得るコアのアームを形成し得るモノマー基の開始のためのヒドロキシル基を有し得るポリオールを含み得る。所望のアームの数に依存して、このポリオールは、約3〜約12のヒドロキシル基を、実施形態では約4〜約10のヒドロキシル基を有し得る。このポリオールはまた、その他の保護または非保護官能基を有し得る。適切なポリオールは、グリセロール、マンニトール、還元糖(例えば、ソルビトール、ペンタエリトリトール)、およびヘキサグリセロールを含むグリセロールオリゴマー、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組み合わせを含む。当業者に容易に明らかであるように、ヒドロキシル基の数は、複数アームの前駆体上のアームの数と等価であるべきであり、すなわち、選択された特定のポリオールは、得られる多官能コア基上のアームの数を決定する。実施形態では、ポリエチレングリコールのような、上記の記載のポリマーは、エチレンオキシドのポリオールとの重合を開始することによって形成され得、それによって、さらに官能化され得る複数アームの前駆体を形成する。
【0060】
従って、ヒドロゲルは、第1のセットの官能基をもつ複数アームの前駆体、および第2のセットの官能基を有する低分子量の前駆体から作製され得る。この複数アームの前駆体上のアームの数は、約3〜約12、実施形態では約5〜約10であり得る。
【0061】
例えば、複数アームの前駆体は、親水性のアーム、例えば、末端がN−ヒドロキシスクシンイミドで、約1,000〜約40,000であるアームの合計分子量をもつポリエチレングリコールを有し得;当業者は、この明瞭に陳述された境界内のすべての範囲および値が企図されることを直ちに認識する。いくつかの実施形態では、6つのアームまたは8つのアームを有する複数アームの前駆体を利用することが所望され得る。このような前駆体の個々のアームの分子量は、約250〜約5000、実施形態では約1000〜約3000、その他の実施形態では約1250〜約2500であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、6アームまたは8アームの前駆体が、トリリジンのような低分子量前駆体と反応され得る。このトリリジンは、上記複数アームの前駆体を架橋するための複数の反応点を提供し、そしてそれは、おそらく(特定の作用の理論に制限されることなく)収縮または膨潤に関係する動きを比較的ほとんど行わないことを可能にし、このような動きは、おそらくは、比較的より大きく、かつより移動可能である複数アームの前駆体に関する。従って、その他の低分子、例えば、約100〜約5000、実施形態では約300〜約2500、その他の実施形態では約500〜約1500の分子量をもつ分子が、トリリジンの代わりに用いられ得る。このような低分子は、少なくとも約3の官能基、実施形態では約3〜約16の官能基を有し得;当業者は、この明瞭に陳述された値間のすべての範囲および値が企図されることを認識する。いくつかの場合には、ジリジンおよび/またはテトラリジンが、低分子量前駆体として利用され得る。
【0063】
このような低分子は、本明細書中で低分子量前駆体とも称され、ポリマーであっても非ポリマーであってもよく、そして天然であっても合成であってもよい。合成は、天然には見出されず、そして天然生物分子の誘導体化バージョン、例えば、修飾された側鎖基をもつコラーゲンを含まない分子をいう。合成により生成されるポリアミノ酸ポリマーは、それらが天然に見出されず、そして天然に存在する生物分子と同一でないように作り変えられる場合、通常、合成であると考えられる。例えば、トリリジンは合成である。なぜなら、それは、(たとえ、特定の細菌が相対的により大きなポリリジンを生成し得るとしても)天然には見出されないからである。
【0064】
ある実施形態では、適切な低分子量前駆体は、少なくとも2つのリジン基を有する約5を超えない残基のオリゴペプチド配列を含む前駆体を含み得る。本明細書中で使用される場合、残基は、天然に存在するか、またはその誘導体化されたいずれかのアミノ酸を含む。このようなオリゴペプチドの骨格は、天然であっても合成であってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のリジンが、合成骨格と組み合わせられ得、前駆体を作り;このような前駆体の特定の実施形態は、約100〜約10,000の、実施形態では約300〜約5000の分子量を有し得;当業者は、この明瞭に陳述された境界内のすべての範囲および値が企図されることを直ちに認識する。
【0065】
いくつかのヒドロゲルは、ポリエチレングリコール含有前駆体を用いて作製され得る。ポリエチレングリコール(PEG、本明細書ではポリエチレンオキシドとも呼ばれる)は、nが少なくとも3である反復基(CHCHO)をもつポリマーをいう。ポリエチレングリコールを含むポリマー前駆体は、それ故、線状のシリーズで互いに連結される少なくとも3つのこれら反復基を有し得る。ポリマーまたはアームのポリエチレングリコール含量は、たとえ、ポリエチレングリコール基がその他の基によって中断されるとしても、ポリマーまたはアーム上のポリエチレングリコール基のすべてを加えることによって算出され得る。それ故、少なくとも1000MWのポリエチレングリコールを有するアームは、合計して少なくとも1000MWにするに十分なCHCHO基を有する。これら技術分野における慣例の用語法であるように、ポリエチレングリコールポリマーは、必ずしもヒドロキシル基で終了しない。
【0066】
特定の実施形態では、前駆体は、生分解性の架橋可能で、かつ実質的に水溶性であるマクロマー組成物を含み得る。これらマクロマーは、少なくとも1つの水溶性領域、少なくとも1つの分解性領域を有し得、そしてこのような前駆体のアームは、統計学的に、平均して1より多くの重合可能な領域を有し得、その結果、3アームの前駆体は、少なくとも3つの重合可能な領域を有し得る。実施形態では、これら重合可能な領域は、互いから、少なくとも1つの分解可能な領域によって分離され得る。あるいは、生分解性が所望されない場合、生分解性セグメントをも含まないが、水溶性であり得、そして受容可能な生理学的条件の下、インビボで架橋し得る組成物が用いられ得る。
【0067】
架橋の間により長い距離をもつ前駆体は、一般により柔らかく、より従順で、そしてより弾性である。それ故、ポリエチレングリコールのような増加した長さの水溶性セグメントは、このような前駆体から形成されたヒドロゲルにおいて、弾性を増大し得、所望の物理的性質を生じる。それ故、本開示の特定の実施形態は、約200〜約100,000、実施形態では約250〜約35,000、他の実施形態では約300〜約5,000の分子量を有する水溶性セグメント(ある実施形態においては、アーム)をもつ前駆体に関する。
【0068】
生体適合性材料を形成するために架橋され得るモノマーまたはマクロマー前駆体が、ヒドロゲルを形成するために用いられ得る。これらは、アクリル酸またはビニルカプロラクタムのような低分子、アクリレートでキャップされたポリエチレングリコール(PEG−ジアクリレート)のような重合可能基を含むより大きな分子、またはDunnらに対する米国特許第4,938,763号、Cohnらに対する米国特許第5,100、992号および同第4,826,945号、またはDe Lucaらに対する米国特許第4,741,872号および同第5,160,745号に記載のようなエチレン性不飽和基を含むその他のポリマーであり得、これら特許の各々の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0069】
実施形態では、利用され得る適切なマクロマー前駆体は、Hubbellらに対する米国特許第5,410,016号に記載される架橋可能で生分解性の水溶性マクロマーを含み、この特許の全体の開示は参考として本明細書中に援用される。これらモノマーは、少なくとも1つの分解可能な領域によって分離される少なくとも2つの重合可能な基を有することにより特徴付けられ得る。水中で重合されるとき、これらモノマーは、自己分解によってなくなるまで持続する、凝集性のゲルを形成し得る。マクロマーは、自己縮合可能であり、これは、それらが互いと反応し得、そして近傍組織上のタンパク質またはその他の成分とは反応しないことを意味する。
【0070】
(生分解性結合)
上記に記載されるように、実施形態では、官能基間に存在する生分解性結合を有する1つ以上の前駆体が、本開示のヒドロゲルを生分解性または吸収性にするために用いられ得る。いくつかの実施形態では、これらの結合は、例えば、エステルであり得、これは、生理学的溶液中で加水分解により分解され得る。このような結合の使用は、タンパク質分解作用によって分解され得るタンパク質結合とは対照的である。生分解性結合はまた、必要に応じて、1つ以上の前駆体の水溶性コアの一部を形成し得る。あるいは、またはさらに、前駆体の官能基は、それらの間の反応の産物が、生分解性結合を生じるように選択され得る。各々のアプローチのために、生分解性結合は、得られる生分解性の生体適合性の架橋されたポリマーが分解するか、または所望の時間の期間に吸収されるように選択され得る。一般に、生理学的条件下で、ヒドロゲルを、非毒性または低毒性産物に分解する生分解性結合が選択され得る。
【0071】
この生分解性結合は、化学的または酵素的に加水分解可能であり得るか、または吸収可能であり得る。例示の化学的に加水分解可能な生分解性の結合は、グリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマーおよびオリゴマーを含む。その他の化学的に加水分解可能な生分解性結合は、形態がモノマー、例えば、グルタール酸結合を形成する、ポリ(エチレングリコール)と無水グルタール酸との開環を通じて形成されるようなものであり得る。その他の結合は、コハク酸、マレイン酸、メチルコハク酸、ジグリコール酸、メチルグルタール酸、それらの組み合わせなどを含む。例示の酵素により加水分解可能な生分解性結合は、メタロプロテイナーゼおよびコラゲナーゼによって切断可能なペプチド結合を含む。さらなる例示の生分解性結合は、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(酸無水物)、ポリ(ラクトン)、およびポリ(ホスホネート)のポリマーおよびコポリマーを含む。
【0072】
天然ポリマーは、アミノ酸配列のような特定の生物学的部分を認識する酵素である身体中に存在するプロテアーゼによるタンパク質分解によって分解され得る。対照的に、このような特異的に切断可能な配列を含まない合成ポリマーは、加水分解的分解のようなその他の機構によって分解され得る。脊髄においては、このような配列のない合成ポリマーは、特異的な酵素作用によってはほとんど分解されないか、または分解されないことが予期され得る。非特異的に作用する酵素による非特異的攻撃および分解は、分解に対して異なる生物学的応答および時間を生じ得、そして特定のアミノ酸配列に特異的である酵素による分解と等価ではない。本開示のいくつかの実施形態は、酵素による特異的認識および切断を受ける配列を有さない前駆体を含む。
【0073】
(官能基)
前駆体上の官能基は、ヒドロゲルを作製するプロセスの一部として共有結合を形成するためにその他の官能基と反応する化学的部分を含む。官能基は、例えば、エチレン性不飽和の重合可能な基、例えば、ペンダントビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、エタクリレート基、2−フェニルアクレリート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、イタコネート基、スチレン基、それらの組み合わせなどを含む。
【0074】
官能基はまた、ヒドロゲルを形成するために求電子−求核反応に参加する求電子性基または求核性基を含み得る。求電子性官能基の例は、カルボジイミダゾール基、スルホニルクロライド基、クロロカーボネート基、n−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、スクシンイミジルエステル基、スルファスクシンイミジルエステル基、N−ヒドロキシエトキシ化スクシンイミドエステル基、メタンジイソシアネート基、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)基、イソシアネート基、ジイソシアネート基、ヘキサメチレンジイソシアネート基、マレイミド基などを含む。求核性官能基の例は、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基などを含む。
【0075】
(開始系)
開始基は、フリーラジカル重合反応を開始し得る化学基である。例えば、それは、別個の成分として、または前駆体上のペンダント基として存在し得る。開始基は、熱開始剤、光活性化可能な開始剤、酸化−還元(レドックス)系、それらの組み合わせなどを含む。
【0076】
長波UVおよび可視光で光活性化可能な開始剤は、例えば、エチルエオシン基、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン基、その他のアセトフェノン誘導体、チオキサントン基、ベンゾフェノン基、カンファーキノン基、それらの組み合わせなどを含む。
【0077】
熱により反応する開始剤の例は、4,4’アゾビス(4−シアノペンタノン酸)基、ベンゾイルペルオキシド基のアナログ、それらの組み合わせなどを含む。Wako Chemicals USA、Inc.(Richmond、VA)から入手可能なV−044のような、いくつかの市販され入手可能な低温フリーラジカル開始剤が、体温でフリーラジカル架橋反応を開始するために用いられ得、前述のモノマーでヒドロゲルを形成する。
【0078】
金属イオンがまた、酸化還元開始系における酸化剤または還元剤のいずれかとして用いられ得る。例えば、第一鉄イオンが、ペルオキシドまたはヒドロペルオキシドと組み合わせて重合を開始するため、または重合系の一部として用いられ得る。この場合では、上記第一鉄イオンは、還元剤として役立ち得る。あるいは、金属イオンは酸化剤として役立ち得る。例えば、セリウムイオン(4+価状態のセリウム)は、カルボン酸およびウレタンを含む種々の有機基と反応し得、電子を金属イオンに移動し、それ故、有機基上に開始ラジカルを残す。このような系では、金属イオンは酸化剤として作用する。いずれかの役割のための可能な適切な金属イオンは、任意の遷移金属イオン、ランタニドおよびアクチニドであり、これらは、少なくとも2つの容易に接近可能な酸化状態を有する。実施形態では、金属イオンは、電荷が1のみ異なることによって区別される少なくとも2つの状態を有し得る。これらのうち、最も一般的に用いられるのは、第二鉄/第一鉄;第二銅/第一銅;セリウム(IV)/セリウム(III);コバルト(III)/コバルト(II);バナジン酸塩 V対IV;過マンガン酸塩;および;マンガン(III)/マンガン(II)を含む。過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、およびクミルペルオキシドを含む過酸化物またはヒドロペルオキシドのような過酸素(peroxygen)を含む化合物もまた用いられ得る。
【0079】
開始系の例は、1つの溶液中の過酸素化合物と、別の溶液中の遷移金属のような反応性イオンとの組み合わせである。この場合には、重合の外部開始剤は必要でなくてもよく、そして重合は、2つの相補的反応官能基を含む部分が、適用部位で相互作用するとき、自発的に、そして外部エネルギーの適用または外部エネルギー源の使用なくして進行し得る。
【0080】
(ヒドロゲル膨潤性)
前駆体上のアームの長さを、その他の性質をほぼ一定に保持しながら変更することは、得られるゲルの膨潤性質を、膨潤する性質から収縮する性質に改変し得ることが見出された。反応性ポリマーの任意の所定の濃度で、ヒドロゲルの他の性質を損なうことを最小にして低膨潤性ゲルを提供するアーム長が利用され得る。特定の理論に拘束されることなく、アーム長を変更することは、平衡膨潤で架橋間の距離を近似し得る。このアーム長を平衡架橋距離に近づける程、これらアームは膨潤に応答して延びるのがより少なくなる。
【0081】
本明細書に記載されるように、膨潤の量が少ないか、またはさらには膨潤の量が負であるヒドロゲルが、患者においてインサイチュで作製され得る。このようなヒドロゲルは、接着および/またはシールするための機械的性質で処方され得る。対照的に、接着および/またはシールするための機械的性質を有するインサイチュ重合のための従来のヒドロゲルは、低膨潤性性質を欠き、脊柱、規定された体積の領域、または最小の膨潤が所望される箇所における使用のためには適していない。
【0082】
それ故、本明細書に記載される望ましいヒドロゲルは、所望の分子量範囲、溶解度、アーム長、化学的組成、化学的構造、化学的組成物、密度、前駆体濃度、アーム数にある前駆体のクラスから選択される成分を用い、そして望ましい官能基および緩衝剤を用いて作製される、反応時間、密度、強度、および所望の医学的性質をもつ低膨潤性ヒドロゲルを含み得る。これらパラメーターのいくつかは、出発性質または材料の1つの範囲の選択が、その他の性質および材料の選択に影響し得るように相互関係に置かれる。
【0083】
そうでないことが示されなければ、ヒドロゲルの膨潤は、架橋が効率的に完了するその形成の時間と、それがその平衡膨潤状態に達したと合理的にみなされ得る点である24時間、非拘束状態で生理学的溶液中に配置された後の時間との間の体積(または重量)におけるその変化に関係する。大部分の実施形態について、架橋は、約15分を超えないうちに効率的に完了し、そしてしばしば2〜3秒以内であり、その結果、初期重量は、「初期形成における重量」として合理的に記録され得る。従って、以下の式が、膨潤を決定するために用いられ得る:
%膨潤=[(24時間における重量−初期形成における重量)/初期形成における重量]×100。
【0084】
本開示の低膨潤可能または低膨潤性ヒドロゲルは、生理学的溶液への曝露に際し、約50重量%を超えないで増加するか、または約5%以上収縮(重量および体積における減少)する、重合の際の重量を有し得る。これは、生理学的溶液への曝露に際し、約300重量%〜約600重量%の量で膨潤を経験し得るその他のヒドロゲルとは対照的である。実施形態は、例えば、約0%〜約50%、実施形態では約10%〜約40%を超えない形成から平衡水和まで重量増加を有するか、または約0%〜約50%、実施形態では約5%〜約40%膨潤するか、または約1%〜約50%、実施形態では約5%〜約30%の重量減少によって収縮する重量を有するヒドロゲルを含む。ここで再び、膨潤または収縮は、上記で提示される式を用いて、生理学的溶液への曝露に際し、ヒドロゲルの重量における変化によって決定される。
【0085】
いくつかの実施形態では、収縮は、本明細書では、負の%膨潤と称され得;それ故、実施形態では、本開示のヒドロゲルは、約−50%〜約50%で膨潤し得、その他の実施形態では、ヒドロゲルは、約−20%〜約40%膨潤し得る。当業者は、直ちに、これらの明確に区切られた限度内、または他に関連するすべての範囲および値が本明細書に開示されていることを認識する。
【0086】
ヒドロゲルの重量は、このヒドロゲル中の溶液の重量を含む。ヒドロゲルが束縛される位置で形成されたヒドロケルは、必ずしも低膨潤性ヒドロゲルではない。例えば、身体中で生成された膨潤可能なヒドロゲルは、その周囲によって膨潤することを束縛され得るが、それにもかかわらず、それは、束縛されないときのその膨潤、そして/または束縛に対する力の測定により証明されるように高度に膨潤可能なヒドロゲルであり得る。
【0087】
架橋し、そして平衡にあるヒドロゲルの固形分含量は、その力学的性質および生体適合性に影響し得、そして競合する要件間のバランスを反映する。一般に、比較的低い固形分含量、例えば、水溶液中の約5%〜約25%のヒドロゲルの合計重量、実施形態では、それらの間のすべての範囲および値、例えば、約5%〜約10%、約10%〜約15%、約5%〜約15%、そして約15%より少ないか、または約20%より少ないのが望ましくあり得る。
【0088】
(インサイチュ重合)
「インサイチュ」で起こる前駆体架橋反応を行うのに適している処方物が調製され得、これは、それら反応が生存動物またはヒト身体中の組織で起こることを意味する。一般に、これは、組織への適用のときに活性化され得、架橋されたヒドロゲルを形成する前駆体を有することにより達成され得る。活性化は、前駆体の組織への適用の前、その間、またはその後になされ得、但し、この前駆体を、架橋の前に組織の形状に一致させ、そして他に、関連するゲル化がはるかに進行していることが条件である。活性化は、例えば、重合プロセスを誘因すること、フリーラジカル重合を開始すること、または互いと反応する官能基をもつ前駆体を混合することを含む。それ故、インサイチュ重合は、共有結合を形成する化学的部分の活性化を含み得、不溶性材料(例えばヒドロゲル)を、この材料が配置されるべき患者の上、中、または上および中の両方の位置で生成する。インサイチュ重合可能なポリマーは、それらが患者内でポリマーを形成するように反応され得る前駆体から調製され得る。それ故、求電子性官能基をもつ前駆体は、求核性官能基をもつ前駆体と混合され得るか、またはそうでなければその存在下で活性化され得る。その他の実施形態では、エチレン性不飽和基をもつ前駆体が、患者の組織上においてインサイチュで重合が開始され得る。
【0089】
アルコールまたはカルボン酸のような特定の官能基は、生理学的条件下(例えば、pH7.2、37℃)で、アミンのようなその他の官能基とは通常反応しない。しかし、このような官能基は、N−ヒドロキシスクシンイミドのような活性化基を用いることによってより反応性にされ得る。適切な活性化基は、カルボニルジイミダゾール、スルホニルクロライド、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどを含む。N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルまたはN−ヒドロキシスルホスクシンイミド基は、タンパク質またはアミノ末端ポリエチレングリコールのようなアミン官能化ポリマーの架橋のために特に重要な基であり得る。
【0090】
ヒドロゲルは、ホモポリマーおよびコポリマーを含む天然および合成である両方の親水性ポリマーの、例えば、化学的架橋剤または紫外線光のような電磁照射を通じて導入された、共有結合、イオン結合または疎水性結合のいずれかにより形成され得る。物理的(非共有結合)架橋は、例えば、複合体生成、水素結合、脱溶媒和、Van der Waals相互作用、またはイオン結合から生じ得、そしてインサイチュで合わせられるまで物理的に分離されている成分を混合することによるか、または温度、pH、および/またはイオン強度のような生理学的環境中の普及する条件の結果として開始され得る。共有結合性架橋は、フリーラジカル重合、縮合重合、アニオン性またはカチオン性重合、ステップ成長重合、および求電子−求核反応を含む多くの機構のいずれかによって達成され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル系は、生体適合性多成分系であるようなものを含み、これは、これら成分が混合されるとき自然に架橋するが、ここで、これら2つ以上の成分は、堆積プロセスの持続時間の間は、個々に安定である。このような系は、例えば、二官能性または多官能性アミンであるマクロマーを含む第1の成分、および二官能性または多官能性であるオキシラン含有部分を含む第2成分を含む。酸化還元タイプの開始剤の成分のようなその他の開始剤系がまた用いられ得る。
【0092】
さらに、本開示に従って形成されるヒドロゲルは、コーティングとして用いられ得る。このようなコーティングは、積層体(すなわち、複数の層を有する)として形成され得る。従って、例えば、この積層体の下層は、組織表面への良好な接着を提供し、そしてそれに反応して結合するような上に重なる迎合的コーティングのための基材として役立つより密接に架橋されたヒドロゲルを有し得る。架橋間の低分子量を有する材料は、ベースコーティング層としての使用のために適切であり得る。約400〜約20,000の分子量のポリエチレングリコールがこのような適用のために有用であり得、約500〜約10,000の分子量がいくつかの実施形態では用いられる。
【0093】
ヒドロゲルを形成するいくつかの実施形態は、生分解性のヒドロゲルを形成するために、表面、例えば患者の組織への適用後迅速に架橋する前駆体を混合することを含む。組織をコーティングすることに関し、そして本開示を特定の操作の理論に制限することなく、組織表面に接触した後迅速に架橋する反応性前駆体種は、コートされた組織と機械的に相互ロックしている三次元構造を形成し得ると考えられる。この相互ロックは、組織のコートされた領域の接着性、緊密な接触、および連続的被覆に寄与する。ゲル化に至るこの架橋反応は、いくつかの実施形態では約1秒〜約5分の時間内、実施形態では約3秒〜約1分で生じ;当業者は、これら明瞭に陳述された範囲内のすべての範囲および値が企図されることを直ちに認識する。いくつかの場合には、ゲル化は10秒未満で生じ得る。
【0094】
上記前駆体は、使用の前に溶液中に置かれ得、この溶液が患者に送達される。このヒドロゲル系の溶液は、有害または毒性の溶媒を含むべきではない。実施形態では、上記前駆体は、水中に実質的に溶解性であり得、緩衝化等張生理食塩水のような生理学的に適合する溶液での適用を可能にする。上記前駆体溶液を適用するために、米国特許第4,874,368号;同第4,631,055号;同第4,735,616号;同第4,359,049号;同第4,978,336号;同第5,116,315号;同第4,902,281号;同第4,932,942号;同第6,179,862号;同第6,673,093号;および同第6,152,943号に記載されるものが挙げられる二重シリンジまたは類似のデバイスを用い得る。さらに、このような前駆体は、色素のような可視化剤と組み合わせて用いられ得る。適切な色素は当業者の範囲内であり、そして例えば、米国特許第7,009,034号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、インサイチュで形成されるとき、このヒドロゲルの厚みを可視化するための色素を含み得る。いくつかの実施形態では、適切な色素は、FD&C Blue#1、FD&C Blue#2、FD&C Blue#3、D&C Green#6、メチレンブルー、それらの組み合わせなどを含み得る。
【0095】
本明細書中に記載されるヒドロゲルの実施形態は、低膨潤性のインサイチュで形成される前駆体を基礎にした医療用の架橋されたヒドロゲルを含み、これは、必要に応じて約20秒より少ない(または約10秒より少ないか、もしくは約5秒より少ない)インサイチュのゲル化時間を有する。このようなヒドロゲルは、約1グラム/リットル〜少なくとも約10グラム/リットルの溶解度を有する前駆体で作製され得る。このようなヒドロゲルは、1:1の比の反応性官能基(例えば、求電子試薬:求核試薬)で、またはこの処方物に適するようなその他の比で調製され得る。緩衝剤が、溶液中の反応性官能基の活性(「ポットライフ」)を維持するためのpHを提供するために用いられ得、そして混合されるとき、所望の浸透圧バランス、例えば、米国特許第7,009,034号に記載されるような生理学的範囲を提供する。上記アームは、末端官能基、または、例えば、アームの自由端部の約10,000〜約5,000MWを超えない範囲内の官能基を有し得る。少なくとも1つの官能基、1つより多い官能基、またはそれらの組み合わせが存在し得る。低膨潤性ヒドロゲルの少なくとも1つの前駆体のアームの数は、約3〜約12、実施形態では約4〜約8であり得る。
【0096】
スクシンイミジルグルタレートで官能化されたPEGアームを有する8つのアームをもつ前駆体の例は、例えば、以下:
【0097】
【化1】

を含み、ここで、Rは上記に記載のようなコア、実施形態ではヘキサグリセリンコアであり、そしてnは、約4〜約150、実施形態では約10〜100であり得る。実施形態では、8アームの総分子量は、約20,000であり得る。他の実施形態において、スクシンイミジルスクシネートで官能基化されたPEGアームが利用され得る。
【0098】
本開示によれば、以下の実施例により詳細に記載されるように、前駆体のアームの数を増加させ、そして/または前駆体のアームのアーム長を減少させると、架橋密度(架橋の数/ゲルのグラム数)の増加を生じ得ることが見出された。架橋密度が増加するにつれて、平衡膨潤が低下し得る。従って、ヒドロゲルの架橋密度を変更することによって、このヒドロゲルの膨潤特徴を変化させることが可能である。
【0099】
従って、本開示によれば、本開示の組成物の膨潤または収縮の程度を、意図される用途に依存して、適切なアームの数およびアーム長(すなわち、アームの合計分子量)を選択することにより、調整することが可能であり得る。アームを短縮して、または反応性PEG上のアームの数を増加させて、この結果を達成し得る。別の要因は、例えば溶液中での、PEG前駆体の濃度である。
【0100】
上記のように、前駆体のアームの数は、膨潤および/または収縮の所望の程度に依存して変動し得る。ある実施形態において、4アーム、6アーム、および/または8アームの前駆体が利用され得る。上記のように、膨潤または収縮の程度はまた、アームの数およびアームの合計重量(これは、長さに相関する)により、制御され得る。アームの合計重量は、約750〜約20000、ある実施形態においては、約5000〜約18000、他の実施形態においては、約10000〜約17500、他の実施形態においては、約12000〜約15000であり得る。アーム長およびPEG前駆体の濃度は、ある実施形態において、ゲルが形成されるときに、そのゲルがいかに平衡膨潤に近いかを決定し得る。
【0101】
(脊柱での適用)
脊柱近傍の神経は、組織炎症または手術により身体中に配置された材料の膨潤に応答する圧縮に対して脆弱であり得る。身体は、通常、移植された材料の特定の膨潤量に耐え得るが、骨または剛直なインプラントの近傍の膨潤には耐性がより少なくあり得る。なぜなら、これは、力が骨から離れて敏感な軟組織に向かう可能性があるからである。それ故、このようにして神経を圧縮することを避けることが所望され得る。
【0102】
(組織増大の適用)
本開示の低膨潤性ヒドロゲルはまた、美容整形(例えば、しわの充填)、括約筋増大適用、手根管の損傷および障害(手根管症候群が挙げられる)の処置などにおいて使用するために適切であり得る。本開示の低膨潤性ヒドロゲルのために適切な他の用途としては、眼におけるシーラント、吻合シーラント、および/または前立腺外科手術のためのシーラントが挙げられる。
【0103】
用途とは無関係に、本開示の低膨潤性ヒドロゲルの機械的性質の経時的な変化は、ヒドロゲルの分解に関連するのであり、寸法のいかなる変化にも関連しない。
【0104】
(生体適合性ポリマーを用いる方法)
上記のように、他の実施形態では、本開示の低膨潤性ヒドロゲルの適用は、脊柱におけるか、またはその周りにおける使用のためであり得る。このヒドロゲルの低膨潤性性質は、組織、特に神経の骨に対する圧縮を最小にする。このヒドロゲルは、脊髄の硬膜である膜の外部に適用され得る。いくつかの適用では、このヒドロゲルは、脊柱における膜に実質的に外部に適用され得、これは、このヒドロゲルが、たとえ、この膜が損傷されるか、または破損さえされる間にも脊柱に適用されることを意味するが、脊髄が本質的に切断され、そしてヒドロゲルが神経の間隙に配置される状況は除く。上記ヒドロゲルはまた、付随する脊柱構造に接触し得、そして椎孔、ならびに神経根および膜の外部で、かつ例えば、脊柱の約0.1cm〜約5cm、実施形態では脊柱の約1cm〜約4cm内の神経部分を含む外側領域の一部またはすべてを充填する。従って、このヒドロゲルは、組織接着剤、組織シーラント、薬物送達ビヒクル、創傷被覆剤、術後癒着を防ぐ障壁、または炎症または損傷部位の被覆として機能し得る。このヒドロゲルは、空隙もしくは管腔を充填するボーラスとして、および/または組織表面に一致するコーティングとして適用され得る。
【0105】
ある実施形態において、上記のように、本開示のヒドロゲルはまた、美容整形において利用され得る。例えば、皮膚組織(筋膜、皮下組織および真皮組織が挙げられる)の増量が、皮膚障害(瘢痕、皮膚のたるみ、皮膚が薄くなることが挙げられる)を処置するために使用され得、そしていくつかの型の美容整形および再構築の形成外科において使用され得る。このような皮膚の障害はしばしば、輪郭欠損として示され、これらの輪郭欠損は、本開示のヒドロゲルを使用して処置され得る。皮膚の輪郭欠損は、加齢、環境への曝露、体重損失、出産、外科手術または疾患などの要因の結果として起こり得る。輪郭欠損としては、眉間のしわ、心配によるしわ、しわ、目じりのしわ、マリオネットライン、皮膚萎縮線条、内部瘢痕、外部瘢痕、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。従って、本開示のヒドロゲルを用いた皮膚層の増大は、このような輪郭欠損を減少させ得るかまたは排除し得る。
【0106】
これらのヒドロゲルは、所望の皮膚層に、組織を膨張させ得る過剰膨潤に関する心配をする必要なく、注入され得る。しわ充填剤として、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、液体形態で皮下に注入され得るかまたは他の様式で配置され得、投与後に、ゲル化が起こる。本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、有利なことには、依然として液体形態にありながら、所望の効果を達成するために成形され得るか、または薄く広げられ得る。同様に、美容整形用途または再構築外科手術用途に関して、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、液体形態で身体の選択された領域に塗布され得(または本明細書中に記載されるように挿入する前に形成され得)、そして所望の形状に、または所望の体積を充填するために、操作され得る。再構築外科手術または美容増強は、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを組み込み得る。顔面領域(例えば、頬、鼻、耳、および眼に隣接する皮膚(軟部組織))は、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを使用して、再構築的に増大または増強され得る。
【0107】
さらに、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、括約筋増大用途(膀胱(尿道)、肛門、および食道の括約筋増大が挙げられるが、これらに限定されない)において利用され得る。当業者の知識の範囲内である任意の方法を利用して、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを括約筋に導入し得る。当業者に明らかであるように、選択される方法は、部分的には、身体内での括約筋の位置に依存し得る。
【0108】
例えば、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、哺乳動物括約筋(例えば、下部食道括約筋(LES))を増大するために、標的組織部位に送達され得る。ある実施形態において、カテーテルアセンブリが、本開示の組成物を導入するために利用され得る。このようなカテーテルアセンブリは、注射針に固定された遠位端を有する可撓性カテーテルを備え得、この注射針を利用して、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを括約筋に導入し得る。このカテーテルは、その近位端において、標準的なルアー継手により、注射器に結合され得る。この注射器は、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを収容し得る。この針は、本開示の低膨潤性ヒドロゲルを括約筋の一部に送達するために、括約筋またはそれに隣接する組織を穿孔し得る。次いで、圧力がこの注射器のプランジャーに加えられ得、この注射器は次いで、本開示の低膨潤性ヒドロゲルをカテーテルの管腔に注入し、引き続いて、針に注入する。
【0109】
ある実施形態において、カテーテルおよび針は、インビボでの可視化を補助する手段(例えば、操縦手段および可視化手段を有する内視鏡)によって、処置部位に案内され得る。
【0110】
括約筋の最初の数層は、粘膜層、粘膜下層および下にある平滑筋層を含む。針は、制御された組織増量/増大を、粘膜層および粘膜下層の下にある平滑筋層において生じるように、配置され得る。ある実施形態において、この針は、制御された量の本開示の低膨潤性ヒドロゲルを、粘膜層の表面から約1mm〜約4mmにある平滑筋層の部分に注射するように配置され得る。
【0111】
類似のアプローチを使用して、他の括約筋欠損を矯正し得る。例えば、尿道括約筋が増大されて、失禁を軽減し得る。同様に、幽門括約筋がまた増大されて、腸のpH不釣合いに関連する「ダンピング」問題を減少させ得る。
【0112】
なお他の実施形態において、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、手根管の損傷および障害(手根管症候群が挙げられる)の処置において利用され得る。このような処置は、ある実施形態において、手根管の被包を包含し得る。例えば、ある実施形態において、本開示の低膨潤性ヒドロゲルは、液体形態で、手根管に注射または他の様式で配置することにより、手根管に導入され得、そしてゲル化させられ、これによって、手根管を被包し、そして手根管の表面と、手根管中の腱および神経(正中神経が挙げられる)との間に障壁を形成し、これによって、炎症および/または刺激を減少させる。
【0113】
本開示のヒドロゲルは、薬物送達のためにも用いられ得る。架橋されたポリマーまたはゲルから添加または送達され得る生物学的に活性な薬剤または薬物化合物は、例えば、タンパク質、グリコサミノグリカン、炭水化物、核酸、無機および有機の生物学的に活性な化合物を含む。具体的な生物学的に活性な薬剤は、酵素、抗生物質、抗微生物剤、抗腫瘍剤、局所麻酔剤、ホルモン、血管形成薬剤、抗血管形成薬剤、成長因子、抗体、神経伝達物質、神経賦活剤、抗癌薬物、化学治療薬物、生殖器官に影響する薬物、遺伝子、抗炎症薬物、鎮痛薬、抗生物質、抗増殖剤、抗線維剤、およびオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0114】
上記に記載の生物活性化合物は、水溶液を作製する前、または前駆体の無菌的製造の間に前駆体と混合され得る。この混合物は、次いで、別の前駆体と混合され得、上記生物学的に活性な物質がその中に捕捉される架橋材料を生成する。PLURONICS(登録商標)、TETRONICS(登録商標)、またはTWEEN(登録商標)界面活性剤のような不活性ポリマーから作製される前駆体が、例えば、低分子の疎水性薬物とともに用いられ得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、活性薬剤(単数または複数)は、前駆体が反応されて架橋ポリマーネットワークまたはゲルを生成するとき、別個の相で存在し得る。この相分離は、化学的架橋反応における生物活性物質の参加を防ぎ得る。この別個の相はまた、この架橋された材料またはゲルからの活性薬剤の放出速度論を改変するように支援し得、ここで、「別個の相」は、油(例えば、水中油エマルジョン)、生分解性ビヒクルなどであり得る。
【0116】
当業者が本明細書中に記載される本開示の特徴をよりよく実施することが可能であり得るように、以下の実施例が、本開示の特徴を限定ではなく説明するために提供される。
【実施例】
【0117】
(実施例1:低膨潤性ヒドロゲル処方物)
ヒドロゲルを調製するために、一級アミン官能基をもつトリリジンを、約20,000MWのポリエチレングリコールの合計MWを有する4つのアーム(4a)の各々の端部にスクシンイミジルエステル求電子性官能基(詳細には、スクシンイミジルグルタレート、SG)をもつ複数アームのポリエチレングリコール(PEG)求電子性前駆体(本明細書では、ときどき、4a20kSGと呼ばれる)と、1:1の化学量論比の求電子試薬:求核試薬で反応させた。
【0118】
4アームの前駆体の代わりに、約10,000(10k)または20,000(20k)の合計MWを有するPEGアームをもつ6アーム(6a)または8アーム(8a)(各アームの端部に官能基をもつ)の前駆体が用いられたことを除いて、求電子性官能基−求核性官能基の比がなお1:1である本質的に同一のヒドロゲルが次いで作製された(従って、他のヒドロゲルは、6a10kSG、6a20kSG、8a10kSG、および8a20kSGを含んだ)。
【0119】
4a20kSGを例として用い、ヒドロゲルを作製する詳細な手順は以下の通りである。トリリジンを、0.005mg/mlの濃度で、0.075Mホウ酸緩衝液中に混合した。この溶液の得られるpHは約10であった。4a20kSGを、pH4の弱いリン酸緩衝液で0.2g/mlに再構成した。これら2つの液体成分を、それらを、スタティックミキサーを通してシリコーン管材中に押すことによって合わせた。この管材をディスクに切断し、そしてゲルを取り出した。個々のディスクを秤量し、そして37℃でPBS中に置いた。24時間後、ディスクを再び秤量し、そして膨潤%を算出した。ゲル化時間を、第2の成分および攪拌バーを含む試験管中に1つの成分を注入することにより測定した。ストップウォッチを、注入のときにスタートし、そして攪拌バーが速度において認知し得る変化を示したときストップした。ゲル化時間測定中に形成されたゲルを用いて、持続時間を決定した。個々のゲルプラグを37℃のリン酸緩衝化生理食塩水中に置き、そしてそれらが裸眼で見えなくなるまで毎日モニターした。
【0120】
その他の処方物を、濃度およびpHを変えて同様に作製した:0.19gPEG/mlリン酸塩、0.012gトリリジン/mlホウ酸塩(pH10)を使用して、8a15kSG(スクシンイミジルグルタレートで終わる15,000の総合計MWを有するアームをもつ8アームPEG);0.19gPEG/mlリン酸塩、および0.008gトリリジン/mlホウ酸塩(pH10)を使用して、4a10kSS(スクシンイミジルスクシネート(SS)で終わる10,000の総合計MWを有するアームをもつ4アームPEG)。
【0121】
表1は、これらの低膨潤性ヒドロゲル処方物について得た結果を示す。約9%固形分および約2500MW未満の個々のアーム長を有して調製されたヒドロゲルが、その他のパラメーターは本質的に一定に保持し約5000の個々のアーム長をもつ前駆体から調製されたヒドロゲルと比較して低膨潤性を示した。
【0122】
【表1】

i、n=3; ii、別々の実施した複数の試験に基づく平均。
【0123】
表1に示される材料は、95%を超える置換レベルを確認するように合成および試験された。処方物は、1:1の化学量論で平衡化され、そしてpHは、類似のゲル化時間を与えるように調整された。すべてのヒドロゲルは、5秒未満のゲル化時間を有していた。
【0124】
4アームのヒドロゲルは、約80重量%膨潤した(表1、4a20kSG、4aは4アームを示し、20kはアームについて合計20,000MWのPEGを示し、そしてSGは各アームがスクシンイミジルグルタレートで終わることを示す)。6アームおよび8アームゲルは、約12重量%膨潤、または約27%もしくは約32%だけ収縮するに過ぎなかった(表1)。
【0125】
ヒドロゲルについて、透明プラスチック試験管中のこれらのゲルを観察し、そしてそれらが完全に分解されたことを示す、それらが裸眼ではもはや見えない時間を記録することによって消失時間を測定した(表1)。破裂強度を測定し、そして受容可能な範囲内であることが見出された。
【0126】
(実施例2:膨潤における浸透圧環境の役割)
膨潤における浸透圧環境の役割を、実施例1に記載のように4a20kSGを用いてヒドロゲルを作製し、そしてそれを、pH7.0〜7.4、および約300mOsの容量オスモル濃度を有する生理学的緩衝化食塩水、またはこの同様な生理食塩水の2倍強度の溶液に曝すことにより試験した。n=3(PBSの各モル濃度に対するヒドロゲルプラグ)で、ゲル化から平衡膨潤までの膨潤(24時間でとった)は生理学的食塩水で平均68%、そして倍強度の食塩水で57%であった。これらの結果は、膨潤性環境に固有の容量オスモル濃度の違いが、異なるアーム長を有する前駆体で処方されたヒドロゲルの減少した膨潤の原因ではなかったことを示す。なぜなら、膨潤における変化は、アームの長さが増加されたときに概して観察された、より大きな変化の原因を説明するには小さ過ぎたからである。
【0127】
(実施例3:インビボで試験された低膨潤性ヒドロゲル)
低膨潤性ヒドロゲルを、インビボで脊柱に移植した。処方物1は、8a15kSG(約15,000の総PEG MWを有する各アームの端部にスクシンイミジルグルタレートを有する8アームPEG前駆体)で反応されたトリリジン前駆体を、実施例1および表1に記載のような効率的な条件で反応することにより作製されたヒドロゲルであった。前駆体は、上記溶液を混合し、そしてそれらを適用部位に導く二重管腔アプリケーターを用いて適用された。
【0128】
合計15匹のイヌに、L2およびL5の両方で、完全幅の椎弓切除術を受けさせ、その後、1cmの正中硬膜切除(durotomy)を作製し、これを縫合して閉じた。動物を無作為化し、コントロールとして残す(n=5の動物;閉鎖の前にさらなる処置はしなかった)か、あるいは椎弓切除術の両部位で、処方物1の適用を、DUOFLO(登録商標)二重管腔アプリケーター(Hemaedics Inc.Malibu、CA)(n=5の動物)またはMICROMYSTTM二重管腔アプリケーター(Confluent Surgical、Inc.、Waltham、MA)(n=5の動物)を用いて与えた。処方物1は、その適用の2〜3秒以内に組織に接着することが観察された。
【0129】
手術は、L2およびL5両方への接近を得るためにすべての動物で作製された単一の正中皮膚切開(代表的には長さ15cm)で実施された。椎弓切開術(平均の長さ2.5cm、幅1.3cm)を、標準的またはKerrison骨鉗子を用いて実施した。すべての硬膜切除は正中、1cmの長さであり、そして縫合に続いてすべて自然にCSFが漏れ出た。
【0130】
コントロールに対して無作為化された動物は、閉鎖において縫合孔から垂れるCSFを有した。すべてのコントロール部位(10/10)は、筋肉および筋膜閉鎖のときに硬膜切除ニードル孔からCSFが垂れ続けた。
【0131】
すべてのコントロール動物は、1〜3日以内に術後皮下流体蓄積(5/5、100%)を発症した。すべての蓄積物は、縫合された皮膚閉鎖によって含まれ、そして1週間の試験で存在していた。蓄積物はCSFであると推定され、そして4週間の試験で平坦な切開とともに吸収された。コントロールの5/5(100%)と比較して、処方物1動物の1匹のみ(10%)が、術後皮下流体蓄積率を示した。(DUOFLO(登録商標)で適用された処方物1はゼロの漏れを有し、MICROMYSTTMでの処方物1は、1つの漏れを有し、コントロールはすべて漏れた)。任意の理論によって拘束されることは希望しないが、処方物1の漏れは、恐らくはアプリケーター(層の厚み)に起因したのであり、処方物に起因したではない。
【0132】
処方物1処置を受けるように無作為化された動物は、適用の後に、20cmHOまでのバルサルバ手技を受けた。バルサルバ手技にかかわらず、ヒドロゲル適用後、処方物1で処理された部位は漏れがなかった(20/20)。
【0133】
MICROMYSTTM群について縫合線上の適用された平均体積および厚みは、体積1.3mlおよび厚み2.7mmであり、DUOFLO(登録商標)群では体積2.2mlおよび厚み3.3mmであった。椎弓切除術幅は硬膜嚢の全長であったので、各椎弓切除術部位における溝は深く、そして神経根まで下方に延びた。従って、縫合糸上の平均の処方物1の厚みは、約3.3mmであり、溝中の流出量に起因する厚みはいくつかの事例では恐らく8〜10mmに接近していた。
【0134】
すべての動物を、1、4、8および16週に神経学的欠損について評価した。評価は、アラートネス、運動機能、脳神経機能および姿勢について神経学的後遺症に焦点を当てた。組み入れた動物のいずれにおいても神経学的欠損は記録されなかった。手術に関係ない原因のために1つの初期の死亡を除いて、すべての動物は、初期手術手順からの検出可能な後遺症なく健康なままであった。これらの結果は、上記の低膨潤性ヒドロゲルが、脊柱の内側であり、そして硬膜上および硬膜外の空間および脊柱近傍の脊髄神経または神経根を含む、脊柱の膜の実質的外部の組織に適用されるとき有効であったことを示す。
【0135】
(実施例4:低膨潤性ヒドロゲルのデータ)
上記サンプルおよびさらなるサンプルのさらなる試験を実施した。2つの異なる変数(PEGアーム数およびPEGアーム長)を評価した。サンプルは、実施例1から得られた8a20kSG、実施例1から得られた8a10kSG、実施例1から得られた4a10kSS、および実施例1から得られた4a20kSGであった。4a10kSG(スクシンイミジルグルタレートを末端とする、約10000の総合計重量を有するアームを有する4アームPEG)および6a15kSG(スクシンイミジルグルタレートを末端とする、約15000の総合計重量を有するアームを有する6アームPEG)を含むさらなるサンプルを、実施例1において上に記載された手順を利用して調製した。全てのサンプルのための架橋剤は、約1:1の反応性基(NHSおよびNH)の比を有するトリリジンであった。得られたヒドロゲルを、ゲル化時間、膨潤(%)、および消失までの時間について試験した。その結果を以下の表2に要約する。
【0136】
【表2】

上記表2からわかるように、アームの数を増加させること、またはアーム長を減少させることの両方が、架橋密度(架橋の数/ゲルのグラム数)の増加を生じた。架橋密度が増加するほど、平衡膨潤は減少した。高い程度の架橋を有する処方物は、4a20kSG(DURASEAL)より約33%長時間存続した。この膨潤データはまた、図1にも要約されている。図1に見られ得るように、約10Kのみの合計アーム重量を有する組成物は収縮し、一方で、アーム数の増加(8)を有する組成物は、より小さい数のアーム(4)を有する組成物より膨潤がかなり小さかった。
【0137】
ゲルの機械的性質を架橋密度の関数として評価する目的で、Instron Universal Testing Machineを利用して、破壊時ひずみ(%)を測定した。要約すると、円筒形のゲルプラグを、破壊されるまで一定割合で圧縮した。
【0138】
圧縮強度試験の結果を、図1および図2に要約する。図1に見られ得るように、より高い程度の架橋を有する材料は、DuraSealより早く脆性破壊に達した。このことは、架橋密度がヒドロゲルを硬くするはずであるので、予測される。この硬さは、以下の傾向を有するようであった:8a10k>8a20k=4a10k>4a20k。
【0139】
上記硬さがどのように破裂強度に影響を与え得るかを評価する目的で、数種のサンプルを、破裂強度取付け具を使用して評価した。前駆体を、ブタコラーゲンの欠損に噴霧して、規定された厚さのヒドロゲルを形成した。このサンプルを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて、この欠損の下から、ヒドロゲルが破壊されるまで加圧した。最大圧力を、変換器に取り付けたデジタル読取器で記録した。これらの結果を以下の表3に要約する。
【0140】
【表3】

上記の表からわかるように、アーム長の変化は、破裂強度に大きな影響を有さなかった。しかし、最も脆性の処方物(8a10kSG)は、最も低い破裂強度を有した。
【0141】
上記のことから、ヒドロゲルの膨潤特性を、その架橋密度を変更することにより変化させることが可能であることがわかる。アームを短縮するか、または反応性PEG上のアームの数を増加させて、この結果(すなわち、ゲルを硬くすること、およびおそらく、破壊強度を低下させること)を達成し得る。
【0142】
8a10k〜8a20kの間のゲルは、破裂強度を有意に損なわずに、ゼロ膨潤を有し得る。
【0143】
本明細書中で陳述される、すべての特許出願、刊行物、および特許は、それらが本明細書の明瞭な開示に矛盾しない範囲まで、本明細書中に参考として援用される。種々の改変が、本明細書中に開示された実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定であると解釈されるべきではなく、単に、好ましい実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを備えるカテーテルアセンブリであって、該カテーテルは、該カテーテルの近位端において注射器に結合されており、そして該カテーテルの遠位端において組織穿刺針に結合されている、カテーテルアセンブリ、
を備え;
該カテーテルは、患者に導入されるように構成されており;
該針は、括約筋の外側表面を穿刺するように構成されており、そして該括約筋内に、ある距離だけ前進させられるように構成されており、
該カテーテルアセンブリは、該括約筋に、第1の官能基を有する第1の合成前駆体および第2の合成前駆体を導入するように構成されており、該第2の合成前駆体は、約3個〜約12個のアームを有するコアを有する複数アーム前駆体を含み、該アームの各々は、約250〜約5000の分子量を有するポリエチレングリコールを含み、そして該アームの端部に第2の官能基を有し、
該第1の官能基は、該第2の官能基と架橋し、これによって、約−50%〜約50%膨潤するヒドロゲルを形成する、括約筋を増大するためのシステム。
【請求項2】
前記第1の前駆体と前記第2の前駆体とが接触した後に、約10秒未満で、前記ヒドロゲルが架橋してゲルを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の官能基が求核試薬を含み、そして前記第2の官能基が求電子試薬を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の合成前駆体が、ジリジン、トリリジン、およびテトラリジンからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の合成前駆体が、少なくとも2つのリジン基を含む約5個以下の残基のオリゴペプチド配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の前駆体のコアが、ポリエーテル、ポリアミノ酸、タンパク質、およびポリオールからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の前駆体のコアが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド、co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、タンパク質、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数アーム前駆体が、約4個〜約8個のアームを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約750〜約20000である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数アーム前駆体のアームの合計重量が、約5000〜約18000である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の前駆体および前記第2の前駆体と一緒に導入される生物活性薬剤をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の前駆体および前記第2の前駆体と一緒に導入される可視化剤をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記可視化剤が、FD&C Blue#1、FD&C Blue#2、FD&C Blue#3、D&C Green#6、メチレンブルー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される色素を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ヒドロゲルが、約1%〜約50%の重量減少で収縮する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ヒドロゲルが、約5%〜約30%の重量減少で収縮する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記括約筋が、尿道括約筋、肛門括約筋、および食道括約筋からなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227564(P2010−227564A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65269(P2010−65269)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(507156015)コンフルエント サージカル, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】