説明

作動油タンク

【課題】戻った作動油の流速を効率的に低減させ、除去した気泡を上方の油面まで確実に到達させて除去できる作動油タンクを提供すること。
【解決手段】タンク本体2内の作動油中に浸漬される気泡除去装置4を有した作動油タンク1であって、気泡除去装置4を、タンク本体2内に戻された作動油が上方から流入するとともに、平面方向に広がりを有する流入空間47と、流入空間47の上方を覆い、かつ上下に連通した多数の連通孔42Dを有するハニカム構造体42とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油タンクに係り、例えば、ホイールローダや油圧ショベルといった油圧駆動の作業機を有する建設機械の作動油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械には、油圧シリンダによって駆動されるアームやブーム、あるいはバケットといった作業機が設けられているとともに、油圧シリンダへ供給される作動油を貯留する作動油タンクが取り付けられている。作動油タンクから油圧ポンプを介して油圧シリンダへ供給された作動油は、油圧シリンダの進退動作に伴って作動油タンクへ戻り、再度作動油タンクから油圧シリンダへ供給され、これを繰り返す。
【0003】
ところで、油圧シリンダから作動油タンクへ戻る作動油中には多くの気泡が混入しており、作動油タンクから再度供給される作動油中に気泡がそのまま混入していると、それを吸い込んだ油圧ポンプ内でキャビテーションが生じ、振動や騒音、さらには油圧機器の損傷の原因となる。そこで、作動油タンクとしては、油圧シリンダから戻った作動油中の気泡を除去する構造が採用されており、気泡が除去された作動油を作動油タンクから供給することで、キャビテーションの発生を抑制している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1においては、水平管部を通して作動油タンク内に戻った作動油を垂直管部に導き、垂直管内に設けられた邪魔板に衝突させる。邪魔板には複数の脱泡穴が設けられており、衝突した作動油中の気泡が脱泡穴を通して邪魔板の裏側に抜け、作動油中から分離される。
【0005】
また、脱泡穴では、衝突した作動油の一部も気泡が存在した状態で通過するが、この通過した作動油は、鉛直管部の壁面(水平管部が接続されている壁面とは反対側の壁面)に衝突し、この壁面に設けられた排出穴により作動油中の気泡が除去される。除去された気泡は、脱泡穴や排出穴を通して作動油タンク内の空間に放出される。一方、気泡が除去された衝突後の作動油は鉛直管部内を流下し、作動油タンク内にもとから存在する作動油と一緒になる。
【0006】
特許文献2においては、鉛直な管状のリターン口の下端側が作動油タンク内の作動油中に開口しているとともに、この開口側を所定のオーバーラップ代を持って覆うように作動油タンクの底部に筒状部が設けられている。リターン口から戻った作動油は、筒状部内に上方から下方に向けて下向きに流れ込んだ後、筒状部内で上向きに転じ、筒状部とリターン口との間を通って筒状部の上方の開口部分からオーバーフローする。
【0007】
この際、筒状部内に下方に向けて戻った作動油は、上向きに方向転換する間に筒状部内に一時的に捕捉されることになり、捕捉されている間に比重の軽い気泡が上方に浮上して油面まで達し、作動油タンク内の空間に放出される。気泡が除かれた作動油は筒状部からオーバーフローし、作動油タンクにもともとある作動油と一緒になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−170601号公報
【特許文献2】特開平8−198269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1によれば、垂直管部内での実際の油面の高さは、文献中に図示されているのとは異なって、作動油タンク内全体の油面の高さと同じになるから、垂直管部内で邪魔板に直接衝突する範囲は小さく、脱泡を効果的に行い難い。しかも、垂直管部内での油面の高さが他の部分と同じように高いことで、垂直管部内に戻った作動油が油面に勢いよくぶつかることになり、この際に垂直管部内に存在する空気が作動油中に気泡として混ざり込む可能性が高い。そして、垂直管部内では、戻った作動油の勢いにより、混ざり込んだ気泡がそのまま作動油と共に垂直管部の下端から流出し、作動油に混ざった状態で再び油圧ポンプで引き込まれるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2によれば、リターン口と筒状部との間の開口面積(つまり、オーバーラップ部分の開口面積であり、筒状部の開口面積とリターン口の開口面積との差分に相当)はさほど大きくないことから、リターン口から筒状部に戻った作動油の勢いにより、オーバーラップ部分に存在する作動油も勢いよく上方に流れ出ることになる。従って、オーバーラップ部分から流れ出た作動油は、直上のリターン口回りの油面を大きく波立たせ、油面にて攪拌作用を生じさせることになるため、戻った作動油中の気泡を除去するどころか、浮上途中の気泡を周囲に散らしてしまううえ、作動油タンク内の空気を波立った油面にてさらに巻き込み、かえって多くの気泡が混じった作動油をサクション上方に流出させる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、戻った作動油の流速を効率的に低減させ、除去した気泡を上方の油面まで確実に到達させて除去できる作動油タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の作動油タンクは、タンク本体内の作動油中に浸漬される気泡除去装置を有した作動油タンクであって、前記気泡除去装置は、前記タンク本体内に戻された作動油が上方から流入するとともに、平面方向(面内方向あるいは水平方向ともいう)に広がりを有する流入空間と、前記流入空間の上方を覆い、かつ上下に連通した多数の連通孔を有する構造体とを備えていることを特徴とする。
ここで、「平面方向に広がりを有する」とは、流入空間の所下方向の高さに対して、水平方向の長さが十分に大きいことをいう。
【0013】
本発明の作動油タンクでは、前記構造体は、ハニカム構造体であることを特徴とする。 本発明の作動油タンクでは、前記流入空間は、前記構造体に対して下方に対向する底部と、前記底部の周囲を囲う側部とで区画されていることを特徴とする。
本発明の作動油タンクでは、前記気泡除去装置は、前記タンク本体の対向する側面部間に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作動油が流入する流入空間が平面方向に広く形成されているので、流入空間内に上方から流入した作動油を、流入空間内で平面方向に方向変換させて広がる方向に流すことができ、この広がりによって流速を十分に減速させることができる。また、流入空間内から多数の連通孔を通って上方に流れる作動油の流速のばらつきが少なくなるため、気泡を巻き込んだままサクションに流れるような流速は生じない。従って、構造体を通過して上方に向かう作動油の速度も確実に減少するから、作動油の流れによって気泡の浮上が邪魔されることがなく、気泡を油面まで確実に到達させることができて、作動油中から確実に除去できる。
【0015】
本発明において、構造体をハニカム構造体とする場合には、アルミニウム等の軽金属を用いてハニカム構造体を製造できることから、気泡除去装置を軽量化できる。
【0016】
本発明において、側部を含んで流入空間を区画した場合には、側部の上下高さを大きくすることで、気泡の拡散が抑制されるから、構造体自身を薄くしても気泡を油面まで確実に浮上させることができる。従って、構造体を薄くできることにより、作動油タンクの軽量化を図ることができる。
【0017】
本発明において、気泡除去装置をタンク本体の側面部間に接合した場合には、作動油タンク全体の剛性を向上させることができる。また、気泡除去装置がタンク本体内で堅固に固定されるため、特に、建設機械のように、車両の動きによって内部の作動油が大きく揺らぐことになるが、作動油が揺らいでも気泡除去装置の取付状態を良好に維持でき、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る作動油タンクを一部断面して示す斜視図。
【図2】作動油タンクの縦断面図であり、図1のII−II断面図。
【図3】作動油タンクの縦断面図であり、図1のIII−III断面図。
【図4】本発明の第2実施形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3において、作動油タンク1は、ホイールローダや油圧ショベルといった油圧駆動の作業機を備えた建設機械に搭載されるものであって、作業機を構成する図示しない油圧シリンダを含む油圧回路内に組み込まれる。
【0020】
作動油タンク1内に貯留されている作動油は、前記油圧回路中の油圧ポンプにて引き込まれた後、所定の圧力にて制御弁に圧送され、この制御弁を介して油圧シリンダに供給される。また、油圧シリンダからの作動油は、制御弁を通して作動油タンクに戻り、再び油圧ポンプにて圧送され、この循環を繰り返す。
【0021】
本実施形態の作動油タンク1は金属製であり、中空箱状のタンク本体2と、タンク本体2内に収容されたフィルタ装置3と、タンク本体2内に収容されて、フィルタ装置3を通過した作動油中の気泡を除去する気泡除去装置4とを備えている。
【0022】
タンク本体2の一側面部21の上部側には、油圧シリンダから戻った作動油が流入するリターン口22が設けられている。側面部21の内側において、リターン口22には水平管部23の基端が接続されており、水平管部23の先端がフィルタ装置3に連通している。
【0023】
タンク本体2の側面部21に隣接した別の側面部24の下部側には、タンク本体2内の作動油が油圧ポンプによって吸い出される送出口25が設けられている。側面部24の内側において、送出口25にはサクションストレーナ26が取り付けられ、サクションストレーナ26内を通過した作動油が送出口25から吸い出され、油圧ポンプ側に送出される。
【0024】
なお、タンク本体2には、作動油を供給、補充するための供給口や、作動油タンクの貯留量を確認するためのサイドゲージ、内部の圧力変動を抑制するためのブリーザ等が設けられるが、図1〜図3ではそれらの図示を省略してある。
【0025】
フィルタ装置3は、水平管部23の先端が接続された筒状のフィルタケース31を備えている。フィルタケース31の内部には、図示しないフィルタエレメントが収容されている。フィルタケース31の上部は開放しており、タンク本体2の上面部27に設けられた開口部分に接続されている。このような開口部分は取り外し自在な蓋部材32によって覆われており、蓋部材32を外すことでフィルタケース31内のフィルタエレメントを交換可能である。
【0026】
フィルタケース31の下端には、下方に向けて垂下した鉛直管部33が接続されている。鉛直管部33は気泡除去装置4内に挿入されており、フィルタエレメントを通過した作動油は、鉛直管部33を通ってその下端から気泡除去装置4内に流入する。
【0027】
気泡除去装置4は全体箱状とされ、板材により形成されたケース41と、ケース41内に収容された所定厚みを有する直方体状のハニカム構造体42とを備えている。ケース41は、互いに対向した鉛直壁からなる側部としての側壁部43,44を有しているとともに、側壁部43,44と下方の底部45とが一体とされて凹状に形成されている。ハニカム構造体42は、ケース41の底部45の上方全体を覆うように側壁部43,44間に配置され、該側壁部43,44に対して接合されている。
【0028】
ハニカム構造体42は、上下に連通した断面六角形の多数の連通孔42Dを有する構造であり、アルミニウム泊を母材として展張方式あるいはコルゲート方式にて製造されている。ハニカム構造体42の上面42Aは、ケース41の側壁部43,44の上端縁と略同じ高さ位置とされ、ハニカム構造体42の底面42Bは、ケース41の底部45よりも上方に位置している。
【0029】
つまり、ハニカム構造体42とケース41の底部45との間は、底部45の平面方向に広がった所定高さH1を有する流入空間47となっている。そして、気泡除去装置4の前述した鉛直管部33がハニカム構造体42に設けられた挿通孔42Cに上方から挿通され、鉛直管部33の下端が流入空間47内で開口している。
【0030】
ここで、流入空間47の高さH1および水平方向の大きさは、鉛直管部33を通って上方から流入した作動油が底部45にぶつかった後、平面方向に広がることで確実に減速し、流速が十分に弱まる大きさである。
【0031】
以上のような構成の気泡除去装置4は、タンク本体2内の作動油中に浸漬された状態で配置されている。この際、タンク本体2内の作動油の油面レベルは、油圧シリンダの動作等に応じて上下するが、車体の傾斜も考慮した最も低い油面レベルであっても、作動油中に浸漬される位置に気泡除去装置4を配置することが好ましい。
【0032】
気泡除去装置4の対向し合う一対の側壁部43,44の水平方向寸法(幅)L1は、図3に示すように、タンク本体2のリターン口22が設けられた側面部21とこれに対向する側面部28との内面間の距離L2に略等しい(L1=L2)。
【0033】
側壁部43,44および底部45は、各側面部21,28の内面に溶接等により接合されている。このことにより、側面部21,28の一部は、気泡除去装置4の側部としても機能するのであり、側壁部43,44、側面部21,28の一部、および底部45で区画された空間が前述の流入空間47になっている。そして、気泡除去装置4がタンク本体2内に固定され、タンク本体2の側面部21,28間を連結していることから、タンク本体2全体の剛性を向上させている。
【0034】
これに対して気泡除去装置4の側壁部43,44間の距離L3は、図2に示すように、タンク本体2の送出口25が設けられた側面部24とこれに対向する側面部29との間の距離L4よりも小さく(L3<L4)、気泡除去装置4が側面部24,29間の略中央に位置している。従って、気泡除去装置4とタンク本体2の側面部24,29との間には、所定の幅W1を有した流通空間11が形成されている。
【0035】
以下には、作動油タンク1内に戻った作動油の流れ、および作動油中の気泡の除去について説明する。なお、図2、図3において、作動油の流れを太矢印で示してある。
先ず、作業機の油圧シリンダからの気泡を含んだ作動油は、リターン口22からタンク本体2内に戻り、フィルタ装置3内で金属の摩耗粉やその他の不純物が捕集され、この後、鉛直管部33内を通って気泡除去装置4の流入空間47内に流入する。
【0036】
流入空間47内では、鉛直管部33から流出した作動油は底部45にぶつかって平面方向に方向転換し、流入空間47内に広がる。この広がりにより、流入空間47内にもとから存在する作動油が押し出されることから、流入して来た作動油の流速が減速し、勢いが弱まることになる。減速した作動油は、ハニカム構造体42の各細管状の連通孔42D自身が流路抵抗になるうえ、ハニカム構造体42全体が平面方向に広がった大きな流路になることから、上方へ流れる際の流速分布のばらつきが少なく、ゆっくりと上方に向けて流れる。
【0037】
ハニカム構造体42の内部では、比重の軽い気泡が連通孔42Dの連通方向に沿って真っ直ぐ上方に向けて浮上する。ハニカム構造体42を通過した作動油は十分に減速されているため、上方の油面を波立たせることがなく、また、連通孔42Dを出た気泡の上方への浮上を阻害することなく、タンク本体2内にもともとあった作動油と一緒になる。油面に達した気泡は、タンク本体2内の空間内に放出され、これにより作動油中から気泡が良好に除去される。
【0038】
そして、気泡が除去された作動油は、気泡除去装置4横の流通空間11を通って下方に向かい、サクションストレーナ26を通して油圧ポンプで作動油タンク1外に吸い出され、再び作業機側に送出される。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、作動油タンク1に戻った作動油は、気泡除去装置4内の流入空間47で減速し、その勢いが失われるとともに、ハニカム構造体42通過時の流路抵抗や、ハニカム構造体42の平面方向の大きさがそのまま上方へ流れる際の大きな流路となることにより、作動油の流速が一層減少し、流速分布も均一となる。このことから、ハニカム構造体42内を上方に向けて通過した時点では、気泡除去装置4上方にもともとある作動油を攪拌したり、油面を波立たせたりすることがない。従って、戻った作動油によってハニカム構造体42を通過した気泡の浮上が邪魔されるおそれがなく、気泡を確実に油面まで到達させることができて、作動油中から確実に除去できる。そして、作動油中から気泡を除去することで、特に斜軸式や斜板式等の可変式の油圧ポンプでのキャビテーションを有効に防止できる。
【0040】
また、連通孔42Dは十分な長さを有していることで、連通孔42D内にて作動油の流れ方向が整えられるため、連通孔42Dの通過直後においても作動油の流れを安定させることができ、連通孔42Dを出た気泡を上方へよりスムーズに浮上させることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図4には、本発明の第2実施形態に係る作動油タンク1が示されている。本実施形態の作動油タンク1では、気泡除去装置4が箱状とされたタンク本体2の3方の側面部21,24(29)の一部および底面部51の一部を含んで形成されている。
【0042】
具体的に気泡除去装置4は、タンク本体2の側面部21,24(29)の一部および底面部51の一部と、この底面部51に立設された側部としての側壁部52と、底面部51から所定の高さH1だけ上方に位置し、底面部51と平行に配置された板状構造体53とで構成されている。すなわち、各側面部21,24(29)の一部および側壁部52が気泡除去装置4の側部に相当し、底面部51の一部が底部に相当する。そして、底面部51と板状構造体53との間の空間が流入空間47である。
【0043】
側壁部52は、タンク本体2の対向する側面部24(29)間を連結しており、タンク本体2の剛性を向上させているとともに、タンク本体2内を第1区画部54と第2区画部55とに2分している。第1区画部54において気泡除去装置4の板状構造体53が設けられ、第2区画部55では、側面部28の下側にサクションストレーナ26が設けられている。側壁部52の上端は油面近傍まで達しており、板状構造体53よりも十分に高い位置にある。ただし、側壁部52の高さは、最低油面レベルになっても作動油中に漬かる寸法に設定されている。この側壁部52とこれに対向する側面部28との間は流通空間11である。なお、最低油面レベルは、車体傾斜を考慮するのが望ましい。
【0044】
板状構造体53は、厚さ方向(上下方向)に貫通した多数の連通孔53Aを有する1枚のパンチングメタルで形成されている。本実施形態の板状構造体53は平面四角形であり、その一辺が側壁部52に溶接等で接合され、他の3辺がタンク本体2の側面部21,24(29)に接合されている。従って、流入空間47も、底面部51の一部および板状構造体53と同じ広がりをもった空間である。この板状構造体53の挿通孔53Bにフィルタ装置3の鉛直管部33が挿通されている。
【0045】
本実施形態においても、鉛直管部33から流入空間47内に戻った作動油は、底面部51にぶつかって平面方向へと流れ、減速して勢いが衰えるとともに、上方に向きを変えて流れる際の流路面積が大きくなることや、板状構造体53の連通孔53A通過時の流路抵抗により、流速分布が均一化され、かつ流速もさらに減少する。従って、流入空間47から板状構造体53の連通孔53Aを上方に向けて通過する作動油は、十分に減速した状態で通過することになり、比重の軽い気泡の浮上を妨げることがなく、気泡が油面まで良好に到達して作動油からの分離を確実に行える。
【0046】
また、板状構造体53は、第1実施形態のハニカム構造体42に比して格段に薄いため、開口部分である連通孔53Aを通過した直後の作動油の流れ方向が第1実施形態よりも安定せず、板状構造体53の直上近辺で多少の攪拌が発生する可能性があるが、側壁部52が十分に高いことで、その攪拌による影響を少なくできて、気泡を油面まで確実に浮上させることができ、サクションストレーナ26から吸い出されるのを防止できる。
【0047】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記第1実施形態では、本発明の構造体としてハニカム構造体42を用いていたが、円筒状のパイプを多数接合した構造体であってもよく、格子状の開口部分を有する構造体であってもよい。
【0048】
第1実施形態でのハニカム構造体42は、側壁部43,44の上端までの長さを有していたが、第2実施形態の板状構造体53のように、より厚みの小さいものを利用できる。
【0049】
第2実施形態では、板状構造体53が1枚のパンチングメタルで構成されていたが、複数のパンチングメタルを密着させて積層したり、上下に間隔を空けて配置したりといった構造であってもよい。
【0050】
さらに、第2実施形態のように、タンク本体2の底面部51の一部を利用して気泡除去装置4を構成した場合でも、本発明の構造体としてはパンチングメタルに限らず、第1実施形態のようなハニカム構造体や前述した他の構造体を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、建設機械の作動油タンクとして利用できる他、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータや油圧モータで駆動される走行体を備えた農業車両、あるいは土木車両等にも利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…作動油タンク、2…タンク本体、4…気泡除去装置、21,24,28,29…側面部、42…構造体であるハニカム構造体、43,44…側部である側壁部、45…底部、42D,53A…連通孔、47…流入空間、52…側部である側壁部、53…構造体である板状構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体内の作動油中に浸漬される気泡除去装置を有した作動油タンクであって、
前記気泡除去装置は、
前記タンク本体内に戻された作動油が上方から流入するとともに、平面方向に広がりを有する流入空間と、
前記流入空間の上方を覆い、かつ上下に連通した多数の連通孔を有する構造体とを備えている
ことを特徴とする作動油タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の作動油タンクにおいて、
前記構造体は、ハニカム構造体である
ことを特徴とする作動油タンク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作動油タンクにおいて、
前記流入空間は、前記構造体に対して下方に対向する底部と、前記底部の周囲を囲う側部とで区画されている
ことを特徴とする作動油タンク。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の作動油タンクにおいて、
前記気泡除去装置は、前記タンク本体の対向する側面部間に接合されている
ことを特徴とする作動油タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196527(P2011−196527A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66822(P2010−66822)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】