説明

作業機の油圧ポンプ装置

【課題】 第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとの噛み合い、調整を簡単になし得ると共に、第1ベベルギヤ及び第2ベベルギヤのミッションケースへの組み込み作業を容易になし得るようにする。
【解決手段】 ミッションケース1内の動力伝達用の軸12によって駆動される第1ベベルギヤ41と、この第1ベベルギヤ41と噛合されていて油圧ポンプ35のポンプ入力軸36と連結される第2ベベルギヤ42と、この第2ベベルギヤ42を支持するホルダ38と有する。前記第2ベベルギヤ42を支持するホルダ38は、第1ベベルギヤ41を支持する支持部51を有し、ミッションケース1に着脱可能に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業機の油圧ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業機の油圧ポンプ装置には、ミッションケース内にポンプ入力軸を突入した状態に油圧ポンプが設けられ、PTO推進軸に外嵌した第1ベベルギヤと、第1ベベルギヤに噛合されかつ油圧ポンプのポンプ入力軸に連結された第2ベベルギヤとがミッションケース内に設けられ、PTO推進軸の回転動力を第1ベベルギヤ及び第2ベベルギヤを介して取り出して油圧ポンプのポンプ入力軸を回転駆動するようにしたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
従来のこの種の作業機の油圧ポンプ装置では、第1ベベルギヤに突出した支持筒軸と、第2ベベルギヤに突出した支持軸とが別々のホルダにそれぞれ軸心廻りに回転自在に支持されており、第1ベベルギヤを支持するホルダと第2ベベルギヤを支持するホルダとが異なっていた(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−90476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の場合、第1ベベルギヤを支持するベアリングケースと第2ベベルギヤを支持するホルダとが異なっていたため、第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとの噛み合い、調整に手間がかかり、第1ベベルギヤ及び第2ベベルギヤとのミッションケース1への組み込み作業も面倒であった。
本発明は上記問題点に鑑みて、第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとの噛み合い、調整を簡単になし得ると共に、第1ベベルギヤ及び第2ベベルギヤのミッションケースへの組み込み作業を容易になし得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、ミッションケース内の動力伝達用の軸によって駆動される第1ベベルギヤと、この第1ベベルギヤと噛合されていて油圧ポンプのポンプ入力軸と連結される第2ベベルギヤと、この第2ベベルギヤを支持するホルダと有しており、
前記第2ベベルギヤを支持するホルダは、第1ベベルギヤを支持する支持部を有し、ミッションケースに着脱可能に装着されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、第1ベベルギヤは軸心方向に突出した支持筒軸を有し、支持筒軸が動力伝達用の軸の後端部に外嵌されると共にホルダの第1支持部に支持されており、
第2ベベルギヤは軸心方向に突出した支持軸を有し、支持軸がポンプ入力軸に同一軸心廻りに回転するように連結されると共に前記ホルダの第2支持部に支持されており、
前記ホルダの第1支持部と第2支持部とはL字状に配置されている点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記ミッションケースは前ミッションケースと後ミッションケースとを有し、前記ホルダが前ミッションケースの後端の内側に装着されている点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動力伝達用の軸を支持するホルダがミッションケースに着脱可能に装着され、このホルダに第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとがそれぞれ軸心廻りに回転自在に支持されているので、第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとの噛み合い、調整を簡単になし得る。また、第1ベベルギヤ及び第2ベベルギヤのミッションケースへの組み込み作業を容易になし得る。
【0010】
また、第1ベベルギヤの支持筒軸が動力伝達用の軸の後端部に外嵌されると共にホルダ
の第1支持部に支持され、第2ベベルギヤの支持軸がポンプ入力軸に同一軸心廻りに回転するように連結されると共にホルダの第2支持部に支持され、ホルダの第1支持部と第2支持部とがL字状に配置されているので、第1ベベルギヤと第2ベベルギヤとの噛み合い、調整を簡単になし得、しかもホルダを簡単かつ安価に製作できる。
【0011】
さらに、ホルダが前ミッションケースの後端の内側に装着されているので、組立・分解が簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す作業機の一部に背面断面図を有する側面断面図である。
【図2】同図1のポンプ装着部分を拡大した断面図である。
【図3】同ポンプ装着部分の背面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、トラクタ車体はミッションケース1を備え、ミッションケース1は歯車式主変速部2を内蔵している前ミッションケース3と、後輪デフおよびPTO変速部等を内蔵している後部の後ミッションケース4とによって主構成されている。前ミッションケース3の後縁部3aと後ミッションケース4の前縁部4aとは前後に接合されている。
【0014】
前ミッションケース3の前側にはクラッチハウジング8が連設され、該ハウジング8はエンジンの後面に連設されている。
エンジンの動力はクラッチによって断接されて走行系推進軸11に伝導され、該推進軸11は筒軸構造で前軸11Aと後軸11Bとに分割されていて、推進軸11内にはPTO推進軸12が内挿され、PTOクラッチ13を介してPTO変速部に連動している。
【0015】
走行系推進軸11は前ミッションケース3に軸受14等によって支持ホルダ9と中間壁10とに架設され、該軸11と平行に、変速副軸15が軸受にて支持ホルダ9と中間壁10とに架設されている。
歯車式主変速部2は、実施形態では常時嵌合形であり、推進軸11と変速副軸15とにわたって設けられている。
【0016】
すなわち、変速副軸15の略軸方向中央部上に空転自在として支持されている駆動第1・2変速歯車16,17間に両者に対して係脱自在となる第1シフタ18と、変速副軸15の前側に伝動歯車19と駆動第3変速歯車20と、変速副軸15の後側に空転自在に備えている逆転用歯車21と、を主変速部2が含んでいる。
走行系推進軸11の前軸11Aには前記副軸15上の伝動歯車19に嵌合する駆動歯車22を備え、この歯車22と後軸11Bとを矢示4Fにて直結して第4速を得る第2シフタ23を備え、該第2シフタ23は駆動第3変速歯車20に嵌合する従動第3変速歯車24を係脱自在とし矢示3Fにて第3速を得るようにしている。
【0017】
更に、推進軸11における後軸11Bには駆動第1・2変速歯車16,17に嵌合する従動第1・2変速歯車25,26が固着されているとともに、逆転用歯車21に嵌合する広幅の伝動歯車27を備え、第1シフタ18を矢示1F,2Fにシフト操作することで第1・2速を得ることが可能である。
走行系推進軸11と変速副軸15に対して平行として前ミッションケース3に変速出力軸28が軸受29にて架設してあり、該変速出力軸28には副変用高速歯車30と副変用低速歯車32と逆転用歯車34とが備えられているとともに、伝動軸31を介して後輪デフに連動連結されている。
【0018】
また、後輪デフは終減速装置を介して後輪に、また、前輪デフは終減速装置を介して前輪に連動連結されていて四輪駆動トラクタとされている。
PTO推進軸12は、PTOクラッチ13を介してPTO伝動軸33にエンジン動力を伝達し、このPTO伝動軸33は後ミッションケース4の後部のPTO軸にPTO変速機構を介して動力を伝達するように構成されている。
【0019】
PTO推進軸12とPTO伝動軸33とは、前ミッションケース3の後部又は後ミッションケース4の前部内で同一軸線上に対向配置され、いずれも前ミッションケース3の後
部又は後ミッションケース4の前部内に軸受を介して相互に独立して回転可能に支持されている。
次に、トラクタのパワーステアリング用油圧供給手段やトラクタ後部に設置される3点リンクヒッチ機構駆動用油圧供給手段等への油圧供給手段としてミッションケース1に取り付けられるポンプ動力取出構造について説明する。
【0020】
図2及び図3に示すように、前ミッションケース3の後部の右側面に油圧ポンプ35がボルト等の締結具37で着脱自在に取り付けられ、油圧ポンプ35は前ミッションケース3の後部から外方突出され、油圧ポンプ35のポンプ入力軸36は前ミッションケース3の後部内に突入した状態になっている。
PTO推進軸12の後端部を支持するホルダ38が前ミッションケース3の後部内に設けられ、ホルダ38は前ミッションケース3の後縁部3aの取付ボス等にボルト等の締結具39により着脱可能に装着されていて、前ミッションケース3の後端の内側に装着されている。
【0021】
前ミッションケース3の後部内にPTO推進軸12の後端部に外嵌された第1ベベルギヤ41と油圧ポンプ35のポンプ入力軸36に連結された第2ベベルギヤ42とが設けられ、第2ベベルギヤ42は第1ベベルギヤ41に噛合されている。第1ベベルギヤ41が第2ベベルギヤ42よりも後方に配置され、第1ベベルギヤ41は軸心方向に突出した支持筒軸43を有し、支持筒軸43がPTO推進軸12の後端部にスプライン嵌合されている。第2ベベルギヤ42は軸心方向に突出した支持軸46を有している。第2ベベルギヤ42の支持軸46とポンプ入力軸36とがカップリング47により連結固定され、これにより支持軸46がポンプ入力軸36に同一軸心廻りに回転するように連結されている。
【0022】
ホルダ38は第1支持部51と第2支持部52とをL字状に有し、第1支持部51に第1取付孔53が設けられ、第2支持部52に第2取付孔54が設けられている。第1支持部51の第1取付孔53にPTO推進軸12の後端部と第1ベベルギヤ41の支持筒軸43とが前後方向に挿通されて、ベアリング44を介してホルダ38に回転自在に支持されている。これにより、第1ベベルギヤ41がPTO推進軸12の後端部と共にホルダ38に軸心廻りに回転自在に支持され、PTO推進軸12の後端部が第1ベベルギヤ41及びホルダ38を介してミッションケース1に支持されている。第2支持部52の第2取付孔54に第2ベベルギヤ42の支持軸46が左右方向に挿通されて、ベアリング45を介してホルダ38に回転自在に支持されている。
【0023】
上記実施の形態によれば、前ミッションケース3の中間壁10よりも前側のPTO推進軸12、変速出力軸28、副軸15、各変速ギヤ等を前ミッションケース3に組み込んだ後、第1ベベルギヤ41及び第2ベベルギヤ42をそれぞれホルダ38に軸心廻りに回転自在に組み込んでおき、この状態でホルダ38を前ミッションケース3の上方乃至側方から前ミッションケース3内に挿入して、ボルト等の締結具39で前ミッションケース3の後縁部3aに取り付け、その後、第1ベベルギヤ41の支持筒軸43に内嵌挿入してPTO推進軸12に第1ベベルギヤ41の支持筒軸43をスプライン嵌合させる。また、油圧ポンプ35のポンプ入力軸36を前ミッションケース3内に突入させてカップリング47により第2ベベルギヤ42の支持軸46とポンプ入力軸36とを連結固定しながら、外側面からボルト等の締結具37で油圧ポンプ35を前ミッションケース3に締め付け固定すればよい。
【0024】
従って、1つのホルダ38に第1ベベルギヤ41と第2ベベルギヤ42とがそれぞれ軸心廻りに回転自在に支持されているので、ミッションケース1に組み込む前にこれらを組み立てることができ、ベベルギヤの噛み合い、調整を簡単になし得る。
【符号の説明】
【0025】
1 ミッションケース
3 前ミッションケース
3a 後縁部
4 後ミッションケース
12 PTO推進軸
35 油圧ポンプ
36 ポンプ入力軸
41 第1ベベルギヤ
43 支持筒軸
44 ベアリング
45 ベアリング
46 支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケース(1)内の動力伝達用の軸(12)によって駆動される第1ベベルギヤ(41)と、この第1ベベルギヤ(41)と噛合されていて油圧ポンプ(35)のポンプ入力軸(36)と連結される第2ベベルギヤ(42)と、この第2ベベルギヤ(42)を支持するホルダ(38)と有しており、
前記第2ベベルギヤ(42)を支持するホルダ(38)は、第1ベベルギヤ(41)を支持する支持部(51)を有し、ミッションケース(1)に着脱可能に装着されていることを特徴とする作業機の油圧ポンプ装置。
【請求項2】
第1ベベルギヤ(41)は軸心方向に突出した支持筒軸(43)を有し、支持筒軸(43)が動力伝達用の軸(12)の後端部に外嵌されると共にホルダ(38)の第1支持部(51)に支持されており、
第2ベベルギヤ(42)は軸心方向に突出した支持軸(46)を有し、支持軸(46)がポンプ入力軸(36)に同一軸心廻りに回転するように連結されると共に前記ホルダ(38)の第2支持部(52)に支持されており、
前記ホルダ(38)の第1支持部(51)と第2支持部(52)とはL字状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧ポンプ装置。
【請求項3】
前記ミッションケース(1)は前ミッションケース(3)と後ミッションケース(4)とを有し、前記ホルダ(38)が前ミッションケース(3)の後端の内側に装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機の油圧ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39917(P2013−39917A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235833(P2012−235833)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2009−153722(P2009−153722)の分割
【原出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】