作業機の昇降シリンダ制御機構
【課題】昇降バルブを精度よく切り換えることができ、ハンチング等の不具合を防止するような構成とすることを目的とする。
【解決手段】作業機の対地高さを鎮圧輪80によって検知し、該鎮圧輪80に連結する昇降バルブ31が切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように該昇降シリンダ24を制御する対地作業機の昇降シリンダ制御機構47において、該昇降バルブ31を切り換える際に該昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構48を備える。
【解決手段】作業機の対地高さを鎮圧輪80によって検知し、該鎮圧輪80に連結する昇降バルブ31が切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように該昇降シリンダ24を制御する対地作業機の昇降シリンダ制御機構47において、該昇降バルブ31を切り換える際に該昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構48を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の昇降シリンダ制御機構に関し、より詳細には、昇降シリンダの昇降バルブの切り換えを精度よく行うために設けた制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜移植機や田植機等の対地作業を行う対地作業機においては、機体本体から地表面までの対地高さを検出する昇降センサを備え、この昇降センサによって検出された対地高さに応じて、昇降シリンダを作動させて本機を昇降させ、例えば野菜移植機のように、苗植付爪による苗の植付け深さを略一定に保つように自動制御する昇降シリンダ制御機構が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1に開示される野菜移植機は、昇降センサ(畝センサローラ)と、操作レバーと、昇降センサの回転軸と、昇降バルブとをそれぞれ第一・第二・第三アームを介して連結した昇降シリンダ制御機構(植深リンク機構)を備えてなり、かかる昇降シリンダ制御機構は、この内昇降センサ(畝センサローラ)が、畝表面の凹凸に応じて機体本体に対して相対的に昇降し、該昇降センサ(畝センサローラ)の昇降作動と連動して各アームを介して昇降バルブを切り換えるようにして、昇降シリンダを自動制御するように構成されている。そして、このように、昇降シリンダの制御を昇降センサ(畝センサローラ)の昇降と連動するようなリンク機構を構成して行うように構成することで、従来の電子制御による構成と比べて製造コストを低減することができる(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記特許文献1の昇降シリンダ制御機構は、昇降センサと昇降バルブとを連結する第二アームが、伸縮自在に構成された軸体の外周にスプリングが外嵌され、畝等の表面の凹凸が大きい場合に、昇降センサが急激に跳ね上げられる等したときに、このスプリングによってその衝撃を緩和するように構成している。
【特許文献1】特開2004−105156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した対地作業機に構成される昇降シリンダ制御機構は、畝や圃場等の表面の凹凸に応じて昇降センサの昇降動作を連続して繰り返すように構成され、すなわち、昇降センサの昇降動作が昇降バルブに伝達され、この昇降バルブが連続して切り換えられて、機体本体の対地高さが連続して自動的に変更されるものである。そして、機体を連続して昇降させるために、昇降バルブを精度よく切り換えて昇降シリンダを制御する構成とする必要がある。
【0006】
しかし、従来の昇降シリンダ制御機構のように、昇降バルブと昇降センサとを単にアーム等によって連結しただけでは、昇降バルブの切り換えの際に制御動作が不安定となって、ハンチング等の不具合が生じていた。すなわち、昇降バルブは、主にリンク機構を構成するアーム等によって回動操作されていたため、昇降センサや昇降バルブの不感帯近傍においては切り換え動作にズレが生じ、ハンチング等の原因となっていた。
【0007】
また、特許文献1に開示される昇降シリンダ制御機構は、昇降センサの昇降動作を緩和するようにスプリングを配設することで、昇降バルブの切り換え精度を向上させるとともに、かかる機構を保護することができるが、かかるスプリングを配置しただけでは、上述したように、昇降バルブを切り換える際に生じるハンチング等を効果的に防止することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は、作業機の昇降シリンダ制御機構に関し、前記従来の課題を解決するもので、昇降バルブを精度よく切り換えることができ、ハンチング等の不具合を防止するような構成を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、作業機の対地高さを昇降センサによって検知し、該昇降センサに連結する昇降バルブが切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように昇降シリンダを制御する作業機の昇降シリンダ制御機構において、該昇降バルブを切り換える際に該昇降バルブを中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構を備えてなるものである。
【0011】
請求項2においては、請求項1において、前記昇降バルブ制御機構は、前記昇降バルブに回動自在に取り付けられた切換アームに、機体側に揺動自在に配設されるウェイト部材と係合する制御アームの一端を回動自在に軸支し、切換アームが回動されると、制御アームを介してウェイト部材が揺動され、切換アームを中立位置に復帰する方向にウェイト部材の自重が制御アームに付加されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に示す構成としたので、昇降バルブを精度よく切り換えることができ、昇降センサや昇降バルブ等の不感帯近傍において切り換え動作にズレが生じにくく、昇降バルブの切り換えの際に生じるハンチング等の不具合を防止することができる。
【0014】
請求項2に示す構成としたので、簡素な構成で昇降バルブを安定にかつ確実に切り換えることができるとともに、制御アームとウェイト部材とを設けるだけでよいためコンパクトに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明を実施するための最良の形態を、以下に図を参照して説明する。
図1は本発明に係る昇降シリンダ制御機構を備えた野菜移植機の全体の正面図、図2は同背面図、図3は同左側面図、図4は同右側面図、図5は同平面図、図6は同底面図、図7はエンジン出力部の左側面図、図8は昇降リンク機構の右側面図、図9は昇降センサ部の右側面図、図10は昇降バルブ制御機構の右側面図、図11は同じく図10の右側面図、図12は同じく図10の右側面図、図13は昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図、図14はハンチング発生時の昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図、図15は覆土輪の後方斜視図、図16はスタンド取付部の右方斜視図、図17は取付部にスタンドを取り付けた状態の左側面図、図18は同じく取付部にスタンドを取り付けた状態の正面図、図19は車体フレーム前方の正面斜視図、図20は苗載台の上方斜視図、図21はローリングセンサ部の前方斜視図、図22は同平面図、図23はオンオフレバー部の後方斜視図、図24はトレッド幅を広げた図1の野菜移植機の全体の正面図、図25は同背面図、図26は同左側面図、図27は同右側面図、図28は同平面図、図29は同底面図である。
【0016】
なお、以下、本実施例に係る昇降シリンダ制御機構47を備えた作業機の一例として野菜移植機について説明するが、作業機としてはこれに限定するものではなく、例えば、野菜移植機他に歩行型若しくは乗用田植機又は施肥・播種機等の種々の対地作業機に適用することができる。
【0017】
まず、本実施例における野菜移植機の全体構成について、以下に概説する。
図1乃至図6示すように、本実施例における野菜移植機は、図中1はエンジン2を搭載する前車体フレーム、3は前車体フレーム1後側に連設する後車体フレーム、4は後車体フレーム3下側に設ける走行伝動ケース、5は前記走行伝動ケース4にアクスルケース6を介し上下揺動可能に支持する左右の走行輪、7は前記後車体フレーム3の後方にハンドルフレーム8を介して装設する苗載台、9は左右の走行輪5間で前記走行伝動ケース4に植付ケース10を介して装設する苗植付爪、11は前車体フレーム1に装設され走行輪5の揺動操作と連動して上下揺動可能に構成される左右の前輪、12は苗に覆土する覆土輪、13は左右往復移動する苗載台7上の苗トレイから1株のポット形白ネギ苗を取り出す苗取出爪、80は左右の走行輪5の間であって前記苗植付爪9よりも機体前側に配置される鎮圧機能を有する鎮圧輪である。そして、苗取出爪13によって取り出されたネギ苗を苗植付爪9に放出供給し、ハンドルフレーム8後側の操向ハンドル14操作による機体の走行中、畝上に鎮圧輪80が接地しながら移動され、略一定間隔でネギ苗を植付ける移植作業を行うように構成している。なお、本実施例における野菜移植機は、ネギ苗のみならずレタスや白菜等の苗の植付けが可能である。
【0018】
図中16はボンネット、17・18はボンネット16の両側に略左右対称に設ける上下段の予備苗台、20は操向ハンドル14の左側に設ける走行変速レバー、21は操向ハンドル14の右側に設ける主クラッチレバー、22は操向ハンドル14の右側に設ける昇降レバー、24は左右のアクスルケース6を揺動させて左右の走行輪5及び前輪11を昇降させる昇降シリンダである。この昇降シリンダ24は、前車体フレーム1下面に設けられ、前記昇降レバー22を操作することによって昇降シリンダ24を作動して走行輪5及び前輪11を昇降させ、左右いずれか一方の走行輪5及び前輪11後方を作業者が歩行移動し、前記鎮圧輪80を畝上面に当接させて苗の移植を行う。
【0019】
機体左側方には、機体水平制御用のローリングシリンダ74が配設され、ローリングシリンダ74は、車体フレーム1の左右方向に施設されたローリング支点軸82に固設された揺動アーム82aに接続され、揺動アーム82aが揺動されることによって、ローリング支点軸82が連動して回転する。ローリング支点軸82の両端部には、連結アーム82bがそれぞれ固設され、該連結アーム82bは、走行輪連結リンク機構81を介してアクスルケース6の回動軸83と連動連結されている(図7参照)。また、アクスルケース6の回動軸83は、前輪連結リンク機構84を介して前輪11(トレッド99)と連動連結され、前輪連結リンク機構84によって前輪11が走行輪5の揺動と連動して同一方向に揺動されるように構成されている(図8参照)。そして、ローリングシリンダ74のピストンロッドを伸縮させることによって、ローリング支点軸82が回転され、左右の前輪11及び走行輪5が上下逆方向に上下動されて、機体の左右傾斜角度を修正する水平制御を行うように構成されている。
【0020】
図7及び図8に示すように、後車体フレーム3の前側上面には、昇降ポンプ26が載置され、後車体フレーム3の後側上面には苗取伝動ケース27が載置されている。エンジン2の回転駆動は、後車体フレーム3下面の走行伝動ケース4にベルト28によって伝動され、この走行伝動ケース4から苗取伝動ケース27にベルト29によって伝動され、一方エンジン2から昇降ポンプ26にベルト30によって伝動される。このようにして、左右の走行輪5と苗植付爪9と苗取出爪13を駆動し、左右に往復動させる苗載台7の苗を連続的に植付けるように構成している。
【0021】
図8及び図9に示すように、昇降ポンプ26には昇降バルブ31が設けられ、該昇降バルブ31には切換アーム32が設けられ、切換ロッド33・34及び継リンク35などを介して切換アーム32に昇降レバー22が連結されている。この昇降レバー22によって昇降バルブ31を切り換え、昇降シリンダ24を作動させて走行輪5及び前輪11を昇降させ、車体フレーム1・3など本機の対地高さを変化させ、本機に対して走行輪5及び前輪11を下降させて枕地旋回または路上走行の姿勢にする一方、本機に対して走行輪5及び前輪11を上昇させて植付け姿勢に切り換える。なお、この昇降バルブ31及び切換アーム32等は、本発明に係る昇降シリンダ制御機構47(昇降バルブ制御機構48)を構成しており、詳細は後述する(図10乃至図12参照)。
【0022】
走行伝動ケース4下面側にはパイプ軸36が固定され、該パイプ軸36に配設された支点板体37に覆土輪フレーム38が支軸39を介して回転自在に軸支され、覆土輪フレーム38の中途部であって苗載台7の略下方位置に覆土輪12が設けられる。覆土輪フレーム38は、後側が操向ハンドル14の植深切換レバー40に、伸縮機構41を介して苗Aの植付け深さ調節範囲が切換自在となるように連結され、覆土輪12を略一定の接地圧で接地させるように、支軸39回りに覆土輪フレーム38を前記植深切換レバー40の設定範囲で回転させ、苗植付爪9が開孔して苗を植付けた跡を覆土輪12が鎮圧して苗の覆土を行う。
【0023】
前記支軸39には支持プレート42が回動自在に支持されており、この支持プレート42に鎮圧輪80が揺動自在に取り付けられる。鎮圧輪80は、苗植付爪9前方位置に配置され、かつ、機体の下方であって支持アーム44の端部に配設される。支持アーム44は、支点軸43を揺動中心として上下揺動自在に支持プレート42に取り付けられ、他端部がワイヤ85を介して植深切換レバー40に連動連結して構成されている。また、鎮圧輪80は、この支持アーム44の他端部と支持プレート42との間に介設された弾性部材86によって上方に付勢されており、植深切換レバー40の操作によって設定範囲で上下方向に揺動されて位置決めされ、畝表面を平坦に鎮圧するとともに、畝高さを検知可能としている。つまり、本実施例においては、覆土輪12が常時畝上に接地するように昇降バルブ31を制御して昇降シリンダ24を作動させるようにしている。
【0024】
次に、昇降シリンダ制御機構47について、以下に詳述する。
図9乃至図12に示すように、前記支持プレート42には、植深フレーム87が機体前方に向けて延設され、植深フレーム87に長さ調節自在な植深アーム45の一端側が連結され、前記植深アーム45の他端側が昇降バルブ31の切換アーム32に連結されている。鎮圧輪80が昇降して支持プレート42が揺動すると、植深フレーム87を介して切換アーム32が作動される。このように構成することによって、苗植付爪9によって苗を植付けているとき、畝上の凹凸に合わせて本機に対して鎮圧輪80が昇降することにより、支持プレート42、植深フレーム87及び植深アーム45を介して切換アーム32が切り換えられ、昇降バルブ31を介して昇降シリンダ24が自動的に制御され、本機を昇降させて苗植付爪9の苗の植付け深さを略一定に保つ自動制御が行われる。
【0025】
このように、本実施例における野菜移植機は、苗の植付け深さを調節する昇降シリンダ24及び昇降バルブ31と、苗植付爪9の苗植付け深さを検出する昇降センサとしての鎮圧輪80を設けてなり、鎮圧輪80の検出動作を昇降バルブ31に直接伝えるように構成することで、伝達ロスを少なくして、苗植付爪9によって植付ける苗の深さを均一にする昇降調節を機能的に行わせ植付け深さ制御を安定させて値付け機能を向上させることができる。
【0026】
次に、昇降バルブ制御機構48について、以下に詳述する。
図10乃至図12に示すように、本実施例に係る昇降シリンダ制御機構47は、野菜移植機の対地高さを昇降センサとしての鎮圧輪80によって検知して、この鎮圧輪80の昇降動作と連動するように植深アーム45や切換アーム32等を介して昇降バルブ31が切り換えられて、所定の苗植付け深さとなるように昇降シリンダ24を制御するように構成されている。そして、この昇降シリンダ制御機構47には、昇降バルブ31の切り換え動作を別途制御して、昇降シリンダ24の制御の精度を向上させる昇降バルブ制御機構48が構成されている。
【0027】
前記昇降バルブ31は、昇降シリンダ24の機体側面に配置され、一端が切換アーム32に固定され、他端が昇降バルブ31と連結される切換軸46を回動中心として、切換アーム32が昇降バルブ31に対して相対回動可能に配設されている。切換アーム32は、昇降シリンダ制御機構47や前記植深切換レバー40等によって動作されない状態では、昇降バルブ31を切り換えて、昇降シリンダ24を中立位置で固定している。一方、昇降シリンダ制御機構47や前記植深切換レバー40が操作等されると、切換軸46を中心に回動されて、機体を上昇若しくは下降させる方向に昇降バルブ31を切り換えて、昇降シリンダ24を伸長させる。また、この切換アーム32には、植深アーム45がピン軸32aに回動自在に取り付けられるとともに、切換ロッド34がピン軸32bに回動自在に取り付けられている。
【0028】
昇降バルブ制御機構48は、切換アーム32のピン軸32bに一端が取り付けられる制御アーム49と、機体本体に揺動軸50を介して揺動自在に取り付けられるウェイト部材51とが係合されて構成されている。具体的には、制御アーム49は、上述のように一端が切換アーム32に取り付けられ、他端に平面視長穴状の係合孔49aが開口され、この係合孔49aにウェイト部材51の表面に突出して形成された係合突起51aが係合して、ウェイト部材51と係合されている。なお、係合突起51aの先端部は、制御アーム49とウェイト部材51とが外れないようにピン52が貫通して止められている。
【0029】
ウェイト部材51は、一端を本体側に固定された揺動軸50に揺動自在に軸支され、揺動軸50部分から他端側にかけて短手方向長さが大きくなるように、正面視略扇状に形成されている。このウェイト部材51の側面には、外方に向けて係止片51b・51bが突出して形成されており、この係止片51b・51bは、ウェイト部材51が揺動軸50を中心に機体に対して前後方向(図10において左右方向)に揺動されると、制御アーム49の側面と係止するストッパとして作用する。また、ウェイト部材51は、係合突起51aが制御アーム49の係合孔49aに係合して、該制御アーム49と連動して前後方向に揺動される。なお、ウェイト部材51は、後述する理由から、制御アーム49や切換アーム32等と比べて充分にウェイトを有するように構成するのが好ましい。
【0030】
ここで、本実施例における昇降バルブ31の制御機構について、以下に説明する。
昇降シリンダ24が動作されていない状態、すなわち、前記植深切換レバー40等が操作されない状態においては、昇降バルブ31は中立位置に位置している(図10及び図13(a)参照)。作業を行う際には、前記植深切換レバー40が操作されて、前記鎮圧輪80が畝表面に対して所定の対地高さとなるように下ろされる。そして、畝表面の形状に合わせて鎮圧輪80の昇降動作が繰り返し行われ、昇降バルブ制御機構48は、図10に示す状態から図11若しくは図12に示す状態に昇降バルブ31を連続して切り換える(図13参照)。
【0031】
図11及び図13(b)に示すように、鎮圧輪80が畝表面に接地された状態で凸状表面に当接すると、この鎮圧輪80が上方に回動され、該鎮圧輪80と連結される植深アーム45が下方に引き下げられ、ピン軸32aを介して切換アーム32が切換軸46を回動中心として時計回り(図11において右回り。以下同じ)に回動される。切換アーム32が植深アーム45によって回動されると、ピン軸32bを介して制御アーム49が引き上げられ、制御アーム49とウェイト部材51とが係合部(係合孔49a及び係合突起51a)において係合されながら、ウェイト部材51が時計回りに揺動される。そして、切換アーム32と連動して昇降バルブ31が切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように、すなわち対地高さが大きくなるように昇降シリンダ24が制御される。
【0032】
一方、図12及び図13(c)に示すように、鎮圧輪80が凹状表面に当接すると、鎮圧輪80が下方に回動され、植深アーム45が引き上げられ、切換アーム32が反時計回り(図12において左回り。以下同じ)に回動される。切換アーム32が植深アーム45によって回動されると、制御アーム49が引き上げられ、上述したのと同じく制御アーム49とウェイト部材51とが係合部において係合されながら、ウェイト部材1が時計回りに揺動される。そして、昇降バルブ31が切り換えられて、機体の対地高さが小さくなるように昇降シリンダ24が制御されるのである。
【0033】
本実施例における昇降バルブ制御機構48は、昇降バルブ31を切り換える際に、昇降バルブ31を中立位置に復帰するように規制するように構成されている。すなわち、図11に示す状態において、切換アーム32の回動に伴って引き上げられた制御アーム49は、係合孔49aに係合したウェイト部材51の係合突起51aを介して、ウェイト部材51の自重によって下方向に規制され、換言すると、切換アーム32の回動は、昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制されている。図12に示す状態においても、同様に、切換アーム32の回動は、昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制される。つまり、本実施例においては、切換アーム32に制御アーム49を介してウェイト部材51と係合させるように構成して、切換アーム32が、いずれの方向に回動する場合であっても、その回動方向を規制するのである。
【0034】
そして、鎮圧輪80の上下動に伴って切換アーム32が前後方向のいずれに回動されても、係合孔49aの形状に沿って係合突起51aが摺動して、制御アーム49を引き下げる方向、すなわち切換亜アーム32を中立位置に復帰させる方向にウェイト部材51の自重が付加されるように構成されている。切換アーム32に制御アーム49を介してウェイト部材51と係合させるように構成して、切換アーム32が、いずれの方向に回動する場合であっても、その回動方向を規制する。
【0035】
このように、昇降シリンダ制御機構47に、昇降バルブ31を切り換える際に該昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構48を設けることで、昇降バルブ31を精度よく切り換えることができ、昇降センサ(鎮圧輪80)や昇降バルブ31等の不感帯近傍において切り換え動作にズレが生じにくく、昇降バルブ31の切り換えの際に生じるハンチング等の不具合を防止することができ、ひいては植付け深さ制御動作を安定良く行うことがきる。
【0036】
特に、本実施例に示すように、昇降バルブ制御機構48を、昇降バルブ31に回動自在に取り付けられた切換アーム32に、制御アーム49の一端を回動自在に軸支するとともに、該制御アーム49の他端をウェイト部材51と係合させて、切換アーム32が回動されると、制御アーム49を介してウェイト部材51が揺動され、切換アーム32を中立位置に復帰する方向にウェイト部材51の自重が制御アーム49に付加されるように構成することで、簡素な構成で昇降バルブ31を安定にかつ確実に切り換えることができるとともに、制御アーム49とウェイト部材51とを設けるだけでよいため、コンパクトに構成できる。なお、このウェイト部材51の自重が、制御アーム49を引き下げる方向に付加されることから、ウェイト部材51は、制御アーム49や切換アーム32等その他の構成部材よりも、充分なウェイトをゆうするように構成することで、制御バルブ31の切り換えを精度よく行える。
【0037】
また、図14に示すように、切換アーム32が激しく回動された場合、すなわちハンチング発生時には、ウェイト部材51の前記係止片51bが制御アーム49に当接して、切換アーム32の回動が禁止され、かかる状態からウェイト部材51の自重が付加されて、切換アーム32が通常位置にまで戻るような機構とされている。そのため、仮にハンチングが生じた場合であっても、切換アーム31の回動を規制することで、昇降バルブ31を容易に中立位置に復帰させて、ハンチングを解除することができる。
【0038】
また、本実施例における野菜移植機の他の構成について、以下に概説する。
図1乃至図4、図6及び図15に示すように、本実施例における野菜移植機に配設される覆土輪12には、覆土輪12の地表面との当接面12aに付着した土を削ぎ落とすためのスクレーパ90が配設されている。覆土輪12は、枢支軸88を介して覆土輪フレーム38に回転自在に配設され、枢支軸88の近傍であって覆土輪フレーム38の側面に支持プレート89が回転不能に固設され、この支持プレート89にスクレーパ90がピン軸91によって揺動自在に枢支される。スクレーパ90は、ピン軸91による枢支部から覆土輪12の当接面12aに対して略平行に刃部90aが延設され、自重によって刃部90aが当接面12aに上方から接触する。このように構成することで、覆土輪12は、当接面12aに付着した土がスクレーパ90の刃部90aによって削ぎ落とされながら、当接面12aによって畝表面を覆土しながら植付け作業を行うことができ、洗浄等のメンテナンスをする手間が省略できる。
【0039】
この覆土輪12には、スクレーパ90の揺動範囲を調節するボルト92が支持プレート89の上方端部に配設され、ボルト92をネジ締めて、ボルト92の端部とスクレーパ90との間隙を調整する。従来、スクレーパ90を覆土輪12に対して位置固定して取り付けると、刃部90aと当接面12aとの間にある程度の大きさの小石等を挟み込んで覆土輪12が回転できなくなる場合等があった。本実施例では、スクレーパ90を揺動自在に枢支し、自重によって刃部90aを当接面12aに当接させ、該ボルト92によってスクレーパ90の揺動範囲を規制するような構成とすることで、覆土輪12に回転を妨げることがないようにスクレーパ90が揺動できるため、例えば、スクレーパ90の刃部90aと当接面12aとの間に小石等が挟まることがなく、また、泥等が当接面12aから凸状に強固に付着してスクレーパ90によってもすぐには削ぎ落とすことができない場合等であっても、かかる覆土輪12の回転が妨げられることがない。
【0040】
図3、図4、図16乃至図18に示すように、車体フレーム3の側方であって、ハンドルフレーム8の後方位置にスタンド75の取付部93が配設されている。この取付部93には、前輪11及び走行輪5の車輪支持体99等を取り替える際に、機体を水平方向に維持するためのスタンド75が取付部材76を介して取り付けられる。取付部93は、機体左右方向に施設されたフレーム部77の両端部から垂直下方に突設される。また、取付部93にスタンド75の上方端部が下方から当接し、取付部93の下方端部とスタンド75の上方端部とを側方から覆うように平面視コ字状に形成された取付部材76が取り付けられ、取付部93とスタンド75とが接合される。取付部材76を平面視コ字状に形成することで、機体側方からの取り付けが容易となる。
【0041】
取付部93の上下中途部に水平方向に位置決め用の挿通孔93aが貫設されるとともに、スタンド75も水平方向に位置決め用の挿通孔75a(本実施例においては2箇所)が貫設されている。この挿通孔93a・75aと取付部材76に水平方向に略同じ間隔で位置に貫設された孔とを軸方向に重ねて位置決めピン78を挿通することで、スタンドが取付部93から抜けたり回転したりしないように位置決めすることができる。なお、具体的には、まずスタンド75に取付部材76を取り付け、これを取付部93に取り付けるようにすることで、かかる作業が簡素化できる。
【0042】
また、取付部93の後方であってハンドルフレーム8の下辺部に、ロープ等を引っ掛けるためのロープフック94が配設されている(図16参照)。このロープフック94は、例えば、野菜移植機をトラックの荷台やコンテナ等に載置して移動させる場合に、荷台やコンテナ等を介してロープを該ロープフック94に係合させることで、機体を縛り付けて固定することができる。特に、かかる位置にロープフック94を配設することで、荷台の外縁に形成された枠部(煽り)に妨げられることなく、ロープを該ロープフック94に係合できる。なお、取付部93及びロープフック94は機体の両側方に配設される。
【0043】
図6及び図19に示すように、車体フレーム1の前端には、水平制御機構を構成するローリングバルブ95が配設される。ローリングバルブ95をかかる位置に配設することで、機体の前後方向のウェイトを均衡させて、機体バランスを保つことができ、またメンテナンスが容易となる。なお、この水平制御機構によって、傾斜地においても植付け部(苗植付爪9等)を自動的に水平に保ち、安定した植付けができ、本実施例に係る野菜移植機に構成される水平制御機構は公知の機構を採用できる。
【0044】
図3、図4及び図20に示すように、前記苗載台7上には苗を整列させたトレイ(図略)が載置され、このトレイは、苗載台7の傾斜に沿って機体前方に移送される。苗載台7には、トレイを前方に搬送するための搬送チェーン96が、両側方から上下方向に環状駆動可能するように構成されており、この搬送チェーン96から苗載台7の内側方向に突出される突起部96aによってトレイを係合して搬送する。苗載台7は、載置部7a及び側部7b等から構成されており、載置部7aと側部7bとによって上方と側方とが覆われた苗載台7の下方部には、図示せぬ搬送チェーン96の駆動部が載置される。この駆動部によって、載置部7aに対して上下方向かつトレイを機体前方に搬送するように搬送チェーン96が環状駆動される。
【0045】
苗載台7には、載置部7aと側部7bとの間隙部であって搬送チェーン96の上方位置に、側部7bと苗載台7の前後方向に張設された左右のロッド97とに固定されたガイド部材98が配設されている。ガイド部材98は、略矩形状であり、下辺部が搬送チェーン96(突起部96a)の駆動経路をガイドするように構成されている。このガイド部材98によって、苗載台7の下方から上方へと搬送チェーン96がガイドされながら環状駆動されるため、トレイと搬送チェーン96とが係合し易くなる。
【0046】
また、この前記左右のロッド97には、苗載台7の上方側に苗載台7表面に対して上方に突出するように、側面視略三角形状の板体104が溶接して固定されている。このように、板体104を配置することで、苗載台7に載置されたトレイの左右両端部が、ロッド97上に乗り上げる等するのを防止でき、トレイをロッド97及び前記ガイド部材98の間隙部に確実に案内することができるようになる。
【0047】
図21乃至図23に示すように、昇降ポンプ26の側面に振子型のローリングセンサ63が設けられ、昇降ポンプ26の上面側に軸体60が前方に水平方向に突出され、該軸体60上に筒軸61が回転自在に設けられ、筒軸61にセンサアーム62を介して振子型のローリングセンサ63が接続されている。筒軸61にローリングアーム64の一端が固定され、ローリングセンサ63の左右揺動によってローリングアーム64が作動される。ローリングアーム64は前記ローリングバルブ95と接続され、機体の左右傾倒により振子型のローリングセンサ63が左右揺動することにより、ローリングアーム64を回動して、ローリングアーム64に連結したローリングバルブ95を切り換えて、前記ローリングシリンダ74(図3及び図7参照)を作動させ、左右走行輪5及び前輪11の高さの差を変更し、本機の左右傾斜を自動制御する。
【0048】
前記ローリングセンサ63は、機体後方の操向ハンドル14近傍に配設されたオンオフレバー65によって入り切り操作されるように構成されている。オンオフレバー65は、ワイヤケーブル69を介してピン67を揺動操作可能に連設されている。このピン67はピン軸66より突設されて設けられ、ワイヤケーブル69の端部が、ピン軸66を揺動中心としてピン軸66と相対回動不能に固定された揺動アーム70の端部に枢支されている。ローリングアーム64には正面視三角形状の切欠68が設けられ、前記ピン67は、切欠68に貫挿・解除可能に設けられている。また、オンオフレバー65は、正面視略逆U字型に切り抜き形成された操作溝71内に配設され、該操作溝71端部のオフストッパ71aおよびオンストッパ71bのいずれかに係合するように図示せぬ弾性部材により下方に付勢されている。
【0049】
オンオフレバー65がオフストッパ71aに係合しているときには、ピン67が切欠68の右側の頂部に位置して、切欠68の内面に当接して上下に移動不可能となり、ローリングセンサ63が揺動することができず、ローリングバルブ95は切り換えられない。一方、オンオフレバー65がオンストッパ71bに係合するように操作されると、オンオフレバー65の操作に連動して、ワイヤケーブル69を介して揺動アーム70が揺動され、ピン67が切欠68の左側の上下中途部に位置され、切欠68の空間内をピン67が上下に移動可能となり、ローリングセンサ63による揺動により、ローリングバルブ95が切り換え可能となる。
【0050】
このように、操向ハンドル14近傍にオンオフレバー65を配置し、このオンオフレバー65の切り換え操作によって、ローリングセンサ63を用いる水平自動制御のオンオフ制御が可能となるように構成することで、オペレータが機体のハンドル操作中であっても、容易にかかる切り換え操作を行うことができる。なお、操向ハンドル14近傍であってオンオフレバー65の側方に株間調節レバー72と株間表示用インジケータ73とが配設されており(図2参照)、同様に、オペレータが機体のハンドル操作中であっても調節操作が容易である。
【0051】
以上のように構成される四輪構造の野菜移植機においては、走行輪5は、走行輪5を支持する車輪支持体100を付設して回動軸83を幅方向に伸縮させて幅方向位置を変更でき、前輪11は、前輪11を支持する車輪支持体99を調節して幅方向位置を変更でき、幅方向に小さくして小型のトラックの荷台等に載置してさせることができる。
【0052】
そして、図24乃至図29に示すように本実施例に係る野菜移植機は、車輪支持体100及び車輪支持体99を交換可能に構成されており、これを交換することでトレッド幅を広く変更できる。具体的には、前輪11側及び走行輪5側において、上記野菜移植機(図1乃至図6参照)よりもトレッド幅の広い車輪支持体101・102を交換して取り付けることによってトレッド幅を広げることができる。本実施例においては、機体右方(図24において左方)車輪支持体101・102の長手方向長さが、機体左側の長手方向長さよりも長くなるように構成されている。車輪支持体101は、前輪11の取付位置を変更できるように構成され、車輪支持体102は、前記回動軸83を回動自在に軸支しつつ、端部を機体に固定され、さらに車体フレーム3の下方に固定された前記パイプ軸36の両端部と接続されることで機体に取り付けられる。また、機体右方においては、車輪支持体101及び車輪支持体102が前後方向に補強具103によって連結されて強度が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る昇降シリンダ制御機構を備えた野菜移植機の全体の正面図。
【図2】同背面図。
【図3】同左側面図。
【図4】同右側面図。
【図5】同平面図。
【図6】同底面図。
【図7】エンジン出力部の左側面図。
【図8】昇降リンク機構の右側面図。
【図9】昇降センサ部の右側面図。
【図10】昇降バルブ制御機構の右側面図。
【図11】同じく図10の右側面図。
【図12】同じく図10の右側面図。
【図13】昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図。
【図14】ハンチング発生時の昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図。
【図15】覆土輪の後方斜視図。
【図16】スタンド取付部の右方斜視図。
【図17】取付部にスタンドを取り付けた状態の左側面図。
【図18】同じく取付部にスタンドを取り付けた状態の正面図。
【図19】車体フレーム前方の正面斜視図。
【図20】苗載台の上方斜視図。
【図21】ローリングセンサ部の前方斜視図。
【図22】同平面図。
【図23】オンオフレバー部の後方斜視図。
【図24】トレッド幅を広げた図1の野菜移植機の全体の正面図。
【図25】同背面図。
【図26】同左側面図。
【図27】同右側面図。
【図28】同平面図。
【図29】同底面図。
【符号の説明】
【0054】
24 昇降シリンダ
31 昇降バルブ
32 切換アーム
45 植深アーム
49 制御アーム
51 ウェイト部材
47 昇降シリンダ制御機構
48 昇降バルブ制御機構
80 鎮圧輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の昇降シリンダ制御機構に関し、より詳細には、昇降シリンダの昇降バルブの切り換えを精度よく行うために設けた制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜移植機や田植機等の対地作業を行う対地作業機においては、機体本体から地表面までの対地高さを検出する昇降センサを備え、この昇降センサによって検出された対地高さに応じて、昇降シリンダを作動させて本機を昇降させ、例えば野菜移植機のように、苗植付爪による苗の植付け深さを略一定に保つように自動制御する昇降シリンダ制御機構が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1に開示される野菜移植機は、昇降センサ(畝センサローラ)と、操作レバーと、昇降センサの回転軸と、昇降バルブとをそれぞれ第一・第二・第三アームを介して連結した昇降シリンダ制御機構(植深リンク機構)を備えてなり、かかる昇降シリンダ制御機構は、この内昇降センサ(畝センサローラ)が、畝表面の凹凸に応じて機体本体に対して相対的に昇降し、該昇降センサ(畝センサローラ)の昇降作動と連動して各アームを介して昇降バルブを切り換えるようにして、昇降シリンダを自動制御するように構成されている。そして、このように、昇降シリンダの制御を昇降センサ(畝センサローラ)の昇降と連動するようなリンク機構を構成して行うように構成することで、従来の電子制御による構成と比べて製造コストを低減することができる(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記特許文献1の昇降シリンダ制御機構は、昇降センサと昇降バルブとを連結する第二アームが、伸縮自在に構成された軸体の外周にスプリングが外嵌され、畝等の表面の凹凸が大きい場合に、昇降センサが急激に跳ね上げられる等したときに、このスプリングによってその衝撃を緩和するように構成している。
【特許文献1】特開2004−105156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した対地作業機に構成される昇降シリンダ制御機構は、畝や圃場等の表面の凹凸に応じて昇降センサの昇降動作を連続して繰り返すように構成され、すなわち、昇降センサの昇降動作が昇降バルブに伝達され、この昇降バルブが連続して切り換えられて、機体本体の対地高さが連続して自動的に変更されるものである。そして、機体を連続して昇降させるために、昇降バルブを精度よく切り換えて昇降シリンダを制御する構成とする必要がある。
【0006】
しかし、従来の昇降シリンダ制御機構のように、昇降バルブと昇降センサとを単にアーム等によって連結しただけでは、昇降バルブの切り換えの際に制御動作が不安定となって、ハンチング等の不具合が生じていた。すなわち、昇降バルブは、主にリンク機構を構成するアーム等によって回動操作されていたため、昇降センサや昇降バルブの不感帯近傍においては切り換え動作にズレが生じ、ハンチング等の原因となっていた。
【0007】
また、特許文献1に開示される昇降シリンダ制御機構は、昇降センサの昇降動作を緩和するようにスプリングを配設することで、昇降バルブの切り換え精度を向上させるとともに、かかる機構を保護することができるが、かかるスプリングを配置しただけでは、上述したように、昇降バルブを切り換える際に生じるハンチング等を効果的に防止することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は、作業機の昇降シリンダ制御機構に関し、前記従来の課題を解決するもので、昇降バルブを精度よく切り換えることができ、ハンチング等の不具合を防止するような構成を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、作業機の対地高さを昇降センサによって検知し、該昇降センサに連結する昇降バルブが切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように昇降シリンダを制御する作業機の昇降シリンダ制御機構において、該昇降バルブを切り換える際に該昇降バルブを中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構を備えてなるものである。
【0011】
請求項2においては、請求項1において、前記昇降バルブ制御機構は、前記昇降バルブに回動自在に取り付けられた切換アームに、機体側に揺動自在に配設されるウェイト部材と係合する制御アームの一端を回動自在に軸支し、切換アームが回動されると、制御アームを介してウェイト部材が揺動され、切換アームを中立位置に復帰する方向にウェイト部材の自重が制御アームに付加されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に示す構成としたので、昇降バルブを精度よく切り換えることができ、昇降センサや昇降バルブ等の不感帯近傍において切り換え動作にズレが生じにくく、昇降バルブの切り換えの際に生じるハンチング等の不具合を防止することができる。
【0014】
請求項2に示す構成としたので、簡素な構成で昇降バルブを安定にかつ確実に切り換えることができるとともに、制御アームとウェイト部材とを設けるだけでよいためコンパクトに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明を実施するための最良の形態を、以下に図を参照して説明する。
図1は本発明に係る昇降シリンダ制御機構を備えた野菜移植機の全体の正面図、図2は同背面図、図3は同左側面図、図4は同右側面図、図5は同平面図、図6は同底面図、図7はエンジン出力部の左側面図、図8は昇降リンク機構の右側面図、図9は昇降センサ部の右側面図、図10は昇降バルブ制御機構の右側面図、図11は同じく図10の右側面図、図12は同じく図10の右側面図、図13は昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図、図14はハンチング発生時の昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図、図15は覆土輪の後方斜視図、図16はスタンド取付部の右方斜視図、図17は取付部にスタンドを取り付けた状態の左側面図、図18は同じく取付部にスタンドを取り付けた状態の正面図、図19は車体フレーム前方の正面斜視図、図20は苗載台の上方斜視図、図21はローリングセンサ部の前方斜視図、図22は同平面図、図23はオンオフレバー部の後方斜視図、図24はトレッド幅を広げた図1の野菜移植機の全体の正面図、図25は同背面図、図26は同左側面図、図27は同右側面図、図28は同平面図、図29は同底面図である。
【0016】
なお、以下、本実施例に係る昇降シリンダ制御機構47を備えた作業機の一例として野菜移植機について説明するが、作業機としてはこれに限定するものではなく、例えば、野菜移植機他に歩行型若しくは乗用田植機又は施肥・播種機等の種々の対地作業機に適用することができる。
【0017】
まず、本実施例における野菜移植機の全体構成について、以下に概説する。
図1乃至図6示すように、本実施例における野菜移植機は、図中1はエンジン2を搭載する前車体フレーム、3は前車体フレーム1後側に連設する後車体フレーム、4は後車体フレーム3下側に設ける走行伝動ケース、5は前記走行伝動ケース4にアクスルケース6を介し上下揺動可能に支持する左右の走行輪、7は前記後車体フレーム3の後方にハンドルフレーム8を介して装設する苗載台、9は左右の走行輪5間で前記走行伝動ケース4に植付ケース10を介して装設する苗植付爪、11は前車体フレーム1に装設され走行輪5の揺動操作と連動して上下揺動可能に構成される左右の前輪、12は苗に覆土する覆土輪、13は左右往復移動する苗載台7上の苗トレイから1株のポット形白ネギ苗を取り出す苗取出爪、80は左右の走行輪5の間であって前記苗植付爪9よりも機体前側に配置される鎮圧機能を有する鎮圧輪である。そして、苗取出爪13によって取り出されたネギ苗を苗植付爪9に放出供給し、ハンドルフレーム8後側の操向ハンドル14操作による機体の走行中、畝上に鎮圧輪80が接地しながら移動され、略一定間隔でネギ苗を植付ける移植作業を行うように構成している。なお、本実施例における野菜移植機は、ネギ苗のみならずレタスや白菜等の苗の植付けが可能である。
【0018】
図中16はボンネット、17・18はボンネット16の両側に略左右対称に設ける上下段の予備苗台、20は操向ハンドル14の左側に設ける走行変速レバー、21は操向ハンドル14の右側に設ける主クラッチレバー、22は操向ハンドル14の右側に設ける昇降レバー、24は左右のアクスルケース6を揺動させて左右の走行輪5及び前輪11を昇降させる昇降シリンダである。この昇降シリンダ24は、前車体フレーム1下面に設けられ、前記昇降レバー22を操作することによって昇降シリンダ24を作動して走行輪5及び前輪11を昇降させ、左右いずれか一方の走行輪5及び前輪11後方を作業者が歩行移動し、前記鎮圧輪80を畝上面に当接させて苗の移植を行う。
【0019】
機体左側方には、機体水平制御用のローリングシリンダ74が配設され、ローリングシリンダ74は、車体フレーム1の左右方向に施設されたローリング支点軸82に固設された揺動アーム82aに接続され、揺動アーム82aが揺動されることによって、ローリング支点軸82が連動して回転する。ローリング支点軸82の両端部には、連結アーム82bがそれぞれ固設され、該連結アーム82bは、走行輪連結リンク機構81を介してアクスルケース6の回動軸83と連動連結されている(図7参照)。また、アクスルケース6の回動軸83は、前輪連結リンク機構84を介して前輪11(トレッド99)と連動連結され、前輪連結リンク機構84によって前輪11が走行輪5の揺動と連動して同一方向に揺動されるように構成されている(図8参照)。そして、ローリングシリンダ74のピストンロッドを伸縮させることによって、ローリング支点軸82が回転され、左右の前輪11及び走行輪5が上下逆方向に上下動されて、機体の左右傾斜角度を修正する水平制御を行うように構成されている。
【0020】
図7及び図8に示すように、後車体フレーム3の前側上面には、昇降ポンプ26が載置され、後車体フレーム3の後側上面には苗取伝動ケース27が載置されている。エンジン2の回転駆動は、後車体フレーム3下面の走行伝動ケース4にベルト28によって伝動され、この走行伝動ケース4から苗取伝動ケース27にベルト29によって伝動され、一方エンジン2から昇降ポンプ26にベルト30によって伝動される。このようにして、左右の走行輪5と苗植付爪9と苗取出爪13を駆動し、左右に往復動させる苗載台7の苗を連続的に植付けるように構成している。
【0021】
図8及び図9に示すように、昇降ポンプ26には昇降バルブ31が設けられ、該昇降バルブ31には切換アーム32が設けられ、切換ロッド33・34及び継リンク35などを介して切換アーム32に昇降レバー22が連結されている。この昇降レバー22によって昇降バルブ31を切り換え、昇降シリンダ24を作動させて走行輪5及び前輪11を昇降させ、車体フレーム1・3など本機の対地高さを変化させ、本機に対して走行輪5及び前輪11を下降させて枕地旋回または路上走行の姿勢にする一方、本機に対して走行輪5及び前輪11を上昇させて植付け姿勢に切り換える。なお、この昇降バルブ31及び切換アーム32等は、本発明に係る昇降シリンダ制御機構47(昇降バルブ制御機構48)を構成しており、詳細は後述する(図10乃至図12参照)。
【0022】
走行伝動ケース4下面側にはパイプ軸36が固定され、該パイプ軸36に配設された支点板体37に覆土輪フレーム38が支軸39を介して回転自在に軸支され、覆土輪フレーム38の中途部であって苗載台7の略下方位置に覆土輪12が設けられる。覆土輪フレーム38は、後側が操向ハンドル14の植深切換レバー40に、伸縮機構41を介して苗Aの植付け深さ調節範囲が切換自在となるように連結され、覆土輪12を略一定の接地圧で接地させるように、支軸39回りに覆土輪フレーム38を前記植深切換レバー40の設定範囲で回転させ、苗植付爪9が開孔して苗を植付けた跡を覆土輪12が鎮圧して苗の覆土を行う。
【0023】
前記支軸39には支持プレート42が回動自在に支持されており、この支持プレート42に鎮圧輪80が揺動自在に取り付けられる。鎮圧輪80は、苗植付爪9前方位置に配置され、かつ、機体の下方であって支持アーム44の端部に配設される。支持アーム44は、支点軸43を揺動中心として上下揺動自在に支持プレート42に取り付けられ、他端部がワイヤ85を介して植深切換レバー40に連動連結して構成されている。また、鎮圧輪80は、この支持アーム44の他端部と支持プレート42との間に介設された弾性部材86によって上方に付勢されており、植深切換レバー40の操作によって設定範囲で上下方向に揺動されて位置決めされ、畝表面を平坦に鎮圧するとともに、畝高さを検知可能としている。つまり、本実施例においては、覆土輪12が常時畝上に接地するように昇降バルブ31を制御して昇降シリンダ24を作動させるようにしている。
【0024】
次に、昇降シリンダ制御機構47について、以下に詳述する。
図9乃至図12に示すように、前記支持プレート42には、植深フレーム87が機体前方に向けて延設され、植深フレーム87に長さ調節自在な植深アーム45の一端側が連結され、前記植深アーム45の他端側が昇降バルブ31の切換アーム32に連結されている。鎮圧輪80が昇降して支持プレート42が揺動すると、植深フレーム87を介して切換アーム32が作動される。このように構成することによって、苗植付爪9によって苗を植付けているとき、畝上の凹凸に合わせて本機に対して鎮圧輪80が昇降することにより、支持プレート42、植深フレーム87及び植深アーム45を介して切換アーム32が切り換えられ、昇降バルブ31を介して昇降シリンダ24が自動的に制御され、本機を昇降させて苗植付爪9の苗の植付け深さを略一定に保つ自動制御が行われる。
【0025】
このように、本実施例における野菜移植機は、苗の植付け深さを調節する昇降シリンダ24及び昇降バルブ31と、苗植付爪9の苗植付け深さを検出する昇降センサとしての鎮圧輪80を設けてなり、鎮圧輪80の検出動作を昇降バルブ31に直接伝えるように構成することで、伝達ロスを少なくして、苗植付爪9によって植付ける苗の深さを均一にする昇降調節を機能的に行わせ植付け深さ制御を安定させて値付け機能を向上させることができる。
【0026】
次に、昇降バルブ制御機構48について、以下に詳述する。
図10乃至図12に示すように、本実施例に係る昇降シリンダ制御機構47は、野菜移植機の対地高さを昇降センサとしての鎮圧輪80によって検知して、この鎮圧輪80の昇降動作と連動するように植深アーム45や切換アーム32等を介して昇降バルブ31が切り換えられて、所定の苗植付け深さとなるように昇降シリンダ24を制御するように構成されている。そして、この昇降シリンダ制御機構47には、昇降バルブ31の切り換え動作を別途制御して、昇降シリンダ24の制御の精度を向上させる昇降バルブ制御機構48が構成されている。
【0027】
前記昇降バルブ31は、昇降シリンダ24の機体側面に配置され、一端が切換アーム32に固定され、他端が昇降バルブ31と連結される切換軸46を回動中心として、切換アーム32が昇降バルブ31に対して相対回動可能に配設されている。切換アーム32は、昇降シリンダ制御機構47や前記植深切換レバー40等によって動作されない状態では、昇降バルブ31を切り換えて、昇降シリンダ24を中立位置で固定している。一方、昇降シリンダ制御機構47や前記植深切換レバー40が操作等されると、切換軸46を中心に回動されて、機体を上昇若しくは下降させる方向に昇降バルブ31を切り換えて、昇降シリンダ24を伸長させる。また、この切換アーム32には、植深アーム45がピン軸32aに回動自在に取り付けられるとともに、切換ロッド34がピン軸32bに回動自在に取り付けられている。
【0028】
昇降バルブ制御機構48は、切換アーム32のピン軸32bに一端が取り付けられる制御アーム49と、機体本体に揺動軸50を介して揺動自在に取り付けられるウェイト部材51とが係合されて構成されている。具体的には、制御アーム49は、上述のように一端が切換アーム32に取り付けられ、他端に平面視長穴状の係合孔49aが開口され、この係合孔49aにウェイト部材51の表面に突出して形成された係合突起51aが係合して、ウェイト部材51と係合されている。なお、係合突起51aの先端部は、制御アーム49とウェイト部材51とが外れないようにピン52が貫通して止められている。
【0029】
ウェイト部材51は、一端を本体側に固定された揺動軸50に揺動自在に軸支され、揺動軸50部分から他端側にかけて短手方向長さが大きくなるように、正面視略扇状に形成されている。このウェイト部材51の側面には、外方に向けて係止片51b・51bが突出して形成されており、この係止片51b・51bは、ウェイト部材51が揺動軸50を中心に機体に対して前後方向(図10において左右方向)に揺動されると、制御アーム49の側面と係止するストッパとして作用する。また、ウェイト部材51は、係合突起51aが制御アーム49の係合孔49aに係合して、該制御アーム49と連動して前後方向に揺動される。なお、ウェイト部材51は、後述する理由から、制御アーム49や切換アーム32等と比べて充分にウェイトを有するように構成するのが好ましい。
【0030】
ここで、本実施例における昇降バルブ31の制御機構について、以下に説明する。
昇降シリンダ24が動作されていない状態、すなわち、前記植深切換レバー40等が操作されない状態においては、昇降バルブ31は中立位置に位置している(図10及び図13(a)参照)。作業を行う際には、前記植深切換レバー40が操作されて、前記鎮圧輪80が畝表面に対して所定の対地高さとなるように下ろされる。そして、畝表面の形状に合わせて鎮圧輪80の昇降動作が繰り返し行われ、昇降バルブ制御機構48は、図10に示す状態から図11若しくは図12に示す状態に昇降バルブ31を連続して切り換える(図13参照)。
【0031】
図11及び図13(b)に示すように、鎮圧輪80が畝表面に接地された状態で凸状表面に当接すると、この鎮圧輪80が上方に回動され、該鎮圧輪80と連結される植深アーム45が下方に引き下げられ、ピン軸32aを介して切換アーム32が切換軸46を回動中心として時計回り(図11において右回り。以下同じ)に回動される。切換アーム32が植深アーム45によって回動されると、ピン軸32bを介して制御アーム49が引き上げられ、制御アーム49とウェイト部材51とが係合部(係合孔49a及び係合突起51a)において係合されながら、ウェイト部材51が時計回りに揺動される。そして、切換アーム32と連動して昇降バルブ31が切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように、すなわち対地高さが大きくなるように昇降シリンダ24が制御される。
【0032】
一方、図12及び図13(c)に示すように、鎮圧輪80が凹状表面に当接すると、鎮圧輪80が下方に回動され、植深アーム45が引き上げられ、切換アーム32が反時計回り(図12において左回り。以下同じ)に回動される。切換アーム32が植深アーム45によって回動されると、制御アーム49が引き上げられ、上述したのと同じく制御アーム49とウェイト部材51とが係合部において係合されながら、ウェイト部材1が時計回りに揺動される。そして、昇降バルブ31が切り換えられて、機体の対地高さが小さくなるように昇降シリンダ24が制御されるのである。
【0033】
本実施例における昇降バルブ制御機構48は、昇降バルブ31を切り換える際に、昇降バルブ31を中立位置に復帰するように規制するように構成されている。すなわち、図11に示す状態において、切換アーム32の回動に伴って引き上げられた制御アーム49は、係合孔49aに係合したウェイト部材51の係合突起51aを介して、ウェイト部材51の自重によって下方向に規制され、換言すると、切換アーム32の回動は、昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制されている。図12に示す状態においても、同様に、切換アーム32の回動は、昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制される。つまり、本実施例においては、切換アーム32に制御アーム49を介してウェイト部材51と係合させるように構成して、切換アーム32が、いずれの方向に回動する場合であっても、その回動方向を規制するのである。
【0034】
そして、鎮圧輪80の上下動に伴って切換アーム32が前後方向のいずれに回動されても、係合孔49aの形状に沿って係合突起51aが摺動して、制御アーム49を引き下げる方向、すなわち切換亜アーム32を中立位置に復帰させる方向にウェイト部材51の自重が付加されるように構成されている。切換アーム32に制御アーム49を介してウェイト部材51と係合させるように構成して、切換アーム32が、いずれの方向に回動する場合であっても、その回動方向を規制する。
【0035】
このように、昇降シリンダ制御機構47に、昇降バルブ31を切り換える際に該昇降バルブ31を中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構48を設けることで、昇降バルブ31を精度よく切り換えることができ、昇降センサ(鎮圧輪80)や昇降バルブ31等の不感帯近傍において切り換え動作にズレが生じにくく、昇降バルブ31の切り換えの際に生じるハンチング等の不具合を防止することができ、ひいては植付け深さ制御動作を安定良く行うことがきる。
【0036】
特に、本実施例に示すように、昇降バルブ制御機構48を、昇降バルブ31に回動自在に取り付けられた切換アーム32に、制御アーム49の一端を回動自在に軸支するとともに、該制御アーム49の他端をウェイト部材51と係合させて、切換アーム32が回動されると、制御アーム49を介してウェイト部材51が揺動され、切換アーム32を中立位置に復帰する方向にウェイト部材51の自重が制御アーム49に付加されるように構成することで、簡素な構成で昇降バルブ31を安定にかつ確実に切り換えることができるとともに、制御アーム49とウェイト部材51とを設けるだけでよいため、コンパクトに構成できる。なお、このウェイト部材51の自重が、制御アーム49を引き下げる方向に付加されることから、ウェイト部材51は、制御アーム49や切換アーム32等その他の構成部材よりも、充分なウェイトをゆうするように構成することで、制御バルブ31の切り換えを精度よく行える。
【0037】
また、図14に示すように、切換アーム32が激しく回動された場合、すなわちハンチング発生時には、ウェイト部材51の前記係止片51bが制御アーム49に当接して、切換アーム32の回動が禁止され、かかる状態からウェイト部材51の自重が付加されて、切換アーム32が通常位置にまで戻るような機構とされている。そのため、仮にハンチングが生じた場合であっても、切換アーム31の回動を規制することで、昇降バルブ31を容易に中立位置に復帰させて、ハンチングを解除することができる。
【0038】
また、本実施例における野菜移植機の他の構成について、以下に概説する。
図1乃至図4、図6及び図15に示すように、本実施例における野菜移植機に配設される覆土輪12には、覆土輪12の地表面との当接面12aに付着した土を削ぎ落とすためのスクレーパ90が配設されている。覆土輪12は、枢支軸88を介して覆土輪フレーム38に回転自在に配設され、枢支軸88の近傍であって覆土輪フレーム38の側面に支持プレート89が回転不能に固設され、この支持プレート89にスクレーパ90がピン軸91によって揺動自在に枢支される。スクレーパ90は、ピン軸91による枢支部から覆土輪12の当接面12aに対して略平行に刃部90aが延設され、自重によって刃部90aが当接面12aに上方から接触する。このように構成することで、覆土輪12は、当接面12aに付着した土がスクレーパ90の刃部90aによって削ぎ落とされながら、当接面12aによって畝表面を覆土しながら植付け作業を行うことができ、洗浄等のメンテナンスをする手間が省略できる。
【0039】
この覆土輪12には、スクレーパ90の揺動範囲を調節するボルト92が支持プレート89の上方端部に配設され、ボルト92をネジ締めて、ボルト92の端部とスクレーパ90との間隙を調整する。従来、スクレーパ90を覆土輪12に対して位置固定して取り付けると、刃部90aと当接面12aとの間にある程度の大きさの小石等を挟み込んで覆土輪12が回転できなくなる場合等があった。本実施例では、スクレーパ90を揺動自在に枢支し、自重によって刃部90aを当接面12aに当接させ、該ボルト92によってスクレーパ90の揺動範囲を規制するような構成とすることで、覆土輪12に回転を妨げることがないようにスクレーパ90が揺動できるため、例えば、スクレーパ90の刃部90aと当接面12aとの間に小石等が挟まることがなく、また、泥等が当接面12aから凸状に強固に付着してスクレーパ90によってもすぐには削ぎ落とすことができない場合等であっても、かかる覆土輪12の回転が妨げられることがない。
【0040】
図3、図4、図16乃至図18に示すように、車体フレーム3の側方であって、ハンドルフレーム8の後方位置にスタンド75の取付部93が配設されている。この取付部93には、前輪11及び走行輪5の車輪支持体99等を取り替える際に、機体を水平方向に維持するためのスタンド75が取付部材76を介して取り付けられる。取付部93は、機体左右方向に施設されたフレーム部77の両端部から垂直下方に突設される。また、取付部93にスタンド75の上方端部が下方から当接し、取付部93の下方端部とスタンド75の上方端部とを側方から覆うように平面視コ字状に形成された取付部材76が取り付けられ、取付部93とスタンド75とが接合される。取付部材76を平面視コ字状に形成することで、機体側方からの取り付けが容易となる。
【0041】
取付部93の上下中途部に水平方向に位置決め用の挿通孔93aが貫設されるとともに、スタンド75も水平方向に位置決め用の挿通孔75a(本実施例においては2箇所)が貫設されている。この挿通孔93a・75aと取付部材76に水平方向に略同じ間隔で位置に貫設された孔とを軸方向に重ねて位置決めピン78を挿通することで、スタンドが取付部93から抜けたり回転したりしないように位置決めすることができる。なお、具体的には、まずスタンド75に取付部材76を取り付け、これを取付部93に取り付けるようにすることで、かかる作業が簡素化できる。
【0042】
また、取付部93の後方であってハンドルフレーム8の下辺部に、ロープ等を引っ掛けるためのロープフック94が配設されている(図16参照)。このロープフック94は、例えば、野菜移植機をトラックの荷台やコンテナ等に載置して移動させる場合に、荷台やコンテナ等を介してロープを該ロープフック94に係合させることで、機体を縛り付けて固定することができる。特に、かかる位置にロープフック94を配設することで、荷台の外縁に形成された枠部(煽り)に妨げられることなく、ロープを該ロープフック94に係合できる。なお、取付部93及びロープフック94は機体の両側方に配設される。
【0043】
図6及び図19に示すように、車体フレーム1の前端には、水平制御機構を構成するローリングバルブ95が配設される。ローリングバルブ95をかかる位置に配設することで、機体の前後方向のウェイトを均衡させて、機体バランスを保つことができ、またメンテナンスが容易となる。なお、この水平制御機構によって、傾斜地においても植付け部(苗植付爪9等)を自動的に水平に保ち、安定した植付けができ、本実施例に係る野菜移植機に構成される水平制御機構は公知の機構を採用できる。
【0044】
図3、図4及び図20に示すように、前記苗載台7上には苗を整列させたトレイ(図略)が載置され、このトレイは、苗載台7の傾斜に沿って機体前方に移送される。苗載台7には、トレイを前方に搬送するための搬送チェーン96が、両側方から上下方向に環状駆動可能するように構成されており、この搬送チェーン96から苗載台7の内側方向に突出される突起部96aによってトレイを係合して搬送する。苗載台7は、載置部7a及び側部7b等から構成されており、載置部7aと側部7bとによって上方と側方とが覆われた苗載台7の下方部には、図示せぬ搬送チェーン96の駆動部が載置される。この駆動部によって、載置部7aに対して上下方向かつトレイを機体前方に搬送するように搬送チェーン96が環状駆動される。
【0045】
苗載台7には、載置部7aと側部7bとの間隙部であって搬送チェーン96の上方位置に、側部7bと苗載台7の前後方向に張設された左右のロッド97とに固定されたガイド部材98が配設されている。ガイド部材98は、略矩形状であり、下辺部が搬送チェーン96(突起部96a)の駆動経路をガイドするように構成されている。このガイド部材98によって、苗載台7の下方から上方へと搬送チェーン96がガイドされながら環状駆動されるため、トレイと搬送チェーン96とが係合し易くなる。
【0046】
また、この前記左右のロッド97には、苗載台7の上方側に苗載台7表面に対して上方に突出するように、側面視略三角形状の板体104が溶接して固定されている。このように、板体104を配置することで、苗載台7に載置されたトレイの左右両端部が、ロッド97上に乗り上げる等するのを防止でき、トレイをロッド97及び前記ガイド部材98の間隙部に確実に案内することができるようになる。
【0047】
図21乃至図23に示すように、昇降ポンプ26の側面に振子型のローリングセンサ63が設けられ、昇降ポンプ26の上面側に軸体60が前方に水平方向に突出され、該軸体60上に筒軸61が回転自在に設けられ、筒軸61にセンサアーム62を介して振子型のローリングセンサ63が接続されている。筒軸61にローリングアーム64の一端が固定され、ローリングセンサ63の左右揺動によってローリングアーム64が作動される。ローリングアーム64は前記ローリングバルブ95と接続され、機体の左右傾倒により振子型のローリングセンサ63が左右揺動することにより、ローリングアーム64を回動して、ローリングアーム64に連結したローリングバルブ95を切り換えて、前記ローリングシリンダ74(図3及び図7参照)を作動させ、左右走行輪5及び前輪11の高さの差を変更し、本機の左右傾斜を自動制御する。
【0048】
前記ローリングセンサ63は、機体後方の操向ハンドル14近傍に配設されたオンオフレバー65によって入り切り操作されるように構成されている。オンオフレバー65は、ワイヤケーブル69を介してピン67を揺動操作可能に連設されている。このピン67はピン軸66より突設されて設けられ、ワイヤケーブル69の端部が、ピン軸66を揺動中心としてピン軸66と相対回動不能に固定された揺動アーム70の端部に枢支されている。ローリングアーム64には正面視三角形状の切欠68が設けられ、前記ピン67は、切欠68に貫挿・解除可能に設けられている。また、オンオフレバー65は、正面視略逆U字型に切り抜き形成された操作溝71内に配設され、該操作溝71端部のオフストッパ71aおよびオンストッパ71bのいずれかに係合するように図示せぬ弾性部材により下方に付勢されている。
【0049】
オンオフレバー65がオフストッパ71aに係合しているときには、ピン67が切欠68の右側の頂部に位置して、切欠68の内面に当接して上下に移動不可能となり、ローリングセンサ63が揺動することができず、ローリングバルブ95は切り換えられない。一方、オンオフレバー65がオンストッパ71bに係合するように操作されると、オンオフレバー65の操作に連動して、ワイヤケーブル69を介して揺動アーム70が揺動され、ピン67が切欠68の左側の上下中途部に位置され、切欠68の空間内をピン67が上下に移動可能となり、ローリングセンサ63による揺動により、ローリングバルブ95が切り換え可能となる。
【0050】
このように、操向ハンドル14近傍にオンオフレバー65を配置し、このオンオフレバー65の切り換え操作によって、ローリングセンサ63を用いる水平自動制御のオンオフ制御が可能となるように構成することで、オペレータが機体のハンドル操作中であっても、容易にかかる切り換え操作を行うことができる。なお、操向ハンドル14近傍であってオンオフレバー65の側方に株間調節レバー72と株間表示用インジケータ73とが配設されており(図2参照)、同様に、オペレータが機体のハンドル操作中であっても調節操作が容易である。
【0051】
以上のように構成される四輪構造の野菜移植機においては、走行輪5は、走行輪5を支持する車輪支持体100を付設して回動軸83を幅方向に伸縮させて幅方向位置を変更でき、前輪11は、前輪11を支持する車輪支持体99を調節して幅方向位置を変更でき、幅方向に小さくして小型のトラックの荷台等に載置してさせることができる。
【0052】
そして、図24乃至図29に示すように本実施例に係る野菜移植機は、車輪支持体100及び車輪支持体99を交換可能に構成されており、これを交換することでトレッド幅を広く変更できる。具体的には、前輪11側及び走行輪5側において、上記野菜移植機(図1乃至図6参照)よりもトレッド幅の広い車輪支持体101・102を交換して取り付けることによってトレッド幅を広げることができる。本実施例においては、機体右方(図24において左方)車輪支持体101・102の長手方向長さが、機体左側の長手方向長さよりも長くなるように構成されている。車輪支持体101は、前輪11の取付位置を変更できるように構成され、車輪支持体102は、前記回動軸83を回動自在に軸支しつつ、端部を機体に固定され、さらに車体フレーム3の下方に固定された前記パイプ軸36の両端部と接続されることで機体に取り付けられる。また、機体右方においては、車輪支持体101及び車輪支持体102が前後方向に補強具103によって連結されて強度が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る昇降シリンダ制御機構を備えた野菜移植機の全体の正面図。
【図2】同背面図。
【図3】同左側面図。
【図4】同右側面図。
【図5】同平面図。
【図6】同底面図。
【図7】エンジン出力部の左側面図。
【図8】昇降リンク機構の右側面図。
【図9】昇降センサ部の右側面図。
【図10】昇降バルブ制御機構の右側面図。
【図11】同じく図10の右側面図。
【図12】同じく図10の右側面図。
【図13】昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図。
【図14】ハンチング発生時の昇降バルブ制御機構の状態変化を表す図。
【図15】覆土輪の後方斜視図。
【図16】スタンド取付部の右方斜視図。
【図17】取付部にスタンドを取り付けた状態の左側面図。
【図18】同じく取付部にスタンドを取り付けた状態の正面図。
【図19】車体フレーム前方の正面斜視図。
【図20】苗載台の上方斜視図。
【図21】ローリングセンサ部の前方斜視図。
【図22】同平面図。
【図23】オンオフレバー部の後方斜視図。
【図24】トレッド幅を広げた図1の野菜移植機の全体の正面図。
【図25】同背面図。
【図26】同左側面図。
【図27】同右側面図。
【図28】同平面図。
【図29】同底面図。
【符号の説明】
【0054】
24 昇降シリンダ
31 昇降バルブ
32 切換アーム
45 植深アーム
49 制御アーム
51 ウェイト部材
47 昇降シリンダ制御機構
48 昇降バルブ制御機構
80 鎮圧輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の対地高さを昇降センサによって検知し、該昇降センサに連結する昇降バルブが切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように昇降シリンダを制御する作業機の昇降シリンダ制御機構において、
該昇降バルブを切り換える際に該昇降バルブを中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構を備えてなる、
ことを特徴とする作業機の昇降シリンダ制御機構。
【請求項2】
前記昇降バルブ制御機構は、
前記昇降バルブに回動自在に取り付けられた切換アームに、機体側に揺動自在に配設されるウェイト部材と係合する制御アームの一端を回動自在に軸支し、
切換アームが回動されると、制御アームを介してウェイト部材が揺動され、切換アームを中立位置に復帰する方向にウェイト部材の自重が制御アームに付加される、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機の昇降シリンダ制御機構。
【請求項1】
作業機の対地高さを昇降センサによって検知し、該昇降センサに連結する昇降バルブが切り換えられて、機体が所定の対地高さとなるように昇降シリンダを制御する作業機の昇降シリンダ制御機構において、
該昇降バルブを切り換える際に該昇降バルブを中立位置に復帰する方向に規制する昇降バルブ制御機構を備えてなる、
ことを特徴とする作業機の昇降シリンダ制御機構。
【請求項2】
前記昇降バルブ制御機構は、
前記昇降バルブに回動自在に取り付けられた切換アームに、機体側に揺動自在に配設されるウェイト部材と係合する制御アームの一端を回動自在に軸支し、
切換アームが回動されると、制御アームを介してウェイト部材が揺動され、切換アームを中立位置に復帰する方向にウェイト部材の自重が制御アームに付加される、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機の昇降シリンダ制御機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2006−50958(P2006−50958A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235067(P2004−235067)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
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