住宅設計システム
【課題】外観デザインや間取りに関する顧客ニーズを満たしつつも住宅断熱性能を満足することができる住宅設計システムを提供する。
【解決手段】住宅設計システムは、管理サーバと、住宅販売会社の各支店に設けられ顧客対応時に販売スタッフが操作する支店端末とにより構成されている。顧客要求データ取得部21は、住宅Xの設計に関して外観デザイン及び間取りを含む顧客要求データを取得する。第1設計部22は、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの一次設計を行う。断熱性能評価部23は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価する。第2設計部24は、断熱性能評価部23による断熱性能の評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行う。住宅表示部25は、第2設計部24により設計変更した住宅Xを表示部19に表示させる。
【解決手段】住宅設計システムは、管理サーバと、住宅販売会社の各支店に設けられ顧客対応時に販売スタッフが操作する支店端末とにより構成されている。顧客要求データ取得部21は、住宅Xの設計に関して外観デザイン及び間取りを含む顧客要求データを取得する。第1設計部22は、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの一次設計を行う。断熱性能評価部23は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価する。第2設計部24は、断熱性能評価部23による断熱性能の評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行う。住宅表示部25は、第2設計部24により設計変更した住宅Xを表示部19に表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の購買に関して、住宅の外観デザインや間取りに対する顧客ニーズが多種化する傾向にある。そこで、住宅販売会社側では、こうした顧客ニーズに応えるべく顧客側に様々な住宅プランを提案するようにしている。
【0003】
また、近年、省エネルギの観点等から、断熱性能に優れた住宅が求められており、住宅販売業者側では、顧客側に対して住宅の断熱性能を提示することがある。住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)に基づき定められた住宅性能表示制度には、住宅の断熱性能に関する基準として省エネルギ対策等級が規定されている。省エネルギ対策等級は、住宅の熱損失係数Qや夏季日射取得係数μ等に基づいて判定されるものである。省エネルギ対策等級、熱損失係数Q、夏季日射取得係数μはいずれも断熱性能を示す指標であり、住宅販売会社は、例えばこれらの断熱指標を用いて顧客に断熱性能を提示している。なお、特許文献1には、住宅に関する設計データを入力し、その設計データに基づいて熱損失係数Qを算出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−239161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズが強いからといって外観デザインや間取りに偏重した住宅設計を行うと、断熱性能が所望とする性能レベルを満たさないことになる場合があり、かかる場合には、住宅設計のやり直しが強いられる。その一方で、最初から断熱性能を重視した住宅設計を行うと、外観デザインや間取りに制約が生じ、これら外観デザインや間取りに関して顧客ニーズを満たすことができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズを満たしつつも住宅断熱性能を満足することができる住宅設計システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の住宅設計システムは、住宅の設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求取得手段と、前記顧客要求データに基づいて住宅の設計を行う第1設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅について断熱性能を評価する断熱性能評価手段と、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅において断熱性能に関与する部位として予め定められた断熱機能部位について設計変更する第2設計手段と、前記第2設計手段により設計変更した住宅を表示ディスプレイに表示させる住宅表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、住宅の設計時において、先ずは外観デザインや間取りに関する顧客要求データを優先して住宅の設計が行われる(一次設計)。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅が設計される。また、設計済みの住宅について断熱性能が評価され、その評価結果に基づいて、設計済みの住宅の断熱機能部位について設計変更が行われる(二次設計)。したがって、例えば、設計済みの住宅の断熱性能が顧客の要求に満たないと評価された場合に、断熱性能を高めるように設計変更することができる。そして、設計変更した住宅が表示ディスプレイに表示されるため、当初から想定していた住宅プランをベースにしつつ断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示することができる。これにより、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、しかも断熱性能に関する要求を満足させることができる。
【0009】
また、一次設計された住宅の断熱性能が顧客の要求に満たなかったとしても、一次設計された住宅をベースとして設計変更が行われるため、一からの設計変更を強いられることがなく、設計変更を必要最小限に抑えることができる。
【0010】
第2の発明の住宅設計システムは、第1の発明において、前記断熱性能評価手段は、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定手段を備え、前記第2設計手段は、前記過不足判定手段による判定結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能が、顧客の要求する目標の断熱性能に対し不足しているか過剰となっているかに基づき、当該一次設計された住宅について設計変更が行われる。したがって、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し不足している場合には、断熱性能を高めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足させたり、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し過剰となっている場合には、断熱性能を低めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足する範囲で住宅製造コストの低減を行ったりすることができる。これにより、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0012】
第3の発明の住宅設計システムは、第1又は第2の発明において、前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計された住宅の断熱機能部位についての仕様変更案を作成し、その仕様変更案を前記表示ディスプレイに表示させる変更案表示手段を備え、前記表示ディスプレイに表示された前記断熱機能部位の仕様変更案に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の設計変更を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能の評価結果に基づき、当該住宅の断熱機能部位について仕様変更案が作成される。この仕様変更案は表示ディスプレイに表示され、例えば顧客は当該表示された断熱機能部位についての仕様変更案を参照しながら好みの変更案を決定できる。そして、決定された好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅の設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、設計変更に関して顧客の要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0014】
第4の発明の住宅設計システムは、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記第2設計手段は、設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、一次設計された住宅の断熱機能部位を設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定できる。例えば、所定の開口部を優先して設計変更したり、所定の開口部以外を優先して設計変更したりする等の条件設定を行うことができる。これにより、設計変更に際して顧客のニーズを加味することができるため、より一層顧客ニーズに応じた住宅を顧客に提示することが可能となる。
【0016】
第5の発明の住宅設計システムは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記顧客要求取得手段により取得される顧客要求データには、建築工法の異なる複数の住宅型式から選ばれた型式選択データが含まれており、前記第1設計手段は、前記型式選択データを含む顧客要求データに基づいて住宅の設計を行い、前記第2設計手段は、前記第1設計手段により設計した住宅と同じ型式の住宅に前記設計変更を行う同型式設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅とは異なる型式の住宅に前記設計変更を行う異型式設計手段とを有し、前記住宅表示手段は、前記同型式設計手段及び前記異型式設計手段により設計変更した各型式の住宅をそれぞれ前記表示ディスプレイに表示させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、顧客が当初から想定していた型式の住宅の他に、それとは異なる型式の住宅についても顧客に提示できる。これにより、顧客に対して提示できる住宅プランのバリエーションを増やすことができ、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。
【0018】
第6の発明の住宅設計システムは、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記第1設計手段により設計した住宅の製造コストを評価する住宅コスト評価手段をさらに備え、前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に加えて前記住宅コスト評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅に関して断熱性能の評価とともに製造コストの評価が行われる。そして、断熱性能の評価結果に加え製造コストの評価結果に基づいて、一次設計された住宅の断熱機能部位について設計変更が行われる。これにより、当初から想定していた住宅プランをベースにしながら、断熱性能に加えコストをも充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。したがって、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、断熱性能に関する要求のみならず製造コストに関する要求をも満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】住宅設計システムの電気的構成を示す図。
【図2】住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図。
【図3】断熱性能評価処理を示す機能ブロック図。
【図4】二次設計処理を示す機能ブロック図。
【図5】住宅の概要を例示した図。
【図6】建設地域を説明するための説明図。
【図7】Q値等級を説明するための説明図。
【図8】μ値等級を説明するための説明図。
【図9】外皮部位の仕様変更案を表示した表示画面を示す図。
【図10】住宅を表示した表示画面を示す図。
【図11】別例における住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、住宅の設計に関する顧客要求に基づいて住宅の設計を行い、該設計に際し住宅について断熱性能の評価等を行う住宅設計システムについて具体化している。そこで、まず本システムの概要を図1に基づいて説明する。なお、図1は、住宅設計システムの電気的構成を示す図である。また、本実施形態では、住宅販売会社の販売スタッフが、同販売会社に訪れた顧客との面談時において、顧客から住宅に関する各種要求を聞き出し、その聞き出した顧客要求に基づいて本システムにより住宅の設計や、当該設計した住宅に関する各種評価等を行うことを想定している。
【0022】
図1に示すように、住宅設計システム10は、住宅販売会社の管理センタに設けられた管理サーバ11と、住宅販売会社の各支店に設けられ顧客対応時に販売スタッフが操作する支店端末12とにより構成されている。これら管理サーバ11及び各支店端末12はインターネット等の外部通信網を介して接続されており、互いに情報のやりとりが可能となっている。なお、図1では、便宜上、ひとつの支店の支店端末12のみを図示している。
【0023】
管理サーバ11は、住宅設計システム10において各種制御を行うものである。管理サーバ11は、制御部14と、記憶部15とを備えており、例えばパソコン等の端末装置により構成されている。制御部14は、住宅の設計処理や断熱性能の評価処理等、各種処理を行うものである。記憶部15には、設計処理や断熱性能の評価処理等各種処理を実行する制御プログラムと、断熱性能の評価等に必要な各種情報を格納するデータベースとが記憶されている。
【0024】
支店端末12は、制御部17と、操作部18と、表示部19とを備えており、例えばパソコン等の端末装置により構成されている。制御部17は、操作部18及び表示部19と接続されている。
【0025】
操作部18は、住宅設計及び断熱性能の評価を行うのに必要な情報等、各種情報の入力を受け付けるものであり、例えばキーボードやマウス等を備えてなる。本実施形態では、住宅販売会社の支店の販売スタッフが顧客から住宅に関する各種情報を聞き出して、その聞き出した情報を販売スタッフが操作部18に入力する。表示部19は、設計された住宅や断熱性能の評価結果等の各種情報を表示するものであり、例えばディスプレイ等を備えてなる。
【0026】
操作部18に対して入力操作が行われると、その入力操作に応じた情報が制御部17に入力され、制御部17はその情報を管理サーバ11に送信する。管理サーバ11では、支店端末12の制御部17から送信される各種情報に基づいて、住宅設計や断熱性能評価等の各種処理を実施する。そして、管理サーバ11は、必要に応じて処理の結果を支店端末12(制御部17)に送信する。支店端末12(制御部17)において処理結果が受信されると、制御部17はその処理結果を表示部19に表示させる。これにより、設計された住宅や、断熱性能の評価結果等を住宅販売会社の各支店において顧客に対し提示できる。
【0027】
次に、本住宅設計システム10により実行される住宅設計評価処理の流れについて図2に基づいて説明する。なお、図2は住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図であり、本実施例では各図中の各々の機能ブロックが管理サーバ11と支店端末12とにより実現されるものとなっている。具体的には、図中の各機能ブロック21〜27のうち、顧客要求データ取得部21、第1設計部22、断熱性能評価部23、第2設計部24が管理サーバ11(制御部14)により実行され、住宅表示部25、住宅プラン決定部26、出力部27が支店端末12(制御部17)により実行される。なお、各機能ブロック21〜27について管理サーバ11及び支店端末12への振り分け方は必ずしもこれに限定することなく、例えば各機能ブロック21〜27をすべて支店端末12側で実行させるようにしてもよい。
【0028】
また、図5には、顧客の要求に応じて設計された住宅Xの概要図が例示されている。この住宅Xは、ユニット工法からなる2階建てのユニット式住宅を想定しており、(a)が住宅X全体を示す断面図、(b)が住宅Xの一階部分の間取りを示す図となっている。ここでは、この住宅Xを対象として住宅設計評価処理が行われることを前提としている。
【0029】
図2に示すように、顧客要求データ取得部21は、住宅Xの設計に関する顧客要求が支店端末12側から入力されると、住宅Xの外観デザイン及び間取りを含む顧客要求を顧客要求データとして取得する。本実施形態では、顧客要求データとして、住宅Xの型式(つまりユニット工法からなるユニット式住宅)、気積B、延べ床面積S等のデータや、住宅Xを構成する各部位の部位データ等を取得する。なお、住宅Xの型式データは、建築工法の異なる複数の住宅型式(例えばユニット工法からなるユニット式住宅や、鉄骨軸組工法からなる鉄骨軸組式住宅等)から選択された選択型式データに相当する。また、部位データには、断熱機能を有する建物外皮の部位(以下、外皮部位Mという)のデータが含まれており、詳しくは屋根M1、外壁M2、開口部M3(詳しくは窓開口部M3a及びドア開口部M3b)、床M4、土間床M5(詳しくは玄関の土間床)等のデータが含まれている。これら各外皮部位Mのデータとしては、外皮部位Mの面積Aを示すデータ、外皮部位Mを構成する各構成部材の大きさや配置等を示すデータ、各構成部材の材料を示すデータ等が含まれている。なおここで、外皮部位Mが断熱機能部位に相当する。また、床M4には、土間床M5が含まれていない。
【0030】
第1設計部22は、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの一次設計を行うものである。第1設計部22は、例えば住宅設計用のCADプログラムを用いて住宅Xの設計を行う(後述の第2設計部24も同様)。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて住宅Xが一次設計される。
【0031】
断熱性能評価部23は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価するものである。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りからなる住宅Xについて断熱性能が評価される。
【0032】
第2設計部24は、断熱性能評価部23による断熱性能の評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて二次設計として設計変更を行う。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅プランをベースとしつつ、断熱性能を充足した住宅Xが二次設計される。以上の各処理が、管理サーバ11側で行われ、以下に説明する各処理は支店端末12側で行われる。
【0033】
住宅表示部25は、第2設計部24により設計変更(二次設計)した住宅Xを表示部19に表示させる。具体的には、管理サーバ11側で二次設計された住宅Xは同サーバ11から支店端末12側に送信される。そして、住宅表示部25は、支店端末12において受信された当該住宅Xを表示部19に表示させる。これにより、顧客の当初の住宅プランをベースにしつつ、断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。
【0034】
住宅プラン決定部26は、住宅表示部25により表示部19に表示された住宅Xを、顧客の要望に基づいて最終の住宅プランとして決定するものである。具体的には、住宅プラン決定部26は、表示された住宅Xについて顧客が満足したことを判定した場合に、当該住宅Xを最終の住宅プランとして決定する。この判定は、操作部18に対して入力された顧客の要望に基づいて行われる。
【0035】
出力部27は、表示部19に表示された住宅Xが住宅プラン決定部26により最終の住宅プランとして決定された場合、当該住宅プラン(例えば住宅Xの外観図・間取り図等)をプリンタ(図示略)に出力する。これにより、顧客の要望に基づき決定された代替住宅プランを顧客に印刷物として手渡すことができ、顧客に住宅Xの購入検討を促すことができる。
【0036】
次に、断熱性能評価部23による断熱性能評価処理について図3に基づいて詳細に説明する。なお、図3は、断熱性能評価処理を示す機能ブロックである。
【0037】
図3に示すように、断熱性能評価部23において、断熱性能算出部30は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を算出するものであり、断熱性能評価部23では、同算出部30により算出された断熱性能について評価を行う。ここで、本実施形態では、例えば、断熱性能算出部30において、住宅Xの断熱性能を示す断熱性能指標のひとつである省エネルギ対策等級を算出することとしており、断熱性能評価部23では当該算出された省エネルギ対策等級に基づいて、住宅Xの断熱性能を評価することとしている。そこで、以下では、この断熱性能算出部30による省エネルギ対策等級の算出処理の流れをまず説明する。なお、省エネルギ対策等級の算出は周知の技術を適用することにより実現可能なものであり、以下に示す算出処理に限らず、その他の処理によって省エネルギ対策等級を算出してもよい。
【0038】
なお、断熱性能評価部23における断熱性能の評価は、必ずしも省エネルギ対策等級に基づいて行う必要はなく、後述する熱損失係数Qや夏季日射取得係数μ等その他の断熱性能指標に基づいて行ってもよい。
【0039】
断熱性能算出部30において、断熱特性データベース31は、外皮部位Mにおける断熱特性に関する断熱特性データを格納するものである。断熱特性データベース31には、各外皮部位Mごとに、断熱特性データとして、熱貫流率U、温度差係数H、夏季日射侵入率η等のデータが格納されている。なお、断熱特性データベース31は、管理サーバ11の記憶部15により構築されている。
【0040】
Q値算出部32では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Mの断熱特性データとに基づいて、住宅Xの熱損失係数(Q値)を算出する。この場合、熱損失係数Qは、以下の(1)式を用いて算出される。
【0041】
Q=(各外皮部位Miにおける熱損失量の合計+換気による熱損失量)/延べ床面積
…(1)
なおここで、外皮部位Miの熱損失量は、当該外皮部位Miにおける熱貫流率と面積との積を算出することにより求められる(外皮部位Miの熱損失量=熱貫流率×面積)。
【0042】
より詳細には、熱損失係数Qは,以下の(2)式を用いて算出される。
【0043】
Q=〔ΣAiUiHi+Σ(LfUlHi+AfUf)+0.35nB〕/S
…(2)
ここで、Aiは外皮部位Miの面積、Uiは外皮部位Miの熱貫流率、Hiは外皮部位Miの温度差係数、nは換気回数、Bは住宅X内の気積、Sは延べ床面積である。また、Lfは土間床M5における外周の長さ、Ulは土間床M5における外周の熱貫流率、Afは土間床M5における中央部の面積、Ufは土間床M5における中央部の熱貫流率である。
【0044】
つまり、Q値算出部32では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに含まれる各外皮部位Miの面積Ai、住宅X内の気積B、延べ床面積S等のデータと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Miの熱貫流率Ui及び温度差係数Hiとに基づいて、熱損失係数Qを算出する。
【0045】
建設地域取得部33は、顧客が住宅Xの建設を希望する建設地域情報を取得する。建設地域は、図6に示すように、I〜VIの各地域に区分されている。支店端末12から住宅Xの建設地域が入力されると、その建設地域が管理サーバ11側に送信される。管理サーバ11側において建設地域が受信されると、建設地域取得部33はその受信した建設地域に対応する区分を建設地域情報として取得する。
【0046】
Q値等級判定部34では、Q値算出部32で算出された熱損失係数Qと、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて、熱損失係数Qの等級(以下、Q値等級という)を判定する。記憶部15には、図7に示すように、Q値等級を、各建設地域I〜VIとに割り当てた熱損失係数Qの基準値と対応付けたテーブルが予め記憶されており、Q値等級判定部34ではこのテーブルを用いてQ値等級を判定する。例えば、建設地域がIV(例.東京)であり、Q値算出部32で算出された熱損失係数Qが3.0であれば、Q値等級が3と判定される。
【0047】
μ値算出部36では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Mの断熱特性データとに基づいて、住宅Xの夏季日射取得係数(μ値)を算出する。この場合、夏季日射取得係数μは、以下の(3)式を用いて算出される。
【0048】
μ=住宅Xに侵入する日射量/延べ床面積 …(3)
なおここで、住宅Xに侵入する日射量とは、屋根M1、外壁M2及び開口部M3を通じて住宅Xに侵入する日射量の合計である。
【0049】
より詳細には、夏季日射取得係数μは、以下の(4)式を用いて算出される。
【0050】
μ=Σ(ΣAijηij)vj/S …(4)
ここで、vjは方位jの方位係数、ηijは外皮部位Mi(詳しくは屋根M1、外壁M2、開口部M3が対象)における方位jの夏季日射取得率、Aijは方位jにおける外皮部位Miの面積(但し、屋根M1については水平投影面積)である。
【0051】
つまり、μ値算出部36では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに含まれる屋根M1、外壁M2、開口部M3の各方位ごとの面積Aij及び延べ床面積Sのデータと、断熱特性データベース31に記憶された上記各部位M1〜M3の方位ごとの夏季日射侵入率ηijと、方位係数vjとに基づき、夏季日射取得係数μを算出する。なお、方位係数vjは、外皮部位M1〜M3の方位と、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて求められる。具体的には、記憶部15には、方位係数vjについて外皮部位M1〜M3の方位jと建設地域I〜VIとに対応付けたテーブルが予め記憶されており、μ値算出部36はそのテーブルを用いて方位係数vjを求める。
【0052】
μ値等級判定部37では、μ値算出部36で算出された夏季日射取得係数μと、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて、夏季日射取得係数μの等級(以下、μ値等級という)を判定する。記憶部15には、図8に示すように、μ値等級を、各建設地域I〜VIごとに割り当てた夏季日射取得係数μの基準値と対応付けたテーブルが予め記憶されており、μ値等級判定部37ではこのテーブルを用いてμ値等級を判定する。例えば、建設地域がIV(例.東京)であり、μ値算出部36で算出された夏季日射取得係数μが0.08であれば、μ値等級が3と判定される。
【0053】
省エネ等級判定部38では、Q値等級判定部34で判定されたQ値等級と、μ値等級判定部37で判定されたμ値等級とに基づいて、省エネルギ対策等級を判定する。省エネ等級判定部38は、Q値等級及びμ値等級のうち低い方の等級を省エネルギ対策等級として判定する。ここで、住宅性能表示制度中の「5−1省エネルギ対策等級」の規定によれば、Q値等級及びμ値等級に、結露発生防止対策に関する基準で定められた等級(以下、結露発生防止等級という)を加えた3つの等級のうち最も低い等級を省エネルギ対策等級(以下、略して省エネ等級という)とすることを定めているが、本断熱性能評価処理では、結露発生防止等級の判定は行っていない。このため、本評価処理では、上述したようにQ値等級及びμ値等級の2つの等級に基づいて省エネ等級を判定することとしている。
【0054】
但し、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて結露発生防止等級を判定する結露発生防止等級判定部を設け、省エネ等級判定部38において、Q値等級判定部34、μ値等級判定部37及び結露発生防止等級判定部の各判定部により判定された3つの等級のうち最も低い等級を省エネ等級と判定するようにしてもよい。
【0055】
目標性能設定部41は、支店端末12側からの入力操作に基づいて、住宅Xについて目標とする断熱性能を設定する。具体的には、目標性能設定部41は、目標の断熱性能を、目標の省エネルギ対策等級として設定する。この設定は、例えば住宅販売会社の支店の販売スタッフが、顧客から住宅Xに要求する省エネ等級を聞き出し、その省エネ等級を支店端末12(操作部18)に入力することで行われる。
【0056】
過不足判定部42は、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、すなわち断熱性能算出部30により算出された断熱性能が、目標性能設定部41により設定された目標の断熱性能に対して、不足か過剰かを判定する。具体的には、過不足判定部42では、省エネ等級判定部38において判定された省エネ等級が、目標性能設定部41により設定された目標の省エネ等級に対して、下回っているか又は上回っているかを判定する。これにより、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が評価される。
【0057】
以上が、断熱性能評価部23による断熱性能評価処理の流れである。そして、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、目標の断熱性能に対して不足しているとの評価が当該評価部23(詳しくは過不足判定部42)によりなされた場合、第2設計部24による二次設計が行われる。以下、この二次設計処理について図4に基づいて説明する。なお、図4は、二次設計処理を示す機能ブロックである。
【0058】
図4に示すように、優先変更条件設定部45は、支店端末12からの入力操作に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mを第2設計部24により設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する。優先変更条件設定部45では、住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行う際、所定の外皮部位M(例えば屋根M1)に関する設計変更を優先して行ったり、所定の外皮部位M(例えば外壁M2)以外について優先して設計変更を行ったりする等の条件設定を行うことができる。本実施形態では、顧客が、住宅Xの窓開口部M3aについてシャッタを設置したくないとの要望を持っており、そのため、優先変更条件として、窓開口部M3aへのシャッタの設置以外の設計変更を優先して行う旨の優先変更条件が設定されている。
【0059】
変更案作成部46は、過不足判定部42による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての複数の仕様変更案を作成する。変更案作成部46は、各外皮部位Mごとに1又は複数の仕様変更案を作成する。変更案作成部46により作成される複数の仕様変更案には、断熱性能の異なるもの、外観デザインの異なるもの、間取りの異なるものが含まれており、顧客による種々の要求に応じた変更案を顧客に対して提示可能となっている。
【0060】
変更案作成部46による仕様変更案の作成について具体的には、変更案データベース47には、各外皮部位Mについての複数の仕様変更案が予め記憶されている。そして、変更案作成部46では、過不足判定部42の判定結果に応じた仕様変更案を同データベース47から複数抽出することにより仕様変更案を作成する。例えば、過不足判定部42により、省エネ等級判定部38により判定された省エネ等級が、目標性能設定部41により設定された目標の省エネ等級に対して不足している(下回っている)と判定された場合には、変更案データベース47より外皮部位Mの断熱性能を高める仕様変更案(以下、高断熱変更案という)を抽出する。また、省エネ等級判定部38により判定された省エネ等級が、目標の省エネ等級に対して過剰である(上回っている)と判定された場合には、変更案データベース47より外皮部位Mの断熱性能を低める仕様変更案(以下、低断熱変更案という)を抽出する。本実施形態では、上述したように、過不足判定部42により、第1設計部22により設計された住宅Xの省エネ等級が、目標の省エネ等級に対して不足しているとの評価がなされているため、変更案作成部46により仕様変更案として高断熱変更案が作成される。なお、過不足判定部42による判定の結果、省エネ等級判定部38で判定された住宅Xの省エネ等級が目標の省エネ等級と同じである場合は、プリンタ等に設計結果を出力し、その後本住宅設計評価処理を終了する。
【0061】
また、変更案作成部46は、優先変更条件設定部45により設定された優先変更条件にしたがって、仕様変更案を作成する。例えば、優先変更条件として、所定の設計変更以外を優先して設計変更する旨の条件設定がなされている場合は、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、当該所定の設計変更に対応する仕様変更案については作成せず、それ以外の仕様変更案を作成する。また、優先変更条件として、所定の設計変更を優先する旨の条件設定がなされている場合は、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、当該優先されている設計変更に対応する仕様変更案を優先して作成する。本実施形態では、優先変更条件として、窓開口部M3aへのシャッタ設置以外の設計変更を優先して行う旨の条件設定がなされているため、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、シャッタの設置に関する仕様変更案については作成せず、それ以外の仕様変更案を優先して作成する。
【0062】
変更案表示部48は、変更案作成部46により作成した外皮部位Mについての仕様変更案を支店端末12の表示部19に表示させる。具体的には、変更案表示部48は、支店端末12に対して上記作成された外皮部位Mの仕様変更案を送信する。そして、支店端末12側でこの仕様変更案が受信されると、変更案表示部48はその仕様変更案を表示部19に表示させる。なお、変更案作成部46及び変更案表示部48により変更案作成手段が構成される。
【0063】
変更案表示部48は、変更案作成部46により作成した外皮部位Mに関する複数の仕様変更案を表示部19に対して同時に表示させる。また、変更案表示部48は、各外皮部位Mごとにそれぞれ1又は複数の仕様変更案を表示部19に表示させる。本実施形態では、変更案作成部46により仕様変更案として高断熱変更案が作成されるため、表示部19には高断熱変更案が表示される。ここで、変更案表示部48により表示される仕様変更案(高断熱変更案)の表示内容を図9に基づいて説明する。なお、図9は、各外皮部位Mの仕様変更案を表形式で表示した表示画面(変更案表示画面)を示す図である。
【0064】
図9に示すように、変更案表示画面には、例えば住宅Xの窓開口部M3aに関して複数の仕様変更案(詳しくは高断熱変更案)が表示されている。具体的には、住宅Xの各方角に設けられた各々の窓開口部M3aに関しての仕様変更案がそれぞれ表示されており、これら各仕様変更案がそれぞれ現状の仕様(すなわち第1設計部22による一次設計時点での仕様)と対比して示されている。ここで、複数の窓開口部M3aのうち、例えば1階南側のリビングに設けられた窓開口部M3aについては複数(具体的には4つ)の仕様変更案が表示されている。詳しくは、複数の仕様変更案として、窓開口の大きさについて現状(1800×1800mm)よりも小さくした仕様変更案A(1800×1500mm)及びB(1800×1200mm)、サッシについて現状(一般用サッシ)よりも断熱性を高めた仕様変更案C(断熱用サッシ)、窓開口の周囲に新たに庇(外部付属物に相当)を付加した仕様変更案Dが表示されている。また、土間床M5については、床面の大きさを現状(5000×4000mm)よりも小さくした仕様変更案E(4000×4000mm)及びF(2500×4000mm)が表示されている。
【0065】
ここで、変更案表示画面に表示された複数の仕様変更案についてさらに説明すると、複数の仕様変更案には、外観デザインの異なる複数の変更案が含まれている。例えば窓開口部M3aに関する仕様変更案A及びDは庇の有無により外観デザインが異なる。また、複数の仕様変更案には、間取りの異なる複数の変更案が含まれている。例えば、土間床M5に関する仕様変更案E及びFは、土間床M5の床面積が異なり、したがって1階部分の土間床M5周辺の間取りが異なる。さらに、複数の仕様変更案には、断熱性能の異なる複数の変更案が含まれている。例えば、窓開口部M3aに関する仕様変更案A及びBは、窓開口の大きさが異なることから窓開口部M3aを介しての熱損失量が異なる。
【0066】
また、変更案表示画面には、同画面に表示された仕様変更案を採用した場合に現状に対して熱損失係数Q及び夏季日射取得係数μがどれだけ変動するかに関する変動量が各仕様変更案ごとに併せて表示される。例えば、1階南側のリビングの窓開口部M3aに関する複数の仕様変更案A〜Dのうち、窓開口の大きさを1800×1500mmとする仕様変更案Aを採用した場合には、Q値が0.01、μ値が0.001低減する旨が表示されている。この場合、各外皮部位Mについていずれの仕様変更案を採用すると、断熱性能がどれだけ変動する(図9では下がる)かを知ることができるため、仕様変更案を選択する際に役立つ。
【0067】
また、変更案表示画面には、各外皮部位Mの仕様変更案ごとに、選択受付部としてのチェックボックス(変更案選択欄)が設けられている。操作部18による操作によりチェックボックスにチェックを入れることで、各外皮部位Mについて顧客が希望する仕様変更案を選択できる。本実施形態では、例えば1階南側のリビングの窓開口部M3aについては窓開口を1800×1500mmの大きさとする仕様変更案Aが選択され、土間床M5については床面の大きさを2500×4000mmの大きさとする仕様変更案Fが選択されている。そして、チェックボックスにチェックを入れた後、「決定」ボタン65がマウスによりクリックされると、上記選択した仕様変更案が確定され、その確定された仕様変更案(選択変更案情報)が制御部17より管理サーバ11側に送信される。
【0068】
図4の説明に戻り、選択変更案取得部49は、変更案表示部48により支店端末12の表示部19に表示された外皮部位Mについての複数の仕様変更案のうち、操作部18の操作により選択された仕様変更案を取得する。選択変更案取得部49は、支店端末12から送信される選択変更案情報に基づいて、選択された仕様変更案を取得する。本実施形態では、選択変更案取得部49により、1階南側のリビングの窓開口部M3aについて窓開口を1800×1500mmの大きさとする仕様変更案A等が取得される。
【0069】
同型式設計部51及び異型式設計部52では、選択変更案取得部49により取得された仕様変更案(高断熱変更案)に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの設計変更を行う。本実施形態では、これら各設計部51,52によりそれぞれ、第1設計部22により一次設計された住宅Xに関して異なる設計変更(二次設計)が行われる。
【0070】
同型式設計部51は、第1設計部22により設計した住宅Xと同じ型式の住宅Xに設計変更を行う。本実施形態では、第1設計部22により一次設計した住宅Xがユニット工法からなるユニット式住宅であるため、ユニット式住宅のまま設計変更が行われる。
【0071】
異型式設計部52は、第1設計部22により一次設計した住宅Xとは異なる型式の住宅Xに設計変更を行う。本実施形態では、一次設計されたユニット式の住宅Xから、鉄骨軸組工法からなる鉄骨軸組式の住宅Xへの設計変更が行われる。異型式設計部52による設計変更は、例えば、同型式設計部51による設計変更が行われた後、その設計変更(二次設計)された住宅X(すなわちユニット式の住宅X)を基にして行われる。したがって、同型式設計部51により設計されたユニット式の住宅Xと、異型式設計部52により設計された鉄骨軸組式の住宅Xとは、断熱性能がほぼ同じとなっており、また外観デザインや間取りについても大きな差異がないものとなっている。
【0072】
上述した住宅表示部25では、同型式設計部51及び異型式設計部52により設計変更された各型式の住宅Xをそれぞれ表示部19に表示させる。図10には、各設計部51,52により設計変更された各々の住宅Xを表示した表示画面(住宅表示画面)が示されている。以下、この図10に基づいて、住宅表示部25により表示された住宅表示画面について説明する。なお、図10には、各種符号が示されているが、これらの符号は説明の便宜上付したものであり、実際の住宅表示画面上には表示されないものとなっている。
【0073】
図10に示すように、住宅表示画面には、同型式設計部51により設計変更された住宅X(以下、同型式住宅X1という)と、異型式設計部52により設計変更された住宅X(以下、異型式住宅X2という)と、が表示されている。また、住宅表示画面には、これら設計変更後の各住宅X1,X2の他に、設計変更前の住宅X,すなわち第1設計部22により一次設計された住宅X(以下、変更前住宅X0という)も併せて表示されている。これら各住宅X0〜X2はそれぞれ2次元の画像として表示されており、具体的には各住宅X0〜X2はそれぞれ1階部分の間取りを示す平面図、住宅Xを南側から見た立面図として示されている。なお、各住宅X0〜X2の表示は、必ずしもこのような態様で行う必要はなく、例えば住宅X0〜X2を3次元の画像として表示したり、住宅X0〜X2の縦断面図や横断面図を示したりする等任意でよい。
【0074】
住宅表示画面に示された同型式住宅X1は、変更前住宅X0に対して、例えば1階部分南側のリビングLの窓開口部M3aが小さくなっている(図10における住宅X0,X1の立面図参照)。具体的には、同型式住宅X1では、上記窓開口部M3aが、変更案表示画面中(図9参照)において選択された高断熱変更案A(窓開口の大きさを1800×1500mmに小さくする変更案)のものに置き換えられている。この場合、設計変更に伴い、住宅X南面の外観がどのように変化するかを確認できる。また、同型式住宅X1は、変更前住宅X0に対して、土間床M5(玄関土間)の床面積が小さくなっている(図10における住宅X0,X1の平面図参照)。具体的には、変更前住宅X0に対して土間床M5が変更案表示画面中(図9参照)において選択された高断熱変更案F(2500×4000mm)のものに置き換えられている。この場合、設計変更に伴い、住宅X1階部分における土間床M5周辺の間取りがどのように変化するかを確認できる。
【0075】
また、異型式住宅X2は、変更前住宅X0に対して、リビングLの窓開口部M3a及び土間床M5について、同型式住宅X1と同様の設計変更がなされているため、1階南面の外観及び1階部分の土間床M5周辺の間取りが、同型式住宅X1とほぼ同じとなっている。しかしながら、異型式住宅X2は、屋根M1の形状が同型式住宅X1とは異なっており、そのため屋根周辺の外観が同型式住宅X1とは相違している(図10における住宅X1,X2の立面図参照)。この場合、顧客が当初から想定していた住宅とは異なる型式の住宅についても顧客に提示できる。
【0076】
以上のように、本システム10によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xに関し、断熱性能を高めるべく、外皮部位Mについて設計変更することで、住宅Xの外観デザインや間取りがどのように変化するかを視覚的に確認できるようになっている。
【0077】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0078】
住宅Xの設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求データ取得部21と、取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの設計を行う第1設計部22と、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価する断熱性能評価部23と、断熱性能評価部23による評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更する第2設計部24と、第2設計部24により設計変更した住宅Xを表示部19に表示させる住宅表示部25と、を備える構成とした。この場合、住宅Xの設計時において、先ずは外観デザインや間取りに関する顧客要求データを優先して住宅Xの一次設計が行われる。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅Xが設計される。また、一次設計された住宅Xについて断熱性能が評価され、その評価結果に基づいて、当該一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更が行われる(二次設計)。そして、設計変更した住宅Xが表示部19に表示されるため、当初から想定していた住宅プランをベースにしつつ断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示することができる。これにより、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、しかも断熱性能に関する要求を満足させることができる。
【0079】
また、一次設計された住宅Xの断熱性能が顧客の要求に満たなかったとしても、一次設計された住宅Xをベースとして設計変更が行われるため、一からの設計変更を強いられることがなく、設計変更を必要最小限に抑えることができる。
【0080】
断熱性能評価部23に、第1設計部22により設計した住宅Xの断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定部42を備え、第2設計部24により、過不足判定部42の判定結果に基づき、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mの設計変更を行うようにした。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xの断熱性能が、顧客の要求する目標の断熱性能に対し不足しているか過剰となっているかに基づき、当該一次設計された住宅Xの設計変更が行われる。したがって、一次設計された住宅Xの断熱性能が目標の断熱性能に対し不足している場合には、断熱性能を高めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足させたり、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し過剰となっている場合には、断熱性能を低めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足する範囲で住宅製造コストの低減を行ったりすることができる。これにより、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0081】
第2設計部24に、断熱性能評価部23による判定結果(具体的には過不足判定部42による判定結果)に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案を作成する変更案作成部46と、当該作成された仕様変更案を表示部19に表示させる変更案表示部48とを設けた。そして、表示部19に表示された外皮部位Mの仕様変更案に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの設計変更を行うようにした。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能に基づき、当該住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案が作成される。この仕様変更案は表示部19に表示され、顧客は当該表示された外皮部位Mについての仕様変更案を参照しながら好みの変更案を決定できる。そして、決定された好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅Xについて外皮部位Mの設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、設計変更に関して顧客の要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0082】
具体的には、変更案作成部46では、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについて複数の仕様変更案を作成し、変更案表示部48では、それら複数の仕様変更案を表示部19に表示させた。そして、それら表示された複数の仕様変更案のうち、操作部18の操作により選択された仕様変更案に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの設計変更を行うようにした。
【0083】
より具体的には、変更案表示部48では、表示部19に対し外皮部位Mに関する複数の仕様変更案を同時に表示させるようにした。この場合、複数の仕様変更案が一度にまとめて提示されるため、顧客にとって好みの変更案をいち早く見つけることが可能となり、繰り返しの設計変更を少なくすることができる。
【0084】
また、表示部19に表示させる複数の仕様変更案として、外観デザインの異なる複数の変更案、間取りの異なる複数の変更案、及び断熱性能の異なる複数の変更案を含めた。この場合、外観デザイン、間取り及び断熱性能についてバリエーションに富んだ仕様変更案の提示ができるため、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。なお、表示部19に表示させる複数の仕様変更案として、外観デザインの異なる複数の変更案、間取りの異なる複数の変更案、及び断熱性能の異なる複数の変更案のうちいずれか1つ又は2つを含めるようにしてもよい。
【0085】
第2設計部24に、設計変更の際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定部45を備えたため、所定の外皮部位M(例えば屋根M1)を優先して設計変更したり、所定の外皮部位M(例えば外壁M2)以外を優先して設計変更したりする等の条件設定を行うことができる。これにより、設計変更に際して顧客のニーズを加味することができるため、より一層顧客ニーズに応じた住宅を顧客に提示することが可能となる。
【0086】
第1設計部22では、顧客要求データ取得部21により取得される顧客要求データに含まれる型式選択データ(本実施形態では、ユニット式住宅であることを示すデータ)に基づいて住宅Xの設計を行い、第2設計部24には、第1設計部22により設計した住宅Xと同じ型式の住宅Xに設計変更を行う同型式設計部51と、第1設計部22により設計した住宅Xとは異なる型式の住宅Xに設計変更を行う異型式設計部52とを設けた。そして、住宅表示部25では、同型式設計部51及び異型式設計部52により設計変更した各型式の住宅Xをそれぞれ表示部19に表示させるようにした。この場合、顧客が当初から想定していた型式の住宅(ユニット式住宅)の他に、それとは異なる型式の住宅(鉄骨軸組式住宅)についても顧客に提示できる。これにより、顧客に対して提示できる住宅プランのバリエーションを増やすことができ、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。
【0087】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0088】
(1)図11に示すように、第1設計部22により設計した住宅Xの製造コストを評価する住宅コスト評価部55をさらに備え、第2設計部24において、断熱性能評価部23による評価結果に加えて住宅コスト評価部55による評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うようにしてもよい。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xに関して断熱性能の評価とともに製造コストの評価が行われる。そして、断熱性能の評価結果に加え製造コストの評価結果に基づいて、一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更が行われる。これにより、当初から想定していた住宅プランをベースにしながら、断熱性能に加えコストをも充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。したがって、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、断熱性能に関する要求のみならず製造コストに関する要求をも満足させることができる。
【0089】
具体的には、住宅コスト評価部55において、第1設計部22により設計した住宅Xの製造コストが予め設定した目標の製造コストを上回っているか否かを判定する目標コスト判定部を設け、第2設計部24では、目標コスト判定部による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うことが考えられる。この場合、一次設計した住宅Xの製造コストが目標コストを上回っている場合には、製造コストを低減させるよう設計変更したり、一次設計した住宅Xの製造コストが目標の製造コストを下回っている場合には、製造コストが目標コストを上回らない範囲で断熱性能を高めるよう設計変更したりすることができる。これにより、顧客の要求する製造コストを充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0090】
また、図4に示す第2設計部24において、変更案作成部46では、目標コスト判定部による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案を作成し、変更案表示部48では、その作成された仕様変更案を表示部19に表示させるようにしてもよい。この場合、一次設計された住宅Xの製造コストの評価結果に基づき作成された外皮部位Mの仕様変更案を参照しながら、顧客は好みの変更案を決定でき、その決定した好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅Xについて設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する製造コストを充足させつつ、設計変更に関するその他の顧客要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0091】
(2)上記実施形態では、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、予め設定された目標の断熱性能(詳細には、目標性能設定部41により設定された断熱性能)に対して不足か過剰かを判定し、その判定結果に基づいて一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うこととしたが、これを変更してもよい。例えば、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、目標の断熱性能に対して不足しているか否か、又は、目標の断熱性能に対して過剰となっているか否かのいずれかのみを判定し、その判定結果に基づいて一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更を行ってもよい。
【0092】
また、第1設計部22により一次設計された住宅Xの断熱性能に対して、断熱性能を所定高さ分高めるように当該一次設計された住宅Xの外皮部位Mを設計変更してもよい。例えば、一次設計された住宅Xの省エネルギ対策等級に対して、省エネルギ対策等級を所定の級数分(例えば2)上げるように設計変更することが考えられる。
【0093】
(3)変更案表示部48により表示部19に表示する仕様変更案を、該設計変更の内容を示す画像として表示してもよい。例えば、窓開口部M3aに対して庇を新たに設置する仕様変更案の場合、窓開口部M3aの上方に庇を取り付けた画像を仕様変更案として表示することが考えられる。この場合、各仕様変更案に関する外観イメージをつかみやすいため、顧客が好みの仕様変更案を的確に選択することが期待でき、その結果繰り返しの設計変更を抑制することができる。
【0094】
また、この場合、変更案表示部48により、上述した画像からなる複数の仕様変更案と併せて、第1設計部22により一次設計された住宅Xを表示部19に同時に表示するようにし、表示部19に表示された複数の仕様変更案のうち操作部18の操作(例えばマウスによるクリック操作やドラッグ操作)により選択された仕様変更案に基づいて、一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更を、住宅Xを表示部19に表示させたまま行うようにしてもよい(二次設計)。この場合、顧客が好みの仕様変更案を選ぶと、表示部19に表示されている住宅Xにその設計変更の内容が即座に反映されるため、顧客が種々の仕様変更案を試しながら希望の住宅Xを見つけ出す場合には便利である。なお、かかる構成では、住宅Xの二次設計(第2設計部24による二次設計に相当)と、二次設計された住宅Xの表示部19に対する表示(住宅表示部25による表示処理に相当)が一度に行われる。
【0095】
さらに、上記の構成において、住宅Xを表示部19に表示させたまま、一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更が行われた場合に、その設計変更された住宅Xの断熱性能を算出し、その断熱性能を当該住宅Xが表示されている表示画面上に表示するようにしてもよい。そうすれば、顧客が好みの仕様変更案を選ぶと、設計変更された住宅Xとともに、当該住宅Xの断熱性能についても表示されるため、顧客が種々の仕様変更案を試しながら希望の住宅Xを見つけ出す際に、外観デザインや間取りだけでなく、断熱性能についても参照することができ、より一層利便性を高めることができる。
【0096】
(4)優先変更条件設定部45により設定できる優先変更条件は、上記実施形態のものに限ることなく、以下のようなものでもよい。例えば、断熱性能がより高くなる設計変更を優先して行う旨の条件設定をしたり、住宅の製造コストがより低くなる設計変更を優先して行う旨の条件設定をしたりすることができる。これにより、断熱性能又は住宅コストを重要視する顧客に対しニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0097】
また、優先変更条件として、設計変更に関する優先順位を設定してもよい。例えば、住宅の製造コストよりも断熱性能を優先させたい場合には、住宅の製造コストを低くする設計変更よりも断熱性能を高める設計変更を優先して行う旨の条件設定を行うことが考えられる。
【0098】
(5)上記実施形態では、住宅Xの外観デザイン及び間取りの双方を含む顧客要求データを顧客要求データ取得部21により取得する構成としたが、住宅Xの外観デザイン又は間取りのいずれかを含む顧客要求データを同取得部21により取得する構成としてもよい。この場合、顧客の好みの外観デザイン又は間取りのいずれかに応じた住宅が一次設計される。
【0099】
(6)住宅Xの熱損失係数Qは、上述した(1)又は(2)式によれば、換気による熱損失量(0.35nB)に依存している。このため、住宅Xの見かけの換気回数nを減らすことによっても、熱損失係数Qを小さくすることができ、ひいては省エネルギ対策等級を高くすることができる(例えば、建設地域がIVであれば、Q値が5.2の場合省エネ等級が2であるのに対し、Q値が4.2の場合は省エネ等級が3となる)。そこで、変更案作成部46により作成する仕様変更案として、住宅Xの見かけの換気回数nを低減させる変更案を含めてもよい。例えば、住宅X内に熱交換機能を備えた換気装置を設置して換気制御を行う場合、熱量を維持したまま換気を行うことが可能なため、換気による熱損失を減らすことができ、その結果見かけの換気回数nを低減することができる。そこで、仕様変更案として、住宅X内に熱交換機能を備えた換気装置を設置する変更案を含めることが考えられる。この場合、住宅Xの外観デザインを変更することなく、設計変更を行うことができるため、顧客の好みの外観デザインからなる住宅プランを顧客に提示することが可能となる。
【0100】
(7)上記実施形態では、変更案表示部48において、変更案作成部46により作成した複数の変更仕様案を同時に表示部19に表示させるようにしたが、これを変更して、複数の仕様変更案を順次表示部19に表示させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、変更案作成部46により複数の仕様変更案を作成したが、仕様変更案をひとつだけ作成するようにしてもよい。この場合、変更案表示部48ではそのひとつの仕様変更案だけが表示部19に表示されることとなり、例えば操作部19を用いてその表示された変更案に決定するか否かの操作を行う。
【0101】
(8)上記実施形態では、住宅設計システム10を、住宅販売会社の支店に訪れた顧客との応対時に用いる場合を例に説明したが、本システム10を例えば住宅展示場に訪れた顧客との応対時に用いてもよい。この場合、住宅展示場に、顧客の好みの外観デザインを有した住宅や、顧客の要求する断熱性能を充足した住宅が展示されていない場合でも、顧客が想定しているデザインプランをベースにしつつ、断熱性能を充足した住宅プランを顧客に提示できる。
【0102】
また、本システム10を、既設の住宅をリフォームする際に利用してもよい。この場合、リフォーム後の住宅に関して外観デザイン及び間取りの少なくもいずれかを含む顧客要求を取得し、その取得した顧客要求に基づいて住宅を一次設計し断熱性能の評価を行う。そして、断熱性能の評価結果に基づいて一次設計した住宅の設計変更を行う。これにより、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズを満たしつつ断熱性能を満足する住宅リフォームプランを提示できる。
【符号の説明】
【0103】
10…住宅設計システム、11…管理サーバ、12…支店端末、19…表示ディスプレイとしての表示部、21…顧客要求取得手段としての顧客要求データ取得部、22…第1設計手段としての第1設計部、23…断熱性能評価手段としての断熱性能評価部、24…第2設計手段としての第2設計部、25…住宅表示手段としての住宅表示部、42…過不足判定手段としての過不足判定部、45…優先変更条件設定手段としての優先変更条件設定部、51…同型式設計手段としての同型式設計部、52…異型式設計手段としての異型式設計部、55…住宅コスト評価手段としての住宅コスト評価部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の購買に関して、住宅の外観デザインや間取りに対する顧客ニーズが多種化する傾向にある。そこで、住宅販売会社側では、こうした顧客ニーズに応えるべく顧客側に様々な住宅プランを提案するようにしている。
【0003】
また、近年、省エネルギの観点等から、断熱性能に優れた住宅が求められており、住宅販売業者側では、顧客側に対して住宅の断熱性能を提示することがある。住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)に基づき定められた住宅性能表示制度には、住宅の断熱性能に関する基準として省エネルギ対策等級が規定されている。省エネルギ対策等級は、住宅の熱損失係数Qや夏季日射取得係数μ等に基づいて判定されるものである。省エネルギ対策等級、熱損失係数Q、夏季日射取得係数μはいずれも断熱性能を示す指標であり、住宅販売会社は、例えばこれらの断熱指標を用いて顧客に断熱性能を提示している。なお、特許文献1には、住宅に関する設計データを入力し、その設計データに基づいて熱損失係数Qを算出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−239161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズが強いからといって外観デザインや間取りに偏重した住宅設計を行うと、断熱性能が所望とする性能レベルを満たさないことになる場合があり、かかる場合には、住宅設計のやり直しが強いられる。その一方で、最初から断熱性能を重視した住宅設計を行うと、外観デザインや間取りに制約が生じ、これら外観デザインや間取りに関して顧客ニーズを満たすことができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズを満たしつつも住宅断熱性能を満足することができる住宅設計システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の住宅設計システムは、住宅の設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求取得手段と、前記顧客要求データに基づいて住宅の設計を行う第1設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅について断熱性能を評価する断熱性能評価手段と、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅において断熱性能に関与する部位として予め定められた断熱機能部位について設計変更する第2設計手段と、前記第2設計手段により設計変更した住宅を表示ディスプレイに表示させる住宅表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、住宅の設計時において、先ずは外観デザインや間取りに関する顧客要求データを優先して住宅の設計が行われる(一次設計)。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅が設計される。また、設計済みの住宅について断熱性能が評価され、その評価結果に基づいて、設計済みの住宅の断熱機能部位について設計変更が行われる(二次設計)。したがって、例えば、設計済みの住宅の断熱性能が顧客の要求に満たないと評価された場合に、断熱性能を高めるように設計変更することができる。そして、設計変更した住宅が表示ディスプレイに表示されるため、当初から想定していた住宅プランをベースにしつつ断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示することができる。これにより、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、しかも断熱性能に関する要求を満足させることができる。
【0009】
また、一次設計された住宅の断熱性能が顧客の要求に満たなかったとしても、一次設計された住宅をベースとして設計変更が行われるため、一からの設計変更を強いられることがなく、設計変更を必要最小限に抑えることができる。
【0010】
第2の発明の住宅設計システムは、第1の発明において、前記断熱性能評価手段は、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定手段を備え、前記第2設計手段は、前記過不足判定手段による判定結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能が、顧客の要求する目標の断熱性能に対し不足しているか過剰となっているかに基づき、当該一次設計された住宅について設計変更が行われる。したがって、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し不足している場合には、断熱性能を高めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足させたり、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し過剰となっている場合には、断熱性能を低めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足する範囲で住宅製造コストの低減を行ったりすることができる。これにより、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0012】
第3の発明の住宅設計システムは、第1又は第2の発明において、前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計された住宅の断熱機能部位についての仕様変更案を作成し、その仕様変更案を前記表示ディスプレイに表示させる変更案表示手段を備え、前記表示ディスプレイに表示された前記断熱機能部位の仕様変更案に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の設計変更を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能の評価結果に基づき、当該住宅の断熱機能部位について仕様変更案が作成される。この仕様変更案は表示ディスプレイに表示され、例えば顧客は当該表示された断熱機能部位についての仕様変更案を参照しながら好みの変更案を決定できる。そして、決定された好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅の設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、設計変更に関して顧客の要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0014】
第4の発明の住宅設計システムは、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記第2設計手段は、設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、一次設計された住宅の断熱機能部位を設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定できる。例えば、所定の開口部を優先して設計変更したり、所定の開口部以外を優先して設計変更したりする等の条件設定を行うことができる。これにより、設計変更に際して顧客のニーズを加味することができるため、より一層顧客ニーズに応じた住宅を顧客に提示することが可能となる。
【0016】
第5の発明の住宅設計システムは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記顧客要求取得手段により取得される顧客要求データには、建築工法の異なる複数の住宅型式から選ばれた型式選択データが含まれており、前記第1設計手段は、前記型式選択データを含む顧客要求データに基づいて住宅の設計を行い、前記第2設計手段は、前記第1設計手段により設計した住宅と同じ型式の住宅に前記設計変更を行う同型式設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅とは異なる型式の住宅に前記設計変更を行う異型式設計手段とを有し、前記住宅表示手段は、前記同型式設計手段及び前記異型式設計手段により設計変更した各型式の住宅をそれぞれ前記表示ディスプレイに表示させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、顧客が当初から想定していた型式の住宅の他に、それとは異なる型式の住宅についても顧客に提示できる。これにより、顧客に対して提示できる住宅プランのバリエーションを増やすことができ、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。
【0018】
第6の発明の住宅設計システムは、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記第1設計手段により設計した住宅の製造コストを評価する住宅コスト評価手段をさらに備え、前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に加えて前記住宅コスト評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅に関して断熱性能の評価とともに製造コストの評価が行われる。そして、断熱性能の評価結果に加え製造コストの評価結果に基づいて、一次設計された住宅の断熱機能部位について設計変更が行われる。これにより、当初から想定していた住宅プランをベースにしながら、断熱性能に加えコストをも充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。したがって、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、断熱性能に関する要求のみならず製造コストに関する要求をも満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】住宅設計システムの電気的構成を示す図。
【図2】住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図。
【図3】断熱性能評価処理を示す機能ブロック図。
【図4】二次設計処理を示す機能ブロック図。
【図5】住宅の概要を例示した図。
【図6】建設地域を説明するための説明図。
【図7】Q値等級を説明するための説明図。
【図8】μ値等級を説明するための説明図。
【図9】外皮部位の仕様変更案を表示した表示画面を示す図。
【図10】住宅を表示した表示画面を示す図。
【図11】別例における住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、住宅の設計に関する顧客要求に基づいて住宅の設計を行い、該設計に際し住宅について断熱性能の評価等を行う住宅設計システムについて具体化している。そこで、まず本システムの概要を図1に基づいて説明する。なお、図1は、住宅設計システムの電気的構成を示す図である。また、本実施形態では、住宅販売会社の販売スタッフが、同販売会社に訪れた顧客との面談時において、顧客から住宅に関する各種要求を聞き出し、その聞き出した顧客要求に基づいて本システムにより住宅の設計や、当該設計した住宅に関する各種評価等を行うことを想定している。
【0022】
図1に示すように、住宅設計システム10は、住宅販売会社の管理センタに設けられた管理サーバ11と、住宅販売会社の各支店に設けられ顧客対応時に販売スタッフが操作する支店端末12とにより構成されている。これら管理サーバ11及び各支店端末12はインターネット等の外部通信網を介して接続されており、互いに情報のやりとりが可能となっている。なお、図1では、便宜上、ひとつの支店の支店端末12のみを図示している。
【0023】
管理サーバ11は、住宅設計システム10において各種制御を行うものである。管理サーバ11は、制御部14と、記憶部15とを備えており、例えばパソコン等の端末装置により構成されている。制御部14は、住宅の設計処理や断熱性能の評価処理等、各種処理を行うものである。記憶部15には、設計処理や断熱性能の評価処理等各種処理を実行する制御プログラムと、断熱性能の評価等に必要な各種情報を格納するデータベースとが記憶されている。
【0024】
支店端末12は、制御部17と、操作部18と、表示部19とを備えており、例えばパソコン等の端末装置により構成されている。制御部17は、操作部18及び表示部19と接続されている。
【0025】
操作部18は、住宅設計及び断熱性能の評価を行うのに必要な情報等、各種情報の入力を受け付けるものであり、例えばキーボードやマウス等を備えてなる。本実施形態では、住宅販売会社の支店の販売スタッフが顧客から住宅に関する各種情報を聞き出して、その聞き出した情報を販売スタッフが操作部18に入力する。表示部19は、設計された住宅や断熱性能の評価結果等の各種情報を表示するものであり、例えばディスプレイ等を備えてなる。
【0026】
操作部18に対して入力操作が行われると、その入力操作に応じた情報が制御部17に入力され、制御部17はその情報を管理サーバ11に送信する。管理サーバ11では、支店端末12の制御部17から送信される各種情報に基づいて、住宅設計や断熱性能評価等の各種処理を実施する。そして、管理サーバ11は、必要に応じて処理の結果を支店端末12(制御部17)に送信する。支店端末12(制御部17)において処理結果が受信されると、制御部17はその処理結果を表示部19に表示させる。これにより、設計された住宅や、断熱性能の評価結果等を住宅販売会社の各支店において顧客に対し提示できる。
【0027】
次に、本住宅設計システム10により実行される住宅設計評価処理の流れについて図2に基づいて説明する。なお、図2は住宅設計評価処理の概要を示す機能ブロック図であり、本実施例では各図中の各々の機能ブロックが管理サーバ11と支店端末12とにより実現されるものとなっている。具体的には、図中の各機能ブロック21〜27のうち、顧客要求データ取得部21、第1設計部22、断熱性能評価部23、第2設計部24が管理サーバ11(制御部14)により実行され、住宅表示部25、住宅プラン決定部26、出力部27が支店端末12(制御部17)により実行される。なお、各機能ブロック21〜27について管理サーバ11及び支店端末12への振り分け方は必ずしもこれに限定することなく、例えば各機能ブロック21〜27をすべて支店端末12側で実行させるようにしてもよい。
【0028】
また、図5には、顧客の要求に応じて設計された住宅Xの概要図が例示されている。この住宅Xは、ユニット工法からなる2階建てのユニット式住宅を想定しており、(a)が住宅X全体を示す断面図、(b)が住宅Xの一階部分の間取りを示す図となっている。ここでは、この住宅Xを対象として住宅設計評価処理が行われることを前提としている。
【0029】
図2に示すように、顧客要求データ取得部21は、住宅Xの設計に関する顧客要求が支店端末12側から入力されると、住宅Xの外観デザイン及び間取りを含む顧客要求を顧客要求データとして取得する。本実施形態では、顧客要求データとして、住宅Xの型式(つまりユニット工法からなるユニット式住宅)、気積B、延べ床面積S等のデータや、住宅Xを構成する各部位の部位データ等を取得する。なお、住宅Xの型式データは、建築工法の異なる複数の住宅型式(例えばユニット工法からなるユニット式住宅や、鉄骨軸組工法からなる鉄骨軸組式住宅等)から選択された選択型式データに相当する。また、部位データには、断熱機能を有する建物外皮の部位(以下、外皮部位Mという)のデータが含まれており、詳しくは屋根M1、外壁M2、開口部M3(詳しくは窓開口部M3a及びドア開口部M3b)、床M4、土間床M5(詳しくは玄関の土間床)等のデータが含まれている。これら各外皮部位Mのデータとしては、外皮部位Mの面積Aを示すデータ、外皮部位Mを構成する各構成部材の大きさや配置等を示すデータ、各構成部材の材料を示すデータ等が含まれている。なおここで、外皮部位Mが断熱機能部位に相当する。また、床M4には、土間床M5が含まれていない。
【0030】
第1設計部22は、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの一次設計を行うものである。第1設計部22は、例えば住宅設計用のCADプログラムを用いて住宅Xの設計を行う(後述の第2設計部24も同様)。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて住宅Xが一次設計される。
【0031】
断熱性能評価部23は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価するものである。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りからなる住宅Xについて断熱性能が評価される。
【0032】
第2設計部24は、断熱性能評価部23による断熱性能の評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて二次設計として設計変更を行う。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅プランをベースとしつつ、断熱性能を充足した住宅Xが二次設計される。以上の各処理が、管理サーバ11側で行われ、以下に説明する各処理は支店端末12側で行われる。
【0033】
住宅表示部25は、第2設計部24により設計変更(二次設計)した住宅Xを表示部19に表示させる。具体的には、管理サーバ11側で二次設計された住宅Xは同サーバ11から支店端末12側に送信される。そして、住宅表示部25は、支店端末12において受信された当該住宅Xを表示部19に表示させる。これにより、顧客の当初の住宅プランをベースにしつつ、断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。
【0034】
住宅プラン決定部26は、住宅表示部25により表示部19に表示された住宅Xを、顧客の要望に基づいて最終の住宅プランとして決定するものである。具体的には、住宅プラン決定部26は、表示された住宅Xについて顧客が満足したことを判定した場合に、当該住宅Xを最終の住宅プランとして決定する。この判定は、操作部18に対して入力された顧客の要望に基づいて行われる。
【0035】
出力部27は、表示部19に表示された住宅Xが住宅プラン決定部26により最終の住宅プランとして決定された場合、当該住宅プラン(例えば住宅Xの外観図・間取り図等)をプリンタ(図示略)に出力する。これにより、顧客の要望に基づき決定された代替住宅プランを顧客に印刷物として手渡すことができ、顧客に住宅Xの購入検討を促すことができる。
【0036】
次に、断熱性能評価部23による断熱性能評価処理について図3に基づいて詳細に説明する。なお、図3は、断熱性能評価処理を示す機能ブロックである。
【0037】
図3に示すように、断熱性能評価部23において、断熱性能算出部30は、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を算出するものであり、断熱性能評価部23では、同算出部30により算出された断熱性能について評価を行う。ここで、本実施形態では、例えば、断熱性能算出部30において、住宅Xの断熱性能を示す断熱性能指標のひとつである省エネルギ対策等級を算出することとしており、断熱性能評価部23では当該算出された省エネルギ対策等級に基づいて、住宅Xの断熱性能を評価することとしている。そこで、以下では、この断熱性能算出部30による省エネルギ対策等級の算出処理の流れをまず説明する。なお、省エネルギ対策等級の算出は周知の技術を適用することにより実現可能なものであり、以下に示す算出処理に限らず、その他の処理によって省エネルギ対策等級を算出してもよい。
【0038】
なお、断熱性能評価部23における断熱性能の評価は、必ずしも省エネルギ対策等級に基づいて行う必要はなく、後述する熱損失係数Qや夏季日射取得係数μ等その他の断熱性能指標に基づいて行ってもよい。
【0039】
断熱性能算出部30において、断熱特性データベース31は、外皮部位Mにおける断熱特性に関する断熱特性データを格納するものである。断熱特性データベース31には、各外皮部位Mごとに、断熱特性データとして、熱貫流率U、温度差係数H、夏季日射侵入率η等のデータが格納されている。なお、断熱特性データベース31は、管理サーバ11の記憶部15により構築されている。
【0040】
Q値算出部32では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Mの断熱特性データとに基づいて、住宅Xの熱損失係数(Q値)を算出する。この場合、熱損失係数Qは、以下の(1)式を用いて算出される。
【0041】
Q=(各外皮部位Miにおける熱損失量の合計+換気による熱損失量)/延べ床面積
…(1)
なおここで、外皮部位Miの熱損失量は、当該外皮部位Miにおける熱貫流率と面積との積を算出することにより求められる(外皮部位Miの熱損失量=熱貫流率×面積)。
【0042】
より詳細には、熱損失係数Qは,以下の(2)式を用いて算出される。
【0043】
Q=〔ΣAiUiHi+Σ(LfUlHi+AfUf)+0.35nB〕/S
…(2)
ここで、Aiは外皮部位Miの面積、Uiは外皮部位Miの熱貫流率、Hiは外皮部位Miの温度差係数、nは換気回数、Bは住宅X内の気積、Sは延べ床面積である。また、Lfは土間床M5における外周の長さ、Ulは土間床M5における外周の熱貫流率、Afは土間床M5における中央部の面積、Ufは土間床M5における中央部の熱貫流率である。
【0044】
つまり、Q値算出部32では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに含まれる各外皮部位Miの面積Ai、住宅X内の気積B、延べ床面積S等のデータと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Miの熱貫流率Ui及び温度差係数Hiとに基づいて、熱損失係数Qを算出する。
【0045】
建設地域取得部33は、顧客が住宅Xの建設を希望する建設地域情報を取得する。建設地域は、図6に示すように、I〜VIの各地域に区分されている。支店端末12から住宅Xの建設地域が入力されると、その建設地域が管理サーバ11側に送信される。管理サーバ11側において建設地域が受信されると、建設地域取得部33はその受信した建設地域に対応する区分を建設地域情報として取得する。
【0046】
Q値等級判定部34では、Q値算出部32で算出された熱損失係数Qと、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて、熱損失係数Qの等級(以下、Q値等級という)を判定する。記憶部15には、図7に示すように、Q値等級を、各建設地域I〜VIとに割り当てた熱損失係数Qの基準値と対応付けたテーブルが予め記憶されており、Q値等級判定部34ではこのテーブルを用いてQ値等級を判定する。例えば、建設地域がIV(例.東京)であり、Q値算出部32で算出された熱損失係数Qが3.0であれば、Q値等級が3と判定される。
【0047】
μ値算出部36では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データと、断熱特性データベース31に記憶された各外皮部位Mの断熱特性データとに基づいて、住宅Xの夏季日射取得係数(μ値)を算出する。この場合、夏季日射取得係数μは、以下の(3)式を用いて算出される。
【0048】
μ=住宅Xに侵入する日射量/延べ床面積 …(3)
なおここで、住宅Xに侵入する日射量とは、屋根M1、外壁M2及び開口部M3を通じて住宅Xに侵入する日射量の合計である。
【0049】
より詳細には、夏季日射取得係数μは、以下の(4)式を用いて算出される。
【0050】
μ=Σ(ΣAijηij)vj/S …(4)
ここで、vjは方位jの方位係数、ηijは外皮部位Mi(詳しくは屋根M1、外壁M2、開口部M3が対象)における方位jの夏季日射取得率、Aijは方位jにおける外皮部位Miの面積(但し、屋根M1については水平投影面積)である。
【0051】
つまり、μ値算出部36では、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに含まれる屋根M1、外壁M2、開口部M3の各方位ごとの面積Aij及び延べ床面積Sのデータと、断熱特性データベース31に記憶された上記各部位M1〜M3の方位ごとの夏季日射侵入率ηijと、方位係数vjとに基づき、夏季日射取得係数μを算出する。なお、方位係数vjは、外皮部位M1〜M3の方位と、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて求められる。具体的には、記憶部15には、方位係数vjについて外皮部位M1〜M3の方位jと建設地域I〜VIとに対応付けたテーブルが予め記憶されており、μ値算出部36はそのテーブルを用いて方位係数vjを求める。
【0052】
μ値等級判定部37では、μ値算出部36で算出された夏季日射取得係数μと、建設地域取得部33により取得した建設地域情報とに基づいて、夏季日射取得係数μの等級(以下、μ値等級という)を判定する。記憶部15には、図8に示すように、μ値等級を、各建設地域I〜VIごとに割り当てた夏季日射取得係数μの基準値と対応付けたテーブルが予め記憶されており、μ値等級判定部37ではこのテーブルを用いてμ値等級を判定する。例えば、建設地域がIV(例.東京)であり、μ値算出部36で算出された夏季日射取得係数μが0.08であれば、μ値等級が3と判定される。
【0053】
省エネ等級判定部38では、Q値等級判定部34で判定されたQ値等級と、μ値等級判定部37で判定されたμ値等級とに基づいて、省エネルギ対策等級を判定する。省エネ等級判定部38は、Q値等級及びμ値等級のうち低い方の等級を省エネルギ対策等級として判定する。ここで、住宅性能表示制度中の「5−1省エネルギ対策等級」の規定によれば、Q値等級及びμ値等級に、結露発生防止対策に関する基準で定められた等級(以下、結露発生防止等級という)を加えた3つの等級のうち最も低い等級を省エネルギ対策等級(以下、略して省エネ等級という)とすることを定めているが、本断熱性能評価処理では、結露発生防止等級の判定は行っていない。このため、本評価処理では、上述したようにQ値等級及びμ値等級の2つの等級に基づいて省エネ等級を判定することとしている。
【0054】
但し、顧客要求データ取得部21により取得した顧客要求データに基づいて結露発生防止等級を判定する結露発生防止等級判定部を設け、省エネ等級判定部38において、Q値等級判定部34、μ値等級判定部37及び結露発生防止等級判定部の各判定部により判定された3つの等級のうち最も低い等級を省エネ等級と判定するようにしてもよい。
【0055】
目標性能設定部41は、支店端末12側からの入力操作に基づいて、住宅Xについて目標とする断熱性能を設定する。具体的には、目標性能設定部41は、目標の断熱性能を、目標の省エネルギ対策等級として設定する。この設定は、例えば住宅販売会社の支店の販売スタッフが、顧客から住宅Xに要求する省エネ等級を聞き出し、その省エネ等級を支店端末12(操作部18)に入力することで行われる。
【0056】
過不足判定部42は、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、すなわち断熱性能算出部30により算出された断熱性能が、目標性能設定部41により設定された目標の断熱性能に対して、不足か過剰かを判定する。具体的には、過不足判定部42では、省エネ等級判定部38において判定された省エネ等級が、目標性能設定部41により設定された目標の省エネ等級に対して、下回っているか又は上回っているかを判定する。これにより、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が評価される。
【0057】
以上が、断熱性能評価部23による断熱性能評価処理の流れである。そして、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、目標の断熱性能に対して不足しているとの評価が当該評価部23(詳しくは過不足判定部42)によりなされた場合、第2設計部24による二次設計が行われる。以下、この二次設計処理について図4に基づいて説明する。なお、図4は、二次設計処理を示す機能ブロックである。
【0058】
図4に示すように、優先変更条件設定部45は、支店端末12からの入力操作に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mを第2設計部24により設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する。優先変更条件設定部45では、住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行う際、所定の外皮部位M(例えば屋根M1)に関する設計変更を優先して行ったり、所定の外皮部位M(例えば外壁M2)以外について優先して設計変更を行ったりする等の条件設定を行うことができる。本実施形態では、顧客が、住宅Xの窓開口部M3aについてシャッタを設置したくないとの要望を持っており、そのため、優先変更条件として、窓開口部M3aへのシャッタの設置以外の設計変更を優先して行う旨の優先変更条件が設定されている。
【0059】
変更案作成部46は、過不足判定部42による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての複数の仕様変更案を作成する。変更案作成部46は、各外皮部位Mごとに1又は複数の仕様変更案を作成する。変更案作成部46により作成される複数の仕様変更案には、断熱性能の異なるもの、外観デザインの異なるもの、間取りの異なるものが含まれており、顧客による種々の要求に応じた変更案を顧客に対して提示可能となっている。
【0060】
変更案作成部46による仕様変更案の作成について具体的には、変更案データベース47には、各外皮部位Mについての複数の仕様変更案が予め記憶されている。そして、変更案作成部46では、過不足判定部42の判定結果に応じた仕様変更案を同データベース47から複数抽出することにより仕様変更案を作成する。例えば、過不足判定部42により、省エネ等級判定部38により判定された省エネ等級が、目標性能設定部41により設定された目標の省エネ等級に対して不足している(下回っている)と判定された場合には、変更案データベース47より外皮部位Mの断熱性能を高める仕様変更案(以下、高断熱変更案という)を抽出する。また、省エネ等級判定部38により判定された省エネ等級が、目標の省エネ等級に対して過剰である(上回っている)と判定された場合には、変更案データベース47より外皮部位Mの断熱性能を低める仕様変更案(以下、低断熱変更案という)を抽出する。本実施形態では、上述したように、過不足判定部42により、第1設計部22により設計された住宅Xの省エネ等級が、目標の省エネ等級に対して不足しているとの評価がなされているため、変更案作成部46により仕様変更案として高断熱変更案が作成される。なお、過不足判定部42による判定の結果、省エネ等級判定部38で判定された住宅Xの省エネ等級が目標の省エネ等級と同じである場合は、プリンタ等に設計結果を出力し、その後本住宅設計評価処理を終了する。
【0061】
また、変更案作成部46は、優先変更条件設定部45により設定された優先変更条件にしたがって、仕様変更案を作成する。例えば、優先変更条件として、所定の設計変更以外を優先して設計変更する旨の条件設定がなされている場合は、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、当該所定の設計変更に対応する仕様変更案については作成せず、それ以外の仕様変更案を作成する。また、優先変更条件として、所定の設計変更を優先する旨の条件設定がなされている場合は、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、当該優先されている設計変更に対応する仕様変更案を優先して作成する。本実施形態では、優先変更条件として、窓開口部M3aへのシャッタ設置以外の設計変更を優先して行う旨の条件設定がなされているため、変更案作成部46は、仕様変更案の作成に際し、シャッタの設置に関する仕様変更案については作成せず、それ以外の仕様変更案を優先して作成する。
【0062】
変更案表示部48は、変更案作成部46により作成した外皮部位Mについての仕様変更案を支店端末12の表示部19に表示させる。具体的には、変更案表示部48は、支店端末12に対して上記作成された外皮部位Mの仕様変更案を送信する。そして、支店端末12側でこの仕様変更案が受信されると、変更案表示部48はその仕様変更案を表示部19に表示させる。なお、変更案作成部46及び変更案表示部48により変更案作成手段が構成される。
【0063】
変更案表示部48は、変更案作成部46により作成した外皮部位Mに関する複数の仕様変更案を表示部19に対して同時に表示させる。また、変更案表示部48は、各外皮部位Mごとにそれぞれ1又は複数の仕様変更案を表示部19に表示させる。本実施形態では、変更案作成部46により仕様変更案として高断熱変更案が作成されるため、表示部19には高断熱変更案が表示される。ここで、変更案表示部48により表示される仕様変更案(高断熱変更案)の表示内容を図9に基づいて説明する。なお、図9は、各外皮部位Mの仕様変更案を表形式で表示した表示画面(変更案表示画面)を示す図である。
【0064】
図9に示すように、変更案表示画面には、例えば住宅Xの窓開口部M3aに関して複数の仕様変更案(詳しくは高断熱変更案)が表示されている。具体的には、住宅Xの各方角に設けられた各々の窓開口部M3aに関しての仕様変更案がそれぞれ表示されており、これら各仕様変更案がそれぞれ現状の仕様(すなわち第1設計部22による一次設計時点での仕様)と対比して示されている。ここで、複数の窓開口部M3aのうち、例えば1階南側のリビングに設けられた窓開口部M3aについては複数(具体的には4つ)の仕様変更案が表示されている。詳しくは、複数の仕様変更案として、窓開口の大きさについて現状(1800×1800mm)よりも小さくした仕様変更案A(1800×1500mm)及びB(1800×1200mm)、サッシについて現状(一般用サッシ)よりも断熱性を高めた仕様変更案C(断熱用サッシ)、窓開口の周囲に新たに庇(外部付属物に相当)を付加した仕様変更案Dが表示されている。また、土間床M5については、床面の大きさを現状(5000×4000mm)よりも小さくした仕様変更案E(4000×4000mm)及びF(2500×4000mm)が表示されている。
【0065】
ここで、変更案表示画面に表示された複数の仕様変更案についてさらに説明すると、複数の仕様変更案には、外観デザインの異なる複数の変更案が含まれている。例えば窓開口部M3aに関する仕様変更案A及びDは庇の有無により外観デザインが異なる。また、複数の仕様変更案には、間取りの異なる複数の変更案が含まれている。例えば、土間床M5に関する仕様変更案E及びFは、土間床M5の床面積が異なり、したがって1階部分の土間床M5周辺の間取りが異なる。さらに、複数の仕様変更案には、断熱性能の異なる複数の変更案が含まれている。例えば、窓開口部M3aに関する仕様変更案A及びBは、窓開口の大きさが異なることから窓開口部M3aを介しての熱損失量が異なる。
【0066】
また、変更案表示画面には、同画面に表示された仕様変更案を採用した場合に現状に対して熱損失係数Q及び夏季日射取得係数μがどれだけ変動するかに関する変動量が各仕様変更案ごとに併せて表示される。例えば、1階南側のリビングの窓開口部M3aに関する複数の仕様変更案A〜Dのうち、窓開口の大きさを1800×1500mmとする仕様変更案Aを採用した場合には、Q値が0.01、μ値が0.001低減する旨が表示されている。この場合、各外皮部位Mについていずれの仕様変更案を採用すると、断熱性能がどれだけ変動する(図9では下がる)かを知ることができるため、仕様変更案を選択する際に役立つ。
【0067】
また、変更案表示画面には、各外皮部位Mの仕様変更案ごとに、選択受付部としてのチェックボックス(変更案選択欄)が設けられている。操作部18による操作によりチェックボックスにチェックを入れることで、各外皮部位Mについて顧客が希望する仕様変更案を選択できる。本実施形態では、例えば1階南側のリビングの窓開口部M3aについては窓開口を1800×1500mmの大きさとする仕様変更案Aが選択され、土間床M5については床面の大きさを2500×4000mmの大きさとする仕様変更案Fが選択されている。そして、チェックボックスにチェックを入れた後、「決定」ボタン65がマウスによりクリックされると、上記選択した仕様変更案が確定され、その確定された仕様変更案(選択変更案情報)が制御部17より管理サーバ11側に送信される。
【0068】
図4の説明に戻り、選択変更案取得部49は、変更案表示部48により支店端末12の表示部19に表示された外皮部位Mについての複数の仕様変更案のうち、操作部18の操作により選択された仕様変更案を取得する。選択変更案取得部49は、支店端末12から送信される選択変更案情報に基づいて、選択された仕様変更案を取得する。本実施形態では、選択変更案取得部49により、1階南側のリビングの窓開口部M3aについて窓開口を1800×1500mmの大きさとする仕様変更案A等が取得される。
【0069】
同型式設計部51及び異型式設計部52では、選択変更案取得部49により取得された仕様変更案(高断熱変更案)に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの設計変更を行う。本実施形態では、これら各設計部51,52によりそれぞれ、第1設計部22により一次設計された住宅Xに関して異なる設計変更(二次設計)が行われる。
【0070】
同型式設計部51は、第1設計部22により設計した住宅Xと同じ型式の住宅Xに設計変更を行う。本実施形態では、第1設計部22により一次設計した住宅Xがユニット工法からなるユニット式住宅であるため、ユニット式住宅のまま設計変更が行われる。
【0071】
異型式設計部52は、第1設計部22により一次設計した住宅Xとは異なる型式の住宅Xに設計変更を行う。本実施形態では、一次設計されたユニット式の住宅Xから、鉄骨軸組工法からなる鉄骨軸組式の住宅Xへの設計変更が行われる。異型式設計部52による設計変更は、例えば、同型式設計部51による設計変更が行われた後、その設計変更(二次設計)された住宅X(すなわちユニット式の住宅X)を基にして行われる。したがって、同型式設計部51により設計されたユニット式の住宅Xと、異型式設計部52により設計された鉄骨軸組式の住宅Xとは、断熱性能がほぼ同じとなっており、また外観デザインや間取りについても大きな差異がないものとなっている。
【0072】
上述した住宅表示部25では、同型式設計部51及び異型式設計部52により設計変更された各型式の住宅Xをそれぞれ表示部19に表示させる。図10には、各設計部51,52により設計変更された各々の住宅Xを表示した表示画面(住宅表示画面)が示されている。以下、この図10に基づいて、住宅表示部25により表示された住宅表示画面について説明する。なお、図10には、各種符号が示されているが、これらの符号は説明の便宜上付したものであり、実際の住宅表示画面上には表示されないものとなっている。
【0073】
図10に示すように、住宅表示画面には、同型式設計部51により設計変更された住宅X(以下、同型式住宅X1という)と、異型式設計部52により設計変更された住宅X(以下、異型式住宅X2という)と、が表示されている。また、住宅表示画面には、これら設計変更後の各住宅X1,X2の他に、設計変更前の住宅X,すなわち第1設計部22により一次設計された住宅X(以下、変更前住宅X0という)も併せて表示されている。これら各住宅X0〜X2はそれぞれ2次元の画像として表示されており、具体的には各住宅X0〜X2はそれぞれ1階部分の間取りを示す平面図、住宅Xを南側から見た立面図として示されている。なお、各住宅X0〜X2の表示は、必ずしもこのような態様で行う必要はなく、例えば住宅X0〜X2を3次元の画像として表示したり、住宅X0〜X2の縦断面図や横断面図を示したりする等任意でよい。
【0074】
住宅表示画面に示された同型式住宅X1は、変更前住宅X0に対して、例えば1階部分南側のリビングLの窓開口部M3aが小さくなっている(図10における住宅X0,X1の立面図参照)。具体的には、同型式住宅X1では、上記窓開口部M3aが、変更案表示画面中(図9参照)において選択された高断熱変更案A(窓開口の大きさを1800×1500mmに小さくする変更案)のものに置き換えられている。この場合、設計変更に伴い、住宅X南面の外観がどのように変化するかを確認できる。また、同型式住宅X1は、変更前住宅X0に対して、土間床M5(玄関土間)の床面積が小さくなっている(図10における住宅X0,X1の平面図参照)。具体的には、変更前住宅X0に対して土間床M5が変更案表示画面中(図9参照)において選択された高断熱変更案F(2500×4000mm)のものに置き換えられている。この場合、設計変更に伴い、住宅X1階部分における土間床M5周辺の間取りがどのように変化するかを確認できる。
【0075】
また、異型式住宅X2は、変更前住宅X0に対して、リビングLの窓開口部M3a及び土間床M5について、同型式住宅X1と同様の設計変更がなされているため、1階南面の外観及び1階部分の土間床M5周辺の間取りが、同型式住宅X1とほぼ同じとなっている。しかしながら、異型式住宅X2は、屋根M1の形状が同型式住宅X1とは異なっており、そのため屋根周辺の外観が同型式住宅X1とは相違している(図10における住宅X1,X2の立面図参照)。この場合、顧客が当初から想定していた住宅とは異なる型式の住宅についても顧客に提示できる。
【0076】
以上のように、本システム10によれば、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xに関し、断熱性能を高めるべく、外皮部位Mについて設計変更することで、住宅Xの外観デザインや間取りがどのように変化するかを視覚的に確認できるようになっている。
【0077】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0078】
住宅Xの設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求データ取得部21と、取得した顧客要求データに基づいて住宅Xの設計を行う第1設計部22と、第1設計部22により設計した住宅Xについて断熱性能を評価する断熱性能評価部23と、断熱性能評価部23による評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更する第2設計部24と、第2設計部24により設計変更した住宅Xを表示部19に表示させる住宅表示部25と、を備える構成とした。この場合、住宅Xの設計時において、先ずは外観デザインや間取りに関する顧客要求データを優先して住宅Xの一次設計が行われる。これにより、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じた住宅Xが設計される。また、一次設計された住宅Xについて断熱性能が評価され、その評価結果に基づいて、当該一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更が行われる(二次設計)。そして、設計変更した住宅Xが表示部19に表示されるため、当初から想定していた住宅プランをベースにしつつ断熱性能を充足した代替住宅プランを顧客に提示することができる。これにより、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、しかも断熱性能に関する要求を満足させることができる。
【0079】
また、一次設計された住宅Xの断熱性能が顧客の要求に満たなかったとしても、一次設計された住宅Xをベースとして設計変更が行われるため、一からの設計変更を強いられることがなく、設計変更を必要最小限に抑えることができる。
【0080】
断熱性能評価部23に、第1設計部22により設計した住宅Xの断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定部42を備え、第2設計部24により、過不足判定部42の判定結果に基づき、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mの設計変更を行うようにした。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xの断熱性能が、顧客の要求する目標の断熱性能に対し不足しているか過剰となっているかに基づき、当該一次設計された住宅Xの設計変更が行われる。したがって、一次設計された住宅Xの断熱性能が目標の断熱性能に対し不足している場合には、断熱性能を高めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足させたり、一次設計された住宅の断熱性能が目標の断熱性能に対し過剰となっている場合には、断熱性能を低めるよう設計変更することで目標の断熱性能を充足する範囲で住宅製造コストの低減を行ったりすることができる。これにより、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0081】
第2設計部24に、断熱性能評価部23による判定結果(具体的には過不足判定部42による判定結果)に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案を作成する変更案作成部46と、当該作成された仕様変更案を表示部19に表示させる変更案表示部48とを設けた。そして、表示部19に表示された外皮部位Mの仕様変更案に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの設計変更を行うようにした。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅の断熱性能に基づき、当該住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案が作成される。この仕様変更案は表示部19に表示され、顧客は当該表示された外皮部位Mについての仕様変更案を参照しながら好みの変更案を決定できる。そして、決定された好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅Xについて外皮部位Mの設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する断熱性能を充足させつつ、設計変更に関して顧客の要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0082】
具体的には、変更案作成部46では、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについて複数の仕様変更案を作成し、変更案表示部48では、それら複数の仕様変更案を表示部19に表示させた。そして、それら表示された複数の仕様変更案のうち、操作部18の操作により選択された仕様変更案に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの設計変更を行うようにした。
【0083】
より具体的には、変更案表示部48では、表示部19に対し外皮部位Mに関する複数の仕様変更案を同時に表示させるようにした。この場合、複数の仕様変更案が一度にまとめて提示されるため、顧客にとって好みの変更案をいち早く見つけることが可能となり、繰り返しの設計変更を少なくすることができる。
【0084】
また、表示部19に表示させる複数の仕様変更案として、外観デザインの異なる複数の変更案、間取りの異なる複数の変更案、及び断熱性能の異なる複数の変更案を含めた。この場合、外観デザイン、間取り及び断熱性能についてバリエーションに富んだ仕様変更案の提示ができるため、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。なお、表示部19に表示させる複数の仕様変更案として、外観デザインの異なる複数の変更案、間取りの異なる複数の変更案、及び断熱性能の異なる複数の変更案のうちいずれか1つ又は2つを含めるようにしてもよい。
【0085】
第2設計部24に、設計変更の際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定部45を備えたため、所定の外皮部位M(例えば屋根M1)を優先して設計変更したり、所定の外皮部位M(例えば外壁M2)以外を優先して設計変更したりする等の条件設定を行うことができる。これにより、設計変更に際して顧客のニーズを加味することができるため、より一層顧客ニーズに応じた住宅を顧客に提示することが可能となる。
【0086】
第1設計部22では、顧客要求データ取得部21により取得される顧客要求データに含まれる型式選択データ(本実施形態では、ユニット式住宅であることを示すデータ)に基づいて住宅Xの設計を行い、第2設計部24には、第1設計部22により設計した住宅Xと同じ型式の住宅Xに設計変更を行う同型式設計部51と、第1設計部22により設計した住宅Xとは異なる型式の住宅Xに設計変更を行う異型式設計部52とを設けた。そして、住宅表示部25では、同型式設計部51及び異型式設計部52により設計変更した各型式の住宅Xをそれぞれ表示部19に表示させるようにした。この場合、顧客が当初から想定していた型式の住宅(ユニット式住宅)の他に、それとは異なる型式の住宅(鉄骨軸組式住宅)についても顧客に提示できる。これにより、顧客に対して提示できる住宅プランのバリエーションを増やすことができ、顧客の希望する住宅プランを顧客に提供できる可能性を高めることができる。
【0087】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0088】
(1)図11に示すように、第1設計部22により設計した住宅Xの製造コストを評価する住宅コスト評価部55をさらに備え、第2設計部24において、断熱性能評価部23による評価結果に加えて住宅コスト評価部55による評価結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うようにしてもよい。この場合、顧客の好みの外観デザインや間取りに応じて一次設計された住宅Xに関して断熱性能の評価とともに製造コストの評価が行われる。そして、断熱性能の評価結果に加え製造コストの評価結果に基づいて、一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更が行われる。これにより、当初から想定していた住宅プランをベースにしながら、断熱性能に加えコストをも充足した代替住宅プランを顧客に提示できる。したがって、顧客が当初望んでいた外観デザインや間取りから大幅に逸脱することなく、断熱性能に関する要求のみならず製造コストに関する要求をも満足させることができる。
【0089】
具体的には、住宅コスト評価部55において、第1設計部22により設計した住宅Xの製造コストが予め設定した目標の製造コストを上回っているか否かを判定する目標コスト判定部を設け、第2設計部24では、目標コスト判定部による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計した住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うことが考えられる。この場合、一次設計した住宅Xの製造コストが目標コストを上回っている場合には、製造コストを低減させるよう設計変更したり、一次設計した住宅Xの製造コストが目標の製造コストを下回っている場合には、製造コストが目標コストを上回らない範囲で断熱性能を高めるよう設計変更したりすることができる。これにより、顧客の要求する製造コストを充足させつつ、顧客にとってより満足度の高い住宅プランを提示することが可能となる。
【0090】
また、図4に示す第2設計部24において、変更案作成部46では、目標コスト判定部による判定結果に基づいて、第1設計部22により設計された住宅Xの外皮部位Mについての仕様変更案を作成し、変更案表示部48では、その作成された仕様変更案を表示部19に表示させるようにしてもよい。この場合、一次設計された住宅Xの製造コストの評価結果に基づき作成された外皮部位Mの仕様変更案を参照しながら、顧客は好みの変更案を決定でき、その決定した好みの変更案に基づいて、一次設計された住宅Xについて設計変更が行われる。この場合、顧客の要求する製造コストを充足させつつ、設計変更に関するその他の顧客要求を盛り込むことができ、より一層顧客ニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0091】
(2)上記実施形態では、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、予め設定された目標の断熱性能(詳細には、目標性能設定部41により設定された断熱性能)に対して不足か過剰かを判定し、その判定結果に基づいて一次設計された住宅Xの外皮部位Mについて設計変更を行うこととしたが、これを変更してもよい。例えば、第1設計部22により設計された住宅Xの断熱性能が、目標の断熱性能に対して不足しているか否か、又は、目標の断熱性能に対して過剰となっているか否かのいずれかのみを判定し、その判定結果に基づいて一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更を行ってもよい。
【0092】
また、第1設計部22により一次設計された住宅Xの断熱性能に対して、断熱性能を所定高さ分高めるように当該一次設計された住宅Xの外皮部位Mを設計変更してもよい。例えば、一次設計された住宅Xの省エネルギ対策等級に対して、省エネルギ対策等級を所定の級数分(例えば2)上げるように設計変更することが考えられる。
【0093】
(3)変更案表示部48により表示部19に表示する仕様変更案を、該設計変更の内容を示す画像として表示してもよい。例えば、窓開口部M3aに対して庇を新たに設置する仕様変更案の場合、窓開口部M3aの上方に庇を取り付けた画像を仕様変更案として表示することが考えられる。この場合、各仕様変更案に関する外観イメージをつかみやすいため、顧客が好みの仕様変更案を的確に選択することが期待でき、その結果繰り返しの設計変更を抑制することができる。
【0094】
また、この場合、変更案表示部48により、上述した画像からなる複数の仕様変更案と併せて、第1設計部22により一次設計された住宅Xを表示部19に同時に表示するようにし、表示部19に表示された複数の仕様変更案のうち操作部18の操作(例えばマウスによるクリック操作やドラッグ操作)により選択された仕様変更案に基づいて、一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更を、住宅Xを表示部19に表示させたまま行うようにしてもよい(二次設計)。この場合、顧客が好みの仕様変更案を選ぶと、表示部19に表示されている住宅Xにその設計変更の内容が即座に反映されるため、顧客が種々の仕様変更案を試しながら希望の住宅Xを見つけ出す場合には便利である。なお、かかる構成では、住宅Xの二次設計(第2設計部24による二次設計に相当)と、二次設計された住宅Xの表示部19に対する表示(住宅表示部25による表示処理に相当)が一度に行われる。
【0095】
さらに、上記の構成において、住宅Xを表示部19に表示させたまま、一次設計された住宅Xの外皮部位Mの設計変更が行われた場合に、その設計変更された住宅Xの断熱性能を算出し、その断熱性能を当該住宅Xが表示されている表示画面上に表示するようにしてもよい。そうすれば、顧客が好みの仕様変更案を選ぶと、設計変更された住宅Xとともに、当該住宅Xの断熱性能についても表示されるため、顧客が種々の仕様変更案を試しながら希望の住宅Xを見つけ出す際に、外観デザインや間取りだけでなく、断熱性能についても参照することができ、より一層利便性を高めることができる。
【0096】
(4)優先変更条件設定部45により設定できる優先変更条件は、上記実施形態のものに限ることなく、以下のようなものでもよい。例えば、断熱性能がより高くなる設計変更を優先して行う旨の条件設定をしたり、住宅の製造コストがより低くなる設計変更を優先して行う旨の条件設定をしたりすることができる。これにより、断熱性能又は住宅コストを重要視する顧客に対しニーズに応じた住宅プランを提示することができる。
【0097】
また、優先変更条件として、設計変更に関する優先順位を設定してもよい。例えば、住宅の製造コストよりも断熱性能を優先させたい場合には、住宅の製造コストを低くする設計変更よりも断熱性能を高める設計変更を優先して行う旨の条件設定を行うことが考えられる。
【0098】
(5)上記実施形態では、住宅Xの外観デザイン及び間取りの双方を含む顧客要求データを顧客要求データ取得部21により取得する構成としたが、住宅Xの外観デザイン又は間取りのいずれかを含む顧客要求データを同取得部21により取得する構成としてもよい。この場合、顧客の好みの外観デザイン又は間取りのいずれかに応じた住宅が一次設計される。
【0099】
(6)住宅Xの熱損失係数Qは、上述した(1)又は(2)式によれば、換気による熱損失量(0.35nB)に依存している。このため、住宅Xの見かけの換気回数nを減らすことによっても、熱損失係数Qを小さくすることができ、ひいては省エネルギ対策等級を高くすることができる(例えば、建設地域がIVであれば、Q値が5.2の場合省エネ等級が2であるのに対し、Q値が4.2の場合は省エネ等級が3となる)。そこで、変更案作成部46により作成する仕様変更案として、住宅Xの見かけの換気回数nを低減させる変更案を含めてもよい。例えば、住宅X内に熱交換機能を備えた換気装置を設置して換気制御を行う場合、熱量を維持したまま換気を行うことが可能なため、換気による熱損失を減らすことができ、その結果見かけの換気回数nを低減することができる。そこで、仕様変更案として、住宅X内に熱交換機能を備えた換気装置を設置する変更案を含めることが考えられる。この場合、住宅Xの外観デザインを変更することなく、設計変更を行うことができるため、顧客の好みの外観デザインからなる住宅プランを顧客に提示することが可能となる。
【0100】
(7)上記実施形態では、変更案表示部48において、変更案作成部46により作成した複数の変更仕様案を同時に表示部19に表示させるようにしたが、これを変更して、複数の仕様変更案を順次表示部19に表示させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、変更案作成部46により複数の仕様変更案を作成したが、仕様変更案をひとつだけ作成するようにしてもよい。この場合、変更案表示部48ではそのひとつの仕様変更案だけが表示部19に表示されることとなり、例えば操作部19を用いてその表示された変更案に決定するか否かの操作を行う。
【0101】
(8)上記実施形態では、住宅設計システム10を、住宅販売会社の支店に訪れた顧客との応対時に用いる場合を例に説明したが、本システム10を例えば住宅展示場に訪れた顧客との応対時に用いてもよい。この場合、住宅展示場に、顧客の好みの外観デザインを有した住宅や、顧客の要求する断熱性能を充足した住宅が展示されていない場合でも、顧客が想定しているデザインプランをベースにしつつ、断熱性能を充足した住宅プランを顧客に提示できる。
【0102】
また、本システム10を、既設の住宅をリフォームする際に利用してもよい。この場合、リフォーム後の住宅に関して外観デザイン及び間取りの少なくもいずれかを含む顧客要求を取得し、その取得した顧客要求に基づいて住宅を一次設計し断熱性能の評価を行う。そして、断熱性能の評価結果に基づいて一次設計した住宅の設計変更を行う。これにより、外観デザインや間取りに関する顧客ニーズを満たしつつ断熱性能を満足する住宅リフォームプランを提示できる。
【符号の説明】
【0103】
10…住宅設計システム、11…管理サーバ、12…支店端末、19…表示ディスプレイとしての表示部、21…顧客要求取得手段としての顧客要求データ取得部、22…第1設計手段としての第1設計部、23…断熱性能評価手段としての断熱性能評価部、24…第2設計手段としての第2設計部、25…住宅表示手段としての住宅表示部、42…過不足判定手段としての過不足判定部、45…優先変更条件設定手段としての優先変更条件設定部、51…同型式設計手段としての同型式設計部、52…異型式設計手段としての異型式設計部、55…住宅コスト評価手段としての住宅コスト評価部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求取得手段と、
前記顧客要求データに基づいて住宅の設計を行う第1設計手段と、
前記第1設計手段により設計した住宅について断熱性能を評価する断熱性能評価手段と、
前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅において断熱性能に関与する部位として予め定められた断熱機能部位について設計変更する第2設計手段と、
前記第2設計手段により設計変更した住宅を表示ディスプレイに表示させる住宅表示手段と、
を備える住宅設計システム。
【請求項2】
前記断熱性能評価手段は、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定手段を備え、
前記第2設計手段は、前記過不足判定手段による判定結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行う請求項1に記載の住宅設計システム。
【請求項3】
前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計された住宅の断熱機能部位についての仕様変更案を作成し、その仕様変更案を前記表示ディスプレイに表示させる変更案表示手段を備え、前記表示ディスプレイに表示された前記断熱機能部位の仕様変更案に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の設計変更を行う請求項1又は2に記載の住宅設計システム。
【請求項4】
前記第2設計手段は、設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定手段を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【請求項5】
前記顧客要求取得手段により取得される顧客要求データには、建築工法の異なる複数の住宅型式から選ばれた型式選択データが含まれており、
前記第1設計手段は、前記型式選択データを含む顧客要求データに基づいて住宅の設計を行い、
前記第2設計手段は、前記第1設計手段により設計した住宅と同じ型式の住宅に前記設計変更を行う同型式設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅とは異なる型式の住宅に前記設計変更を行う異型式設計手段とを有し、
前記住宅表示手段は、前記同型式設計手段及び前記異型式設計手段により設計変更した各型式の住宅をそれぞれ前記表示ディスプレイに表示させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【請求項6】
前記第1設計手段により設計した住宅の製造コストを評価する住宅コスト評価手段をさらに備え、
前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に加えて前記住宅コスト評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【請求項1】
住宅の設計に関して外観デザイン及び間取りの少なくともいずれかを含む顧客要求データを取得する顧客要求取得手段と、
前記顧客要求データに基づいて住宅の設計を行う第1設計手段と、
前記第1設計手段により設計した住宅について断熱性能を評価する断熱性能評価手段と、
前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅において断熱性能に関与する部位として予め定められた断熱機能部位について設計変更する第2設計手段と、
前記第2設計手段により設計変更した住宅を表示ディスプレイに表示させる住宅表示手段と、
を備える住宅設計システム。
【請求項2】
前記断熱性能評価手段は、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱性能が、予め設定した目標の断熱性能に対して不足か過剰かを判定する過不足判定手段を備え、
前記第2設計手段は、前記過不足判定手段による判定結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行う請求項1に記載の住宅設計システム。
【請求項3】
前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計された住宅の断熱機能部位についての仕様変更案を作成し、その仕様変更案を前記表示ディスプレイに表示させる変更案表示手段を備え、前記表示ディスプレイに表示された前記断熱機能部位の仕様変更案に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の設計変更を行う請求項1又は2に記載の住宅設計システム。
【請求項4】
前記第2設計手段は、設計変更する際、いかなる変更を優先して行うかに関する優先変更条件を設定する優先変更条件設定手段を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【請求項5】
前記顧客要求取得手段により取得される顧客要求データには、建築工法の異なる複数の住宅型式から選ばれた型式選択データが含まれており、
前記第1設計手段は、前記型式選択データを含む顧客要求データに基づいて住宅の設計を行い、
前記第2設計手段は、前記第1設計手段により設計した住宅と同じ型式の住宅に前記設計変更を行う同型式設計手段と、前記第1設計手段により設計した住宅とは異なる型式の住宅に前記設計変更を行う異型式設計手段とを有し、
前記住宅表示手段は、前記同型式設計手段及び前記異型式設計手段により設計変更した各型式の住宅をそれぞれ前記表示ディスプレイに表示させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【請求項6】
前記第1設計手段により設計した住宅の製造コストを評価する住宅コスト評価手段をさらに備え、
前記第2設計手段は、前記断熱性能評価手段による評価結果に加えて前記住宅コスト評価手段による評価結果に基づいて、前記第1設計手段により設計した住宅の断熱機能部位について設計変更を行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の住宅設計システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−108571(P2012−108571A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254629(P2010−254629)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]