説明

体内留置用カテーテル

【課題】 簡単な操作で先端位置固定を確実に行えると共に、先端位置固定機能を維持するための複雑な構造を必要としない体内留置用カテーテルを提供する。
【解決手段】 可撓性チューブ1の先端部にバルーン4を設けた体内留置用カテーテル10において、バルーン4の内側に吸液膨潤性ポリマー6を内包させ、該吸液膨潤性ポリマー6を少なくとも1本のサブルーメン7を介して前記可撓性チューブ1の後端部に連通させた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、体内留置用カテーテルに関し、更に詳しくは、先端位置固定を簡単な操作で確実に行えるようにすると共に、先端位置固定機能を維持するための複雑な構造を必要としない体内留置用カテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、カテーテルを用いた病変の治療法が、外科的手術による治療と比較して患者への負担が軽く、治療費も安価で済むことから盛んに行われるようになってきている。
【0003】このようなカテーテルを用いる治療法の一つとして、継続的に病変部へ薬液を投与したり、病気のせいで自然に排泄されなくなった不要な体液を体外に排出させたりするために、カテーテルを体内に留置することがある。そのため、この体内留置用カテーテルは、先端部を患者体内の病変部近傍に固定状態にしたまま長期間留置される。
【0004】従来、上述した体内留置用カテーテルとしては、例えば、先端部をリング状に変形させて固定するピッグテイル型カテーテル、先端部をフレアー状に拡開させて固定するフレアー型カテーテルがある。しかし、前者のピッグテイル型カテーテルは、接触面積が狭いため先端位置の固定力が弱く、また後者のフレアー型カテーテルは、先端部をフレアー状に拡開させて固定するための機構が必要になるため構造が複雑になるという欠点がある。
【0005】これらの欠点を解消するカテーテルとして、先端部を風船状に膨らませて固定するバルーン型カテーテルがある。しかし、このバルーン型カテーテルは、カテーテル中途部を切断して他の医療器具を接続しようとすると、その切断によってバルーンが収縮し、先端位置が固定されなくなってしまうため、上記のように中途部を切断して他の医療器具を接続する、例えば動注療法などには適用できないという欠点がある。また、ピッグテイル型カテーテルの一部やフレアー型カテーテルも、手元操作で先端位置を固定する構成であるため、上記バルーン型カテーテルと同様の欠点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した問題を解消し、先端位置固定を簡単な操作で確実に行えるようにすると共に、先端位置固定機能を維持するための複雑な構造を必要としない体内留置用カテーテルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明は、可撓性チューブの先端部にバルーンを設けた体内留置用カテーテルにおいて、前記バルーンの内側に吸液膨潤性ポリマーを内包させ、該吸液膨潤性ポリマーを少なくとも1本のサブルーメンを介して前記可撓性チューブの後端部に連通させたことを特徴とする。
【0008】このように先端部のバルーン内側に吸液膨潤性ポリマーを内包させたので、サブルーメンを介し液体を供給するだけで吸液膨潤性ポリマーが膨潤しバルーンを膨張させるため、先端部を体内に確実に固定することができる。また、吸液膨潤性ポリマーの膨潤は、液体が蒸発しない限り、カテーテル中途部の切断の如何にかかわらず維持されるため、中途部を切断し他の医療器具を接続する、例えば動注療法などを容易に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、カテーテル先端部のバルーン内側に内包させる吸液膨潤性ポリマーとしては、液体吸収によって膨潤するポリマー、すなわち体積を膨張させるポリマーであれば、その材質は特に限定されない。特に水や血液、生理食塩液などで膨潤する高吸水性ポリマーが好ましく、例えば、アクリル酸ソーダ重合体、アクリル酸ビニルアルコール共重合体などを挙げることができる。
【0010】図1は、本発明の体内留置用カテーテルの一例を示し、図2はそのカテーテルの先端部を拡大して示す縦断面図、図3は図1のX−X断面図である。
【0011】図1〜3に示すように、体内留置用カテーテル10は、長尺の可撓性チューブ1とその後端部に連結されたホルダー2とから構成されている。可撓性チューブ1は、内側に主ルーメン3を軸方向に貫通するように形成しており、かつ先端部外周に薄膜のバルーン4を1周にわたり覆うように形成している。このバルーン4の内側に溝状の環状室5が形成され、その環状室5に吸液膨潤性ポリマー6が充填されている。
【0012】ホルダー2は主管2aと分岐管2bを有するように形成されている。このうち主管2aは、可撓性チューブ1の主ルーメン3に連結し、さらに可撓性チューブ1の先端部に貫通している。この主管2aは、薬液を体内の可撓性チューブ1の先端部に供給するときとか、或いは、体内の可撓性チューブ1先端部から不要の体液を吸引し、体外へ排出するときなどに使用される。
【0013】他方、分岐管2bは、可撓性チューブ1の肉厚内に設けたサブルーメン7に連絡し、このサブルーメン7を介して先端部の環状室5に連通している。この分岐管2bは、ここから生理食塩水、好ましくは無菌保証された生理食塩液などの液体を供給することにより、サブルーメン7を介して環状室5に供給し、その環状室5内に充填された吸液膨潤性ポリマー6を膨潤させ、バルーン4を膨張させるために使用される。
【0014】可撓性チューブ1には、上記給液用のサブルーメン7とは別に、環状室5と外部との間を連通するように脱気用のサブルーメン8を設けるようにしてもよい。このように脱気用サブルーメン8を設けると、膨潤用液体を給液用サブルーメン7を介して環状室5に注入し、吸液膨潤性ポリマー6を膨潤させてバルーン4を膨張させる際、バルーン4内の気体を円滑に排気することができるため、膨潤用液体の注入も円滑にすることができる。
【0015】上述した本発明の体内留置用カテーテル10を体内に留置するときは、まず可撓性チューブ1の先端部を病変部近傍の固定位置まで挿入する。次いで、ホルダー2の分岐管2bから生理食塩液などの膨潤用液体を注入すると、液体はサブルーメン7を経て環状室5に供給されることにより吸液膨潤性ポリマー6を膨潤させる。この吸液膨潤性ポリマー6の膨張によりバルーン4が拡張し、そのバルーン4が病変部近傍の血管などの体管内壁に圧接するためカテーテルの先端位置を容易に固定することができる。
【0016】一度膨潤した吸液膨潤性ポリマー6は、供給液体が蒸発しない限り収縮することはないので、可撓性チューブ1の中途部分を切断したとしても、バルーン4が収縮することなく先端部の固定状態を維持することができる。したがって、例えは動注療法などのように、可撓性チューブ1の中途部を切断して他の医療器具を連結する場合でも、何ら支障なく接続することができる。
【0017】このように本発明の体内留置用カテーテルは、バルーン4の内側に吸液膨潤性ポリマー6を充填し、その吸液膨潤性ポリマー6に液体を供給するだけで膨潤させてバルーン4を拡張させるので、簡単な操作で先端位置の固定を確実に行うことができる。また、吸液膨潤性ポリマー6を膨張させた後は、膨潤用液体が蒸発しない限り、可撓性チューブ1の中途部分を切断しても収縮しないので、中途部を切断して他の医療器具を接続する、例えば動注療法などを問題なく実施することができる。
【0018】
【発明の効果】上述したように本発明の体内留置用カテーテルによれば、先端部のバルーン内側に吸液膨潤性ポリマーを内包させたので、サブルーメンを介し液体を供給するだけで吸液膨潤性ポリマーを膨潤させてバルーンを膨張させ、先端部を体内に確実に固定することができる。また、吸液膨潤性ポリマーの膨潤は、液体が蒸発しない限り、カテーテル中途部の切断の如何にかかわらず維持されるため、中途部を切断し他の医療器具を接続する、例えば動注療法などを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の体内留置用カテーテルの一例を一部省略して示す正面図である。
【図2】図1のAで囲む部分を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図1のX−X断面図である。
【符号の説明】
1 可撓性チューブ
2 ホルダー
3 主ルーメン
4 バルーン
5 環状室
6 吸液膨潤性ポリマー
7(給液用)サブルーメン
8(脱気用)サブルーメン
10 体内留置用カテーテル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 可撓性チューブの先端部にバルーンを設けた体内留置用カテーテルにおいて、前記バルーンの内側に吸液膨潤性ポリマーを内包させ、該吸液膨潤性ポリマーを少なくとも1本のサブルーメンを介して前記可撓性チューブの後端部に連通させた体内留置用カテーテル。
【請求項2】 前記サブルーメンとして、給液用と脱気用との少なくとも2本を設けた請求項1に記載の体内留置用カテーテル。
【請求項3】 前記吸液膨潤性ポリマーが、アクリル酸ソーダ重合体及びアクリル酸ビニルアルコール共重合体から選ばれたいずれか1種である請求項1または2に記載の体内留置用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−88589(P2003−88589A)
【公開日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−284544(P2001−284544)
【出願日】平成13年9月19日(2001.9.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】