体液中における疾患または状態のシグネチャーを検出する方法
個人における癌細胞の存在を診断するための方法および組成物を提供する。癌を有する個人における腫瘍特異的シグネチャーを同定するための方法および組成物も提供する。個人における感染性因子の存在を診断するための、および/または感染した個人における感染性因子特異的シグネチャーを同定するための方法および組成物を提供する。個人における疾患の存在を診断するための方法および組成物も提供する。前記疾患を有する個人における疾患特異的シグネチャーを同定するための方法および組成物も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する米国特許出願
本願は、2008年6月18日出願の米国特許仮出願第61/073,434号、および2008年1月18日出願の米国特許仮出願第61/022,033号の出願日の利益を主張するものであり、各々の出願は、その全体が全ての目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、胎児の性別などの状態、または患者の体液から得られた細胞中の腫瘍のゲノミック(genomic)シグネチャー、プロテオミック(proteomic)シグネチャー、メタボロミック(metabolomic)シグネチャー、グライコミック(glycomic)シグネチャー、グライコプロテオミック(glycoproteomic)シグネチャー、リピドミック(lipidomic)シグネチャー、および/またはリポプロテオミック(lipoproteomic)シグネチャーなどの疾患の状態のマーカーを同定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍は、遺伝的変化およびエピジェネティックな変化の蓄積によって正常細胞から発生する。この多段階プロセスには、正常細胞の悪性表現型への進行性の形質転換をもたらす複数の遺伝子的変化が関与している。このような変化は、DNA配列の不可逆的な変化(例えば、変異、欠失、転座)から成り、発癌遺伝子の活性化、腫瘍抑制遺伝子の不活性化、および遺伝子の融合をもたらす。このような現象の確率的な性質によって遺伝学的不均一性がもたらされ、特有の表現型を与える癌の指標である分子フィンガープリント(molecular fingerprints)(例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質、および炭水化物などの1つまたは複数の細胞成分)が形質転換細胞に付与される。その結果、特有の遺伝子セットのホールマーク(hallmarks)/シグネチャー(signatures)が種々の腫瘍によって発現されることが知られている(Perou et al. (2000) Nature 406:747、Lobenhofer et al. (2001) Health Perspect. 109:881、van't Veer et al. (2002) Nature 415:530 (2002)、Liotta and Kohn (2003) Nat. Genet. 33:10、Ginos et al. (2004) Cancer Res. 64:55、Liu (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:3531、Grigoriadis et al. (2006) Breast Cancer Research 8:R56)。
【0004】
原発性腫瘍および転移性腫瘍はいずれも、何年間にもわたって無症状で未検出の状態であり得る。しかし、このような休止状態で潜在性の腫瘍、および過去に診断された原発性固形腫瘍および転移性は、腫瘍1グラムあたり、1日におよそ100万から600万個の細胞を循環中に流入させている。CTCとして知られるこのような循環性腫瘍細胞の大部分はアポトーシスを起こして死滅するが、異なった細胞集団が転移性疾患に発展する可能性がある。腫瘍細胞のアポトーシス小体、DNA、ヌクレオソーム、RNA、およびタンパク質も、癌患者の血液中に見出される(Holmgren et al., Blood 93, 3956 (1999))。腫瘍のシグネチャーを同定することができるかどうか、およびこれらを用いて癌の検出またはモニタリングができるかどうかを研究する努力が行われてきた。Ransohoff, Nature Reviews Cancer 5, 142 (2005)、およびMcLerran et al., Clin. Chem. 54, 44 (2008)を参照のこと。
【0005】
DNAは、種々の真核細胞へ容易にトランスフェクトすることができる。すなわち、DNAは、細胞の細胞質内部に取り込まれると、その遺伝子を宿主細胞のゲノムへ組み込むことができる。例えば、好中球およびマクロファージは、素早くそして非常に効率的に(50%〜90%)トランスフェクトすることができる。原核細胞から真核細胞へのDNAの通過も実証されており、真核細胞間でも起こると考えられている。腫瘍細胞から放出されたDNAは、高い形質転換活性を有している。培養した腫瘍細胞の培地上清を正常細胞に添加すると、カルシウム沈澱として投与されたクローン化ras遺伝子でトランスフェクションした後に発生する病巣と同じ位の量の形質転換した病巣が発生する。さらに、健康なラットに腫瘍を有するラットの血漿(したがって、腫瘍DNAを含む)を注射すると、健康なラットの肺細胞のDNAに腫瘍マーカー遺伝子が見られた。すなわち、腫瘍遺伝子が肺細胞中で転写された。
【0006】
白血球は、骨髄中の多能性造血幹細胞として始まり、骨髄系(単球、マクロファージ、好中球、好酸球、および好塩基球)、またはリンパ系(Tリンパ球およびBリンパ球ならびにナチュラルキラー細胞)のいずれかに発生する。骨髄系細胞(例えば、好中球およびマクロファージ)の主な機能は、感染性生物、不要な損傷した生存細胞、老化細胞および死細胞(アポトーシスおよびネクローシス)の貪食、ならびに細胞片の除去である。健康な動物の貪食細胞は複製せず、二倍体、すなわち、DNA指数(DNA index)が1である。平均して、各細胞は<10ngのDNA、<20ngのRNA、および<300ngのタンパク質を含有する。
【0007】
細胞型、性別、年齢、および個体差などに関連するものなど、異なった遺伝子発現パターンの変動が健康なドナーのWBCで認識されている。例えば、「リンパ球関連」クラスターは、55個の特有の遺伝子を有する。好中球では、52個の特有の遺伝子クラスターの発現の著しい変動性も報告されている。このクラスター内の遺伝子は、特異性が増す順に、(i)多くの種類の循環免疫細胞で偏在的に発現される遺伝子、(ii)骨髄系の細胞によって発現される遺伝子、および(iii)顆粒球に特異的である遺伝子の3つのファミリーに分類することができる。
【0008】
種々のWBCサブ集団の寿命は、数日(例えば、好中球)から数ヶ月(例えば、マクロファージ)まで様々である。他の細胞型と同様に、白血球は老化し、最後には死に至る。白血球の老化プロセスの間、ヒトの血液由来の貪食細胞および組織由来の貪食細胞(例えば、好中球)は、カスパーゼの活性化、核濃縮、およびクロマチンの断片化を含む、プログラム細胞死(すなわち、アポトーシス)の典型的なマーカーすべてを提示する。これらの細胞は、細胞膜の細胞外表面上に、多数の「イートミー(eat−me)」フラッグ(例えば、ホスファチジルセリン、糖)も提示している。その結果、死につつある細胞および死細胞、ならびにその細胞内断片が、他の貪食細胞によって組織および血液から除去される。
【0009】
貪食細胞のアポトーシスは、その活性化後に促進される。例えば、好中球による黄色ブドウ球菌の貪食の後、ホスファチジルセリンが細胞膜上に外面化され、それによってマクロファージによる迅速な貪食作用が引き起こされる。活性化された単球も、高いホスファチジルセリンレベルを有する種々の腫瘍細胞株と結合することが示されている。
【0010】
循環貪食細胞は、生存CTCおよび死CTC、ならびにその断片を貪食することが知られており、これは、貪食を行う細胞のDNA(およびその他の細胞構成物質)含有量の増加を引き起こすプロセスである。例えば、アポトーシス腫瘍細胞は、マクロファージおよび樹状細胞によって貪食されることが示されている。そのような貪食作用の結果、前立腺癌患者から得られた血中マクロファージは、良性の前立腺状態を有する患者から得られたマクロファージと比べて、非常に高いレベルの前立腺特異的抗原(PSA)を細胞内に含有することが示されている。Herwig et al., Clinical Prostate Cancer 3, 184 (2004)、およびHerwig et al., Prostate 62 290 (2005)を参照のこと。これは、腫瘍細胞を貪食する結果であると考えられる。胎児幹細胞、有核赤血球、胎児リンパ球、および相当量の無細胞胎児核酸が、母体血液中を循環していることが知られている。Cheung et al., Nat. Genet. 14, 264 (1996)を参照のこと。
【0011】
ヒトのバーキットリンパ腫細胞由来のアポトーシス小体(膜でカプセル化された細胞断片)をヒト単球(貪食性)または血管平滑筋細胞(非貪食性)と共に培養すると、単球は、高い割合でエプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的な腫瘍遺伝子陽性細胞を示すが、平滑筋細胞は、およそ0.01%の取り込みおよび発現の頻度を示すことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば疾患を有していることが分かっていない個人または再発性の疾患を有する個人において、疾患(例えば、腫瘍)の存在を早期に診断することを可能とする方法が求められている。本発明の1つの目的は、ヒトを含む動物の白血球細胞(WBC)のサブ集団内で、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、および/または脂質などの疾患特異的(例えば、腫瘍特異的)マーカーの検出を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態は、特定の疾患もしくは状態に関連するマーカーの有無を判定するための貪食細胞の使用に基づいている。本発明のある実施形態によれば、貪食細胞は、血液中を循環し、特定の疾患または状態に特徴的な細胞、および/またはその断片、および/またはその成分を取り込む。貪食細胞の含有物は、例えば、細胞中のDNAおよび/またはタンパク質含有量によって、または細胞によるDNAもしくはタンパク質の発現によって、疾患または状態に対するマーカープロファイルを提供する。貪食性WBCおよび非貪食性WBCのDNA発現プロファイルを比較することにより、非貪食細胞中では発現されなかったかまたは低発現された腫瘍特異的、疾患特異的、または状態特異的なDNAシグネチャーが貪食細胞内で検出される。同様に、貪食性WBCおよび非貪食性WBCのタンパク質発現プロファイルにより、非貪食細胞中では発現されなかったかまたは低発現された腫瘍特異的、疾患特異的、または状態特異的なタンパク質シグネチャーが貪食細胞内で検出される。したがって、ある実施形態によれば、本発明の方法により、癌を有することが疑われる個人における固形腫瘍(例えば、原発性病変および転移性病変)の存在が同定され、および/または病理的徴候および症状の出現の前に癌の存在が同定され、疾患の再発が検出される。他の実施形態によれば、本発明の方法により、血液またはその他の体液の特定のシグネチャーを同定することによって、特定の疾患またはその他の状態が診断される。
【0014】
本発明は、貪食細胞および非貪食細胞などの個人の血液細胞成分が、腫瘍特異的シグネチャーおよび正常な非特異的シグネチャーの容易な同定および区別に理想的に適しており、したがって、内在的な個体差(例えば、年齢、性別、人種的背景、健康状態)および遺伝子発現の一時的な変動の結果生じるベースラインの不等性の排除に理想的に適しているという発見に部分的に基づいている。
【0015】
ある例示的実施形態では、癌、および/または1つまたは複数のその他の疾患もしくは障害もしくは状態を有することが疑われる個人のWBC内(血液、または尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液などのその他の体液から得られる)で、腫瘍および/またはその他の疾患に特異的なシグネチャーを同定する方法が提供される。本発明の実施形態は、患者に特異的な結果を提供し、集団由来の平均的シグネチャープロファイルおよび「健康な」コントロールから得られた数値に依存しない。すなわち、1つまたは複数のベースラインシグネチャー/バックグラウンドシグネチャーは、診断を受けた個人の1つまたは複数のゲノミックプロファイル、プロテオミックプロファイル、メタボロミックプロファイル、グライコミックプロファイル、グライコプロテオミックプロファイル、リピドミックプロファイル、および/またはリポプロテオミックプロファイルに特異的である。本発明の実施形態は、個別化された疾患素因、疾患のスクリーニング、診断、およびモニタリングを提供する。
【0016】
図1に関して、ある実施形態においては、本発明は、生存細胞、死につつある細胞、および死細胞(例えば、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞)、微生物(例えば、細菌(例えば、リケッチア))、ウイルス、真菌、酵母、および原虫など)、細胞内粒子および/またはその断片(カハール体、細胞膜、中心小体、中心体、ジェム(gems)、ゴルジ体、リソソーム、ミトコンドリア、核膜、核、核小体、パラスペックル(paraspeckles)、前骨髄球性白血病体(PML体)、リボソーム、粗面小胞体、滑面小胞体、空胞、小胞、および微小胞など)、および、例えば、染色体、DNA(核内DNAおよびミトコンドリアDNA)、エクソン、遺伝子、イントロン、タンパク質、プリオン、炭水化物結合タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、RNA、マイクロRNA、脂質、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソーム、ヌクレオソーム、多形間期カリオソーム会合(polymorphic interphase karyosomal associations)(PIKA)、およびスプライシングスペックルなど)などの細胞片を貪食し、摂取する貪食細胞の能力、ならびに、非貪食細胞においてこれらの特徴が存在しないことに基づいている。したがって、DNA(核内DNA、ミトコンドリアDNA)、RNA、マイクロRNA、タンパク質、プリオン、炭水化物結合タンパク質、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソームおよび/またはヌクレオソーム、および/または貪食性WBCの発現プロファイルの解析、ならびに、同一のドナーの血液またはその他の体液から得られた非貪食細胞からのこれらとの比較により、非貪食細胞(患者特異的ノイズ)では発現されないかもしくは有意に差異的に発現される、貪食細胞(患者特異的シグナル)内の腫瘍および/または疾患特異的シグネチャーが同定される。貪食細胞および非貪食細胞はいずれも骨髄内の同一の多能性幹細胞から発生するため、(非貪食細胞内で同定される)非腫瘍関連/誘発シグネチャープロファイルを貪食細胞で見られるプロファイルから差し引くことにより、図2に示すように、特定の患者のサンプルにおける腫瘍および/または疾患特異的シグネチャーの同定が可能となる。他のある実施形態によると、体液中の細胞片は、エントーシス(細胞吸収)、エンドサイトーシス、およびピノサイトーシスによって内部に取り入れられる。
【0017】
図3に関して、本発明のある実施形態によると、個人から血液サンプルが採取され、該血液サンプルは貪食細胞および非貪食細胞の両方を含む(例えば、WBC)。次に、当業者に周知の種々の方法によって非貪食細胞(例えば、T細胞、B細胞、ヌル細胞、好塩基球)から、貪食細胞(例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、泡沫細胞)が分離される。本発明によると、WBCの表現型は、血液中に存在する生存/死につつある/死CTC(およびその細胞内断片)、および/または、腫瘍および/または疾患特異的DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の貪食によって変化する。貪食により、これらの腫瘍および/または疾患のシグネチャーが貪食を行う細胞内に取り込まれ、恐らく、腫瘍特異的体細胞変異(またはその他の疾患関連変異)を有する腫瘍細胞DNAが正常な貪食細胞DNAへ組み込まれる可能性もある(すなわち、標的細胞の染色体のトランスフェクション)。続いて、この貪食細胞の「トランスフェクトされた」DNAがRNAへ転写され、RNAがタンパク質へ翻訳されると、非貪食性WBCとは異なる表現型が作り出される。
【0018】
したがって、当業者に周知の、ゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック手法を用いて、(図3に示すように)癌(および/または1つまたは複数のその他の疾患)を有する個人から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCのDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質の発現プロファイルを比較することにより、個人における不顕性腫瘍(またはその他の疾患もしくは状態)の存在を確認する腫瘍特異的(および/または疾患特異的および/または状態特異的)シグネチャーおよび/またはプロファイルが、貪食細胞において選択的に同定される。本発明によると、(例えば、ゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)貪食細胞のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質のプロファイルを非貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、特定の患者の血液サンプル(および/またはその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーを同定し、図2に示すように、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患の存在を示す方法が提供される。
【0019】
ある例示的実施形態では、貪食細胞および非貪食細胞(例えば、血液または1つまたは複数のその他の生体サンプル(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られる)が分離される。貪食性WBCによるCTC(およびその細胞内断片)の貪食によって、腫瘍細胞が貪食細胞の細胞質内に取り込まれるため、貪食細胞内のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の量は、非貪食細胞のそれよりも多くなる。したがって、貪食細胞と非貪食細胞との間でのこれらの成分の量およびプロファイルの比較が、癌の存在の指標として用いられる。
【0020】
ある例示的実施形態では、個人における癌細胞の存在を診断する方法が提供される。この方法は、個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、およびこの第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程とを含む。
【0021】
ある例示的実施形態では、癌を有する個人において、腫瘍特異的シグネチャーを同定するための方法が提供される。この方法は、癌を有する個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、癌を有する該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を癌を有する個人における腫瘍特異的シグネチャーと関連付ける工程とを含む。
【0022】
ある例示的実施形態では、個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程とを含む方法が提供される。この方法は、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程とを含む。ある態様では、第二の発現プロファイルと比較して第一の発現プロファイルにおいてマーカーの量が増加していることが、循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を示す。
【0023】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態では、個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程とを含む、個人における癌細胞の存在を診断するための方法が提供される。この方法は、2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程とを含む。この方法はさらに、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程を含む。
【0024】
本明細書に記載の方法のある態様において、マーカーとしては、DNA、RNA、マイクロRNA(例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせに対応するDNAまたはRNA)、タンパク質(例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチド)、脂質、炭水化物、および/またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある態様では、血中貪食細胞は、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、好酸球、泡沫細胞、またはこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、血中非貪食細胞は、T細胞、B細胞、ヌル細胞、好塩基球、またはこれらの任意の組み合わせである。他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、抗体などの当業者に周知の手法を用いて、全血から単離される。さらに他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの当業者に周知の方法を用いて、白血球の集団から単離される。他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される。さらに他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスなどを含む1つまたは複数の方法によって分離される。ある態様では、個人は、不顕性癌(例えば、休止状態の癌、診断未確定の癌、隠れたまたは隠蔽(concealed)された癌)、過去に診断された原発性癌および転移性癌の1つまたは複数を有する。ある態様では、方法は、1つまたは複数のマーカーの存在を癌治療の有効性と関連付ける工程を含む。
【0025】
ある例示的実施形態では、上述の方法は、貪食細胞および非貪食細胞の発現プロファイルを比較して感染性因子または癌以外の疾患に特徴的なマーカーの発現差異を特定することにより、感染性因子または癌以外の疾患の存在を検出、同定、または診断するために適用される。さらに別の態様では、本明細書に記載の方法の1つまたは複数を用いて、病原体(例えば、ウイルス、細菌、リケッチア、原虫、蠕虫、真菌、および酵母など)、およびその他の疾患または病態(例えば、アルツハイマー病、認知症、心不全、アテローム性動脈硬化症、関節炎、遺伝的障害、骨疾患、胃腸疾患、プリオン病、および感染性疾患)のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質プロファイルが検出される。
【0026】
本明細書に記載の方法のある態様では、マーカーとしては、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある態様では、感染性因子は、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、感染性タンパク質、およびこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、方法は、1つまたは複数のマーカーの存在を病原体治療の有効性と関連付ける工程を含む。
【0027】
本明細書に記載の方法および組成物は、したがって、「健康な」コントロールから得られた、集団由来の平均シグネチャープロファイルおよび数値に依存することなく、患者の血液サンプル中の腫瘍特異的シグネチャーの容易な同定を可能とする。具体的には、本明細書に記載の方法および組成物により、容易かつ経済的に、(i)病理的徴候および症状の出現の前に、個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の存在を同定、(ii)癌を有することが疑われる個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の存在を同定、および/または(iii)種々の治療を行っている、または行った後の個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の再発を検出することができる。
【0028】
したがって、本明細書に記載の方法および組成物は、(i)癌の非侵襲的なスクリーニングを可能とし、(ii)腫瘍の診断を、特に最も早い時点において可能とし、(iii)、腫瘍の進行途中において、より早い時点から意味のある介入治療に移行することにより進行性疾患の発症を未然に防止し、(iv)通常のまたは実験的な治療に対する早期の反応をモニタリングし、(v)通常のまたは実験的な治療に対する反応を予測し、(vi)期待される利点によって副作用が相殺されない可能性のある、無効な治療の迅速な同定を可能とすることによって、有効な治療の選択を促進し、(vii)患者の不便性および不適格性(incapacitation)を最小限に抑え、(viii)腫瘍の検出、診断、および治療の密接な連係を可能とし(例えば、個人化された抗癌治療)、(ix)腫瘍の種類とステージの予測および早期の検出を提供し、(x)治療の選択を提供し、(xi)腫瘍が転移性か否かを判定し、(xii)疾患をモニタリングする方法を提供し、(xiii)疾患の予後のための方法である。
【0029】
本特許または出願ファイルは、カラーで作製された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、庁へ申請し、必要な料金を支払うことで提供される。本発明の、前述した特徴およびその他の特徴、ならびに利点は、添付の図面とともに、具体的実施形態についての以下の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】生存腫瘍細胞および/またはアポトーシス腫瘍細胞によって放出された生存CTC、アポトーシスCTC、断片化CTC、腫瘍DNA、RNA、タンパク質、および脂質の貪食後に、貪食細胞による、腫瘍特異的なDNAシグネチャー、RNAシグネチャー、タンパク質シグネチャー、および/または脂質シグネチャーの獲得をもたらす経路案の概略図である。(非貪食細胞ではなく)貪食細胞のみが腫瘍シグネチャーを獲得することに留意されたい。
【図2】卵巣癌(OC)を有する患者の貪食細胞中で、または貪食細胞によって発現された癌シグネチャーの同定に用いられる解析方法の概略図である。
【図3】本発明の方法のある実施形態の一般的なフローチャートの概略図である。
【図4】生存腫瘍細胞および/またはアポトーシス腫瘍細胞によって放出された生存CTC、アポトーシスCTC、断片化CTC、腫瘍DNA、RNA、タンパク質、および脂質の貪食後に、貪食血液細胞による、腫瘍特異的なDNAシグネチャー、RNAシグネチャー、タンパク質シグネチャー、および脂質シグネチャーの獲得をもたらす経路案の概略図である。貪食後の貪食細胞のDNA含有量が>2nであることに留意されたい。
【図5】乳癌(BC)シグネチャーを、BCを有する動物において同定するために用いられる解析手法の概略図である。
【図6】本発明の方法の別の実施形態の一般的なフローチャートを概略的に示す図である。
【図7】LNCaP細胞およびLLC1細胞から単離された全RNAのゲル電気泳動解析を示す図である。
【図8】マウス白血球細胞(WBC)から得られたRNAの収量および品質の一覧である。
【図9】LNCaP(ヒト前立腺癌)腫瘍を有するヌードマウスの好中球で検出された、7つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LNCaP腫瘍。(B)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NT)。(C)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図10】LNCaP(ヒト前立腺癌)腫瘍を有するヌードマウスのマクロファージで検出された、3つの上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LNCaP腫瘍。(B)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスからのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図11】LS174T(ヒト結腸癌)腫瘍を有するヌードマウスの好中球で検出された、4つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LS174T腫瘍。(B)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NT)。(C)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。発現は、NTが、NNおよびTTにおける発現の2倍以上である。
【図12】LS174T(ヒト結腸癌)腫瘍を有するヌードマウスのマクロファージで検出された、3つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LS174T腫瘍。(B)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上である。
【図13】LLC1(マウス転移性肺癌)腫瘍を有するC57/Blマウスの好中球で検出された、5つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LLC1腫瘍。(B)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られた好中球(NT)。(C)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図14】LLC1(マウス転移性肺癌)腫瘍を有するC57/Blマウスのマクロファージで検出された、2つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LLC1腫瘍。(B)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図15】B16F10(マウス転移性メラノーマ)腫瘍を有するC57/Blマウスの好中球で検出された、2つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)B16F10腫瘍。(B)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られた好中球(NT)。(C)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図16】B16F10(マウス転移性メラノーマ)腫瘍を有するC57/Blマウスのマクロファージで検出された、1つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)B16F10腫瘍。(B)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D:腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図17】頭頸部癌(扁平上皮癌腫)を有する患者の好中球で検出された、5つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)正常組織(皮膚)生検。(B)腫瘍組織生検。(C)患者血液から得られた好中球(NT)。(D)患者血液から得られたT細胞(TT)。丸で囲んだシグネチャーは、(B)腫瘍細胞、および(C)患者血液の好中球で発現されたもの、ならびに(A)正常皮膚、または(D)非貪食T細胞で最小限に発現されたかまたは発現されなかったものである。NTにおける発現は、TTおよび皮膚における発現の2倍以上であった。
【図18】卵巣癌(腺癌)を有する患者のマクロファージで検出された、23個の(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)患者血液から得られたマクロファージ(MT)。(B)患者血液から得られたT細胞(TT)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)患者からのマクロファージで発現されたもの、および(B)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、TTにおける発現の2倍以上であった。
【図19】貪食細胞中の腫瘍シグネチャーを同定するために用いられる方法を示す図である。この例では、腫瘍を有する動物のマクロファージ(MT)での癌関連遺伝子の発現強度は、同じ動物のT細胞(TT)からの発現強度と比較して定量化し、2倍超の過剰発現を同定した。次に、MTにおけるすべての発現遺伝子の強度を定量化し、腫瘍を有しない動物から得られたマクロファージ(MNT)での強度と比較し、2倍超に過剰発現された遺伝子を同定した。両リストに共通する遺伝子を選択し、同じ腫瘍によって発現された遺伝子と比較した(網掛け領域)。
【図20】(A)LNCaPヒト前立腺腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MLNCaP)および同じ動物のT細胞(T細胞LNCaP)、(B)MLNCaPおよび腫瘍を有しないマウスから得られたマクロファージ(Mnon−tumor)、(C)LNCaPヒト前立腺腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NLNCaP)および同じ動物のT細胞(T細胞LNCaP)、ならびに(D)NLNCaPおよび腫瘍を有しないマウスから得られたマクロファージ(Nnon−tumor)における遺伝子発現強度の比較を示す図である。赤色で示した遺伝子は、2倍超の過剰発現であり、緑色の遺伝子は、1/2倍より少ない過小発現であった。
【図21】貪食好中球(N)およびマクロファージ(M)内での癌関連遺伝子の発現のリストである。
【図22】非貪食T細胞と比較して、卵巣癌を有する患者の貪食マクロファージで(>2倍)上方制御された癌関連遺伝子のリストである。
【図23】マウスWBCから得られたタンパク質サンプル(5.9μg)のSDSゲル(10%)電気泳動を示す図である。
【図24】腫瘍を有するマウスから得られたT細胞および単球/マクロファージ(M/M)におけるTAG−72およびPSAの発現のウェスタンブロット解析を示す図であり、貪食細胞にのみシグネチャーが存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態は、疾患、感染性因子、および身体状態と関連するマーカーの患者に特異的な発現プロファイルを、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルに基づいて提供する方法に関する。本発明のある態様によると、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルを、特定の疾患状況または疾患状態に対する既知のマーカーと比較して、その特定の疾患状況または疾患状態の検出および/または診断が行われる。本発明の別の態様によると、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、単一の患者の血液からの非貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。非貪食細胞からの細胞内容物および/または発現プロファイルを、貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、個人の疾患状況のみを表す細胞内容物および/または発現プロファイルが作り出される。
【0032】
本発明の別の実施形態によると、個人からの貪食細胞集団が得られ、DNA含有量が2n超である該集団の貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、DNA含有量が2nである同じ集団の貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。本発明のさらに別の実施形態によると、個人からの貪食細胞集団が得られ、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常よりも多くDNA指数が1を超える該集団の貪食細胞の発現プロファイルが、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常であり、および/またはDNA指数が1である同じ集団の貪食細胞の発現プロファイルと比較される。
【0033】
このような患者特異的な発現プロファイルにより、個人における特定の疾患の検出または診断に誤りを発生させる可能性のある、特定の疾患または感染性因子に対する集団由来の平均シグネチャープロファイルへの依存が排除される。本発明の疾患状況に対する患者特異的な発現プロファイルにより、検出、診断、および治療を個人に対して個別化することが可能となる。
【0034】
図1〜図3に関して、本発明のある実施形態によると、発生後約3週間のヒト皮下(s.c.)腫瘍(前立腺LNCaP腺癌、またはLS174T結腸腺癌)を有するマウス、またはマウス腫瘍(静脈内投与したB16F10転移性メラノーマ、または皮下注射したLLC1肺癌)から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCの遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、これらの腫瘍を有するマウスから得られた好中球およびマクロファージが、対応する各々の腫瘍でも発現される種々の発癌遺伝子シグネチャーおよびその他の癌関連遺伝子シグネチャーを発現することが実証された。図9〜図16および図19〜図21を参照のこと。これらの癌関連遺伝子および発癌遺伝子(例えば、ERBB2、Jun、Fosなど)は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた好中球およびマクロファージによる発現は、起こらないかまたは最小限である。さらに、腫瘍を有するマウスからの貪食細胞でのみ、腫瘍特異的タンパク質の発現が見られた。図23および図24を参照のこと。該マウスの血液中のCTCおよび/または腫瘍特異的DNAおよび/またはタンパク質は貪食され、腫瘍細胞DNAの一部は、その腫瘍特異的変異および遺伝子と共に、(理論に束縛されることを意図するものではないが)恐らくはトランスフェクションにより、正常貪食細胞DNA中へ取り込まれ、RNAへ転写され、タンパク質へと翻訳された。
【0035】
図1〜図3に関して、本発明のある例示的実施形態によると、頭頸部腫瘍または卵巣癌を有する患者から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCの遺伝子発現プロファイルも比較した。その結果、前記患者から得られた好中球およびマクロファージが、対応する各々の腫瘍でも発現される種々の発癌遺伝子シグネチャーおよびその他の癌関連遺伝子シグネチャーを発現することが実証された。図17〜図18および図22を参照のこと。これらの癌関連遺伝子および発癌遺伝子は、同一の個々の患者から単離された非貪食T細胞によって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。該患者の血液中のCTCおよび/または腫瘍特異的DNAおよびRNAは貪食され、腫瘍細胞DNAおよび/またはRNAの一部は、その腫瘍特異的変異および遺伝子と共に、(理論に束縛されることを意図するものではないが)恐らくはトランスフェクションにより、正常貪食細胞DNA中へ取り込まれ、RNAへ転写され、タンパク質へと翻訳された。
【0036】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態によると、血液、または1つまたは複数のその他の生体サンプル(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られ、(1)そのDNA含有量が2n超(Pn>2)か、または(2)RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常よりも多い貪食細胞(例えば、マクロファージ)、すなわち、CTCおよび/またはその細胞内断片、またはDNA/RNA/脂質(すなわち、腫瘍特異的シグネチャーまたはその他の疾患特異的シグネチャー)の貪食を行い、および/または1よりも大きいDNA指数を有する細胞の、DNA(核内DNAおよび/またはミトコンドリアDNA)、RNA、マイクロRNA、タンパク質、および/または脂質の発現プロファイルの定量分析、ならびに、(1)DNA含有量が2nである(Pn=2)か、または(2)RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常である同じ貪食細胞集団(例えば、マクロファージ)、すなわち、CTCおよび/またはその細胞内断片の貪食を行っておらず、DNA指数が1である細胞との比較により、Pn=2細胞では発現されないかまたは最小限に発現される腫瘍特異的(またはその他の疾患特異的)シグネチャー(患者特異的ノイズ)をPn>2細胞(患者特異的シグナル)内で検出するための方法が提供される。図6を参照すると、図5に示すように、Pn=2のDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質のプロファイルを、Pn>2のプロファイルから差し引くことにより、癌(および/または疾患および/または身体状態)を有する動物および/またはヒトの血液サンプル(または、例えばその他の体液などの1つまたは複数のその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的および/または状態特異的)シグネチャーを(例えば、1つまたは複数のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)同定し、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患および/またはその他の状態の存在を示すための方法が提供される。貪食細胞のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミックプロファイルが非貪食細胞のプロファイルと比較される上述の方法とは異なり、本発明の解析的検出方法の大きな利点は、(i)この方法が、「腫瘍特異的」(例えば、Pn>2マクロファージ)シグネチャーおよび「正常な非特異的」(例えば、Pn=2マクロファージ)シグネチャーの供給源として単一の貪食細胞サブ集団を用いること、すなわち、両者が同一のベースライン遺伝子型を共有すること、および(ii)シグネチャー獲得細胞(例えば、Pn>2好中球)が、貪食を行わず死CTCおよび/またはその断片を獲得しなかった細胞(例えば、Pn=2好中球)で希釈されないことである。
【0037】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態によると、血液または1つまたは複数のその他の生体サンプルまたは体液(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られ、貪食または内部への取り込みの結果として、他の生存細胞、死につつある細胞、もしくは死(例えば、アポトーシスまたはネクローシス)細胞、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソーム、ヌクレオソーム、ミトコンドリア、および小胞体などの細胞内含有量が、正常な細胞内含有量を有する同一の貪食細胞集団(例えば、マクロファージ)(PNIC)、すなわち、上述の細胞および/細胞片のいずれも貪食しなかった細胞の含有量よりも多い貪食細胞(例えば、マクロファージ)(患者特異的ノイズ)の定量分析により、正常な細胞内含有量を有する貪食細胞(患者特異的ノイズ)では発現されないかまたは最小限に発現される腫瘍特異的(またはその他の疾患特異的またはその他の状態特異的)シグネチャーを、細胞内含有量が増加した貪食細胞(PIIC)内で検出するための方法が提供される。図6に関して、図5に示すように、PNICのDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質プロファイルを、PIICのプロファイルから差し引くことにより、癌またはその他の疾患を有する動物の血液サンプル(または、例えばその他の体液などの1つまたは複数のその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーを(例えば、1つまたは複数のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)同定し、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患の存在を示すための方法が提供される。貪食細胞のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミックプロファイルが非貪食細胞のプロファイルと比較される上述の方法とは異なり、本発明の解析的検出方法の大きな利点は、(i)この方法が、「疾患特異的」(例えば、PIICマクロファージ)シグネチャーおよび「正常な非特異的」(例えば、PNICマクロファージ)シグネチャーの供給源として、単一の貪食細胞サブ集団を用いること、すなわち、両者が同一のベースライン遺伝子型を共有すること、および(ii)シグネチャー獲得細胞(例えば、PIIC好中球)が、貪食を行わず死CTCおよび/またはその断片を獲得しなかった細胞(例えば、PNIC好中球)で希釈されないことである。
【0038】
本明細書に記載の方法により、(i)高い特異性、感度、および精度を有し、血液サンプル(または、例えば体液などのその他の生体サンプル)中に存在する腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーおよび正常な非特異的シグネチャーの検出が可能となり、(ii)内在的(例えば、年齢、性別、人種的背景、および健康状態など)および一時的な遺伝子発現の変動の結果として個人間で発生することが知られている「ベースラインの不等性」が排除される。したがって、ある態様では、本発明は、患者における原発性および転移性の不顕性腫瘍(および/または1つまたは複数のその他の疾患もしくは状態)の早期の検出、すなわち、該疾患が従来の画像技術(例えば、PET、MRI、およびCTなど)によって診断可能となる前の早期の検出のための非侵襲的アッセイが提供され、したがって、癌を有する個人の介入治療、予防、および治療のための必要性および方策に関連する意思決定を改善するための基礎が提供される。
【0039】
本明細書における用語「腫瘍特異的マーカー」は、これらに限定されないが、1つまたは複数のDNA配列、1つまたは複数のRNA配列、1つまたは複数のタンパク質、1つまたは複数のポリペプチド、および1つまたは複数の脂質など、1つまたは複数の細胞構成成分を含むことを意図するものである。ある態様では、腫瘍特異的マーカーは、例えば、好中球、マクロファージ、および/または樹状細胞などの1つまたは複数のWBC中に存在する。
【0040】
本明細書における用語「癌関連遺伝子」は、例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、および/または腫瘍抑制遺伝子などの、癌性細胞内(例えば、例えば、マクロファージ、好中球、またはT細胞などのWBC)にて発現が変化した(例えば、非癌性細胞と比較した場合に発現が増加または減少した)遺伝子を指す。当技術分野では多くの癌関連遺伝子が周知である。癌関連遺伝子としては、例えば、これらに限定されないが、ERBB2、JUN、RB1、SUPP1、MDM2、MAP2K1、MMP2、PDGFB、PLAUR、FGR、MYCL1、BLYM、NRAS1、PE1、SKI、TRK、ABL2、MYCN、RAB1、REL、RALB、LCO、ERBB4、RAF1、ECT2、KIT、FGF5、GRO1、GRO2、GRO3、FMS、PIM、KRAS1P、FYN、MYB、ROS1、MAS1、RALA、MYCLK1、GLI3、ARAF2、MET、BRAF、MOS、LYN、MYBL1、MYC、OVC、VAV2、BMI1、RET、HRAS、SPI1、RELA、SEA、EMS1、ETS1、KRAS2、ERBB3、GLI、FLT、BRCA2、RB1、FOS、AKT1、ELK2、FES、MAF、TP53、CRK、ERBA1、NF1、EVI2、ERBBB2、INT4、BRCA1、YES1、JUND、JUNB、MEL、LPSA、VAV1、AKT2、FOSB、RRAS、HKR1、HKR2、ERBAL2、SRC、MYBL2、ETS2、ERG、ARAF1、YUASA、HS2、INT3、SNO、RMYC、BMYC、HRASP、TC21、TIM、PTI−1、JAK、CEAファミリーの1つまたは複数のメンバー(例えば、Zhou et al. (2001) Gene 264:105を参照)、PSA、MUC−16などが挙げられる。
【0041】
本明細書における用語「癌」は、様々な種類の悪性新生物を指し、そのほとんどは、周囲組織に浸潤することができ、別の部位へ転移することがある(例えば、その全体が全ての目的において参照により本明細書に組み込まれる、PDR Medical Dictionary、1st edition (1995)を参照)。用語「新生物」および「腫瘍」は、細胞増殖によって正常よりも速く成長し、増殖を開始させた刺激が除去された後も成長を続ける異常組織を指す(同文献)。このような異常組織は、構造的な組織化および正常組織との機能的な協調が部分的にまたは完全に失われており、これは良性(すなわち、良性腫瘍)であっても、悪性(すなわち、悪性腫瘍)であってもよい。
【0042】
癌の一般的な分類の例には、これらに限定されないが、癌腫(すなわち、例えば、一般的な乳癌、前立腺癌、肺癌、および結腸癌など、上皮細胞由来の悪性腫瘍)、肉腫(すなわち、結合組織または間葉系細胞由来の悪性腫瘍)、リンパ腫(すなわち、造血細胞由来の悪性病変)、白血病(すなわち、造血細胞由来の悪性病変)、胚細胞性腫瘍(すなわち、全能性細胞由来の腫瘍。成人では、精巣または卵巣で最も多く見られ、胎児、乳児、および幼児では、身体正中で、特に尾骨の先端で最も多く見られる)、および芽細胞性腫瘍(すなわち、未熟組織または胚性組織に類似する通常は悪性である腫瘍)などが含まれる。
【0043】
本発明に包含されることが意図される新生物の種類の例には、これらに限定されないが、神経組織癌、造血性組織癌、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、肝臓癌、肺癌、脳癌、喉頭癌、胆のう癌、膵臓癌、直腸癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、副腎癌、免疫系の癌、頭頸部癌、結腸癌、胃癌、気管支癌、および/または腎臓癌と関連する新生物が含まれる。
【0044】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を適用して、胎児染色体異常の存在と関連する障害(例えば、ダウン症候群、自閉症および関連する自閉症スペクトラム障害(これらに限定されないが、特に断りのない限り、アスペルガー症候群および広汎性発達障害を含む)、鎌状赤血球貧血症、およびサラセミアなど)が、母体血液中に胎児細胞およびDNAが存在する結果として、検出、同定、および/または診断される。1つまたは複数のこれらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、母体血液中の貪食細胞内の1つまたは複数の染色体マーカー、例えば、DNAおよびRNAなどを検出することにより、実施することができる。
【0045】
ある例示的実施形態では、胎児幹細胞、有核赤血球、胎児リンパ球、および相当量の無細胞胎児核酸が母体血液中を循環していることが周知であることから、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を適用して、妊婦の血液内の胎児由来のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、および/またはゲノミックシグネチャーの存在を検出することにより、妊婦内の胎児の性別を検査することができる。本明細書に記載の方法によると、妊婦の血液からの貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、非貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。非貪食細胞からの細胞内容物および/または発現プロファイルを、貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、妊婦胎内の胎児の性別を表す細胞内容物および/または発現プロファイルが作り出される。
【0046】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、死につつある筋細胞/死んだ筋細胞および/またはその断片(例えば、DNAおよびタンパク質など)の存在を検出することにより、心疾患(例えば、心筋梗塞、慢性心不全、虚血性心疾患、および心血管死など)を有するかまたはそれを発症するリスクがある対象の血液内のプロテオミック筋細胞シグネチャーおよび/またはゲノミック筋細胞シグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、および/または診断することができる。1つまたは複数のこれらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNAおよびRNA、タンパク質などを検出することにより実施される。
【0047】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、冠動脈狭窄および腹部大動脈瘤などの結果としてアテローム性動脈硬化を有するかまたはそれを発症するリスクがある対象の血液内のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、および/またはゲノミックシグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、および/または診断することができる。これらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、実施することができる。
【0048】
同種移植片拒絶を診断する1つの方法である、拒絶の生検による確認は、侵襲的でありサンプリング誤差を生じやすい。したがって、移植臓器拒絶の診断および管理のための分子バイオマーカーを検出する非侵襲的アッセイの開発は、(a)拒絶により移植片の機能不全が引き起こされる前に治療的介入を可能とする拒絶前プロファイルを検出すること、(b)拒絶診断の感度および特異性を向上させること、(c)予後を改善させる新規な拒絶の分類システムを開発すること、および(d)薬物毒性を最小限に抑えながら拒絶を予防することができる個別化された免疫抑制療法を設計するための情報を提供することによって、移植レシピエントの管理に有用である。
【0049】
したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、臓器移植を受けた対象の血液内のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、およびゲノミックシグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、または診断することができる。
【0050】
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの障害に起因する。結果として、細胞の損傷およびさらには細胞死が起こる。ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、ならびに内分泌系および呼吸器系の細胞に最も大きな損傷を引き起こし、さらには糖尿病、呼吸器合併症、癲癇、アルツハイマー病、視覚/聴覚障害、乳酸アシドーシス、発育遅延、感染症感受性、および癌を引き起こすと考えられる。
【0051】
したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のミトコンドリア関連ゲノムDNAマーカーを検出することにより、ミトコンドリア病をスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0052】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、アルツハイマー病および/または認知症をスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0053】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、種々の臓器およびシステムに影響を与える複雑な自己免疫障害である。したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、脂質、タンパク質など検出することにより、SLEをスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0054】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質など検出することにより、治療用分子および/または画像化用分子の開発に有用であるゲノミックシグネチャーおよび/またはプロテオミックシグネチャーをスクリーニングおよび/または検出することができる。
【0055】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質など検出することにより、1つまたは複数の外部障害または内部傷害(例えば、汚染爆弾への曝露、放射線への曝露、化学物質への曝露、放射線治療、放射性医薬品の投与、治療用分子への曝露、ラドンへの曝露、アスベストへの曝露、汚染への曝露など)の結果としての疾患および病態の検出に有用である、ゲノミックシグネチャー、プロテオミックシグネチャー、および/またはリピドミックシグネチャーの変化を、スクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0056】
本明細書における用語「生物」は、これらに限定されないが、ヒト個人、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、スナネズミ、カエル、ヒキガエル、およびこれらのトランスジェニック種を含む。用語「生物」は、病原性生物をさらに含み、これらに限定されないが、寄生生物、酵母細胞、酵母四分子(yeast tetrad)、酵母コロニー、細菌、細菌コロニー、ビリオン、ビロソーム、ウイルス様粒子、および/またはこれらの任意の培養物などの病原体を含む。
【0057】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載のアッセイは、感染性因子の検出および/または感染性因子による細胞、組織、臓器などの感染に関連する障害の診断に用いることができる。ある態様では、感染性因子の検出および/または感染に関連する障害の診断は、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、1つまたは複数の感染性因子の1つまたは複数の感染性因子マーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質などを検出することにより実施される。
【0058】
本明細書における用語「感染性因子」は、これらに限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、感染性タンパク質などの病原性生物を含む。
【0059】
ウイルスとしては、これらに限定されないが、DNA動物ウイルスまたはRNA動物ウイルスが挙げられる。本明細書におけるRNAウイルスとしては、これらに限定されないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、トガウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、呼吸器多核体ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、およびレトロウイルス科(例えば、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))などのウイルスファミリーが挙げられる。本明細書におけるDNAウイルスとしては、これらに限定されないが、パポバウイルス科(例えば、パピローマウイルス)、アデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス)、およびポックスウイルス科(例えば、痘瘡ウイルス)などのウイルスファミリーが挙げられる。
【0060】
細菌としては、これらに限定されないが、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および抗酸菌などが挙げられる。
【0061】
本明細書におけるグラム陽性菌としては、これらに限定されないが、アクチノマジュラ、アクチノミセス・イスラエリー、バチルス・アントラシス、バチルス・セレウス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・テタニ、コリネバクテリウム、エンテロコッカス・フェカリス、リステリア・モノサイトゲネス、ノカルジア、プロピオニバクテリウム・アクネス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、ストレプトコッカス・ミュータンス、およびストレプトコッカス・ニューモニエなどが挙げられる。
【0062】
本明細書におけるグラム陰性菌としては、これらに限定されないが、アフピア・フェリス、バクテリオデス(Bacteriodes)、バルトネラ・バシリホルミス、ボルタデラ・パーツシス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・レカレンチス、ブルセラ、カリマトバクテリウム・グラヌロマティス、カンピロバクター、エシェリキア・コリ、フランシセラ・ツラレンシス、ガードネレラ・バギナリス、ヘモフィリウス・エジプチウス、ヘモフィリウス・デュクレイ、ヘモフィリウス・インフルエンザエ、ヘリオバクター・ピロリ、レジオネラ・ニューモフィラ、レプトスピラ・インターロガンス、ナイセリア・メニンギティディア、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プロビデンシア・スチュルティ(Providencia sturti)、シュードモナス・エルジノーサ、サルモネラ・エンテリディス(Salmonella enteridis)、サルモネラ・チフィ、セラチア・マルセセンス、シゲラ・ボイディ、ストレプトバチルス・モニリホルミス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、トレポネーマ・パリダム、ビブリオ・コレラエ、エルシニア・エンテロコリチカ、およびエルシニアペスチスなどが挙げられる。
【0063】
本明細書における抗酸菌としては、これらに限定されないが、マイオバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイオバクテリウム・レプレ(Myobacterium leprae)、およびマイオバクテリウム・ツベルクローシス(Myobacterium tuberculosis)などが挙げられる。
【0064】
本明細書における他の3つの分類に含まれないその他の細菌としては、これらに限定されないが、バルトネラ・ヘンセイ(Bartonella henseiae)、クラミジア・シタッシ、クラミジア・トラコマティス、コクシエラ・ブルネッティ、マイコプラズマ・ニューモニエ、リケッチア・アカリ、リケッチア・プロワツェキイ、リケッチア・リケッチイ、リケッチア・ツツガムシ、リケッチア・チフィ、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、ディプロコッカス・ニューモニエ、エーリキア・シャフェンシス、エンテロコッカス・フェシウム、および髄膜炎菌などが挙げられる。
【0065】
本明細書における真菌としては、これらに限定されないが、コウジカビ、カンジダエ(Candidae)、カンジダ・アルビカンス、コクシジオイデス・イミチス、クリプトコッカス、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
本明細書における寄生微生物としては、これらに限定されないが、バランチジウム・コリ、クリプトスポリジウム・パルバム、シクロスポラ・カイアタネンシス(Cyclospora cayatanensis)、エンセファリトゾア(encephalitozoa)、エントアメーバ・ヒストリチカ、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ、ジアルジア・ランブリア、リーシュマニ、プラスモディ(Plasmodii)、トキソプラズマ・ゴンディ、トリパノソーマ、および台形状アメーバなどが挙げられる。
【0067】
本明細書における寄生生物としては、虫類(例えば、蠕虫類)、特に、線形動物(回虫、例えば、鞭虫類、鉤虫類、蟯虫類、回虫類、およびフィラリア類など)、条虫(例えば、サナダムシ類)などの寄生性虫類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書における感染性タンパク質としては、プリオンが挙げられる。プリオンによって引き起こされる障害としては、これらに限定されないが、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)(例えば、医原性クロイツフェルト−ヤコブ病(iCJD)、異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、家族性クロイツフェルト−ヤコブ病(fCJD)、および孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD)を含む)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(fFI)、孤発性致死性不眠症(sFI)、およびクールー病などのヒトの障害、ならびにスクレイピー(ヒツジおよびヤギ)、ウシ海綿状脳症(BSE)(ウシ)、伝染性ミンク脳症(TME)(ミンク)、慢性消耗病(CWD)(ヘラジカ、ミュールジカ)、ネコ海綿状脳症(ネコ)、外来性有蹄類脳症(EUE)(ニアラ、オリックス、グレーター・クーズー)、およびダチョウ海綿状脳症などの動物の障害が挙げられる。
【0069】
ある例示的実施形態では、生体サンプルにおける、核酸配列(例えば、DNAおよびRNAなど)、タンパク質、ポリペプチド、脂質、および多糖などのマーカーを検出する方法が提供される。本明細書における用語「核酸」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチド類似体を用いて作成されたDNAまたはRNAの類似体を含むことを意図している。核酸分子は、一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。
【0070】
本明細書における用語「アミノ酸」には、塩基性アミノ基と酸性カルボキシル基の両方を含む有機化合物が含まれる。この用語の範囲には、天然のアミノ酸(例えば、L−アミノ酸)、修飾アミノ酸および異常アミノ酸(例えば、D−アミノ酸およびβ−アミノ酸)、ならびに遊離した形態または結合した形態で生物学的に存在することが知られているが通常はタンパク質内に存在しないアミノ酸が含まれる。天然のタンパク質に存在するアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、およびバリンが挙げられる。天然の非タンパク質アミノ酸としては、アルギノコハク酸、シトルリン、システインスルフィン酸、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン、3−モノヨードチロシン、3,5−ジヨードチロシン、3,5,5,−トリヨードサイロニン、および3,3’,5,5’−テトラヨードサイロニンが挙げられる。修飾アミノ酸または異常アミノ酸としては、D−アミノ酸、ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、N−Cbz保護アミノ酸、2,4−ジアミノ酪酸、ホモアルギニン、ノルロイシン、N−メチルアミノ酪酸、ナフチルアラニン、フェニルグリシン、アルファ−フェニルプロリン、tert−ロイシン、4−アミノシクロヘキシルアラニン、N−メチル−ノルロイシン、3,4−デヒドロプロリン、N,N−ジメチルアミノグリシン、N−メチルアミノグリシン、4−アミノピペリジン−4−カルボン酸、6−アミノカプロン酸、トランス−4−(アミノメチル)−シクロヘキサンカルボン酸、2−、3−、および4−(アミノメチル)−安息香酸、1−アミノシクロペンタンカルボン酸、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、ならびに2−ベンジル−5−アミノペンタン酸が挙げられる。
【0071】
本明細書における用語「ペプチド」には、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸からなる化合物が含まれる。ペプチドの分子量は、10,000ダルトン未満、5,000ダルトン未満、または2,500ダルトン未満であってよい。用語「ペプチド」は、ペプチド成分と、偽ペプチドまたはペプチド模倣残基またはその他の非アミノ酸成分などの非ペプチド成分との両方を有する化合物も含む。ペプチド成分と非ペプチド成分との両方を含むこのような化合物は、「ペプチド類似体」と称される場合もある。
【0072】
本明細書における用語「タンパク質」には、直鎖状に配置され、隣接するアミノ酸残基のカルボキシルとアミノ基との間がペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸からなる化合物が含まれる。
【0073】
本明細書における用語「脂質」には、通常、両親媒性で生体適合性である、合成または天然の化合物が含まれる。脂質には、通常は、親水性成分および疎水性成分が含まれる。例示的な脂質としては、これらに限定されないが、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、および糖脂質などが挙げられる。本明細書における用語「脂質組成物」は、通常は水性媒体中に、脂質化合物を含む組成物を指す。例示的な脂質組成物としては、これらに限定されないが、懸濁液組成物、エマルジョン組成物、および小胞組成物などが挙げられる。
【0074】
生体サンプルにおいて本発明のマーカーに対応するポリペプチドもしくは核酸の有無を検出するための例示的な方法としては、生体サンプル(例えば、体液サンプル(例えば、血液)および/または腫瘍サンプル)を試験対象から得ること、および該生体サンプルを1つまたは複数のマーカー(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、または脂質など)を検出することができる化合物または薬剤と接触させること、が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の検出方法を用いて、生体サンプル中の1つまたは複数のマーカー(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、または脂質など)を、インビトロおよびインビボで検出することができる。例えば、mRNA検出のためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが挙げられる。本発明のマーカーに対応するポリペプチド検出のためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、および免疫蛍光法が挙げられる。ゲノムDNA検出のためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチド検出のためのインビボ技術としては、該ポリペプチドに対する標識抗体を対象に導入することが挙げられる。例えば、前記抗体は、標準的なイメージング技術によって対象内での存在および位置を検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0076】
生体サンプル中の脂質含有量を分析するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Kang et al. (1992) Biochim. Biophys. Acta. 1128:267、Weylandt et al. (1996) Lipids 31:977、J. Schiller et al. (1999) Anal. Biochem. 267:46、Kang et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:4050、Schiller et al. (2004) Prog. Lipid Res. 43:499を参照)。脂質分析の例示的な方法としては、(例えば、0.005%ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、酸化防止剤として)を含有するクロロホルム:メタノール(2:1、体積:体積)を用いて)生体サンプルから脂質を抽出し、脂肪酸メチルエステルを調製し(例えば、14%BF3−メタノール試薬)、(例えば、HPLC、TLCにより、市販のガスクロマトグラフ、質量分析器、および/またはガスクロマトグラフ/質量分析器の組み合わせを用いたガスクロマトグラフ−質量分析により)該脂肪酸メチルエステルの定量化を行うことが挙げられる。脂肪酸質量は、種々の分析された脂肪酸の領域を内標準の確定された濃度のそれと比較することによって測定される。
【0077】
診断アッセイおよび予後アッセイの一般的な原理としては、マーカー(例えば、1つまたは複数のDNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、および脂質など)およびプローブを含有していてもよいサンプルまたは反応混合物を、適切な条件下にて、該マーカーおよびプローブが相互作用して結合するのに十分な時間で調製して、該反応混合物中に取り出しおよび/または検出が可能である複合体を形成することが挙げられる。このようなアッセイは、様々な方法で実施することができる。
【0078】
例えば、このようなアッセイを実施する1つの方法としては、マーカーまたはプローブを、基材とも呼ばれる固相支持体上に固定し、反応後に該固相上に固定された標的マーカー/プローブ複合体を検出することが挙げられる。このような方法のある実施形態では、マーカーの存在および/または濃度についてのアッセイが行われる対象からのサンプルを、担体または固相支持体上に固定してもよい。別の実施形態では、逆の状況が可能であり、プローブを固相へ固定し、対象からのサンプルをこのアッセイの未固定成分として反応させてもよい。
【0079】
アッセイ成分を固相へ固定するための多くの方法が確立されている。これらには、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合によって固定化されるマーカーまたはプローブ分子が含まれるが、これらに限定されない。このようなビオチン化アッセイ成分は、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から当技術分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、ロックフォード、イリノイ州)を用いて調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化することができる。ある実施形態では、固定化アッセイ成分を有する表面は、予め作製し、保存しておくことができる。
【0080】
このようなアッセイに適切なその他のキャリアまたは固相支持体としては、マーカーまたはプローブが属する種類の分子と結合することができる任意の物質が挙げられる。周知の支持体または担体としては、これらに限定されないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびにマグネタイトが挙げられる。
【0081】
上述の手法を用いたアッセイを実施するために、非固定化成分が、第二の成分が固定された固相へ添加される。反応完了後、形成された複合体がいずれも固相上に固定化されたままとなる条件下で、未複合体化成分を(例えば、洗浄により)除去してよい。該固相に固定されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概説する数多くの方法で行うことができる。
【0082】
ある例示的実施形態では、未固定アッセイ成分である場合、プローブは該アッセイの検出および読み取りの目的で、本明細書で検討され当業者に周知である検出可能な標識により、直接的または間接的に標識することができる。
【0083】
任意の成分(マーカーまたはプローブ)をさらに処置または標識することなく、例えば、蛍光エネルギー移動の技術(例えば、米国特許第5,631,169号および同第4,868,103号を参照)を用いることにより、マーカー/プローブ複合体形成を直接的に検出することも可能である。第一の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光で励起された場合に、放出された蛍光エネルギーが第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識によって吸収され、吸収されたエネルギーの結果、該分子が次に蛍光を発することができるように選択される。もしくは、「ドナー」タンパク質分子が、単にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用してもよい。標識は、「アクセプター」分子標識を「ドナー」の標識と区別することができるように、異なる波長の光を放出するものが選択される。標識間のエネルギー移動の効率が分子を隔てる距離と関連していることから、分子間の空間的な関係を評価することができる。分子間で結合が起こる状況では、このアッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光発光は最大となるはずである。FET結合事象(FET binding event)は、当技術分野で周知の標準的な蛍光検出手段によって(例えば、蛍光光度計を用いて)、簡便に測定することができる。
【0084】
別の実施形態では、プローブがマーカーを認識する能力の測定は、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)の標識も行わず、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)などの技術を用いることによって行うことができる(例えば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63:2338 2345、およびSzabo et al., 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699 705を参照)。本明細書で用いる「BIA」または「表面プラズモン共鳴」とは、相互作用物のいずれも標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用の研究を行うための技術である(例えば、BIAcore)。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)によって表面付近での光の屈折率が変化し(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、生体分子間のリアルタイム反応を示すものとして用いることができる検出可能なシグナルが生じる。
【0085】
あるいは、別の実施形態では、類似の診断アッセイおよび予後アッセイを、液相中の溶質としてのマーカーおよびプローブを用いて実施することができる。このようなアッセイでは、数多くの標準的な技術のうちの任意の技術によって、複合体化したマーカーおよびプローブが複合体化していない成分から分離される。前記技術としては、これらに限定されないが、分画遠心、クロマトグラフィ、電気泳動、および免疫沈降が挙げられる。分画遠心では、マーカー/プローブ複合体を、サイズおよび密度の違いに基づいた複合体の沈澱平衡の相違により、一連の遠心工程を通して未複合体化アッセイ成分から分離することができる(例えば、Rivas and Minton (1993) Trends Biochem. Sci. 18:284を参照)。標準的なクロマトグラフィ技術も、複合体化していない分子から複合体化分子を分離するのに用いることができる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィは、サイズに基づいて分子を分離するものであり、適切なゲルろ過樹脂をカラムの形態で用いることにより、例えば、相対的に大きな複合体を相対的に小さな複合体化を形成していない成分から分離してもよい。同様に、複合体化していない成分と比較したマーカー/プローブ複合体の帯電特性の相対的に差異を利用して、例えばイオン交換クロマトグラフィ樹脂を用いて、未複合体化していない成分から複合体を区別することができる。このような樹脂およびクロマトグラフィ技術は当業者に周知である(例えば、Heegaard (1998) J. Mol. Recognit. 11:141、Hage and Tweed (1997) J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. Appl. 12:499を参照)。ゲル電気泳動も、未結合成分からの複合体化アッセイ成分の分離に利用することができる(例えば、Ausubel et al編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987 1999を参照)。この技術では、タンパク質または核酸複合体が、例えば、サイズまたは帯電に基づいて分離される。電気泳動プロセスの間、結合相互作用を維持するために、非変性ゲルマトリックス物質、および還元剤が存在しない条件が通常は好ましい。特定のアッセイに対する適切な条件およびその成分は、当業者に周知である。
【0086】
ある例示的実施形態では、マーカーに対応するmRNAのレベルを、当技術分野で周知の方法を用いて、生体サンプル中でin situおよび/またはインビトロのフォーマットのいずれかで測定することができる。発現検出法の多くが単離されたRNAを用いる。インビトロの方法については、mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術を、血液細胞からのRNAの精製に用いることができる(例えば、Ausubel et al編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987 1999を参照)。さらに、大量の細胞および/またはサンプルを、例えば、Chomczynskiの単一段階RNA単離プロセス(1989、米国特許第4,843,155号)など、当業者に周知の技術を用いて容易に処理することができる。
【0087】
単離されたmRNAは、これらに限定されないが、サザン解析またはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイに用いることができる。ある例示的実施形態では、mRNAレベル検出のための診断法としては、単離したmRNAを、検出すべき遺伝子によってコードされたmRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることが挙げられる。前記核酸プローブは、例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250、もしくは500ヌクレオチドの長さであり、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAとストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分であるオリゴヌクレオチドなどの、完全長cDNAまたはその一部分であってもよい。本発明の診断アッセイに用いるためのその他の適切なプローブについては、本明細書に記載する。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは、対象とするマーカーが発現されていることを示すものである。
【0088】
あるフォーマットでは、例えば単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、ゲルから該mRNAをニトロセルロースなどの膜へ転写することにより、mRNAを固体表面に固定化してプローブと接触させる。別のフォーマットでは、例えば遺伝子チップアレイにおいて、プローブを固体表面に固定化して、mRNAを該プローブと接触させる。当業者であれば、周知のmRNA検出法を容易に適合させて、本発明のマーカーによってコードされるmRNAのレベルの検出に使用することができる。
【0089】
サンプル中の本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを測定するための別の方法としては、例えば、rtPCR(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号に記載の実験の実施形態)、COLD−PCR(Li et al. (2008) Nat. Med. 14:579)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、転写増幅システム(transcriptional amplification system)(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardiet al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(米国特許第5,854,033号)による核酸増幅のプロセス、またはその他の任意の核酸増幅法が挙げられ、続いて、当業者に周知の技術を用いて増幅分子が検出される。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、このような分子の存在数が非常に少ない場合に特に有用である。本明細書で用いる増幅プライマーは、遺伝子の5’領域または3’領域(それぞれ、プラス鎖およびマイナス鎖、または逆も同様)にアニールすることができ、中間に短い領域を含む一対の核酸分子と定義される。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いて、このようなプライマーにより、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子が増幅される。
【0090】
in situ法では、検出の前にmRNAをサンプル(例えば、体液(例えば、血液細胞))から単離する必要がない。このような方法では、細胞または組織サンプルは、周知の組織学的方法を用いて調製/処理される。次に、このサンプルを、通常はスライドグラスである支持体上に固定化し、続いてマーカーをコードするmRNAとハイブリダイズすることができるプローブと接触させる。
【0091】
マーカーの絶対発現レベルに基づいて決定する代替法として、標準化されたマーカー発現レベルに基づいて決定してもよい。発現レベルの標準化は、マーカーの発現を、例えば、恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子など、マーカーではない遺伝子の発現と比較することにより、マーカーの絶対発現レベルを補正することによって行われる。標準化に適する遺伝子としては、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子、または上皮細胞特異的遺伝子が挙げられる。この標準化により、ある供給源からの患者サンプル中の発現レベルを別の供給源からの患者サンプルと比較することが可能となり、例えば、個人からの貪食血液細胞を該個人からの非貪食血液細胞と比較することができる。
【0092】
別の例示的な実施形態では、マーカーに対応するタンパク質またはポリペプチドが検出される。ある例示的実施形態では、本発明のポリペプチドを検出するための薬剤は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドと結合することができる抗体であり、例えば、検出可能な標識を有する抗体などである。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルであってもよい。インタクトな抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体へカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブまたは抗体の直接の標識化、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を包含することを意図している。間接的な標識化の例には、蛍光標識された二次抗体を用いて一次抗体を検出すること、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるよう、ビオチンによりDNAプローブを末端標識化することが含まれる。
【0093】
種々のフォーマットを用いて、サンプルが所与の抗体と結合するタンパク質を含有するかどうかを判定することができる。そのようなフォーマットの例には、これらに限定されないが、酵素免疫測定(EIA)、放射免疫測定(RIA)、ウェスタンブロット解析、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などが含まれる。当業者であれば、細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)が本発明のマーカーを発現するかどうかの判定に、周知のタンパク質/抗体検出法を容易に適合させて用いることができる。
【0094】
あるフォーマットでは、抗体または抗体断片をウェスタンブロット法または免疫蛍光法などの方法に用いて、発現タンパク質を検出することができる。このような使用では、抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定化することが一般に好ましい。適切な固相支持体または担体としては、抗原または抗体を結合することができる任意の支持体が挙げられる。周知の支持体またはキャリアとしては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびにマグネタイトなどが挙げられる。
【0095】
当業者であれば、抗体または抗原を結合させるためのその他の多くの適切な担体を理解しており、そのような支持体を本発明での使用に適合させることができるであろう。例えば、細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ニトロセルロースなどの固相支持体上へ固定化することができる。次にこの支持体を適切なバッファーで洗浄し、続いて検出可能に標識された抗体で処理することができる。次に、この固相支持体をバッファーで再度洗浄し、未結合の抗体を除去することができる。次に、固体支持体上に結合した標識の量を従来の手段で検出することができる。
【0096】
ある例示的実施形態では、診断アッセイが提供される。生体サンプル中での、身体状態、癌に関連する疾患および/または障害、感染性因子、および/または別の疾患の有無を検出するための例示的な方法としては、生体サンプルを試験対象から得ること、および該生体サンプルを、癌に関連する疾患および/または障害、感染性因子、および/または別の疾患もしくは状態の1つまたは複数のマーカー、例えば、マーカー核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)、該マーカー核酸でコードされたマーカーペプチド(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)またはマーカー脂質を検出することができる化合物または薬剤と接触させてマーカー核酸または該核酸でコードされたマーカーペプチドの存在を生体サンプル中で検出することが挙げられる。ある実施形態では、マーカーmRNAまたはゲノムDNAを検出するための薬剤は、マーカーmRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイズすることができる標識核酸プローブである。該核酸プローブは、例えば、完全長マーカー核酸、またはその一部分であってもよい。本発明の診断アッセイに用いられるその他の適切なプローブは、本明細書に記載する。
【0097】
マーカーペプチドを検出するための薬剤は、検出可能な標識を有する抗体など、マーカーペプチドと結合することができる抗体であってもよい。抗体は、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。インタクトな抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体へカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブまたは抗体の直接の標識化、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を包含することを意図している。間接的な標識化の例としては、蛍光標識された二次抗体を用いて一次抗体を検出すること、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるよう、ビオチンによりDNAプローブを末端標識化することが含まれる。
【0098】
本明細書における用語「生体サンプル」は、対象から単離された組織、細胞(例えば、貪食細胞、非貪食細胞、2n細胞、および>2n細胞など)、および生体体液(例えば、全血およびWBCなど)、ならびに対象内に存在する組織、細胞(例えば、貪食細胞、非貪食細胞、2n細胞、および>2n細胞など)、および体液(例えば、尿、全血、およびWBCなど)を含むことを意図している。すなわち、本発明の検出方法を用いて、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを、インビトロおよびインビボにて検出することができる。ある実施形態では、生体サンプルは、試験対象からのタンパク質、ポリペプチド、脂質、および/またはオリゴ糖を含む。あるいは、生体サンプルは、試験対象からのmRNA分子、および/または試験対象からのゲノムDNA分子を含んでいてよい。ある実施形態では、生体サンプルは、従来の手段によって対象から単離された血清サンプル、唾液サンプル、または生検サンプルである。
【0099】
別の実施形態では、この方法には、コントロール対象からコントロール生体サンプル(例えば、非貪食細胞または2n細胞)を得ること、該コントロールサンプル(例えば、非貪食細胞または2n細胞)を、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを検出することができる化合物または薬剤と接触させること、ならびにコントロールサンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在を試験サンプル(例えば、貪食細胞または>2n細胞)中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在と比較することがさらに含まれる。あるいは、試験サンプル(例えば、貪食細胞または>2n細胞)中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在を、データーベースまたはチャートの情報と比較して、検出または診断を行うこともできる。
【0100】
本発明は、生体サンプル中の癌および/または感染性因子と関連する1つまたは複数のマーカーの存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを検出することができる標識された化合物または薬剤、サンプル中のマーカーの量を測定する手段、およびサンプル中のマーカーの量を標準(例えば、非貪食細胞または2n細胞)と比較する手段を含んでいてもよい。化合物または薬剤は、適切な容器内に収容されていてもよい。キットは、該キットを用いてマーカーペプチドまたは核酸を検出するための説明書をさらに含んでいてもよい。
【0101】
ある例示的実施形態では、予後アッセイが提供される。本明細書に記載の診断方法をさらに用いて、本明細書に記載の1つまたは複数のマーカーの上方制御(または下方制御)された発現と関連する、状態、または癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害を発症するリスク、または本明細書に記載の別の障害を有する対象を同定することができる。例えば、上述の診断アッセイまたは後述のアッセイなど、本明細書に記載のアッセイを用いて、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、または本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を有するか、または発症するリスクを有する対象を同定することができる。
【0102】
本明細書に記載の予後アッセイを用いることにより、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、またはその他の薬物候補)を対象に投与して、本明細書に記載の1つまたは複数のマーカーと関連する、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または、本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を治療することができるかどうかを判定することができる。例えば、そのような方法を用いて、癌と関連する1つまたは複数の症状を治療、寛解、または低減するための薬剤で対象を効果的に治療することができるかどうかを判定することができる。したがって、本発明は、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害の薬剤で対象を効果的に治療することができるどうかを判定するための方法を提供する。
【0103】
さらに、本発明の方法を用いて、マーカー遺伝子中の遺伝子変異を検出し、それによって変異遺伝子を有する対象が、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または癌などのマーカータンパク質活性または核酸発現の誤制御を特徴とする本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を発症するリスクを有するかどうかを判定することもできる。ある実施形態では、前記方法には、対象からの細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)のサンプルにおいて、マーカーペプチドをコードする遺伝子および/またはマーカー遺伝子の完全性に影響を与える変異を特徴とする遺伝子変異の有無を検出することが含まれる。例えば、そのような遺伝子変異は、1)1つまたは複数のマーカー遺伝子からの1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、2)1つまたは複数のマーカー遺伝子への1つまたは複数のヌクレオチドの付加、3)1つまたは複数のマーカー遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの置換、4)1つまたは複数のマーカー遺伝子の染色体再構築、5)1つまたは複数のマーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写のレベルの変異、6)ゲノムDNAのメチル化パターンの異常修飾など、1つまたは複数のマーカー遺伝子の異常修飾、7)1つまたは複数のマーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在、8)非野生型レベルの1つまたは複数のマーカータンパク質、9)1つまたは複数のマーカー遺伝子の対立遺伝子欠失、および10)1つまたは複数のマーカータンパク質の不適切な翻訳後修飾の少なくとも1つの存在を確認することによって検出することができる。本明細書に記載のように、1つまたは複数のマーカー遺伝子の変異の検出に用いることができる当技術分野で周知のアッセイが数多く存在する。
【0104】
ある実施形態では、変異の検出としては、リアルタイムPCR、COLD−PCR、アンカーPCR、反復PCR(recursive PCR)、もしくはRACE PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第5,854,033号を参照)において、あるいは、連結連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al. (1988) Science 241 :1077、Prodromou and Pearl (1992) Protein Eng. 5:827、およびNakazawa et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:360を参照)において、プローブ/プライマーを使用することが挙げられる。後者は、マーカー遺伝子における点変異の検出に特に有用である場合がある(Abravaya et al. (1995) Nucleic Acids Res. 23:675を参照)。この方法は、対象から細胞のサンプルを採取する工程と、該サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNA、またはその両方)を単離する工程と、該核酸サンプルをハイブリダイゼーションおよび(存在する場合)マーカー遺伝子の増幅が起こる条件下にてマーカー遺伝子と特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマーと接触させる工程と、増幅産物の有無を検出する工程または該増幅産物のサイズを検出してその長さをコントロールサンプルと比較する工程とを含んでいてもよい。PCRおよび/またはLCRは、本明細書に記載の変異を検出するために用いられる任意の技術と組み合わせて、予備増幅工程として用いることが望ましい場合があることが予想される。
【0105】
別の増幅法としては、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、転写増幅システム(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、またはその他の任意の核酸増幅法が挙げられ、続いて、当業者に周知の技術を用いて増幅分子が検出される。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、このような分子の存在数が非常に少ない場合に特に有用である。
【0106】
別の実施形態では、サンプル細胞からの1つまたは複数のマーカー遺伝子における変異を、制限酵素切断パターンの変化によって同定することができる。例えば、サンプルDNAおよびコントロールDNAを単離し、任意に増幅し、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼで消化し、断片長さのサイズをゲル電気泳動で測定して比較する。サンプルDNAおよびコントロールDNAの断片長さのサイズの違いが、サンプルDNAにおける変異を示す。さらに、配列特異的リボザイムを使用することで(例えば、米国特許第5,498,531号)、リボザイム切断部位の発生または喪失によって特定の変異の存在をスコア化することができる。
【0107】
他の実施形態では、本明細書に記載のマーカーの1つまたは複数における遺伝子変異は、DNAまたはRNAなどのサンプル核酸およびコントロール核酸を、何百または何千というオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイとハイブリダイズすることによって同定することができる(Cronin et al. (1996) Human Mutation 7: 244、Kozalet al. (1996) Nature Medicine 2:753)。例えば、マーカー核酸における遺伝子変異は、Cronin, M.T. et al.の上記文献に記載のように、光形成されたDNAプローブ(light−generated DNA probes)を含む二次元アレイで同定することができる。簡潔に述べると、プローブの第一のハイブリダイゼーションアレイを用いて、サンプルおよびコントロール中のDNAの長い範囲をスキャンし、一連のオーバーラッププローブの直線アレイを作製することによって配列間の塩基の変化を同定する。この工程により、点変異の同定が可能となる。第二のハイブリダイゼーションアレイがこの工程に続き、これにより、検出されたすべての変種または変異に相補的な低分子の特異的プローブアレイを用いて特定の変異の特性決定が可能となる。各々の変異アレイは平行プローブセットから成り、一方は野生型遺伝子に相補的であり、他方は突然変異遺伝子に相補的である。
【0108】
さらに別の実施形態では、当技術分野で周知の種々の配列決定反応の任意の方法を用いて、マーカー遺伝子の配列決定を直接行い、サンプルマーカー遺伝子の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することにより変異を検出することができる。配列決定反応の例には、Maxam and Gilbert((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560)、またはSanger((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463)によって開発された技術に基づく反応が含まれる。また、診断アッセイを実施する際に、質量分析による配列決定(例えば、PCT国際公開公報WO94/16101、Cohen et al. (1996) Adv. Chromatogr. 36:127-162、およびGriffin et al. (1993) Appl. Biochem. Biotechnol. 38:147を参照)など、種々の自動配列決定手順のいずれをも用いることができることも意図される((1995) Biotechniques 19:448)。
【0109】
マーカー遺伝子の変異を検出するためのその他の方法としては、切断剤からの保護を用いてRNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖のミスマッチ塩基を検出する方法が挙げられる(Myers et al. (1985) Science 230:1242)。一般的に、当技術分野の「ミスマッチ切断」技術は、まず、野生型マーカー配列を含む(標識された)RNAまたはDNAを、組織サンプルから得た変異の可能性のあるRNAまたはDNAとハイブリダイズさせることによって形成されたヘテロ二重鎖を準備する。この二本鎖二重鎖を、例えば、コントロール鎖とサンプル鎖の間の塩基対ミスマッチのために存在することになる、二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二重鎖をRNaseで処理し、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理することにより、ミスマッチ領域を酵素消化することができる。他の実施形態では、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNA二重鎖のいずれかをヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムで、およびピペリジンで処理することができる。ミスマッチ領域の消化後、次に、得られた物質を変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分離し、変異部位を確定する。例えば、Cotton et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397、Saleeba et al. (1992) Methods Enzymol. 217:286を参照のこと。ある実施形態では、コントロールDNAまたはRNAを検出のために標識してよい。
【0110】
さらに別の実施形態では、ミスマッチ切断反応は、細胞のサンプルから得られたマーカーcDNAの点変異の検出およびマッピングを行うための限定された系において、二本鎖DNAのミスマッチ塩基対を認識する1つまたは複数のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を利用する。例えば、大腸菌のmutY酵素は、G/AミスマッチにおいてAを切断し、HeLa細胞からのチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチにおいてTを切断する(Hsu et al. (1994) Carcinogenesis 15:1657)。例示的な実施形態では、例えば、野生型マーカー配列などのマーカー配列に基づくプローブを、試験細胞からのcDNAまたはその他のDNA産物とハイブリダイズさせる。該二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、切断産物が存在する場合は、これを電気泳動プロトコルなどで検出することができる。例えば、米国特許第5,459,039号を参照のこと。
【0111】
他の実施形態では、電気泳動移動度の変化を用いて、マーカー遺伝子の変異が同定される。例えば、一本鎖高次構造多型分析法(SSCP)を用いて、変異型核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度の違いを検出することができる(Orita et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766。さらに、Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125、およびHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73も参照のこと)。サンプル核酸およびコントロールマーカー核酸の一本鎖DNA断片を変性し、復元させる。一本鎖核酸の二次構造は配列に応じて異なり、得られた電気泳動移動度の変化により、単一塩基の変化でさえ検出することができる。このDNA断片は標識してもよく、標識したプローブで検出してもよい。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化に対してより高感度である(DNAよりも)RNAを用いることで向上させることができる。ある実施形態では、本方法は、ヘテロ二重鎖解析を利用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖へテロ二重鎖分子を分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet. 7:5)。
【0112】
さらに別の実施形態では、変性剤の濃度勾配を含むポリアクリルアミドゲル中での変異型断片または野生型断片の移動を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)(Myers et al. (1985) Nature 313:495)を用いて解析する。解析法としてDGGEを用いる場合、例えば、およそ40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプをPCRによって付加することにより、完全に変性されないことを確実にするためにDNAが修飾される。さらなる実施形態では、変性剤濃度勾配の代わりに温度勾配を用いて、コントロールDNAおよびサンプルDNAの移動度の違いが同定される(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265:12753)。
【0113】
点変異を検出するためのその他の技術の例には、これらに限定されないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が含まれる。例えば、既知の変異を中央に配置したオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、次に、完全にマッチする場合にのみハイブリダイゼーションが可能である条件下にて標的DNAとハイブリダイズしてもよい(Saiki et al. (1986) Nature 324:163、Saiki et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。このようなアレル特異的オリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズメンブランと結合して標識した標的DNAとハイブリダイズする場合に、PCRで増幅した標的DNAまたは多数の異なった変異とハイブリダイズする。
【0114】
あるいは、選択的PCR増幅に依存したアレル特異的増幅技術を、本発明と組み合わせて用いてもよい。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中央部(それによって増幅が差次的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbs et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:2437)、または、適切な条件下にてミスマッチがポリメラーゼ伸長を阻止または低減することができる、一方のプライマーの3’最末端に(Prossner (1993) Tibtech 11 :238)、対象となる変異を有していてもよい。さらに、変異領域中に新規な制限部位を導入して切断に基づく検出を行うことが望ましい場合もある(Gasparini et al. (1992) Mol. Cell Probes 6:1)。ある実施形態では、増幅用Taqリガーゼを用いて増幅を実施することができることも想定される(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189)。そのような場合、5’配列の3’末端にて完全一致する場合にのみライゲーションが起こり、それにより、増幅の有無を調べることで特定部位における既知の変異の存在を検出することが可能となる。
【0115】
記載される本発明の実施形態は、単に本発明の原理のいくつかの応用を説明する例にすぎないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの変更を行うことが可能である。本出願全体にわたって引用されたすべての参考文献、特許、および特許出願公開の内容は、その全体が全ての目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
以下の実施例は、本発明を代表するものとして示すものである。これらの実施形態およびその他の対応する実施形態が、本発明の開示、図面、および添付の請求項に照らして明らかであることから、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0117】
実施例1
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法I
1.図2および図3を参照して、プレートをアビジンでコーティングする。
2.非貪食血液細胞(例えば、T細胞)に対するビオチン化抗体をウェルに添加し、室温で30分間インキュベートし、ウェルを洗浄する。
3.磁気ビーズを添加する。
4.WBC血液サンプルを添加する。
5.37℃でインキュベートする(30分〜1時間)
6.貪食細胞によるビーズの貪食、およびアビジン−ビオチン抗体の非貪食細胞への結合の後、プレートを磁石上に置き、洗浄する(磁気ビーズを内部へ取り込んだ貪食細胞および抗体と結合した非貪食細胞が残留し、その他すべての細胞は洗い流される)。
7.磁石を取り除き、貪食細胞を回収する。
8.貪食細胞(例えば、磁気ビーズと結合した細胞)および非貪食細胞(例えば、抗非貪食細胞ビオチン化抗体−アビジン結合を介してウェルの底部に結合した細胞)からRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、全遺伝子アレイおよび/または癌遺伝子アレイ)を区別する。
9.各細胞サンプルからDNAを単離し、貪食細胞に選択的に存在する(すなわち、非貪食細胞には存在しない)腫瘍DNAシグネチャーを同定し、プロファイル(例えば、貪食細胞および非貪食細胞で得られた、全遺伝子アレイ、DNA変異、および/またはSNP)を比較する。
10.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
11.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0118】
実施例2
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法II
1.図2および図3を参照して、血液サンプル中のRBCを溶解する。
2.スライドグラス上でWBCをサイトスピンにかける。
3.アセトン/メタノール中で細胞を固定する(−20℃、5分間)。
4.ヘマトキシリン・エオシン染料、および抗T細胞抗体で染色する。
5.レーザーキャプチャー顕微鏡(LCM)を用いて、T細胞(非貪食性)およびマクロファージ(貪食性)を単離する。
6.貪食細胞および非貪食細胞からRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、全遺伝子アレイおよび/または癌遺伝子アレイ)を区別する。
7.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイル(例えば、全遺伝子アレイ、DNA変異、および/またはSNP)を比較する。
8.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
9.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0119】
実施例3
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法III
1.図2および図3を参照して、血液サンプル中のRBCを溶解する。
2.磁気抗体結合ビーズを用いて、全血から非貪食細胞(例えば、T細胞)および貪食細胞(例えば、好中球および/またはマクロファージおよび/または単球)を単離する。
3.各細胞サンプルからRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0120】
実施例4
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法IV
1.図2および図3を参照して、特定の細胞サブ集団(例えば、好中球、マクロファージ、単球、およびT細胞など)に対して特異的な蛍光抗体でWBCを染色する。
2.(例えば、FACSにより)細胞を選別する。
3.各細胞サンプルからRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0121】
実施例5
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法V
1.図5および図6を参照して、WBCを各細胞サブ集団(例えば、好中球、マクロファージ、単球、およびT細胞)に対する蛍光抗体で染色し、次にDNA染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)で染色する。
2.細胞を、T細胞、好中球(2n)、好中球(>2n)、マクロファージ(2n)、マクロファージ(>2n)、単球(2n)、および単球(>2n)へと選別する(FACS)。
3.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からRNAを単離する。次に、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からDNAを単離する。DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からタンパク質を単離する。ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)から脂質を単離する。例えばHPLCを用いて、脂質の量および質を比較する。
【0122】
実施例6
貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法VI
1.図5および図6を参照して、WBCを1つまたは複数の貪食細胞(例えば、好中球、マクロファージ、または単球)に対して特異的である蛍光抗体で染色し、次にDNA結合染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)で染色する。
2.細胞を、2n貪食細胞と>2n貪食細胞に選別する(FACS)。
3.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からRNAを単離する。cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からDNAを単離する。DNAアレイ解析を行い、2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞から得られたプロファイルを比較する。
5.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からタンパク質を単離する。ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞から得られたプロファイルを比較する。
6.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々から脂質を単離する。例えばHPLCを用いて、脂質の量および質を比較する。
【0123】
実施例7
腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞における腫瘍特異的遺伝子シグネチャーの検出
本発明の実施形態によると、血液またはその他の体液中の「正常な非特異的ノイズ」シグネチャーと「腫瘍特異的」シグネチャーおよび/または「疾患特異的」シグネチャーとを区別する方法が提供される。腫瘍を有するマウスの血中単球/マクロファージおよび好中球の遺伝子発現プロファイルを、同じドナーマウスの非貪食T細胞の遺伝子発現プロファイルと比較し、同様の腫瘍を有するマウスおよび腫瘍を有しない動物の非貪食細胞中では発現されなかったか、または著しく異なって発現した、該貪食細胞内の腫瘍特異的シグネチャーを同定した。
【0124】
ヒト前立腺LNCaP癌細胞
胸腺欠損ヌードマウス(n=5)に、ヒト前立腺LNCaP癌細胞を皮下(s.c.)注射した。27日後(腫瘍サイズ=約0.4cm)、このマウスから心臓穿刺によりEDTA含有チューブへ採血(約1mL/マウス)を行った後、これを遠心分離した。バフィーコートを単離して洗浄し、好中球、マクロファージ、およびT細胞を、それぞれ、抗マウス好中球−免疫磁気ダイナビーズ(DynaBeads)、抗マウスマクロファージ−免疫磁気ダイナビーズ、および抗マウスT細胞−免疫磁気ダイナビーズを用いて分離した。各細胞サンプルからRNAを単離した(Triazol(登録商標))。RNAの品質は図3に示すようにして測定した。RNAの収量を図20に示す。cDNAおよびビオチン化cRNA(cRNA−B)を調製した。最後に、cRNA−Bサンプルを、癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、SuperArray Bioscience)とインキュベートした。ハイブリダイゼーションの後、膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0125】
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍、LLC1癌細胞、B16F10マウスメラノーマ細胞
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍を皮下注射した胸腺欠損ヌードマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.3cm)、マウス・ルイス肺癌腫細胞LLC1を皮下注射したC57Blマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.6cm)、および106個のB16F10マウスメラノーマ細胞を22日前に静脈内注射したC57Blマウス(n=5)から単離された細胞を用いて同様の実験を行った(腫瘍細胞がマウス由来の場合、cRNA−Bサンプルは、Oligo GEArray(登録商標)Mouse Cancer PathwayFinder Microarray、OMM−033、SuperArray Bioscienceとハイブリダイズした)。RNAは、指数関数的に成長するLS174T、LLC1、B16F10、およびLNCaP培養細胞から、ならびに腫瘍を有しないC57Blおよびヌードマウスから単離した好中球、マクロファージ、およびT細胞から単離し、これらの癌関連遺伝子プロファイルを決定した。
【0126】
これらの実験から得られたデータおよび図9〜17に示すデータによると、ヒト前立腺腫瘍細胞または結腸腫瘍細胞を注射したマウスから得られた好中球およびマクロファージ、およびマウス肺癌またはメラノーマを有するマウスから得られた好中球およびマクロファージは、種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有しており、該シグネチャーは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られる。これらの癌関連遺伝子は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた貪食好中球およびマクロファージによって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0127】
例えば、LNCaPヒト前立腺癌細胞を有するヌードマウスの血液から単離された好中球は、LNCaP細胞でも発現される、いくつかのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図9Aおよび図9Bのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図9Cおよび図9Dのプロファイルを参照)。同様に、LLC1マウス肺癌細胞を有するマウスの血液から単離された好中球は、LLC1細胞で発現される、いくつかのマウス腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Mouse Cancer PathwayFinder Microarray)(図13Aおよび図13Bのアレイのプロファイルを比較)。
【0128】
これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図13Cおよび図13Dに示すプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、図19および図20に示すように、貪食細胞により選択的に過剰発現された遺伝子を同定した。図21および図22に、腫瘍を有するマウスの貪食性WBCによって獲得され、特異的に提示される遺伝子シグネチャーを列挙する。図21に示すように、多くの発癌遺伝子(赤色で示した遺伝子、例えばERBB2およびJun)が検出され、多くの場合、マクロファージと好中球で同時に発現された。
【0129】
C57BIマウス(n=5)に、1E6マウス・ルイス肺癌細胞(LLCI)を皮下注射した。20日後、マウスに麻酔を施し、心臓穿刺によりEDTA含有チューブへ採血を行った(約1mL/マウス)。室温、2000rpmにて5分間の遠心分離を行った後、バフィーコートをチューブへ移し、PBSで洗浄した。
【0130】
抗マウスマクロファージ/単球ラットIgG抗体(単球/マクロファージマーカー F4/80−IgG2b、AbD Serotec、ローリー、ノースカロライナ州)を、抗ラットIgG抗体磁気ビーズ(DYNABEAD(登録商標)ヒツジ抗ラットIgG、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州)と共にインキュベートした(室温にて30分間)。次に、抗マクロファージ/単球ビーズをPBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0131】
抗マウス好中球ラットIgG(好中球マーカー NIMP−R14−IgG2a、Santa Cruz Biotechnology、サンタクルーズ、カリフォルニア州)を、抗ラットIgG抗体磁気ビーズ(DYNABEAD(登録商標)ヒツジ抗ラットIgG、INVITROGEN(商標))と共にインキュベートし(室温にて30分間)、PBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0132】
DYNABEAD(登録商標)マウスPan T(Thy1.2)ビーズ(INVITROGEN(商標))もPBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0133】
マウス血中マクロファージおよび単球を、上記で調製したWBC懸濁液から、抗マクロファージ/単球ビーズを用いて単離した。基本的には、ビーズをWBCサンプルへ添加し、これをインキュベート(4℃、30分間)した後、磁石を用いてマクロファージ結合ビーズを単離し、PBSで3回洗浄し、氷上で保存した。
【0134】
次に、マウスT細胞を残ったWBCから単離した。簡潔に述べると、抗マウスT細胞ビーズをWBC懸濁液に添加し、このサンプルをインキュベートし(4℃、30分間)、磁石を用いてT細胞結合ビーズを単離し、PBSで洗浄して氷上で保存した。
【0135】
最後に、マウス好中球を残ったWBCサンプルから単離した。抗マウス好中球磁気ビーズを細胞に添加し、このサンプルをインキュベートした(4℃、30分間)。磁石を用いて好中球結合ビーズを単離し、PBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0136】
次に、(TRIZOL(登録商標)、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州、を用いて)各サンプルからRNAを単離した。図7に示すように、RNAの品質を測定した。RNAの収量を図8に示す。次に、(ビオチン化)cDNAを調製し、癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(OLIGO GEARRAY(登録商標)、Human Cancer PathwayFinder Microarray OMM−033、SuperArray Bioscience、フレデリック、メリーランド州)とインキュベートした(60℃、一晩)。ハイブリダイゼーションの後、この膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0137】
ヒトLS175T結腸腺癌腫瘍、LLC1癌腫、およびB16F10マウスメラノーマ細胞
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍を皮下注射した胸腺欠損ヌードマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.3cm)、マウス・ルイス肺癌細胞LLC1を皮下注射したC57/Blマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.6cm)、および106個のB16F10マウスメラノーマ細胞を22日前に静脈内注射したC57Blマウス(n=5)から単離された細胞を用いて同様の実験を行った(腫瘍細胞がマウス由来の場合、cRNA−Bサンプルを、Oligo GEARRAY(登録商標)Mouse Cancer PathwayFinder Microarray、OMM−033、SuperArray Bioscience、とハイブリダイズした(腫瘍がヒト由来の場合、Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、を用いた)。RNAは、指数関数的に成長するLS174T、LLC1、B16F10、およびLNCaP培養細胞から、ならびに腫瘍を有しないC57Blおよびヌードマウスから単離した好中球、マクロファージ、およびT細胞からも単離し、これらの癌関連遺伝子プロファイルを決定した。
【0138】
これらの実験から得られ、図9A〜9D、図10A〜10D、図11A〜11D、図12A〜12D、図13A〜13D、図14A〜14D、図15A〜15D、図16A〜16Dに示すデータによると、(ヒト前立腺腫瘍細胞または結腸腫瘍細胞を注射したマウスから、およびマウス肺癌またはメラノーマを有するマウスから得られた)好中球およびマクロファージは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られた種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有していた(図21)。これらの癌関連遺伝子は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた貪食好中球およびマクロファージによって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0139】
例えば、LNCaPヒト前立腺癌細胞を有するヌードマウスの血液から単離された好中球は、LNCaP細胞でも発現された7つのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図9Aおよび図9Bのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図9Cおよび図9Dのプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、図19および図20に示すように、貪食細胞によって選択的に過剰発現された遺伝子を同定した。図21および図22に、腫瘍を有するマウスの貪食性WBCによって獲得され、特異的に提示された遺伝子シグネチャーを列挙する。図21に示すように、多くの発癌遺伝子(例えば、ERBB2およびJun)が検出され、多くの場合、マクロファージおよび好中球にて同時に発現された(緑色で協調した遺伝子で示す)。
【0140】
実施例8
癌患者から得られた貪食細胞における腫瘍特異的遺伝子シグネチャーの検出
本発明のある実施形態によると、癌患者からの血中単球/マクロファージおよび好中球の遺伝子発現プロファイルを、同じドナー個人からの非貪食T細胞の遺伝子発現プロファイルと比較し、非貪食細胞中では発現されなかったか、または著しく異なって発現した、該貪食細胞内の腫瘍特異的シグネチャーを同定した。
【0141】
頭頸部腫瘍を有する患者
頸部扁平上皮癌を有することが分かっており、手術を受ける予定である患者から、静脈血10ミリリットルを(EDTA含有チューブへ)採取した。室温、2000rpmにて5分間の遠心分離を行った後、バフィーコートをチューブへ移し、PBSで洗浄した。
【0142】
この細胞を、T細胞−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ(登録商標)、好中球−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ、およびマクロファージ/単球−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ(INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いて分離した。基本的には、ビーズをWBCサンプルへ連続して添加し、個別に4℃にて30分間インキュベートした後、磁石を用いてT細胞−結合ビーズ、好中球−結合ビーズ、およびマクロファージ/単球−結合ビーズを単離し、PBSで3回洗浄した。
【0143】
次に、(TRIZOL(登録商標)、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州、を用いて)各サンプルからRNAを単離した。RNAの量および品質を測定し、cDNAおよびビオチン化cRNA(cRNA−B)を調製した。最後に、cRNA−Bサンプルを癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、SuperArray Bioscience、フレデリック、メリーランド州)とインキュベートした。ハイブリダイゼーションの後、膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0144】
これらの実験から得られたデータによると、(頭頸部癌患者から得られた)好中球およびマクロファージは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られた種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有していた。これらの癌関連遺伝子は、非貪食T細胞によって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0145】
例えば、このような患者の1人の血液から単離された好中球は、同じ患者から得られた腫瘍生検でも発現された4つのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図17Bおよび図17Cのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、正常皮膚生検および同じ血液サンプルから単離されたT細胞中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(それぞれ、図17Aおよび図17Dのプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、貪食細胞によって選択的に(>2倍)過剰発現された以下の遺伝子、E26ウイルス癌遺伝子相同体(ETS2)、HIV−1 Tat相互作用タンパク質(HTAT1P2)、IL8(好中球活性化および走化性)、Jun発癌遺伝子(JUN)、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)を同定した。
【0146】
卵巣癌患者
卵巣癌を有する患者から単離された細胞を用いて同様の実験を行った。これらの実験から得られたデータによると、(罹患女性から得られた)好中球およびマクロファージは、非貪食T細胞によっては発現されなかったか、またはその発現が最小限であった、多くの癌関連遺伝子を発現した。
【0147】
例えば、卵巣癌患者の血液から単離されたマクロファージは、同じ血液サンプルから単離されたT細胞中では発現されなかったか、またはその発現が最小限であった、23個のヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図18Aおよび図18Bのプロファイルを比較)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、各細胞型の各癌関連遺伝子の強度を測定した。マクロファージ内で特異的に上方制御/過剰発現された23個の癌関連遺伝子のリスト、およびマクロファージのT細胞に対する強度比を図22に示す。合計で5つの発癌遺伝子が検出されたことに留意されたい(図21にて赤色で示す)。
【0148】
実施例9
ヒト前立腺LNCaP腫瘍およびヒト結腸LS174T腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞における腫瘍特異的タンパク質シグネチャーの検出
タンパク質精製キット(Norgen,Incorporated、製品番号23500)を用いて、マウスWBC、T細胞、およびマクロファージからタンパク質を単離し、精製した。このアッセイは非常に簡便で所要時間が短く(およそ30分間)、単離されたタンパク質は、高品質で優れた収率であり(血液4mLあたり117.6±10.60μg、n=5)、図23に示すSDS−PAGE解析およびウェスタンブロットなど多くの下流用途に用いることができた。
【0149】
タンパク質サンプルは、これらの研究のために選択されたLNCaP腫瘍およびLS174T腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞(単球/マクロファージ)および非貪食細胞(T−リンパ球)より単離した。前者の細胞株はPSAを発現し(Denmeade et al. (2001) Prostate 48:1、Lin et al. (2001) J. Urol. 166:1943)、後者は高分子量ムチンである腫瘍特異的糖タンパク質(TAG−72)を提示する(Colcheret al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:3199、Colcher et al. (1984) Cancer Res. 44:5744、Kassis et al. (1996) J. Nucl. Med. 37:343)からである。精製したタンパク質サンプル16μgを用いてウェスタンブロット解析を行った。基本的には、各サンプルを2容量分のSDSローディングバッファーと混合し、トリス−グリシン−SDSバッファー(pH8.4)中の未染色のプレシジョンplusプロテインスタンダード(precision plus protein standards)(Biorad)と共に、200ボルトにて10%SDS−PAGEで泳動した。ミニトランスブロット(Mini Trans−Blot)(Biorad)装置、ならびに25mMトリス、pH8.4、192mMグリシン、および20%メタノールを含有する転写バッファーを用いて、タンパク質をニトロセルロース膜へ転写した(4℃にて一晩)。膜を5%脱脂粉乳でブロッキングし(室温(RT)にて60分間)、B72.3、ヒトTAG−72に対するマウスモノクローナル抗体、またはヒトPSAに対するマウスモノクローナル抗体ER−PR8のいずれかとインキュベートした(RTにて1時間)。ブロットを洗浄し、次に、マウスIgGに特異的な二次抗体であるImmun−Starヤギ抗マウス−HRPコンジュゲート(Biorad)とインキュベートし、ルミノール溶液と過酸化物バッファー(Biorad)との1:1混合物でインキュベートして(RTにて5分間)発色させ、続いてオートラジオグラフィーを行った。
【0150】
図24に示すように、このデータより、LNCaP腫瘍を有するマウスからの貪食細胞がPSAに対して陽性であったが、一方、このタンパク質は、同じ動物からの非貪食T細胞において検出することができなかったことが明らかである。同様に、TAG−72は、LS174T腫瘍を有するマウスから得られた単球/マクロファージによって発現され、同じ動物からのT細胞にはまったく存在しなかった。これらの知見から、貪食細胞による腫瘍特異的タンパク質シグネチャーの「獲得」および発現が実証される。
【0151】
これらのデータは、癌を有する動物、ならびにマウスの血液から得られた貪食細胞および非貪食細胞に特異的なものであるが、記載した方法は、ヒト、ならびに1つまたは複数のその他の障害および/または疾患の診断および/または検出にも有用であり、その他の体液から得られた貪食細胞および非貪食細胞でも有用である。
【0152】
実施例10
プロファイリング実験
血中貪食細胞の単離
患者から血液のサンプルを採取する。血液(約5mL)を、50μLの0.5M EDTAを含有する50mLチューブへ移す(最終EDTA濃度=約4.8mM)。チューブを緩やかにボルテックス攪拌し、25mLのRBC溶解バッファー(Norgen,Incorporated)を添加する。チューブを再度緩やかにボルテックス攪拌し、溶液の色が明赤色に変わるまで室温にてインキュベートし(3〜5分間)、2,000rpmにて3分間遠心分離する。上清を注意深く吸引した後、WBCを40mLのCa/Mgフリー0.1M PBS(2% FBS、2mM EDTA、および20mM グルコース含有)で洗浄し、次に、細胞(106/mL)を、(i)DNA、生存細胞透過性染料ヘキスト33342(4μg/mL、Em=483nm)、(ii)循環単球/マクロファージによって発現されるヒトF4/80抗原を認識する抗ヒト単球/マクロファージモノクローナル抗体(Alexa Fluor(登録商標)647−コンジュゲート、Em=668nm)、および(iii)ヒト循環好中球を認識する抗ヒト好中球モノクローナル抗体(RPE−コンジュゲート、Em=578nm)、を含む細胞染色溶液とインキュベートする(30分間、4℃、暗所)。次に、細胞を洗浄し、好中球(Nn=2)、好中球(Nn>2)、単球/マクロファージ(M/Mn=2)、および単球/マクロファージ(M/Mn>2)に選別する(BD FACSAria)。
【0153】
遺伝子プロファイリング
ヒト全ゲノム遺伝子プロファイリングを実施する。ヒト腫瘍細胞、または好中球(Nn=2、Nn>2)および単球/マクロファージ(M/Mn=2、M/Mn>2)から得られたRNAサンプルに対して、GeneChip(登録商標)ヒトゲノムU133プラス2.0アレイ(Affymetrix,Incorporated)を用いる。このアレイでは、38,500の十分に特徴付けられたヒト遺伝子を含む、47,000を超す転写物およびバリアントの発現レベルが分析される。一般的には、抽出されたRNAを用い、上述のアレイを用いてヒト遺伝子の発現プロファイルを決定する。アレイの再現性を確実にするために、各サンプルを3個の反復サンプルでプロファイル化し、繰り返し実験を1回行う。マイクロアレイデータは、以下で記載するように癌誘発関連遺伝子についてフィルタリングし、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて確認する。
【0154】
癌誘発関連遺伝子の上方制御/下方制御
Triazol(Invitrogen,Incorporated)を用いてRNAを単離し、このキットに付属のカートリッジを用いて精製する。RNAの品質および量は、Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies,Incorporated、パロアルト、カリフォルニア州)およびDegradometerソフトウェアバージョン1.41(ワールドワイドウェブ:dnaarrays.org)を用いて評価する。これらの実験結果は、腫瘍の存在により乱された分子経路を見分ける際の手助けとなる。
【0155】
マイクロアレイ実験の解析
得られた大規模/ハイスループットの分子発現データの解析は、(i)DNA含有量が2超である貪食細胞において特異的に発現された遺伝子を同定する能力、(ii)同定された遺伝子をアノテートする能力、および(iii)アノテートされた遺伝子を特定の腫瘍によって特異的に発現される遺伝子へ割り当てる能力に大きく依存する。マイクロアレイデータの統計解析は、例えば、「サンプル解析/比較」メニュー中のこの種の遺伝子リスト構築に容易に対応するdChipパッケージを用いて行うことができる。Affymetrix GeneChipsを用いる場合、1つまたは複数のGeneChipsおよび関連する方法を適用して、マイクロアレイ生データの質を確認する(Gautier et al. (2004) Bioinformatics 20:307)。さらに、種々のバックグラウンド補正および標準化の手順を利用して、(発現値を得るための)プローブセットの標準化および集計のための最適なプロトコルを得る(Huber et al. (2002) Bioinformatics 18 (Suppl. 1):S96、Wu et al. (2004) Journal of the American Statistical Association 99:909、Seo and Hoffman (2006) BioMedCentral Bioinformatics 7:395)。2段階フィルトレーション(two−step filtration)アプローチにおいて、発明者らは、Pn=2の遺伝子プロファイルをPn>2の遺伝子プロファイルと比較して、発現された遺伝子のリストを構築し、次にこれらの遺伝子と各腫瘍細胞株に対して同定された腫瘍特異的遺伝子とを比較する、すなわち図5に示すPn=2遺伝子プロファイルのポストフィルトレーションである。例えば、(i)乳癌患者から血液を採取し、(ii)好中球(n>2およびn=2)を単離して、その遺伝子プロファイルを3つの反復サンプルで測定し、(iii)各同定された遺伝子の(3つのサンプルの)平均およびその対応する標準誤差(SE)を各グループ(Nn>2およびNn=2)に対して算出し、(iv)次に、この2つのグループの遺伝子発現プロファイルを比較し、ウェルチの改良2標本t検定に準じて、2倍以上の対数の絶対変化(absolute ≧2−fold log change)(Nn>2/Nn=2)に基づいて発現遺伝子のリスト(L−1)を同定し、(v)Nn=2の遺伝子発現プロファイルおよび(腫瘍および正常乳房組織生検から得られる)乳癌の遺伝子発現プロファイルを比較し、発現遺伝子のリスト(L−2)を同定し、(vi)L−1およびL−2の遺伝子を比較し(「サンプル解析/比較/比較の統合」、dChip)、共通の遺伝子をフィルタリングすることにより、Nn>2によって獲得/発現された乳癌特異的遺伝子シグネチャーを同定する。
【0156】
タンパク質プロファイリング
各細胞型からの総タンパク質50〜100マイクログラムを変性し、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフィントリプシン(1mM)および0.02%ドデシル硫酸ナトリウムにより、60℃にて1時間還元する。続いてシステインをブロックし、総タンパク質をトリプシンにより、37℃にて12〜16時間消化する。得られたペプチドを、1時間、(113〜119および121にタグを有する)iTRAQで標識する(比較すべき細胞型の数に応じて、4種類または8種類)。標識後、別々にタグ付けされたサンプルを1つにまとめ、強カチオン交換カラム(Applied Biosystems 4.6×100 多孔性)を備えたAgilent 1200シリーズHPLCシステムへ注入する。次に、96個の回収した画分を14個の画分へプールし、各画分を、逆相条件下(LC Packings 15cm×75μm 分析用カラム)にてLC Packings Ultimate HPLCシステムへ注入し、2回目の分画を行う。逆相画分を、LC Packings Probotを用いて標的プレート上に直接スポットし、質量分析(Applied Biosystems 4800 Plus Proteomics Analyzer)によって分析する。データの取得後、ProteinPilotソフトウェアパッケージ(Applied Biosystems MDS Sciex)を用いてスペクトルを処理し、ProteinPilot(商標)ソフトウェアを用いて各細胞型における個々のタンパク質をその相対的発現レベルと共に同定する(癌関連プロテオミックシグネチャーの解析および同定は、図5に概略を示したゲノミックシグネチャーに対するものと同様である)。
【技術分野】
【0001】
関連する米国特許出願
本願は、2008年6月18日出願の米国特許仮出願第61/073,434号、および2008年1月18日出願の米国特許仮出願第61/022,033号の出願日の利益を主張するものであり、各々の出願は、その全体が全ての目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、胎児の性別などの状態、または患者の体液から得られた細胞中の腫瘍のゲノミック(genomic)シグネチャー、プロテオミック(proteomic)シグネチャー、メタボロミック(metabolomic)シグネチャー、グライコミック(glycomic)シグネチャー、グライコプロテオミック(glycoproteomic)シグネチャー、リピドミック(lipidomic)シグネチャー、および/またはリポプロテオミック(lipoproteomic)シグネチャーなどの疾患の状態のマーカーを同定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍は、遺伝的変化およびエピジェネティックな変化の蓄積によって正常細胞から発生する。この多段階プロセスには、正常細胞の悪性表現型への進行性の形質転換をもたらす複数の遺伝子的変化が関与している。このような変化は、DNA配列の不可逆的な変化(例えば、変異、欠失、転座)から成り、発癌遺伝子の活性化、腫瘍抑制遺伝子の不活性化、および遺伝子の融合をもたらす。このような現象の確率的な性質によって遺伝学的不均一性がもたらされ、特有の表現型を与える癌の指標である分子フィンガープリント(molecular fingerprints)(例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質、および炭水化物などの1つまたは複数の細胞成分)が形質転換細胞に付与される。その結果、特有の遺伝子セットのホールマーク(hallmarks)/シグネチャー(signatures)が種々の腫瘍によって発現されることが知られている(Perou et al. (2000) Nature 406:747、Lobenhofer et al. (2001) Health Perspect. 109:881、van't Veer et al. (2002) Nature 415:530 (2002)、Liotta and Kohn (2003) Nat. Genet. 33:10、Ginos et al. (2004) Cancer Res. 64:55、Liu (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:3531、Grigoriadis et al. (2006) Breast Cancer Research 8:R56)。
【0004】
原発性腫瘍および転移性腫瘍はいずれも、何年間にもわたって無症状で未検出の状態であり得る。しかし、このような休止状態で潜在性の腫瘍、および過去に診断された原発性固形腫瘍および転移性は、腫瘍1グラムあたり、1日におよそ100万から600万個の細胞を循環中に流入させている。CTCとして知られるこのような循環性腫瘍細胞の大部分はアポトーシスを起こして死滅するが、異なった細胞集団が転移性疾患に発展する可能性がある。腫瘍細胞のアポトーシス小体、DNA、ヌクレオソーム、RNA、およびタンパク質も、癌患者の血液中に見出される(Holmgren et al., Blood 93, 3956 (1999))。腫瘍のシグネチャーを同定することができるかどうか、およびこれらを用いて癌の検出またはモニタリングができるかどうかを研究する努力が行われてきた。Ransohoff, Nature Reviews Cancer 5, 142 (2005)、およびMcLerran et al., Clin. Chem. 54, 44 (2008)を参照のこと。
【0005】
DNAは、種々の真核細胞へ容易にトランスフェクトすることができる。すなわち、DNAは、細胞の細胞質内部に取り込まれると、その遺伝子を宿主細胞のゲノムへ組み込むことができる。例えば、好中球およびマクロファージは、素早くそして非常に効率的に(50%〜90%)トランスフェクトすることができる。原核細胞から真核細胞へのDNAの通過も実証されており、真核細胞間でも起こると考えられている。腫瘍細胞から放出されたDNAは、高い形質転換活性を有している。培養した腫瘍細胞の培地上清を正常細胞に添加すると、カルシウム沈澱として投与されたクローン化ras遺伝子でトランスフェクションした後に発生する病巣と同じ位の量の形質転換した病巣が発生する。さらに、健康なラットに腫瘍を有するラットの血漿(したがって、腫瘍DNAを含む)を注射すると、健康なラットの肺細胞のDNAに腫瘍マーカー遺伝子が見られた。すなわち、腫瘍遺伝子が肺細胞中で転写された。
【0006】
白血球は、骨髄中の多能性造血幹細胞として始まり、骨髄系(単球、マクロファージ、好中球、好酸球、および好塩基球)、またはリンパ系(Tリンパ球およびBリンパ球ならびにナチュラルキラー細胞)のいずれかに発生する。骨髄系細胞(例えば、好中球およびマクロファージ)の主な機能は、感染性生物、不要な損傷した生存細胞、老化細胞および死細胞(アポトーシスおよびネクローシス)の貪食、ならびに細胞片の除去である。健康な動物の貪食細胞は複製せず、二倍体、すなわち、DNA指数(DNA index)が1である。平均して、各細胞は<10ngのDNA、<20ngのRNA、および<300ngのタンパク質を含有する。
【0007】
細胞型、性別、年齢、および個体差などに関連するものなど、異なった遺伝子発現パターンの変動が健康なドナーのWBCで認識されている。例えば、「リンパ球関連」クラスターは、55個の特有の遺伝子を有する。好中球では、52個の特有の遺伝子クラスターの発現の著しい変動性も報告されている。このクラスター内の遺伝子は、特異性が増す順に、(i)多くの種類の循環免疫細胞で偏在的に発現される遺伝子、(ii)骨髄系の細胞によって発現される遺伝子、および(iii)顆粒球に特異的である遺伝子の3つのファミリーに分類することができる。
【0008】
種々のWBCサブ集団の寿命は、数日(例えば、好中球)から数ヶ月(例えば、マクロファージ)まで様々である。他の細胞型と同様に、白血球は老化し、最後には死に至る。白血球の老化プロセスの間、ヒトの血液由来の貪食細胞および組織由来の貪食細胞(例えば、好中球)は、カスパーゼの活性化、核濃縮、およびクロマチンの断片化を含む、プログラム細胞死(すなわち、アポトーシス)の典型的なマーカーすべてを提示する。これらの細胞は、細胞膜の細胞外表面上に、多数の「イートミー(eat−me)」フラッグ(例えば、ホスファチジルセリン、糖)も提示している。その結果、死につつある細胞および死細胞、ならびにその細胞内断片が、他の貪食細胞によって組織および血液から除去される。
【0009】
貪食細胞のアポトーシスは、その活性化後に促進される。例えば、好中球による黄色ブドウ球菌の貪食の後、ホスファチジルセリンが細胞膜上に外面化され、それによってマクロファージによる迅速な貪食作用が引き起こされる。活性化された単球も、高いホスファチジルセリンレベルを有する種々の腫瘍細胞株と結合することが示されている。
【0010】
循環貪食細胞は、生存CTCおよび死CTC、ならびにその断片を貪食することが知られており、これは、貪食を行う細胞のDNA(およびその他の細胞構成物質)含有量の増加を引き起こすプロセスである。例えば、アポトーシス腫瘍細胞は、マクロファージおよび樹状細胞によって貪食されることが示されている。そのような貪食作用の結果、前立腺癌患者から得られた血中マクロファージは、良性の前立腺状態を有する患者から得られたマクロファージと比べて、非常に高いレベルの前立腺特異的抗原(PSA)を細胞内に含有することが示されている。Herwig et al., Clinical Prostate Cancer 3, 184 (2004)、およびHerwig et al., Prostate 62 290 (2005)を参照のこと。これは、腫瘍細胞を貪食する結果であると考えられる。胎児幹細胞、有核赤血球、胎児リンパ球、および相当量の無細胞胎児核酸が、母体血液中を循環していることが知られている。Cheung et al., Nat. Genet. 14, 264 (1996)を参照のこと。
【0011】
ヒトのバーキットリンパ腫細胞由来のアポトーシス小体(膜でカプセル化された細胞断片)をヒト単球(貪食性)または血管平滑筋細胞(非貪食性)と共に培養すると、単球は、高い割合でエプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的な腫瘍遺伝子陽性細胞を示すが、平滑筋細胞は、およそ0.01%の取り込みおよび発現の頻度を示すことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば疾患を有していることが分かっていない個人または再発性の疾患を有する個人において、疾患(例えば、腫瘍)の存在を早期に診断することを可能とする方法が求められている。本発明の1つの目的は、ヒトを含む動物の白血球細胞(WBC)のサブ集団内で、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、および/または脂質などの疾患特異的(例えば、腫瘍特異的)マーカーの検出を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態は、特定の疾患もしくは状態に関連するマーカーの有無を判定するための貪食細胞の使用に基づいている。本発明のある実施形態によれば、貪食細胞は、血液中を循環し、特定の疾患または状態に特徴的な細胞、および/またはその断片、および/またはその成分を取り込む。貪食細胞の含有物は、例えば、細胞中のDNAおよび/またはタンパク質含有量によって、または細胞によるDNAもしくはタンパク質の発現によって、疾患または状態に対するマーカープロファイルを提供する。貪食性WBCおよび非貪食性WBCのDNA発現プロファイルを比較することにより、非貪食細胞中では発現されなかったかまたは低発現された腫瘍特異的、疾患特異的、または状態特異的なDNAシグネチャーが貪食細胞内で検出される。同様に、貪食性WBCおよび非貪食性WBCのタンパク質発現プロファイルにより、非貪食細胞中では発現されなかったかまたは低発現された腫瘍特異的、疾患特異的、または状態特異的なタンパク質シグネチャーが貪食細胞内で検出される。したがって、ある実施形態によれば、本発明の方法により、癌を有することが疑われる個人における固形腫瘍(例えば、原発性病変および転移性病変)の存在が同定され、および/または病理的徴候および症状の出現の前に癌の存在が同定され、疾患の再発が検出される。他の実施形態によれば、本発明の方法により、血液またはその他の体液の特定のシグネチャーを同定することによって、特定の疾患またはその他の状態が診断される。
【0014】
本発明は、貪食細胞および非貪食細胞などの個人の血液細胞成分が、腫瘍特異的シグネチャーおよび正常な非特異的シグネチャーの容易な同定および区別に理想的に適しており、したがって、内在的な個体差(例えば、年齢、性別、人種的背景、健康状態)および遺伝子発現の一時的な変動の結果生じるベースラインの不等性の排除に理想的に適しているという発見に部分的に基づいている。
【0015】
ある例示的実施形態では、癌、および/または1つまたは複数のその他の疾患もしくは障害もしくは状態を有することが疑われる個人のWBC内(血液、または尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液などのその他の体液から得られる)で、腫瘍および/またはその他の疾患に特異的なシグネチャーを同定する方法が提供される。本発明の実施形態は、患者に特異的な結果を提供し、集団由来の平均的シグネチャープロファイルおよび「健康な」コントロールから得られた数値に依存しない。すなわち、1つまたは複数のベースラインシグネチャー/バックグラウンドシグネチャーは、診断を受けた個人の1つまたは複数のゲノミックプロファイル、プロテオミックプロファイル、メタボロミックプロファイル、グライコミックプロファイル、グライコプロテオミックプロファイル、リピドミックプロファイル、および/またはリポプロテオミックプロファイルに特異的である。本発明の実施形態は、個別化された疾患素因、疾患のスクリーニング、診断、およびモニタリングを提供する。
【0016】
図1に関して、ある実施形態においては、本発明は、生存細胞、死につつある細胞、および死細胞(例えば、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞)、微生物(例えば、細菌(例えば、リケッチア))、ウイルス、真菌、酵母、および原虫など)、細胞内粒子および/またはその断片(カハール体、細胞膜、中心小体、中心体、ジェム(gems)、ゴルジ体、リソソーム、ミトコンドリア、核膜、核、核小体、パラスペックル(paraspeckles)、前骨髄球性白血病体(PML体)、リボソーム、粗面小胞体、滑面小胞体、空胞、小胞、および微小胞など)、および、例えば、染色体、DNA(核内DNAおよびミトコンドリアDNA)、エクソン、遺伝子、イントロン、タンパク質、プリオン、炭水化物結合タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、RNA、マイクロRNA、脂質、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソーム、ヌクレオソーム、多形間期カリオソーム会合(polymorphic interphase karyosomal associations)(PIKA)、およびスプライシングスペックルなど)などの細胞片を貪食し、摂取する貪食細胞の能力、ならびに、非貪食細胞においてこれらの特徴が存在しないことに基づいている。したがって、DNA(核内DNA、ミトコンドリアDNA)、RNA、マイクロRNA、タンパク質、プリオン、炭水化物結合タンパク質、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソームおよび/またはヌクレオソーム、および/または貪食性WBCの発現プロファイルの解析、ならびに、同一のドナーの血液またはその他の体液から得られた非貪食細胞からのこれらとの比較により、非貪食細胞(患者特異的ノイズ)では発現されないかもしくは有意に差異的に発現される、貪食細胞(患者特異的シグナル)内の腫瘍および/または疾患特異的シグネチャーが同定される。貪食細胞および非貪食細胞はいずれも骨髄内の同一の多能性幹細胞から発生するため、(非貪食細胞内で同定される)非腫瘍関連/誘発シグネチャープロファイルを貪食細胞で見られるプロファイルから差し引くことにより、図2に示すように、特定の患者のサンプルにおける腫瘍および/または疾患特異的シグネチャーの同定が可能となる。他のある実施形態によると、体液中の細胞片は、エントーシス(細胞吸収)、エンドサイトーシス、およびピノサイトーシスによって内部に取り入れられる。
【0017】
図3に関して、本発明のある実施形態によると、個人から血液サンプルが採取され、該血液サンプルは貪食細胞および非貪食細胞の両方を含む(例えば、WBC)。次に、当業者に周知の種々の方法によって非貪食細胞(例えば、T細胞、B細胞、ヌル細胞、好塩基球)から、貪食細胞(例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、泡沫細胞)が分離される。本発明によると、WBCの表現型は、血液中に存在する生存/死につつある/死CTC(およびその細胞内断片)、および/または、腫瘍および/または疾患特異的DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の貪食によって変化する。貪食により、これらの腫瘍および/または疾患のシグネチャーが貪食を行う細胞内に取り込まれ、恐らく、腫瘍特異的体細胞変異(またはその他の疾患関連変異)を有する腫瘍細胞DNAが正常な貪食細胞DNAへ組み込まれる可能性もある(すなわち、標的細胞の染色体のトランスフェクション)。続いて、この貪食細胞の「トランスフェクトされた」DNAがRNAへ転写され、RNAがタンパク質へ翻訳されると、非貪食性WBCとは異なる表現型が作り出される。
【0018】
したがって、当業者に周知の、ゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック手法を用いて、(図3に示すように)癌(および/または1つまたは複数のその他の疾患)を有する個人から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCのDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質の発現プロファイルを比較することにより、個人における不顕性腫瘍(またはその他の疾患もしくは状態)の存在を確認する腫瘍特異的(および/または疾患特異的および/または状態特異的)シグネチャーおよび/またはプロファイルが、貪食細胞において選択的に同定される。本発明によると、(例えば、ゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)貪食細胞のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質のプロファイルを非貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、特定の患者の血液サンプル(および/またはその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーを同定し、図2に示すように、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患の存在を示す方法が提供される。
【0019】
ある例示的実施形態では、貪食細胞および非貪食細胞(例えば、血液または1つまたは複数のその他の生体サンプル(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られる)が分離される。貪食性WBCによるCTC(およびその細胞内断片)の貪食によって、腫瘍細胞が貪食細胞の細胞質内に取り込まれるため、貪食細胞内のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の量は、非貪食細胞のそれよりも多くなる。したがって、貪食細胞と非貪食細胞との間でのこれらの成分の量およびプロファイルの比較が、癌の存在の指標として用いられる。
【0020】
ある例示的実施形態では、個人における癌細胞の存在を診断する方法が提供される。この方法は、個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、およびこの第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程とを含む。
【0021】
ある例示的実施形態では、癌を有する個人において、腫瘍特異的シグネチャーを同定するための方法が提供される。この方法は、癌を有する個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、癌を有する該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を癌を有する個人における腫瘍特異的シグネチャーと関連付ける工程とを含む。
【0022】
ある例示的実施形態では、個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、該個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程とを含む方法が提供される。この方法は、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程とを含む。ある態様では、第二の発現プロファイルと比較して第一の発現プロファイルにおいてマーカーの量が増加していることが、循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を示す。
【0023】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態では、個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程とを含む、個人における癌細胞の存在を診断するための方法が提供される。この方法は、2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程とを含む。この方法はさらに、第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を個人における癌細胞の存在と関連付ける工程を含む。
【0024】
本明細書に記載の方法のある態様において、マーカーとしては、DNA、RNA、マイクロRNA(例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせに対応するDNAまたはRNA)、タンパク質(例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチド)、脂質、炭水化物、および/またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある態様では、血中貪食細胞は、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、好酸球、泡沫細胞、またはこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、血中非貪食細胞は、T細胞、B細胞、ヌル細胞、好塩基球、またはこれらの任意の組み合わせである。他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、抗体などの当業者に周知の手法を用いて、全血から単離される。さらに他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)などの当業者に周知の方法を用いて、白血球の集団から単離される。他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される。さらに他の態様では、血中貪食細胞および血中非貪食細胞は、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスなどを含む1つまたは複数の方法によって分離される。ある態様では、個人は、不顕性癌(例えば、休止状態の癌、診断未確定の癌、隠れたまたは隠蔽(concealed)された癌)、過去に診断された原発性癌および転移性癌の1つまたは複数を有する。ある態様では、方法は、1つまたは複数のマーカーの存在を癌治療の有効性と関連付ける工程を含む。
【0025】
ある例示的実施形態では、上述の方法は、貪食細胞および非貪食細胞の発現プロファイルを比較して感染性因子または癌以外の疾患に特徴的なマーカーの発現差異を特定することにより、感染性因子または癌以外の疾患の存在を検出、同定、または診断するために適用される。さらに別の態様では、本明細書に記載の方法の1つまたは複数を用いて、病原体(例えば、ウイルス、細菌、リケッチア、原虫、蠕虫、真菌、および酵母など)、およびその他の疾患または病態(例えば、アルツハイマー病、認知症、心不全、アテローム性動脈硬化症、関節炎、遺伝的障害、骨疾患、胃腸疾患、プリオン病、および感染性疾患)のDNA、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質プロファイルが検出される。
【0026】
本明細書に記載の方法のある態様では、マーカーとしては、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある態様では、感染性因子は、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、感染性タンパク質、およびこれらの任意の組み合わせである。ある態様では、方法は、1つまたは複数のマーカーの存在を病原体治療の有効性と関連付ける工程を含む。
【0027】
本明細書に記載の方法および組成物は、したがって、「健康な」コントロールから得られた、集団由来の平均シグネチャープロファイルおよび数値に依存することなく、患者の血液サンプル中の腫瘍特異的シグネチャーの容易な同定を可能とする。具体的には、本明細書に記載の方法および組成物により、容易かつ経済的に、(i)病理的徴候および症状の出現の前に、個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の存在を同定、(ii)癌を有することが疑われる個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の存在を同定、および/または(iii)種々の治療を行っている、または行った後の個人における腫瘍(原発性病変および転移性病変)の再発を検出することができる。
【0028】
したがって、本明細書に記載の方法および組成物は、(i)癌の非侵襲的なスクリーニングを可能とし、(ii)腫瘍の診断を、特に最も早い時点において可能とし、(iii)、腫瘍の進行途中において、より早い時点から意味のある介入治療に移行することにより進行性疾患の発症を未然に防止し、(iv)通常のまたは実験的な治療に対する早期の反応をモニタリングし、(v)通常のまたは実験的な治療に対する反応を予測し、(vi)期待される利点によって副作用が相殺されない可能性のある、無効な治療の迅速な同定を可能とすることによって、有効な治療の選択を促進し、(vii)患者の不便性および不適格性(incapacitation)を最小限に抑え、(viii)腫瘍の検出、診断、および治療の密接な連係を可能とし(例えば、個人化された抗癌治療)、(ix)腫瘍の種類とステージの予測および早期の検出を提供し、(x)治療の選択を提供し、(xi)腫瘍が転移性か否かを判定し、(xii)疾患をモニタリングする方法を提供し、(xiii)疾患の予後のための方法である。
【0029】
本特許または出願ファイルは、カラーで作製された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、庁へ申請し、必要な料金を支払うことで提供される。本発明の、前述した特徴およびその他の特徴、ならびに利点は、添付の図面とともに、具体的実施形態についての以下の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】生存腫瘍細胞および/またはアポトーシス腫瘍細胞によって放出された生存CTC、アポトーシスCTC、断片化CTC、腫瘍DNA、RNA、タンパク質、および脂質の貪食後に、貪食細胞による、腫瘍特異的なDNAシグネチャー、RNAシグネチャー、タンパク質シグネチャー、および/または脂質シグネチャーの獲得をもたらす経路案の概略図である。(非貪食細胞ではなく)貪食細胞のみが腫瘍シグネチャーを獲得することに留意されたい。
【図2】卵巣癌(OC)を有する患者の貪食細胞中で、または貪食細胞によって発現された癌シグネチャーの同定に用いられる解析方法の概略図である。
【図3】本発明の方法のある実施形態の一般的なフローチャートの概略図である。
【図4】生存腫瘍細胞および/またはアポトーシス腫瘍細胞によって放出された生存CTC、アポトーシスCTC、断片化CTC、腫瘍DNA、RNA、タンパク質、および脂質の貪食後に、貪食血液細胞による、腫瘍特異的なDNAシグネチャー、RNAシグネチャー、タンパク質シグネチャー、および脂質シグネチャーの獲得をもたらす経路案の概略図である。貪食後の貪食細胞のDNA含有量が>2nであることに留意されたい。
【図5】乳癌(BC)シグネチャーを、BCを有する動物において同定するために用いられる解析手法の概略図である。
【図6】本発明の方法の別の実施形態の一般的なフローチャートを概略的に示す図である。
【図7】LNCaP細胞およびLLC1細胞から単離された全RNAのゲル電気泳動解析を示す図である。
【図8】マウス白血球細胞(WBC)から得られたRNAの収量および品質の一覧である。
【図9】LNCaP(ヒト前立腺癌)腫瘍を有するヌードマウスの好中球で検出された、7つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LNCaP腫瘍。(B)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NT)。(C)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図10】LNCaP(ヒト前立腺癌)腫瘍を有するヌードマウスのマクロファージで検出された、3つの上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LNCaP腫瘍。(B)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LNCaP腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスからのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図11】LS174T(ヒト結腸癌)腫瘍を有するヌードマウスの好中球で検出された、4つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LS174T腫瘍。(B)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NT)。(C)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。発現は、NTが、NNおよびTTにおける発現の2倍以上である。
【図12】LS174T(ヒト結腸癌)腫瘍を有するヌードマウスのマクロファージで検出された、3つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LS174T腫瘍。(B)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LS174T腫瘍を有するヌードマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないヌードマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上である。
【図13】LLC1(マウス転移性肺癌)腫瘍を有するC57/Blマウスの好中球で検出された、5つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LLC1腫瘍。(B)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られた好中球(NT)。(C)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスからの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図14】LLC1(マウス転移性肺癌)腫瘍を有するC57/Blマウスのマクロファージで検出された、2つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)LLC1腫瘍。(B)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)LLC1腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図15】B16F10(マウス転移性メラノーマ)腫瘍を有するC57/Blマウスの好中球で検出された、2つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)B16F10腫瘍。(B)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られた好中球(NT)。(C)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D)腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られた好中球(NN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスの好中球で発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスの好中球、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。NTにおける発現は、NNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図16】B16F10(マウス転移性メラノーマ)腫瘍を有するC57/Blマウスのマクロファージで検出された、1つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)B16F10腫瘍。(B)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MT)。(C)B16F10腫瘍を有するC57/Blマウスから得られたT細胞(TT)。(D:腫瘍を有しないC57/Blマウスから得られたマクロファージ(MN)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)腫瘍細胞、および(B)腫瘍を有するマウスのマクロファージで発現されたもの、ならびに(D)腫瘍を有しないマウスのマクロファージ、および(C)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、MNおよびTTにおける発現の2倍以上であった。
【図17】頭頸部癌(扁平上皮癌腫)を有する患者の好中球で検出された、5つの(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)正常組織(皮膚)生検。(B)腫瘍組織生検。(C)患者血液から得られた好中球(NT)。(D)患者血液から得られたT細胞(TT)。丸で囲んだシグネチャーは、(B)腫瘍細胞、および(C)患者血液の好中球で発現されたもの、ならびに(A)正常皮膚、または(D)非貪食T細胞で最小限に発現されたかまたは発現されなかったものである。NTにおける発現は、TTおよび皮膚における発現の2倍以上であった。
【図18】卵巣癌(腺癌)を有する患者のマクロファージで検出された、23個の(2倍以上)上方制御された癌関連遺伝子を示すアレイの図である。(A)患者血液から得られたマクロファージ(MT)。(B)患者血液から得られたT細胞(TT)。丸で囲んだシグネチャーは、(A)患者からのマクロファージで発現されたもの、および(B)非貪食T細胞で最小限に発現されたものである。MTにおける発現は、TTにおける発現の2倍以上であった。
【図19】貪食細胞中の腫瘍シグネチャーを同定するために用いられる方法を示す図である。この例では、腫瘍を有する動物のマクロファージ(MT)での癌関連遺伝子の発現強度は、同じ動物のT細胞(TT)からの発現強度と比較して定量化し、2倍超の過剰発現を同定した。次に、MTにおけるすべての発現遺伝子の強度を定量化し、腫瘍を有しない動物から得られたマクロファージ(MNT)での強度と比較し、2倍超に過剰発現された遺伝子を同定した。両リストに共通する遺伝子を選択し、同じ腫瘍によって発現された遺伝子と比較した(網掛け領域)。
【図20】(A)LNCaPヒト前立腺腫瘍を有するヌードマウスから得られたマクロファージ(MLNCaP)および同じ動物のT細胞(T細胞LNCaP)、(B)MLNCaPおよび腫瘍を有しないマウスから得られたマクロファージ(Mnon−tumor)、(C)LNCaPヒト前立腺腫瘍を有するヌードマウスから得られた好中球(NLNCaP)および同じ動物のT細胞(T細胞LNCaP)、ならびに(D)NLNCaPおよび腫瘍を有しないマウスから得られたマクロファージ(Nnon−tumor)における遺伝子発現強度の比較を示す図である。赤色で示した遺伝子は、2倍超の過剰発現であり、緑色の遺伝子は、1/2倍より少ない過小発現であった。
【図21】貪食好中球(N)およびマクロファージ(M)内での癌関連遺伝子の発現のリストである。
【図22】非貪食T細胞と比較して、卵巣癌を有する患者の貪食マクロファージで(>2倍)上方制御された癌関連遺伝子のリストである。
【図23】マウスWBCから得られたタンパク質サンプル(5.9μg)のSDSゲル(10%)電気泳動を示す図である。
【図24】腫瘍を有するマウスから得られたT細胞および単球/マクロファージ(M/M)におけるTAG−72およびPSAの発現のウェスタンブロット解析を示す図であり、貪食細胞にのみシグネチャーが存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態は、疾患、感染性因子、および身体状態と関連するマーカーの患者に特異的な発現プロファイルを、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルに基づいて提供する方法に関する。本発明のある態様によると、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルを、特定の疾患状況または疾患状態に対する既知のマーカーと比較して、その特定の疾患状況または疾患状態の検出および/または診断が行われる。本発明の別の態様によると、貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、単一の患者の血液からの非貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。非貪食細胞からの細胞内容物および/または発現プロファイルを、貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、個人の疾患状況のみを表す細胞内容物および/または発現プロファイルが作り出される。
【0032】
本発明の別の実施形態によると、個人からの貪食細胞集団が得られ、DNA含有量が2n超である該集団の貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、DNA含有量が2nである同じ集団の貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。本発明のさらに別の実施形態によると、個人からの貪食細胞集団が得られ、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常よりも多くDNA指数が1を超える該集団の貪食細胞の発現プロファイルが、RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常であり、および/またはDNA指数が1である同じ集団の貪食細胞の発現プロファイルと比較される。
【0033】
このような患者特異的な発現プロファイルにより、個人における特定の疾患の検出または診断に誤りを発生させる可能性のある、特定の疾患または感染性因子に対する集団由来の平均シグネチャープロファイルへの依存が排除される。本発明の疾患状況に対する患者特異的な発現プロファイルにより、検出、診断、および治療を個人に対して個別化することが可能となる。
【0034】
図1〜図3に関して、本発明のある実施形態によると、発生後約3週間のヒト皮下(s.c.)腫瘍(前立腺LNCaP腺癌、またはLS174T結腸腺癌)を有するマウス、またはマウス腫瘍(静脈内投与したB16F10転移性メラノーマ、または皮下注射したLLC1肺癌)から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCの遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、これらの腫瘍を有するマウスから得られた好中球およびマクロファージが、対応する各々の腫瘍でも発現される種々の発癌遺伝子シグネチャーおよびその他の癌関連遺伝子シグネチャーを発現することが実証された。図9〜図16および図19〜図21を参照のこと。これらの癌関連遺伝子および発癌遺伝子(例えば、ERBB2、Jun、Fosなど)は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた好中球およびマクロファージによる発現は、起こらないかまたは最小限である。さらに、腫瘍を有するマウスからの貪食細胞でのみ、腫瘍特異的タンパク質の発現が見られた。図23および図24を参照のこと。該マウスの血液中のCTCおよび/または腫瘍特異的DNAおよび/またはタンパク質は貪食され、腫瘍細胞DNAの一部は、その腫瘍特異的変異および遺伝子と共に、(理論に束縛されることを意図するものではないが)恐らくはトランスフェクションにより、正常貪食細胞DNA中へ取り込まれ、RNAへ転写され、タンパク質へと翻訳された。
【0035】
図1〜図3に関して、本発明のある例示的実施形態によると、頭頸部腫瘍または卵巣癌を有する患者から得られた貪食性WBCおよび非貪食性WBCの遺伝子発現プロファイルも比較した。その結果、前記患者から得られた好中球およびマクロファージが、対応する各々の腫瘍でも発現される種々の発癌遺伝子シグネチャーおよびその他の癌関連遺伝子シグネチャーを発現することが実証された。図17〜図18および図22を参照のこと。これらの癌関連遺伝子および発癌遺伝子は、同一の個々の患者から単離された非貪食T細胞によって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。該患者の血液中のCTCおよび/または腫瘍特異的DNAおよびRNAは貪食され、腫瘍細胞DNAおよび/またはRNAの一部は、その腫瘍特異的変異および遺伝子と共に、(理論に束縛されることを意図するものではないが)恐らくはトランスフェクションにより、正常貪食細胞DNA中へ取り込まれ、RNAへ転写され、タンパク質へと翻訳された。
【0036】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態によると、血液、または1つまたは複数のその他の生体サンプル(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られ、(1)そのDNA含有量が2n超(Pn>2)か、または(2)RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常よりも多い貪食細胞(例えば、マクロファージ)、すなわち、CTCおよび/またはその細胞内断片、またはDNA/RNA/脂質(すなわち、腫瘍特異的シグネチャーまたはその他の疾患特異的シグネチャー)の貪食を行い、および/または1よりも大きいDNA指数を有する細胞の、DNA(核内DNAおよび/またはミトコンドリアDNA)、RNA、マイクロRNA、タンパク質、および/または脂質の発現プロファイルの定量分析、ならびに、(1)DNA含有量が2nである(Pn=2)か、または(2)RNA、タンパク質、炭水化物、および/または脂質の含有量が正常である同じ貪食細胞集団(例えば、マクロファージ)、すなわち、CTCおよび/またはその細胞内断片の貪食を行っておらず、DNA指数が1である細胞との比較により、Pn=2細胞では発現されないかまたは最小限に発現される腫瘍特異的(またはその他の疾患特異的)シグネチャー(患者特異的ノイズ)をPn>2細胞(患者特異的シグナル)内で検出するための方法が提供される。図6を参照すると、図5に示すように、Pn=2のDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質のプロファイルを、Pn>2のプロファイルから差し引くことにより、癌(および/または疾患および/または身体状態)を有する動物および/またはヒトの血液サンプル(または、例えばその他の体液などの1つまたは複数のその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的および/または状態特異的)シグネチャーを(例えば、1つまたは複数のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)同定し、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患および/またはその他の状態の存在を示すための方法が提供される。貪食細胞のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミックプロファイルが非貪食細胞のプロファイルと比較される上述の方法とは異なり、本発明の解析的検出方法の大きな利点は、(i)この方法が、「腫瘍特異的」(例えば、Pn>2マクロファージ)シグネチャーおよび「正常な非特異的」(例えば、Pn=2マクロファージ)シグネチャーの供給源として単一の貪食細胞サブ集団を用いること、すなわち、両者が同一のベースライン遺伝子型を共有すること、および(ii)シグネチャー獲得細胞(例えば、Pn>2好中球)が、貪食を行わず死CTCおよび/またはその断片を獲得しなかった細胞(例えば、Pn=2好中球)で希釈されないことである。
【0037】
図4〜図6に関して、ある例示的実施形態によると、血液または1つまたは複数のその他の生体サンプルまたは体液(例えば、尿、便、唾液、リンパ液、および脳脊髄液など)から得られ、貪食または内部への取り込みの結果として、他の生存細胞、死につつある細胞、もしくは死(例えば、アポトーシスまたはネクローシス)細胞、アポトーシス小体、核、微小胞、エキソソーム、ヌクレオソーム、ミトコンドリア、および小胞体などの細胞内含有量が、正常な細胞内含有量を有する同一の貪食細胞集団(例えば、マクロファージ)(PNIC)、すなわち、上述の細胞および/細胞片のいずれも貪食しなかった細胞の含有量よりも多い貪食細胞(例えば、マクロファージ)(患者特異的ノイズ)の定量分析により、正常な細胞内含有量を有する貪食細胞(患者特異的ノイズ)では発現されないかまたは最小限に発現される腫瘍特異的(またはその他の疾患特異的またはその他の状態特異的)シグネチャーを、細胞内含有量が増加した貪食細胞(PIIC)内で検出するための方法が提供される。図6に関して、図5に示すように、PNICのDNA、RNA、タンパク質、および/または脂質プロファイルを、PIICのプロファイルから差し引くことにより、癌またはその他の疾患を有する動物の血液サンプル(または、例えばその他の体液などの1つまたは複数のその他の生体サンプル)中の腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーを(例えば、1つまたは複数のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミック解析の後に)同定し、不顕性腫瘍および/またはその他の疾患の存在を示すための方法が提供される。貪食細胞のゲノミック、プロテオミック、メタボロミック、グライコミック、グライコプロテオミック、リピドミック、および/またはリポプロテオミックプロファイルが非貪食細胞のプロファイルと比較される上述の方法とは異なり、本発明の解析的検出方法の大きな利点は、(i)この方法が、「疾患特異的」(例えば、PIICマクロファージ)シグネチャーおよび「正常な非特異的」(例えば、PNICマクロファージ)シグネチャーの供給源として、単一の貪食細胞サブ集団を用いること、すなわち、両者が同一のベースライン遺伝子型を共有すること、および(ii)シグネチャー獲得細胞(例えば、PIIC好中球)が、貪食を行わず死CTCおよび/またはその断片を獲得しなかった細胞(例えば、PNIC好中球)で希釈されないことである。
【0038】
本明細書に記載の方法により、(i)高い特異性、感度、および精度を有し、血液サンプル(または、例えば体液などのその他の生体サンプル)中に存在する腫瘍特異的(および/または疾患特異的)シグネチャーおよび正常な非特異的シグネチャーの検出が可能となり、(ii)内在的(例えば、年齢、性別、人種的背景、および健康状態など)および一時的な遺伝子発現の変動の結果として個人間で発生することが知られている「ベースラインの不等性」が排除される。したがって、ある態様では、本発明は、患者における原発性および転移性の不顕性腫瘍(および/または1つまたは複数のその他の疾患もしくは状態)の早期の検出、すなわち、該疾患が従来の画像技術(例えば、PET、MRI、およびCTなど)によって診断可能となる前の早期の検出のための非侵襲的アッセイが提供され、したがって、癌を有する個人の介入治療、予防、および治療のための必要性および方策に関連する意思決定を改善するための基礎が提供される。
【0039】
本明細書における用語「腫瘍特異的マーカー」は、これらに限定されないが、1つまたは複数のDNA配列、1つまたは複数のRNA配列、1つまたは複数のタンパク質、1つまたは複数のポリペプチド、および1つまたは複数の脂質など、1つまたは複数の細胞構成成分を含むことを意図するものである。ある態様では、腫瘍特異的マーカーは、例えば、好中球、マクロファージ、および/または樹状細胞などの1つまたは複数のWBC中に存在する。
【0040】
本明細書における用語「癌関連遺伝子」は、例えば、癌遺伝子、発癌遺伝子、および/または腫瘍抑制遺伝子などの、癌性細胞内(例えば、例えば、マクロファージ、好中球、またはT細胞などのWBC)にて発現が変化した(例えば、非癌性細胞と比較した場合に発現が増加または減少した)遺伝子を指す。当技術分野では多くの癌関連遺伝子が周知である。癌関連遺伝子としては、例えば、これらに限定されないが、ERBB2、JUN、RB1、SUPP1、MDM2、MAP2K1、MMP2、PDGFB、PLAUR、FGR、MYCL1、BLYM、NRAS1、PE1、SKI、TRK、ABL2、MYCN、RAB1、REL、RALB、LCO、ERBB4、RAF1、ECT2、KIT、FGF5、GRO1、GRO2、GRO3、FMS、PIM、KRAS1P、FYN、MYB、ROS1、MAS1、RALA、MYCLK1、GLI3、ARAF2、MET、BRAF、MOS、LYN、MYBL1、MYC、OVC、VAV2、BMI1、RET、HRAS、SPI1、RELA、SEA、EMS1、ETS1、KRAS2、ERBB3、GLI、FLT、BRCA2、RB1、FOS、AKT1、ELK2、FES、MAF、TP53、CRK、ERBA1、NF1、EVI2、ERBBB2、INT4、BRCA1、YES1、JUND、JUNB、MEL、LPSA、VAV1、AKT2、FOSB、RRAS、HKR1、HKR2、ERBAL2、SRC、MYBL2、ETS2、ERG、ARAF1、YUASA、HS2、INT3、SNO、RMYC、BMYC、HRASP、TC21、TIM、PTI−1、JAK、CEAファミリーの1つまたは複数のメンバー(例えば、Zhou et al. (2001) Gene 264:105を参照)、PSA、MUC−16などが挙げられる。
【0041】
本明細書における用語「癌」は、様々な種類の悪性新生物を指し、そのほとんどは、周囲組織に浸潤することができ、別の部位へ転移することがある(例えば、その全体が全ての目的において参照により本明細書に組み込まれる、PDR Medical Dictionary、1st edition (1995)を参照)。用語「新生物」および「腫瘍」は、細胞増殖によって正常よりも速く成長し、増殖を開始させた刺激が除去された後も成長を続ける異常組織を指す(同文献)。このような異常組織は、構造的な組織化および正常組織との機能的な協調が部分的にまたは完全に失われており、これは良性(すなわち、良性腫瘍)であっても、悪性(すなわち、悪性腫瘍)であってもよい。
【0042】
癌の一般的な分類の例には、これらに限定されないが、癌腫(すなわち、例えば、一般的な乳癌、前立腺癌、肺癌、および結腸癌など、上皮細胞由来の悪性腫瘍)、肉腫(すなわち、結合組織または間葉系細胞由来の悪性腫瘍)、リンパ腫(すなわち、造血細胞由来の悪性病変)、白血病(すなわち、造血細胞由来の悪性病変)、胚細胞性腫瘍(すなわち、全能性細胞由来の腫瘍。成人では、精巣または卵巣で最も多く見られ、胎児、乳児、および幼児では、身体正中で、特に尾骨の先端で最も多く見られる)、および芽細胞性腫瘍(すなわち、未熟組織または胚性組織に類似する通常は悪性である腫瘍)などが含まれる。
【0043】
本発明に包含されることが意図される新生物の種類の例には、これらに限定されないが、神経組織癌、造血性組織癌、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、肝臓癌、肺癌、脳癌、喉頭癌、胆のう癌、膵臓癌、直腸癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、副腎癌、免疫系の癌、頭頸部癌、結腸癌、胃癌、気管支癌、および/または腎臓癌と関連する新生物が含まれる。
【0044】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を適用して、胎児染色体異常の存在と関連する障害(例えば、ダウン症候群、自閉症および関連する自閉症スペクトラム障害(これらに限定されないが、特に断りのない限り、アスペルガー症候群および広汎性発達障害を含む)、鎌状赤血球貧血症、およびサラセミアなど)が、母体血液中に胎児細胞およびDNAが存在する結果として、検出、同定、および/または診断される。1つまたは複数のこれらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、母体血液中の貪食細胞内の1つまたは複数の染色体マーカー、例えば、DNAおよびRNAなどを検出することにより、実施することができる。
【0045】
ある例示的実施形態では、胎児幹細胞、有核赤血球、胎児リンパ球、および相当量の無細胞胎児核酸が母体血液中を循環していることが周知であることから、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を適用して、妊婦の血液内の胎児由来のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、および/またはゲノミックシグネチャーの存在を検出することにより、妊婦内の胎児の性別を検査することができる。本明細書に記載の方法によると、妊婦の血液からの貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルが、非貪食細胞の細胞内容物および/または発現プロファイルと比較される。非貪食細胞からの細胞内容物および/または発現プロファイルを、貪食細胞のプロファイルから差し引くことにより、妊婦胎内の胎児の性別を表す細胞内容物および/または発現プロファイルが作り出される。
【0046】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、死につつある筋細胞/死んだ筋細胞および/またはその断片(例えば、DNAおよびタンパク質など)の存在を検出することにより、心疾患(例えば、心筋梗塞、慢性心不全、虚血性心疾患、および心血管死など)を有するかまたはそれを発症するリスクがある対象の血液内のプロテオミック筋細胞シグネチャーおよび/またはゲノミック筋細胞シグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、および/または診断することができる。1つまたは複数のこれらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNAおよびRNA、タンパク質などを検出することにより実施される。
【0047】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、冠動脈狭窄および腹部大動脈瘤などの結果としてアテローム性動脈硬化を有するかまたはそれを発症するリスクがある対象の血液内のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、および/またはゲノミックシグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、および/または診断することができる。これらの障害のスクリーニングおよび診断は、本明細書に記載の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、実施することができる。
【0048】
同種移植片拒絶を診断する1つの方法である、拒絶の生検による確認は、侵襲的でありサンプリング誤差を生じやすい。したがって、移植臓器拒絶の診断および管理のための分子バイオマーカーを検出する非侵襲的アッセイの開発は、(a)拒絶により移植片の機能不全が引き起こされる前に治療的介入を可能とする拒絶前プロファイルを検出すること、(b)拒絶診断の感度および特異性を向上させること、(c)予後を改善させる新規な拒絶の分類システムを開発すること、および(d)薬物毒性を最小限に抑えながら拒絶を予防することができる個別化された免疫抑制療法を設計するための情報を提供することによって、移植レシピエントの管理に有用である。
【0049】
したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、臓器移植を受けた対象の血液内のプロテオミックシグネチャー、リピドミックシグネチャー、およびゲノミックシグネチャーの存在と関連する障害を検出、同定、または診断することができる。
【0050】
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの障害に起因する。結果として、細胞の損傷およびさらには細胞死が起こる。ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、ならびに内分泌系および呼吸器系の細胞に最も大きな損傷を引き起こし、さらには糖尿病、呼吸器合併症、癲癇、アルツハイマー病、視覚/聴覚障害、乳酸アシドーシス、発育遅延、感染症感受性、および癌を引き起こすと考えられる。
【0051】
したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のミトコンドリア関連ゲノムDNAマーカーを検出することにより、ミトコンドリア病をスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0052】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質などを検出することにより、アルツハイマー病および/または認知症をスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0053】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、種々の臓器およびシステムに影響を与える複雑な自己免疫障害である。したがって、ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、脂質、タンパク質など検出することにより、SLEをスクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0054】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質など検出することにより、治療用分子および/または画像化用分子の開発に有用であるゲノミックシグネチャーおよび/またはプロテオミックシグネチャーをスクリーニングおよび/または検出することができる。
【0055】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、血中貪食細胞内の1つまたは複数のマーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質など検出することにより、1つまたは複数の外部障害または内部傷害(例えば、汚染爆弾への曝露、放射線への曝露、化学物質への曝露、放射線治療、放射性医薬品の投与、治療用分子への曝露、ラドンへの曝露、アスベストへの曝露、汚染への曝露など)の結果としての疾患および病態の検出に有用である、ゲノミックシグネチャー、プロテオミックシグネチャー、および/またはリピドミックシグネチャーの変化を、スクリーニング、診断、および/または検出することができる。
【0056】
本明細書における用語「生物」は、これらに限定されないが、ヒト個人、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、スナネズミ、カエル、ヒキガエル、およびこれらのトランスジェニック種を含む。用語「生物」は、病原性生物をさらに含み、これらに限定されないが、寄生生物、酵母細胞、酵母四分子(yeast tetrad)、酵母コロニー、細菌、細菌コロニー、ビリオン、ビロソーム、ウイルス様粒子、および/またはこれらの任意の培養物などの病原体を含む。
【0057】
ある例示的実施形態では、本明細書に記載のアッセイは、感染性因子の検出および/または感染性因子による細胞、組織、臓器などの感染に関連する障害の診断に用いることができる。ある態様では、感染性因子の検出および/または感染に関連する障害の診断は、本明細書に記載の1つまたは複数の方法および/または組成物を用いて、1つまたは複数の感染性因子の1つまたは複数の感染性因子マーカー、例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質などを検出することにより実施される。
【0058】
本明細書における用語「感染性因子」は、これらに限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、感染性タンパク質などの病原性生物を含む。
【0059】
ウイルスとしては、これらに限定されないが、DNA動物ウイルスまたはRNA動物ウイルスが挙げられる。本明細書におけるRNAウイルスとしては、これらに限定されないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、トガウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、呼吸器多核体ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、およびレトロウイルス科(例えば、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))などのウイルスファミリーが挙げられる。本明細書におけるDNAウイルスとしては、これらに限定されないが、パポバウイルス科(例えば、パピローマウイルス)、アデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス)、およびポックスウイルス科(例えば、痘瘡ウイルス)などのウイルスファミリーが挙げられる。
【0060】
細菌としては、これらに限定されないが、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および抗酸菌などが挙げられる。
【0061】
本明細書におけるグラム陽性菌としては、これらに限定されないが、アクチノマジュラ、アクチノミセス・イスラエリー、バチルス・アントラシス、バチルス・セレウス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・テタニ、コリネバクテリウム、エンテロコッカス・フェカリス、リステリア・モノサイトゲネス、ノカルジア、プロピオニバクテリウム・アクネス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、ストレプトコッカス・ミュータンス、およびストレプトコッカス・ニューモニエなどが挙げられる。
【0062】
本明細書におけるグラム陰性菌としては、これらに限定されないが、アフピア・フェリス、バクテリオデス(Bacteriodes)、バルトネラ・バシリホルミス、ボルタデラ・パーツシス、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・レカレンチス、ブルセラ、カリマトバクテリウム・グラヌロマティス、カンピロバクター、エシェリキア・コリ、フランシセラ・ツラレンシス、ガードネレラ・バギナリス、ヘモフィリウス・エジプチウス、ヘモフィリウス・デュクレイ、ヘモフィリウス・インフルエンザエ、ヘリオバクター・ピロリ、レジオネラ・ニューモフィラ、レプトスピラ・インターロガンス、ナイセリア・メニンギティディア、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プロビデンシア・スチュルティ(Providencia sturti)、シュードモナス・エルジノーサ、サルモネラ・エンテリディス(Salmonella enteridis)、サルモネラ・チフィ、セラチア・マルセセンス、シゲラ・ボイディ、ストレプトバチルス・モニリホルミス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、トレポネーマ・パリダム、ビブリオ・コレラエ、エルシニア・エンテロコリチカ、およびエルシニアペスチスなどが挙げられる。
【0063】
本明細書における抗酸菌としては、これらに限定されないが、マイオバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイオバクテリウム・レプレ(Myobacterium leprae)、およびマイオバクテリウム・ツベルクローシス(Myobacterium tuberculosis)などが挙げられる。
【0064】
本明細書における他の3つの分類に含まれないその他の細菌としては、これらに限定されないが、バルトネラ・ヘンセイ(Bartonella henseiae)、クラミジア・シタッシ、クラミジア・トラコマティス、コクシエラ・ブルネッティ、マイコプラズマ・ニューモニエ、リケッチア・アカリ、リケッチア・プロワツェキイ、リケッチア・リケッチイ、リケッチア・ツツガムシ、リケッチア・チフィ、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、ディプロコッカス・ニューモニエ、エーリキア・シャフェンシス、エンテロコッカス・フェシウム、および髄膜炎菌などが挙げられる。
【0065】
本明細書における真菌としては、これらに限定されないが、コウジカビ、カンジダエ(Candidae)、カンジダ・アルビカンス、コクシジオイデス・イミチス、クリプトコッカス、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
本明細書における寄生微生物としては、これらに限定されないが、バランチジウム・コリ、クリプトスポリジウム・パルバム、シクロスポラ・カイアタネンシス(Cyclospora cayatanensis)、エンセファリトゾア(encephalitozoa)、エントアメーバ・ヒストリチカ、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ、ジアルジア・ランブリア、リーシュマニ、プラスモディ(Plasmodii)、トキソプラズマ・ゴンディ、トリパノソーマ、および台形状アメーバなどが挙げられる。
【0067】
本明細書における寄生生物としては、虫類(例えば、蠕虫類)、特に、線形動物(回虫、例えば、鞭虫類、鉤虫類、蟯虫類、回虫類、およびフィラリア類など)、条虫(例えば、サナダムシ類)などの寄生性虫類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書における感染性タンパク質としては、プリオンが挙げられる。プリオンによって引き起こされる障害としては、これらに限定されないが、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)(例えば、医原性クロイツフェルト−ヤコブ病(iCJD)、異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、家族性クロイツフェルト−ヤコブ病(fCJD)、および孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD)を含む)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(fFI)、孤発性致死性不眠症(sFI)、およびクールー病などのヒトの障害、ならびにスクレイピー(ヒツジおよびヤギ)、ウシ海綿状脳症(BSE)(ウシ)、伝染性ミンク脳症(TME)(ミンク)、慢性消耗病(CWD)(ヘラジカ、ミュールジカ)、ネコ海綿状脳症(ネコ)、外来性有蹄類脳症(EUE)(ニアラ、オリックス、グレーター・クーズー)、およびダチョウ海綿状脳症などの動物の障害が挙げられる。
【0069】
ある例示的実施形態では、生体サンプルにおける、核酸配列(例えば、DNAおよびRNAなど)、タンパク質、ポリペプチド、脂質、および多糖などのマーカーを検出する方法が提供される。本明細書における用語「核酸」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチド類似体を用いて作成されたDNAまたはRNAの類似体を含むことを意図している。核酸分子は、一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。
【0070】
本明細書における用語「アミノ酸」には、塩基性アミノ基と酸性カルボキシル基の両方を含む有機化合物が含まれる。この用語の範囲には、天然のアミノ酸(例えば、L−アミノ酸)、修飾アミノ酸および異常アミノ酸(例えば、D−アミノ酸およびβ−アミノ酸)、ならびに遊離した形態または結合した形態で生物学的に存在することが知られているが通常はタンパク質内に存在しないアミノ酸が含まれる。天然のタンパク質に存在するアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、およびバリンが挙げられる。天然の非タンパク質アミノ酸としては、アルギノコハク酸、シトルリン、システインスルフィン酸、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン、3−モノヨードチロシン、3,5−ジヨードチロシン、3,5,5,−トリヨードサイロニン、および3,3’,5,5’−テトラヨードサイロニンが挙げられる。修飾アミノ酸または異常アミノ酸としては、D−アミノ酸、ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、N−Cbz保護アミノ酸、2,4−ジアミノ酪酸、ホモアルギニン、ノルロイシン、N−メチルアミノ酪酸、ナフチルアラニン、フェニルグリシン、アルファ−フェニルプロリン、tert−ロイシン、4−アミノシクロヘキシルアラニン、N−メチル−ノルロイシン、3,4−デヒドロプロリン、N,N−ジメチルアミノグリシン、N−メチルアミノグリシン、4−アミノピペリジン−4−カルボン酸、6−アミノカプロン酸、トランス−4−(アミノメチル)−シクロヘキサンカルボン酸、2−、3−、および4−(アミノメチル)−安息香酸、1−アミノシクロペンタンカルボン酸、1−アミノシクロプロパンカルボン酸、ならびに2−ベンジル−5−アミノペンタン酸が挙げられる。
【0071】
本明細書における用語「ペプチド」には、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸からなる化合物が含まれる。ペプチドの分子量は、10,000ダルトン未満、5,000ダルトン未満、または2,500ダルトン未満であってよい。用語「ペプチド」は、ペプチド成分と、偽ペプチドまたはペプチド模倣残基またはその他の非アミノ酸成分などの非ペプチド成分との両方を有する化合物も含む。ペプチド成分と非ペプチド成分との両方を含むこのような化合物は、「ペプチド類似体」と称される場合もある。
【0072】
本明細書における用語「タンパク質」には、直鎖状に配置され、隣接するアミノ酸残基のカルボキシルとアミノ基との間がペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸からなる化合物が含まれる。
【0073】
本明細書における用語「脂質」には、通常、両親媒性で生体適合性である、合成または天然の化合物が含まれる。脂質には、通常は、親水性成分および疎水性成分が含まれる。例示的な脂質としては、これらに限定されないが、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、および糖脂質などが挙げられる。本明細書における用語「脂質組成物」は、通常は水性媒体中に、脂質化合物を含む組成物を指す。例示的な脂質組成物としては、これらに限定されないが、懸濁液組成物、エマルジョン組成物、および小胞組成物などが挙げられる。
【0074】
生体サンプルにおいて本発明のマーカーに対応するポリペプチドもしくは核酸の有無を検出するための例示的な方法としては、生体サンプル(例えば、体液サンプル(例えば、血液)および/または腫瘍サンプル)を試験対象から得ること、および該生体サンプルを1つまたは複数のマーカー(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、または脂質など)を検出することができる化合物または薬剤と接触させること、が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載の検出方法を用いて、生体サンプル中の1つまたは複数のマーカー(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、または脂質など)を、インビトロおよびインビボで検出することができる。例えば、mRNA検出のためのインビトロ技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが挙げられる。本発明のマーカーに対応するポリペプチド検出のためのインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、および免疫蛍光法が挙げられる。ゲノムDNA検出のためのインビトロ技術としては、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチド検出のためのインビボ技術としては、該ポリペプチドに対する標識抗体を対象に導入することが挙げられる。例えば、前記抗体は、標準的なイメージング技術によって対象内での存在および位置を検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0076】
生体サンプル中の脂質含有量を分析するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Kang et al. (1992) Biochim. Biophys. Acta. 1128:267、Weylandt et al. (1996) Lipids 31:977、J. Schiller et al. (1999) Anal. Biochem. 267:46、Kang et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:4050、Schiller et al. (2004) Prog. Lipid Res. 43:499を参照)。脂質分析の例示的な方法としては、(例えば、0.005%ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、酸化防止剤として)を含有するクロロホルム:メタノール(2:1、体積:体積)を用いて)生体サンプルから脂質を抽出し、脂肪酸メチルエステルを調製し(例えば、14%BF3−メタノール試薬)、(例えば、HPLC、TLCにより、市販のガスクロマトグラフ、質量分析器、および/またはガスクロマトグラフ/質量分析器の組み合わせを用いたガスクロマトグラフ−質量分析により)該脂肪酸メチルエステルの定量化を行うことが挙げられる。脂肪酸質量は、種々の分析された脂肪酸の領域を内標準の確定された濃度のそれと比較することによって測定される。
【0077】
診断アッセイおよび予後アッセイの一般的な原理としては、マーカー(例えば、1つまたは複数のDNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、および脂質など)およびプローブを含有していてもよいサンプルまたは反応混合物を、適切な条件下にて、該マーカーおよびプローブが相互作用して結合するのに十分な時間で調製して、該反応混合物中に取り出しおよび/または検出が可能である複合体を形成することが挙げられる。このようなアッセイは、様々な方法で実施することができる。
【0078】
例えば、このようなアッセイを実施する1つの方法としては、マーカーまたはプローブを、基材とも呼ばれる固相支持体上に固定し、反応後に該固相上に固定された標的マーカー/プローブ複合体を検出することが挙げられる。このような方法のある実施形態では、マーカーの存在および/または濃度についてのアッセイが行われる対象からのサンプルを、担体または固相支持体上に固定してもよい。別の実施形態では、逆の状況が可能であり、プローブを固相へ固定し、対象からのサンプルをこのアッセイの未固定成分として反応させてもよい。
【0079】
アッセイ成分を固相へ固定するための多くの方法が確立されている。これらには、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合によって固定化されるマーカーまたはプローブ分子が含まれるが、これらに限定されない。このようなビオチン化アッセイ成分は、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から当技術分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、ロックフォード、イリノイ州)を用いて調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化することができる。ある実施形態では、固定化アッセイ成分を有する表面は、予め作製し、保存しておくことができる。
【0080】
このようなアッセイに適切なその他のキャリアまたは固相支持体としては、マーカーまたはプローブが属する種類の分子と結合することができる任意の物質が挙げられる。周知の支持体または担体としては、これらに限定されないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびにマグネタイトが挙げられる。
【0081】
上述の手法を用いたアッセイを実施するために、非固定化成分が、第二の成分が固定された固相へ添加される。反応完了後、形成された複合体がいずれも固相上に固定化されたままとなる条件下で、未複合体化成分を(例えば、洗浄により)除去してよい。該固相に固定されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概説する数多くの方法で行うことができる。
【0082】
ある例示的実施形態では、未固定アッセイ成分である場合、プローブは該アッセイの検出および読み取りの目的で、本明細書で検討され当業者に周知である検出可能な標識により、直接的または間接的に標識することができる。
【0083】
任意の成分(マーカーまたはプローブ)をさらに処置または標識することなく、例えば、蛍光エネルギー移動の技術(例えば、米国特許第5,631,169号および同第4,868,103号を参照)を用いることにより、マーカー/プローブ複合体形成を直接的に検出することも可能である。第一の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光で励起された場合に、放出された蛍光エネルギーが第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識によって吸収され、吸収されたエネルギーの結果、該分子が次に蛍光を発することができるように選択される。もしくは、「ドナー」タンパク質分子が、単にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用してもよい。標識は、「アクセプター」分子標識を「ドナー」の標識と区別することができるように、異なる波長の光を放出するものが選択される。標識間のエネルギー移動の効率が分子を隔てる距離と関連していることから、分子間の空間的な関係を評価することができる。分子間で結合が起こる状況では、このアッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光発光は最大となるはずである。FET結合事象(FET binding event)は、当技術分野で周知の標準的な蛍光検出手段によって(例えば、蛍光光度計を用いて)、簡便に測定することができる。
【0084】
別の実施形態では、プローブがマーカーを認識する能力の測定は、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)の標識も行わず、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)などの技術を用いることによって行うことができる(例えば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63:2338 2345、およびSzabo et al., 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699 705を参照)。本明細書で用いる「BIA」または「表面プラズモン共鳴」とは、相互作用物のいずれも標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用の研究を行うための技術である(例えば、BIAcore)。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)によって表面付近での光の屈折率が変化し(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、生体分子間のリアルタイム反応を示すものとして用いることができる検出可能なシグナルが生じる。
【0085】
あるいは、別の実施形態では、類似の診断アッセイおよび予後アッセイを、液相中の溶質としてのマーカーおよびプローブを用いて実施することができる。このようなアッセイでは、数多くの標準的な技術のうちの任意の技術によって、複合体化したマーカーおよびプローブが複合体化していない成分から分離される。前記技術としては、これらに限定されないが、分画遠心、クロマトグラフィ、電気泳動、および免疫沈降が挙げられる。分画遠心では、マーカー/プローブ複合体を、サイズおよび密度の違いに基づいた複合体の沈澱平衡の相違により、一連の遠心工程を通して未複合体化アッセイ成分から分離することができる(例えば、Rivas and Minton (1993) Trends Biochem. Sci. 18:284を参照)。標準的なクロマトグラフィ技術も、複合体化していない分子から複合体化分子を分離するのに用いることができる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィは、サイズに基づいて分子を分離するものであり、適切なゲルろ過樹脂をカラムの形態で用いることにより、例えば、相対的に大きな複合体を相対的に小さな複合体化を形成していない成分から分離してもよい。同様に、複合体化していない成分と比較したマーカー/プローブ複合体の帯電特性の相対的に差異を利用して、例えばイオン交換クロマトグラフィ樹脂を用いて、未複合体化していない成分から複合体を区別することができる。このような樹脂およびクロマトグラフィ技術は当業者に周知である(例えば、Heegaard (1998) J. Mol. Recognit. 11:141、Hage and Tweed (1997) J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. Appl. 12:499を参照)。ゲル電気泳動も、未結合成分からの複合体化アッセイ成分の分離に利用することができる(例えば、Ausubel et al編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987 1999を参照)。この技術では、タンパク質または核酸複合体が、例えば、サイズまたは帯電に基づいて分離される。電気泳動プロセスの間、結合相互作用を維持するために、非変性ゲルマトリックス物質、および還元剤が存在しない条件が通常は好ましい。特定のアッセイに対する適切な条件およびその成分は、当業者に周知である。
【0086】
ある例示的実施形態では、マーカーに対応するmRNAのレベルを、当技術分野で周知の方法を用いて、生体サンプル中でin situおよび/またはインビトロのフォーマットのいずれかで測定することができる。発現検出法の多くが単離されたRNAを用いる。インビトロの方法については、mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術を、血液細胞からのRNAの精製に用いることができる(例えば、Ausubel et al編、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987 1999を参照)。さらに、大量の細胞および/またはサンプルを、例えば、Chomczynskiの単一段階RNA単離プロセス(1989、米国特許第4,843,155号)など、当業者に周知の技術を用いて容易に処理することができる。
【0087】
単離されたmRNAは、これらに限定されないが、サザン解析またはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイに用いることができる。ある例示的実施形態では、mRNAレベル検出のための診断法としては、単離したmRNAを、検出すべき遺伝子によってコードされたmRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることが挙げられる。前記核酸プローブは、例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250、もしくは500ヌクレオチドの長さであり、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAとストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分であるオリゴヌクレオチドなどの、完全長cDNAまたはその一部分であってもよい。本発明の診断アッセイに用いるためのその他の適切なプローブについては、本明細書に記載する。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは、対象とするマーカーが発現されていることを示すものである。
【0088】
あるフォーマットでは、例えば単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、ゲルから該mRNAをニトロセルロースなどの膜へ転写することにより、mRNAを固体表面に固定化してプローブと接触させる。別のフォーマットでは、例えば遺伝子チップアレイにおいて、プローブを固体表面に固定化して、mRNAを該プローブと接触させる。当業者であれば、周知のmRNA検出法を容易に適合させて、本発明のマーカーによってコードされるmRNAのレベルの検出に使用することができる。
【0089】
サンプル中の本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを測定するための別の方法としては、例えば、rtPCR(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号に記載の実験の実施形態)、COLD−PCR(Li et al. (2008) Nat. Med. 14:579)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、転写増幅システム(transcriptional amplification system)(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardiet al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(米国特許第5,854,033号)による核酸増幅のプロセス、またはその他の任意の核酸増幅法が挙げられ、続いて、当業者に周知の技術を用いて増幅分子が検出される。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、このような分子の存在数が非常に少ない場合に特に有用である。本明細書で用いる増幅プライマーは、遺伝子の5’領域または3’領域(それぞれ、プラス鎖およびマイナス鎖、または逆も同様)にアニールすることができ、中間に短い領域を含む一対の核酸分子と定義される。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いて、このようなプライマーにより、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子が増幅される。
【0090】
in situ法では、検出の前にmRNAをサンプル(例えば、体液(例えば、血液細胞))から単離する必要がない。このような方法では、細胞または組織サンプルは、周知の組織学的方法を用いて調製/処理される。次に、このサンプルを、通常はスライドグラスである支持体上に固定化し、続いてマーカーをコードするmRNAとハイブリダイズすることができるプローブと接触させる。
【0091】
マーカーの絶対発現レベルに基づいて決定する代替法として、標準化されたマーカー発現レベルに基づいて決定してもよい。発現レベルの標準化は、マーカーの発現を、例えば、恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子など、マーカーではない遺伝子の発現と比較することにより、マーカーの絶対発現レベルを補正することによって行われる。標準化に適する遺伝子としては、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子、または上皮細胞特異的遺伝子が挙げられる。この標準化により、ある供給源からの患者サンプル中の発現レベルを別の供給源からの患者サンプルと比較することが可能となり、例えば、個人からの貪食血液細胞を該個人からの非貪食血液細胞と比較することができる。
【0092】
別の例示的な実施形態では、マーカーに対応するタンパク質またはポリペプチドが検出される。ある例示的実施形態では、本発明のポリペプチドを検出するための薬剤は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドと結合することができる抗体であり、例えば、検出可能な標識を有する抗体などである。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルであってもよい。インタクトな抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体へカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブまたは抗体の直接の標識化、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を包含することを意図している。間接的な標識化の例には、蛍光標識された二次抗体を用いて一次抗体を検出すること、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるよう、ビオチンによりDNAプローブを末端標識化することが含まれる。
【0093】
種々のフォーマットを用いて、サンプルが所与の抗体と結合するタンパク質を含有するかどうかを判定することができる。そのようなフォーマットの例には、これらに限定されないが、酵素免疫測定(EIA)、放射免疫測定(RIA)、ウェスタンブロット解析、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などが含まれる。当業者であれば、細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)が本発明のマーカーを発現するかどうかの判定に、周知のタンパク質/抗体検出法を容易に適合させて用いることができる。
【0094】
あるフォーマットでは、抗体または抗体断片をウェスタンブロット法または免疫蛍光法などの方法に用いて、発現タンパク質を検出することができる。このような使用では、抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定化することが一般に好ましい。適切な固相支持体または担体としては、抗原または抗体を結合することができる任意の支持体が挙げられる。周知の支持体またはキャリアとしては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびにマグネタイトなどが挙げられる。
【0095】
当業者であれば、抗体または抗原を結合させるためのその他の多くの適切な担体を理解しており、そのような支持体を本発明での使用に適合させることができるであろう。例えば、細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ニトロセルロースなどの固相支持体上へ固定化することができる。次にこの支持体を適切なバッファーで洗浄し、続いて検出可能に標識された抗体で処理することができる。次に、この固相支持体をバッファーで再度洗浄し、未結合の抗体を除去することができる。次に、固体支持体上に結合した標識の量を従来の手段で検出することができる。
【0096】
ある例示的実施形態では、診断アッセイが提供される。生体サンプル中での、身体状態、癌に関連する疾患および/または障害、感染性因子、および/または別の疾患の有無を検出するための例示的な方法としては、生体サンプルを試験対象から得ること、および該生体サンプルを、癌に関連する疾患および/または障害、感染性因子、および/または別の疾患もしくは状態の1つまたは複数のマーカー、例えば、マーカー核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)、該マーカー核酸でコードされたマーカーペプチド(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)またはマーカー脂質を検出することができる化合物または薬剤と接触させてマーカー核酸または該核酸でコードされたマーカーペプチドの存在を生体サンプル中で検出することが挙げられる。ある実施形態では、マーカーmRNAまたはゲノムDNAを検出するための薬剤は、マーカーmRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイズすることができる標識核酸プローブである。該核酸プローブは、例えば、完全長マーカー核酸、またはその一部分であってもよい。本発明の診断アッセイに用いられるその他の適切なプローブは、本明細書に記載する。
【0097】
マーカーペプチドを検出するための薬剤は、検出可能な標識を有する抗体など、マーカーペプチドと結合することができる抗体であってもよい。抗体は、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。インタクトな抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体へカップリング(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブまたは抗体の直接の標識化、および直接標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を包含することを意図している。間接的な標識化の例としては、蛍光標識された二次抗体を用いて一次抗体を検出すること、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるよう、ビオチンによりDNAプローブを末端標識化することが含まれる。
【0098】
本明細書における用語「生体サンプル」は、対象から単離された組織、細胞(例えば、貪食細胞、非貪食細胞、2n細胞、および>2n細胞など)、および生体体液(例えば、全血およびWBCなど)、ならびに対象内に存在する組織、細胞(例えば、貪食細胞、非貪食細胞、2n細胞、および>2n細胞など)、および体液(例えば、尿、全血、およびWBCなど)を含むことを意図している。すなわち、本発明の検出方法を用いて、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを、インビトロおよびインビボにて検出することができる。ある実施形態では、生体サンプルは、試験対象からのタンパク質、ポリペプチド、脂質、および/またはオリゴ糖を含む。あるいは、生体サンプルは、試験対象からのmRNA分子、および/または試験対象からのゲノムDNA分子を含んでいてよい。ある実施形態では、生体サンプルは、従来の手段によって対象から単離された血清サンプル、唾液サンプル、または生検サンプルである。
【0099】
別の実施形態では、この方法には、コントロール対象からコントロール生体サンプル(例えば、非貪食細胞または2n細胞)を得ること、該コントロールサンプル(例えば、非貪食細胞または2n細胞)を、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを検出することができる化合物または薬剤と接触させること、ならびにコントロールサンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在を試験サンプル(例えば、貪食細胞または>2n細胞)中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在と比較することがさらに含まれる。あるいは、試験サンプル(例えば、貪食細胞または>2n細胞)中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、およびゲノムDNAなどの存在を、データーベースまたはチャートの情報と比較して、検出または診断を行うこともできる。
【0100】
本発明は、生体サンプル中の癌および/または感染性因子と関連する1つまたは複数のマーカーの存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、生体サンプル中のマーカーポリペプチド、タンパク質、脂質、オリゴ糖、mRNA、マイクロRNA、およびゲノムDNAなどを検出することができる標識された化合物または薬剤、サンプル中のマーカーの量を測定する手段、およびサンプル中のマーカーの量を標準(例えば、非貪食細胞または2n細胞)と比較する手段を含んでいてもよい。化合物または薬剤は、適切な容器内に収容されていてもよい。キットは、該キットを用いてマーカーペプチドまたは核酸を検出するための説明書をさらに含んでいてもよい。
【0101】
ある例示的実施形態では、予後アッセイが提供される。本明細書に記載の診断方法をさらに用いて、本明細書に記載の1つまたは複数のマーカーの上方制御(または下方制御)された発現と関連する、状態、または癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害を発症するリスク、または本明細書に記載の別の障害を有する対象を同定することができる。例えば、上述の診断アッセイまたは後述のアッセイなど、本明細書に記載のアッセイを用いて、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、または本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を有するか、または発症するリスクを有する対象を同定することができる。
【0102】
本明細書に記載の予後アッセイを用いることにより、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、またはその他の薬物候補)を対象に投与して、本明細書に記載の1つまたは複数のマーカーと関連する、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または、本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を治療することができるかどうかを判定することができる。例えば、そのような方法を用いて、癌と関連する1つまたは複数の症状を治療、寛解、または低減するための薬剤で対象を効果的に治療することができるかどうかを判定することができる。したがって、本発明は、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害の薬剤で対象を効果的に治療することができるどうかを判定するための方法を提供する。
【0103】
さらに、本発明の方法を用いて、マーカー遺伝子中の遺伝子変異を検出し、それによって変異遺伝子を有する対象が、癌および/または感染性因子と関連する疾患および/または障害、および/または癌などのマーカータンパク質活性または核酸発現の誤制御を特徴とする本明細書に記載の1つまたは複数のその他の障害を発症するリスクを有するかどうかを判定することもできる。ある実施形態では、前記方法には、対象からの細胞(例えば、血液細胞などの体液細胞)のサンプルにおいて、マーカーペプチドをコードする遺伝子および/またはマーカー遺伝子の完全性に影響を与える変異を特徴とする遺伝子変異の有無を検出することが含まれる。例えば、そのような遺伝子変異は、1)1つまたは複数のマーカー遺伝子からの1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、2)1つまたは複数のマーカー遺伝子への1つまたは複数のヌクレオチドの付加、3)1つまたは複数のマーカー遺伝子の1つまたは複数のヌクレオチドの置換、4)1つまたは複数のマーカー遺伝子の染色体再構築、5)1つまたは複数のマーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写のレベルの変異、6)ゲノムDNAのメチル化パターンの異常修飾など、1つまたは複数のマーカー遺伝子の異常修飾、7)1つまたは複数のマーカー遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在、8)非野生型レベルの1つまたは複数のマーカータンパク質、9)1つまたは複数のマーカー遺伝子の対立遺伝子欠失、および10)1つまたは複数のマーカータンパク質の不適切な翻訳後修飾の少なくとも1つの存在を確認することによって検出することができる。本明細書に記載のように、1つまたは複数のマーカー遺伝子の変異の検出に用いることができる当技術分野で周知のアッセイが数多く存在する。
【0104】
ある実施形態では、変異の検出としては、リアルタイムPCR、COLD−PCR、アンカーPCR、反復PCR(recursive PCR)、もしくはRACE PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第5,854,033号を参照)において、あるいは、連結連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al. (1988) Science 241 :1077、Prodromou and Pearl (1992) Protein Eng. 5:827、およびNakazawa et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:360を参照)において、プローブ/プライマーを使用することが挙げられる。後者は、マーカー遺伝子における点変異の検出に特に有用である場合がある(Abravaya et al. (1995) Nucleic Acids Res. 23:675を参照)。この方法は、対象から細胞のサンプルを採取する工程と、該サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNA、またはその両方)を単離する工程と、該核酸サンプルをハイブリダイゼーションおよび(存在する場合)マーカー遺伝子の増幅が起こる条件下にてマーカー遺伝子と特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマーと接触させる工程と、増幅産物の有無を検出する工程または該増幅産物のサイズを検出してその長さをコントロールサンプルと比較する工程とを含んでいてもよい。PCRおよび/またはLCRは、本明細書に記載の変異を検出するために用いられる任意の技術と組み合わせて、予備増幅工程として用いることが望ましい場合があることが予想される。
【0105】
別の増幅法としては、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、転写増幅システム(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、またはその他の任意の核酸増幅法が挙げられ、続いて、当業者に周知の技術を用いて増幅分子が検出される。これらの検出スキームは、核酸分子の検出において、このような分子の存在数が非常に少ない場合に特に有用である。
【0106】
別の実施形態では、サンプル細胞からの1つまたは複数のマーカー遺伝子における変異を、制限酵素切断パターンの変化によって同定することができる。例えば、サンプルDNAおよびコントロールDNAを単離し、任意に増幅し、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼで消化し、断片長さのサイズをゲル電気泳動で測定して比較する。サンプルDNAおよびコントロールDNAの断片長さのサイズの違いが、サンプルDNAにおける変異を示す。さらに、配列特異的リボザイムを使用することで(例えば、米国特許第5,498,531号)、リボザイム切断部位の発生または喪失によって特定の変異の存在をスコア化することができる。
【0107】
他の実施形態では、本明細書に記載のマーカーの1つまたは複数における遺伝子変異は、DNAまたはRNAなどのサンプル核酸およびコントロール核酸を、何百または何千というオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイとハイブリダイズすることによって同定することができる(Cronin et al. (1996) Human Mutation 7: 244、Kozalet al. (1996) Nature Medicine 2:753)。例えば、マーカー核酸における遺伝子変異は、Cronin, M.T. et al.の上記文献に記載のように、光形成されたDNAプローブ(light−generated DNA probes)を含む二次元アレイで同定することができる。簡潔に述べると、プローブの第一のハイブリダイゼーションアレイを用いて、サンプルおよびコントロール中のDNAの長い範囲をスキャンし、一連のオーバーラッププローブの直線アレイを作製することによって配列間の塩基の変化を同定する。この工程により、点変異の同定が可能となる。第二のハイブリダイゼーションアレイがこの工程に続き、これにより、検出されたすべての変種または変異に相補的な低分子の特異的プローブアレイを用いて特定の変異の特性決定が可能となる。各々の変異アレイは平行プローブセットから成り、一方は野生型遺伝子に相補的であり、他方は突然変異遺伝子に相補的である。
【0108】
さらに別の実施形態では、当技術分野で周知の種々の配列決定反応の任意の方法を用いて、マーカー遺伝子の配列決定を直接行い、サンプルマーカー遺伝子の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することにより変異を検出することができる。配列決定反応の例には、Maxam and Gilbert((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560)、またはSanger((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463)によって開発された技術に基づく反応が含まれる。また、診断アッセイを実施する際に、質量分析による配列決定(例えば、PCT国際公開公報WO94/16101、Cohen et al. (1996) Adv. Chromatogr. 36:127-162、およびGriffin et al. (1993) Appl. Biochem. Biotechnol. 38:147を参照)など、種々の自動配列決定手順のいずれをも用いることができることも意図される((1995) Biotechniques 19:448)。
【0109】
マーカー遺伝子の変異を検出するためのその他の方法としては、切断剤からの保護を用いてRNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖のミスマッチ塩基を検出する方法が挙げられる(Myers et al. (1985) Science 230:1242)。一般的に、当技術分野の「ミスマッチ切断」技術は、まず、野生型マーカー配列を含む(標識された)RNAまたはDNAを、組織サンプルから得た変異の可能性のあるRNAまたはDNAとハイブリダイズさせることによって形成されたヘテロ二重鎖を準備する。この二本鎖二重鎖を、例えば、コントロール鎖とサンプル鎖の間の塩基対ミスマッチのために存在することになる、二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。例えば、RNA/DNA二重鎖をRNaseで処理し、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理することにより、ミスマッチ領域を酵素消化することができる。他の実施形態では、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNA二重鎖のいずれかをヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムで、およびピペリジンで処理することができる。ミスマッチ領域の消化後、次に、得られた物質を変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズによって分離し、変異部位を確定する。例えば、Cotton et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397、Saleeba et al. (1992) Methods Enzymol. 217:286を参照のこと。ある実施形態では、コントロールDNAまたはRNAを検出のために標識してよい。
【0110】
さらに別の実施形態では、ミスマッチ切断反応は、細胞のサンプルから得られたマーカーcDNAの点変異の検出およびマッピングを行うための限定された系において、二本鎖DNAのミスマッチ塩基対を認識する1つまたは複数のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を利用する。例えば、大腸菌のmutY酵素は、G/AミスマッチにおいてAを切断し、HeLa細胞からのチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチにおいてTを切断する(Hsu et al. (1994) Carcinogenesis 15:1657)。例示的な実施形態では、例えば、野生型マーカー配列などのマーカー配列に基づくプローブを、試験細胞からのcDNAまたはその他のDNA産物とハイブリダイズさせる。該二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、切断産物が存在する場合は、これを電気泳動プロトコルなどで検出することができる。例えば、米国特許第5,459,039号を参照のこと。
【0111】
他の実施形態では、電気泳動移動度の変化を用いて、マーカー遺伝子の変異が同定される。例えば、一本鎖高次構造多型分析法(SSCP)を用いて、変異型核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度の違いを検出することができる(Orita et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766。さらに、Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125、およびHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73も参照のこと)。サンプル核酸およびコントロールマーカー核酸の一本鎖DNA断片を変性し、復元させる。一本鎖核酸の二次構造は配列に応じて異なり、得られた電気泳動移動度の変化により、単一塩基の変化でさえ検出することができる。このDNA断片は標識してもよく、標識したプローブで検出してもよい。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化に対してより高感度である(DNAよりも)RNAを用いることで向上させることができる。ある実施形態では、本方法は、ヘテロ二重鎖解析を利用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖へテロ二重鎖分子を分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet. 7:5)。
【0112】
さらに別の実施形態では、変性剤の濃度勾配を含むポリアクリルアミドゲル中での変異型断片または野生型断片の移動を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)(Myers et al. (1985) Nature 313:495)を用いて解析する。解析法としてDGGEを用いる場合、例えば、およそ40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプをPCRによって付加することにより、完全に変性されないことを確実にするためにDNAが修飾される。さらなる実施形態では、変性剤濃度勾配の代わりに温度勾配を用いて、コントロールDNAおよびサンプルDNAの移動度の違いが同定される(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265:12753)。
【0113】
点変異を検出するためのその他の技術の例には、これらに限定されないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が含まれる。例えば、既知の変異を中央に配置したオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、次に、完全にマッチする場合にのみハイブリダイゼーションが可能である条件下にて標的DNAとハイブリダイズしてもよい(Saiki et al. (1986) Nature 324:163、Saiki et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。このようなアレル特異的オリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドがハイブリダイズメンブランと結合して標識した標的DNAとハイブリダイズする場合に、PCRで増幅した標的DNAまたは多数の異なった変異とハイブリダイズする。
【0114】
あるいは、選択的PCR増幅に依存したアレル特異的増幅技術を、本発明と組み合わせて用いてもよい。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中央部(それによって増幅が差次的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbs et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:2437)、または、適切な条件下にてミスマッチがポリメラーゼ伸長を阻止または低減することができる、一方のプライマーの3’最末端に(Prossner (1993) Tibtech 11 :238)、対象となる変異を有していてもよい。さらに、変異領域中に新規な制限部位を導入して切断に基づく検出を行うことが望ましい場合もある(Gasparini et al. (1992) Mol. Cell Probes 6:1)。ある実施形態では、増幅用Taqリガーゼを用いて増幅を実施することができることも想定される(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189)。そのような場合、5’配列の3’末端にて完全一致する場合にのみライゲーションが起こり、それにより、増幅の有無を調べることで特定部位における既知の変異の存在を検出することが可能となる。
【0115】
記載される本発明の実施形態は、単に本発明の原理のいくつかの応用を説明する例にすぎないことを理解されたい。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの変更を行うことが可能である。本出願全体にわたって引用されたすべての参考文献、特許、および特許出願公開の内容は、その全体が全ての目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
以下の実施例は、本発明を代表するものとして示すものである。これらの実施形態およびその他の対応する実施形態が、本発明の開示、図面、および添付の請求項に照らして明らかであることから、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0117】
実施例1
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法I
1.図2および図3を参照して、プレートをアビジンでコーティングする。
2.非貪食血液細胞(例えば、T細胞)に対するビオチン化抗体をウェルに添加し、室温で30分間インキュベートし、ウェルを洗浄する。
3.磁気ビーズを添加する。
4.WBC血液サンプルを添加する。
5.37℃でインキュベートする(30分〜1時間)
6.貪食細胞によるビーズの貪食、およびアビジン−ビオチン抗体の非貪食細胞への結合の後、プレートを磁石上に置き、洗浄する(磁気ビーズを内部へ取り込んだ貪食細胞および抗体と結合した非貪食細胞が残留し、その他すべての細胞は洗い流される)。
7.磁石を取り除き、貪食細胞を回収する。
8.貪食細胞(例えば、磁気ビーズと結合した細胞)および非貪食細胞(例えば、抗非貪食細胞ビオチン化抗体−アビジン結合を介してウェルの底部に結合した細胞)からRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、全遺伝子アレイおよび/または癌遺伝子アレイ)を区別する。
9.各細胞サンプルからDNAを単離し、貪食細胞に選択的に存在する(すなわち、非貪食細胞には存在しない)腫瘍DNAシグネチャーを同定し、プロファイル(例えば、貪食細胞および非貪食細胞で得られた、全遺伝子アレイ、DNA変異、および/またはSNP)を比較する。
10.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
11.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0118】
実施例2
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法II
1.図2および図3を参照して、血液サンプル中のRBCを溶解する。
2.スライドグラス上でWBCをサイトスピンにかける。
3.アセトン/メタノール中で細胞を固定する(−20℃、5分間)。
4.ヘマトキシリン・エオシン染料、および抗T細胞抗体で染色する。
5.レーザーキャプチャー顕微鏡(LCM)を用いて、T細胞(非貪食性)およびマクロファージ(貪食性)を単離する。
6.貪食細胞および非貪食細胞からRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、全遺伝子アレイおよび/または癌遺伝子アレイ)を区別する。
7.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイル(例えば、全遺伝子アレイ、DNA変異、および/またはSNP)を比較する。
8.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
9.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0119】
実施例3
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法III
1.図2および図3を参照して、血液サンプル中のRBCを溶解する。
2.磁気抗体結合ビーズを用いて、全血から非貪食細胞(例えば、T細胞)および貪食細胞(例えば、好中球および/またはマクロファージおよび/または単球)を単離する。
3.各細胞サンプルからRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0120】
実施例4
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法IV
1.図2および図3を参照して、特定の細胞サブ集団(例えば、好中球、マクロファージ、単球、およびT細胞など)に対して特異的な蛍光抗体でWBCを染色する。
2.(例えば、FACSにより)細胞を選別する。
3.各細胞サンプルからRNAを単離し、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.各細胞サンプルからDNAを単離し、DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.各細胞サンプルからタンパク質を単離し、ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.各細胞サンプルから脂質を単離し、例えばHPLCを用いて、その量および質を比較する。
【0121】
実施例5
非貪食細胞からの貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法V
1.図5および図6を参照して、WBCを各細胞サブ集団(例えば、好中球、マクロファージ、単球、およびT細胞)に対する蛍光抗体で染色し、次にDNA染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)で染色する。
2.細胞を、T細胞、好中球(2n)、好中球(>2n)、マクロファージ(2n)、マクロファージ(>2n)、単球(2n)、および単球(>2n)へと選別する(FACS)。
3.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からRNAを単離する。次に、cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて貪食細胞および非貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からDNAを単離する。DNAアレイ解析を行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。
5.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)からタンパク質を単離する。ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、貪食細胞および非貪食細胞で得られたプロファイルを比較する。あるいは、質量分析を用いて、タンパク質を同定する。
6.T細胞、好中球(>2n)、マクロファージ(>2n)、および単球(>2n)から脂質を単離する。例えばHPLCを用いて、脂質の量および質を比較する。
【0122】
実施例6
貪食細胞の分離および発現プロファイルの解析のための代表的方法VI
1.図5および図6を参照して、WBCを1つまたは複数の貪食細胞(例えば、好中球、マクロファージ、または単球)に対して特異的である蛍光抗体で染色し、次にDNA結合染料(例えば、ヨウ化プロピジウム)で染色する。
2.細胞を、2n貪食細胞と>2n貪食細胞に選別する(FACS)。
3.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からRNAを単離する。cDNA、cRNAを調製し、これらを用いて2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞の遺伝子プロファイル(例えば、癌遺伝子アレイ)を区別する。
4.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からDNAを単離する。DNAアレイ解析を行い、2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞から得られたプロファイルを比較する。
5.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々からタンパク質を単離する。ヒト腫瘍で過剰発現される既知のタンパク質(例えば、前立腺癌におけるPSAおよびPSMA、結腸癌におけるCEA、ならびに卵巣癌におけるCA125)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行い、2n−貪食細胞および>2n−貪食細胞から得られたプロファイルを比較する。
6.2n貪食細胞および>2n貪食細胞の各々から脂質を単離する。例えばHPLCを用いて、脂質の量および質を比較する。
【0123】
実施例7
腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞における腫瘍特異的遺伝子シグネチャーの検出
本発明の実施形態によると、血液またはその他の体液中の「正常な非特異的ノイズ」シグネチャーと「腫瘍特異的」シグネチャーおよび/または「疾患特異的」シグネチャーとを区別する方法が提供される。腫瘍を有するマウスの血中単球/マクロファージおよび好中球の遺伝子発現プロファイルを、同じドナーマウスの非貪食T細胞の遺伝子発現プロファイルと比較し、同様の腫瘍を有するマウスおよび腫瘍を有しない動物の非貪食細胞中では発現されなかったか、または著しく異なって発現した、該貪食細胞内の腫瘍特異的シグネチャーを同定した。
【0124】
ヒト前立腺LNCaP癌細胞
胸腺欠損ヌードマウス(n=5)に、ヒト前立腺LNCaP癌細胞を皮下(s.c.)注射した。27日後(腫瘍サイズ=約0.4cm)、このマウスから心臓穿刺によりEDTA含有チューブへ採血(約1mL/マウス)を行った後、これを遠心分離した。バフィーコートを単離して洗浄し、好中球、マクロファージ、およびT細胞を、それぞれ、抗マウス好中球−免疫磁気ダイナビーズ(DynaBeads)、抗マウスマクロファージ−免疫磁気ダイナビーズ、および抗マウスT細胞−免疫磁気ダイナビーズを用いて分離した。各細胞サンプルからRNAを単離した(Triazol(登録商標))。RNAの品質は図3に示すようにして測定した。RNAの収量を図20に示す。cDNAおよびビオチン化cRNA(cRNA−B)を調製した。最後に、cRNA−Bサンプルを、癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、SuperArray Bioscience)とインキュベートした。ハイブリダイゼーションの後、膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0125】
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍、LLC1癌細胞、B16F10マウスメラノーマ細胞
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍を皮下注射した胸腺欠損ヌードマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.3cm)、マウス・ルイス肺癌腫細胞LLC1を皮下注射したC57Blマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.6cm)、および106個のB16F10マウスメラノーマ細胞を22日前に静脈内注射したC57Blマウス(n=5)から単離された細胞を用いて同様の実験を行った(腫瘍細胞がマウス由来の場合、cRNA−Bサンプルは、Oligo GEArray(登録商標)Mouse Cancer PathwayFinder Microarray、OMM−033、SuperArray Bioscienceとハイブリダイズした)。RNAは、指数関数的に成長するLS174T、LLC1、B16F10、およびLNCaP培養細胞から、ならびに腫瘍を有しないC57Blおよびヌードマウスから単離した好中球、マクロファージ、およびT細胞から単離し、これらの癌関連遺伝子プロファイルを決定した。
【0126】
これらの実験から得られたデータおよび図9〜17に示すデータによると、ヒト前立腺腫瘍細胞または結腸腫瘍細胞を注射したマウスから得られた好中球およびマクロファージ、およびマウス肺癌またはメラノーマを有するマウスから得られた好中球およびマクロファージは、種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有しており、該シグネチャーは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られる。これらの癌関連遺伝子は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた貪食好中球およびマクロファージによって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0127】
例えば、LNCaPヒト前立腺癌細胞を有するヌードマウスの血液から単離された好中球は、LNCaP細胞でも発現される、いくつかのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図9Aおよび図9Bのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図9Cおよび図9Dのプロファイルを参照)。同様に、LLC1マウス肺癌細胞を有するマウスの血液から単離された好中球は、LLC1細胞で発現される、いくつかのマウス腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Mouse Cancer PathwayFinder Microarray)(図13Aおよび図13Bのアレイのプロファイルを比較)。
【0128】
これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図13Cおよび図13Dに示すプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、図19および図20に示すように、貪食細胞により選択的に過剰発現された遺伝子を同定した。図21および図22に、腫瘍を有するマウスの貪食性WBCによって獲得され、特異的に提示される遺伝子シグネチャーを列挙する。図21に示すように、多くの発癌遺伝子(赤色で示した遺伝子、例えばERBB2およびJun)が検出され、多くの場合、マクロファージと好中球で同時に発現された。
【0129】
C57BIマウス(n=5)に、1E6マウス・ルイス肺癌細胞(LLCI)を皮下注射した。20日後、マウスに麻酔を施し、心臓穿刺によりEDTA含有チューブへ採血を行った(約1mL/マウス)。室温、2000rpmにて5分間の遠心分離を行った後、バフィーコートをチューブへ移し、PBSで洗浄した。
【0130】
抗マウスマクロファージ/単球ラットIgG抗体(単球/マクロファージマーカー F4/80−IgG2b、AbD Serotec、ローリー、ノースカロライナ州)を、抗ラットIgG抗体磁気ビーズ(DYNABEAD(登録商標)ヒツジ抗ラットIgG、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州)と共にインキュベートした(室温にて30分間)。次に、抗マクロファージ/単球ビーズをPBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0131】
抗マウス好中球ラットIgG(好中球マーカー NIMP−R14−IgG2a、Santa Cruz Biotechnology、サンタクルーズ、カリフォルニア州)を、抗ラットIgG抗体磁気ビーズ(DYNABEAD(登録商標)ヒツジ抗ラットIgG、INVITROGEN(商標))と共にインキュベートし(室温にて30分間)、PBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0132】
DYNABEAD(登録商標)マウスPan T(Thy1.2)ビーズ(INVITROGEN(商標))もPBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0133】
マウス血中マクロファージおよび単球を、上記で調製したWBC懸濁液から、抗マクロファージ/単球ビーズを用いて単離した。基本的には、ビーズをWBCサンプルへ添加し、これをインキュベート(4℃、30分間)した後、磁石を用いてマクロファージ結合ビーズを単離し、PBSで3回洗浄し、氷上で保存した。
【0134】
次に、マウスT細胞を残ったWBCから単離した。簡潔に述べると、抗マウスT細胞ビーズをWBC懸濁液に添加し、このサンプルをインキュベートし(4℃、30分間)、磁石を用いてT細胞結合ビーズを単離し、PBSで洗浄して氷上で保存した。
【0135】
最後に、マウス好中球を残ったWBCサンプルから単離した。抗マウス好中球磁気ビーズを細胞に添加し、このサンプルをインキュベートした(4℃、30分間)。磁石を用いて好中球結合ビーズを単離し、PBSで洗浄し、氷上で保存した。
【0136】
次に、(TRIZOL(登録商標)、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州、を用いて)各サンプルからRNAを単離した。図7に示すように、RNAの品質を測定した。RNAの収量を図8に示す。次に、(ビオチン化)cDNAを調製し、癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(OLIGO GEARRAY(登録商標)、Human Cancer PathwayFinder Microarray OMM−033、SuperArray Bioscience、フレデリック、メリーランド州)とインキュベートした(60℃、一晩)。ハイブリダイゼーションの後、この膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0137】
ヒトLS175T結腸腺癌腫瘍、LLC1癌腫、およびB16F10マウスメラノーマ細胞
ヒトLS174T結腸腺癌腫瘍を皮下注射した胸腺欠損ヌードマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.3cm)、マウス・ルイス肺癌細胞LLC1を皮下注射したC57/Blマウス(n=5)(腫瘍サイズ=約0.6cm)、および106個のB16F10マウスメラノーマ細胞を22日前に静脈内注射したC57Blマウス(n=5)から単離された細胞を用いて同様の実験を行った(腫瘍細胞がマウス由来の場合、cRNA−Bサンプルを、Oligo GEARRAY(登録商標)Mouse Cancer PathwayFinder Microarray、OMM−033、SuperArray Bioscience、とハイブリダイズした(腫瘍がヒト由来の場合、Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、を用いた)。RNAは、指数関数的に成長するLS174T、LLC1、B16F10、およびLNCaP培養細胞から、ならびに腫瘍を有しないC57Blおよびヌードマウスから単離した好中球、マクロファージ、およびT細胞からも単離し、これらの癌関連遺伝子プロファイルを決定した。
【0138】
これらの実験から得られ、図9A〜9D、図10A〜10D、図11A〜11D、図12A〜12D、図13A〜13D、図14A〜14D、図15A〜15D、図16A〜16Dに示すデータによると、(ヒト前立腺腫瘍細胞または結腸腫瘍細胞を注射したマウスから、およびマウス肺癌またはメラノーマを有するマウスから得られた)好中球およびマクロファージは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られた種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有していた(図21)。これらの癌関連遺伝子は、(i)腫瘍を有するマウスから単離された非貪食T細胞、および(ii)腫瘍を有しないマウスから得られた貪食好中球およびマクロファージによって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0139】
例えば、LNCaPヒト前立腺癌細胞を有するヌードマウスの血液から単離された好中球は、LNCaP細胞でも発現された7つのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図9Aおよび図9Bのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、腫瘍を有するマウスから得られたT細胞または正常マウスから単離された好中球中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(図9Cおよび図9Dのプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、図19および図20に示すように、貪食細胞によって選択的に過剰発現された遺伝子を同定した。図21および図22に、腫瘍を有するマウスの貪食性WBCによって獲得され、特異的に提示された遺伝子シグネチャーを列挙する。図21に示すように、多くの発癌遺伝子(例えば、ERBB2およびJun)が検出され、多くの場合、マクロファージおよび好中球にて同時に発現された(緑色で協調した遺伝子で示す)。
【0140】
実施例8
癌患者から得られた貪食細胞における腫瘍特異的遺伝子シグネチャーの検出
本発明のある実施形態によると、癌患者からの血中単球/マクロファージおよび好中球の遺伝子発現プロファイルを、同じドナー個人からの非貪食T細胞の遺伝子発現プロファイルと比較し、非貪食細胞中では発現されなかったか、または著しく異なって発現した、該貪食細胞内の腫瘍特異的シグネチャーを同定した。
【0141】
頭頸部腫瘍を有する患者
頸部扁平上皮癌を有することが分かっており、手術を受ける予定である患者から、静脈血10ミリリットルを(EDTA含有チューブへ)採取した。室温、2000rpmにて5分間の遠心分離を行った後、バフィーコートをチューブへ移し、PBSで洗浄した。
【0142】
この細胞を、T細胞−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ(登録商標)、好中球−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ、およびマクロファージ/単球−ラット抗ヒト免疫磁気ダイナビーズ(INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いて分離した。基本的には、ビーズをWBCサンプルへ連続して添加し、個別に4℃にて30分間インキュベートした後、磁石を用いてT細胞−結合ビーズ、好中球−結合ビーズ、およびマクロファージ/単球−結合ビーズを単離し、PBSで3回洗浄した。
【0143】
次に、(TRIZOL(登録商標)、INVITROGEN(商標)、カールスバッド、カリフォルニア州、を用いて)各サンプルからRNAを単離した。RNAの量および品質を測定し、cDNAおよびビオチン化cRNA(cRNA−B)を調製した。最後に、cRNA−Bサンプルを癌遺伝子ヒトマイクロアレイ(Oligo GEArray(登録商標)Human Cancer PathwayFinder Microarray、OHS−033、SuperArray Bioscience、フレデリック、メリーランド州)とインキュベートした。ハイブリダイゼーションの後、膜を洗浄し、アビジン−アルカリホスファターゼで染色し、化学発光(X線フィルム)を用いて遺伝子を検出した。
【0144】
これらの実験から得られたデータによると、(頭頸部癌患者から得られた)好中球およびマクロファージは、これらに対応する腫瘍細胞でも見られた種々の癌関連遺伝子シグネチャーを有していた。これらの癌関連遺伝子は、非貪食T細胞によって発現されなかったか、またはその発現は最小限であった。
【0145】
例えば、このような患者の1人の血液から単離された好中球は、同じ患者から得られた腫瘍生検でも発現された4つのヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図17Bおよび図17Cのアレイのプロファイルを比較)。これらの遺伝子は、正常皮膚生検および同じ血液サンプルから単離されたT細胞中では発現されなかったか、またはその発現は最小限であった(それぞれ、図17Aおよび図17Dのプロファイルを参照)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、貪食細胞によって選択的に(>2倍)過剰発現された以下の遺伝子、E26ウイルス癌遺伝子相同体(ETS2)、HIV−1 Tat相互作用タンパク質(HTAT1P2)、IL8(好中球活性化および走化性)、Jun発癌遺伝子(JUN)、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)を同定した。
【0146】
卵巣癌患者
卵巣癌を有する患者から単離された細胞を用いて同様の実験を行った。これらの実験から得られたデータによると、(罹患女性から得られた)好中球およびマクロファージは、非貪食T細胞によっては発現されなかったか、またはその発現が最小限であった、多くの癌関連遺伝子を発現した。
【0147】
例えば、卵巣癌患者の血液から単離されたマクロファージは、同じ血液サンプルから単離されたT細胞中では発現されなかったか、またはその発現が最小限であった、23個のヒト腫瘍遺伝子シグネチャーを発現した(Human Cancer PathwayFinder Microarray)(図18Aおよび図18Bのプロファイルを比較)。最後に、アレイをスキャンし、企業から提供されたソフトウェアを用いて各遺伝子の強度を定量化し、各細胞型の各癌関連遺伝子の強度を測定した。マクロファージ内で特異的に上方制御/過剰発現された23個の癌関連遺伝子のリスト、およびマクロファージのT細胞に対する強度比を図22に示す。合計で5つの発癌遺伝子が検出されたことに留意されたい(図21にて赤色で示す)。
【0148】
実施例9
ヒト前立腺LNCaP腫瘍およびヒト結腸LS174T腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞における腫瘍特異的タンパク質シグネチャーの検出
タンパク質精製キット(Norgen,Incorporated、製品番号23500)を用いて、マウスWBC、T細胞、およびマクロファージからタンパク質を単離し、精製した。このアッセイは非常に簡便で所要時間が短く(およそ30分間)、単離されたタンパク質は、高品質で優れた収率であり(血液4mLあたり117.6±10.60μg、n=5)、図23に示すSDS−PAGE解析およびウェスタンブロットなど多くの下流用途に用いることができた。
【0149】
タンパク質サンプルは、これらの研究のために選択されたLNCaP腫瘍およびLS174T腫瘍を有するマウスから得られた貪食細胞(単球/マクロファージ)および非貪食細胞(T−リンパ球)より単離した。前者の細胞株はPSAを発現し(Denmeade et al. (2001) Prostate 48:1、Lin et al. (2001) J. Urol. 166:1943)、後者は高分子量ムチンである腫瘍特異的糖タンパク質(TAG−72)を提示する(Colcheret al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:3199、Colcher et al. (1984) Cancer Res. 44:5744、Kassis et al. (1996) J. Nucl. Med. 37:343)からである。精製したタンパク質サンプル16μgを用いてウェスタンブロット解析を行った。基本的には、各サンプルを2容量分のSDSローディングバッファーと混合し、トリス−グリシン−SDSバッファー(pH8.4)中の未染色のプレシジョンplusプロテインスタンダード(precision plus protein standards)(Biorad)と共に、200ボルトにて10%SDS−PAGEで泳動した。ミニトランスブロット(Mini Trans−Blot)(Biorad)装置、ならびに25mMトリス、pH8.4、192mMグリシン、および20%メタノールを含有する転写バッファーを用いて、タンパク質をニトロセルロース膜へ転写した(4℃にて一晩)。膜を5%脱脂粉乳でブロッキングし(室温(RT)にて60分間)、B72.3、ヒトTAG−72に対するマウスモノクローナル抗体、またはヒトPSAに対するマウスモノクローナル抗体ER−PR8のいずれかとインキュベートした(RTにて1時間)。ブロットを洗浄し、次に、マウスIgGに特異的な二次抗体であるImmun−Starヤギ抗マウス−HRPコンジュゲート(Biorad)とインキュベートし、ルミノール溶液と過酸化物バッファー(Biorad)との1:1混合物でインキュベートして(RTにて5分間)発色させ、続いてオートラジオグラフィーを行った。
【0150】
図24に示すように、このデータより、LNCaP腫瘍を有するマウスからの貪食細胞がPSAに対して陽性であったが、一方、このタンパク質は、同じ動物からの非貪食T細胞において検出することができなかったことが明らかである。同様に、TAG−72は、LS174T腫瘍を有するマウスから得られた単球/マクロファージによって発現され、同じ動物からのT細胞にはまったく存在しなかった。これらの知見から、貪食細胞による腫瘍特異的タンパク質シグネチャーの「獲得」および発現が実証される。
【0151】
これらのデータは、癌を有する動物、ならびにマウスの血液から得られた貪食細胞および非貪食細胞に特異的なものであるが、記載した方法は、ヒト、ならびに1つまたは複数のその他の障害および/または疾患の診断および/または検出にも有用であり、その他の体液から得られた貪食細胞および非貪食細胞でも有用である。
【0152】
実施例10
プロファイリング実験
血中貪食細胞の単離
患者から血液のサンプルを採取する。血液(約5mL)を、50μLの0.5M EDTAを含有する50mLチューブへ移す(最終EDTA濃度=約4.8mM)。チューブを緩やかにボルテックス攪拌し、25mLのRBC溶解バッファー(Norgen,Incorporated)を添加する。チューブを再度緩やかにボルテックス攪拌し、溶液の色が明赤色に変わるまで室温にてインキュベートし(3〜5分間)、2,000rpmにて3分間遠心分離する。上清を注意深く吸引した後、WBCを40mLのCa/Mgフリー0.1M PBS(2% FBS、2mM EDTA、および20mM グルコース含有)で洗浄し、次に、細胞(106/mL)を、(i)DNA、生存細胞透過性染料ヘキスト33342(4μg/mL、Em=483nm)、(ii)循環単球/マクロファージによって発現されるヒトF4/80抗原を認識する抗ヒト単球/マクロファージモノクローナル抗体(Alexa Fluor(登録商標)647−コンジュゲート、Em=668nm)、および(iii)ヒト循環好中球を認識する抗ヒト好中球モノクローナル抗体(RPE−コンジュゲート、Em=578nm)、を含む細胞染色溶液とインキュベートする(30分間、4℃、暗所)。次に、細胞を洗浄し、好中球(Nn=2)、好中球(Nn>2)、単球/マクロファージ(M/Mn=2)、および単球/マクロファージ(M/Mn>2)に選別する(BD FACSAria)。
【0153】
遺伝子プロファイリング
ヒト全ゲノム遺伝子プロファイリングを実施する。ヒト腫瘍細胞、または好中球(Nn=2、Nn>2)および単球/マクロファージ(M/Mn=2、M/Mn>2)から得られたRNAサンプルに対して、GeneChip(登録商標)ヒトゲノムU133プラス2.0アレイ(Affymetrix,Incorporated)を用いる。このアレイでは、38,500の十分に特徴付けられたヒト遺伝子を含む、47,000を超す転写物およびバリアントの発現レベルが分析される。一般的には、抽出されたRNAを用い、上述のアレイを用いてヒト遺伝子の発現プロファイルを決定する。アレイの再現性を確実にするために、各サンプルを3個の反復サンプルでプロファイル化し、繰り返し実験を1回行う。マイクロアレイデータは、以下で記載するように癌誘発関連遺伝子についてフィルタリングし、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて確認する。
【0154】
癌誘発関連遺伝子の上方制御/下方制御
Triazol(Invitrogen,Incorporated)を用いてRNAを単離し、このキットに付属のカートリッジを用いて精製する。RNAの品質および量は、Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies,Incorporated、パロアルト、カリフォルニア州)およびDegradometerソフトウェアバージョン1.41(ワールドワイドウェブ:dnaarrays.org)を用いて評価する。これらの実験結果は、腫瘍の存在により乱された分子経路を見分ける際の手助けとなる。
【0155】
マイクロアレイ実験の解析
得られた大規模/ハイスループットの分子発現データの解析は、(i)DNA含有量が2超である貪食細胞において特異的に発現された遺伝子を同定する能力、(ii)同定された遺伝子をアノテートする能力、および(iii)アノテートされた遺伝子を特定の腫瘍によって特異的に発現される遺伝子へ割り当てる能力に大きく依存する。マイクロアレイデータの統計解析は、例えば、「サンプル解析/比較」メニュー中のこの種の遺伝子リスト構築に容易に対応するdChipパッケージを用いて行うことができる。Affymetrix GeneChipsを用いる場合、1つまたは複数のGeneChipsおよび関連する方法を適用して、マイクロアレイ生データの質を確認する(Gautier et al. (2004) Bioinformatics 20:307)。さらに、種々のバックグラウンド補正および標準化の手順を利用して、(発現値を得るための)プローブセットの標準化および集計のための最適なプロトコルを得る(Huber et al. (2002) Bioinformatics 18 (Suppl. 1):S96、Wu et al. (2004) Journal of the American Statistical Association 99:909、Seo and Hoffman (2006) BioMedCentral Bioinformatics 7:395)。2段階フィルトレーション(two−step filtration)アプローチにおいて、発明者らは、Pn=2の遺伝子プロファイルをPn>2の遺伝子プロファイルと比較して、発現された遺伝子のリストを構築し、次にこれらの遺伝子と各腫瘍細胞株に対して同定された腫瘍特異的遺伝子とを比較する、すなわち図5に示すPn=2遺伝子プロファイルのポストフィルトレーションである。例えば、(i)乳癌患者から血液を採取し、(ii)好中球(n>2およびn=2)を単離して、その遺伝子プロファイルを3つの反復サンプルで測定し、(iii)各同定された遺伝子の(3つのサンプルの)平均およびその対応する標準誤差(SE)を各グループ(Nn>2およびNn=2)に対して算出し、(iv)次に、この2つのグループの遺伝子発現プロファイルを比較し、ウェルチの改良2標本t検定に準じて、2倍以上の対数の絶対変化(absolute ≧2−fold log change)(Nn>2/Nn=2)に基づいて発現遺伝子のリスト(L−1)を同定し、(v)Nn=2の遺伝子発現プロファイルおよび(腫瘍および正常乳房組織生検から得られる)乳癌の遺伝子発現プロファイルを比較し、発現遺伝子のリスト(L−2)を同定し、(vi)L−1およびL−2の遺伝子を比較し(「サンプル解析/比較/比較の統合」、dChip)、共通の遺伝子をフィルタリングすることにより、Nn>2によって獲得/発現された乳癌特異的遺伝子シグネチャーを同定する。
【0156】
タンパク質プロファイリング
各細胞型からの総タンパク質50〜100マイクログラムを変性し、トリス−(2−カルボキシエチル)ホスフィントリプシン(1mM)および0.02%ドデシル硫酸ナトリウムにより、60℃にて1時間還元する。続いてシステインをブロックし、総タンパク質をトリプシンにより、37℃にて12〜16時間消化する。得られたペプチドを、1時間、(113〜119および121にタグを有する)iTRAQで標識する(比較すべき細胞型の数に応じて、4種類または8種類)。標識後、別々にタグ付けされたサンプルを1つにまとめ、強カチオン交換カラム(Applied Biosystems 4.6×100 多孔性)を備えたAgilent 1200シリーズHPLCシステムへ注入する。次に、96個の回収した画分を14個の画分へプールし、各画分を、逆相条件下(LC Packings 15cm×75μm 分析用カラム)にてLC Packings Ultimate HPLCシステムへ注入し、2回目の分画を行う。逆相画分を、LC Packings Probotを用いて標的プレート上に直接スポットし、質量分析(Applied Biosystems 4800 Plus Proteomics Analyzer)によって分析する。データの取得後、ProteinPilotソフトウェアパッケージ(Applied Biosystems MDS Sciex)を用いてスペクトルを処理し、ProteinPilot(商標)ソフトウェアを用いて各細胞型における個々のタンパク質をその相対的発現レベルと共に同定する(癌関連プロテオミックシグネチャーの解析および同定は、図5に概略を示したゲノミックシグネチャーに対するものと同様である)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人における癌細胞の存在を診断する方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、および泡沫細胞の1つまたは複数からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血中非貪食細胞が、T細胞、B細胞、ヌル細胞、および好塩基球の1つまたは複数からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別によって分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、ろ過、勾配遠心、溶出、マイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法によって分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、白血球の集団から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法によって分離される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記個人が、不顕性癌、過去に診断された原発性癌、および転移性癌の1つまたは複数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数のマーカーの存在を、癌治療の有効性と関連付ける工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
癌遺伝子、発癌遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子の1つまたは複数に対応する、DNA、RNA、およびマイクロRNAの1つまたは複数から前記マーカーが選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記マーカーが、癌遺伝子、および発癌遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子の1つまたは複数によってコードされるタンパク質およびポリペプチドの一方または両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
癌を有する個人において、腫瘍特異的シグネチャーを同定するための方法であって、
癌を有する個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記癌を有する個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を前記癌を有する個人における腫瘍特異的シグネチャーと関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項19】
前記2つ以上のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記2つ以上のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNAまたはRNAである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記2つ以上のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、
循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記第二の発現プロファイルと比較して前記第一の発現プロファイルにおけるマーカーの量が増加していることが、循環性腫瘍細胞およびその細胞内断片の一方または両方の存在を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記マーカーが、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNA、RNA、マイクロRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記マーカーが、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、
個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、
>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程と、
前記2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項28】
前記1つまたは複数のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNA、RNA、マイクロRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記1つまたは複数のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、泡沫細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記血中貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記血中貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記血中貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法を用いて分離される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記血中貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項37】
前記1つまたは複数のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
感染した個人において感染性因子特異的シグネチャーを同定するための方法であって、
感染した個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記感染した個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を前記感染した個人における感染性因子特異的シグネチャーと関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項40】
前記2つ以上のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、
循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項43】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、
>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程と、
前記2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項44】
前記1つまたは複数のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、泡沫細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記血中貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記血中貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記血中貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法を用いて分離される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記血中貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項47に記載の方法。
【請求項1】
個人における癌細胞の存在を診断する方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、および泡沫細胞の1つまたは複数からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血中非貪食細胞が、T細胞、B細胞、ヌル細胞、および好塩基球の1つまたは複数からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別によって分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、ろ過、勾配遠心、溶出、マイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法によって分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、白血球の集団から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法によって分離される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記血中貪食細胞および前記血中非貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記個人が、不顕性癌、過去に診断された原発性癌、および転移性癌の1つまたは複数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数のマーカーの存在を、癌治療の有効性と関連付ける工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
癌遺伝子、発癌遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子の1つまたは複数に対応する、DNA、RNA、およびマイクロRNAの1つまたは複数から前記マーカーが選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記マーカーが、癌遺伝子、および発癌遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子の1つまたは複数によってコードされるタンパク質およびポリペプチドの一方または両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
癌を有する個人において、腫瘍特異的シグネチャーを同定するための方法であって、
癌を有する個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記癌を有する個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を前記癌を有する個人における腫瘍特異的シグネチャーと関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項19】
前記2つ以上のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記2つ以上のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNAまたはRNAである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記2つ以上のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、
循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記第二の発現プロファイルと比較して前記第一の発現プロファイルにおけるマーカーの量が増加していることが、循環性腫瘍細胞およびその細胞内断片の一方または両方の存在を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記マーカーが、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNA、RNA、マイクロRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記マーカーが、癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
個人における癌細胞の存在を診断するための方法であって、
個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、
>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程と、
前記2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における癌細胞の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項28】
前記1つまたは複数のマーカーが、DNA、RNA、タンパク質、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの組み合わせに対応するDNA、RNA、マイクロRNA、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記1つまたは複数のマーカーが、2つ以上の癌遺伝子、発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはこれらの任意の組み合わせによってコードされるタンパク質またはポリペプチドである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、泡沫細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記血中貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記血中貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記血中貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法を用いて分離される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記血中貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項37】
前記1つまたは複数のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
感染した個人において感染性因子特異的シグネチャーを同定するための方法であって、
感染した個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記感染した個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記特異的な2つ以上のマーカーの発現差異を前記感染した個人における感染性因子特異的シグネチャーと関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項40】
前記2つ以上のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人からの血中貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記個人からの血中非貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を同定する工程と、
循環性腫瘍細胞またはその細胞内断片の存在を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項43】
個人における感染性因子の存在を診断するための方法であって、
個人から貪食細胞の集団を単離する工程と、
>2n貪食細胞から2n貪食細胞を分離する工程と、
前記2n貪食細胞から第一の発現プロファイルを得る工程と、
前記>2n貪食細胞から第二の発現プロファイルを得る工程と、
前記第一および第二の発現プロファイルを比較する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を同定する工程と、
前記第一の発現プロファイルに特異的な1つまたは複数のマーカーの発現差異を前記個人における感染性因子の存在と関連付ける工程と
を含む、方法。
【請求項44】
前記1つまたは複数のマーカーが、病原体DNA、病原体RNA、病原体タンパク質、病原体ポリペプチド、病原体脂質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記感染性因子が、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、および感染性タンパク質からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記血中貪食細胞が、好中球、マクロファージ、単球、樹状細胞、泡沫細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記血中貪食細胞が、全血、尿、便、唾液、リンパ液、または脳脊髄液から単離される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記血中貪食細胞が、抗体を用いて単離される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記血中貪食細胞が、蛍光活性化細胞選別、ろ過、勾配遠心、溶出、およびマイクロフルイディクスからなる群より選択される1つまたは複数の方法を用いて分離される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記血中貪食細胞が、WBC集団の細胞膜上に発現される分子受容体と結合するリガンドを用いて分離される、請求項47に記載の方法。
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図19】
【図20】
【図22】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図17】
【図18】
【図21】
【図23】
【図24】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図19】
【図20】
【図22】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図17】
【図18】
【図21】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2011−510304(P2011−510304A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543301(P2010−543301)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/031395
【国際公開番号】WO2009/092068
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(504000410)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/031395
【国際公開番号】WO2009/092068
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(504000410)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (10)
【Fターム(参考)】
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