説明

作業路用コンベヤチェーン

【課題】作業者や作業台車を確実に滑り止めして作業台車の移送が容易であって、バックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成する作業路用コンベヤチェーンを提供すること。
【解決手段】滑り止め搭載面110Aを備えた合成樹脂製のチェーンモジュール110が連結ピンによって多数連結されているとともに、このチェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aが、滑り止め搭載面110Aを彫り込んだ状態のベース面110Bから滑り止め搭載面110Aと面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブ114で集成されている作業路用コンベヤチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の製造ラインや組み立てラインなどに沿った作業域において作業者や作業台車などを搭載しながら作業する作業路用コンベヤチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業路用コンベヤチェーンとしては、複数のリブをもつプラスチック製のチェーンモジュールが連結ピンによって多数連結されて構成されたコンベヤベルトがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−111449号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなコンベヤベルトは、搬送面に凸部が飛び出しているため、作業台車などの車輪が接地して転動する際の走行振動と走行抵抗が大きく、過度の走行負荷を強いられるという問題があった。
また、チェーンモジュールのピッチ方向の相互隙間を詰めて高密度の搬送面を設計しようとする際にモジュール相互で隣接する凸部の接触障害による影響でベルト内周側のバックベンド半径を小さくできず、中間アイドローラなどを適宜配置しなければならないため、ベルト戻り側の適正なベルトたるみを確保しにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述したような問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、作業者や作業台車を確実に滑り止めして作業台車の移送が容易であって、バックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成する作業路用コンベヤチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本請求項1に係る発明は、滑り止め搭載面を備えた合成樹脂製のチェーンモジュールが連結ピンによって多数連結してなる作業路用コンベヤチェーンにおいて、前記チェーンモジュールの滑り止め搭載面が、該滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面から該滑り止め搭載面と面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブで集成されていることにより、上述した課題を解決するものである。
【0007】
そして、本請求項2に係る発明の作業路用コンベヤチェーンは、上記の請求項1に係る発明の構成に加えて、前記対物支持リブの横断面形状が、鋸歯状に形成されていることにより、上述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
また、本請求項3に係る発明の作業路用コンベヤチェーンは、上記の請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記チェーンモジュールの滑り止め搭載面を集成する多数の対物支持リブが、多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンを呈するように配置されていることにより、上述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本発明の作業路用コンベヤチェーンは、滑り止め搭載面を備えた合成樹脂製のチェーンモジュールが連結ピンによって多数連結されていることにより、物品の製造ラインや組み立てラインなどに沿った作業域において作業者や作業台車などを搭載しながら作業することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏する。
【0010】
すなわち、本請求項1記載の発明である作業路用コンベヤチェーンは、チェーンモジュールの滑り止め搭載面が、この滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面から凸設した多数の対物支持リブで集成されていることにより、作業者が装着している安全靴や作業台車の車輪などのゴム底が接地した位置に集成されている多数の対物支持リブに変形しながら食い込むため、作業者や作業台車の確実な滑り止めを実現でき、また、多数の対物支持リブが滑り止め搭載面と面一状態となるように凸設されていることにより、作業台車の車輪が接地して転動する際に生じがちな走行振動と走行抵抗を大幅に抑制するため、作業台車の移動を容易に達成することができる。
【0011】
そして、チェーンモジュールの滑り止め搭載面が、この滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面から凸設した多数の対物支持リブで集成されていることにより、チェーンモジュールのピッチ方向の相互隙間を詰めて多数のチェーンモジュールが高密度に敷設された搬送面を設計しようとする際にチェーンモジュール相互間における対物支持リブ同士の接触を回避できるため、バックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成することができる。
【0012】
また、本請求項2記載の発明である作業路用コンベヤチェーンは、請求項1記載の発明が奏する効果に加えて、対物支持リブの横断面形状が鋸歯状に形成されていることにより、作業者が装着している安全靴や作業台車の車輪などのゴム底が接地した位置に集成されている多数の対物支持リブに変形しながら歯止めされるため、作業者や作業台車に対して更なる確実な滑り止めを実現できる。
【0013】
さらに、本請求項3記載の発明である作業路用コンベヤチェーンは、請求項1または請求項2記載の発明が奏する効果に加えて、チェーンモジュールの滑り止め搭載面を集成する多数の対物支持リブが、多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンを呈するように配置されていることにより、作業者や作業台車が如何なる方向に移動しても作業者や作業台車の確実な滑り止めを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の作業路用コンベヤチェーンは、滑り止め搭載面を備えた合成樹脂製のチェーンモジュールが連結ピンによって多数連結されているとともに、このチェーンモジュールの滑り止め搭載面が滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面から滑り止め搭載面と面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブで集成されて、作業者や作業台車を確実に滑り止めして作業台車の移送が容易でバックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成するものであれば、その実施の具体的な態様は如何なるものであっても何ら差し支えない。
【0015】
すなわち、本発明で用いるチェーンモジュールの合成樹脂素材については、少なくとも成形加工できるものであって作業者や作業台車を搭載するに足りる強靭性と保形性を呈するものであれば良く、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アセタール樹脂などのエンジニアリングプラスチック樹脂、あるいは、これらの樹脂にガラス繊維などの補強繊維を含有させた強化樹脂であっても良い。
【0016】
また、本発明で用いるチェーンモジュールの形状については、多数の対物支持リブが滑り止め搭載面を彫り込んだ状態で滑り止め搭載面と面一状態となるように集成されているものであれば良く、加えて、更に具体的には、前述した特開2006−111449号公報で開示されているような連結ピンを挿通して相互に指組状に連結するための多数のヒンジ部を連結長手方向の前後縁に形成されたものであることは言うまでもない。
なお、本発明で言うところの「彫り込んだ状態」とは、チェーンモジュール内に向けて
造形部分の外周を凹設することにより相対的に造形部分を凸設させることを意味するものであって、その造形部分を形成することができればその加工手段は成型加工などのいずれであっても構わない。
【0017】
さらに、本発明で採用する多数の対物支持リブの集成形態については、作業者や作業台車が如何なる方向に移動しても作業者や作業台車の確実な滑り止めを実現するための多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンであれば、その具体的な組み合わせパターンは如何なるパターンであっても何ら差し支えない。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例である作業路用コンベヤチェーンを詳しく説明する。
まず、図1は、本発明の一実施例に係る作業路用コンベヤチェーンで用いるチェーンモジュールの斜視図であり、図2は、図1で示すチェーンモジュールのA−A線から見た断面図とその一部拡大図であり、図3は、本実施例に係る作業路用コンベヤチェーンの使用態様図である。
【0019】
本発明の一実施例に係る作業路用コンベヤチェーン100は、各種製造ラインに沿った作業域において作業者や作業台車などを搭載しながら作業するために使用されるもので、ポリエチレン樹脂製のチェーンモジュール110が連結ピン(図示していない)によって多数連結され、駆動軸Dなどを介して各種製造ラインを周回駆動するようになっている。
なお、図1に示す符号111は、チェーンモジュール110に滑り止め搭載面110Aを彫り込むためのモジュール本体部であり、符号112は、チェーンモジュール110の連結長手方向の前後縁に形成されて前述した連結ピンを挿通して相互に指組状に連結するための多数のヒンジ部であり、符号113では、前述した連結ピンを挿通するためのピン孔である。
【0020】
そこで、本実施例の作業路用コンベヤチェーン100が最も特徴としているチェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aについて図1乃至図2を基に詳しく説明する。
すなわち、このチェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aは、滑り止め搭載面110Aを彫り込んだ状態のベース面110Bから滑り止め搭載面110Aと面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブ114で集成され、さらに、これらの対物支持リブ114の横断面形状は、図2で拡大視したように鋸歯状に形成されている。
なお、本実施例で用いたチェーンモジュール110における滑り止め搭載面110Aとベース面110Bとの段差は、約1.0mmに設定している。
【0021】
そして、前記チェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aを集成する多数の対物支持リブ114は、図1で示すような多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンを呈するように配置されている。
ここで、本実施例の場合、前述した滑り止め搭載面110Aを多数の対物支持リブ114で集成してなる多数の六角形状と菱形形状については、作業台車の車輪幅30.0mmよりも狭小な寸法に設定することにより、作業台車の車輪外周部の落ち込みを回避している。
【0022】
つぎに、本実施例の作業路用コンベヤチェーン100の使用態様について、図1乃至図3を参照して説明する。
本実施例の作業路用コンベヤチェーン100は、チェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aが、この滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面110Bから凸設した多数の対物支持リブ114で集成されているため、作業者が装着している安全靴や作業台車の車輪などのゴム底が接地した位置に集成されている多数の対物支持リブ114に変
形しながら食い込んで作業者や作業台車を確実に滑り止め、また、多数の対物支持リブ114が滑り止め搭載面110Aと面一状態となるように凸設されているため、作業台車の車輪が接地して転動する際に生じがちな走行振動と走行抵抗を大幅に抑制して作業台車の移動を容易に達成している。
【0023】
そして、チェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aが、この滑り止め搭載面110Aを彫り込んだ状態のベース面110Bから凸設した多数の対物支持リブ114で集成されているため、チェーンモジュール110のピッチ方向の相互隙間を詰めて多数のチェーンモジュール110が高密度に敷設された搬送面を設計しようとする際にチェーンモジュール110相互間における対物支持リブ114同士の接触を回避してバックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成するようになっている。
【0024】
また、図2で拡大視できるように対物支持リブ114の横断面形状が鋸歯状に形成されているため、作業者が装着している安全靴や作業台車の車輪などのゴム底が接地した位置に集成されている多数の対物支持リブ114に変形しながら相互の接触度合いを高めて歯止めして作業者や作業台車の更に一段と確実な滑り止めを実現するようになっている。
【0025】
さらに、チェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aを集成する多数の対物支持リブ114が、多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンを呈するように配置されているため、図3に示すように作業者や作業台車が前後左右の如何なる方向に移動しても作業者や作業台車に対して確実に滑り止めするようになっている。
【0026】
したがって、このようにして得られた本発明の一実施例である作業路用コンベヤチェーン100は、チェーンモジュール110の滑り止め搭載面110Aが滑り止め搭載面110Aを彫り込んだ状態のベース面110Bから滑り止め搭載面110Aと面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブ114で集成されて、作業者や作業台車を確実に滑り止めして作業台車の移送が容易でバックベンド半径を小さくしてコンベヤの小型化と簡素化を達成できるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施例の作業路用コンベヤチェーンで用いるチェーンモジュールの斜視図。
【図2】図1で示すチェーンモジュールのA−A線から見た断面図とその一部拡大図。
【図3】本実施例に係る作業路用コンベヤチェーンの使用態様図。
【符号の説明】
【0028】
100 ・・・作業路用コンベヤチェーン
110 ・・・チェーンモジュール
110A・・・滑り止め搭載面
110B・・・ベース面
111 ・・・モジュール本体部
112 ・・・ヒンジ部
113 ・・・ピン孔
114 ・・・対物支持リブ
D ・・・駆動軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り止め搭載面を備えた合成樹脂製のチェーンモジュールが連結ピンによって多数連結してなる作業路用コンベヤチェーンにおいて、
前記チェーンモジュールの滑り止め搭載面が、該滑り止め搭載面を彫り込んだ状態のベース面から該滑り止め搭載面と面一状態となるように凸設した多数の対物支持リブで集成されていることを特徴とする作業路用コンベヤチェーン。
【請求項2】
前記対物支持リブの横断面形状が、鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の作業路用コンベヤチェーン。
【請求項3】
前記チェーンモジュールの滑り止め搭載面を集成する多数の対物支持リブが、多数の六角形状と菱形形状とからなる組み合わせパターンを呈するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の作業路用コンベヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−265933(P2008−265933A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109777(P2007−109777)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】