説明

低酸素気体発生装置及び低酸素室並びに低酸素マスク

【課題】低酸素室を構成する際に、酸素濃度の低減を合理的に行う。
【解決手段】本発明に係る低酸素気体の発生装置は、圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置2と、酸素分離装置2に空気を供給するコンプレッサー3とを有し、酸素分離装置2から排気された低濃度酸素気体を室1又は低酸素マスク8に供給し得るように構成する。また低酸素室は、酸素分離装置2と、酸素分離装置2に空気を供給するコンプレッサー3と、所定の容積を持ち且つ外部との通気孔1aを有し酸素分離装置2から排気された低濃度酸素気体が供給される室1とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全に低濃度酸素の雰囲気をつくることができる低酸素気体発生装置と、この低酸素気体発生装置を利用した低酸素室、低酸素マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高地トレーニング用低酸素室や低酸素雰囲気での生活を実現するための低酸素室が注目されている。低酸素室となる部屋を低酸素雰囲気にする場合、この部屋に空気から窒素を分離する窒素ガス発生装置から発生した純度が99%〜99.99%の窒素ガスを供給しつつ該部屋から窒素の供給量に応じた空気を排気することで、酸素濃度を低下させるのが一般的である。
【0003】
例えば、窒素ガス発生装置によって空気から分離した窒素ガスを部屋に供給して低酸素室とする場合、窒素ガス発生装置の窒素ガス供給口と部屋とをマスフローコントローラを介して接続しておき、部屋の容積と目的の酸素濃度から該部屋に供給すべき窒素ガスの量を計算し、この計算結果に基づいてマスフローコントローラ及び窒素ガス発生装置を制御している。また、低酸素室の酸素濃度を通常の空気と等しくなるように復帰させる場合、新鮮な空気を部屋に供給する方法を採用するのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低酸素室に於ける酸素濃度を低減させる際に、窒素ガス発生装置によって分離した窒素ガスを供給する方法では、該窒素ガス発生装置が大型化してしまうという問題や、システムのコストが高くなるという問題がある。特に、部屋の内部の酸素濃度が急激に低下しては好ましくないため、装置を稼働させる際の制御が容易ではないという問題が生じる虞がある。
【0005】
更に、低酸素室の酸素濃度を空気と同じ濃度に復帰させる際の時間が掛かるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
予め設定された部屋を低酸素室にする場合、該部屋に窒素ガス発生装置を接続し、この窒素ガス発生装置から発生した高濃度窒素ガス気体を供給すると共に排気して酸素濃度を低減させる方法と、該部屋に圧力変動ガス分離方法(PSA)を採用した酸素発生装置を接続し、該酸素発生装置で高濃度酸素気体を分離した後排気される低濃度酸素気体を供給すると共に排気して酸素濃度を低減させる方法がある。両者を、例えば、縦横高さが8m×8m×3mの部屋を想定し、この部屋を酸素濃度21%から18%の低酸素室にする場合について比較する。
【0007】
上記部屋の容積は192立方メートル(192000リットル(L))であり、標準状態(窒素78%、酸素21%)に於ける窒素ガス量は
192000×0.78(%)=149760(L)
また酸素ガス量は
192000×0.21(%)=40320(L)である。
【0008】
また窒素ガスの供給量、酸素ガスの除去量を夫々毎分4Lと仮定する。
【0009】
部屋に窒素ガスを供給して該部屋の酸素濃度を21%から18%に低減する場合、窒素ガスの必要供給量は、約38400Lであり、毎分4Lで供給した場合、9600分であり、160時間が必要となる。
【0010】
同様に部屋から酸素を除去して酸素濃度を18%とする場合、酸素発生装置の排気に於ける酸素濃度が15%と仮定すると、酸素発生装置によって除去すべき酸素量は7160Lであり、毎分4Lで除去した場合、1789分であり、29.8時間が必要となる。但し、部屋から7160Lの酸素が除去された場合、この容積分の新鮮な空気が入り込むこととなり、流入した空気の酸素も除去する必要が生じることから、実際には約40時間が必要である。
【0011】
上記の如く、部屋に窒素ガスを供給した場合と、部屋の酸素を除去した場合とを比較した場合、酸素を除去する方が1/4の時間ですみ、効率的であるといえる。従って、本発明に係る低酸素気体発生装置は、圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、を有し、前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体を所定の空間又は部材に供給し得るように構成したものである。
【0012】
また本発明に掛かる低酸素室は、圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、所定の容積を持ち且つ外部との通気孔を有し前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体が供給される空間とを有するものである。
【0013】
上記低酸素室を移動可能な車両に搭載することが好ましい。
【0014】
また上記何れかの低酸素室に於いて、空間が低酸素雰囲気で運動機能を向上させるトレーニングルーム又は動物を飼育し或いは運搬するものであることが好ましい。
【0015】
また上記何れかの低酸素室に於いて、酸素分離装置から分離された高濃度酸素気体を貯蔵する貯蔵容器を備え、前記貯蔵容器と前記空間とを弁機構を介してを接続することが好ましい。
【0016】
更に、本発明に係る低酸素マスクは、圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置(以下、単に「酸素分離装置」という)と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、人体の顔面に装着され前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体が供給されるマスクとを有するものである。
【発明の効果】
【0017】
上記の如く構成された本発明の低酸素気体発生装置では、圧力変動ガス分離方法(PSA)を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置(以下、単に「酸素分離装置」という)によって高濃度酸素気体を分離した残気として排出される低濃度酸素気体を利用して低酸素雰囲気を構成するので、低濃度酸素気体を高い流量で確保することができる。
【0018】
本発明に係る低酸素室は、該室にある空気を酸素分離装置に供給して該酸素分離装置で酸素を分離し、分離後の低濃度酸素気体を室に戻して低酸素化することによって、短時間での低酸素化を実現することができる。即ち、前述したように、室の中に高濃度の窒素ガスを供給して排気しつつ酸素濃度を低減させる従来の方法と比較して、約1/4〜1/5程度の時間で低酸素化することができる。
【0019】
上記低酸素室を移動可能な車両に搭載した場合には、所望の場所に移動することができ、移動した位置で低酸素雰囲気を実現することができる。
【0020】
上記低酸素室をトレーニングルームや動物の飼育室或いは動物の運搬車とした場合には室を短時間で低酸素化することができるので、スポーツジムや体育館等で効率良く低酸素下に於ける運動効果や、ダイエット効果を発揮させることができる。
【0021】
また酸素分離装置から分離された高濃度酸素気体を貯蔵容器に貯蔵した場合には、低酸素化された低酸素室を通常の酸素濃度を持った室に復帰させる際に、貯蔵容器に貯蔵されている高濃度酸素を室に供給することで、短時間で通常の空気雰囲気に戻すことができる。
【0022】
また本発明に係る低酸素マスクでは、酸素分離装置に於ける高濃度酸素を分離した後の排気を低濃度酸素気体として供給するので、充分な供給量を確保することができる。また、空気に窒素ガスを供給して低酸素化した気体を供給するものではないので、急激に酸素濃度が低下するようなこともなく、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る低酸素気体発生装置、低酸素室及び低酸素マスクの好ましい実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明の低酸素気体発生装置、低酸素室及び低酸素マスクを実現した装置の模式図である。図2は低酸素マスクの構成を説明する図である。図3は低酸素室を搭載した車両の構成を説明する図である。
【実施例1】
【0024】
先ず、図1により、第1実施例に係る低酸素気体発生装置及び低酸素室並びに低酸素マスクの構成について説明する。
【0025】
図に於いて、1は室であり、低酸素室としての目的に応じた床面積と高さを有している。例えば、室1を設置型のトレーニングルームとして利用するような場合には、縦8m、横8m(床面積が64平方メートル)、高さ3m(容積192立方メートル)程度の寸法で構成することが可能であり、また室1を後述する車両に搭載したトレーニングルームとして利用するような場合には縦横高さを5m×3m×3m(容積45立方メートル)程度とし、更に、室1を競争馬の馬運車や小型動物の飼育室として利用するような場合には1.5m×2m×2m(容積6立方メートル)程度とすることが可能である。このように、室1の大きさを如何なるものとするかは限定するものではなく、低酸素室としての目的に応じて適宜設定し得るものである。
【0026】
また室1には、該室内外を通気する通気口1aが設けられており、該通気口1aには図示しない開閉弁が配置され、該開閉弁の操作に伴って室1の内外の通気を可能とし、或いは遮断し得るように構成されている。更に、室1には図示しない出入口が設けられており、必要に応じて内部を監視する監視窓も設けられている。
【0027】
酸素分離装置2は、コンプレッサー3から供給された空気から酸素を分離する機能を有するものであり、高濃度酸素気体を分離して分離供給口2aから供給し、酸素が分離されて低濃度化した低濃度酸素気体を排気口2bから排気し得るように構成されている。
【0028】
本発明では、酸素分離装置2は圧力変動ガス分離方法(PSA)を採用して構成されている。この酸素分離装置2は分離用高性能合成ゼオライトを利用しており、収率は約8.3%に達し、空気を毎分180L供給したとき、この空気から毎分約14Lの低露点の高純度酸素(約94%)を発生させ、同時に毎分166Lの余剰空気を排気する。この余剰空気は、元の空気から酸素が分離されたものであるが、無酸素の状態ではなく、低純度酸素(約13%)の低濃度酸素気体である。
【0029】
コンプレッサー3は、吸引した空気を圧縮して酸素分離装置2に供給する機能を有するものであり、この機能を有するものであれば用いることが可能である。コンプレッサー3の吐出口3aは酸素分離装置2の被供給口2cに接続され、吸引した空気を予め設定された圧力に圧縮して吐出し得るように構成されている。またコンプレッサー3の吐出量、吐出圧は、酸素分離装置2に於ける高濃度酸素気体に於ける酸素純度や流量等の条件に応じて設定し得るように構成されている。
【0030】
コンプレッサー3が空気を何れの部位から吸引するかは限定するものではなく、該コンプレッサー3の吸引口3bには三方弁4が設けられており、該三方弁の吸引口の一つが室1に接続され、他の一つが大気中に開放し得るように構成されている。従って、コンプレッサー3は、三方弁4の操作に伴って、室1から該室1に存在する空気を吸引することが可能であり、また大気から空気を吸引することも可能となる。
【0031】
酸素分離装置2の排気口2bには、3本の配管5a,5b,5cからなる配管が接続されており、これらの配管5a〜5cの接続部位に三方弁6が設けられている。この三方弁6を介して一方の配管5bが室1と接続されており、他方の配管5cが逆止弁7を介して1又は複数の低酸素マスク8と接続されている。
【0032】
従って、室1を低酸素室とする際には、該室1から空気を吸引して酸素を分離した後の空気を戻すようにすることで、短時間に室1の酸素濃度を低下させることが可能である。また後述する低酸素マスク5に低濃度酸素気体を供給する際には、大気中から空気を吸引することで、室1内に空気の流れを生じさせることなく、低酸素マスク8を利用することが可能となる。
【0033】
低酸素マスク8は、低酸素下に於けるトレーニングを行う人が顔面に装着して低濃度酸素気体を吸引するためのものであり、この機能を有するものであれば構造を限定することなく利用することが可能である。また、低酸素マスク8の数も限定するものではなく、酸素分離装置2の排気に於ける酸素濃度や排気量との関係で適宜設定することが好ましい。
【0034】
酸素分離装置2の供給口2aには逆止弁9を介して貯蔵容器10が接続されている。また貯蔵容器10は弁機構11,配管12を介して室1と接続されている。貯蔵容器10は、酸素分離装置2に於いて分離された高濃度酸素気体を貯蔵しておく機能を有するものであり、室1を低酸素状態から通常の大気状態とする必要が生じたとき、室1に対し高濃度酸素気体を供給して該室1を短時間で通常の状態に復帰させることが可能である。貯蔵容器10はこのような機能を発揮し得るものであれば良く、構造を限定するものではない。このような機能を発揮し得る容器としては、作動圧力を低く設定したアキュムレータ、水封式ガスタンク等があり、これらを選択的に利用することが可能である。
【0035】
上記の如く構成された低酸素の発生装置及び低酸素室の操作について説明する。先ず、コンプレッサー3から酸素分離装置2に対する空気の供給量(吐出圧)を設定し、三方弁4を操作して、空気を室1から吸引するか大気から吸引するかを設定すると共に三方弁6を操作して酸素分離装置2から排気された低濃度酸素気体を室1に供給するか、低酸素マスク8に供給するかを設定する。
【0036】
これらの設定が終了した後、コンプレッサー3及び酸素分離装置2を稼働させると、酸素分離装置2から分離された高濃度酸素気体は供給口2aから貯蔵容器10に供給されて貯蔵され、余剰空気として排気された低濃度酸素気体は、排気口2bから三方弁6に到達して、予め設定された室1或いは低酸素マスク8に導かれ、低濃度酸素気体を供給することが可能である。
【0037】
特に、室1を低酸素室とする場合、三方弁4を操作して室1とコンプレッサー3を接続すると共に三方弁6を操作して酸素分離装置2の排気口2bと室1とを接続し、同時に室1に設けた通気口1aを開放する。この状態でコンプレッサー3、酸素分離装置2を稼働すると、室1に存在する空気がコンプレッサー3によって吸引され、これに伴って通気口1aから外気が室内に流入する。
【0038】
また酸素分離装置2からの排気が室1に供給され、該室1内を低濃度酸素雰囲気とする。例えば、酸素分離装置2の能力が、毎分180Lの空気から毎分14Lの高濃度酸素気体(約94%)を分離し、毎分166Lの低濃度酸素気体(13%)を排気し得るものである場合、1時間当たり9960Lの低濃度酸素気体が発生し、室1の容積が192立方メートルの場合で約20時間、室1の容積が45立方メートルの場合で約5時間、室1の容積が6立方メートルの場合で約50分程度で室1を酸素濃度が13%の低酸素室とすることが可能である。
【0039】
前述した酸素濃度が13%の空気は、標高に換算すると3000m〜4000mになる。このため、より標高の低い位置に於ける酸素濃度(酸素濃度を高くする)を実現するには、酸素分離装置2に対する空気の供給量を増加させることで良く、この場合、室1をより短時間で低酸素化することが可能である。
【0040】
更に、室1内の酸素濃度を前述の濃度(13%)より低く設定する場合であって、酸素分離装置2の収率を超えるような場合には、室1内を一度目的の酸素濃度よりも高い状態とし、更に、該室1内の低濃度酸素気体をコンプレッサー3で吸引して酸素分離装置2に供給し、該酸素分離装置2で再度酸素を分離することで、より酸素濃度の低い低濃度酸素気体をつくることが可能である。
【0041】
そして、室1の内部を通常の大気と同じ酸素濃度に復帰させる場合には、弁機構11を開放して貯蔵容器1に貯蔵されている高濃度酸素気体を室1に流通させることで、短時間で室1を通常の酸素濃度を持った室に復帰させることが可能である。
【0042】
上記の如く構成された低酸素室では、人が低酸素下の環境でトレーニングを行うことが可能であり、また低酸素下でのダイエットを行うことも可能である。また室1の内部で動物を飼育した場合には、呼吸系の強い動物を飼育することが可能となる。このように、室1を如何なる用途に用いるかは限定するものではなく、多様な利用をはかることが可能である。
【0043】
尚、室1の内部で人がトレーニングを行ったとき、該室1には炭酸ガスが蓄積される。このため、室1に炭酸ガスの除去装置を設けて稼働を制御したり、三方弁4を制御して室1内の酸素濃度を予め設定された値に維持し得るようにすることが好ましい。更に、酸素分離装置2から室1に低濃度酸素気体を供給する系に加湿装置を加えることも好ましい。
【実施例2】
【0044】
次に、特に低酸素マスク8を対象とした場合の構成について図を用いて説明する。図2は低酸素マスクの構成を説明する模式図である。尚、図に於いて前述の実施例と同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図に於いて、21はチャンバーであり、前述の室1よりも容積の小さい空間として構成されている。このチャンバー21には、大気中に開放し又は前述した室1と接続された通気口21aが設けられており、該通気口21aを介してチャンバー21に外気、或いは予め設定された低濃度酸素気体が流入し得るように構成されている。
【0046】
またチャンバー21には複数の低酸素マスク8が繋ぎ込まれた配管22が接続されており、低酸素マスク8を装着した人が低酸素下のトレーニングを行えるように構成されている。更に、チャンバー21及び酸素分離装置2にはマスフローコントローラ23が接続され、該マスフローコントローラ23にコンピュータ24が接続されている。
【0047】
上記の如く構成された低酸素マスク8では、個々の低酸素マスク8を人が装着して低濃度酸素気体を吸入しながら合理的なトレーニングを行うことが可能である。即ち、予めコンピュータ24を操作してマスフローコントローラ23に対して、低酸素マスク8の稼働数に対応させて、或いは予め設定されたトレーニングメニューに従って、低濃度酸素気体の質量流量を指定しておくと、低酸素マスク8の利用に伴ってチャンバー21から配管22を通って指定された流量の低濃度酸素気体を流すことが可能である。
【0048】
本実施例の低酸素マスク8では、複数の低酸素マスク8に同じ酸素濃度の気体が供給されるが、個々の低酸素マスク8に異なる酸素濃度の気体を供給することが好ましい場合がある。この場合、配管22と個々の低酸素マスク8とを接続する系に流量調整機能を持った部材を介して貯蔵容器10を接続し、前記流量調整機能を持った部材を操作して酸素分離装置2から供給された低濃度酸素気体に対し、貯蔵容器10から高濃度酸素気体を所望量混合させることによって、個々の低酸素マスク8に所望の酸素濃度を持った気体を供給することが可能である。
【実施例3】
【0049】
次に、第1実施例に於ける室1を移動可能な車両に搭載した実施例について図を用いて説明する。図3はトラックの荷台に室1を搭載した状態を説明する平面図である。
【0050】
図に於いて、31は荷台32を有するトラックであり、運転席33に搭乗した運転手が操縦することで、所望の場所に移動し得るように構成されている。
【0051】
荷台32には、室1が搭載されると共に、コンプレッサー3、酸素分離装置2が搭載され、この酸素分離装置2の上部又は下部に貯蔵容器10が配置され、これらが夫々第1実施例と同様の配管によって接続されている。またコンプレッサー3の上部又は下部には、コンプレッサー3及び酸素分離装置2の電源となる発電機34が搭載されている。しかし、発電機34に代えて外部電源とすることも可能である。
【0052】
上記の如く構成された低酸素室では、室1の低酸素化を実現するためのコンプレッサー3と酸素分離装置2及び貯蔵容器10が搭載されているため、トラック31を所望の場所に移動させ、該目的地に於いて発電機34を稼働させて或いは外部電源からの電源によって、コンプレッサー3、酸素分離装置2を稼働することで、低酸素室を構成することが可能である。
【0053】
本実施例では、トラック31が移動し得る如何なる場所でも低酸素室を構成することが可能である。従って、地方の体育館や合宿所に於いて低酸素下のトレーニングを行うことが可能となる。また室1を人のトレーニングルームとせずに、動物のための空間とした場合には、例えば競争馬を運搬する際に低酸素下のトレーニングを実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の低酸素室や低酸素マスクでは、酸素分離装置によって高濃度酸素気体を分離した後の余剰空気を利用するので、供給し得る量が多く、限られた空間を低酸素室とする際の時間を短縮することができる。このため、低酸素下のトレーニングやダイエット、動物の飼育等を簡単に行うことが可能となり有利である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施例に係る低酸素気体発生装置及び低酸素並びに低酸素マスクの構成を説明する図である。
【図2】低酸素マスクの構成を説明する模式図である。
【図3】トラックの荷台に室1を搭載した状態を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 室
1a 通気口
2 酸素分離装置
2a 分離供給口
2b 排気口
2c 被供給口
3 コンプレッサー
3a 吐出口
3b 吸引口
4,6 三方弁
5a〜5c 配管
7,9 逆止弁
8 低酸素マスク
10 貯蔵容器
11 弁機構
12 配管
21 チャンバー
21a 通気口
22 配管
23 マスフローコントローラ
24 コンピュータ
31 トラック
32 荷台
33 運転席
34 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、を有し、前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体を所定の空間又は部材に供給し得るように構成したことを特徴とする低酸素気体の発生装置。
【請求項2】
圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、所定の容積を持ち且つ外部との通気孔を有し前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体が供給される空間と、を有することを特徴とする低酸素室。
【請求項3】
請求項2に記載した低酸素室を移動可能な車両に搭載したことを特徴とする低酸素室。
【請求項4】
請求項2又は3に記載した低酸素室が低酸素雰囲気で運動機能を向上させるトレーニングルーム又は動物を飼育し或いは運搬するものであることを特徴とする低酸素室。
【請求項5】
前記酸素分離装置から分離された高濃度酸素気体を貯蔵する貯蔵容器を備え、前記貯蔵容器と前記空間とを弁機構を介してを接続したことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載した低酸素室。
【請求項6】
圧力変動ガス分離法を採用して空気から高濃度酸素気体を分離すると共に低濃度酸素気体を排気する酸素分離装置と、前記酸素分離装置に空気を供給する空気圧縮装置と、人体の顔面に装着され前記酸素分離装置から排気された低濃度酸素気体が供給されるマスクと、を有することを特徴とする低酸素マスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−328931(P2006−328931A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220207(P2005−220207)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(594033813)株式会社大成化研 (33)
【出願人】(592091884)
【Fターム(参考)】