作業機の昇降装置
【課題】構造が簡単であって、しかもキャットウォークと下部走行体との間の昇降が容易となる構成の作業機の昇降装置を提供する。
【解決手段】キャットウォーク17の側面に第1のステップ23を取付ける。第1のステップ23は、左右の側板部23a,23a間に1段の踏み板23c〜23eを設けた構成とする。第1のステップを左右から挟むように上下動可能に第2のステップ24を装着する。第2のステップ24は左右の側枠24e,24fおよびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板24b〜24dを有する。第1のステップ23に、第2のステップ24を少なくともその上昇位置にて着脱可能に固定するストライカ31を備える。第2のステップ24は、その下降状態において、下部走行体の履帯より上方に位置する。
【解決手段】キャットウォーク17の側面に第1のステップ23を取付ける。第1のステップ23は、左右の側板部23a,23a間に1段の踏み板23c〜23eを設けた構成とする。第1のステップを左右から挟むように上下動可能に第2のステップ24を装着する。第2のステップ24は左右の側枠24e,24fおよびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板24b〜24dを有する。第1のステップ23に、第2のステップ24を少なくともその上昇位置にて着脱可能に固定するストライカ31を備える。第2のステップ24は、その下降状態において、下部走行体の履帯より上方に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機において、作業者が上部旋回体へ昇降するための昇降装置に係り、特に比較的大型の作業機において、キャットウォーク上に昇降するための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機は下部走行体と上部旋回体とを備え、上部旋回体に運転室やエンジン室などが設けられており、オペレータや保守作業員が上部旋回体に昇降するための昇降装置が上部旋回体に設置される。このような昇降装置のうち、特許文献1には、上部旋回体に上下昇降式の梯子を設け、昇降時には梯子を下方に延出させ、作業時には梯子を上方に引上げて格納する構造のものが開示されている。また、特許文献2には、梯子を回動させて引下げ、あるいは格納する構造のものが開示されている。
【0003】
また、キャットウォークに昇降するための従来の昇降装置として、図11に示すものがある。この昇降装置は、上部旋回体3の側部に設けられたキャットウォーク17に、外側に突出するように固定式のステップ50を設けたものである。また、下部走行体1を構成するサイドフレーム1bの外面にステップ19,20を設けており、オペレータや作業者はサイドフレーム1bに設けたステップ19,20およびキャットウォーク17の側面に設けたステップ50を介してキャットウォーク17上に昇降できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240278号公報
【特許文献2】特開2009−287384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、上部旋回体に上下昇降式の梯子を設けた昇降装置は、装置構成が大掛かりとなり、コスト高になるという問題点がある。また、特許文献2に示すように、梯子を回動式にして下げた状態と格納状態にする構成のものも同様に構成が比較的大掛かりになるという問題点がある。
【0006】
一方、図11に示すように、キャットウォーク17の側面に固定式のステップ50を設ける場合、このステップ50を下部走行体1に近接させて昇降が容易となるように構成すると、上部旋回体3を旋回させる際に、ステップ50が下部走行体1に衝突しやすくなる。反対に、ステップ50を高くすると、昇降が困難となるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、構造が簡単であって、しかもキャットウォークと下部走行体との間の昇降が容易となる構成の作業機の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の作業機の昇降装置は、
履帯式下部走行体上の上部旋回体側面のキャットウォークに昇降するために設けられる作業機の昇降装置において、
1段の踏み板を有し、前記キャットウォーク側面に取付けられる第1のステップと、
前記第1のステップを左右から挟むようにガイド機構を介して上下動可能に装着される左右の側枠およびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板を有する第2のステップと、
前記第1のステップに取付けられ、前記第2のステップを少なくともその引上げ状態にて着脱可能に固定するストライカとを備えると共に、
前記第2のステップは、その引下げ状態において、前記下部走行体の履帯より上方にある構成にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の作業機の昇降装置は、請求項1に記載の作業機の昇降装置において、少なくとも前記第2のステップの両側枠をラバー材により構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の作業機の昇降装置は、請求項1または2に記載の作業機の昇降装置において、前記第2のステップの踏み板を前記第1のステップの踏み板より外側に突出させた構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、1段の踏み板をそれぞれ有する第1、第2のステップにより昇降装置を構成したので、多段の踏み板を有する梯子昇降式等の格納型の昇降装置よりも簡単な構成により昇降装置を実現することができ、製造コストを下げることができる。
【0012】
また、作業機が稼動しているときにはストライカにより第2のステップを上昇位置に固定して、下部走行体の履体上の岩等の障害物に昇降装置が接触することによる破損を防止することができる。また、オペレータや作業者が昇降する際には、第2のステップを引下げ位置に下げることにより、キャットウォークに対する昇降を容易とすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、少なくとも第2のステップの両側枠をラバーによって構成したことにより、仮に昇降装置の第2のステップを下ろしたまま作業機を稼動させ、上部旋回体の旋回等により履体の上の載る岩石等の障害物によって第2のステップが干渉されても、ラバーの持つ可撓性により衝撃を吸収できるので、昇降装置の破損を防止することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、第1のステップのよりも第2のステップを外方に突出させて構成したので、第2のステップを引下げた状態において、第1のステップと第2のステップの踏み板が階段状に構成されるため、オペレータや作業者が昇降しやすい構成となる。また、第1のステップと第2のステップとで昇降装置全体の上部旋回体から外方への突出幅が大きくなるため、昇降装置を取付けるキャットウォークの幅を小さく済ませることが可能となる。このように、キャットウォークの幅を狭くすることができるため、キャットウォークの製造費を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による作業機の昇降装置の一実施の形態を示す作業機の側面図である。
【図2】図1の作業機の一部を示す正面図である。
【図3】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す正面図である。
【図5】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す右側面図である。
【図6】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す左側面図である。
【図7】本実施の形態の昇降装置を示す平面図である。
【図8】本実施の形態のストライカを示す平面図である。
【図9】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引上げ状態で示す正面図である。
【図10】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引上げ状態で示す左側面図である。
【図11】従来の昇降装置を示す作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明による作業機の昇降装置の一実施の形態を示す作業機の側面図、図2はその作業機の一部を示す正面図である。この例は作業機が油圧ショベルである場合について示す。1は履帯式下部走行体であり、この下部走行体1は、図2に示すセンターフレーム1aの左右に図1に示すサイドフレーム1bを設け、各サイドフレーム1bの後部にそれぞれ駆動輪1cを取付けると共に、前部に従動輪1dを取付け、これらの駆動輪1cおよび従動輪1dにガイドローラ1eを介して履帯1fを掛け回して構成する。
【0017】
下部走行体1のセンターフレーム1a上には旋回装置2を介して旋回フレーム3aを設置する。旋回フレーム3a上にはエンジン等の原動機とその原動機により駆動される油圧ポンプからなるパワーユニット4を搭載すると共に、運転室5やカウンタウエイト6等を搭載して上部旋回体3を構成する。
【0018】
旋回フレーム3aには作業用フロント7を取付ける。この作業用フロント7は、旋回フレーム3aにブームシリンダ8により起伏可能に取付けたブーム9と、このブーム9にアームシリンダ10により回動可能に取付けたアーム11と、このアーム11にバケットシリンダ12およびリンク13,14により回動可能に取付けたバケット15とを備える。
【0019】
旋回フレーム3aの左右両側には上部旋回体3や運転室5にオペレータや保守作業員が上るためのキャットウォーク17を設け、キャットウォーク17の外側には手摺18を取付ける。一方、下部走行体1のサイドフレーム1bの外面にはキャットウォーク17に上るためのステップ19、20を取付ける。
【0020】
22は本発明によりキャットウォーク17の外面に取付けた昇降装置である。この昇降装置22は図3の斜視図に示すように、第1のステップ23と第2のステップ24とにより構成する、図3は第2のステップ24を引下げた状態で示す昇降装置22の斜視図である。図4はその正面図、図5はその右側面図、図6はその左側面図、図7はその平面図である。
【0021】
図3、図7に示すように、第1のステップ23は、左右の側板部23a,23aにキャットウォーク17に取付けるための曲成部23bを有し、この曲成部23bをボルト25によってキャットウォーク17の側面に固定することにより、キャットウォーク17に第1のステップ23を取付ける。左右の側板部23a,23a間には1段の踏み板を設ける。この実施の形態においては、この1段の踏み板が3枚の縦板状の踏み板23c〜23eにより構成される例を示し、最も外側の踏み板23cは側板部23aと一体に形成されており、他の踏み板23d,23eは側板部23a,23aに両端を溶接して取付けられている。
【0022】
第2のステップ24は、左右の側板部24a,24aの間に1段の踏み板24b〜24dを設け、左右の側板部24a,24aを、左右の側枠24e,24fの下部にボルト26、ナット27によって固定した構造を有する。
【0023】
図3、図4、図7に示すように、第2のステップ24の側枠24e,24fによって第1のステップ23を挟むように、下記の機構により、第2のステップ24を第1のステップ23に対して上下動可能に装着する。すなわち、第2のステップ24e、24fには図5、図6に示すように、それぞれ2条のガイド溝24g,24gを縦方向に設け、これらのガイド溝24g,24gに、図7に示すように、第1のステップ23の側板部23a,23aに固定するガイドピン28を上下動可能に貫挿する。各ガイドピン28はパイプ状をなし、このガイドピン28は前述のようにガイド溝24gに貫挿すると共に、第1のステップ23の側板部23aに設けたピン孔23fに貫挿する。そして、ガイドピン28に外側からワッシャ29aを介して貫挿するボルト29を第1のステップ23の側板部23aの内側に設けたナット30に螺合し締結することにより、ガイドピン28が第1のステップ23に固定される。
【0024】
図7に示すように、第1のステップ23の踏み板23dと側板部23aとのコーナー部に、第1のステップ23に対して第2のステップ24を固定するためのストライカ31を設ける。図8はこのストライカ31の構造を示す平面図である。図8に示すように、ストライカ31は、踏み板23dと側板部23aとのコーナー部にボルトまたは図示のように溶接により固定されたガイド体32を設け、このガイド体32に設けたガイド孔32aにロックピン33を摺動可能に挿通する。
【0025】
このロックピン33は、側板部23aに設けたピン孔23gに挿着すると共に、第2のステップ24の側枠24fのそれぞれ上下に設けたロック孔24h,24iのいずれかに挿着することにより、第2のステップ24をそれぞれ引下げ位置、引上げ位置において第1のステップ23に固定するものである。このロックピン33は、側方に突出させて設けたハンドル33aを有し、このハンドル33aを、ガイド体32の側面に設けたガイド溝32bに摺動可能に貫挿する。34はロックピン33を押し出し方向に付勢する押しばねであり、この押しばね34はガイド孔31aに収容される。35は第2のステップ24を上げ下げするため、側枠24eの上部に取付けた取手である。
【0026】
図9は作業時に第2のステップ24を引上げた状態を示す正面図、図10はその左側面図である。このように第2のステップ24が引上げられた状態においては、ストライカ31のロックピン33が側枠24fの下方のピン孔24iに挿着されており、これによって第2のステップ24の降下が防止される。
【0027】
オペレータや保守作業員がキャットウォーク17上に上る際には、サイドフレーム1bのステップ19または20上に乗り、ストライカ31のハンドル33aを押しばね34の押圧力に抗して操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24iから引き抜き、第2のステップ24を図2で2点鎖線に示すように降下させる。この降下幅Mは、図9、図10に示すように引上げた状態から、ガイドピン28がガイド溝24gの頂部に当接した引下げ状態までの上下動可能な範囲によって決定され、この降下幅Mはピン孔24h,24iの上下間隔に一致する。このように第2のステップ24が引下げられた状態においては、ストライカ31のロックピン33は押しばね34の力により押されて側枠24fの上方のピン孔24hに挿着され固定される。このとき、第2のステップ24と下部走行体1の履帯1fとの間には上下方向に間隔Nが形成される。
【0028】
このように第2のステップ24を引下げ、オペレータ等が第2のステップ24と第1のステップ23を利用してキャットウォーク17上に上った後は、オペレータ等は、ストライカ31のハンドル33aを押しばね34の押圧力に抗して操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24hから引き抜き、取手35を持って第2のステップ24を引き上げる。そして側枠24fのピン孔24iがロックピン33の高さに達すると、ロックピン33は押しばね34の力により押し出されて図10に示すようにピン孔24iに挿着され、第2のステップ24が上げ位置にて固定される。キャットウォーク17から降りる場合には、前述のように、ストライカ31のハンドル33aを操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24iから抜き、第2のステップ24を降ろす。
【0029】
この実施の形態によれば、図2に2点鎖線で示すように第2のステップ24を下した状態においては、第2のステップ24の踏み板24b〜24dの高さがサイドフレーム1bのステップ20に近くなり、図11に示した従来の1段構成のステップに比較してステップ20との高低差が小さくなる。また、第2のステップ24の踏み板24b〜24dと第1のステップ23の踏み板23c〜23eとの高低差も小さいため、オペレータ等はステップ20から踏み板24b〜24dおよび踏み板23c〜23eにかけて容易に昇降することができる。
【0030】
また、本実施の形態においては、第1のステップ23の踏み板23c〜23eよりも第2のステップ24の踏み板24b〜24dを外方に突出させて構成しているので、第2のステップ24の踏み板24b〜24dに対し、第1のステップ23の踏み板23c〜23eはキャットウォーク17側に近接しており、傾斜した階段状となるので、昇降がさらに容易となる。
【0031】
また、前述のように、第1のステップ23の踏み板23c〜23eよりも第2のステップ24の踏み板24b〜24dを外方に突出させて構成しているので、第1のステップ23と第2のステップ24との組み合わせにより、昇降装置22全体の上部旋回体から外方への突出幅が大きくなるため、昇降装置を取付けるキャットウォーク17の幅L(図2参照)を図11に示したステップよりも小さく済ませることが可能となる。このように、キャットウォークの幅を狭くすることができるため、キャットウォーク17の製造費を下げることができる。
【0032】
本発明の昇降装置において、少なくとも第2のステップの両側枠24e,24fをラバーによって構成すれば、第2のステップ24を下げたまま作業機を稼動させた際に、上部旋回体3の旋回等により履体1fの上の載る岩石等の障害物とよって第2のステップ24が干渉されても、ラバーの持つ可撓性により衝撃を吸収できるので、昇降装置の破損を防止することができる。
【0033】
上記の実施の形態においては、第2のステップ24を引上げた状態と引下げた状態でいずれもロックピン33により第2のステップ24をロックする構成としたが、第2のステップ24を引上げた状態でのみロックピン33によりロックする構成にしてもよい。また、第2のステップ24をロックするストライカとしては、上記実施の形態以外の他の構造のものも採用可能である。また、本発明の昇降装置は、油圧ショベル以外にアーム11の先端にバケット以外の各種作業具を取付けた他の作業用フロントを有する作業機やクレーン等の他の作業機にも適用できる。また、本発明を実施する場合、上記実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:下部走行体、1a:センターフレーム、1b:サイドフレーム、1f:履帯、2:旋回装置、3:上部旋回体、3a:旋回フレーム、4:パワーユニット、5:運転室、6:カウンタウエイト、7:作業用フロント、17:キャットウォーク、18:手摺、19,20:ステップ、22:昇降装置、23:第1のステップ、23a:側板部、23c〜23e:踏み板、24:第2のステップ、24a:側板部、24b〜24d:踏み板、24e,24f:側枠、24g:ガイド溝、24h,24i:ピン孔、26:ボルト、27:ナット、28:ガイドピン、29:ボルト、30:ナット、31:ストライカ、32:ガイド体、32a:ガイド孔、33:ロックピン、33a:ハンドル、34:押しばね、35:取手
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機において、作業者が上部旋回体へ昇降するための昇降装置に係り、特に比較的大型の作業機において、キャットウォーク上に昇降するための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機は下部走行体と上部旋回体とを備え、上部旋回体に運転室やエンジン室などが設けられており、オペレータや保守作業員が上部旋回体に昇降するための昇降装置が上部旋回体に設置される。このような昇降装置のうち、特許文献1には、上部旋回体に上下昇降式の梯子を設け、昇降時には梯子を下方に延出させ、作業時には梯子を上方に引上げて格納する構造のものが開示されている。また、特許文献2には、梯子を回動させて引下げ、あるいは格納する構造のものが開示されている。
【0003】
また、キャットウォークに昇降するための従来の昇降装置として、図11に示すものがある。この昇降装置は、上部旋回体3の側部に設けられたキャットウォーク17に、外側に突出するように固定式のステップ50を設けたものである。また、下部走行体1を構成するサイドフレーム1bの外面にステップ19,20を設けており、オペレータや作業者はサイドフレーム1bに設けたステップ19,20およびキャットウォーク17の側面に設けたステップ50を介してキャットウォーク17上に昇降できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240278号公報
【特許文献2】特開2009−287384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、上部旋回体に上下昇降式の梯子を設けた昇降装置は、装置構成が大掛かりとなり、コスト高になるという問題点がある。また、特許文献2に示すように、梯子を回動式にして下げた状態と格納状態にする構成のものも同様に構成が比較的大掛かりになるという問題点がある。
【0006】
一方、図11に示すように、キャットウォーク17の側面に固定式のステップ50を設ける場合、このステップ50を下部走行体1に近接させて昇降が容易となるように構成すると、上部旋回体3を旋回させる際に、ステップ50が下部走行体1に衝突しやすくなる。反対に、ステップ50を高くすると、昇降が困難となるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、構造が簡単であって、しかもキャットウォークと下部走行体との間の昇降が容易となる構成の作業機の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の作業機の昇降装置は、
履帯式下部走行体上の上部旋回体側面のキャットウォークに昇降するために設けられる作業機の昇降装置において、
1段の踏み板を有し、前記キャットウォーク側面に取付けられる第1のステップと、
前記第1のステップを左右から挟むようにガイド機構を介して上下動可能に装着される左右の側枠およびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板を有する第2のステップと、
前記第1のステップに取付けられ、前記第2のステップを少なくともその引上げ状態にて着脱可能に固定するストライカとを備えると共に、
前記第2のステップは、その引下げ状態において、前記下部走行体の履帯より上方にある構成にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の作業機の昇降装置は、請求項1に記載の作業機の昇降装置において、少なくとも前記第2のステップの両側枠をラバー材により構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の作業機の昇降装置は、請求項1または2に記載の作業機の昇降装置において、前記第2のステップの踏み板を前記第1のステップの踏み板より外側に突出させた構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、1段の踏み板をそれぞれ有する第1、第2のステップにより昇降装置を構成したので、多段の踏み板を有する梯子昇降式等の格納型の昇降装置よりも簡単な構成により昇降装置を実現することができ、製造コストを下げることができる。
【0012】
また、作業機が稼動しているときにはストライカにより第2のステップを上昇位置に固定して、下部走行体の履体上の岩等の障害物に昇降装置が接触することによる破損を防止することができる。また、オペレータや作業者が昇降する際には、第2のステップを引下げ位置に下げることにより、キャットウォークに対する昇降を容易とすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、少なくとも第2のステップの両側枠をラバーによって構成したことにより、仮に昇降装置の第2のステップを下ろしたまま作業機を稼動させ、上部旋回体の旋回等により履体の上の載る岩石等の障害物によって第2のステップが干渉されても、ラバーの持つ可撓性により衝撃を吸収できるので、昇降装置の破損を防止することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、第1のステップのよりも第2のステップを外方に突出させて構成したので、第2のステップを引下げた状態において、第1のステップと第2のステップの踏み板が階段状に構成されるため、オペレータや作業者が昇降しやすい構成となる。また、第1のステップと第2のステップとで昇降装置全体の上部旋回体から外方への突出幅が大きくなるため、昇降装置を取付けるキャットウォークの幅を小さく済ませることが可能となる。このように、キャットウォークの幅を狭くすることができるため、キャットウォークの製造費を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による作業機の昇降装置の一実施の形態を示す作業機の側面図である。
【図2】図1の作業機の一部を示す正面図である。
【図3】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す正面図である。
【図5】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す右側面図である。
【図6】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引下げ状態で示す左側面図である。
【図7】本実施の形態の昇降装置を示す平面図である。
【図8】本実施の形態のストライカを示す平面図である。
【図9】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引上げ状態で示す正面図である。
【図10】本実施の形態の昇降装置を第2のステップ引上げ状態で示す左側面図である。
【図11】従来の昇降装置を示す作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明による作業機の昇降装置の一実施の形態を示す作業機の側面図、図2はその作業機の一部を示す正面図である。この例は作業機が油圧ショベルである場合について示す。1は履帯式下部走行体であり、この下部走行体1は、図2に示すセンターフレーム1aの左右に図1に示すサイドフレーム1bを設け、各サイドフレーム1bの後部にそれぞれ駆動輪1cを取付けると共に、前部に従動輪1dを取付け、これらの駆動輪1cおよび従動輪1dにガイドローラ1eを介して履帯1fを掛け回して構成する。
【0017】
下部走行体1のセンターフレーム1a上には旋回装置2を介して旋回フレーム3aを設置する。旋回フレーム3a上にはエンジン等の原動機とその原動機により駆動される油圧ポンプからなるパワーユニット4を搭載すると共に、運転室5やカウンタウエイト6等を搭載して上部旋回体3を構成する。
【0018】
旋回フレーム3aには作業用フロント7を取付ける。この作業用フロント7は、旋回フレーム3aにブームシリンダ8により起伏可能に取付けたブーム9と、このブーム9にアームシリンダ10により回動可能に取付けたアーム11と、このアーム11にバケットシリンダ12およびリンク13,14により回動可能に取付けたバケット15とを備える。
【0019】
旋回フレーム3aの左右両側には上部旋回体3や運転室5にオペレータや保守作業員が上るためのキャットウォーク17を設け、キャットウォーク17の外側には手摺18を取付ける。一方、下部走行体1のサイドフレーム1bの外面にはキャットウォーク17に上るためのステップ19、20を取付ける。
【0020】
22は本発明によりキャットウォーク17の外面に取付けた昇降装置である。この昇降装置22は図3の斜視図に示すように、第1のステップ23と第2のステップ24とにより構成する、図3は第2のステップ24を引下げた状態で示す昇降装置22の斜視図である。図4はその正面図、図5はその右側面図、図6はその左側面図、図7はその平面図である。
【0021】
図3、図7に示すように、第1のステップ23は、左右の側板部23a,23aにキャットウォーク17に取付けるための曲成部23bを有し、この曲成部23bをボルト25によってキャットウォーク17の側面に固定することにより、キャットウォーク17に第1のステップ23を取付ける。左右の側板部23a,23a間には1段の踏み板を設ける。この実施の形態においては、この1段の踏み板が3枚の縦板状の踏み板23c〜23eにより構成される例を示し、最も外側の踏み板23cは側板部23aと一体に形成されており、他の踏み板23d,23eは側板部23a,23aに両端を溶接して取付けられている。
【0022】
第2のステップ24は、左右の側板部24a,24aの間に1段の踏み板24b〜24dを設け、左右の側板部24a,24aを、左右の側枠24e,24fの下部にボルト26、ナット27によって固定した構造を有する。
【0023】
図3、図4、図7に示すように、第2のステップ24の側枠24e,24fによって第1のステップ23を挟むように、下記の機構により、第2のステップ24を第1のステップ23に対して上下動可能に装着する。すなわち、第2のステップ24e、24fには図5、図6に示すように、それぞれ2条のガイド溝24g,24gを縦方向に設け、これらのガイド溝24g,24gに、図7に示すように、第1のステップ23の側板部23a,23aに固定するガイドピン28を上下動可能に貫挿する。各ガイドピン28はパイプ状をなし、このガイドピン28は前述のようにガイド溝24gに貫挿すると共に、第1のステップ23の側板部23aに設けたピン孔23fに貫挿する。そして、ガイドピン28に外側からワッシャ29aを介して貫挿するボルト29を第1のステップ23の側板部23aの内側に設けたナット30に螺合し締結することにより、ガイドピン28が第1のステップ23に固定される。
【0024】
図7に示すように、第1のステップ23の踏み板23dと側板部23aとのコーナー部に、第1のステップ23に対して第2のステップ24を固定するためのストライカ31を設ける。図8はこのストライカ31の構造を示す平面図である。図8に示すように、ストライカ31は、踏み板23dと側板部23aとのコーナー部にボルトまたは図示のように溶接により固定されたガイド体32を設け、このガイド体32に設けたガイド孔32aにロックピン33を摺動可能に挿通する。
【0025】
このロックピン33は、側板部23aに設けたピン孔23gに挿着すると共に、第2のステップ24の側枠24fのそれぞれ上下に設けたロック孔24h,24iのいずれかに挿着することにより、第2のステップ24をそれぞれ引下げ位置、引上げ位置において第1のステップ23に固定するものである。このロックピン33は、側方に突出させて設けたハンドル33aを有し、このハンドル33aを、ガイド体32の側面に設けたガイド溝32bに摺動可能に貫挿する。34はロックピン33を押し出し方向に付勢する押しばねであり、この押しばね34はガイド孔31aに収容される。35は第2のステップ24を上げ下げするため、側枠24eの上部に取付けた取手である。
【0026】
図9は作業時に第2のステップ24を引上げた状態を示す正面図、図10はその左側面図である。このように第2のステップ24が引上げられた状態においては、ストライカ31のロックピン33が側枠24fの下方のピン孔24iに挿着されており、これによって第2のステップ24の降下が防止される。
【0027】
オペレータや保守作業員がキャットウォーク17上に上る際には、サイドフレーム1bのステップ19または20上に乗り、ストライカ31のハンドル33aを押しばね34の押圧力に抗して操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24iから引き抜き、第2のステップ24を図2で2点鎖線に示すように降下させる。この降下幅Mは、図9、図10に示すように引上げた状態から、ガイドピン28がガイド溝24gの頂部に当接した引下げ状態までの上下動可能な範囲によって決定され、この降下幅Mはピン孔24h,24iの上下間隔に一致する。このように第2のステップ24が引下げられた状態においては、ストライカ31のロックピン33は押しばね34の力により押されて側枠24fの上方のピン孔24hに挿着され固定される。このとき、第2のステップ24と下部走行体1の履帯1fとの間には上下方向に間隔Nが形成される。
【0028】
このように第2のステップ24を引下げ、オペレータ等が第2のステップ24と第1のステップ23を利用してキャットウォーク17上に上った後は、オペレータ等は、ストライカ31のハンドル33aを押しばね34の押圧力に抗して操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24hから引き抜き、取手35を持って第2のステップ24を引き上げる。そして側枠24fのピン孔24iがロックピン33の高さに達すると、ロックピン33は押しばね34の力により押し出されて図10に示すようにピン孔24iに挿着され、第2のステップ24が上げ位置にて固定される。キャットウォーク17から降りる場合には、前述のように、ストライカ31のハンドル33aを操作してロックピン33を側枠24fのピン孔24iから抜き、第2のステップ24を降ろす。
【0029】
この実施の形態によれば、図2に2点鎖線で示すように第2のステップ24を下した状態においては、第2のステップ24の踏み板24b〜24dの高さがサイドフレーム1bのステップ20に近くなり、図11に示した従来の1段構成のステップに比較してステップ20との高低差が小さくなる。また、第2のステップ24の踏み板24b〜24dと第1のステップ23の踏み板23c〜23eとの高低差も小さいため、オペレータ等はステップ20から踏み板24b〜24dおよび踏み板23c〜23eにかけて容易に昇降することができる。
【0030】
また、本実施の形態においては、第1のステップ23の踏み板23c〜23eよりも第2のステップ24の踏み板24b〜24dを外方に突出させて構成しているので、第2のステップ24の踏み板24b〜24dに対し、第1のステップ23の踏み板23c〜23eはキャットウォーク17側に近接しており、傾斜した階段状となるので、昇降がさらに容易となる。
【0031】
また、前述のように、第1のステップ23の踏み板23c〜23eよりも第2のステップ24の踏み板24b〜24dを外方に突出させて構成しているので、第1のステップ23と第2のステップ24との組み合わせにより、昇降装置22全体の上部旋回体から外方への突出幅が大きくなるため、昇降装置を取付けるキャットウォーク17の幅L(図2参照)を図11に示したステップよりも小さく済ませることが可能となる。このように、キャットウォークの幅を狭くすることができるため、キャットウォーク17の製造費を下げることができる。
【0032】
本発明の昇降装置において、少なくとも第2のステップの両側枠24e,24fをラバーによって構成すれば、第2のステップ24を下げたまま作業機を稼動させた際に、上部旋回体3の旋回等により履体1fの上の載る岩石等の障害物とよって第2のステップ24が干渉されても、ラバーの持つ可撓性により衝撃を吸収できるので、昇降装置の破損を防止することができる。
【0033】
上記の実施の形態においては、第2のステップ24を引上げた状態と引下げた状態でいずれもロックピン33により第2のステップ24をロックする構成としたが、第2のステップ24を引上げた状態でのみロックピン33によりロックする構成にしてもよい。また、第2のステップ24をロックするストライカとしては、上記実施の形態以外の他の構造のものも採用可能である。また、本発明の昇降装置は、油圧ショベル以外にアーム11の先端にバケット以外の各種作業具を取付けた他の作業用フロントを有する作業機やクレーン等の他の作業機にも適用できる。また、本発明を実施する場合、上記実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:下部走行体、1a:センターフレーム、1b:サイドフレーム、1f:履帯、2:旋回装置、3:上部旋回体、3a:旋回フレーム、4:パワーユニット、5:運転室、6:カウンタウエイト、7:作業用フロント、17:キャットウォーク、18:手摺、19,20:ステップ、22:昇降装置、23:第1のステップ、23a:側板部、23c〜23e:踏み板、24:第2のステップ、24a:側板部、24b〜24d:踏み板、24e,24f:側枠、24g:ガイド溝、24h,24i:ピン孔、26:ボルト、27:ナット、28:ガイドピン、29:ボルト、30:ナット、31:ストライカ、32:ガイド体、32a:ガイド孔、33:ロックピン、33a:ハンドル、34:押しばね、35:取手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履帯式下部走行体上の上部旋回体側面のキャットウォークに昇降するために設けられる作業機の昇降装置において、
1段の踏み板を有し、前記キャットウォーク側面に取付けられる第1のステップと、
前記第1のステップを左右から挟むようにガイド機構を介して上下動可能に装着される左右の側枠およびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板を有する第2のステップと、
前記第1のステップに取付けられ、前記第2のステップを少なくともその引上げ状態にて着脱可能に固定するストライカとを備えると共に、
前記第2のステップは、その引下げ状態において、前記下部走行体の履帯より上方にある構成にしたことを特徴とする作業機の昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機の昇降装置において、
少なくとも前記第2のステップの両側枠をラバー材により構成したことを特徴とする作業機の昇降装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機の昇降装置において、
前記第2のステップの踏み板を前記第1のステップの踏み板より外側に突出させた構成にしたことを特徴とする作業機の昇降装置。
【請求項1】
履帯式下部走行体上の上部旋回体側面のキャットウォークに昇降するために設けられる作業機の昇降装置において、
1段の踏み板を有し、前記キャットウォーク側面に取付けられる第1のステップと、
前記第1のステップを左右から挟むようにガイド機構を介して上下動可能に装着される左右の側枠およびこの左右の側枠の下部間に設けられた1段の踏み板を有する第2のステップと、
前記第1のステップに取付けられ、前記第2のステップを少なくともその引上げ状態にて着脱可能に固定するストライカとを備えると共に、
前記第2のステップは、その引下げ状態において、前記下部走行体の履帯より上方にある構成にしたことを特徴とする作業機の昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機の昇降装置において、
少なくとも前記第2のステップの両側枠をラバー材により構成したことを特徴とする作業機の昇降装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機の昇降装置において、
前記第2のステップの踏み板を前記第1のステップの踏み板より外側に突出させた構成にしたことを特徴とする作業機の昇降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−53478(P2013−53478A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193357(P2011−193357)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]