説明

体動センサ

【課題】 被検者への負担が少なく、携帯性に優れ、簡便かつ正確に体動を検出することのできる体動センサを提供する。
【解決手段】 体動センサ1を、被検者90に装着される装着部材91に取り付けられる固定部2と、被検者90の体と固定部2との間に介装され、固定部2と比較して該体の動きに追従して変位しやすい変位部3と、固定部2と変位部3とを弾性的に連結する連結部4と、固定部2および変位部3のうち、いずれか一方に配置され、弾性変形に伴い電気抵抗が変化するセンサ本体50とセンサ本体50に接続され電気抵抗を出力可能な電極とを有するセンサ素子5と、固定部2および変位部3のうち、いずれか他方に配置され、センサ本体50に対向し、被検者90の該体の動きに伴いセンサ本体50を押圧可能な凸部60と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体の動きを検出することのできる体動センサに関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理や病気の治療を目的として、歩数や呼吸状態等の測定が行われている。通常、歩数は歩数計により測定される。歩数計では、歩行に伴う上下方向の振動をセンサにより検出している。あるいは、加速度の変化をセンサにより検出している。そして、これらの振動や加速度変化から、間接的に歩数を算出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、呼吸状態の測定は、無呼吸症候群の発見、治療等のために行われる。呼吸状態の測定は、被検者の鼻孔や口腔等に、マスクやチューブ等の器具を取り付けて行うのが一般的である。しかし、この方法によると、器具の装着により、被検者が息苦しさ、圧迫感を感じてしまい、被検者の負担が大きい。また、被検者が器具を意識してしまい、普段の呼吸状態が再現されにくい。これらの器具を使用せずに呼吸状態を測定する装置として、特許文献2には、被検者の胸部等に巻き付けて使用するベルト状の体動センサが開示されている。
【特許文献1】特許第2675842号公報
【特許文献2】特開2007−20654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、従来の歩数計は、脚部の動きを直接測定して歩数を計数しているのではない。このため、単なる振動と歩行との区別が難しく、誤差が大きい。
【0005】
また、上記特許文献2に開示された体動センサは、帯状のベルト本体に伸縮性の導電性ゴムが内蔵されている。例えば、呼吸状態を測定する場合、帯状のベルト本体を被検者の胸部に巻回する。胸部の膨張、収縮に伴って導電性ゴムは伸長、収縮する。導電性ゴムの伸長、収縮による電気抵抗の変化を利用して、呼吸状態が測定される。しかし、呼吸に伴う導電性ゴムの伸長、収縮を利用するため、測定時に、帯状のベルト本体を被検者の体に密着するよう巻回する必要がある。このため、被検者が圧迫感を感じやすい。また、上記特許文献2に開示された体動センサを用いて、実際に呼吸状態を測定するには、導電性ゴムの電気抵抗の変化に基づいて呼吸信号を出力するための制御装置が別途必要である。制御装置は、データを処理する演算部等の他、呼吸の波形を示す表示部や、表示部の切り替えを行う操作部等を備えることが多い。このため、制御装置には、ある程度の大きさが必要となる。よって、制御装置を体動センサと共に被検者の体に装着することは難しい。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、被検者への負担が少なく、携帯性に優れ、簡便かつ正確に体動を検出することのできる体動センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の括弧内の番号は、請求項の番号に対応している。
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の体動センサは、被検者に装着される装着部材に取り付けられる固定部と、該被検者の体と該固定部との間に介装され、該固定部と比較して該体の動きに追従して変位しやすい変位部と、該固定部と該変位部とを弾性的に連結する連結部と、該固定部および該変位部のうち、いずれか一方に配置され、弾性変形に伴い電気抵抗が変化するセンサ本体と該センサ本体に接続され電気抵抗を出力可能な電極とを有するセンサ素子と、該固定部および該変位部のうち、いずれか他方に配置され、該センサ本体に対向し、該被検者の該体の動きに伴い該センサ本体を押圧可能な凸部と、を備え、該固定部に対して該変位部が変位し、該センサ本体が該凸部に押圧され弾性変形する際の該センサ本体の電気抵抗の変化に基づいて、該被検者の該体の動きを検出することを特徴とする。
【0009】
ここで、電極が「電気抵抗を出力可能」とは、電気抵抗を直接あるいは間接的に出力可能なことをいう。すなわち、直接、電極から電気抵抗を出力する場合は勿論、電圧や電流など電気抵抗に関連する他の電気量を出力する場合を含む。
【0010】
また、凸部が「センサ本体を押圧可能」とは、被検者の体の動きに伴い、センサ本体から離間していた凸部がセンサ本体を押圧する場合は勿論、センサ本体に当接していた凸部がセンサ本体を押圧する場合も含む。すなわち、常時凸部がセンサ本体を押圧しており、被検者の体の動きに伴い、凸部のセンサ本体に対する押圧力が増加する場合も含む。
【0011】
固定部は、装着部材に取り付けられる。このため、固定部は、被検者の体の動きに追従して変位しにくい。これに対して、変位部は、被検者の体と固定部との間に介装される。このため、変位部は、固定部よりも、被検者の体の動きに追従して変位しやすい。
【0012】
センサ素子は、固定部および変位部のうち、いずれか一方に配置される。これに対して、凸部は、固定部および変位部のうち、いずれか他方(センサ素子が配置されない方)に配置される。被検者の体が動くと、固定部に対して、変位部が相対的に変位する。このため、センサ素子に対して、凸部が相対的に変位する。具体的には、凸部がセンサ本体を押圧する。これにより、センサ本体の電気抵抗が変化する。本発明の体動センサは、当該電気抵抗の変化に基づいて、被検者の体の動きを検出している。
【0013】
例えば、本発明の体動センサを、被検者の腰部付近に変位部が接触するように取り付けると、歩行による脚部および腰部の動きに追従して、変位部が変位する。固定部に対して変位部が相対的に変位することにより、固定部と変位部との間隔が小さくなり、センサ素子のセンサ本体が凸部に押圧される。すると、センサ本体が弾性変形し、センサ本体の電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化に基づいて、被検者の脚部の動きを検出することができる。
【0014】
このように、本発明の体動センサによると、被検者の体の動き(体動)を検出することができる。検出対象となる体動の種類は、特に限定されるものではない。例えば、上述したように、脚部の動きを検出すると、歩数、歩行速度、脚部の動きの大きさ等を測定することができる。また、本発明の体動センサを被検者の胸部、腹部付近に配置した場合には、呼吸による胸部、腹部の動きを検出することができる。これにより、呼吸状態を測定することができる。
【0015】
本発明の体動センサは、被検者の体の動きを直接的に検出する。このため、歩数、呼吸状態等を正確かつ簡便に測定することができる。つまり、本発明の体動センサによると、被検者に息苦しさ、圧迫感等を感じさせずに、体動を伴う種々の測定が可能である。また、測定時における緊張感も少ないため、普段通りの体動を検出することができる。
【0016】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記装着部材は、前記被検者の前記体に巻回されたベルト部材である構成とする方がよい。
【0017】
例えば、本発明の体動センサを、被検者が普段身に付けているベルトに取り付ければ、本発明の体動センサを取り付けるための特別な部材を、別途準備する必要はない。また、取り付け時の違和感も少ない。一方、本発明の体動センサを取り付けるために、別途ベルト部材を使用した場合でも、ベルト部材は被検者の体に追従して伸縮する必要はない。つまり、ベルト部材の伸縮によりセンサ素子を弾性変形させる場合とは異なり、ベルト部材を被検者の体に密着するよう巻回する必要はない。したがって、被検者は圧迫感を感じにくい。
【0018】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記凸部の先端は、曲面状を呈している構成とする方がよい。
【0019】
上述したように、被検者が運動すると、体の動きに追従して変位部が変位し、固定部と変位部との間隔が小さくなる。そして、凸部の先端が、センサ素子のセンサ本体を押圧する。ここで、仮に、凸部の先端が尖っている場合、センサ本体の一点に押圧力が集中してしまう。このため、センサ本体が劣化しやすい。
【0020】
この点、本構成によると、凸部の先端が曲面状を呈している。このため、センサ本体への押圧力が分散されやすい。したがって、凸部の先端が、センサ本体を傷つけにくい。よって、凸部がセンサ本体を繰り返し押圧しても、センサ本体は劣化しにくい。つまり、センサ本体の耐久性が向上する。
【0021】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する構成とする方がよい。
【0022】
本明細書において、「エラストマー」は、ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。また、導電性フィラーは、エラストマー中に、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されている。ここで、「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。
【0023】
このように、導電性フィラーが、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されると、エラストマー分を介した導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成される。したがって、本構成におけるセンサ本体は、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す)、言い換えると、変形していない状態で、高い導電性を有する。一方、センサ本体に荷重が印加されると、センサ本体は弾性変形する。ここで、導電性フィラーは最密充填に近い状態で配合されているため、導電性フィラーが移動できるスペースはほとんどない。よって、センサ本体が弾性変形すると、導電性フィラー同士が反発し合い、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。その結果、三次元的な導電パスが崩壊し、電気抵抗が増加する。
【0024】
本構成によると、エラストマーや導電性フィラーの種類、導電性フィラーの充填率等を調整することにより、無荷重状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。このため、変位部の動き方や、凸部の材質、形状等に応じて、検出レンジを適宜調整することができる。加えて、弾性変形量に対する電気抵抗の増加挙動を調整することができるため、所望の応答感度を実現することができる。
【0025】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、さらに、前記センサ素子に電流を供給するための電源と、該センサ素子からの出力を処理する演算部と、を有する制御回路部を備える構成とする方がよい。
【0026】
本構成の体動センサには、制御回路部が一体化されている。このため、本構成の体動センサは、携帯性に優れる。したがって、歩行等の運動時においても簡便に体動を検出することができる。また、制御回路部を小型化することにより、取付時に被検者が感じる違和感を、より低減することができる。これにより、就寝時や運動時において、被検者に負担をかけずに、体動を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の体動センサを、歩数計として具現化した実施の形態について説明する。
【0028】
<第一実施形態>
[体動センサの構造的構成]
まず、本実施形態の体動センサの構造的構成について説明する。図1に、本実施形態の体動センサの取り付け状態を上方から見た模式図を示す。図2に、同体動センサの斜視図を示す。図3に同体動センサの斜視分解図を示す。図4に、同体動センサの断面図を示す。説明の便宜上、図3中、変位部およびセンサ素子を一部断面で示す。また、図4中、コントローラを省略して示す。
【0029】
図1〜図4に示すように、本実施形態の体動センサ1は、固定部2と、変位部3と、連結部4と、センサ素子5と、凸部60と、コントローラ7と、を備えている。コントローラ7は、本発明の制御回路部に含まれる。体動センサ1は、全体としてS字状を呈している。体動センサ1は、ベルト91に取り付けられている。ベルト91は、本発明におけるベルト部材に含まれる。ベルト91は、被検者90の腰部周囲に巻回されている。
【0030】
固定部2は、下方に開口するU字状を呈している。固定部2は、ベルト91に固定されている。具体的には、ベルト91は、固定部2の下向きのU字開口に挿入されている。ベルト91は、前後方向から、固定部2のU字両壁により挟まれている。固定部2がベルト91に固定されることにより、体動センサ1がベルト91に取り付けられている。
【0031】
変位部3は、平板状を呈している。変位部3は、被検者90と固定部2との間に介装されている。変位部3は、固定部2に前後方向に対向している。変位部3は被検者90に接触している。変位部3の中央付近には、孔部30が貫設されている。孔部30の径方向断面形状は、円形を呈している。
【0032】
連結部4は、固定部2のU字両壁のうち後壁と、変位部3と、を上方に開口するU字状に連結している。連結部4を揺動中心として、変位部3は固定部2に対して弾性的に変位可能である。
【0033】
センサ素子5は、変位部3の表面(前面)の中央付近に配置されている。センサ素子5は、センサ本体50と一対の電極(図略)とを有する。センサ本体50は、円形の薄膜状を呈している。センサ本体50は、孔部30の前端開口を覆うように配置されている。センサ本体50は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)中に、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズ(登録商標)ICB0520」、平均粒子径約5μm)が配合されたエラストマー材料からなる。カーボンビーズは、球状を呈している。カーボンビーズの充填率は、センサ本体50の体積を100vol%とした場合の約48vol%である。カーボンビーズは、EPDM中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている。センサ本体50の対向する左右端部には一対の電極(図略)が各々取り付けられている。
【0034】
凸部60は、後方に向かって尖る円錐状を呈している。凸部60の頂部は、曲率略一定の曲面状を呈している。凸部60は、固定部2の表面(後壁後面)の中央付近に配置されている。凸部60は、センサ本体50に前後方向に対向している。歩行前の初期状態において、センサ本体50の中央付近が、凸部60の頂部により少し押圧された状態になっている。固定部2、変位部3、連結部4、および凸部60は、樹脂から一体的に成形されている。
【0035】
コントローラ7は、固定部2のU字両壁のうち、前壁に内蔵されている。コントローラ7と、センサ素子5を構成する一対の電極(図略)と、は電気的に接続されている。
【0036】
[体動センサの電気的構成]
次に、本実施形態の体動センサ1の電気的構成について説明する。図5に、同体動センサのブロック図を示す。図5に示すように、コントローラ7は、電源70と演算部71と記憶部72と電池73とランプ74とボタン75とを備えている。
【0037】
電池73は、コントローラ7および体動センサ1の動力源である。電源70は、定電流回路である。電源70は、体動センサ1に所定の電流を供給している。
【0038】
演算部71には、センサ本体50の電圧値が入力される。記憶部72には、演算部71で処理されたデータが一時的に記憶される。ボタン75は、電源70のオン、オフ切り替え用である。ランプ74は、電源70のオン状態に連動して点灯する。コントローラ7の演算部71には、パーソナルコンピューター(以下、「パソコン」と略称する。)92が接続可能である。
【0039】
[体動センサの動き]
次に、本実施形態の体動センサ1の動きについて説明する。図6に、被検者の腰部が後方に傾斜した場合における同体動センサの上下方向断面図を示す。図7に、被検者の腰部が前方に傾斜した場合における同体動センサの上下方向断面図を示す。図6、図7はいずれも図4と対応している。また、図6、図7中に、図4に示した歩行前の初期状態を、細線で示す。
【0040】
なお、実際の歩行時においては、歩行面(例えば地面、床など)に対して、固定部2も揺動する。しかしながら、固定部2に対する変位部3の変位(相対的変位)を説明するために、図6、図7においては、便宜上、固定部2を不動のものとして示す。
【0041】
前出図1に示すように、被検者90が歩行すると、脚部の動きに連動して腰部が前後に揺動する。この際、被検者90に接触している変位部3は、腰部の動きに応じて、連結部4を揺動中心として前後に揺動する。
【0042】
例えば、図6に示すように、被検者90の腰部が後方(白抜き矢印で示す)に傾斜した場合には、変位部3と共にセンサ本体50が後方に傾斜する。これにより、変位部3と固定部2との距離が大きくなる。よって、センサ本体50に対する凸部60の押圧力が小さくなる。その結果、センサ本体50は、自身の蓄積する弾性復元力により、元の状態(平板状)に復動しようとする。したがって、センサ本体50の弾性変形量は小さくなる。センサ本体50の弾性変形量が小さくなると、配合されているカーボンビーズ(導電性フィラー)同士の反発が少なくなり、導電パスが形成されやすくなる。したがって、センサ本体50の導電性は向上する。言い換えると、センサ本体50の電気抵抗は、初期状態に対して小さくなる。
【0043】
反対に、図7に示すように、被検者90の腰部が前方(白抜き矢印で示す)に傾斜した場合には、変位部3と共にセンサ本体50が前方に傾斜する。これにより、変位部3と固定部2との距離が小さくなる。よって、センサ本体50に対する凸部60の押圧力が大きくなる。その結果、センサ本体50の弾性変形量は大きくなる。センサ本体50の弾性変形量が大きくなると、配合されているカーボンビーズ同士がより大きく反発し合うため、導電パスの崩壊が進む。したがって、センサ本体50の電気抵抗は、初期状態に対して大きくなる。
【0044】
このように、歩行により、センサ本体50の弾性変形量は、増減を周期的に繰り返す。これに伴い、センサ本体50の電気抵抗は変化する。センサ本体50の電気抵抗は、前出図5に示すように、電圧として、コントローラ7に入力され、記憶部72に記憶される。この処理は、所定時間だけ継続的に実行される。処理終了後は、被検者90から体動センサ1を取り外す。そして、コントローラ7とパソコン92とを接続する。パソコン92には、記憶部72に記憶されていた所定時間分の電圧データが、コントローラ7から転送される。当該電圧データは、パソコン92のディスプレイ920に、時系列的なグラフとして表示される。
【0045】
[作用効果]
次に、本実施形態の体動センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の体動センサ1によると、被検者90の歩行に伴う腰部の動き、すなわち被検者90の脚部の動きを、電気抵抗の変化に基づいて簡便に検出することができる。また、本実施形態の体動センサ1は、ベルト91をU字状の固定部2で挟み込むことにより、被検者90に簡単に取り付けることができる。さらに、体動センサ1をベルト91に取り付けるため、取り付け用に特別な部材を準備する必要はない。並びに、取り付け時の違和感も少ない。また、体動センサ1は小型である。このため、携帯性に優れる。
【0046】
また、本実施形態の体動センサ1は、被検者90の腰部の動きを直接的に検出する。このため、歩数等を正確かつ簡便に測定することができる。つまり、本実施形態の体動センサ1によると、被検者90に息苦しさ、圧迫感等を感じさせずに、腰部の動きに伴う種々の測定が可能である。また、本実施形態の体動センサ1によると、測定時における被検者90の緊張感も少ない。このため、被検者90の、普段通りの動きを検出することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の体動センサ1には、コントローラ7が一体化されている。この点においても、本実施形態の体動センサ1は、携帯性に優れる。ここで、コントローラ7は、定電流回路の電源70を備えている。電源70としては、定電流ダイオードやFET(電界効果トランジスタ)等を使用することができる。これらの部品を使用すると、別途、増幅回路等を配置することなく、電源70によりセンサ本体50を駆動することができる。このため、コントローラ7の回路構成を単純化することができる。したがって、コントローラ7の軽量化、小型化が容易である。
【0048】
また、本実施形態の体動センサ1は、全体としてS字状を呈している。このため、S字の二つの開口のうち、一つの開口(固定部2のU字開口)を利用して、ベルト91に体動センサ1を取り付けることができる。また、S字の二つの開口のうち、もう一つの開口(連結部4により連なるU字開口)を利用して、固定部2に対して変位部3を弾性的に変位させることができる。このように、本実施形態の体動センサ1は、機能的に無駄のない形状を呈している。
【0049】
また、センサ本体50は、エラストマーを母材とする。このため、センサ素子5を、比較的低コストに製造することができる。また、センサ本体50は、加工性に優れ、様々な形状、大きさに成形することができる。
【0050】
<第二実施形態>
本実施形態の体動センサと第一実施形態の体動センサとの相違点は、凸部とセンサ素子との配置が逆になっている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図8に、本実施形態の体動センサの断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0051】
図8に示すように、変位部3と対向する固定部2の表面(後壁後面)の中央付近には、孔部20が貫設されている。孔部20の径方向断面形状は、円形を呈している。センサ素子5は、固定部2に配置されている。センサ本体50は、孔部20の後端開口を覆うように配置されている。凸部60は、固定部2と対向する変位部3の表面(前面)の中央付近に配置されている。歩行前の初期状態において、センサ本体50の中央付近が、凸部60の頂部により少し押圧された状態になっている。
【0052】
本実施形態の体動センサ1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の体動センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の体動センサ1によると、固定部2側にセンサ素子5が配置されている。一方、コントローラ7は、固定部2のU字両壁のうち、前壁に内蔵されている。すなわち、センサ素子5およびコントローラ7は、共に固定部2に配置されている。このため、コントローラ7と、センサ素子5を構成する一対の電極(図略)と、の間の配線が簡単になる。
【0053】
また、変位部3は固定部2に対して変位する。このため、変位部3にセンサ素子5を配置し、固定部2にコントローラ7を配置すると、相対的に変位する二つの部位(変位部3と固定部2)に、電気的な接続が必要な部品(センサ素子5とコントローラ7)が、分かれて配置されることになる。この点、本実施形態の体動センサ1によると、固定部2に、電気的な接続が必要なセンサ素子5とコントローラ7とが、配置されている。このため、電気回路の信頼性がより高くなる。例えば、固定部2の内部に、センサ素子5とコントローラ7とを結ぶ配線を埋設することもできる。
【0054】
<第三実施形態>
本実施形態の体動センサと第一実施形態の体動センサとの相違点は、凸部の形状が球状である点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図9に、本実施形態の体動センサの断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0055】
図9に示すように、凸部61は、樹脂製であって、球状を呈している。凸部61は、変位部3と対向する固定部2の表面の中央付近に配置されている。凸部61の前方半分(半球)は、固定部2の内部に埋設されている。歩行前の初期状態において、センサ本体50の中央付近が、凸部61の頂部により少し押圧された状態になっている。
【0056】
本実施形態の体動センサ1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の体動センサと同様の作用効果を有する。また、本実施形態の体動センサ1によると、凸部61が球状を呈している。並びに、凸部61は、第一実施形態の凸部60(前出図4参照)の先端と比較して、曲率が小さい(曲率半径が大きい)。このため、センサ本体50への押圧力が分散される。したがって、押圧によりセンサ本体50が弾性変形を繰り返しても、センサ本体50は劣化しにくい。つまり、センサ本体50、ひいては体動センサ1の耐久性が向上する。
【0057】
<その他>
以上、本発明の体動センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、センサ本体として、エラストマー材料を使用した。しかし、センサ本体は、弾性変形に伴い電気抵抗が変化するものであればよい。例えば、歪みゲージ、圧電素子、感圧導電性樹脂等を使用してもよい。また、エラストマー材料を使用する場合であっても、エラストマーや導電性フィラーの種類は上記実施形態に限定されない。エラストマーや導電性フィラーの種類、導電性フィラーの充填率、さらにはセンサ本体の厚さ等を調整することにより、センサ本体の電気抵抗を所定の範囲に設定すればよい。また、体の動きに応じて、例えば0.1〜10Hz程度の周波数特性を得られるよう、センサ本体を最適化すればよい。
【0059】
例えば、センサ本体をエラストマー材料から構成し、センサ本体の弾性変形量が増加するに従って電気抵抗を増加させるためには、導電性フィラーの充填率を、センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下とすることが望ましい。こうすると、エラストマー中に導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合される。よって、センサ本体に、導電性フィラーによる三次元的な導電パスが形成されやすくなる。
【0060】
センサ本体を押圧する凸部の形状は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、截頭円錐状、円柱状、角柱状等、種々の形状を採用することができる。また、上記実施形態では、凸部を一つだけ配置したが、凸部を二つ以上配置してもよい。
【0061】
上記実施形態では、センサ本体および凸部を、各々、固定部、変位部の表面の中央付近に配置した。しかし、センサ本体および凸部の位置は、変位部の変位量に対するセンサ本体の弾性変形量等を考慮して、適宜決定すればよい。すなわち、センサ本体のヤング率、連結部の剛性、連結部からの距離等を考慮して、適宜決定すればよい。また、上記実施形態では、センサ本体を弾性変形しやすくするため、センサ本体の押圧方向に孔部を貫設した。しかし、孔部は必ずしも必要ではない。孔部が貫設されていない固定部あるいは変位部の表面に、センサ本体を配置してもよい。また、孔部の代わりに、凹部(貫通していない)を凹設してもよい。
【0062】
上記実施形態では、固定部、変位部、連結部を、樹脂から一体的に成形した。しかし、例えば、連結部を別部材により構成してもよい。連結部は、固定部と変位部とを連結し、変位部を変位、復元させるものであればよい。例えば、連結部を、板ばね、コイルスプリング等のばね部材により構成してもよい。また、連結部の肉厚(図4における上下方向肉厚)を調整することにより、連結部の剛性を調整してもよい。こうすると、歩行時における凸部とセンサ本体との相対的な変位量を調整することができる。
【0063】
上記実施形態では、コントローラをパソコンと接続して、電圧データを表示した。しかし、コントローラにて処理されたデータを、表示装置に無線で電送してもよい。また、コントローラに蓄積された電圧データを、USB(Universal Serial Bus)メモリ等で取り出して、パソコンに表示させてもよい。
【0064】
本発明の体動センサは、被検者の肌に直接接触させて取り付けてもよく、衣服等を介して間接的に接触させて取り付けてもよい。また、本発明の体動センサの用途は、上記実施形態の歩数計に限定されるものではない。本発明の体動センサを胸部付近に取り付けて、呼吸状態を検出してもよい。この場合、被検者の体の動きに追従しにくい装着部材を使用して、体動センサを取り付ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一実施形態の体動センサの取り付け状態を上方から見た模式図である。
【図2】同体動センサの斜視図である。
【図3】同体動センサの斜視分解図である。
【図4】同体動センサの断面図である。
【図5】同体動センサのブロック図である。
【図6】歩行時における同体動センサの上下方向断面図である(腰部後方傾斜)。
【図7】歩行時における同体動センサの上下方向断面図である(腰部前方傾斜)。
【図8】本発明の第二実施形態の体動センサの断面図である。
【図9】本発明の第三実施形態の体動センサの断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1:体動センサ
2:固定部 20:孔部 3:変位部 30:孔部 4:連結部
5:センサ素子 50:センサ本体 60、61:凸部
7:コントローラ(制御回路部) 70:電源 71:演算部 72:記憶部
73:電池 74:ランプ 75:ボタン
90:被検者 91:ベルト(ベルト部材) 92:パソコン 920:ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に装着される装着部材に取り付けられる固定部と、
該被検者の体と該固定部との間に介装され、該固定部と比較して該体の動きに追従して変位しやすい変位部と、
該固定部と該変位部とを弾性的に連結する連結部と、
該固定部および該変位部のうち、いずれか一方に配置され、弾性変形に伴い電気抵抗が変化するセンサ本体と該センサ本体に接続され電気抵抗を出力可能な電極とを有するセンサ素子と、
該固定部および該変位部のうち、いずれか他方に配置され、該センサ本体に対向し、該被検者の該体の動きに伴い該センサ本体を押圧可能な凸部と、を備え、
該固定部に対して該変位部が変位し、該センサ本体が該凸部に押圧され弾性変形する際の該センサ本体の電気抵抗の変化に基づいて、該被検者の該体の動きを検出する体動センサ。
【請求項2】
前記装着部材は、前記被検者の前記体に巻回されたベルト部材である請求項1に記載の体動センサ。
【請求項3】
前記凸部の先端は、曲面状を呈している請求項1または請求項2に記載の体動センサ。
【請求項4】
前記センサ本体は、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の体動センサ。
【請求項5】
さらに、前記センサ素子に電流を供給するための電源と、該センサ素子からの出力を処理する演算部と、を有する制御回路部を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の体動センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−279211(P2009−279211A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134912(P2008−134912)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】