説明

体腔内診断システム

【課題】簡便な構造で駆動部を円滑に操作でき、治療や診断の精度が低下するおそれがない、体腔内診断システムを提供する。
【解決手段】 基台74、駆動部70及び移動手段80を覆う第1滅菌シート61の他に、駆動部70とカテーテル1を保持する保持部40との間に筒状の第2滅菌シート62を設け、駆動部側と保持部側とを第2滅菌シート62により仕切り、清潔ゾーンと汚染ゾーンを明確に区別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内を走査しターゲット部位の情報を取得して治療や診断する体腔内診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内診断システムは、心臓の冠動脈、胆管、尿道管、消化管等の体腔にカテーテルを挿入し、このカテーテル内に設けられた信号送受信部材を、治療や診断を行うターゲット部位に対応する位置にセットした後、移動乃至軸中心に回転し、体腔内を走査し、体腔の内面若しくは断面の画像を観察したり、血流測定等を行い、治療や診断に供するものである。この場合、信号送受信部材を、一旦前記ターゲット部位を越えて移動させた後に後退(プルバック)させて走査することからプルバックシステムとも称されている。
【0003】
このシステムでは、信号送受信部材と駆動シャフトとを含むカテーテル部分と、信号送受信部材を駆動シャフトを介して回転駆動させる駆動部及び駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段などの機器部分とを有し、移動手段により駆動部を基台上において前進−後退動作させて駆動シャフトを軸方向に移動したり、駆動シャフトを駆動部により軸中心に回転させている。そして、その使用の実際は、カテーテル部分は、いわゆるシングルユースされ、駆動部などの機器はリユースされることが多い。この場合、滅菌された新規なカテーテル部分は、非滅菌部分でリユースされる機器部分と脱着されるので、機器部分と接触すればカテーテル部分の基部が汚染されることになり、カテーテル部分の基部を術者が把持すると、術者の手なども汚染されるおそれがある。したがって、使用に当っては、リユースされる機器部分などを袋状の滅菌シートで包み、カテーテル部分の汚染を防止している。
【0004】
しかしながら、プルバック動作の前後で駆動部と基台の間に滅菌シートが入り込み巻き込まれるという事例が報告されている。この課題を解決するために、例えば、下記特許文献1では、基台上に駆動部を移動可能に設けると共に、基台の先端にカテーテルの基部を保持する保持部を設け、滅菌シートにより駆動部と保持部を覆い、滅菌シートに開設された通孔からカテーテルの基部を滅菌シート内に挿入するようにした体腔内診断システムが開示されている。
【0005】
この体腔内診断システムでは、滅菌シートにより保持部や駆動部を覆い、滅菌シートの一部を駆動部と保持部で保持しているが、制御部からの駆動信号により駆動部をプルバック動作させると、駆動部が滅菌シート内で後退移動し、滅菌シートが引っ張られることになる。これに対応させるため、駆動部と保持部と間の滅菌シートを、シートを折り返して形成した蛇腹構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/001956 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、滅菌シートに蛇腹状の折り目を設けるのは、手間が掛かり、かつ、プルバック動作に耐え得る適切な折り目を設けるのは容易ではない。また、蛇腹状の折り目を設けた場合、プルバック動作を終えて、再度プルバック動作を行うために、駆動部を所定位置に戻す際に滅菌シートを巻き込むおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、簡便な構造で駆動部を円滑に操作でき、治療や診断の精度が低下するおそれがない、体腔内診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、基台上に、カテーテルを位置固定的に保持する保持部と、カテーテル内に挿入され、先端に信号を送受信する信号送受信部材を有する駆動シャフトを回転駆動する駆動部と、前記駆動部を前記保持部に対し前記基台上で近接離間させ前記駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段と、を設け、前記駆動シャフトを前記駆動部及び移動手段により回転しつつ軸方向に移動し前記信号送受信部材との間で信号を送受信し体腔内の情報を取得する体腔内診断システムであって、前記基台、駆動部及び移動手段を覆う第1滅菌シートの他に、前記駆動部と前記保持部との間に筒状の第2滅菌シートを設け、前記駆動部側の汚染ゾーンと前記保持部側の清潔ゾーンとを前記第2滅菌シートにより明確に仕切り、カテーテルが汚染されないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1によれば、基台、駆動部及び移動手段を第1滅菌シートにより覆う一方、保持部と駆動部との間に第2滅菌シートを設け、前記駆動部側と前記保持部側とを前記第2滅菌シートにより仕切るので、清潔ゾーンと汚染ゾーンが第1及び第2の滅菌シートにより明確に区別され、カテーテルの脱着を清潔ゾーンである滅菌袋外で行うことができ、カテーテルが汚染されることがない。
【0011】
請求項2によれば、第2滅菌シートの基端部側に、前記駆動部と連結するアダプタを設け、当該アダプタを前記駆動部に連結することにより前記駆動部の先端部との間で前記第2滅菌シートの基端部を挟持し、前記駆動部側と前記保持部側とを前記第2滅菌シートにより仕切るようにしたので、手技を行う前の準備段階でも、まず、駆動部が載置されている基台を第1滅菌シート内に収納した後に、第2滅菌シートの基端部に設けたアダプタにカテーテルを連結した状態で駆動部に連結するのみで、準備作業が完了する。したがって、短時間の内に準備作業が完了し、手技を速やかに開始できる。また、この準備作業時でも、清潔ゾーンと汚染ゾーンとの接触などに注意を払う必要なく、容易に行うことができる。
【0012】
請求項3によれば、前記駆動部をプルバック動作させるとき、第2滅菌シートが伸縮する構成としたので、プルバック動作に第2滅菌シートが悪影響を及ぼすことがなく、円滑にプルバック動作を行うことができる。また、余裕代を確保する操作を行う必要もなく、そのスペースを確保することもないので、準備操作が容易になり、駆動部もコンパクトなものとなる。
【0013】
請求項4によれば、第2滅菌シートを蛇腹により構成したので、駆動部のプルバック動作などの時に、円滑に伸縮し、プルバック動作などの操作性がよいものとなる。
【0014】
請求項5、6によれば、第2滅菌シート自体を伸縮性材料、特に、ラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルの内の少なくとも1つにより構成したので、伸縮性の高い滅菌シートとなり、操作性の点で一層有利となる。
【0015】
請求項7によれば、第2滅菌シートの基端部に、前記アダプタの頭部と前記駆動部の先端部との間で挟持されるシールリングを設けたので、駆動部側の汚染ゾーンとカテーテル側の清潔ゾーンとを確実に仕切ることができる。
【0016】
請求項8によれば、前記第2滅菌シートを、150mm以上伸張しても破断しないものとすれば、通常のプルバック動作に対処できる、実用的な体腔内診断システムとなる。
【0017】
請求項9によれば、アダプタを、前記駆動部内に挿入される挿入部と、前記駆動部の先端部との間で第2滅菌シートの基端部を挟持する頭部とを有し、前記挿入部を前記駆動部に挿入することにより前記駆動部と連結する構成としたので、アダプタを駆動部に連結するのみで、汚染されている可能性のある駆動部側の汚染ゾーンとカテーテル側の清潔ゾーンとを確実に仕切ることができる。
【0018】
請求項10によれば、前記保持部を、前記基台上に立設され、内部に前記アダプタが挿通し得る通孔を有する保持台と、当該保持台の前記通孔に嵌合され、内部に前記駆動シャフトが挿通される挿通孔を有する嵌合部材とから構成し、当該嵌合部材を前記保持台に嵌合することにより前記アダプタ側から突出された接続管と前記駆動シャフトの基端部とを電気的及び機械的に連結するようにしたので、前記アダプタを保持台の通孔に挿通し、駆動部と連結した後、嵌合部材を保持台の通孔に嵌合すれば、駆動シャフトが挿入されたカテーテルと駆動部との連結や、駆動部との間での第2滅菌シートの挟持を一連の動作で行うことができ、操作性が極めて向上する。
【0019】
請求項11によれば、前記第1滅菌シートを光透過性材料により構成したので、外部から駆動部の位置などが目視でき、操作性の点で一層有利となる。
【0020】
請求項12によれば、体腔内診断システムにおいて、少なくとも駆動部及び移動手段などのリユースされる機器部分を第1滅菌シートにより覆う場合、前記機器部分の一部である駆動部側と、シングルユースされるカテーテル部分を保持する保持部側とを仕切る第2滅菌シートを設けると、清潔ゾーンと汚染ゾーンが第1及び第2の滅菌シートにより明確に区別する滅菌シートとなり、カテーテルの脱着を清潔ゾーンである滅菌袋外で行うことができ、カテーテルが汚染されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る体腔内診断システムを示す全体図である。
【図2】カテーテルの先端部の拡大断面図である。
【図3】カテーテルの基部を示す拡大断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う矢視図である。
【図5】(A)はプルバック動作開始時の状態を示す概略断面図、(B)はプルバック動作終了時の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係る体腔内診断システムを概説すれば、図1において、体腔内に挿入されるカテーテル1と、カテーテル1の基端部を位置固定的に保持する保持部40と、ハブ部20と、カテーテル1内に挿通された駆動シャフトDと、駆動シャフトDの先端部に設けられた信号送受信部30と、駆動シャフトDを回転駆動する駆動部70と、駆動シャフトDを軸方向に移動させる移動手段部80と、保持部40及び駆動部70などを覆う滅菌シート60と、滅菌シート60の開口に設けられ、駆動シャフトDと駆動部70とを連結するアダプタ50と、を有している。
【0024】
なお、本明細書では、体腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0025】
さらに詳述する。まず、駆動部70は、図1に示すように、内部にモータ(不図示)等を有するドライブユニット71と、ドライブユニット71と電気的に接続されると共に、信号送受信部30(具体的には、近赤外光を出射する光ファイバの光出射端部あるいは超音波トランスデューサ)を制御する送受信回路72と、を有し、ドライブユニット71はスライダ部73を介して基台74の溝レール75に載置され、前後進可能とされている。
【0026】
移動手段80は、基台74上に設けられ、駆動部70を溝レール75に沿って前後進させる送り機構である。ただし、駆動部70を前後進させる手段としては、自動的に前後進させる送り機構のみでなく、術者が手動で行うようにしてもよい。なお、駆動部70及び移動手段80は、制御部Cにより制御されるようになっているが、これらは、公知に属するため、詳細な説明は省略する。
【0027】
次に、カテーテル1は、きわめて細い管であり、図1に示すように、細径の先端部材2と比較的大径の本体部3から構成されている。先端部材2は、図2に示すように、上部にワイヤ挿通部4が設けられ、先端には栓体5が設けられている。ワイヤ挿通部4は、カテーテル1を体腔内に挿入するときのガイドとして使用するガイドワイヤ6(図1参照)が挿通される部分であり、ワイヤ挿通部4にガイドワイヤ6を挿通した状態で、ガイドワイヤ6のみを予め体腔内に挿入し、このガイドワイヤ6に沿ってカテーテル1を体腔のターゲット部位まで導くようにしている。
【0028】
なお、ワイヤ挿通部4の先端部位や、先端部材2と本体部3には、X線造影マーカーMが設けられ、外部からカテーテル各部の位置を知ることができるようになっている。
【0029】
カテーテル1は、柔軟で所定の引張強度を有する、外径が0.5mm〜1.5mm程度の管体が使用される。構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂等の各種樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴムが挙げられる。
【0030】
駆動シャフトDは、細くて長いカテーテル1内に設けられ、基端側のドライブユニット71や移動手段80による駆動力、つまり回転力と軸方向力を、先端部位に固定されている信号送受信部30に伝達し、これを操作するものである。したがって、駆動シャフトDは、撓まず、座屈せずかつ捩りに対し変形しにくいものであって、ドライブユニット71の駆動力を信号送受信部30に確実に伝達可能な特性を有する柔軟な線材が好ましい。例えば、駆動シャフトDとしては、金、銀またはこれらの合金、ステンレス鋼、その他鉄系合金、銅または銅合金等の各種金属材料からなる線材を用い、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体としたものが好ましい(図2参照)。このようにすれば、軸方向に進退移動させる場合に座屈などのおそれが少なく、回転力や軸方向力の伝達性に優れたものとなり、しかも、駆動シャフトDの内部に空間部が生じるので、ここに、ドライブユニット71と信号送受信部30とを接続する信号路33(図3参照)を通すことができる。
【0031】
ただし、駆動シャフトDは、長尺なものであるため、軸方向に進退あるいは軸中心に回転すると、周辺部材との間で摩擦抵抗が生じ、駆動力が確実に伝達されないおそれがある。このため、駆動シャフトDの外表面に摩擦抵抗の少ないフィルムをラミネートするかあるいは湿潤状態で潤滑性を有する親水性高分子物質よりなる層(潤滑層)を形成することが好ましい。
【0032】
なお、ラミネートフィルムとしては、PTFEなどのフッ素樹脂が例示できる。また、親水性高分子物質としては、天然高分子物質系のもの(例:デンプン系、セルロース系、タンニン・ニグニン系、多糖類系、タンパク質)と、合成高分子物質系のもの(PVA系、ポリエチレンオキサイド系、アクリル酸系、無水マレイン酸系、フタル酸系、水溶性ポリエステル、ケトンアルデヒド樹脂、(メタ)アクリルアミド系、ビニル異節環系、ポリアミン系、ポリ電解質、水溶性ナイロン系、アクリル酸グリシジルアクリレート系)とがある。これらのうちでも、特に、セルロース系高分子物質(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリジメチルアクリルアミド)、水溶性ナイロンまたはそれらの誘導体は、低い摩擦係数が安定的に得られるので好ましい。
【0033】
信号送受信部30は、近赤外光を用いて血管内の診断を行う光干渉断層撮影装置の場合は、例えば、光ファイバから導かれた光を出射する光出射端部であり、超音波を用いて血管内の診断を行う超音波検査システムの場合は、超音波トランスデューサである。例えば、図2に示すように、駆動シャフトDの先端にハウジング31が固定され、ハウジング31内に信号送受信部材32(光出射端部あるいは超音波振動子)が設置されており、信号送受信部材32は、駆動シャフトD内の空間部に設けられた信号路33を介して制御部Cと接続されている。したがって、信号送受信部30は、駆動シャフトDと共に回転あるいは軸方向移動し、信号送受信部材32の発する信号がターゲット部位に当って反射する反射波を受信し、この受信信号が信号路33を介して制御部Cに入力されるようになっている。
【0034】
ハブ部20は、後述のアダプタ50と共働し、長尺な駆動シャフトDの連結と、駆動シャフトDの軸方向移動を円滑にするためのものであり、図3に示すように、ハブ本体21と、耐キンクプロテクタ23とを有している。ハブ本体21と耐キンクプロテクタ23とは、いわゆるワンタッチ式に連結される凹凸嵌合部24で連結されている。ハブ本体21内には通路25が形成され、駆動シャフトDが挿通されている。
【0035】
ハブ本体21の先端側には、連結管26の基端部が取付けられている。連結管26は、カテーテル1とハブ部20とを連通するもので、その先端側は、後述の保持部40に保持されるカテーテル1内に挿入されている。したがって、プルバック動作などによりハブ部20が軸方向に進退すると、これに伴って連結管26もカテーテル1内で進退することになり、駆動シャフトDが外部に露出することはない。
【0036】
連結管26内には、駆動シャフトDが挿通されているが、駆動シャフトDは、ハブ本体21内において、接続パイプ29の先端部に設けられた接続部29aと脱着可能に連結されている。接続パイプ29は、後述のアダプタ50から突設されており、駆動シャフトDと接続されると、機械的及び電気的に接続されるようになっている。
【0037】
ハブ本体21の基端側には、封止部材27が設けられ、通路25に挿通された駆動シャフトDとの間をOリングなどのシール材28によりシールしている。
【0038】
本実施形態の保持部40は、図3に示すように、基台74の先端側に立設された保持台41と、保持台41の中央に開設された通孔42に嵌合される嵌合部材43と、から構成されている。
【0039】
保持台41は、図4に示すように、内周面が先端側に向って拡開するテーパ状に形成された略円形をした通孔42が中央に形成された、外形が略円形をしたブロック部材であり、基台74に対し脱着可能に連結されている。
【0040】
嵌合部材43は、通孔42に嵌合される略円筒形をしたブロック部材であり、中心部分には通路44が開設され、基端部には凹部45が形成されている。また、先端側には中心部分より軸方向に突出されたガイドパイプ46が形成され、カテーテル1の基端部をカバーしている。したがって、この通路44内には、駆動シャフトD、連結管26、保護チューブ16及びカテーテル1が挿通されることになる。
【0041】
連結管26は、ハブ部20がプルバック動作などにより軸方向に進退しても駆動シャフトDが外部に露出しないようにするもので、基端がハブ本体21に取り付けられ、先端はカテーテル1内にまで伸延されている。
【0042】
保護チューブ16とカテーテル1は、その基端部が嵌合部材43に取り付けられている。この取付けは、接着剤あるいは機械的なものなど、どのような方法であってもよいが、例えば、機械的な方法としては、図外のねじ部材を嵌合部材43の凹部45の内周面45aに螺合させ、保護チューブ16とカテーテル1の基端部を嵌合部材43の底面45bとの間で挟持するものがある。このよう方法で取付ければ、カテーテル1などと保持部40が別体構造にすることができ、カテーテル1などの交換が容易になる。
【0043】
カテーテル1の内部に設けられた保護チューブ16は、駆動シャフトDの座屈を防止するものであり、比較的大径の本体部3内に位置するように設けられている。
【0044】
保護チューブ16の設置により、駆動シャフトDの撓みや座屈などが防止できるので、前述したラミネートフィルムや潤滑層は必ずしも設けなくてもよいが、さらに確実に撓みや座屈などを防止する場合には、両者併用してもよい。
【0045】
加えて、保護チューブ16は、多数の通孔が開設されたものあるいはコイル状の構成としてもよい。軸方向に伸縮可能なコイル状の構造とすれば、駆動シャフトDの撓み変形に追従して保護チューブ16も変形し、駆動シャフトDの座屈をより確実に防止することができる。
【0046】
保持部40には、図1、3に示すように、滅菌シート60の端部が取り付けられている。滅菌シート60は、基本的には、清潔ゾーン(手技を行うゾーン)と、汚染ゾーン(駆動部70などがリユースされることにより汚染されるおそれのある駆動部70近傍のゾーン)とを仕切り、術者などを汚染から守るためのものであるが、本実施形態では、概して機器部全体を覆う第1滅菌シート61と、第1滅菌シート61内に設けられた第2滅菌シート62とから構成されている。
【0047】
第1滅菌シート61は、先端が保持部40に取り付けられ、この保持部40から後方に伸延され、基台74、駆動部70及び移動手段80を覆うように設けられており、保持台41から駆動部70の上部を覆う上半部61aと、保持台41から下方に延びて基台74を覆う下半部61bとから構成されている。上半部61a及び下半部61bは、一体化された袋状のものであっても、あるいはチャックなどにより連結された袋状のものであってもよい。なお、第1滅菌シート61の先端側は、嵌合部材43を保持台41に取り付けるために、保持台41の中央部分は露呈されている。
【0048】
滅菌シート60の先端側を保持台41に取付ける手段としては、どのようなものであってもよいが、例えば、接着剤あるいは熱融着が好ましいが、機械的な嵌め込み式の取付けであってもよい。
【0049】
第2滅菌シート62は、保持部40と駆動部70との間に設けられた筒状をしたものであり、先端部が保持台41の基端側端面に取付けられ、基端部は後述のアダプタ50の頭部51に取付けられている。アダプタ50への取付けは、第2滅菌シート62の口縁部分に設けられたシールリング65を介して行なわれている。このシールリング65は、アダプタ50が駆動部70に連結されたとき、アダプタ50の頭部51と駆動部70の先端面との間で挟圧され、第2滅菌シート62と駆動部70との間を封止し、汚染ゾーンと清潔ゾーンとの間の仕切りを確実なものにすることができる。
【0050】
第1滅菌シート61の構成材料としては、薄肉で引張り強度を有するものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ポリエチレンなどを使用することができる。また、この第1滅菌シート61は、少なくとも外部から内部が目視できる光透過性材料とすることが好ましい。このようにすれば、外部から駆動部70の位置やカテーテル1の位置が目視でき、操作性の点で一層有利となる。
【0051】
第2滅菌シート62の構成材料としては、駆動部70のプルバック動作に伴って伸縮する材料、例えば、熱可塑性エラストマー(オレフィン系、塩化ビニル系、スチレン系)及び熱硬化性エラストマー(ウレタン系、シリコーン系、ニトリル系)などを挙げることができ、より具体的には、ラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルなどが好ましい。このような伸縮性材料であれば、駆動部70がプルバック動作するとき、第2滅菌シート62が容易に伸張し、駆動部70を極めて円滑に動作させることができ、作動性の点で一層有利となる。また、第2滅菌シート62は、蛇腹状に形成してもよく、また、伸縮性材料のものを蛇腹状としてもよい。このようにすれば、プルバック動作時あるいは駆動部70を所定位置に戻す際も第2滅菌シート62が巻き込まれるおそれがなく、しかも円滑に伸縮し、コンパクトであるにもかかわらず伸縮する距離も長くなり、作動性の点で一層有利となる。
【0052】
アダプタ50は、これを駆動部70に挿入するのみで連結される、いわゆるワンタッチ式の取付け構造としている。このようにすれば、アダプタ50を駆動部70に挿入するのみで、第2滅菌シート62の基端部を、駆動部70の先端部とアダプタ50との間で簡単に挟持でき、準備段階での作業性が向上することになる。
【0053】
アダプタ50としては、駆動部70からの駆動力を駆動シャフトDに速やかに伝達することができ、ドライブユニット71にワンタッチで連結できるものであれば、どのようなものであってもよいが、一例を示せば、図3に示すようなものがある。
【0054】
図3に示すアダプタ50は、ハブ本体21の基端部が入り込む中央開口部52を有し、かつ基端側端面に第2滅菌シート62の基端部が取付けられる頭部51と、頭部51に一体的に設けられた胴部53と、胴部53に対し軸受54を介して回転可能に設けられた脚部55とを有している。
【0055】
頭部51は、ハブ本体21と連結される部分で、この連結を容易にするため、頭部51の中央には中央開口部52が設けられ、中央開口部52の内周面には凹溝が形成され、ハブ本体21の基端部に設けられたボール部材56がバネにより弾発されて嵌合し、ワンタッチで連結できるようになっている。また、胴部53の基端部にも、駆動部70とワンタッチで嵌合されるバネ弾発のボール部材57が設けられている。
【0056】
脚部55の先端側には、前記接続パイプ29の基端部が連結され、脚部55の基端側は、ドライブユニット71の中央通路に挿通され、内部にロータ部58と、ドライブユニット71側の雌コネクタ(不図示)と連結される雄コネクタ59と、が設けられている。
【0057】
このようにアダプタ50とハブ本体21とは、接続パイプ29を介して連結されるので、アダプタ50側とカテーテル1側とは別体に取り扱うことができ、アダプタ50を予め滅菌シート60に取り付けていても、ハブ本体21をアダプタ50にワンタッチ式に嵌合連結するのみで、駆動シャフトDがドライブユニット71と機械的にも電気的にも接続されることになる。
【0058】
なお、本実施形態の接続パイプ29は、アダプタ50から比較的長く突出しているが、これを短くし、アダプタ50の近傍で駆動シャフトDと連結する構成にしてもよい。このようにすれば、アダプタ50の先端側で駆動シャフトDと接続パイプ29との連結ができ、連結操作が容易になる。
【0059】
次に、前記実施形態の作用を説明する。
【0060】
まず、準備段階から説明する。カテーテル1内に駆動シャフトDの先端側を挿入する。なお、カテーテル1の基端側には、ハブ部20、嵌合部材43が取付けられている。
【0061】
そして、駆動部70が載置されている基台74を第1滅菌シート61内に収納した後に、第2滅菌シート62に取付けられているアダプタ50をドライブユニット71に挿入して連結する。これにより雄コネクタ59とドライブユニット71側の雌コネクタが連結され、また、第2滅菌シート62の基端部に設けられているシールリング65が駆動部70の先端部とアダプタ50の頭部51との間で挟持され、第2滅菌シート62が保持台41とアダプタ50との間に取り付けられることになる。
【0062】
次に、カテーテル1の基端側に設けられたハブ部20を保持台41の通孔42を通し、ハブ部20の基端部をアダプタ50に連結する。この連結は、ワンタッチで行われる。また、アダプタ50側から突出されている接続パイプ29と駆動シャフトDの基端側を連結すれば、カテーテル1は、ドライブユニット71と機械的に連結された状態になる。
【0063】
この結果、カテーテル1が汚染されている駆動部70と連結されることになっても、この連結は、ハブ部20及びアダプタ50を介して行われ、しかもこれらは第2滅菌シート62内にあるため、カテーテル1側が汚染されることはなく、手技を行うゾーンである清潔ゾーンと、リユースされ汚染されている可能性の高い駆動部70が存在している汚染ゾーンとが確実に仕切られることになる。
【0064】
そして、嵌合部材43を保持台41の通孔42に嵌合する。これにより、カテーテル1の基端側が保持台41に保持された状態になる。これで準備作業が完了する。つまり、駆動部70が載置されている基台74を第1滅菌シート61内に収納した後に、第2滅菌シート62に設けられているアダプタ50とハブ部20を連結し、嵌合部材43を保持台41の通孔42に嵌合するのみで、準備作業が完了することになり、短時間の内に準備作業が完了し、手技を速やかに開始できる。
【0065】
手技の開始に当っては、まず、駆動シャフトDをカテーテル1内で前進させて、信号送受信部30をカテーテル1の先端付近に位置させた後、カテーテル1を体腔内に挿入し、カテーテル1の先端が所定のターゲット部位を越えると挿入を停止すると共に、カテーテル1を固定する。
【0066】
この状態で、移動手段80を作動させるかあるいは手動で駆動部70を基端側に引き戻しつつ、駆動部70のモータを回転させる。これにより、駆動シャフトDは、雄コネクタ46及びロータ部52などを介してカテーテル1内で回転しつつ、カテーテル1が元に位置のままであるため、基端側に引き戻され(プルバックされ)ることになる。
【0067】
したがって、信号送受信部30は、カテーテル1内で軸方向に後退しつつ回転し、体腔の所定位置にあるターゲット部位の軸方向前後に渡る形状の3次元画像データを制御部Cに送ることができる。
【0068】
一度基端側に後退させたアダプタ50を、再度前進してターゲット部位を観察する場合、駆動シャフトDは、狭いカテーテル1に入っていくことになるので、その摩擦抵抗により駆動シャフトDの基端側で撓みや座屈が生じるおそれがあるが、この領域には保護チューブ16が設けられているので、この基端側での撓みや座屈の発生は防止される。なお、駆動シャフトDに撓みが発生したとしても、保護チューブ16が疎巻きコイル状などの場合には、保護チューブ16自体も穏やかに撓むので、駆動シャフトDの座屈は防止される。したがって、駆動シャフトDのスムーズな前進操作が可能になる。
【0069】
特に、本実施形態では、駆動部70を基端側に後退させる場合、第2滅菌シート62が駆動部70により後方に引っ張られることになるが、第2滅菌シート62は、伸縮材料により構成されているので、保持部40とアダプタ50との間で自由に伸張し、プルバック動作の邪魔をすることはなく、円滑にプルバック動作を行うことができる。この結果、ターゲット部位に対応する位置に駆動シャフトDを正確に位置させることもでき、治療や診断の精度が向上することになる。また、第2滅菌シートが蛇腹により構成されたものであれば、駆動部70のプルバック動作時に、第2滅菌シートは、より円滑に伸縮することになり、より作動性乃至操作性のよいものとなる。
【0070】
さらに、本実施形態では、第1滅菌シート61が光透過性材料であるため、外部から駆動部70の位置が目視でき、滅菌シートが光不透過性である場合と比べて操作を行いやすく、プルバックの操作性が向上する。この場合、第1滅菌シート60のみでなく第2滅菌シート62も光透過性材料であれば、内部を位置関係が全体的に把握でき、さらに操作性が向上する。
【0071】
前述したプルバック操作により第2滅菌シート62は、アダプタ50の前進位置から後退位置までの距離分伸長されることになる。例えば、図5(A)に示すプルバック動作前の、保持台41の基端側の面からアダプタ50の前端側の面までの距離をL1とし、図5(B)に示すプルバック動作完了後の、保持台41の基端側の面からアダプタ50の前端側の面までの距離をL2とした場合、第2滅菌シート62のプルバックによる伸び量Lは、(L2−L1)になるが、一般にプルバック量は、150mm程度であるので、本実施形態の第2滅菌シート62は、材料的にも寸法的にも150mm以上伸張されても破断しない構成となっている。
【0072】
ターゲット部位のデータを取得した後は、カテーテル1の固定を解き、保持台41から嵌合部材43を外すと共に、ハブ部20を引き出す。そして、体腔内からカテーテル1を抜去する。この場合、ハブ部20の基端が駆動部70により汚染されている可能性があるが、第2滅菌シート62により覆われているので、汚染が広がることはない。
【0073】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述した実施形態では、保持台41とアダプタ50との間に第2滅菌シート62を配置したものであるが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、例えば、第1滅菌シート61と第2滅菌シート62とを一体的に形成し、保持部40の通孔42内に第2滅菌シート62全体を通し、嵌合部材43と通孔42の内周面との間で挟持するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、生体組織の体腔に存在するターゲット部位の画像を取得して治療や診断に使用する体腔内診断システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1…カテーテル、
20…ハブ部、
26…連結管、
29…接続管、
30…信号送受信部、
32…信号送受信部材、
40…保持部、
41…保持台、
42…通孔、
43…嵌合部材、
50…アダプタ、
51…頭部、
53…挿入部、
61…第1滅菌シート、
62…第2滅菌シート、
65…シールリング、
70…駆動部、
74…基台、
80…移動手段、
D…駆動シャフト、
S…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に、カテーテルを位置固定的に保持する保持部と、前記カテーテル内に挿入され、先端に信号を送受信する信号送受信部材を有する駆動シャフトを回転駆動する駆動部と、前記駆動部を前記保持部に対し前記基台上で近接離間させ前記駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段と、を設け、前記駆動シャフトを前記駆動部及び移動手段により回転しつつ軸方向に移動し前記信号送受信部材との間で信号を送受信し体腔内の情報を取得する体腔内診断システムであって、
前記基台、前記駆動部及び移動手段を覆う第1滅菌シートと、
前記保持部と前記駆動部との間に設けられ、先端部が前記保持部に取付けられた筒状の第2滅菌シートと、を有することを特徴とする体腔内診断システム。
【請求項2】
前記第2滅菌シートは、基端部側に前記駆動部と連結するアダプタが取付けられ、当該アダプタを前記駆動部に連結することにより前記駆動部の先端部との間で前記基端部が挟持され、前記駆動部側と前記保持部側とを前記第2滅菌シートにより仕切るようにしたことを特徴とする請求項1に記載の体腔内診断システム。
【請求項3】
前記第2滅菌シートは、前記基台上での前記駆動部と前記保持部との相対的に近接離間移動に伴って伸縮する構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の体腔内診断システム。
【請求項4】
前記第2滅菌シートは、蛇腹により構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の体腔内診断システム。
【請求項5】
前記第2滅菌シートは、伸縮性材料により構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の体腔内診断システム。
【請求項6】
前記伸縮性材料は、ラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルの内の少なくとも1つよりなる請求項5に記載の体腔内診断システム。
【請求項7】
前記第2滅菌シートは、基端部に前記アダプタの頭部と前記駆動部の先端部との間で挟持されるシールリングを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の体腔内診断システム。
【請求項8】
前記第2滅菌シートは、少なくとも150mmの長さに伸張されても破断しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の体腔内診断システム。
【請求項9】
前記アダプタは、前記駆動部内に挿入される挿入部と、前記駆動部の先端部との間で前記第2滅菌シートの基端部を挟持する頭部とを有し、前記挿入部を前記駆動部に挿入することにより前記駆動部と連結する構成としたことを特徴とする請求項2に記載の体腔内診断システム。
【請求項10】
前記保持部は、前記基台上に立設され、内部に前記アダプタ、及び、前記カテーテル内で進退するように設けられた連結管の基端側が取付けられるハブ部が挿通し得る通孔を有する保持台と、前記通孔に嵌合され、前記カテーテルの基端部が取付けられた嵌合部材と、を有し、前記嵌合部材を前記保持台に嵌合することにより前記アダプタ側から突出された接続管と前記駆動シャフトの基端部とを電気的及び機械的に連結するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の体腔内診断システム。
【請求項11】
前記第1滅菌シートは、光透過性材料により構成したことを特徴とする請求項1に記載の体腔内診断システム。
【請求項12】
基台上に、カテーテルを位置固定的に保持する保持部と、前記カテーテル内に挿入され、先端に信号を送受信する信号送受信部材を有する駆動シャフトを回転駆動する駆動部と、前記駆動部を前記保持部に対し前記基台上で近接離間させ前記駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段と、を設け、前記駆動シャフトを前記駆動部及び移動手段により回転しつつ軸方向に移動し前記信号送受信部材との間で信号を送受信し体腔内の情報を取得する体腔内診断システムに使用される滅菌シートであって、
前記基台、前記駆動部及び移動手段を覆う第1滅菌シートと、
前記保持部と前記駆動部との間に設けられ、先端部が前記保持部に取付けられた筒状の第2滅菌シートと、を有することを特徴とする滅菌シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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