説明

低蒸気対油プロセス条件下でアルケニル芳香族化合物を製造するための改良された方法

低蒸気対油プロセス条件下で、低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒組成物を利用することによる、脱水素可能な炭化水素の脱水素を含む改良された脱水素プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル芳香族化合物を製造する改良された方法に関し、この方法は、低蒸気対油操作条件下で、低チタン含量を有する脱水素触媒を使用する。
【背景技術】
【0002】
アルキル芳香族化合物脱水素は、通常、アルキル芳香族含有供給材料を高温で脱水素触媒を含む反応ゾーンを通過させることによって、商業規模において実施されている。一般に、蒸気は、これを導入し、反応ゾーンの脱水素触媒に接触させる前にアルキル芳香族供給材料と混合される。蒸気は、希釈剤および熱源のいずれにも役立つことができる。熱源として蒸気は、アルキル芳香族供給材料の温度を脱水素温度に上げ、生じる脱水素反応により必要とされる吸熱の熱エネルギーを供給する。希釈剤として、反応ゾーン中の蒸気雰囲気の存在は、脱水素反応の間、脱水素触媒上に炭素質の残渣が形成および析出することを防止し、さもなければ、脱水素触媒の有効寿命を延長させる。一般に、脱水素触媒の安定性、したがって有効寿命は、より高い蒸気対油比を使用することによって改良される。
【0003】
エネルギー節約の観点から、脱水素プロセスをできるだけ低い蒸気対油比で操作できることが望ましい。しかし、上に示唆したように、低下した蒸気対油比で脱水素プロセスを操作することは、脱水素触媒を許容できない速度で失活を生じさせる傾向となり、これにより、このような低蒸気対油比での操作を商業的に実際的でないものにする。しかし、低蒸気対油比を有する供給材料を使用した場合にも、高安定性など低減された比を使用する良好な触媒特性を示す種々の触媒の開発により、または低蒸気対油比の使用を可能とする他の方法の開発により、脱水素プロセスの操作およびエネルギー効率を改良するために継続的な努力がなされてきた。
【0004】
この努力の1つの例が、米国特許第4,064,187号に示されており、これは、以前実際的であると考えられていたよりも、低い蒸気と炭化水素の比において、商業的蒸気脱水素ユニットの操作が可能であると言う脱水素触媒を開示している。この特許によって教示される酸化鉄(Fe)含有触媒は、スチレンへのエチルベンゼンの脱水素に使用した場合に、0.5:1(約、モル比2.94:1)までの低い蒸気と炭化水素供給材料の重量比を可能にし、なお、良好な触媒寿命を有しながら商業的に許容される転化率および収率を与えると言う。この教示されている触媒は、大部分のFeおよびZnO、およびアルカリ金属クロマートおよび塩基性カリウム促進剤の少量を含む。
【0005】
他の例において、低蒸気対油供給材料プロセス条件下で使用した場合に、スチレンへのエチルベンゼンの脱水素において、高活性および高選択性を示すと言う酸化鉄含有脱水素触媒が、米国特許第6,184,174号に開示されている。’174号特許の酸化鉄含有触媒は、2ミクロン未満の平均粒径値を有する微結晶の形態においてカリウム鉄酸塩を含む。低蒸気対油プロセス条件下で使用した場合の、’174号特許の触媒の安定性特性値については何も示されていない。
【0006】
米国特許第4,229,603号は、低蒸気対油プロセス条件下で、アルキル芳香族化合物の脱水素において、改良された収率を実現する方法を開示している。この方法は、アルキル芳香族供給材料を反応器の触媒床に導入すること、およびこの後に、触媒床内でアルキル芳香族供給材料を蒸気と接触および混合させることを含む。触媒床の触媒および脱水素反応の反応ガスと、熱交換関係にある蒸気が、管を通して触媒床中に導入される。’603号特許は、脱水素プロセスにおいて蒸気対油比を低下させるための装置および方法論を開示しているが、この蒸気対油比を低下させることは、必ずしも触媒の特別なタイプの使用に依存しない。
【0007】
U.S.5,190,906は、触媒の触媒性能を向上させるために酸化鉄系脱水素触媒に酸化チタンを添加することを教示している。’906号特許は、酸化鉄系脱水素触媒の触媒成分の混合物への、酸化チタン0.005〜0.95重量%(50ppmw〜9500ppmw)の添加が、触媒の性能を改良させると主張しているが、酸化鉄系脱水素触媒中のチタンの存在が、低蒸気対油環境におけるある種の性能因子に関して、不満足な触媒性能を示す触媒をもたらすことは認識していない。
【0008】
上に示した通り、供給材料における蒸気対油比の低下した比を使用する改良された脱水素プロセスを開発するために、当業者によって継続的な努力がなされてきた。しかし、脱水素プロセス供給材料の蒸気対油比の低下に関する困難の1つは、これらのプロセスにおいて利用できる脱水素触媒のほとんどは、このような低蒸気対油条件下で商業的に効果的でないことである。一方、利用可能な脱水素触媒のいくつかは、低蒸気対油プロセス条件下で、良好な初期活性および選択性を示すことができるが、これらの触媒性能は、触媒をこのような低蒸気対油条件下で使用した場合に、この活性が急速に衰える傾向があるので安定ではない。さらに、いくつかの触媒に関しては、この活性または選択性、または両方ともが、高蒸気対油プロセス条件下で使用した場合と比較して、低蒸気対油プロセス条件下で使用した場合に、より低いことがある。望まれることは、低蒸気対油プロセス条件下で使用した場合に、良好な安定性特性値、ならびに良好な活性または選択性特性値を示す触媒を使用することによって可能となる、低蒸気対油プロセス条件下で操作することができる脱水素プロセスの開発である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、低蒸気対油プロセス条件下で満足に操作することができる改良された脱水素プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、脱水素条件下でエチルベンゼンおよび蒸気を含む供給材料(ここで、蒸気は、供給材料中で9:1未満の蒸気対油モル比を与えるような量において供給材料中に存在する。)を低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒と接触させることを含む脱水素プロセスを提供する。さらに、本発明は、スチレンを製造する方法を含むことができ、この方法は、エチルベンゼン供給材料を脱水素条件下で触媒と接触させて、スチレン生成物を生じるタイプの方法である。この方法は、この触媒として、低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒組成物を利用し、低蒸気対油操作条件下で操作される。
【0011】
他の本発明は、高チタン含量を有する第1の触媒を含む反応器を包含するスチレンプロセスユニットの操作を改良する方法であり、ここでこの方法は、前記反応器から前記第1の触媒を除去し、それを低チタン含量を有する第2の触媒により置換すること;ならびにその後に、スチレンプロセスユニットを低蒸気対油比プロセス条件において操作することを含む。
【0012】
さらに他の本発明において、低蒸気対油比プロセス条件下で、スチレンを作製するためのエチルベンゼンの脱水素において適切に使用することができる脱水素触媒が提供される。脱水素触媒は、酸化鉄成分、セリウム成分、カリウム成分、モリブデン成分、アルカリ土類金属成分、および1000ppmw未満のチタン濃度において脱水素触媒組成物中に存在するチタンを含む。
【0013】
アルキル芳香族化合物をアルケニル芳香族炭化水素に接触脱水素する方法を、低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒組成物を利用することによって、非常に改良することができ、このプロセスは、低蒸気対油プロセス条件において接触脱水素プロセスの操作を可能とし、触媒活性および選択性が改良され、しかも触媒安定性または有効寿命において許容できない低下はないことが発見された。
【0014】
低蒸気対油プロセス条件下で、接触脱水素プロセスを操作することは、種々の理由から望ましいことであり得る。しかし、蒸気対油比を低下できる程度は、一般に脱水素プロセスにおいて使用される脱水素触媒の特性のいくつかによって制限される。一般に、現在の経済的考慮および市販の脱水素触媒により、脱水素プロセスの典型的操作は、9:1、およびを超える蒸気対油比を利用し、殆どの場合、使用される蒸気対油比は、10:1を超える範囲にある。さらに、市販の脱水素触媒の多くのタイプは、12:1を超え、より高くは20:1までの範囲の蒸気対油比の利用を必要とする。
【0015】
本明細書において、蒸気対油比または蒸気対油プロセス条件などと言う場合、意味するところは、脱水素触媒を含む脱水素反応ゾーンを規定する脱水素反応器に原料が装填される脱水素プロセスにおいて、蒸気対油比の値が、原料中の蒸気のモルを原料中の炭化水素のモルで割ることによって求められると言うことである。炭化水素および蒸気が、脱水素反応器への、その導入の前に原料中で混合されない場合には、蒸気対油比の値は、脱水素反応器へ導入された炭化水素の総モル当たりの、脱水素反応器へ導入された蒸気の総モルの比を採ることによって求められるものである。
【0016】
本発明の方法は、エチルベンゼンなどのアルキル芳香族の脱水素によって、スチレンなどのアルケニル芳香族を製造する改良された方法であり、典型的な場合よりも、より低い蒸気対油プロセス条件での脱水素プロセスの操作を含む。低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒を利用すると、低蒸気対油プロセス条件下で操作される脱水素プロセスの安定な操作が可能になる。また、このような低チタン含量脱水素触媒は、低蒸気対油プロセス条件下で使用した場合に、高活性および高選択性を与える。
【0017】
米国特許第5,190,906号は、酸化鉄脱水素触媒へのチタンの添加が、触媒の活性、選択性および安定性の増大をもたらすことを教示している。しかし、本明細書に記載されている本発明のプロセスは、チタンの少量、換言すれば低いチタン濃度を有し、低蒸気対油プロセス条件において脱水素プロセスの操作を可能にする、酸化鉄系脱水素触媒の特性を開発している。また、低チタン濃度を有する酸化鉄系脱水素触媒が、同様な低蒸気対油脱水素プロセス条件下で使用された場合に、高チタン濃度を有する相当する酸化鉄触媒によって示される活性および選択性よりも、低蒸気対油プロセス条件下で使用された場合に、より高い活性および選択性を示すことは、予想外のことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において、蒸気対油比またはプロセス条件が低いと言う場合、意味するところは、上に定義された、本発明の改良された脱水素プロセスにおいて使用される蒸気対油比が、多くの通常の脱水素プロセスにおいて使用されているものよりも低いと言うことである。一般に、本発明の改良された脱水素プロセスにおいて使用される低蒸気対油比は、9:1未満、しかし、好ましくは低蒸気対油比は8:1未満である。さらに好ましくは低蒸気対油比は6:1未満およびさらに5:1未満である。
【0019】
低チタン含量酸化鉄脱水素触媒を使用する場合でも、本発明の改良された脱水素プロセスの操作において、いかに低く蒸気対油比を低下させることができるかについては、とりわけ、脱水素反応に対する吸熱エネルギーの多くが蒸気によって供給されるのであるから、実際的な限界があり得る。しかし、一般に低い限界は、0.1:1または0.5:1またはさらに1:1より低くはない。したがって、例えばその下で、本発明の改良された脱水素プロセスが操作される低蒸気対油比は、0.1:1〜9:1の範囲で、好ましくは0.5:1〜8:1の範囲で、および最も好ましくは1:1〜6:1、またはさらに1:1〜5:1であってよい。
【0020】
本発明の脱水素プロセスにおいて使用される脱水素触媒の組成物は、従来技術の脱水素プロセスに勝る操作上の改良をもたらすために特に重要である。脱水素触媒は、脱水素プロセスユニットの操作において、改良を可能とする触媒特性を示すべきであり、このユニットは、第1の脱水素触媒を含む脱水素反応器を包含し、この第1の脱水素触媒は、脱水素プロセスの脱水素反応器から除去され、第2の脱水素触媒によって置換される。第2の脱水素触媒は、脱水素反応器の許容される商業的操作を可能とするような特性を示し、この反応器は、低蒸気対油プロセス条件において第2の脱水素触媒を含む。低チタン含量を有することを特徴とする酸化鉄系脱水素触媒組成物は、脱水素プロセスユニットの低蒸気対油操作を可能とすることが分かった。これに反して、高チタン濃度を有する酸化鉄脱水素触媒は、低蒸気対油プロセス条件において脱水素プロセスユニットの許容される操作を可能とするために必要な特性を示さない。
【0021】
したがって、本明細書における本発明のプロセスの触媒は、低蒸気対油プロセス条件下で、それが使用される脱水素プロセスの操作を可能にするように、十分に低いチタン含量を含む酸化鉄系脱水素触媒である。このような低チタン濃度は、百万重量部当たり約1000部(ppmw)未満であり得る。しかし、一般に、酸化鉄系脱水素触媒のチタン含量は、非常に低いこと、500ppmw未満またはさらに300ppmw未満の範囲にあることが望ましい。好ましくは本明細書における本発明のプロセスにおいて使用される酸化鉄系脱水素触媒中のチタンの濃度は、100ppmw未満、および最も好ましくは75ppmw未満の範囲にある。
【0022】
実際的配慮による限界以外には、酸化鉄系脱水素触媒中のチタンの濃度範囲に対する特別な下限はない。したがって、本発明のプロセスの酸化鉄系脱水素触媒中のチタン濃度範囲に対する下限は、例えば十億重量部当たり1部(ppbw)までの低い微量のレベル、および、より詳細には1ppmwのレベルであってよい。
【0023】
チタンは酸化鉄系脱水素触媒中に、酸化物などのなんらかの他の形態において多分存在するが、本明細書においてチタンの濃度またはチタン含量に対する記載は、元素形態におけるチタンを言う。また、重量部における濃度測定に対する記載は、酸化鉄系脱水素触媒の総重量に対するものである。
【0024】
また、低チタン濃度を有する本発明のプロセスの酸化鉄系脱水素触媒は、酸化鉄を含む。さらに、酸化鉄系脱水素触媒は、例えばカリウムおよび少なくとも1種のその他の促進剤金属などの他の触媒成分を含むことができる。カリウムおよびその他の促進剤金属または複数の金属は、酸化鉄系脱水素触媒中に酸化物形態において存在すると思われる。
【0025】
酸化鉄系脱水素触媒の酸化鉄は、例えば、合成赤鉄鉱または再生酸化鉄、再構成酸化鉄、および前述の酸化鉄の任意の組合せを含む、黄色酸化鉄(針鉄鉱、FeOOH)、黒色酸化鉄(磁鉄鉱、Fe)、赤色酸化鉄(赤鉄鉱、Fe)などの酸化鉄の任意の1種または複数を含む種々の形態であってよい。また、酸化鉄は、酸化カリウムと組み合わせて、式(KO)・(Feにより表される鉄およびカリウムの両方を含む1種または複数の相を形成するために、酸化鉄およびカリウム酸化物の両方を含む1種または複数の相を形成することができる。
【0026】
本発明のプロセスの成分としてまたは脱水素触媒の調製において使用することができる再構成酸化鉄は、米国特許第5,668,075号に詳細に記載されているタイプのものであり、この特許を参照により本明細書に組み込む。’ 075号特許に述べられているように、ある種の脱水素触媒の調製において再構成酸化鉄を使用すると、向上した選択性をもたらす。また、’ 075号特許によって教示される方法によって調製された触媒は、このような触媒が、本明細書においてどこにでも述べられているように、必要な低チタン含量を有することを前提に、本発明のプロセスの脱水素触媒として使用することができる。
【0027】
本発明のプロセスの脱水素触媒の成分としてまたは調製において使用することができる再生物酸化鉄は、塩化鉄溶液の噴霧ばい焼によって生成される酸化鉄である。再生物酸化鉄を調製する適切な方法の例は、米国特許第5,911,967号に記載されており、この特許を参照により本明細書に組み込む。
【0028】
酸化鉄の他のタイプは、また本発明のプロセスの脱水素触媒の成分としてまたは調製において使用することができ、これらの酸化鉄は、例えばU.S.1,327,061、U.S.1,368,748、U.S.2,217,907およびU.S.5,302,180などの特許によって教示されているような任意のPennimanまたは改変されたPenniman法によって作製されたPenniman酸化鉄を含む。これらの特許の全てを参照により本明細書に組み込む。本発明のプロセスにおいて使用に適し得る触媒の例は、U.S.5,689,023に記載されているものであり、この特許は、黄色α−FeOOH中間体の脱水素によりスクラップ鉄から得られる酸化鉄、または言い換えれば、Penniman法によって調製される黄色酸化鉄から得られる酸化鉄から配合される大きい粒子の酸化鉄の使用が好ましいことを開示している。U.S.5,689,023を参照により本明細書に組み込む。
【0029】
本発明のプロセスによって使用することができる脱水素触媒の他の例は、塩化鉄熱分解によって得られる酸化鉄と黄色酸化鉄を組み合わせることにより得られる酸化鉄系脱水素触媒である。このような触媒およびこのような触媒を調製する方法は、米国特許公開US2003/0144566に開示されており、この公報を参照により本明細書に組み込む。この公報において教示されている触媒は、また、’075号特許によって教示される方法によって調製された触媒は、本明細書においてどこにでも述べられているように、必要な低チタン含量を有することを前提に、本発明のプロセスの脱水素触媒として使用することができる。
【0030】
本発明のプロセスの脱水素触媒の調製において、赤色酸化鉄と黄色酸化鉄を一緒に混合する場合は、この2つの任意の適切な部分を一緒に混合して、加熱処理して最終の脱水素触媒または本発明のプロセスを与える混合物を形成することができる。しかし、一般にこの混合物において使用される黄色酸化鉄の割合は、混合物中の酸化鉄の総重量に対して多くとも約50重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲である。
【0031】
本発明のプロセスの酸化鉄系脱水素触媒の促進剤金属は、Sc、Y、La、Mo、W、Ce、Rb、Ca、Mg、V、Cr、Co、Ni、Mn、Cu、Zn、Cd、Al、Sn、Bi、希土類およびこれらのいずれか2種以上からなる群から選択することができる。促進剤金属の中で、Ca、Mg、Mo、W、Ce、La、Cu、Cr、Vおよびこれらの2種以上からなる群から選択されるものが好ましい。Ca、Mg、W、Mo、Ceおよびこれらの2種以上のいずれかの組合せからなる群から選択された促進剤金属が、最も好ましい。
【0032】
酸化鉄である酸化鉄系脱水素触媒の部分は、酸化鉄系脱水素触媒の総重量に対する重量%で、およびFeとして計算して10〜98またはさらに100重量%までの範囲にある。しかし、酸化鉄含量は、40〜90重量%の範囲にあることが好ましく、最も好ましくは60〜85重量%である。
【0033】
カリウム(K)成分は、酸化鉄系脱水素触媒中に、酸化鉄系脱水素触媒の総重量に対する重量%で、およびKOとして計算して5〜40重量%の範囲であってよい。好ましくは、カリウムは、酸化鉄系脱水素触媒中に5〜35重量%、および最も好ましくは10〜30重量%の範囲において存在する。
【0034】
本発明の最終の酸化鉄系脱水素触媒中に含まれる酸化鉄(Fe)に対して、カリウム成分は、Kとして計算して、Fe1モル当たり約200ミリモル(mmole)K〜Fe1モル当たり約1600ミリモルKの範囲にある、酸化鉄に対するカリウム成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒中に存在することができる。好ましくはカリウムと酸化鉄との比は、200ミリモルK/モルFe〜1400ミリモルK/モルFe、および最も好ましくは400ミリモルK/モルFe〜1200ミリモルK/モルFeの範囲にある。
【0035】
酸化鉄系脱水素触媒のアルカリ土類金属成分は、マグネシウム(Mg)成分またはカルシウム(Ca)成分、または両方の成分を含むことができ、それぞれのこのような成分は、単独または組み合わせて酸化鉄系脱水素触媒中に、酸化鉄系脱水素触媒の総重量に対する重量%で、酸化物として計算したアルカリ土類金属で、0.1〜15重量%の範囲において存在することができる。好ましくは、アルカリ土類金属は、酸化鉄系脱水素触媒中に、0.2〜10重量%、および最も好ましくは0.3〜5重量%の範囲において存在する。
【0036】
本発明の最終の酸化鉄系脱水素触媒中に含まれる酸化鉄(Fe)に対して、アルカリ土類金属成分は、元素として計算して、Fe1モル当たり約5ミリモル(mmole)アルカリ土類金属〜Fe1モル当たり約750ミリモルアルカリ土類金属の範囲にある、酸化鉄に対するアルカリ土類金属成分の比を与えるような量において、脱水素触媒中に存在することができる。好ましくはアルカリ土類金属と酸化鉄との比は、10ミリモルアルカリ土類金属/モルFe〜500ミリモルアルカリ土類金属/モルFe、および最も好ましくは15ミリモルアルカリ土類金属/モルFe〜250ミリモルアルカリ土類金属/モルFeの範囲にある。
【0037】
セリウム(Ce)成分は、酸化鉄系脱水素触媒中に1〜25重量%の範囲において存在することができ、この重量パーセントは酸化鉄系脱水素触媒の総重量を基準とし、CeOとして計算する。好ましくはセリウムは、酸化鉄系脱水素触媒中に2〜20重量%、最も好ましくは3〜15重量%の範囲において存在する。
【0038】
本発明の最終の酸化鉄系脱水素触媒中に含まれる酸化鉄(Fe)に対して、セリウム成分は、Ceとして計算して、Fe1モル当たり約14ミリモル(mmole)Ce〜Fe1モル当たり350ミリモルCeの範囲にある、酸化鉄に対するセリウム成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒中に存在することができる。好ましくはセリウムと酸化鉄との比は、28ミリモルCe/モルFe〜280ミリモルCe/モルFe、および最も好ましくは42ミリモルCe/モルFe〜200ミリモルCe/モルFeの範囲にある。
【0039】
モリブデン(Mo)成分は、酸化鉄系脱水素触媒中に0.1〜15重量%の範囲において存在することができ、この重量パーセントは酸化鉄系脱水素触媒の総重量を基準とし、MoOとして計算する。好ましくはモリブデンは、酸化鉄系脱水素触媒中に0.2〜10重量%、最も好ましくは0.3〜5重量%の範囲において存在する。
【0040】
本発明の最終の酸化鉄系脱水素触媒中に含まれる酸化鉄(Fe)に対して、モリブデンまたはタングステン成分は、MoまたはWとして計算して、Fe1モル当たり約2ミリモルのMoまたはWからFe1モル当たり300ミリモルのMoまたはWの範囲にある、酸化鉄に対するモリブデンまたはタングステン成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒中に存在することができる。好ましくはモリブデンと酸化鉄との比は、4ミリモルMoまたはW/モルFe〜200ミリモルMoまたはW/モルFe、および最も好ましくは6ミリモルMoまたはW/モルFe〜100ミリモルMoまたはW/モルFeの範囲にある。
【0041】
本発明の好ましい酸化鉄系脱水素触媒組成物は、低チタン濃度を有し、またはチタンは存在せずまたは実質上存在せず、本明細書に記載されているようにFeとして計算して酸化鉄成分40〜90重量%、およびKOとして計算してカリウム成分5〜40重量%を含む。さらに、酸化鉄系脱水素触媒組成物は、CeOとして計算して、セリウム成分1〜25重量%を含むことができ、さらにMoOとして計算してモリブデン成分0.1〜15重量%を含むことができ、さらに酸化物として計算してアルカリ土類金属成分0.1〜15重量%を含むことができる。
【0042】
他の好ましい酸化鉄系脱水素触媒組成物は、低チタン濃度を有し、またはチタンは存在せずまたは実質上存在せず、本明細書に記載されているようにFeとして計算して酸化鉄成分40〜90重量%、およびKとして計算して、Fe1モル当たり約200ミリモル(mmole)K〜Fe1モル当たり約1600ミリモルKの範囲にある、酸化鉄に対するカリウム成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒組成物中に存在するカリウム成分を含む。さらに、酸化鉄系脱水素触媒組成物は、Ceとして計算して、Fe1モル当たり約14ミリモル(mmole)Ce〜Fe1モル当たり約350ミリモルCeの範囲にある、酸化鉄に対するセリウム成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒組成物中に存在するセリウム成分を含むことができ、およびさらにMoとして計算して、Fe1モル当たり約2ミリモル(mmole)Mo〜Fe1モル当たり約300ミリモルMoの範囲にある、酸化鉄に対するモリブデン成分の比を与えるような量において、酸化鉄系脱水素触媒中に存在するモリブデン成分を含むことができ、およびさらに元素として計算して、Fe1モル当たり約5ミリモル(mmole)アルカリ土類金属〜Fe1モル当たり約750ミリモルアルカリ土類金属の範囲にある、酸化鉄に対するアルカリ土類金属成分の比を与えるような量において存在するアルカリ土類金属成分を含むことができる。
【0043】
とりわけ好ましい酸化鉄系脱水素触媒は、酸化鉄成分、セリウム成分、カリウム成分、およびアルカリ土類金属成分を含み、ここで、このような成分の全ては、酸化鉄系脱水素触媒中に、上記の任意の濃度範囲において存在し、および酸化鉄系脱水素触媒は、上に詳細に記載したように低チタン濃度においてチタンを含む。本発明の他のとりわけ好ましい酸化鉄系脱水素触媒は、低チタン含量を有し、本明細書において記載したように、酸化鉄成分、カリウム成分、セリウム成分、モリブデン成分またはタングステン成分、およびアルカリ土類成分から本質的になる。
【0044】
本発明の酸化鉄系脱水素触媒は、当業者に知られている任意の方法によって調製される。一般に、触媒は、触媒成分を混合物に混合し、この混合物を成形して粒子を形成し、次いで、この粒子をか焼することによって調製される。促進剤金属含有化合物
も、鉄およびカリウム含有化合物と混合することができる。
【0045】
触媒成分の混合物は、押出し品、ペレット、タブレット、球体、小球、サドル、三葉形、四葉形などの粒子に形成することができる。酸化鉄系脱水素触媒を作製する1つの好ましい方法は、触媒成分を水または可塑剤 または両方と一緒に混合し、それから押出し品が形成される押出し可能なペーストを形成することである。押出し品は、次いで、乾燥され、か焼される。か焼は、好ましくは、空気などの酸化雰囲気中で、より高くは1200℃、しかし好ましくは500℃〜1100℃、および最も好ましくは700℃〜1050℃の温度において行われる。
【0046】
本発明の低チタン酸化鉄系脱水素触媒は、脱水素可能な炭化水素の脱水素において使用され、さらにこれらは、高チタン含量を有する脱水素触媒(そのような低安定性脱水素触媒を本発明の触媒で置換することによる本発明の触媒に比べて、好ましくない安定性特性もたらす。)が含まれる脱水素反応器を包含する既存の脱水素反応器システムの操作を改良するために使用される。脱水素方法において、本発明の触媒を脱水素反応条件下で、脱水素供給材料と接触させて、これにより脱水素反応生成物を提供する。より詳しくは、脱水素供給材料は、これが低蒸気対油プロセス条件下で脱水素触媒床と接触させられる脱水素反応器中に導入される。
【0047】
脱水素反応器または脱水素反応器システムは、2つ以上の脱水素反応器または反応ゾーンを含むことができることが、認識される。複数の脱水素反応器が使用される場合には、これらは直列または並列において操作することができ、または互いに独立して、または同一または異なるプロセス条件下で操作することができる。
【0048】
脱水素供給材料は、任意の好適な供給材料であってよく、より詳しくは、脱水素可能な炭化水素を含むことができる。脱水素可能な炭化水素の例は、アルキル置換されたベンゼンおよびアルキル置換されたナフタレン、イソアミレンなアルキル芳香族を含み、これらは、イソプレンおよびブテンに脱水素することができ、ブタジエンに脱水素することができる。好ましい脱水素供給材料は、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルエチルベンゼン、およびジエチルベンゼンからなる化合物の群から好ましくは選択された1つのアルキル芳香族化合物を含む。最も好ましい脱水素供給材料は、主にエチルベンゼンを含むエチルベンゼン原料である。エチルベンゼンは、スチレンに脱水素される。また、脱水素供給材料は、希釈剤を含む他の成分も含むことができる。エチルベンゼンが、脱水素されて、スチレンを形成するべき供給材料成分である場合には、供給材料希釈剤として蒸気を使用することが通常である。
【0049】
脱水素条件は、約500℃〜約1000℃、好ましくは525℃〜750℃、およびも好ましくは550℃〜700℃の範囲にある脱水素反応器入り口温度を含むことができる。スチレンへのエチルベンゼンの脱水素において、反応は吸熱的であることが認められる。このような脱水素反応を実施する場合、等温適切なにまたは断熱的に行うことができる。脱水素反応を断熱的に実施する場合には、脱水素反応器入り口および脱水素反応器出口間の脱水素触媒床全体の温度は、150℃も低下することができ、しかし、さらに一般には、温度は10℃〜120℃低下することができる。
【0050】
反応圧力は、比較的低く、真空圧から、高くは約200kPa(29psi)の範囲であってよい。一般に、反応圧力は、20kPa(2.9psia)〜200kPa(29psi)の範囲にある。スチレンへのエチルベンゼンの脱水素反応の反応機作によると、反応圧力は、商業的に可能な限り低いことが一般に好ましい。
【0051】
液体毎時空間速度(LHSV)は、約0.01hr−1〜約10hr−1、および好ましくは0.1hr−1〜2hr−1の範囲にあってよい。本明細書では、用語「液体毎時空間速度」は、触媒床の体積、または2種以上の触媒床がある場合には触媒床の総体積で割った、脱水素供給材料、例えばエチルベンゼンの標準状態(すなわち、0℃および1絶対バール)において求められた液体体積流速として定義される。
【0052】
以下の実施例を本発明を例示するために示すが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0053】
この実施例1は、チタンの種々の濃度を有する、いくつかの酸化鉄系脱水素触媒の調製を記載する。これらの触媒は、実施例2において示すように、これらの性能および安定性を試験した。
【0054】
以下の触媒の調製において使用した酸化鉄Iは、FeClを含む廃棄物酸洗い廃液を焼くことによって調製される再生物酸化鉄である。得られた酸化鉄(Fe)は、以下の表1に示された組成および特性を有した。
【0055】
【表1】

【0056】
以下に、触媒の調製において使用された酸化鉄IIは、チタンをFeの調製の間に添加した以外は、酸化鉄Iを調製するために使用されたのと同一の方法によって作製された。チタンをチタンラクテート塩(Dupont Tyzor(登録商標)LA、8.2%Tiを含む)として、FeClを含む廃棄物酸洗い廃液に添加し、この混合物を焼いて、酸化鉄Iの調製において焼いた廃棄物酸洗い廃液と同一の方法において、酸化鉄IIを生成した。この酸化鉄IIは、TiO0.053%を含むが、その他は上の表1に示されているのと同一の組成物および特性を有した。
【0057】
酸化鉄IIIは、しばしば水和酸化鉄またはα−FeOOHと呼ばれる黄色酸化鉄であった。黄色酸化鉄の計算されたFe含量は、86%であり、およびBET表面積は、9.0〜10.5m/gの範囲であった。酸化鉄IIIのチタン含量は、0.004重量%(40ppmw)であった。
【0058】
触媒Aを、以下の成分を混合することにより作製されたペーストを形成することによってまず調製した:酸化鉄I、酸化鉄III、炭酸カリウム、炭酸セリウム、三酸化モリブデン、炭酸カルシウム、および水(乾燥混合物の総重量に対して約8重量%)。次いで、このペーストを押し出して、ペレットを形成するために長さ6mmに切断される直径3mmの円筒を形成した。これらのペレットを、次いで、空気中において170℃で15分間乾燥させ、引き続き空気中において825℃で1時間か焼した。か焼後に、触媒Aの組成物は、Feとして計算した酸化鉄の1モル当たり名目上約カリウム0.516モル、セリウム0.066モル、モリブデン約0.022モル、カルシウム0.027モルを含んでいた。金属酸化物で表すと、最終の触媒は、Fe79.8%、KO12.2%、CeO5.7%、MoO1.6%、およびCaO0.5%を含んでいた。Fe80%は、酸化鉄Iとして添加されたFe72.6%および酸化鉄IIIとして添加されたFe7.2%を含む。添加された成分に加えて、触媒は、チタン約30ppmを含んでいた。
【0059】
触媒Bは、酸化鉄Iの代わりに酸化鉄IIを使用した以外は触媒Aと同様な方法において調製した。触媒Aにおける成分に加えて、触媒Bは総計約250ppmのチタンを含んでいた。
【0060】
触媒Cは、酸化鉄Iの異なるバッチを使用した以外は、触媒Aと同様な方法において調製した。触媒Aにおける成分に加えて、触媒Cは総計約40ppmのチタンを含んでいた。
【0061】
触媒Dは、Tyzor(登録商標)LA(Dupont Ti8.2%を含むチタンラクテート溶液)を他の触媒成分と共に添加した以外は、触媒Cと同様な方法において調製した。触媒Cにおける成分に加えて、触媒Dは総計約250ppmのチタンを含んでいた。
【0062】
触媒Eは、二酸化チタン(TiO2)を他の触媒成分と共に添加した以外は、触媒Cと同様な方法において調製した。触媒Cにおける成分に加えて、触媒Eは総計約250ppmのチタンを含んでいた。
【実施例2】
【0063】
この実施例2は、実施例1において記載された触媒の性能を試験するための手順を記載し、このような試験の結果を示す。
【0064】
触媒AからBの試料を、連続操作用に設計された反応器中で、高蒸気対油比において等温的試験条件下にエチルベンゼンからスチレンを脱水素製造する際の性能に対して試験した。3種の触媒試料のそれぞれの試料を以下の試験条件下で個々に試験した:絶対圧力76kPa、蒸気対エチルベンゼンモル比10、LHSV0.65l/l.h。それぞれの試験操作において、触媒が活性化され、慣らし運転されるように反応器温度を最初の7〜10日間、600℃に設定した。その後に、それぞれの試験操作においてエチルベンゼンのモル転化率70%が実現されるように反応器温度を毎日調整した。
【0065】
図1は、触媒を高蒸気対油プロセス条件下で使用した場合、触媒のそれぞれに対して、T(70)温度によって表される活性を、使用における時間の関数として比較したプロットを示す。低チタン濃度を含む触媒AおよびCが、より高いチタン濃度を含む触媒B、DおよびEによって示される活性よりも、低い初期活性すなわちより高いT(70)温度を示したことが、このプロットから観察することができる。しかし、約10日後には触媒AおよびCは、安定した性能、および活性低下を示し続けた触媒B、DおよびEよりも高い活性を示した。
【0066】
図1に示したように、圧力を76kPaから40kPaに低下させ、蒸気対エチルベンゼン比を10から5モルに低下させることによって反応条件を変化させた。初期の4日後に、これらの条件において反応器温度を、それぞれの試験操作においてエチルベンゼンの70%モル転化率が実現されるように調整した。図2は、性能における低下および操作不能を示し続ける触媒B、DおよびEと比較して、平衡後に触媒AおよびCが改良された活性を示すことを示す。
【0067】
図3は、触媒を高蒸気対油プロセス条件下で使用した場合、触媒のそれぞれに対して、S(70)選択性値によって表される選択性を、使用における時間の関数として比較したプロットを示す。このプロットから観察することができるように、低チタン濃度を含む触媒は、高チタン濃度を含む触媒によって示される選択性よりも、同等または低下した選択性、すなわちより低いS(70)選択性値を示した。
【0068】
それに反して、図4に示したプロットは、低蒸気対油プロセス条件下で使用された触媒の選択性を、使用における時間の関数として比較する。示されたデータは、予想に反して、触媒の相対的選択性が、触媒を高蒸気対油プロセス条件下で使用する場合の触媒の相対的選択性と比較して、逆転していることを示す。低蒸気対油条件下で使用した場合には、チタンの低い濃度を含む触媒は、チタンの高い濃度を含む触媒よりも、実際に高い選択性を示す。
【0069】
図に示されたデータは、触媒を高蒸気対油プロセス条件下で使用した場合、チタンのより高い濃度を有する酸化鉄系触媒は、より低いチタン濃度を有する酸化鉄系触媒によって示されるものよりも良好な初期活性および選択性を示し得ることを示す。しかし、他方、データはまた、触媒を低蒸気対油プロセス条件下で使用した場合、チタンのより低いチタン濃度を有する触媒は、より高いチタン濃度を有する触媒よりも実質上良好に働くことを示す。特に、低チタン濃度触媒は、低蒸気対油プロセス条件下で改良された活性およびより活性低下の少ないより安定な操作を示す。これらの特有の特性は、低蒸気対油プロセス条件下で操作される脱水素プロセスにおいて使用される場合、低いチタン含量酸化鉄系脱水素触媒は、本発明の改良された脱水素プロセスを提供するために、またはさもなければ脱水素プロセスの改良された操作を提供するために活用することができることを示す。
【0070】
脱水素プロセスの改良された操作は、高活性および高選択性の望ましい特性を有する触媒の使用からだけでなく、また低蒸気対油プロセス条件下の脱水素プロセスの操作から生じる。低蒸気対油プロセス条件において脱水素プロセスを満足に操作する能力は、上記のことを含む多くの利点を提供する。
【0071】
本発明の合理的な変形形態、変更態様および翻案は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載された開示および添付の特許請求の範囲内で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】高チタン含量を有するいくつか、および低チタン含量を有する他のものを含む、異なるチタン濃度を有する酸化鉄系脱水素触媒に対して、蒸気対炭化水素プロセス条件の10:1モル比において、時間の関数として脱水素活性(すなわち、T(70))を比較するプロットを示す図である。
【図2】蒸気対炭化水素モル比5:1であった以外は、図1に示されているのと同一の触媒に対して、時間の関数として脱水素活性を比較するプロットを示す図である。
【図3】同一触媒に対して、および図1において示されているのと同一の蒸気対炭化水素プロセス条件のモル比10:1の下で、時間の関数として選択性(すなわち、S(70))を比較するプロットを示す図である。
【図4】蒸気対炭化水素モル比5:1であった以外は、図1に示されているのと同一の触媒に対して、時間の関数として選択性を比較するプロットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルベンゼン供給材料を脱水素条件下で触媒と接触させてスチレン生成物を生じるタイプのスチレンを製造する方法にあって、改良が:
前記触媒として、低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒組成物を利用するステップ;および
前記方法を低蒸気対油比の操作条件下で操作するステップを含む方法。
【請求項2】
前記低チタン含量が、前記酸化鉄系脱水素触媒組成物中で1000ppmw未満であるチタン濃度を与えるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低蒸気対油比の操作条件が、前記エチルベンゼン供給材料および蒸気のある量を前記触媒と接触させることを含み、蒸気の前記量が9:1を超えない蒸気対油モル比を与えるようなものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記チタン濃度が500ppmw未満であり、および前記蒸気対油モル比が8:1未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脱水素条件下で、供給材料を、低チタン含量を有する酸化鉄系脱水素触媒と接触させるステップを含み、前記供給材料は、エチルベンゼンおよび蒸気を含み、および前記蒸気は、前記供給材料中で9:1未満の蒸気対油モル比を与えるような量において前記供給材料中に存在する脱水素方法。
【請求項6】
前記低チタン含量が、前記酸化鉄系脱水素触媒中に、1000ppmw未満であるチタン濃度を与えるようなものである、請求項5に記載の脱水素方法。
【請求項7】
前記蒸気対油モル比が8:1未満であり、および前記チタン濃度が300ppmw未満である、請求項6に記載の脱水素方法。
【請求項8】
高チタン含量を有する第1の触媒を含む反応器を包含するスチレンプロセスユニットの操作を改良する方法であり、
前記反応器から前記第1の触媒を除去し、これを低チタン含量を有する第2の触媒により置換するステップ;および
その後に、前記スチレンプロセスユニットを低蒸気対油比条件において操作するステップ
を含む、方法。
【請求項9】
前記第1の触媒が酸化鉄系脱水素触媒であり、および前記高チタン含量が1000ppmwを超える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の触媒が酸化鉄系脱水素触媒であり、および前記低チタン含量が1000ppmw未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記低蒸気対油比条件が、脱水素条件下でエチルベンゼンおよび蒸気を含むエチルベンゼン供給材料を前記第2の触媒と接触させるステップを含み、前記エチルベンゼン供給材料は、前記エチルベンゼン供給材料中で9:1未満の蒸気対油モル比を与えるような蒸気の量を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記低チタン含量が、500ppmw未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸気対油モル比が、8:1未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酸化鉄成分;
セリウム成分;
カリウム成分;
モリブデン成分;
アルカリ土類金属成分;および
1000ppmw未満のチタン濃度におけるチタン
を含む、低蒸気対油比のプロセス条件下で、スチレンを作製するためのエチルベンゼンの脱水素における使用に適する脱水素触媒。
【請求項15】
前記酸化鉄成分が、Feとして計算して、40から90重量%の範囲において存在し;前記セリウム成分が、Ceとして計算して、1から25重量%の範囲において存在し;前記カリウム成分が、KOとして計算して、5から40重量%の範囲において存在し;前記モリブデン成分が、MoOとして計算して、0.1から15重量%の範囲において存在し;および前記アルカリ土類金属成分が、酸化物として計算して、0.1から15重量%の範囲において存在する、請求項14に記載の脱水素触媒。
【請求項16】
前記チタン濃度が、500ppmw未満である、請求項15に記載の脱水素触媒。
【請求項17】
前記チタン濃度が、300ppmw未満である、請求項16に記載の脱水素触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−520685(P2008−520685A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543204(P2007−543204)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/041570
【国際公開番号】WO2006/055651
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】