説明

住宅用火災警報器

【課題】火事のレベルに応じた警報メッセージを出力する住宅用火災警報器を提供する。
【解決手段】複数の警報メッセージを予め登録した警報メッセージ格納部14と、火災の検知条件をそれぞれ異ならせた第1、第2の検知部11、12と、第1の検知部11が火災を検知すると、警報メッセージ格納部14に登録されている第1の警報メッセージを選択して出力させる一方、第2の検知部12が火災を検知すると、警報メッセージ格納部14に登録されている第2の警報メッセージを選択して出力させる制御部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の煙や熱を検知すると警報メッセージを出力する住宅用火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の非特許文献にあるように、近時、広く市販されている住宅用火災警報器は、火災(熱または煙)を検知すると、その検知信号が検知器内部で予め設定された閾値を超えたときに、例えば「ピー、ピー、火事です。火事です」というような警報メッセージを出力するようになっている。
【非特許文献1】http://biz.national.jp/Ebox/jukeiki/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような火災警報器は、熱を検知する熱センサか、煙を検知する煙センサのいずれか一方しか備えていないので、緊急に避難を要する重大な火事なのか、初期消火レベルの火事なのか判断できないという問題があった。そこで、本発明は、火事のレベルに応じた警報メッセージを出力する住宅用火災警報器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による住宅用火災警報器は、複数の警報メッセージを予め登録した警報メッセージ格納部と、火災の検知条件をそれぞれ異ならせた第1、第2の検知部と、前記第1の検知部が火災を検知すると、前記警報メッセージ格納部に登録されている第1の警報メッセージを選択して出力させる一方、前記第2の検知部が火災を検知すると、前記警報メッセージ格納部に登録されている第2の警報メッセージを選択して出力させる制御部とを備える。
【0005】
更に望ましくは、前記第1の検知部は熱センサ、前記第2の検知部は煙センサで構成され、前記第1の警報メッセージは避難警報、前記第2の警報メッセージは火災警報になっている。
【0006】
また、本発明による住宅用火災警報器は、他の警報器に制御信号を伝送する通信部を更に備え、前記制御部は、前記第1の検知部が火災を検知すると、他の警報器に連動要求信号を送信して連動警報メッセージを出力させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、第1の検知部、第2の検知部を備えており、そのいずれか一方が故障しても、残った側が、閾値を超えた熱あるいは閾値を超えた煙を検知すれば、警報メッセージが出力されるので、より安全性が高くなる。
【0008】
第1の検知部は熱センサ、第2の検知部は煙センサであり、第1の警報メッセージは避難警報、第2の警報メッセージは火災警報になっている構成では、避難警報として、避難を促す緊急性の高い内容とし、第2の警報メッセージは、火災警報として、確認を促す緊急性の低い内容とする。このように、火災の初期に反応する煙センサと、炎が燃えさかって温度上昇しているときに反応する熱センサとで警報メッセージを切り換えられるので、警報メッセージを聞いただけで、緊急に避難を要する重大な火事なのか、初期消火レベルの火事なのか判断できる。
【0009】
警報器は、第1の検知部が火災を検知すると、他の警報器に連動要求信号を送信して連動警報メッセージを出力させる構成では、火事になると、全ての警報器から警報メッセージが出力されるので、離れた部屋にいる居住者が逃げ遅れるという虞がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図に従って説明する
【0011】
図1は、実施例の回路的な構成を示した機能ブロック図である。この警報器1は、熱センサで構成された第1の検知部11と、煙センサで構成された第2の検知部12と、電源電池20の電圧低下等を自己診断する試験部13と、複数の警報メッセージを予め登録した警報メッセージ格納部14と、警報メッセージ格納部14に登録された警報メッセージを出力する音声出力部15と、発光ダイオード等で構成された表示部16と、警報停止等の操作を受け付ける操作部17と、無線あるいは有線で他の警報器と制御信号を相互に伝送する通信部18と、各部を制御するマイクロコントローラ等で構成された制御部19と、電源電池20とを備えている。
【0012】
図2(a)、図2(b)は、実施例をそれぞれ正面および側面から見たときの外観図で、感知器1が壁面に取り付けられた様子を示している。図において、21は、検知ヘッドであって、検知ヘッド21の外面には、第1の検知部11が露出しており、検知ヘッド21の内部には、第2の検知部12が収容されている。17aは、操作部17を構成する押釦で、透光性の樹脂からなり、表示部16を構成する発光ダイオードを内部に収容している。17bは引紐で押釦17aと連動する。また、18aは、通信部18のアンテナである。
【0013】
図3は、検知ヘッド21の構造を説明するための分解図である。検知ヘッド21は、第1の検知部11を構成するサーミスタを実装した基板21aと、第2の検知部12として発光部12a、受光部12bを取り付けた裏蓋21bと、遮光しつつ空気の流通を許容するラビリンス壁21cと、防虫保護カバー21dからなる。裏蓋21b、ラビリンス壁21c、防虫保護カバー21dには、組み付け時に、第1の検知部11を検知ヘッド21の外面まで導くための通孔21eが設けられている。
【0014】
第1の検知部11は、熱センサとしてサーミスタを用いた構成で、そのサーミスタに定期的に試験電流を通じさせて抵抗値を読み取ることで温度を測定する。なお、サーミスタの替わりに熱電対を用いてもよい。
【0015】
一方、第2の検知部12は、裏蓋21bとラビリンス壁21cとで構成される煙検知室に進入した煙粒子を検出するもので、具体的には、発光ダイオード等で構成された発光部12aから光を照射して、煙粒子によって反射された反射光を、ホトダイオード等で構成された受光部12bで受光して光電変換する仕組みの煙センサになっている。
【0016】
警報メッセージ格納部14には、少なくとも、第1の検知部11が火災を検知したときに出力すべき第1の警報メッセージと、第2の検知部12が火災を検知したときに出力すべき第2の警報メッセージと、試験部13が自己診断により電源電池20の電圧異常を検知したときに出力すべき報知メッセージとが予め登録されている。
【0017】
例えば、第1の警報メッセージは、避難警報として、例えば「ピーピー、熱検知部が作動しました。火事です、避難してください」のように、避難を促す緊急性の高い内容とし、第2の警報メッセージは、火災警報として、例えば「ピーピー、煙検知部が作動しました。火事の可能性がありますので確認してください」のように、確認を促す緊急性の低い内容としてもよい。また、報知メッセージは「電池が消耗しています。交換してください」のようなメッセージとしてもよい。
【0018】
警報器1の基本動作は、次のようになっている。すなわち、まず、制御部19は、自己診断のタイミングか否か(例えば1時間毎)を判断し、自己診断のタイミングであれば、試験部13を作動させて自己診断する。その結果、電圧異常であれば、音声出力部15から報知メッセージを出力すると共に表示部16を点灯させる。
【0019】
次いで、火災検知のタイミングであるか否か(例えば5秒毎)を判断し、火災検知のタイミングであれば、第1の検知部11と、第2の検知部12とを作動させ、閾値を超えた熱、あるいは煙を検知したか否かを判断する。
【0020】
その結果、第1の検知11が閾値を超えた熱を検知しておらず、かつ第2の検知部12が閾値を超えた煙を検知しないならば、自己診断のタイミングか否かの判断に戻る。
【0021】
しかしながら、第1の検知部11が閾値を超えた熱を検知したならば、音声出力部15から避難警報メッセージを出力させると共に、表示部16を早い周期で点滅させる。
【0022】
また、第1の検知部11が閾値を超えた熱を検知しておらず、かつ第2の検知部12が閾値を超えた煙を検知していれば、音声出力部15から火災警報メッセージを出力させる共に、表示部16を遅い周期で点滅させる。
【0023】
そして、避難警報メッセージあるいは火災警報メッセージを出力した後は、次の火災検知タイミングになるまで、操作部17で警報停止操作があった否かを判断する。その結果、警報停止操作がなされたならば、警報メッセージの出力を停止したまま所定時間待機する。
【0024】
一方、警報停止操作がなされないまま、次の火災検知タイミングになれば、再び、検知部11と、第2の検知部12とを作動させる処理に戻る。このような構成によれば、第1の検知部11、第2の検知部12のいずれか一方が故障しても、残った側が、閾値を超えた熱あるいは閾値を超えた煙を検知すれば、警報メッセージが出力されるので、より確実に動作する安全性の高い警報器を提供できる。
【0025】
図4は、上記基本動作の処理手順を示したフローチャート(S101〜S115)である。
【0026】
この基本動作では、第1の検知部11が閾値を超えた熱の検知を検知した場合は、第2の検知部12による閾値を超えた煙の検知があった否かに関わらず、避難警報メッセージを出力するようにしている。つまり、熱の検知を煙の検知よりも優先して判断している。これは、高熱の発生は、火事によるものしか有り得ないので、緊急性の高い避難警報によって避難を促すべきであるが、煙の発生は、火災によるものだけでなく、調理等によって発生することもあり、まだ高熱が発生していないならば、たとえ火事であっても初期消火レベルのはずであるから、火災警報で確認を促す方が望ましいという考察による。また、通常、火事の進行では、煙の濃度は急峻に上昇するが、温度は緩慢に上昇するという傾向もある。
【0027】
従って、第1の検知部11における熱に対する閾値は、従来の熱式火災警報器と同様の閾値を設定すべきであるが、第2の検知部12の煙に対する閾値は、従来の煙式火災警報器よりも早い段階で煙を検知するような閾値を設定することが望ましい。このようにすれば、煙濃度がまだ余り上昇していない、つまり初期火災の段階で火災警報メッセージを出力できるので、より安全である。
【0028】
図5は、火災における熱および煙濃度の時間変化を例示したグラフである。ここでは、上記のより望ましい閾値の具体例として、熱に対する閾値として80°C、煙濃度に対する閾値として15%/mが設定されている。時刻t1では、第2の検知部12が閾値を超えた煙を検知するので、火災警報メッセージが出力されている。その後、時刻t2では、第1の検知部11が閾値を超えた熱を検知するので、避難警報メッセージが出力されている。
【0029】
また、警報器1は、他の警報器に制御信号を伝送する通信部18を更に備え、制御部は、第1の検知部11が火災を検知すると、他の警報器1に連動要求信号を送信して連動警報メッセージを出力させる構成とし、本発明を複数の警報器1が無線、あるいは有線で相互に接続された警報システムに適用してもよい。そうすれば、火事になると、全ての警報器1から警報メッセージが出力されるので、離れた部屋にいる居住者が逃げ遅れるという虞もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の回路的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】(a)、(b)は、実施例をそれぞれ正面および側面から見たときの外観図である。
【図3】検知ヘッドの構造を説明するための分解図である。
【図4】実施例における基本動作の処理手順を示したフローチャートである。
【図5】火災における熱および煙濃度の時間変化を例示したグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 住宅用火災警報器
14 警報メッセージ格納部
11 第1の検知部
12 第2の検知部
18 通信部
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の警報メッセージを予め登録した警報メッセージ格納部と、
火災の検知条件をそれぞれ異ならせた第1、第2の検知部と、
前記第1の検知部が火災を検知すると、前記警報メッセージ格納部に登録されている第1の警報メッセージを選択して出力させる一方、前記第2の検知部が火災を検知すると、前記警報メッセージ格納部に登録されている第2の警報メッセージを選択して出力させる制御部とを備えた住宅用火災警報器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の検知部は熱センサ、前記第2の検知部は煙センサであり、
前記第1の警報メッセージは避難警報、前記第2の警報メッセージは火災警報になっている住宅用警報器。
【請求項3】
請求項2において、
他の警報器に制御信号を伝送する通信部を更に備え、
前記制御部は、前記第1の検知部が火災を検知すると、他の警報器に連動要求信号を送信して連動警報メッセージを出力させる住宅用火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−79539(P2010−79539A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246179(P2008−246179)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】