説明

住宅及びその温度調整方法

【課題】自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる住宅及びその温度調整方法を提供する。
【解決手段】バルコニー12の立上り部14と上階のバルコニー16との間に二重サッシ部材18,20が設けられた住宅10において、前記二重サッシ部材18,20が、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材18と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材20から構成されていることを特徴とする。
【効果】バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に二重サッシ部材が設けられた住宅において、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、季節や昼夜における住宅の温度変化による環境変化に自然を利用して対処することができる、住宅及びその温度調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の住宅においては、夏や冬等における温度変化による環境変化に対処する方法としては、いわゆるエアコン(空調装置)、扇風機、暖房器具、或は床暖房システムなどを用いていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記エアコン(空調装置)、扇風機、暖房器具、或は床暖房システムなどを用いて、自然の変化による環境変化に対処する方法にあっては、コストばかりがいたずらにかかり、自然の変化に対しては自然の力を利用して対処するという視点に欠けていたため、まだまだ自然の力を有効に利用しきれていないという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる住宅及びその温度調整方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による住宅は、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に二重サッシ部材が設けられた住宅において、
前記二重サッシ部材が、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材から構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明による住宅は、
前記第1、第2サッシ部材のそれぞれが複数のサッシ部材から構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による住宅は、
前記第2サッシ部材に換気用小窓が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅は、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に交換可能な二種類のサッシ部材が交互に設けられ、
前記二種類のサッシ部材に、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材が用いられ、
季節により前記第1サッシ部材と前記第2サッシ部材を使い分けることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅は、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に、換気用小窓が形成されている熱透過ガラスを有する第3サッシ部材を用いると共に、
上下方向の間隔が伸縮して光を取り入れたり遮断したりすることができる光調整部材を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅は、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間にサッシ部材が設けられた住宅において、
昼間はバルコニーの内部で暖められた空気を部屋に通じる循環経路に循環させて部屋を暖めると共に、循環する空気に接触するコンクリートが蓄熱できるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明による住宅は、
夜間は空気が循環する経路がバルコニーを通らないで、各部屋間を結ぶ経路を空気が循環するように、空気の循環経路を切換えることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明による住宅は、
前記空気の循環経路は、天井とコンクリートとの間や、床板とコンクリートとの間に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅の温度調整方法は、
昼間はバルコニーの内部に置いた蓄熱材を暖め、夜間はこの昼間暖められた蓄熱材を部屋の中に移動させることにより、前記蓄熱材が放熱して部屋を暖めることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅は、
昼間バルコニーの内部において暖めた流動タイプの蓄熱材を各部屋に循環させて、この蓄熱材が放熱して各部屋を暖めることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による住宅は、
夜間は前記流動タイプの蓄熱材が循環する経路がバルコニーを通らないで、各部屋間を結ぶ経路を蓄熱材が循環するように、蓄熱材の循環経路を切換えることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅の温度調整方法は、
バルコニーに、放水設備や噴霧設備を設け、バルコニーのコンクリートや蓄熱材が流動する配管に水をかけて気化熱によりコンクリート近傍の空気や蓄熱材の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明による住宅の温度調整方法は、
バルコニーに植栽設備を設け、この植栽設備の植物の蒸散作用や、植え込みの土に含まれる水分の気化熱により、バルコニー内の空気や、植え込み中に設けた蓄熱材の配管の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明に係る住宅によれば、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に二重サッシ部材が設けられた住宅において、
前記二重サッシ部材が、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材から構成されていることにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するコストを低減することができる。
【0019】
また、本発明に係る住宅によれば、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に交換可能な二種類のサッシ部材が交互に設けられ、
前記二種類のサッシ部材に、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材が用いられ、
季節により前記第1サッシ部材と前記第2サッシ部材を使い分けることができるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0020】
また、本発明に係る住宅によれば、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に、換気用小窓が形成されている熱透過ガラスを有する第3サッシ部材を用いると共に、
上下方向の間隔が伸縮して光を取り入れたり遮断したりすることができる光調整部材を設けたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0021】
また、本発明に係る住宅によれば、
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間にサッシ部材が設けられた住宅において、
昼間はバルコニーの内部で暖められた空気を部屋に通じる循環経路に循環させて部屋を暖めると共に、循環する空気に接触するコンクリートが蓄熱できるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0022】
また、本発明による住宅の温度調整方法によれば、
昼間はバルコニーの内部に置いた蓄熱材を暖め、夜間はこの昼間暖められた蓄熱材を部屋の中に移動させることにより、前記蓄熱材が放熱して部屋を暖めることができるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0023】
また、本発明に係る住宅によれば、
昼間バルコニーの内部において暖めた流動タイプの蓄熱材を各部屋に循環させて、この蓄熱材が放熱して各部屋を暖めることができるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0024】
また、本発明による住宅の温度調整方法によれば、
バルコニーに、放水設備や噴霧設備を設け、バルコニーのコンクリートや蓄熱材が流動する配管に水をかけて気化熱によりコンクリート近傍の空気や蓄熱材の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0025】
また、本発明による住宅の温度調整方法によれば、
バルコニーに植栽設備を設け、この植栽設備の植物の蒸散作用や、植え込みの土に含まれる水分の気化熱により、バルコニー内の空気や、植え込み中に設けた蓄熱材の配管の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことにより、
自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る住宅10を示す一部縦断面図である。
【図2】図1における住宅10の水平断面図である。
【図3】図1における住宅10の使用状態を示す一部縦断面図である。
【図4】図1における住宅10の使用状態を示す水平断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る住宅25を示す水平断面図である。
【図6】図5における住宅25の一部縦断面図である。
【図7】図5における住宅25の使用状態を示す水平断面図である。
【図8】図5における住宅25の使用状態を示す一部縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る住宅30を示す一部縦断面図である。
【図10】図9における住宅30の使用状態を示す水平断面図である。
【図11】図9における住宅30の使用状態を示す水平断面図である。
【図12】図9における住宅30の使用状態を示す一部縦断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る住宅35の使用状態を示す全体縦断面図である。
【図14】図13における住宅35の使用状態を示す全体縦断面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る住宅55を示す全体縦断面図である。
【図16】図15における住宅55の使用状態を示す全体縦断面図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係る住宅60を示す全体縦断面図である。
【図18】図17における住宅60の使用状態を示す全体縦断面図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態に係る住宅65を示す一部縦断面図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態に係る住宅70を示す一部縦断面図である。
【図21】本発明の第9の実施の形態に係る住宅75を示す一部縦断面図である。
【図22】本発明の第10の実施の形態に係る住宅80を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る住宅及びその温度調整方法を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図4は、本発明の第1の実施の形態に係る住宅10について説明するために参照する図である。
【0028】
本実施の形態に係る住宅10は、バルコニー12の手摺り部14(立上り部)と、上階のバルコニー16との間に二重サッシ部材が設けられている。この二重サッシ部材は、外側に設けられた第1サッシ部材18と、内側に設けられた第2サッシ部材20から構成されている。
【0029】
第1サッシ部材18には熱透過ガラスが嵌め込まれており、第2サッシ部材20には熱遮蔽ガラスが嵌め込まれている。熱透過ガラスとしては普通のガラスが用いられ、熱遮蔽ガラスとしては、特別の加工が施されて、光は通すが熱は遮蔽できる機能を有しているガラスを用いる。このような熱遮蔽ガラスとしては、例えば、日本板硝子株式会社製の「高性能熱線反射ガラス」がある。
【0030】
第1、第2サッシ部材18,20のそれぞれは、図2に示すように、複数のサッシ部材から構成されている。すなわち、同図において、バルコニー12の外側の3列のサッシ部材は第1サッシ部材18を構成し、内側の3列のサッシ部材は第2サッシ部材20を構成している。
【0031】
そして、第1、第2サッシ部材18,20のそれぞれは、図2に示す第1サッシ部材18のように伸ばしてバルコニー12を閉じたり、同図に示す第2サッシ部材20のように重ねてバルコニー12を全開にしたりできるようになっている。内側の3列の第2サッシ部材20のそれぞれには、図3に示すように、上階のバルコニー16寄りの上側に、換気用小窓20aが形成されている。
【0032】
このような住宅10は、冬は図2に示すように、熱透過ガラスが嵌め込まれている第1サッシ部材18を閉め切って、熱透過ガラスから熱を取り入れ、熱を遮蔽できる機能を有している第2サッシ部材20は、同図に示すようにバルコニー12の水平方向両端部に重ねてバルコニー12を全開にすることにより、バルコニー12のサッシ部材内側に暖かい空気を溜め込むことができる。
【0033】
そして、夏は図4に示すように、熱透過ガラスが嵌め込まれている第1サッシ部材18を、バルコニー12の水平方向両端部に重ねてバルコニー12を全開にすると共に、熱を遮蔽できる機能を有している第2サッシ部材20は、同図に示すように、バルコニー12の水平方向中央部だけを少し開けると共に、図3に示すように、第2サッシ部材20の換気用小窓20aを開けることにより、外からの暑い日差しの熱をある程度遮蔽できると共に、バルコニー12のサッシ部材内側に溜まった空気を外に出易く換気することができる。
【0034】
このような本発明の第1の実施の形態に係る住宅10によれば、夏はバルコニー12の内側の空気の温度がバルコニー12の隣りの部屋に伝わる程度を低減させることができるので、その部屋のエアコンによる温度を上げることができるため、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0035】
次に、図5から図8は、本発明の第2の実施の形態に係る住宅25について説明するために参照する図である。
前記第1の実施の形態に係る住宅10と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第1の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0036】
本実施の形態に係る住宅25は、図5,6に示すように、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間に交換可能な二種類のサッシ部材それぞれが交互に設けられ、この二種類のサッシ部材には、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材18と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材20が用いられ、季節によりその第1サッシ部材18と第2サッシ部材20を入れ替えて、使い分けることができるようになっている。
【0037】
すなわち、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、第1サッシ部材18か第2サッシ部材20のいずれか一方のみが、嵌め込まれて用いられるようになっている。
【0038】
例えば、冬は図5に示すように、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材18が、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間に設けられて、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材20は外されてバルコニー12上の隅に保管されるようにすることにより、バルコニー12のサッシ部材内側に暖かい空気を溜め込むことができる。
【0039】
そして、夏は図6から図8に示すように、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材20が間隔をおいて設けられ、それぞれの間の隙間から換気できると共に、第2サッシ部材20の換気用小窓20aを開けることにより換気することができる。そして熱透過ガラスを有する第1サッシ部材18は外されてバルコニー12の上方に保管されるようになっている。
【0040】
このような本発明の第2の実施の形態に係る住宅25によれば、バルコニー12の内側の空気の温度がバルコニー12の隣の部屋に伝わる程度を低減させることができるので、その部屋のエアコンにおける設定温度を上げることができるため、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0041】
次に、図9から図12は、本発明の第3の実施の形態に係る住宅30について説明するために参照する図である。
前記第1の実施の形態に係る住宅10と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第1の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0042】
本実施の形態に係る住宅30は、図9,12に示すように、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、換気用小窓32aが形成されていて、熱透過ガラスを有する第3サッシ部材32が、夏から冬を通じて常時設けられている。この第3サッシ部材32は、図示してない3つのレール上に、図10,11に示すように、3列に並んで設けられている。
【0043】
そして、上階のバルコニー16からぶら下がり(図12参照)、上下方向の間隔が伸縮して光を取り入れたり遮断したりすることができる、光調整部材34の上端部が上階のバルコニー16の外側に固定されて設けられている。
【0044】
例えば、冬は図9,10に示すように、熱透過ガラスを有する第3サッシ部材32がバルコニー16の水平方向に隙間なく並んで配置されると共に、それぞれの換気用小窓32aを閉じることにより、バルコニー12の内側を密閉して、そこに暖かい空気を溜め込むことができる。
【0045】
そして、夏は図11に示すように、熱透過ガラスを有する第3サッシ部材32が3枚ずつ重ねられた状態で、互いに離れた2群に分けられて外に最大限に開放すると共に、サッシ部材32それぞれの換気用小窓32aを開放することにより換気することができる。そして、光調整部材34が上階のバルコニー16からぶら下がってバルコニー12の内側を遮光することにより、バルコニー12のサッシ部材内側の温度が上がるのを防止することができる。
【0046】
このような本発明の第3の実施の形態に係る住宅30によれば、夏はバルコニー12の内側の空気の温度がバルコニー12の隣りの部屋に伝わる程度を低減させることができるので、その部屋のエアコンにおける設定温度を上げることができるため、また、冬は逆の作用効果により、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0047】
次に、図13及び図14は、本発明の第4の実施の形態に係る住宅35について説明するために参照する図である。
前記第1の実施の形態に係る住宅10と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第1の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0048】
本実施の形態に係る住宅35は、主として冬にその効果を発揮できるもので、図13に示すように、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、熱透過ガラスを有するサッシ部材18が設けられている。
【0049】
バルコニー16を有する住宅35の天井37とコンクリート39との間には循環路47が形成され、床板41とコンクリート43との間には循環路48が形成されている。これらの循環路47,48は、バルコニー12上のサッシ部材18の内側の空間と、一番奥の部屋45とに通じている。
【0050】
このような住宅35においては、昼間は太陽の光によりバルコニー12上の、サッシ部材18の内側空間の空気が暖められ、この暖められた空気を循環路47,48を通って上記部屋45との間で循環させて、奥の部屋45内の空気を暖めることができる。
【0051】
また、このように暖められた空気が循環路47,48を通ることにより、この循環する空気に接触するコンクリート39,43に、暖められた空気の熱が蓄熱できるようになっている。
【0052】
そして夜間は、図14に示すように、空気が循環する循環路47,48が、バルコニー12上のサッシ部材18の内側空間に通じないで、バルコニー12より内側の部屋51に通じるように、図示してない切換装置により空気の循環経路を切換えることができるようになっている。このため、空気が循環路47,48を通ることにより、コンクリート39,43に蓄熱されていた熱が放熱されて、部屋45,51内の空気を暖めることができる。
【0053】
このため、冬の昼間は、図13に示すように、循環する暖かい空気により上記部屋45を暖めることができると共に、夜間は、図14に示すように、循環する暖かい空気により上記部屋45,51内の空気を暖めることができるので、その分暖房するのにかかるコストを低減することができるため、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0054】
次に、図15及び図16は、本発明の第5の実施の形態に係る住宅55について説明するために参照する図である。
前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第4の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0055】
本実施の形態に係る住宅55も、主として冬にその効果を発揮できるものであり、前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様に、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、熱透過ガラスを有するサッシ部材18が設けられている。
【0056】
本実施の形態においては、図15に示すように、昼間はバルコニー12の上に、蓄熱材57を置いて、太陽の光により太陽熱が蓄熱材57に蓄熱できるようになっている。そして、夜間は、図16に示すように、昼間太陽熱が蓄熱されて暖かくなっている蓄熱材57を、バルコニー12の上から各部屋45,51等の中に運び込んで移動させる。
【0057】
すると、各部屋45,51等に運び込まれた蓄熱材57からの放熱により、各部屋45,51等の空気の温度を上昇させることができるので、その分暖房するのにかかるコストを低減することができるため、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0058】
次に、図17及び図18は、本発明の第6の実施の形態に係る住宅60について説明するために参照する図である。
前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第4の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0059】
本実施の形態に係る住宅60も、主として冬にその効果を発揮できるものであり、前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様に、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、熱透過ガラスを有するサッシ部材18が設けられている。
【0060】
本実施の形態においては、図17に示すように、住宅60の床板41とコンクリート43との間には循環路48が形成されている。そして、この循環路48の内部には、その長さ方向に沿って2本の配管62が伸びて配置されている。
【0061】
配管62の一端部は、バルコニー12上で、下側の直線状の配管62と、上側の波型状の蛇行した配管62の先端部が、互いに連通するよう連結して吸熱部62aを形成している。2本の配管62の他端部は、住宅60の一番奥の部屋45の奥側の隅部に突出して、互いに連通するよう連結し、かつ2つの逆U字部が並んだような放熱部62bを形成している。2本の配管62の中途部は、住宅60のバルコニー12側の部屋51の奥側の隅部に突出して、上記放熱部62bと同様の放熱部62cを形成している。
【0062】
配管62の中には流動タイプの蓄熱材が封入されており、吸熱部62aで吸熱して蓄熱されると、吸熱部62a内の蓄熱材が配管62内を循環して、放熱部62b,62cから放熱されるようになっている。流動タイプの蓄熱材としては、例えば、株式会社ジャパンエナジー社製の「エコジュール」や、住化プラステック株式会社製の「スミターマル」等がある。
【0063】
本実施の形態においては、図17に示すように、昼間はバルコニー12上の配管62の吸熱部62a内の流動タイプの蓄熱材に、太陽の光により太陽熱を吸熱して蓄熱されることにより、この蓄熱された流動タイプの蓄熱材を配管62内の一方向に循環させて、各部屋内の放熱部62b,62cから放熱されることにより、各部屋45,51内の空気温度を上昇させることができる。
【0064】
そして夜間は、図18に示すように、配管62における、バルコニー12上の吸熱部62aと、放熱部62b,62cとの連通が、図示してない遮断装置により一時的に遮断されるようになっている。このため、流動タイプの蓄熱材は放熱部62b,62c間の、無端状の配管内を循環して、各部屋45,51内の放熱部62b,62cから放熱されることにより、それらの部屋の空気温度を上昇させることができる。
【0065】
このような本発明の第6の実施の形態に係る住宅60によれば、冬季に各部屋の空気温度を上昇させることができるので、部屋のエアコン等による暖房温度を下げることができるため、自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0066】
次に、図19は、本発明の第7の実施の形態に係る住宅65について説明するために参照する図である。
前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第4の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0067】
本実施の形態に係る住宅65は、主として夏にその効果を発揮できるものであり、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、サッシ部材は設けられていない。バルコニー12の上方、及び上階のバルコニー16の下方に、放水や噴霧を行うことができる給水器67が設けられている。
【0068】
本実施の形態に係る住宅65においては、給水器67がバルコニー12の上面、及び上階のバルコニー16の下面に放水や噴霧を行うことにより、かけた水が蒸発するときにバルコニー12の上面、及び上階のバルコニー16の下面から気化熱を奪うので、バルコニー12,16間の空間の気温を下げることができる。
【0069】
このような気温が下がった空気が、図示してない送風機により、図19に示すように形成された循環路48から吸入されて、奥の部屋45(図13参照)内に入ってその気温を下げることができる。奥の部屋45で熱交換されて気温が上昇した空気は、循環路47を通って再びバルコニー12,16間の空間に戻される。
【0070】
このような本実施の形態に係る住宅65によれば、気温を下げた空気を部屋45に入れて部屋45の気温を下げることができるので、エアコン等における設定温度を上げることができるため、やはり自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0071】
次に、図20は、本発明の第8の実施の形態に係る住宅70について説明するために参照する図である。
前記第6の実施の形態に係る住宅60と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第6の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0072】
本実施の形態に係る住宅70も、主として夏にその効果を発揮できるものであり、バルコニー12の手摺り部14と上階のバルコニー16との間には、サッシ部材は設けられていない。
【0073】
本実施の形態に係る住宅70は、図20に示すように、床板41とコンクリート43との間には循環路48が形成されている。そして、この循環路48の内部には、その長さ方向に沿って2本の配管62が伸びて配置されている。
【0074】
配管62の一端部は、バルコニー12上で、下側の直線状の配管62と、上側の波型状の蛇行した配管62の先端部が、互いに連通するよう連結して吸熱部62aを形成している。配管62の他端部は、図20には図示していないが、前記第6の実施の形態に係る住宅60における配管62と同様に構成されている。配管62の中には、前記第6の実施の形態で説明したものと同様の流動タイプの蓄熱材が封入されている。
【0075】
このような吸熱部62aの上方には、放水や噴霧を行うことができる給水器67が設けられている。このため、夏季に高温の外気の熱を吸熱した吸熱部62aに、給水器67が放水や噴霧を行うことにより、かけた水が蒸発するときに吸熱部62aから気化熱を奪うので、吸熱部62aの内部の流動タイプの蓄熱材の温度を下げることができるようになっている。
【0076】
このような本実施の形態に係る住宅70によれば、このような温度を下げられた蓄熱材が配管62の中を循環することにより、奥の部屋45(図18参照)内の気温を下げることができるので、エアコン等における設定温度を上げることができるため、やはり自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0077】
次に、図21は、本発明の第9の実施の形態に係る住宅75の温度調整方法について説明するために参照する図である。
前記第4の実施の形態に係る住宅35と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第4の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0078】
本実施の形態に係る住宅75も、主として夏にその効果を発揮できるものであり、図21に示すように、床板41とコンクリート43との間には循環路48が形成されていると共に、バルコニー12の上に、土の入った植木鉢77aに葉の大きい植物77bを植えた植栽設備77を設けている。
【0079】
本実施の形態においては、植物77b体内の水分が水蒸気となって体外に発散する蒸散作用により発生するその水分や、植木鉢77aの植え込みの土に含まれる水分が水蒸気となって蒸発するその水分が気化するときに奪われる気化熱により、バルコニー12の手摺り部14の内側の空気の温度を下げることができる。
【0080】
このようにして温度が下がった空気が、循環路48を通って奥の部屋45(図13参照)まで送られて、その奥の部屋45の気温を低くすることができ、温度交換により温度が高くなった空気は循環路47を通ってバルコニー12の上方に、再び戻ってくるようになっている。
【0081】
このような本実施の形態に係る住宅75によれば、植栽設備77により温度を下げられた空気が循環路48,47を循環することにより、奥の部屋45(図13参照)内の気温を下げることができるので、エアコン等における設定温度を上げることができるため、やはり自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0082】
次に、図22は、本発明の第10の実施の形態に係る住宅80の温度調整方法について説明するために参照する図である。
前記第8の実施の形態に係る住宅70と同様の部分には同じ符号を付して説明し、前記第8の実施の形態の構成と重複する構成の説明はできるだけ省略するものとする。
【0083】
本実施の形態に係る住宅80も、主として夏にその効果を発揮できるものであり、前記第9の実施の形態に係る住宅75と同様に、バルコニー12の上に、土の入った植木鉢77aに葉の大きい植物77bを植えた植栽設備77を設けている。
【0084】
そして、前記第8の実施の形態に係る住宅70を示す、図20に示すと同様に、図22に示すように、床板41とコンクリート43との間に形成された循環路48の内部に、その長さ方向に伸びる配管62の一端部に形成された、直線状と波型状の蛇行した配管から構成される吸熱部62aが、植栽設備77の植木鉢77aの土の中に埋め込まれている。
【0085】
本実施の形態においては、植物77bの蒸散作用や、植木鉢77aの土に含まれる水分が蒸発するときに奪われる気化熱により、配管62の一端部の吸熱部62aに封じ込められている流動タイプの蓄熱材の温度を下げることができる。
【0086】
このようにして温度が下がった蓄熱材が、循環路48を通って奥の部屋45(図13参照)まで送られて、その奥の部屋の気温を低くすることができ、温度交換により温度が高くなった蓄熱材が循環路47を通ってバルコニー12の上方に、再び戻ってくるようになっている。
【0087】
このような本実施の形態に係る住宅80によれば、植栽設備77により温度を下げられた蓄熱材が循環路48,47を循環することにより、奥の部屋45(図13参照)内の気温を下げることができるので、エアコン等における設定温度を上げることができるため、やはり自然の力を有効に利用して、自然の変化による環境変化に対処するのにかかるコストを低減することができる。
【0088】
なお、前記実施の形態においては、バルコニー12の手摺り部14を有する住宅について説明したが、バルコニー12から立ち上がるように形成された立上り部を有する住宅であれば、手摺り部14と呼ばれる程度の高さより低い場合でも、或は高い場合でも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 住宅
12,16 バルコニー
14 手摺り部
18 第1サッシ部材
20 第2サッシ部材
20a 換気用小窓
25 住宅
30 住宅
32 第3サッシ部材
32a 換気用小窓
34 光調整部材
35 住宅
37 天井
39 コンクリート
41 床板
43 コンクリート
45 部屋
47 循環路
48 循環路
51 部屋
55 住宅
57 蓄熱材
60 住宅
62 配管
62a 吸熱部
62b 放熱部
62c 放熱部
65 住宅
67 給水器
70 住宅
75 住宅
77 植栽設備
77a 植木鉢
77b 植物
80 住宅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に二重サッシ部材が設けられた住宅において、
前記二重サッシ部材が、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材から構成されていることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記第1、第2サッシ部材のそれぞれが複数のサッシ部材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記第2サッシ部材に換気用小窓が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の住宅。
【請求項4】
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に交換可能な二種類のサッシ部材が交互に設けられ、
前記二種類のサッシ部材に、熱透過ガラスを有する第1サッシ部材と、熱遮蔽ガラスを有する第2サッシ部材が用いられ、
季節により前記第1サッシ部材と前記第2サッシ部材を使い分けることができるようにしたことを特徴とする住宅。
【請求項5】
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間に、換気用小窓が形成されている熱透過ガラスを有する第3サッシ部材を用いると共に、
上下方向の間隔が伸縮して光を取り入れたり遮断したりすることができる光調整部材を設けた
ことを特徴とする住宅。
【請求項6】
バルコニーの立上り部と上階のバルコニーとの間にサッシ部材が設けられた住宅において、
昼間はバルコニーの内部で暖められた空気を部屋に通じる循環経路に循環させて部屋を暖めると共に、循環する空気に接触するコンクリートが蓄熱できるようにした
ことを特徴とする住宅。
【請求項7】
夜間は空気が循環する経路がバルコニーを通らないで、各部屋間を結ぶ経路を空気が循環するように、空気の循環経路を切換えることができるようにした
ことを特徴とする請求項6に記載の住宅。
【請求項8】
前記空気の循環経路は、天井とコンクリートとの間や、床板とコンクリートとの間に形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の住宅。
【請求項9】
昼間はバルコニーの内部に置いた蓄熱材を暖め、夜間はこの昼間暖められた蓄熱材を部屋の中に移動させることにより、前記蓄熱材が放熱して部屋を暖めることができるようにしたことを特徴とする住宅の温度調整方法。
【請求項10】
昼間バルコニーの内部において暖めた流動タイプの蓄熱材を各部屋に循環させて、この蓄熱材が放熱して各部屋を暖めることができるようにした
ことを特徴とする住宅。
【請求項11】
夜間は前記流動タイプの蓄熱材が循環する経路がバルコニーを通らないで、各部屋間を結ぶ経路を蓄熱材が循環するように、蓄熱材の循環経路を切換えることができるようにしたことを特徴とする請求項10に記載の住宅。
【請求項12】
バルコニーに、放水設備や噴霧設備を設け、バルコニーのコンクリートや蓄熱材が流動する配管に水をかけて気化熱によりコンクリート近傍の空気や蓄熱材の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことを特徴とする住宅の温度調整方法。
【請求項13】
バルコニーに植栽設備を設け、この植栽設備の植物の蒸散作用や、植え込みの土に含まれる水分の気化熱により、バルコニー内の空気や、植え込み中に設けた蓄熱材の配管の温度を下げ、
この温度が下がった空気や蓄熱材を各部屋に循環させて、この空気や蓄熱材が各部屋の熱を奪って温度を下げることができるようにしたことを特徴とする住宅の温度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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