説明

作業機械及びその組立方法

【課題】ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況でも、持ち上げ動作によって発生する修正力を生かしてピン穴合わせを容易に遂行する。
【解決手段】組立姿勢での作業アタッチメント36の先端側下面に接地具47を設ける。この接地具47の接地面47aについて、ベースマシンと作業アタッチメント36の支持地面G1,G2の傾きが異なる状況での持ち上げ動作によって作業アタッチメント36に横倒し方向の回転モーメントである修正力Fが作用したときに、支点となって作業アタッチメント36の回転を許容する幅寸法W2に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベースマシンに作業アタッチメントを取付けて構成される解体機等の作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層建造物の解体に使用される超ロングアタッチメント付きの解体機を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
この解体機は、図10に示すようにクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2とによってベースマシン3が構成される。
【0004】
このベースマシン3には、上部旋回体2の前部にメインブーム4がブームフットピン5を中心として起伏可能に取付けられ、このメインブーム4の先端に作業アタッチメント6が取付けられる。
【0005】
作業アタッチメント6は、メインブーム4の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられたフロントブーム7と、作業範囲の拡大を目的としてフロントブーム7の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられた短尺のインターブーム8と、このインターブーム8の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられたアーム9と、このアーム9の先端に取付けられた作業装置(図例ではニブラと称される開閉式の圧砕装置を示すが、用途に応じて掘削用のバケットや破砕用のブレーカが取付けられる場合がある)10とを具備する。
【0006】
なお、フロントブーム7として、図では単一のものを例示しているが、複数段のブーム体を着脱自在に連結して構成されるものもある。
【0007】
また、メインブーム4及び作業アタッチメント6を作動させる油圧シリンダとして、メインブーム4を起伏させるブームシリンダ11と、インターブーム8を回動させるインターブームシリンダ12と、アーム9を回動させるアームシリンダ13、それに作業装置10を回動させる作業装置シリンダ14が設けられている。15は作業装置シリンダ14の推力を作業装置10に回動力に変換して伝えるリンク機構である。
【0008】
インターブーム、アーム両シリンダ12,13は、それぞれアタッチメント前面側においてフロントブーム7とインターブーム8との間、インターブーム8とアーム9との間に設けられている。
【0009】
また、作業装置シリンダ14は、アタッチメント背面側においてアーム9と作業装置10との間に設けられている。
【0010】
メインブーム4とフロントブーム7は着脱自在にピン連結され、ベースマシン3及びメインブーム4の組と、フロントブーム7を含む作業アタッチメント6とに分解されて輸送され、輸送後に組立てられる。
【0011】
この組立構造及び組立方法を図11〜図14によって説明する。
【0012】
作業アタッチメント6は、組立時に、図11に示すようにインターブーム8を境としてフロントブーム7が上側、アーム9が下側となる三つ折れ状態に折り畳んで地上に置かれ、この折り畳み状態での基端側が架台16によって支持されるとともに、先端側が接地して支持される。
【0013】
架台16は、図13に拡大して示すように上向き二股状のブーム受け部16aを備え、フロントブーム7の基端部側面に横向き水平に突設された受け軸16bがこのブーム受け部16aに嵌まり込んだ状態で作業アタッチメント6の基端側が支持される。
【0014】
一方、作業アタッチメント6の先端側を支持する手段として、アーム9の基端部上面(折り畳み状態での下面)に接地具17が設けられている。
【0015】
この接地具17は、保管時や運搬時をも考慮して、作業アタッチメント6を幅方向にぐらつかない安定した状態で支持できるように、図14に示すようにアーム9のほぼ全幅に亘る広い面積範囲で接地するように構成されている。図14中、17aは接地具17の下面である接地面、W1はこの接地面17aの幅寸法である。
【0016】
以下、図11に示す作業アタッチメント6の姿勢、すなわち、三つ折れの倒伏状態で地上に置かれ、基端側が架台16で、先端側が接地具17で支持された姿勢を「組立姿勢」という。
【0017】
なお、作業装置10はこの段階で取付けておいてもよいし、後で取付けてもよい。
【0018】
メイン、フロント両ブーム4,7を連結する手段として、図13に示すように両ブーム4,7の相連結される端部の上部(組立姿勢での上部。以下にいう上下の方向性について同じ)に上部ピン穴18,19、同下部に下部ピン穴20,21がそれぞれ設けられ、図10,12に示すように上部ピン穴18,19に上部ピン22、下部ピン穴20,21に下部ピン23がそれぞれ挿入されることによって両ブーム4,7が着脱自在に連結される。
【0019】
また、この両ブーム4,7の連結(組立)、分離(分解)を、クレーンを用いずに自力で行うための構造として、図13に示すようにメインブーム4の先端部における上部ピン穴18よりも基端側の外側面に、ブーム幅方向に水平に延びる軸体(通常は丸ピン)24が設けられる一方、フロントブーム7の基端部における上部ピン穴19よりも基端側に下向きに開口するフック25(いずれも図13,14のみに符号を付している)が設けられている。
【0020】
メイン、フロント両ブーム4,7の連結手順は次の通りである。
【0021】
(i) 組立姿勢で、図11,13に示すように、下部走行体1の自走機能を用いてベースマシン3を前進させるとともに、メインブーム4を起こして軸体24をフック25に下方から係合させる。
【0022】
(ii) この状態で、メインブーム4を上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる「持ち上げ動作」を行うことにより、図12に示すようにメインブーム4とフロントブーム7(作業アタッチメント6全体)を軸体24を中心に相対回動させて上部ピン穴18,19を一致させ、この一致した上部ピン穴18,19に上部ピン22を差込む。
【0023】
この段階で、アタッチメント側の受け軸16bが架台16のブーム受け部16aから上方に離脱し、アタッチメント基端側は架台16に代わって上部ピン22で支持された状態となる。
【0024】
(iii) メインブーム4をさらに上向き回動させて、フロントブーム7を上部ピン22を中心に先下がり方向に回動させることにより、フック25を軸体24から離間させる一方で互いの下部ピン穴20,21同士を一致させ、この両ピン穴20,21に下部ピン23を差し込む。
【0025】
こうしてメインブーム4とフロントブーム7(作業アタッチメント6)とを連結し、アーム9の先端に作業装置10を取付けて組立が完了する。
【0026】
また、分解は上記と逆の手順、操作によって行われる。
【0027】
以上の構成は特許文献1に示されている。
【0028】
また、組立、分解時のピン穴合わせを容易化するために、作業アタッチメント6を支持する架台の傾きを地面に合わせて調整可能に構成した技術が特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2009−293261号公報
【特許文献2】特開2008−308873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
図14は、ベースマシン側と作業アタッチメント側の支持地面G1,G2の傾きが異なる状況(図示のようにベースマシン側の支持地面G1が水平でアタッチメント側の支持地面G2が斜面となる状況を例にとる)において、特許文献1記載の公知技術により、図11,13に示すようにメインブーム側の軸体24をフロントブーム側のフック25に係合させて持ち上げる「持ち上げ動作」を行うときの、メインブーム4と作業アタッチメント6の関係を模式的に示している。
【0031】
図示のように支持地面G1,G2の状況により、メインブーム4と作業アタッチメント6に相対的な傾きが生じているため、図11,13に示すようにメインブーム側の軸体24をフロントブーム側のフック25に係合させる段階で、傾きの下側の軸体24とフック25のみが係合し、上側の軸体24とフック25は適正に係合しない所謂片当たりの状態となる。
【0032】
この状態で「持ち上げ動作」を行うと、持ち上げ力により、作業アタッチメント6に図14矢印で示す横倒し方向の回転モーメント、すなわち、作業アタッチメント6の傾きを修正してメインブーム4に倣わせようとする外力(以下、修正力という)Fが作用する。
【0033】
ところが、ここで、アタッチメント先端側を支持する接地具17は、前記のようにアタッチメント先端側を幅方向に安定良く支持するという観点から、作業アタッチメント6(アーム9)のほぼ全幅に亘る十分大きな接地面幅寸法W1をもって形成され、地面G2の傾きの影響をまともに受けるため、上記修正力Fによっては修正されない。
【0034】
このため、軸体24とフック25による本来のピン穴合わせ機能が働かず、上部ピン穴18,19が不一致となって上部ピン22が差し込めなくなる(組立できなくなる)という問題が生じる。
【0035】
一方、特許文献2の架台を用いれば、架台の傾き調整によって作業アタッチメント6の傾きを修正でき、上部ピン穴合わせが可能となる。
【0036】
しかし、この公知技術によると、アタッチメント全体を載せて支持する大がかりな架台が必要となるため、大幅なコストアップとなるとともに、取り扱いが面倒となる。
【0037】
そこで本発明は、特許文献1記載の公知技術を前提として、ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況でも、持ち上げ動作による「修正力」を生かしてピン穴合わせを容易に遂行することができる作業機械及びその組立方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記課題を解決する手段として、本発明の作業機械においては、自走可能なベースマシンと、このベースマシンに起伏自在に取付けられたメインブームと、このメインブームの先端に着脱自在に取付けられる作業アタッチメントとから成り、上記メインブームと作業アタッチメントは、互いのピン穴にピンが挿入された状態で連結され、かつ、上記メインブームと上記作業アタッチメントの一方に水平な軸体、他方にこの軸体に係合するフックが設けられ、組立姿勢で地上に置かれた作業アタッチメントと、上記メインブームとを連結する組立時に、上記軸体とフックを係合させた状態で上記メインブームを上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる持ち上げ動作を行うことにより、上記メインブームと作業アタッチメントを上記軸体を中心に相対回動させて互いの上記ピン穴を一致させるように構成された作業機械において、上記作業アタッチメントの上記組立姿勢での先端側に、少なくとも上記持ち上げ段階で接地して作業アタッチメント重量を支持する接地部を設け、この接地部の接地面は、上記持ち上げ動作によって上記作業アタッチメントに横倒し方向の回転モーメントが作用したときに支点となって作業アタッチメントの回転を許容する幅寸法に設定したものである(請求項1)。
【0039】
また、本発明の組立方法においては、自走可能なベースマシンと、このベースマシンに起伏自在に取付けられたメインブームと、このメインブームの先端に着脱自在に取付けられる作業アタッチメントとから成り、上記メインブームと作業アタッチメントは、互いのピン穴にピンが挿入された状態で連結され、かつ、上記メインブームと上記作業アタッチメントの一方に水平な軸体、他方にこの軸体に係合するフックが設けられ、組立姿勢で地上に置かれた作業アタッチメントと、上記メインブームとを連結する組立時に、上記軸体とフックを係合させた状態で上記メインブームを上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる持ち上げ動作を行うことにより、上記メインブームと作業アタッチメントを上記軸体を中心に相対回動させて互いの上記ピン穴を一致させるように構成された作業機械の組立方法において、上記作業アタッチメントの上記組立姿勢での先端側に、作業アタッチメント重量を支持しながら作業アタッチメントの横倒し方向の回転を許容する状態で接地する接地部を設け、上記ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況での上記持ち上げ動作時に、上記作業アタッチメントに作用する横倒し方向の回転モーメントにより、上記作業アタッチメントを上記接地部の接地面を支点に回転させて上記上部ピン穴を一致させるものである(請求項5)。
【0040】
この作業機械及び組立方法によれば、ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況での持ち上げ動作によって作業アタッチメントに横倒し方向の回転モーメントが作用したときに、接地部の接地面を支点として作業アタッチメントを回転させ、修正力を生かして作業アタッチメントをメインブームに倣わせ、互いのピン穴を一致させることができる。
【0041】
すなわち、軸体とフックによる本来のピン穴合わせ機能を生かし、ピン穴合わせを容易に行うことができる。
【0042】
この場合、作業機械として、前記のようにフロントブームとアームと作業装置とによって作業アタッチメントが構成され、組立時にこの作業アタッチメントが三つ折れ状態で地上に置かれる機械においては、組立姿勢でのアームの下面側に、上記組立姿勢で水平となってアタッチメント全体を支持するフラット面と、このフラット面の先端から先上がりに傾斜して上記組立姿勢で非接地状態となる傾斜面とを形成し、上記傾斜面に上記接地部を、上記持ち上げ段階でのみ接地する状態で設けるのが望ましい(請求項2)。
【0043】
また、組立方法として、上記作業アタッチメントを、上記組立姿勢で上記接地部が地面から浮いた状態で支持部材によって地面上に支持し、上記持ち上げ動作によって上記支持部材による支持を解除するとともに上記接地部を接地させるのが望ましい(請求項6)。
【0044】
こうすれば、持ち上げ動作前は、作業アタッチメントをフラット面によって地面に安定良く支持することができる。
【0045】
一方、持ち上げ段階で、フラット面に代わって接地部が接地することにより、修正力による作業アタッチメントの回転作用によってピン穴合わせを容易に行うことができる。
【0046】
すなわち、保管時や運搬時を含めて作業アタッチメントを地面や荷台に置いただけの状態では安定した支持状態を確保しながら、持ち上げ段階で一転、支持状態を不安定にして軸体とフックによるピン穴合わせ機能を発揮させることができる。
【0047】
また、組立姿勢でのアタッチメント支持の安定性が良いため、組立時、保管時、運搬時を通じて架台を省略または簡略化することができる。
【0048】
あるいは、作業機械において、アタッチメント支持部材を備え、このアタッチメント支持部材は、上記組立姿勢で作業アタッチメントの基端側を支持する一方上記持ち上げ動作時に非支持状態となるように構成し、上記接地部を、上記持ち上げ動作の前後を通じて接地する状態で設けてもよい(請求項3)。
【0049】
また、本発明においては、上記接地部の接地面を、側面から見て大略円弧状に形成するのが望ましい(請求項4)。
【0050】
こうすれば、接地面の地面との相対運動(前後移動や回動)が少ない抵抗でスムーズに行われるため、組立時及び分解時の作業性が良い。
【発明の効果】
【0051】
本発明によると、ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況でも、持ち上げ動作による「修正力」を生かしてピン穴合わせを容易に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる解体機において軸体とフックを係合させた状態の概略側面図である。
【図2】図1の状態から持ち上げ動作によって上部ピン穴を一致させ、かつ、上下のピンを差し込んだ状態の概略側面図である。
【図3】(a)は図1の状態、(b)は図2の状態における作業アタッチメント先端側の拡大図である。
【図4】第1実施形態における作業アタッチメント先端側の斜視図である。
【図5】同下面図である。
【図6】第1実施形態においてベースマシン側と作業アタッチメント側の支持地面の傾きが異なる状況での持ち上げ動作時のメインブームと作業アタッチメントの関係を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる解体機の図1相当図である。
【図8】同図2相当図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる解体機の図1相当図である。
【図10】従来の解体機を示す概略側面図である。
【図11】従来の解体機において軸体とフックを係合させた状態の概略側面図である。
【図12】図11の状態から持ち上げ動作によって上部ピン穴を一致させ、かつ、上下のピンを差し込んだ状態の概略側面図である。
【図13】図11の状態の一部拡大図である。
【図14】従来の解体機においてベースマシン側と作業アタッチメント側の支持地面の傾きが異なる状況での持ち上げ動作時のメインブームと作業アタッチメントの関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の実施形態を図1〜図9によって説明する。
【0054】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて、超ロングアタッチメント付きの解体機を適用対象としている。
【0055】
第1実施形態(図1〜図6参照)
第1実施形態の解体機において、次の点は図10〜図14に示す従来技術(特許文献1記載の公知技術)と同じである。
【0056】
(I) クローラ式の下部走行体31と、この下部走行体31上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体32とによってベースマシン33が構成される点。
【0057】
(II) ベースマシン33には、上部旋回体32の前部にメインブーム34がブームフットピン35を中心として起伏可能に取付けられ、このメインブーム34の先端に作業アタッチメント36が取付けられる点。
【0058】
(III) 作業アタッチメント36は、メインブーム34の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられるフロントブーム37と、作業範囲の拡大を目的としてフロントブーム37の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられた短尺のインターブーム38と、このインターブーム38の先端に水平軸まわりに回動可能に取付けられたアーム39と、このアーム39の先端に取付けられる作業装置(図10を引用するものとしてここでは図示省略する)とを具備する点。
【0059】
(IV) メインブーム34及び作業アタッチメント36を作動させる油圧シリンダとして、メインブーム34を起伏させるブームシリンダ41と、インターブーム38を回動させるインターブームシリンダ42と、アーム39を回動させるアームシリンダ43、それに作業装置をリンク機構45を介して回動させる作業装置シリンダ44が設けられている点。
【0060】
なお、図では、アタッチメント全高を低くするためにインターブームシリンダ42とアームシリンダ43を、組立姿勢で側面から見てX形に交差する状態で設けた場合を示しているが、従来の解体機におけるインターブームシリンダ12とアームシリンダ13と同様に両シリンダ42,43を組立姿勢で非交差状態となるように設けてもよい。
【0061】
(V) メインブーム34とフロントブーム37は着脱自在にピン連結され、ベースマシン33及びメインブーム34の組と、フロントブーム37を含む作業アタッチメント36とに分解されて輸送され、輸送後に組立てられる点。
【0062】
(VI) 作業アタッチメント36は、組立時に、図1に示すようにインターブーム38を境としてフロントブーム37が上側、アーム39が下側となる三つ折れ状態に折り畳んで地上に置かれ、この折り畳み状態での基端側が支持部材としての架台46によって支持されるとともに、先端側が接地して支持される点(この状態の作業アタッチメント36の姿勢を「組立姿勢」という)。
【0063】
(VII) 架台46は、上向き二股状のブーム受け部46aを備え、フロントブーム37の基端部側面に横向き水平に突設された受け軸46bがこのブーム受け部46aに嵌まり込んだ状態で作業アタッチメント36の基端側が支持される点。
【0064】
(VIII) メイン、フロント両ブーム34,37を連結する手段として、両ブーム34,37の相連結される端部の上部(組立姿勢での上部。以下にいう上下の方向性について同じ)に上部ピン穴48,49、同下部に下部ピン穴50,51がそれぞれ設けられ、上部ピン穴48,49に上部ピン52、下部ピン穴50,51に下部ピン53(図2に示す)がそれぞれ挿入されることによって両ブーム34,37が着脱自在に連結される点。
【0065】
(IX) この両ブーム34,37の連結(組立)、分離(分解)を、クレーンを用いずに自力で行うための構造として、メインブーム34の先端部における上部ピン穴48よりも基端側の外側面に、ブーム幅方向に水平に延びる軸体(通常は丸ピン)54が設けられる一方、フロントブーム7の基端部における上部ピン穴48よりも基端側に下向きに開口するフック55が設けられている点。
【0066】
また、メイン、フロント両ブーム34,37の連結手順も、次のように従来の解体機と同じである。
【0067】
(i) 図1及び図3(a)に示す組立姿勢で、下部走行体1の自走機能を用いてベースマシン33を前進させるとともに、メインブーム34を起こして軸体54をフック55に係合させる。
【0068】
(ii) この状態で、メインブーム34を上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる「持ち上げ動作」を行うことにより、メインブーム34とフロントブーム37(作業アタッチメント36全体)を軸体54を中心に相対回動させ、上部ピン穴48,49を一致させて両ピン穴48,49に上部ピン52を差込む。
【0069】
この段階で、アタッチメント側の受け軸46bが架台46のブーム受け部46aから上方に離脱し、アタッチメント基端側は架台46に代わって上部ピン52で支持された状態となる。
【0070】
(iii) メインブーム34をさらに上向き回動させて、フロントブーム37を上部ピン52を中心に先下がり方向に回動させることにより、フック55を軸体54から離間させる一方で互いの下部ピン穴50,51同士を一致させ、この両ピン穴50,51に下部ピン53を差し込む。
【0071】
こうしてメインブーム34とフロントブーム37(作業アタッチメント36)とを連結し、アーム39の先端に作業装置を取付けて組立が完了する。
【0072】
また、分解は上記と逆の手順、操作によって行われる。
【0073】
第1実施形態においては、図1の組立姿勢で作業アタッチメント36の先端側を支持する手段として、アーム39の基端部上面(折り畳み状態での下面)に接地部としての接地具47が設けられている。
【0074】
この接地具47とその関連構造、すなわち、特許文献1記載の公知技術との相違点を詳述する。
【0075】
組立姿勢でのアーム39の下面側に、組立姿勢で水平となって作業アタッチメント36全体を支持するフラット面56が設けられている。
【0076】
このフラット面56は、組立姿勢でのアーム下面のうち、先端部と基端部以外の部分、つまり作業アタッチメント折り畳み状態での同アタッチメント重心の真下部分を含めた広い範囲に亘って設けられ、作業アタッチメント折り畳み状態でこのフラット面56が接地することによって、同アタッチメント36全体が組立姿勢で地面(運搬時には荷台)上に安定良く支持される。
【0077】
また、このフラット面56の先端側に、先上がりに傾斜する傾斜面57がフラット面56と連続して設けられ、この傾斜面57のアーム幅方向の中心部に、持ち上げ段階で接地して作業アタッチメント重量を支持する接地具47が下向きに突出して設けられている。
【0078】
この接地具47は、図3〜図5に拡大して示すように下面(接地面47a。図5,6のみに符号を付す)が側面から見て大略円弧状となった板状に形成され、この接地面47aが、
(イ) 組立姿勢(持ち上げ動作前)では、図3(a)に示すように接地せずに地面から隙間Cを置いて浮いた状態となり、
(ロ) この組立姿勢から上部ピン穴合わせを行うための持ち上げ動作を行ったときに、図3(b)に示すようにはじめて接地する
状態でアーム下面に設けられている。
【0079】
いいかえれば、このような接地作用が得られるように接地具47の位置、突出寸法等が設定されている。
【0080】
図6は、ベースマシン側と作業アタッチメント側の支持地面G1,G2の傾きが異なる状況(図14に合わせてベースマシン側の支持地面G1が水平でアタッチメント側の支持地面G2が斜面となる状況を例にとる)において、メインブーム側の軸体54をフロントブーム側のフック55に係合させて持ち上げる「持ち上げ動作」を行うときの、メインブーム34と作業アタッチメント36の関係を模式的に示している。
【0081】
このような地面状況により、前記のようにメインブーム34と作業アタッチメント36に相対的な傾きが生じ、この状態で「持ち上げ動作」を行うと、持ち上げ力により、作業アタッチメント36に図6矢印で示す横倒し方向の回転モーメント(修正力)Fが作用する。
【0082】
ここで、接地具47(接地面47a)の幅寸法W2は、持ち上げ動作による修正力Fが作用したときに、支点となって作業アタッチメント36の回転を許容する大きさに設定されている。
【0083】
いいかえれば、接地面47aの幅寸法W2は、接地具47が設けられた部分での作業アタッチメント36の幅寸法(アーム基端部の幅寸法)よりも十分に小さくて、アタッチメント重量を支持するのに必要最小限の大きさであって、アタッチメント幅方向に対しては単独では安定支持できず、架台46がなければ作業アタッチメント36が横倒しになる大きさとして設定されている。
【0084】
本発明者の解析、試験によると、この接地面幅寸法W2は、具体的にはアーム幅の1/10前後(1/10をベースとして地面状況や作業アタッチメントサイズ等に応じた調整代を加味した値)が適当であることが判明した。
【0085】
この構成によると、ベースマシン33と作業アタッチメント36の支持地面G1,G2の傾きが異なる状況での持ち上げ動作によって作業アタッチメント36に横倒し方向の回転モーメント(修正力)Fが作用したときに、接地具47の接地面47aを支点として作業アタッチメント36を自動的に回転させることができる。
【0086】
すなわち、修正力Fを生かして作業アタッチメント36をメインブーム34に倣わせ、互いの上部ピン穴48,49を一致させることが可能となる。
【0087】
また、第1実施形態によると、持ち上げ動作前は、作業アタッチメント36をフラット面56によって地面に安定良く支持することができる。
【0088】
一方、持ち上げ段階で、上記のようにフラット面56に代わって接地具47が接地することにより、修正力Fによる作業アタッチメント36の回転作用によってピン穴合わせを容易に行うことができる。
【0089】
すなわち、保管時や運搬時を含めて作業アタッチメント36を地面や荷台に置いただけの状態では安定した支持状態を確保しながら、持ち上げ段階で一転、支持状態を不安定にして軸体54とフック55によるピン穴合わせ機能を発揮させることができる。
【0090】
また、組立姿勢でのアタッチメント支持の安定性が良いため、組立時、保管時、運搬時を通じて架台46を省略し、または簡略化することができる。
【0091】
なお、接地面47aが接地する地面が軟弱である場合には、接地面47aが地面に食い込み過ぎて上記持ち上げ動作時のアタッチメント修正機能が低下するおそれがあるため、鉄板等の敷板を地面に敷設するのが望ましい。
【0092】
第2実施形態(図7,8参照)
第2実施形態及び後述の第3実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0093】
第1実施形態においては、接地具47が、組立姿勢では接地せず、持ち上げ動作によってはじめて接地する構成であるのに対し、第2実施形態においては、接地具47が、組立姿勢、及び持ち上げ段階(持ち上げ動作の前後)を通じて接地する構成がとられている。
【0094】
接地具47の接地面幅寸法の設定は第1実施形態と同じである。
【0095】
この構成によっても、基本的な作用である持ち上げ動作時のアタッチメント修正機能を得ることができる。
【0096】
第3実施形態(図9参照)
第3実施形態は、インターブームを設けずに、フロントブーム37の先端に直接アーム39を取付ける解体機を適用対象としている。
【0097】
この解体機では、組立姿勢として、三つ折れ状態ではなく、図示のようにアーム39がフロントブーム37の前方に先下がりに延びる状態となり、アーム先端が接地する。
【0098】
そこで、第3実施形態においては、アーム先端に接地具47が設けられている。
【0099】
この場合、接地具47を、第1実施形態のように組立姿勢では接地せずに持ち上げ動作時のみに接地するように設定してもよいし、第2実施形態のように持ち上げ動作の前後を通じて接地するように設定してもよい。
【0100】
前者の場合は、たとえば、アタッチメント先端側(アーム39)を別の支持部材(低い架台や盤木)によって、持ち上げ動作時に接地具47がはじめて設置する高さで支持する構成をとればよい。
【0101】
他の実施形態
(1) 接地部として、上記実施形態で挙げた接地面が大略円弧状となった板状の接地具に限らず、下端に球面を備えた軸状の接地具等を用いてもよい。
【0102】
また、作業アタッチメント36の組立姿勢での先端側部材(各実施形態のアーム39)の一部を下向きに突出させて接地部を形成してもよい。
【0103】
(2) 組立姿勢で作業アタッチメント36を支持する支持部材として、上記実施形態で挙げた、受け部46aと受け軸46bを備えた架台46に限らず、作業アタッチメント全体を載置支持する構成の架台を用いてもよい。
【0104】
あるいは、第1、第2両実施形態の解体機において、フロントブーム37支える架台と、このフロントブーム37にアームをロープやロッドで吊持する機構を併用する構成をとってもよい。
【0105】
(3) 上記実施形態では、メインブーム34側に軸体54、フロントブーム37側に下向きに開口するフック55を設けたが、メインブーム34側に上向きに開口するフック、フロントブーム37側に軸体をそれぞれ設けてもよい。
【0106】
(4) 上記実施形態では、メイン、フロント両ブーム34,37を組立姿勢での互いの上下両側でピン連結する場合で説明したが、上部ピン穴48を省略し、上部は軸体54とフック55の係合部分をそのまま連結部分として用いてもよい。
【0107】
この場合、前記修正力によって作業アタッチメント36が接地具47を支点として回転したときに下部ピン穴50,51が一致することになる。
【符号の説明】
【0108】
31 下部走行体
32 上部旋回体
33 ベースマシン
34 メインブーム
36 作業アタッチメント
37 作業アタッチメントのフロントブーム
38 同、インターブーム
39 同、アーム
40 作業装置
46 架台(支持部材)
47 接地具(接地部)
47a 接地具の接地面
W2 接地面の幅寸法
48 上部ピン穴
49 下部ピン穴
52 上部ピン
53 下部ピン
54 軸体
55 フック
56 フラット面
57 傾斜面
F 修正力
G1,G2 支持地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なベースマシンと、このベースマシンに起伏自在に取付けられたメインブームと、このメインブームの先端に着脱自在に取付けられる作業アタッチメントとから成り、上記メインブームと作業アタッチメントは、互いのピン穴にピンが挿入された状態で連結され、かつ、上記メインブームと上記作業アタッチメントの一方に水平な軸体、他方にこの軸体に係合するフックが設けられ、組立姿勢で地上に置かれた作業アタッチメントと、上記メインブームとを連結する組立時に、上記軸体とフックを係合させた状態で上記メインブームを上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる持ち上げ動作を行うことにより、上記メインブームと作業アタッチメントを上記軸体を中心に相対回動させて互いの上記ピン穴を一致させるように構成された作業機械において、上記作業アタッチメントの上記組立姿勢での先端側に、少なくとも上記持ち上げ段階で接地して作業アタッチメント重量を支持する接地部を設け、この接地部の接地面は、上記持ち上げ動作によって上記作業アタッチメントに横倒し方向の回転モーメントが作用したときに支点となって作業アタッチメントの回転を許容する幅寸法に設定したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
上記作業アタッチメントを、上記メインブームに連結されるフロントブームと、このフロントブームの先端に水平軸まわりに回動自在に取付けられたインターブームと、このインターブームの先端に水平軸まわりに回動自在に取付けられたアームと、このアームの先端に取付けられた作業装置とによって構成し、上記インターブームを境に上記フロントブームが上側、上記アームが下側となる三つ折れ状態で地上に置いた姿勢を上記組立姿勢として、この組立姿勢での上記アームの下面側に、上記組立姿勢で水平となってアタッチメント全体を支持するフラット面と、このフラット面の先端から先上がりに傾斜して上記組立姿勢で非接地状態となる傾斜面とを形成し、上記傾斜面に上記接地部を、上記持ち上げ段階でのみ接地する状態で設けたことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
アタッチメント支持部材を備え、このアタッチメント支持部材は、上記組立姿勢で作業アタッチメントの基端側を支持する一方上記持ち上げ動作時に非支持状態となるように構成し、上記接地部を、上記持ち上げ動作の前後を通じて接地する状態で設けたことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項4】
上記接地部の接地面を、側面から見て大略円弧状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
自走可能なベースマシンと、このベースマシンに起伏自在に取付けられたメインブームと、このメインブームの先端に着脱自在に取付けられる作業アタッチメントとから成り、上記メインブームと作業アタッチメントは、互いのピン穴にピンが挿入された状態で連結され、かつ、上記メインブームと上記作業アタッチメントの一方に水平な軸体、他方にこの軸体に係合するフックが設けられ、組立姿勢で地上に置かれた作業アタッチメントと、上記メインブームとを連結する組立時に、上記軸体とフックを係合させた状態で上記メインブームを上向きに回動させて上記係合部分を持ち上げる持ち上げ動作を行うことにより、上記メインブームと作業アタッチメントを上記軸体を中心に相対回動させて互いの上記ピン穴を一致させるように構成された作業機械の組立方法において、上記作業アタッチメントの上記組立姿勢での先端側に、作業アタッチメント重量を支持しながら作業アタッチメントの横倒し方向の回転を許容する状態で接地する接地部を設け、上記ベースマシンと作業アタッチメントの支持地面の傾きが異なる状況での上記持ち上げ動作時に、上記作業アタッチメントに作用する横倒し方向の回転モーメントにより、上記作業アタッチメントを上記接地部の接地面を支点に回転させて上記上部ピン穴を一致させることを特徴とする作業機械の組立方法。
【請求項6】
上記作業アタッチメントを、上記組立姿勢で上記接地部が地面から浮いた状態で支持部材によって地面上に支持し、上記持ち上げ動作によって上記支持部材による支持を解除するとともに上記接地部を接地させることを特徴とする請求項5記載の作業機械の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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