説明

体温冷却衣

【課題】乳幼児や高齢者が熱を出し、急速に体温を下げる必要が生じたときに、着脱が容易であって腋窩を的確に冷却することができる。
【解決手段】前開のベスト状着衣本体と、前記着衣本体に設けられた2つの腋窩冷却用の冷却材収納部と、前記冷却材収納部に収納可能な冷却材とを備える体温冷却衣であって、前記ベスト状着衣本体は、各肩部に、開放可能かつ長さ調整可能な肩部調整部と、前記前開きベスト状着衣本体を閉じるための結着具とを備え、前記冷却材は、冷却時に柔軟性を有するものであり、前記冷却材収納部は、前記各肩部下方の脇部の内側に一端部が取付部にて取り付けられるとともに、柔軟性を有し前記取付部を支点にして動かすことおよび前記脇部を越えて脇部外側に一部を位置させることが可能であり、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に保持可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、乳幼児や高齢者が熱を出し、急速に体温を下げる必要が生じたときに、着脱が容易であって腋窩を的確に冷却することができる体温冷却衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳幼児や高齢者が発熱し高熱が続くと、脱水症状、熱性けいれん、肺炎等をおこすおそれがあり、また、体力を急速に失うことから、急いで体温を下げる必要がある。そのためには、解熱剤を服用したり、氷枕や水枕を用い頭部を冷やすことが行われているが、腋窩に腋窩動脈・腋窩静脈・リンパ節が集中していることから、腋窩(腋の下)を冷却することが効果的に体温を下げることができるとされている。
しかしながら、腋窩の腋窩動脈・腋窩静脈・リンパ節を冷やすためには、胸部の両側面で腕の付け根の腋窩に冷却具を挿入し押し当て、腋窩動脈・腋窩静脈・リンパ節に近い位置に保持しなければならないが、その位置に挿入保持することが難しく、特に乳幼児においては安静にしていることができず、また、高齢者の場合も継続して腋の下に挟んでおくことが困難であり、また、自分自身で冷却材の挿入位置を調整することができない場合が多い。
そのため、冷却材を腋窩に当てて保持することが難しく、腋窩の冷却位置から冷却材がズレ動き、効果的に腋窩を冷却することができないため、看護をする人や看護師等が絶えず腋窩に冷却材が押し当てられ冷却されているかを確かめたり、挿入保持されている位置を調整する等の注意を常に払わなければならないという不便があった。
【0003】
そこで従来より、上半身用又は下半身用下着であって、着用者のリンパ腺の部分を冷却するに適した位置に、氷や保冷材等の冷却材を収容する袋状冷却材収容部を備え、乳幼児が高熱を出し、急速に体温を下げる必要が生じたときに、リンパ腺の部分を冷却材によって確実に冷やし、迅速に体温を下げることができるようにしたもの(特許文献1)が提案されている。
また、乳幼児用のベストであって、左右それぞれの腋窩から側胸部にかけて、ポケットが設けられ、このポケットに冷却ゼリーを入れたものであって、この乳幼児用のベストを着せ、両腋を冷やすもの(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの発明は、冷却材を収容する袋状冷却材収容部やポケットが、腋の下に設けられているが、ポケットが固定されており移動することができないため、胸部の両側部で腕の付け根にあたる腋窩に冷却具を挿入配置することができない。
それ故、腋窩のやや下の胸部の側部や二の腕の内側面を冷却し、胸部の両側部で腕の付け根の腋窩を充分に冷却することが難しく、急速に体温を下げる必要が生じたときには充分な効果が得られず、結局、看護をする人や看護師等が手で冷却材を腋窩に押し当てたり、たえず所定の冷却位置に冷却材が保持されているかを看る必要があった。さらに、従来の上半身用又は下半身用下着、或いは、乳幼児用のベストは、高熱を出している乳幼児、高齢者に負担を掛けることなく体温冷却衣を着用させることができず、また、身体に合わせて簡単にサイズを調節することもできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−281945
【特許文献2】特開2000−336505
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、乳幼児や高齢者でも腋窩に冷却材を的確に当接した状態で長い時間保持することが可能であり、乳幼児や高齢者が高熱を出したときに、胸部の両側部で腕の付け根の腋窩の腋窩動脈・腋窩静脈・リンパ節を冷却材により確実に冷却でき、効果的に体温を下げることができ、また、乳幼児や高齢者に着用させることが容易で、サイズ調節もできる体温冷却衣を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)前開のベスト状着衣本体と、前記着衣本体に設けられた2つの腋窩冷却用の冷却材収納部と、前記冷却材収納部に収納可能な冷却材とを備える体温冷却衣であって、
前記ベスト状着衣本体は、各肩部に、開放可能かつ長さ調整可能な肩部調整部と、前記前開きベスト状着衣本体を閉じるための結着具とを備え、
前記冷却材は、冷却時に柔軟性を有するものであり、前記冷却材収納部は、前記各肩部下方の脇部の内側に一端部が取付部にて取り付けられるとともに、柔軟性を有し前記取付部を支点にして動かすことおよび前記脇部を越えて脇部外側に一部を位置させることが可能であり、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に保持可能となっていることを特徴とする体温冷却衣。
【0008】
(2)前記ベスト状着衣本体は、中央で分断された2つの前身頃と、前記2つの前身頃と側部で連接した後身頃とを備え、前記冷却材収納部の前記取付部は、前記着衣本体の前記前身頃と前記後身頃との連接部もしくは連接部付近に位置している上記(1)に記載の体温冷却衣。
(3)前記冷却材収納部は、上部に三角形状もしくは半円状の支持片と、前記支持片と連設し、前記冷却材を収納する収納袋部を有し、かつ、前記支持片の頂部の一点が、前記ベスト状着衣本体に縫着されることにより、前記取付部が形成されている上記(1)または(2)に記載の体温冷却衣。
(4)前記冷却材収納部は、前記収納袋部の肌に当たる側の一側片が延出することにより形成された冷却材挿入補助片を備えている上記(3)に記載の体温冷却衣。
【0009】
(5)前記肩部調整部は、各肩部開放部の一方に前記肩部の縦方向に設けられた複数の雄型もしくは雌型の一方側ホックと、各肩部開放部の他方に設けられた前記肩部開放部の一方側ホックと着脱可能に嵌合する雌型もしくは雄型の他方側ホックとを備え、前記一方側ホックと前記他方側ホックの嵌め合わせ位置を変えることにより、前記肩部の長さが調整可能である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の体温冷却衣。
(6)前記肩部調整部は、各肩部開放部に設けられた面ファスナを備え、前記面ファスナの重なり量を変えることにより、前記肩部の長さが調整可能である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の体温冷却衣。
(7)前記結着具は、一対の結び紐、ホック、若しくは面ファスナからなるものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の体温冷却衣。
(8)前記着衣本体および前記冷却材収納部は、伸縮性を有する生地により形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の体温冷却衣。
【発明の効果】
【0010】
本発明の体温冷却衣は、各肩部に、開放可能かつ長さ調整可能な肩部調整部と、前記前開きベスト状着衣本体を閉じるための結着具とを備えているので、前記肩部調整部を開放し前記体温冷却衣の両肩部を開き、また、前記結着具を外し前身頃を左右に開くことにより、前記着衣本体を平面状に展開した状態にできる。
それ故、この平面状に展開した着衣本体を乳幼児・高齢者の背中に当て、前記冷却材を前記冷却材収納部に収納し、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に挿入配置し、或いは、前記着衣本体の冷却材収納部に前記冷却材を予め収納した後、着衣本体を乳幼児・高齢者の背中に当て、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に挿入配置し、肩部調整部で各肩部の長さを調整し肩部調整部を閉じ、かつ、前記結着具で前記着衣本体の前開き部を閉じることができるので、体温冷却衣を乳幼児や高齢者へ着用させることが容易にでき、サイズの調節も簡単にできる。
【0011】
また、前記冷却材収納部は、前記各肩部下方の脇部の内側に一端部が取付部にて取り付けられるとともに、柔軟性を有し前記取付部を支点にして動かすこと、および、前記脇部を越えて脇部外側に一部を位置させることを可能としたので、
前記冷却材収納部内に収納された冷却材を自在に動かし、前記冷却材を腋窩の冷却位置に容易に移動することができ、所定の位置に確実に配置することができる。特に、脇部を越えて脇部外側に一部を位置させることを可能としているので、腋窩の冷却位置に配置することが容易にできる。
そして、肩部調整部と結着具とにより、前記着衣本体を着せることにより、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に安定して保持することができる。
さらに、本発明の体温冷却衣は、前記冷却材が冷却時に柔軟性を有するものであるから、冷却材をU字形に曲げることができる。それ故、前記冷却材を腋窩に当てる際に前記冷却材を二つに折り曲げ、又は、前記冷却材を前記冷却材収納部に収納した後二つに折り曲げ、腋窩に当てやすい形状とすることができ、効果的に腋窩を冷却することができる。また、体温冷却衣を着せられた者に、ゴツゴツした感触を与えることがないので、違和感を余り感じさせない。
【0012】
本発明の体温冷却衣は、前記冷却材収納部の前記取付部が、前記着衣本体の前記前身頃と前記後身頃との連接部もしくは連接部付近に位置しているので、前記連接部もしくは連接部付近を支点として前記冷却材を自在に動かし、胸部の側部と二の腕の間に挿入し易い角度に調節し、腋窩に押し当てるように挿入配置することができる。
【0013】
本発明の体温冷却衣は、前記冷却材収納部の上部に三角形状もしくは半円状の支持片を備え、前記支持片に前記冷却材を収納する収納袋部を連設し、かつ、前記支持片の頂部の一点を、前記着衣本体に縫着して前記取付部が形成されているので、前記収納袋部に冷却材を挿入した状態で、前記冷却材収納部の取付部を支点として自在に動かすことができる。特に前記冷却材収納部の上部の支持片が三角形状もしくは半円状になっているので、前記収納袋部を腋窩に挿入する角度を自在に変えても、前記支持片が邪魔になることがない。
【0014】
本発明の体温冷却衣は、前記冷却材収納部が前記収納袋部の肌に当たる側の一側片を延出して冷却材挿入補助片を形成しているので、前記冷却材を入れ替えるため前記収納袋内に挿入する際、前記冷却材が直接乳幼児又は高齢者の肌に触れることなく挿入でき、かつ、前記収納袋部への冷却材の挿入がスムーズに行える。
【0015】
本発明の体温冷却衣は、前記肩部調整部が、各肩部開放部の一方側ホックと、各肩部開放部の他方側ホックの嵌め合わせ位置を変えることにより、前記肩部の長さの調整をすることができるので、身体の大きさに合わせるいことが容易にできる。また、前記ホックを嵌め外しをすることにより、体温冷却衣を乳幼児・高齢者に着せたり脱がしたりすることが簡単にできる。
【0016】
本発明の体温冷却衣は、前記肩部調整部の各肩部開放部に面ファスナを用いたので、前記面ファスナの重なり量を変えることにより、前記肩部の長さを微妙に変えながら所望の長さに調整でき、また、前記肩部を開放することも面ファスナを外すことにより簡単にできる。
【0017】
本発明の体温冷却衣は、前記結着具が一対の結び紐、ホック、若しくは面ファスナからなるものであるから、一対の結び紐を結ぶことにより、又は、ホックを嵌め合わせることにより、又は、面ファスナーを重ね合わせることにより、分断された前記前身頃を閉じ合わせることができ、前記冷却材を前記着衣本体により胸部の両側部に押さえつけるように保持することができ、また、前記着衣本体の前身頃と後身頃とで前後から挟むようにして支えることになるので、前記冷却材を腋窩の冷却位置に安定して保持でき、冷却材がズレ動くことも少ない。それ故、効果的に腋窩を冷やすことができる。
【0018】
本発明の体温冷却衣は、前記着衣本体が伸縮性を有する生地により形成されているので、乳幼児や高齢者に体温冷却衣を着せると、身体をピッタリと包むように密着して着せることができる。それ故、腋窩に挿入した冷却材を所定の位置に安定的に保持することができる。
また、前記冷却材収納部も伸縮性を有する生地により形成されているので、身体を多少動かしても、腋窩の冷却位置に挿入配置されている前記冷却材が前記冷却材収納部により引っ張られることがなく、冷却材が腋窩の冷却位置からズレ動くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の体温冷却衣の使用状態の正面図である。
【図2】図2は、本発明の体温冷却衣の展開図である。
【図3】図3は、本発明の体温冷却衣の側面図である。
【図4】図4は、本発明の体温冷却衣の肩部を、肩部調整部により長くした状態の側面図である。
【図5】図5は、本発明の体温冷却衣の部分拡大斜視図である。
【図6】図6は、本発明の体温冷却衣の冷却材収納部の正面図である。
【図7】図7は、本発明の体温冷却衣において、冷却材収納部に冷却材を挿入した状態の断面図である。
【図8】図8は、本発明の体温冷却衣において、冷却材収納部に冷却材を挿入しU字状に曲げた状態の断面図である。
【図9】図9は、本発明の体温冷却衣において、冷却材収納部に硬化した板状の冷却材を挿入した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図9において、Aは中央で左右に分断された2つの前身頃1、1と、前記前身頃1、1の側部で連接された後身頃2とからなる前開のベスト状着衣本体で、前記前身頃1、1の側部と前記後身頃2の側部が連接部5、5を形成して縫着され、左右の肩部3、3に開放可能で長さを調整することができる肩部調整部4、4が設けられ、また、左右に分断された2つの前身頃1、1を閉じるための結着具5が設けられている。
前記前開のベスト状着衣本体Aは、図2に示すように、前記肩部3、3に設けられた前記肩部調整部4、4を外して肩部3、3を開放し、また、前記結着具5を外し2つの前身頃1、1を左右に開き、平面上にベスト状着衣本体を展開することができるようになっている。
前記後身頃2の中央上部には円弧状に切欠された首縁部15が設けられ、前記連接部5、5の上部には前記後身頃2と前身頃1、1の両者間に跨って、U字状の腕挿通部14、14が設けられ、前記首縁部15の両側とU字状の腕挿通部14、14との間に前記肩部3の背中側の肩部3bが形成され、また、U字状の腕挿通部14、14の外側には、前記肩部3の胸部側の肩部3aが形成されている。
【0021】
前記胸部側の肩部3aには雄型の一方側ホック6aを備えた前記肩部調整部4の胸部側の肩部調整部4aを備え、前記背中側の肩部3bには雌型の他方側ホック6bを備えた背中側の肩部調整部4bを備え、前記胸部側の肩部調整部4aには着脱可能に嵌合する雄型ホック2個が横に並べて取付けられ、かつ、肩部の縦方向に上下2段に雄型ホックが取付けられている(図2参照)。また、背中側の肩部3bには前記雄型ホックと着脱可能に嵌合する雌型ホック2個が横に並べて取付けられ、かつ、前記肩部の縦方向に上下2段に雌型ホック6bが取付けられている。
なお、2個のホックを並設したものを2列に取付けられているが、これを3列、4列として、肩部の長さの調節範囲を大きくしてもよい。
【0022】
前記胸部側の肩部調整部4aと前記背中側の肩部調整部4bを一対にして肩部調整部4が構成され、前記肩部調整部4aと前記肩部調整部4bを外すことにより、肩部3を開放し、また、前記肩部調整部4aと前記肩部調整部4bの雄型ホック6aと雌型ホック6bを嵌め合わせることにより肩部5を閉じ、かつ、嵌め合わせ位置を変えることにより前記肩部5の長さを調整できるようにしている。
前記肩部調整部4aと前記肩部調整部4bには、雄型ホックと雌型ホックを用いて肩部調整部4を構成しているが、雄型ホックと雌型ホックに替えて、面ファスナーを用いてもよい。面ファスナーを用いれば肩部の調節をより微調整をしながら肩部5の長さの調整ができる。
【0023】
Bは、前記前開のベスト状着衣本体Aに設けられた冷却材収納部であり、腋窩を冷却する冷却材Cを収納するものである。
この冷却材収納部Bは、柔軟性のある素材で形成され、上部に三角形状の支持片9を有し、該支持片9と連設して前記冷却材Cを収納する収納袋部10が設けられ、かつ、前記支持片9の頂部の一端部が取付部pにて、前記ベスト状着衣本体Aの前記各肩部5、5の下方の脇部8の内側の連接部7に逢着して取り付けられている。
なお、前記支持片9の形状は三角形状の他、半円状としてもよい。
前記取付部pの前記着衣本体Aへの取付け位置は脇部8であるが、前記着衣本体Aの内側すなわち肌に当たる側で、前記U字状の腕挿通部14の最下部と、前記着衣本体Aの裾とのほぼ中間位置であって、前記連接部7又は連接部付近とするのがよい。
【0024】
これにより、冷却材収納部Bを、前記取付部pを支点として、図2に示す位置から上方に反転させ、かつ、ほぼ90度回転させ、図1に示す胸部の側部と二の腕の内側との間であって腕の付け根の腋窩に当接する冷却位置に冷却材Cを持って行くことができ、図1、及び、図3〜図5に示すように、冷却材収納部Bは前記着衣本体Aの脇部8を越えて脇部外側に前記冷却材収納部Bの一部を位置させることができるので、腋窩の冷却位置に冷却材を的確に配置することができる。
【0025】
前記収納袋部10は、図6及び図7に示すように、前記支持片9に連設されている側の反対側に冷却材挿入口11を開口した長方形の袋であり、前記冷却材Cがゆとりを持って収納できる大きさで、その収納袋部10の冷却材挿入口11には、ホック等の止着具12が設けられ、前記冷却材Cが前記収納袋部10からみだりに飛び出すことがないようになっている。
さらに、前記収納袋部10の肌に当たる側の一側片を延長して冷却材挿入補助片13を設け、前記冷却材Cを出し入れする際に直接冷却材Cが肌に触れないようになっている。また、前記挿入補助片13の存在により、冷却材Cをスライドさせるようにして前記収納袋部10に入れることができる。
【0026】
前記冷却材Cは、腋窩を冷却するものであり、冷凍庫で冷やしても硬化せず柔らかい状態を保つ、水と不凍液とゲル化剤等からなるジェル状の冷却材を使用している。この冷却材Cの形は方形で、厚みはU字状に折り曲げ易い0.5cm〜1.5cmの厚みとするのがよい。
前記冷却材Cを前記収納袋部10に挿入し、止着具であるホック12を嵌め、冷却材挿入補助片13を折り曲げ、図5及び図8に示すように、前記収納袋部10に冷却材Cを挿入した状態でU字形に曲げ、前記冷却材収納部Bの湾曲した部分を腋窩に当接させることになるので、冷やす効果も高く、また、体温冷却衣を着用する乳幼児や高齢者に違和感を与えることが少ない。
なお、一般に広く使用されている冷凍庫で冷やすと硬化する、水にわずかの高吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム等)を混ぜた冷却材を使用することも可能であるが、この場合は、厚みを腋窩に挟み易い0.5cm〜3cmとする。
冷やすと硬化する冷却材Cを使用する場合は、図9に示すように、板状となった冷却材Cを前記収納袋部10に挿入し、止着具であるホック12を嵌め、冷却材挿入補助片13を折り曲げ、腋窩に挿入配置するのであるが、腋窩に当接するというよりは、胸部の側部と二の腕の内側面に挟まれた状態となり、腋窩を冷やす効果はやや小さくなる。
【0027】
前記結着具5は、前記前身頃1、1の対向する位置に設けた一対の細い帯状の結び紐からなり、この一対の結び紐5は、分断された前身頃1、1を中央に引き寄せ、乳幼児や高齢者の身体に合わせて胸部を閉じるように結ぶものである。結び紐5を結ぶことにより、前記前身頃1の腋の下の部分と前記後身頃2の腋の下の部分により、前記冷却材Bを胸部の側部に押し付ける形となり、前記冷却材Bを安定して保持でるようになっている。
一対の結び紐5を前身頃1、1に取付ける位置は、前記着衣本体Aの左右のU字状の腕挿通部14、14の両方の下端を結ぶライン、すなわち、両腋窩を結ぶライン上よりやや下で、前記冷却材Bを胸部の側部に押さえ付けるに適した位置とすると、前記冷却材Bを安定して保持することができる。
なお、一対の結び紐を使用しないで、ホック、若しくは面ファスナを用いてもよい。
【0028】
前記着衣本体Aは、伸縮性の有る生地を用いる。伸縮性に富んだ生地を用いると前記着衣本体Aを乳幼児や高齢者に着せたとき、生地が身体に密着し腋窩に挿入配置した前記冷却材Bを前記着衣本体の前身頃1、1と後身頃2、2でピッタリと覆うことになり、前記冷却材収納部Bの冷却位置からのズレ動きを一層抑制する効果がある。
また、前記着衣本体Aの周囲はパイピング19が施され、前記着衣本体Aの生地のほつれを防止するようになっている。
さらに、前記前身頃1、1と前記後身頃2は、両者を縫合し連接したものではなく、1枚の布地で作ったものを使用してもよい。
【0029】
上記構成としたので、高熱を出した乳幼児や高齢者の体温を急ぎ下げたい場合に、本発明に係る体温冷却衣を、前記前身頃の一対の結び紐を解き前身頃を開くとともに、肩部に設けた肩部調整部を外すことにより、着衣本体を展開した状態にすることができる。この展開した着衣本体を乳幼児・高齢者の背中に当て、前記着衣本体に取着された冷却材収納袋部の収納袋部に冷却材を挿入し、冷却材挿入口をホックを嵌めて閉じ、前記挿入補助片を収納袋に重ねるように折り曲げる。このようにした前記冷却材収納部は前記着衣本体への取付部を支点として、上方に反転するようにして持って行き、かつ、乳幼児や高齢者の腋窩に挿入できるように角度を変えることができる。したがって、冷却材を的確に腋窩の冷却位置に挿入配置できる。また、腋窩に挿入配置した後、前記肩部調整部で肩覆い部の長さを調節するとともに、肩部調整部を嵌め合わせ、また、前身頃に設けた一対の細い帯状の結び紐で、分断された前身頃を中央に引き寄せ、乳幼児や高齢者の胸部を閉じるように結ぶことにより、前記冷却材を胸部の側部に押し当て安定して保持できる形で、体温冷却衣を乳幼児や高齢者へ着せることができ、素速く体温の冷却措置を講じることができる。
【0030】
さらに、冷凍庫で冷やしても硬化しないジュル状の冷却材を使用しているので、冷却材を冷却材収納部ととものU字状に折り曲げ腋窩に当接させることができ、また、着衣本体の着衣本体を伸縮性のある生地で作ると着衣が身体に密着し、冷却材を包むように保持できズレ動きを抑制し、前記冷却材が腋窩に当接する位置に長い時間保持することが可能となるので、効果的に体温を下げることができ、看護する者や看護師が冷却材が腋窩に当接する位置にあるか否かを確認したり、冷却材の位置を調節する手間も省け、また、冷却材を押し当てている必要がなく便利である。
【符号の説明】
【0031】
A ベスト状着衣本体
B 冷却材収納部
C 冷却材
p 取付部
1 前身頃
2 後身頃
3、3a、3b 肩部
4、4a、4b 肩部調整部
5 結着具
6、6a、6b 雄型又は雌型のホック
7 連接部
8 脇部
9 支持片
10 収納袋部
11 冷却材挿入口
12 止着具
13 冷却材挿入補助片
14 腕挿通部
15 首縁部
16 パイピング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前開のベスト状着衣本体と、前記着衣本体に設けられた2つの腋窩冷却用の冷却材収納部と、前記冷却材収納部に収納可能な冷却材とを備える体温冷却衣であって、
前記ベスト状着衣本体は、各肩部に、開放可能かつ長さ調整可能な肩部調整部と、前記前開きベスト状着衣本体を閉じるための結着具とを備え、
前記冷却材は、冷却時に柔軟性を有するものであり、前記冷却材収納部は、前記各肩部下方の脇部の内側に一端部が取付部にて取り付けられるとともに、柔軟性を有し前記取付部を支点にして動かすことおよび前記脇部を越えて脇部外側に一部を位置させることが可能であり、前記冷却材収納部内に収納された冷却材を腋窩の冷却位置に保持可能となっていることを特徴とする体温冷却衣。
【請求項2】
前記ベスト状着衣本体は、中央で分断された2つの前身頃と、前記2つの前身頃と側部で連接した後身頃とを備え、前記冷却材収納部の前記取付部は、前記着衣本体の前記前身頃と前記後身頃との連接部もしくは連接部付近に位置している請求項1に記載の体温冷却衣。
【請求項3】
前記冷却材収納部は、上部に三角形状もしくは半円状の支持片と、前記支持片と連設し、前記冷却材を収納する収納袋部を有し、かつ、前記支持片の頂部の一点が、前記ベスト状着衣本体に縫着されることにより、前記取付部が形成されている請求項1または2記載の体温冷却衣。
【請求項4】
前記冷却材収納部は、前記収納袋部の肌に当たる側の一側片が延出することにより形成された冷却材挿入補助片を備えている請求項3に記載の体温冷却衣。
【請求項5】
前記肩部調整部は、各肩部開放部の一方に前記肩部の縦方向に設けられた複数の雄型もしくは雌型の一方側ホックと、各肩部開放部の他方に設けられた前記肩部開放部の一方側ホックと着脱可能に嵌合する雌型もしくは雄型の他方側ホックとを備え、前記一方側ホックと前記他方側ホックの嵌め合わせ位置を変えることにより、前記肩部の長さが調整可能である請求項1ないし4のいずれかに記載の体温冷却衣。
【請求項6】
前記肩部調整部は、各肩部開放部に設けられた面ファスナを備え、前記面ファスナの重なり量を変えることにより、前記肩部の長さが調整可能である請求項1ないし4のいずれかに記載の体温冷却衣。
【請求項7】
前記結着具は、一対の結び紐、ホック、若しくは面ファスナからなるものである請求項1ないし6のいずれかに記載の体温冷却衣。
【請求項8】
前記着衣本体および前記冷却材収納部は、伸縮性を有する生地により形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の体温冷却衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2016(P2013−2016A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134924(P2011−134924)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(511148318)
【Fターム(参考)】