説明

体液成分測定装置

【課題】従来の体液成分測定装置においては、試験片を排出するための機構を設けるために、イジェクトレバーやコイルばね等の部品が必要となり、部品点数及び組立工数が増えて不経済であった。
【解決手段】体液成分を測定するための試験片30が装着される試験片装着部17を備えた体液成分測定装置1において、筐体2の一部として設けられ、かつ、試験片装着部17の一部を構成する、試験片30を把持可能な把持片22と、把持片22と対向する筐体の部分に設けられ、把持片22に当接する支点部45とを有し、更に、把持片22は、支点部45より基端側に設けられた可撓性を有する入力部23を備え、入力部23を押圧することにより支点部45を中心として把持片22を回動させて試験片30の把持を解除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液中の血糖値のような体液中の所定成分の量や性質を測定する体液成分測定装置に関し、特に、筐体の一部に可撓性を持たせ、可撓性を有する筐体部を撓み変形させることにより試験片を手で触れずに排出できるように構成した体液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体液中の所定成分を検出し、その所定成分の量や性質を測定するために、種々の体液成分測定装置が用いられている。このような体液成分測定装置の例として、例えば、血液中のブドウ糖濃度を測定する血糖計を挙げることができる。
近年、安全意識の高まりから血液に接触することなく使用済の試験片を廃棄できる血糖計の需要が高まっている。
【0003】
従来の血糖計は、使用後の試験片を測定者自らが手で直接把持し、試験片装着部から引き抜いて廃棄していた。そのため、使用済の試験片に付着している血液に手が触れてしまうことから、衛生面の点から好ましいものではなかった。また、試験片を手で触れずに排出する排出機構を有する測定装置も提供されているが、この測定装置に使用されている排出機構は、ばねや押し出し部材、つまみ等の部品を用いているため、部品点数が多くなって不経済である等の問題があった。
【0004】
従来の体液成分測定装置の例として、例えば、特許文献1に記載されているような、体液等の試料を測定する測定装置がある。この測定装置は、試料が点着されるセンサが装着され、該試料の測定を行う測定装置であって、センサを測定装置から排出する排出機構を備えた、ことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−114213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来例の場合には、スライドツマミや樹脂ばね等が用いられており、同じく部品点数が多くなって、コスト的に不利であった。
【0007】
本発明の目的は、前述したような従来の体液成分測定装置において、試験片を排出するための機構を構成するイジェクトレバーやコイルばね等の部品点数を減らし、組立工数を減らすことで、製造コストの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、体液成分を測定するための試験片が装着される試験片装着部を備える体液成分測定装置に関する。体液成分測定装置の筐体の一部として設けられ、かつ、試験片装着部の一部を構成する、試験片を把持可能な把持片と、その把持片と対向する筐体の部分に設けられ、把持片に当接する支点部とを有する。把持片は、支点部より基端側に設けられた可撓性を有する入力部を備え、その入力部を押圧することにより支点部を中心として把持片を回動させて試験片の把持を解除するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、血糖計等の体液成分測定装置において、筐体の一部に可撓性を持たせ、可撓性を有する筐体部を撓み変形させることにより試験片を排出できるように構成したことで、部品点数を増加することなく、使用後の試験片を衛生的に排出して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の体液成分測定装置の第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す体液成分測定装置の中央部分を長手方向に沿って縦方向に断面した斜視図である。
【図3】図1に示す体液成分測定装置の要部を断面して拡大した説明図である。
【図4】本発明の体液成分測定装置の第2の実施例を示す斜視図である。
【図5】図4に示す体液成分測定装置の中央部分を長手方向に沿って縦方向に断面した斜視図である。
【図6】図4に示す体液成分測定装置の要部を断面して拡大した説明図である。
【図7】図4に示す体液成分測定装置による試験片の排出前の状態を示す説明図である。
【図8】図4に示す体液成分測定装置による試験片の排出時の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の体液成分測定装置の第3の実施例を示すもので、中央部分を長手方向に沿って縦方向に断面した斜視図である。
【図10】図9に示す体液成分測定装置の要部を断面して拡大した説明図である。
【図11】図9に示す体液成分測定装置による試験片の排出前の状態を示す説明図である。
【図12】図9に示す体液成分測定装置による試験片の排出時の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の体液成分測定装置を実施する形態の例について、図面を参照して説明する。図1〜図3は、本発明の体液成分測定装置の第1の実施例に係る血糖計1を示す図である。また、図4〜図8は、本発明の体液成分測定装置の第2の実施例に係る血糖計100を示す図である。更に、図9〜図12は、本発明の体液成分測定装置の第3の実施例に係る血糖計200を示す図である。なお、本発明は、この第1〜第3の実施例に示した血糖計1、100、200に限定されるものではない。
【0012】
図1〜図3に示す血糖計1は、主に、医療施設に入院している患者に対して医師や看護師等の医療従事者が使用するのに好適な院内用途品である。しかしながら、血糖計1は、患者が、家庭等において自己使用するものであっても良いことは勿論である。この血糖計1は、医師や看護師等が、携帯電話のように手に持って操作したり、机や診療台等に載置して使用することができる。この血糖計1の主な機能は、血液中の血糖値を測定し、測定データの管理を行うことであるが、更に、患者の氏名や投与する薬剤の確認、装置の精度管理等の機能が付加されていてもよい。
【0013】
図1及び図2に示すように、血糖計1は、中空の容器からなる筐体2と、その筐体2に内蔵された測定部3と、入力事項や確認事項、測定結果等を表示する表示部4と、測定部3や表示部4の動作を制御する制御部5と、表示部4や制御部5等に電力を供給する電源部等を備えて構成されている。
【0014】
筐体2は、人が片手で持って操作部の操作ボタンを容易に押圧操作することができるように細長の胴部を有する直方体の容器として形成されている。この筐体2は、直方体の長手方向の一方の端面である背面を開口させた容器本体7と、この容器本体7の背面開口部を閉じる蓋体8とを有しており、図示しない固定ねじによって蓋体8が容器本体7に固定されている。筐体2の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)やポリカーボネート(PC)を用いることができる。しかし、これに限定されるものではなく、ある程度の強度を有し且つ適度な可撓性(撓み変形)を発揮し得る各種のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0015】
筐体2の上面の背面側に、測定部3によって測定された情報に基づいて制御部5で算出された血糖値等を表示する表示部4が設けられている。表示部4は、容器本体7の上面を貫通すると共に長手方向に延在された長方形をなす開口窓11を有しており、その開口窓11には、これに見合う形状を有する透明なパネルカバー12が装着されている。このパネルカバー12の内面に、文字や図形等を表示可能な表示パネル13が配設されている。表示パネル13は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等よって構成されている。
【0016】
制御部5は、マイクロコンピュータやROM,RAM等の記憶装置や、所定の配線パターンが形成された配線基板15を備えて構成されている。そして、配線基板15の所定位置にマイクロコンピュータその他の電子部品を実装することによって制御部5が構成されている。この制御部5は、後述する測定部3から供給される測定信号に基づき所定の演算処理を実行して制御信号を出力する。
【0017】
図示しない電源部は、携帯用電源としての電池を備えており、この電池の電力によって測定部3や制御部5等の動作が実行され、表示部4の表示等が制御されるようになっている。図示しない操作部は、電源をオン・オフさせる電源スイッチや、情報信号や指令信号等を入力する操作ボタン等によって構成される。なお、筐体2にバーコードリーダーユニットを設け、患者のID情報等を読み取り可能に構成してもよい。
【0018】
また、筐体2の長手方向の先端部に、血液を採取する試験片20が装着されるための試験片装着部17が設けられている。試験片装着部17は、筐体2の前面から前方に突出する断面形状が円形をなすリング状の円筒部18を有しており、この円筒部18に対して試験片30が着脱可能に装着される。円筒部18は、軸方向に延在された切断部21によって直径方向へ2分割されている。切断部21は、円筒部18の基端から続けて容器本体7の長手方向に延在され、容器本体7の中途部まで直線状に切り欠いたすり割りとなっている。この切断部21を設けたことにより、容器本体7の一部に、把持片22が形成されている。
【0019】
この把持片22における、切断部21の基端部に近い部分が、押圧されて弾性変形することによって把持片22を変位させる入力部23とされている。入力部23は筐体2の一部を構成しており、入力部23以外の筐体2の部分に比べて薄く、可撓性を有するように形成されている。この入力部23は、外面側にわずかに膨出するように形成され、押圧することで内面側に変形し、座屈或いは反転するように設けられていてもよい。また、入力部23は、筐体2の他の部分とは異なる柔軟な材料で形成されていてもよく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル−共重合体(EVA)等の軟質樹脂材料、スチレン系やオレフィン系の熱可塑性エラストマ、或いは、それらの複合材料が適用される。この場合、入力部23と筐体2の他の部分とは2色成形によって一体的に形成することができる。
【0020】
把持片22の先端には、試験片30を把持するための爪部24が設けられ、爪部24は円筒部18の上半分をなす半円筒状の部分として形成されている。この爪部24を含む円筒部18に対して着脱可能に装着される試験片30は、図1〜図3に示すような構成を有している。即ち、試験片30は、円板状に形成されたベース部31と、このベース部31の一方の面に形成されたノズル部32と、ベース部31の他方の面に形成された筒軸部33とからなっている。ベース部31の外径は、円筒部18の外径と略同じ寸法に形成されている。また、ノズル部32は、ベース部31の中央に立設されており、その中心部には軸方向へ貫通して筒軸部33側の面に開口する採取孔34が設けられている。ノズル部32の先端部は先細に形成されており、その先端には、検体である体液の一具体例を示す血液を吸引し易くするための凹溝が設けられている。
【0021】
試験片30の筒軸部33は、円筒部18の穴に嵌り合う大きさに形成されていると共に、ベース部31によって円筒部18が閉じられるように構成されている。更に、筒軸部33の先端部には、切欠きを設けることによって弾性片からなる複数の係合爪(本実施例では4個)35が設けられている。この筒軸部33を円筒部18の穴に嵌合することにより、係合爪35によって試験片30が試験片装着部17に弾性的に保持される。係合爪35は、周方向に連続する円弧状の凸部として形成されており、その外周面には、摩擦抵抗を高めるための山形状をなす凸部が設けられている。
【0022】
試験片30は、ディスポーザブル品であり、図示しない包装体に包装されている。試験片30の採取孔34は、血液を毛管現象によって吸い上げる程度に十分に細径に形成されており、ノズル部32の先端に接触した血液が筒軸部33側の開口部まで移動し得るようになっている。この試験片30の筒軸部33の内側に形成された試験紙収納部に、採取孔34を移動してきた血液が染み込む試験紙36が収納されている。この試験紙36に、光学測定部40から放射される所定の光を照射することにより、血液中の成分を測定することができる。
【0023】
試験紙36の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホンを挙げることができる。また、試験紙36に予め含浸されている試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤を挙げることができる。なお、試薬には、所定の緩衝剤が含まれていてもよい。
【0024】
光学測定部40(測定部)は、血液が染み込んだ試験紙36に光を照射してその反射光を受光する装置である。光学測定部40は、筐体2の底部側に取り付けられるホルダ41と、このホルダ41に保持される発光素子及び受光素子を含んでいる。発光素子は、例えば、発光ダイオードからなり、受光素子は、例えば、フォトダイオードからなる。
【0025】
光学測定部40の発光素子及び受光素子は、試験紙36側の端面まで延在された通路を有するホルダ41の内部に保持されている。発光素子から放射された光が通路を通じて試験紙36に照射され、その試験紙36で反射された光が受光素子へと導かれ、受光素子にて光電変換される。そして、受光素子から制御部5へと、受光光量に応じたアナログ信号が出力される。また、ホルダ41は、ブロック状のベース部41aと、このベース部41aの前側に連続して形成された円筒形の軸部41bとを有している。軸部41bには、二種類の波長の光を一つの試験紙36に照射するための照射口37が開口されている。
【0026】
光学測定部40は、円筒部18と把持片22の内側に配置されている。ホルダ41の軸部41bと円筒部18との間にリング状をなす空間部が形成されている。この円筒部18内に形成されたリング状をなす空間部に、試験片30の筒軸部33が着脱可能に挿着される。この空間部によって、試験片(チップ)30を着脱可能に支持することができる試験片装着部が構成されている。
【0027】
光学測定部40を保持するホルダ41の基端側には、配線基板15上に制御部5が設けられている。制御部5は、配線基板15に設けた配線パターンを介して光学測定部40と電気的に接続されており、光学測定部40の発光素子を適切なタイミングで発光させると共に、受光素子から供給されるアナログ信号をA/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換する。更に、制御部5では、受光光量のデジタル信号に基づいて所定の演算処理を行い、血液中の血糖値を算出する。そして、算出された血糖値を表示パネル13に表示し、測定者に知らせる。
【0028】
また、ホルダ40には、入力部23の押圧操作に応じて把持片22を回動させるための支点部45が設けられている。支点部45は、ホルダ40の上面であって、把持片22の爪部24と入力部23との中間位置に配置されている。支点部45は、把持片22で試験片30を把持した状態において、把持片22の内面に接触する凸部として形成することが好ましく、その凸部は、把持片22が延びる方向と直交する方向に延在された突条として形成してもよく、また、直交する方向に適当な隙間をあけて形成された複数の突起であってもよい。更に、支点部45は、弾性変形時に把持片22が回動することを考慮すると、上面を円弧状に湾曲させた断面半円形をなすドーム型とすることが好ましいが、断面三角形、断面台形等の形状としてもよい。
【0029】
なお、図示しないが、筐体2内において、ホルダ41の外周部にパッキンを装着し、ホルダ41と制御部5との間を液密に封止することにより、検体や水等が制御部5内に入り込むのを防止することができる。また、容器本体7と蓋体8との嵌合部にパッキンを介在させて液密に封止することにより、血糖計1を拭き掃除したり水洗いすることができる。
【0030】
このような構成を有する血糖計1は、例えば、次のようにして組み立てることができる。容器本体7の長手方向の一端が開口されていて、その開口部に蓋体8が嵌合される構造となっているため、その開口部から光学測定部40及び制御部5等を挿入する。その後、蓋体8で開口部を閉じて固定ねじで締め付けることにより、簡単に組み立てることができる。
【0031】
また、血糖計1は、次のようにして使用することができる。図1は、血糖計1の通常の使用状態を示すもので、筐体2を片手で軽く握るように把持して使用される。
【0032】
測定には、まず、指先を専用の穿刺器具で穿刺し、その穿刺部から皮膚上に少量(例えば0.3〜1.5μL程度)の血液を流出させる。この指先上の少量の血液に、血糖計1の先端に装着されている試験片30のノズル部32の先端を当接させる。これにより、血液は、ノズル部32の採取孔34内に入り込み、毛細管現象により吸引されて内側に流れ、筒軸部33内に収容されている試験紙36の中央部に到達する。この試験紙36に到達した血液は、その表面から試験紙36の内部に染み込み、半径方向外側へ向かって放射状に広がって行く。この血液の展開と同時に、血液中のブドウ糖と試験紙36に担持されている試薬とが反応を開始し、ブドウ糖の量に応じて呈色する。この呈色した試験紙の色を測定し、呈色の強度を測定することにより、血糖値を求めることができる。
【0033】
測定終了後、試験片30を試験片装着部17から排出する場合には、例えば、親指を除く4本の指と手のひらで筐体2を把持すると共に、親指を入力部23に合わせ、その入力部23を押圧する。このとき、試験片装着部17は、容器本体7に切断部21を設けることによって可撓性を持たせた把持片22を有し、その把持片22の根元部分に入力部23を設け、その根元部分を押圧するように構成され、更に、先端の爪部24と入力部23との間に支点部45が設けられていることから、図3に示すように、入力部23を所定の外力Fで押圧すると、入力部23を中心として把持片22がくの字状に弾性変形される。
【0034】
その結果、把持片22の先端側が、支点部45を中心として、図3において時計方向に回動される。これにより、試験片装着部17に装着されている試験片30の筒軸部33の上半分を把持している爪部24が筒軸部33から離れ、把持片22による試験片30のロックが解除される。そのため、試験片30が試験片装着部17から外れ易い状態となる。そこで、試験片30を下向きにして血糖計1を垂直方向へ向けることにより、試験片30の自重によって、或いは、上下方向へ軽く振ることにより、試験片装着部17から試験片30を容易に離脱させて、廃棄容器に廃棄することができる。
【0035】
この場合、血糖計1を操作する作業者は、血糖計1を片手で持った状態において、片手操作によって試験片30を血糖計1から分離させ、廃棄することができる。従って、試験片30に手を触れることなく、その試験片30の廃棄処理を衛生的に、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0036】
図4乃至図8は、本発明の第2の実施例に係る血糖計100を示す図である。この血糖計100は、筐体102の一部を撓み変形させることにより試験片130の把持を解除すると同時に、試験片130を自動的に排出する試験片排出機構120を設けたものである。
【0037】
この実施例で示す血糖計100は、第1の実施例で示した血糖計1とは異なり、電気化学的手段によって血糖値を測定するものである。即ち、血糖計100は、血液中の成分を計測するために電気化学センサが装着され、採取された血液の成分と試薬の反応から得られる電流値に基づいて血糖値を計測することができる体液成分測定装置である。
【0038】
図4及び図5に示すように、血糖計100は、下ケース107と上ケース108とを有する筐体102を備えている。下ケース107は、上面に開口された略長方形をなす底の浅い容器からなり、下ケース107の長手方向の一面である前面の中央部には、その長手方向に突出する樋状部109が設けられている。この下ケース107に、平板状をなす上ケース108が重ね合わされている。この上ケース108は、図示しない固定ねじによって下ケース107に固定されている。
【0039】
下ケース107の樋状部109は、断面形状がコ字状をなし且つ上方に開口された凸部からなり、その上面開口部が上ケース108に設けた舌片状に突出し可撓性を有する把持片122によって閉じられている。この把持片122は、その付け根部分の一部を他の部分よりも薄くして強度を弱くすることにより、可撓性が付与されている。この把持片122の先端に、試験片130の基端に近い部分を押圧して固定する爪部124が設けられている。また、把持片122の付け根部分に設けた薄肉部分が、その把持片122を撓み変形させるための入力部123とされている。なお、入力部123は、把持部122の他の部分と異なる柔軟性を有する部材を用いて、一体成形によって形成されていてもよい。
【0040】
図6に示すように、把持片122に撓み変形を生じさせるために、樋状部109の内面には、2つの突起部からなる支点部145,145が設けられている。2つの支点部145,145は、樋状部109の長手方向の略中間部において、その長手方向と交差する幅方向に所定の隙間をあけて配置されている。そして、各支点部145の上端部は、把持片122の撓み変形を容易にするため円弧状の曲面部として形成されている。また、樋状部109の長手方向の先端部には、中央部に試験片130が着脱可能に挿通される四角形をなす出入口146を有する前面部109aが設けられている。
【0041】
樋状部109の前面部109aの高さは、支点部145の高さと同じ高さに設定されている。これにより、把持片122を撓み変形させる前の自然状態では、把持片122の下面が前面部109aの両側上端面と2つの支点部145,145のみに当接して、樋状部109の上面開口部を閉じるように構成されている。このとき、把持片122の先端に設けた爪部124が、樋状部109の前面部109aに設けた出入口146に係合され、その爪部124が試験片130を樋状部109の底面に押し付けるようにして把持する。この出入口146に連続して樋状部109の底面には、試験片130をガイドするガイド溝147が設けられている。
【0042】
ガイド溝147は、試験片130の幅と同じ大きさの幅を有する。この樋状部109の内部において、ガイド溝147の内側に測定部103が配設されている。測定部103は、先端に複数の導電端子151を有する端子ブロック150を備えている。端子ブロック150は、平面形状がT字形状をなしており、導電端子151が突出した凸部側を樋状部109の長手方向に延在させた状態で当該樋状部109に固定されている。この端子ブロック150の先端部の両側に所定の隙間をあけて2つの支点部145,145が配置されている。
【0043】
複数の導電端子151の先端は下向きに180度湾曲するように形成されており、出入口146から挿入される試験片130の先端部を容易に差し込むことができるように構成されている。複数の導電端子151は試験片130の基端部と弾性的に接触可能とされており、複数の導電端子151の下に試験片130の先端部が差し込まれることにより、試験片130の電極端子に対して各導電端子151が電気的に導通されるようになっている。端子ブロック150にはケーブル線152の一端が接続され、そのケーブル線152の他端は、制御部105のコネクタ154に接続されている。なお、各導電端子151は、樋状部109側に付勢されており、樋状部109との間で試験片130を挟み込んで把持する機能を有する。
【0044】
図5に示すように、コネクタ154は、筐体102内に収容されている制御部用配線基板155に搭載されていて、その配線基板155に設けられた所定の配線パターンと電気的に接続されている。この配線基板155の上方に、表示部をなす表示パネル113が配置されている。表示パネル113は、上ケース108に設けた開口窓111に装着されたパネルカバー112の内面に接合されて一体的に構成されている。
【0045】
制御部105は、マイクロコンピュータやROM,RAM等の記憶装置や、所定の配線パターンを備えて、配線基板155上に設けられている。この配線基板155の所定位置にマイクロコンピュータその他の電子部品を実装することによって制御部105が構成されている。この制御部105と測定部103とが電気的に接続され、測定部103から供給される測定信号に基づき、制御部105が所定の演算処理を実行し、所定の制御信号を出力する。なお、上ケース108には、操作部114の電源スイッチ114aと操作ボタン114bとが設けられている。
【0046】
更に、樋状部109の内部には、試験片130を出入口146から外部に向かって押し出す試験片押出機構の一具体例を示す板ばね160が設けられている。板ばね160は、長方形をなす枠状の板材として形成されている。板ばね160の長手方向の一側には、試験片130に当接して当該試験片130を押圧する押圧部160aが設けられている。押圧部160aには、導電端子151との接触を避けるための切欠き部161が設けられている。この切欠き部161により、板ばね160による試験片130の押し出し動作が実行されたときにも、その押圧部160aが複数の導電端子151と接触するのを回避している。
【0047】
また、図6〜図8に示すように、板ばね160は、長手方向の2箇所を板厚方向に湾曲させて山折部160bと谷折部160cとを設けることにより、全体としてクランク状に形成されている。即ち、板ばね160は、押圧部160aと反対側に設けた山折部160bと、押圧部160a側に設けた谷折部160cとを有している。この板ばね160は、谷折部160c側の端部をガイド溝147に臨ませると共に、山折部160b側の端部を端子ブロック150の上面に載置させるようにして当該端子ブロック150に取り付けられている。この際、板ばね160に設けた中央の四角い穴に端子ブロック150の凸部側が嵌合され、これにより、板ばね160の幅方向への移動を制限して、長手方向へのみ進退移動を可能にしている。
【0048】
このような構成を有する血糖計100は、例えば、次のようにして組み立てることができる。まず、下ケース107に、配線基板155等を取り付けて制御部105を組み立てる。次に、樋状部109の所定位置に端子ブロック150を取り付け、次いで、端子ブロック150に板ばね160を取り付ける。そして、ケーブル線152によって配線基板155と端子ブロック150を電気的に接続する。
【0049】
次に、上ケース108に、表示パネル113等を取り付ける。そして、表示パネル113と配線基板155を電気的に接続する。その後、下ケース107に上ケース108を重ね合わせ、図示しない固定ねじでねじ止めする。これにより、血糖計100の組立作業が完了する。
【0050】
このような構成を有する血糖計100は、例えば、次のようにして使用することができる。まず、血糖計100の試験片装着部117に試験片130を取り付ける。即ち、血糖計100の出入口146に試験片130の一端を挿入し、図4〜図7に示すように、試験片130の基端部を導電端子151の下まで差し込む。これにより、血糖値の測定が可能となる。
【0051】
そこで、試験片130の先端に設けた採血部131に測定する血液を供給する。血液は、試験片130の毛細管路を伝わって試薬が設けられた試薬設置部に移動し、酵素反応によってブドウ糖の量に応じた信号が出力され、その信号に基づき制御部105において血糖値が算出され、その血糖値が表示パネル113に表示される。
【0052】
測定終了後、試験片130を試験片装着部117から排出する場合には、例えば、親指を除く4本の指と手のひらで筐体102を把持すると共に、親指を入力部123に合わせ、その入力部23を押圧する。これにより、筐体102の把持片122が、図7に示す状態から図8に示す状態に変化するため、試験紙130を試験片装着部117から外部に自動的に排出することができる。
【0053】
図7は、試験片130を出入口146から挿入して試験片装着部117に装着した状態を示すものである。このとき、試験片130をガイド溝147の所定位置まで挿入すると、試験片130の基端部の上面の電極端子に複数の導電端子151が圧接される。この際、把持片122の爪部124は試験片130を押圧した状態となっている。この導電端子151による圧接と爪部124による押圧によって試験片130が固定される。また、この際、板ばね160の山折部160bが把持片122の内面に当接されている。なお、谷折部160cが無くても板ばね160がスムースに進退動作し得る場合には、谷折部160cの無い板ばねとすることができる。また、板ばね160の山折部160bは、把持片122側に湾曲していて、把持片122の内面に軽く当接していてもよい。
【0054】
この図7に示す状態から、入力部123に外力を加えて把持片122を内側に撓み変形させる。すると、把持片122の入力部123はそれ以外の部分に比べて強度が弱く、即ち、薄く構成されているため、図8に示すように、入力部123のみが大きく撓み変形する。このとき、把持片122の入力部123より先端側は、樋状部109に設けた支点部145によって下方から支持されているため、把持片122の先端側は、支点部145を中心として図8において時計方向に回動する。
【0055】
これにより、把持片122の先端に設けた爪部124が出入口146を開放するよう外側に回動され、試験片130をガイド溝147に押し付けている力が解除される。これと連動するように板ばね160は、その山折部160bが真っ直ぐになるように弾性変形される。これにより、板ばね160が、長手方向に長くなった分だけ押圧部160aが出入口146側に摺動し、試験片130を押し出す。これにより、試験片130の基端部が導電端子151から外れ、導電端子151による保持力も解除される。その結果、試験片130を保持する全ての力が解除されるため、試験片130がフリーな状態となり、板ばね160によって押し出されることで、自動的に排出される。
【0056】
試験片130を排出した後、入力部123に加えている外力を解放することにより、把持片122が持つ復元力と板ばね160のばね力によって、筐体102が元の状態に復帰される。
【0057】
なお、第2の実施例では、板ばね160を用いて試験片130を押し出す構成とした。しかし、板ばね160を設けなくても、導電端子150の試験片130への押圧力を十分弱く設定すれば、把持片122の爪部124による保持を解除したとき、下向きにすることでその自重により試験片130を離脱させることが可能である。
【0058】
図9乃至図12は、本発明の第3の実施例に係る血糖計200を示す図である。この第3の実施例として示す血糖計200は、第2の実施例に係る血糖計100の一部構造を変更し、把持片122によって導電端子251を弾性変形させ、試験片130を保持する導電端子251の保持力を解放する構成としたものである。この第3の実施例に係る血糖計200が血糖計100と異なる点は、板ばね160を使わないことと、導電端子251の先端側を爪部124に係止したところである。そのため、血糖計200において、第2の実施例と同一部分には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0059】
図10に示すように、導電端子251は、試験片130に当接される当接部251aと、この当接部251aの一側に連続する固定部251bと、当接部251aの他側に連続する固定部251cとを有している。当接部251aは、下方に凸となったU字形状に形成されている。固定部251bは水平方向に延在されて、端子ブロック150に固定されている。固定部251cは、L字形状に形成されていて、上方に立ち上げられた垂直部で爪部124の背面側に固定され、爪部124の回動に追従する。その他の構成は前記実施例と同様である。
【0060】
この実施例で示す血糖計200は、例えば、次のようにして使用することができる。なお、血糖値を測定する作業工程は前記実施例と同様であるため、その説明は省略し、試験紙130を排出する場合について説明する。
【0061】
測定終了後、試験片130を試験片装着部117から排出する場合には、例えば、親指を除く4本の指と手のひらで筐体102を把持すると共に、親指を入力部123に合わせ、その入力部23を押圧する。これにより、筐体102の把持片122が、図11に示す状態から図12に示す状態に変化するため、試験紙130を試験片装着部117から外部に排出することができる。
【0062】
図11は、試験片130を出入口146から挿入して試験片装着部117に装着した状態を示すものである。このとき、試験片130をガイド溝147の所定位置まで挿入すると、試験片130の基端部の上面に複数の導電端子251の当接部251aが圧接される。この際、試験片130は把持片122の爪部124によって押圧された状態となっている。
【0063】
この図11に示す状態から、入力部123に外力を加えて把持片122を内側に撓み変形させる。すると、把持片122の入力部123はそれ以外の部分に比べて強度が弱く設定されているため、図12に示すように、入力部123のみが大きく撓み変形する。このとき、把持片122の入力部123より先端側は、樋状部109に設けた支点部145によって下方から支持されているため、把持片122の先端側は、支点部145を中心として図12において時計方向に回動する。
【0064】
これにより、把持片122の先端に設けた爪部124が出入口146を開放するよう外側に回動され、試験片130をガイド溝147に押し付けている力が解除される。これと同時に、爪部124に背面に固定されている導電端子251の係止部251cが、上方に引き上げられる。これにより、導電端子251の全体が持ち上げられ、測定部251aが試験片130から引き離される。その結果、試験片130を保持する保持力が解除されるため、試験片130がフリーな状態となる。そこで、出入口146を下に向けるように血糖計100の姿勢を変えることにより、自重によって試験片130を落下させて排出することができる。
【0065】
試験片130を排出した後、入力部123に加えている外力を解放することにより、把持片122が持つ復元力と導電端子251のばね力によって筐体102が元の状態に復帰する。
【0066】
本発明によれば、筐体の一部に可撓性を持たせ、可撓性を有する部分を撓み変形させることにより試験片を排出できるように構成した。そのため、従来の装置では、つまみ等の排出部材の部品点数が多かったが、部品点数を減らすことができ、測定後の試験片を衛生的に排出することができる。
【0067】
以上説明したが、本発明の体液成分測定装置は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、構成や形状、材料等において、本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【0068】
なお、前記実施例では、体液として血液を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、リンパ液、髄液、唾液等であってもよい。更に、体液(血液)中の測定目的とする成分として、ブドウ糖(血糖値)を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、コレステロール、尿酸、クレアチニン、乳酸、ヘモグロビン(潜血)、各種アルコール類、各種糖類、各種タンパク質、各種ビタミン類、ナトリウム等の各種無機イオン、PCBやダイオキシン等の環境ホルモンであってもよい。更にまた、前記実施例では、所定成分の量を測定するものとして説明したが、所定成分の性質を測定するものであってもよく、また、所定成分の量及び性質の双方を測定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,100,200・・血糖計(体液成分測定装置)、 2,102・・筐体、 4,104・・表示部、 5,105・・制御部、 7・・容器本体、 8・・蓋体、 13,113・・表示パネル、 15,115・・配線基板、 17,117・・試験片装着部、 18・・円筒部、 21・・切断部、 22,122・・把持片、 23,123・・入力部、 24,124・・爪部、 30,130・・試験片、 40・・光学測定部(測定部)、 45,145・・支点部、 103・・測定部、 107・・下ケース、 108・・上ケース、 109・・樋状部、 120・・試験片排出機構、 146・・出入口、 147・・ガイド溝、 150・・端子ブロック、 151,251・・導電端子、 160・・板ばね、 251a・・当接部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液成分を測定するための試験片が装着される試験片装着部を備える体液成分測定装置において、
前記体液成分測定装置の筐体の一部として設けられ、かつ、前記試験片装着部の一部を構成する、前記試験片を把持可能な把持片と、
前記把持片と対向する筐体の部分に設けられ、前記把持片に当接する支点部とを有し、
前記把持片は、前記支点部より基端側に設けられた可撓性を有する入力部を備え、前記入力部を押圧することにより前記支点部を中心として前記把持片を回動させて前記試験片の把持を解除するようにした
ことを特徴とする体液成分測定装置。
【請求項2】
前記把持片は、前記筐体に切断部を設けて他の部分に対して変位可能に形成され、
前記把持片の先端に前記試験片を把持する爪部を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の体液成分測定装置。
【請求項3】
前記把持片の入力部は、前記筐体の他の部分よりも薄くすることによって容易に撓み変形し得るように形成された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の体液成分測定装置。
【請求項4】
前記把持片の入力部は、前記筐体の他の部分と異なる柔軟な材料により形成され、前記筐体の他の部分と一体成形された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の体液成分測定装置。
【請求項5】
前記体液成分測定装置の筐体の内部に設けられ、前記入力部の押圧動作により動作されて前記試験片を押し出す試験片押出機構を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の体液成分測定装置。
【請求項6】
前記体液成分測定装置の筐体の内部に設けられ、前記試験片を前記試験片装着部に装着したときに当該試験片を圧接する導電端子を有し、
前記入力部を押圧することにより、前記把持片による前記試験片の把持が解除されると共に、前記導電端子による前記試験片の圧接が解除されるように構成された
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の体液成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−95949(P2012−95949A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248389(P2010−248389)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】