説明

作業車両のエンジン制御装置

【課題】エンジン始動時および駆動時における作業者への安全喚起のための警報装置による報知を識別可能として、分かり易い安全機構にし、作業性および安全性を向上させるとともに、その回路構成を簡素化して、メンテナンス性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラ32は、スタートスイッチ14の投入により、スタータリレー47を通電させて、スタータソレノイド48に電流を供給し、スターティングモータMの駆動により、エンジン6を始動させるとともに、コントローラ32は、ソレノイドリレー45を通電させて、エンジンストップソレノイド46に電流を供給し、エンジン6を駆動させ、コントローラ32の1の出力ポートPには、エンジンストップソレノイド46と、警報装置Kからなる安全機構Sとを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラが、スタートスイッチの投入により、スタータリレーを通電させることで、スターティングモータが駆動し、エンジンを始動させるとともに、ソレノイドリレーに通電させることで、エンジンストップソレノイドに電流を供給し、エンジンを駆動させる作業車両のエンジ制御装置に関し、より詳細には、コントローラの1の出力ポートに、エンジンストップソレノイドへの出力と、警報装置からなる安全機構とを接続する作業車両のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなど作業車両のエンジン制御装置には、コントローラにメインスイッチや、エンジン始動用のセルモータ、セルモータ起動用リレー、燃料カットバルブ、燃料カットバルブを開くソレノイド、ソレノイドリレーなどのほか、シート下部に設置された作業者の離席検出器などが接続されており、エンジン始動後の離席検出器による作業者の離席情報に基づいて、コントローラがエンジンを自動停止させ、作業者が離席している状態において、誤操作による機体の暴走を防ぐエンジン制御装置(例えば、特許文献1)がある。また、エンジン始動時に、シフト検出器による駆動軸への動力伝達などの検出情報に基づく安全喚起によりエンジンを始動させず、エンジン始動電気回路を非作動状態(例えば特許文献2)にし、作業者に警報装置で報知する技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190636号公報
【特許文献2】特開2003−184717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両のエンジン制御装置では、作業者が、エンジン始動時における安全喚起のための警報装置としての警報音と、車両の機器の故障などを報知する警報装置としての警報音とを区別して認識し難いという問題があった。また、それらを構成する電気回路が複雑なものとなっており、生産性やメンテナンス性が悪いという問題があった。
そこで、この発明の目的は、エンジン始動時および駆動時における作業者への安全喚起のための警報装置による報知を識別可能として、分かり易い安全機構にし、作業性および安全性を向上させるとともに、その回路構成を簡素化して、メンテナンス性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、エンジンの始動操作を行うスタートスイッチと、該スタートスイッチに連係し、前記エンジン始動用のスターティングモータを駆動させるスターティングソレノイドに電流を供給するスタータリレーと、前記エンジンを駆動または停止させるエンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーと、走行系動力伝達部材のシフト位置を検出するシフト検出器と、作業機を駆動させるPTO軸への動力伝達状況を検出するPTO検出器と、作業者の、車両操縦部に設置したシートへの着座状況を検出するシート検出器とをコントローラに接続するとともに、前記コントローラは、前記スタートスイッチの投入により、前記スタータリレーを通電させて、前記スターティングソレノイドに電流を供給し、前記スターティングモータの駆動により、前記エンジンを始動させるとともに、前記コントローラは、前記ソレノイドリレーを通電させて、前記エンジンストップソレノイドに電流を供給し、前記エンジンを駆動させる作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラの1の出力ポートには、前記エンジンストップソレノイドと、前記警報装置からなる安全機構とを接続することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記エンジンの駆動時に、前記シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、前記PTO検出器による前記PTO軸への動力非伝達と、前記シート検出器による作業者の前記シート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、前記ソレノイドリレーへの通電を停止し、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、前記警報装置を作動させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記エンジンの始動時に、前記シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、前記PTO検出器による前記PTO軸への動力非伝達と、前記シート検出器による作業者の前記シート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、前記スタータリレーへの通電を停止させ、前記エンジンの始動を牽制し、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、前記警報装置を作動させることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記エンジン制御装置は、前記コントローラの外部に、トランスファ接点リレーを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記安全喚起モード時に、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給の有無を所定の時間間隔で切替えることにより、前記警報装置を、断続的に作動させることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記安全喚起モードにより、前記警報装置を所定時間作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンの始動操作を行うスタートスイッチと、このスタートスイッチに連係し、エンジン始動用のスターティングモータを駆動させるスターティングソレノイドに電流を供給するスタータリレーと、エンジンを駆動または停止させるエンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーと、走行系動力伝達部材のシフト位置を検出するシフト検出器と、作業機を駆動させるPTO軸への動力伝達状況を検出するPTO検出器と、作業者の、車両操縦部に設置したシートへの着座状況を検出するシート検出器とをコントローラに接続するとともに、コントローラは、スタートスイッチの投入により、スタータリレーを通電させて、スターティングソレノイドに電流を供給し、スターティングモータの駆動により、エンジンを始動させるとともに、コントローラは、ソレノイドリレーを通電させて、エンジンストップソレノイドに電流を供給し、エンジンを駆動させる作業車両のエンジン制御装置において、コントローラの1の出力ポートには、エンジンストップソレノイドと、警報装置からなる安全機構とを接続するので、コントローラ内の1つの出力ポートに、互いに出力の有無が逆転状態となる、ソレノイドリレー(エンジン停止リレー)と警報装置を接続させるため、従来のように、それぞれ独立した出力ポートを有する回路の複雑な構成化を防いで、回路構成を簡単にすることができ、コントローラにかかる負担を軽減することができる。従って、作業性および安全性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、コントローラは、エンジンの駆動時に、シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、PTO検出器によるPTO軸への動力非伝達と、シート検出器による作業者のシート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、ソレノイドリレーへの通電を停止し、エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、警報装置を作動させるので、車両の誤操作による暴走などを防ぐことができるとともに、警報装置の作動により、作業者は、エンジンの駆動停止が、安全喚起モードによるものであることを知り、安全にエンジンを再び始動および駆動させることができる。従って、操作性および安全性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、コントローラは、エンジンの始動時に、シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、PTO検出器によるPTO軸への動力非伝達と、シート検出器による作業者のシート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、スタータリレーへの通電を停止させ、エンジンの始動を牽制し、エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、警報装置を作動させるので、作業者は、エンジンの始動時に、車両が安全喚起モードによりエンジンが始動および駆動されないことを警報装置で報知されることで、エンジンの始動前に安全確認を確実に行うことができる。また、このようなエンジン始動時の安全喚起の報知のために、別途機器を設置する必要がなく、上述の警報装置を兼用させて、回路構成を簡単にすることができる。従って、作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、エンジン制御装置は、コントローラの外部に、トランスファ接点リレーを備えるので、コントローラの出力ポート数に制限がある場合や、エンジンの駆動および停止を制御する回路に必要とされる電流値が大きく、高容量の接点をコントローラ内に配置することができない場合でも、コントローラへの最小限の機器接続により、車両が安全喚起モードによりエンジンが始動および駆動されないことを警報装置で報知できるとともに、その回路構成を簡単にすることができる。従って、作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、コントローラは、安全喚起モード時に、エンジンストップソレノイドへの電流供給の有無を所定の時間間隔で切替えることにより、警報装置を、断続的に作動させるので、作業者は、エンジン始動時または駆動時のどちらの安全喚起モードS状態であるかを簡単、かつ確実の把握することができ、次に必要な操作の判別を容易にすることができる。従って、安全性および作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、コントローラは、安全喚起モードにより、警報装置を所定時間作動させるので、警報装置の作動を所定の時間内に留めて、作業者に不快感を与える不必要な報知を省くことができるとともに、無駄な電力使用を省くことができる。従って、安全性および作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエンジン制御装置を備える作業車両の一例を示した、ホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】トラクタの操縦部を後方から見た斜視図である。
【図3】エンジン制御装置の電気回路図である。
【図4】エンジン制御装置のブロック制御図である。
【図5】安全機構の動作図である。
【図6】エンジン停止リレーを設けたエンジン制御装置の電気回路図である。
【図7】エンジン始動時の安全機構の動作図である。
【図8】警報装置を断続的に作動させる安全機構の動作図である。
【図9】警報装置を所定時間作動させる安全機構の動作図である。
【図10】安全喚起モードにおいて、エンジンの駆動または停止の制御を必要としない場合のエンジン制御装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明のエンジン制御装置を備える作業車両の一例を示した、ホイール式トラクタの左側面図、図2はトラクタの操縦部を後方から見た斜視図である。なお、図1に例示した作業車両としてのトラクタは、キャビン仕様のホイール式トラクタに限定されず、ロプス仕様やクローラ式などであってもよく、さらには、トラクタに限定されず、コンバインや除雪車、建設作業車両など、エンジン制御装置を備える作業車両であればよい。
【0019】
この例の作業車両であるトラクタ1は、図1に示すように、機体フレーム2の前後に前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6およびエンジン6の後方にクラッチハウジング7が配置され、さらに、このクラッチハウジング7の後方には、ミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。そして、ボンネット5の後部に連続して、機体フレーム2上には、外周にそれぞれフロントガラス19、リヤガラス20、ドア21、屋根22などを取付けキャビン9が設けられる。
【0020】
次に、図2に示すように、キャビン9内には、車両の操縦部として、ブレーキペダル10やクラッチペダル11などの操作ペダル、ステアリングハンドル12、シート13などが設けられる。また、ステアリングハンドル12近傍におけるステアリングコラムの適宜位置には、キースイッチ14が設けられる。
【0021】
さらに、シート13の両側方に有する左右フェンダ15には、例えば、主変速レバー16や副変速レバー17、PTO変速レバー18などの各種操作レバーが突設される。なお、トラクタ1は、上述したキャビン仕様に限定されず、ロプス仕様であってもよい。
【0022】
そして、エンジン6からの動力は、ミッションケース8から突出した不図示のPTO軸からや、不図示の油圧ケースなどを介して、車両後部では、ユニバーサルジョイントや三点リンク式などの作業機装着装置を介して装着された図示しない後部作業機を駆動させることができるほか、車両前部では、機体の前部に設置した左右一対の図示しないヒッチを介して装着された前部作業機が駆動される。
【0023】
次に、本願発明の特徴である、作業車両のエンジン制御装置について、その具体的構成を説明する。図3はエンジン制御装置の電気回路図、図4はエンジン制御装置のブロック制御図、図5は安全機構の動作図、図6はエンジン停止リレーを設けたエンジン制御装置の電気回路図、図7はエンジン始動時の安全機構の動作図、図8は警報装置を断続的に作動させる安全機構の動作図、図9は警報装置を所定時間作動させる安全機構の動作図、図10は安全喚起モードにおいて、エンジンの駆動または停止の制御を必要としない場合のエンジン制御装置の電気回路図である。
【0024】
まず、コントローラ32を備えるエンジン制御装置31は、図3に示すように、コントローラ31の入力側として、キースイッチ14と、車両走行系である主変速レバー15のニュートラル位置(走行系のシフト位置が非伝達状態であること)を検出するシフトニュートラルスイッチ34と、車両中央近傍に備えられる図示しないミッドPTO軸への動力伝達がニュートラル(非伝達)状態であることを検出するミッドPTOニュートラルスイッチ35と、車両後部に備えられる図示しないPTO軸に動力を伝達させるために、油圧クラッチを接続するリヤPTOニュートラルスイッチ36と、作業者のシート13着座を検出するシートスイッチ37とが、コントローラ31に接続される。
【0025】
また、車両の図示しないパーキングブレーキの作動を検出するパーキングスイッチ38もコントローラ32に接続される。なお、符号39は、前記パーキングブレーキがかかった状態であることを運転者に報知するランプ、符号40は、主変速レバー15がニュートラル状態であることを運転者に報知するランプ、符号41は、○○○するPTOソレノイド、符号42は、前記PTO軸が動力伝達状態により回転中であることを運転者に報知するランプである。
【0026】
前記キースイッチ14は、図示しないバッテリに接続されるとともに、このキースイッチ14は、回路内の全ての電源をオン・オフするメインスイッチ14aおよびエンジン6 を、図4に示すスターティングモータMの駆動を介して始動させるスタートスイッチ14bから構成される。
【0027】
なお、上述したシフトニュートラルスイッチ34や、ミッドPTOニュートラルスイッチ35、PTOニュートラルスイッチ36、シートスイッチ37は、例えば、特開2007−230417や、特開2004−190636他に記載される周知技術であるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、コントローラ32の出力側として、スターティングモータM内の接点を励磁するためのスタータソレノイド48に電流を供給するトランスファ接点T1を設けたスタータリレー47と、エンジン6に燃料を供給するためのエンジンストップソレノイド46に電流を供給するパワーリレーである、トランスファ接点T2を設けたソレノイドリレー45とが、コントローラ32に接続される。また、エンジン6の予熱装置としてのグロープラグに電流を供給するパワーリレーとしてのグローリレーをコントローラ32に接続させてもよい。
【0029】
さらに、コントローラ32には、安全機構として、警報ブザーなどの警報装置Kが接続される。なお、警報装置Kは、作業者に、後述する安全喚起をブザー音で報知することが好ましいが、警報ブザー以外にも、警告音声や警告灯など適宜方法を用いてもよい。
【0030】
そして、本願発明のエンジン制御装置31では、コントローラ32内の1つの出力ポートPに、トランスファ接点T2を備えるソレノイドリレー45と、警報装置Kとが接続される。
【0031】
また、エンジンストップソレノイド46は、ソレノイドリレー45から得る大電流を吸引する吸引部46aと、吸引された電流を保持することで、エンジン6に燃料を供給可能とする保持部46bとから構成される。
【0032】
ここで、作業者が、図4に示すように、車両のエンジン6を始動および駆動させるために、作業者が、キースイッチ14のメインスイッチ14aを介して、スタートスイッチ14bを投入した際、コントローラ32に、このスタートスイッチ14bが投入された情報が入力される。
【0033】
なお、コントローラ32は、メインスイッチ14aの投入により、ソレノイドリレー45を、例えば予め1秒間通電させるとともに、スタートスイッチ14bの投入により、ソレノイドリレー45をさらに1秒間通電させておいてもよい。
【0034】
次いで、コントローラ32に、シフトニュートラルスイッチ34の検出による主変速レバー15がニュートラル位置であることと、ミッドPTOニュートラルスイッチ35およびリヤPTOニュートラルスイッチ36の検出による前記PTO軸への動力非伝達状態と、シートスイッチ37の検出による作業者のシート13着座状態との、これら全ての検出情報が入力されると、コントローラ32は、スタータリレー47を通電させ、スタータソレノイド48に電流を供給することで、スターティングモータMが作動し、エンジン6が始動される。
【0035】
そして、コントローラ32は、ソレノイドリレー45を通電させ、エンジンストップソレノイド46に電流を供給することで、エンジン6に燃料が供給され、エンジン6が駆動状態となる。
【0036】
このとき、例えば、図5(a)および(b)に示すように、シートスイッチ37の検出による作業者のシート13への着座が検出されない場合、その着座が検出されない時間が、例えば1秒以内であれば、シートスイッチ37に予め設けられた不図示のオフディレー回路により、コントローラ32は、出力ポートPにおいて、ソレノイドリレー45のトランスファ接点T2に対して、ソレノイドリレー45を通電させ、エンジンストップソレノイド46に電流を供給して、そのままエンジン6の駆動出力を行う(エンジン6の駆動を続行)とともに、警報装置Kを作動させない。
【0037】
しかし、シートスイッチ37により、作業者のシート13への着座が1秒を超えて検出されなければ、コントローラ32は、安全喚起モードSとして、出力ポートPにおいて、ソレノイドリレー45のトランスファ接点T2に対して、電流をエンジンストップソレノイド46に供給しないように、ソレノイドリレー45への通電を遮断させる結果、エンジン6への駆動出力を停止(エンジン6が停止)するとともに、警報装置Kを作動させて、作業者に安全喚起モードSであることを警報ブザーなどで報知する。
【0038】
なお、安全喚起モードSは、上述したシートスイッチ37による作業者のシート13への着座が検出されない(未着座)状態以外にも、シフトニュートラルスイッチ34による主変速レバーなどのニュートラル位置が検出されない(駆動系への動力伝達状態)およびミッドおよびリヤPTOニュートラルスイッチ35による前記PTO軸への動力非伝達が検出されない(前記PTO軸への動力伝達)状態などいずれか1つ以上、または全ての情報が、コントローラ32に伝達されない状態とし、駆動中のエンジン6を停止するとともに、警報装置Kを作動させて、作業者に安全喚起モードSであることを警報ブザーなどの警報装置Kで報知する。なお、パーキングスイッチ38の検出情報も加えることができる。
【0039】
また、コントローラ32における出力側の制御回路は、図6に示すように、コントローラ32の出力ポートP´に接続したトランスファ接点T3からなるエンジン停止リレー50に警報装置Kを接続した、エンジン制御装置31´にすることもできる。
【0040】
そして、このような制御回路の構成により、上述同様に、エンジン6の駆動中に安全喚起モードSとなった場合には、コントローラ32が、ソレノイドリレー45への通電を遮断するとともに、エンジン停止リレー50を介して、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止させることで、エンジン6の駆動が停止するとともに、警報装置Kを作動させて、作業者に安全喚起モードSであることを警報ブザーなどの警報装置Kで報知する。
【0041】
このような構成により、エンジン6の駆動中に安全喚起モードSになると、コントローラ32は、エンジン6の駆動を停止させて、車両の誤操作による暴走などを防ぐとともに、警報装置Kを作動させることにより、作業者は、エンジン6の駆動停止が、安全喚起モードSによるものであることを知り、安全にエンジン6を再び始動および駆動させることができる。
【0042】
また、コントローラ32内の1つの出力ポートP(P´)に、互いに出力の有無が逆転状態となる、図3に示したソレノイドリレー45と警報装置K、あるいは、図6に示したソレノイドリレー45とエンジン停止リレー50および警報装置Kを接続させるため、従来のように、それぞれ独立した出力ポートを有する回路の複雑な構成化を防いで、回路構成を簡単にすることができ、コントローラ32にかかる負担の軽減が可能となる。
【0043】
換言すれば、コントローラ32の外部に、上述したような各トランスファ接点T1,T2,T3を有する各リレー47,45,50を設置することにより、エンジン6の駆動および停止の制御と、警報装置Kの作動有無の制御とを、コントローラ32内の1の出力ポートPのみで制御可能となるため、コントローラ32の出力ポート数に制限がある場合や、エンジン6の駆動および停止を制御する回路に必要とされる電流値が大きく、高容量の接点をコントローラ32内に配置することができない場合でも、コントローラ32への最小限の機器接続で上述の効果を達成させることができる。
【0044】
次に、安全喚起モードSによりエンジン6を始動させず、警報装置Kを作動させる構成にすることもできる。この場合、図7に示すように、例えば、車両が、シフトニュートラルスイッチ34の検出がOFF(駆動系への動力が伝達状態)や、リヤPTOニュートラルスイッチ36の検出がON(前記PTO軸への動力が伝達状態)、シートスイッチ37の検出がOFF(シート13の離席状態)などの情報が、コントローラ32に伝達されている安全喚起モードSの状態にあるとき、作業者が、スタートスイッチ14bを投入しても、コントローラ32はスタータリレー47を通電させず(OFF)、従って、エンジン6は始動されない。
【0045】
次いで、コントローラ32は、スタートスイッチ14bの投入に伴うソレノイドリレー45(エンジン停止リレー50を構成する場合には、エンジン停止リレー50を介してエンジンストップソレノイド46への電流供給を遮断)への通電を遮断することにより、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止(OFF)させるとともに、警報装置Kを作動させる。
【0046】
このような構成により、作業者は、エンジン6の始動時に、車両が安全喚起モードSによりエンジン6が始動および駆動されないことを警報装置Kで報知されることで、エンジン6の始動前に安全確認を確実に行うことができる。また、このようなエンジン6始動時の安全喚起の報知のために、別途機器を設置する必要がなく、警報装置Kを兼用させて、回路構成を簡単にすることができる。
【0047】
また、上述した安全喚起モードS状態におけるエンジン6始動時の警報装置Kによる報知と、エンジン6の駆動中における安全喚起モードS状態によるエンジン6停止時の警報装置Kによる報知とを区別させることもできる。
【0048】
この場合、図8に示すように、例えば、上述した安全喚起モードSの状態にあるとき、作業者が、スタートスイッチ14bを投入しても、コントローラ32はスタータリレー47を通電させず(OFF)、エンジン6を始動させないとともに、ソレノイドリレー45(およびエンジン停止リレー50)を介してエンジンストップソレノイド46への電流供給を所定の時間間隔でON/OFFすることにより、このエンジンストップソレノイド46へ出力のON/OFFのタイミングと逆のタイミングで警報装置Kの出力をOFF/ONさせる。
【0049】
従って、警報装置Kの警報ブザーは、エンジン6始動時の安全喚起モードS状態を、 所定の時間間隔で間欠的に出力(ON)するブザー音により、作業者に報知する。なお、警報装置Kにおけるブザー音の出力は、上述したような所定の等しい時間間隔に限定されず、ブザー音の出力(ON)時間をブザー音の停止(OFF)時間に比べて長くまたは短くしてもよい。また、警報装置Kは、ブザー音に限定されず、警告音声や警告灯他などであってもよい。
【0050】
このような構成により、エンジン6の始動時にかかる安全喚起モードS状態の報知と、エンジン6の駆動中における安全喚起モードS状態によるエンジン6の駆動停止にかかる安全喚起モードS状態の報知との警報装置Kの出力方法を区別することで、作業者は、どちらの安全喚起モードS状態であるかを簡単、かつ確実の把握することができ、次に必要な操作を判別しやすくなり、作業性を向上させることができる。
【0051】
次に、上述した、エンジン6の始動時および駆動停止時における安全喚起モードS状態報知のための警報装置Kを、作業者に不快なく出力させることもできる。この場合、図9に示すように、例えば、エンジン6の始動時または駆動時に、作業者がシート13から1秒以上離席した場合、シートスイッチ37が作業者の着座を検出しない(OFF)ことなどによる安全喚起モードS状態になると、コントローラ32は、ソレノイドリレー45(およびエンジン停止リレー50)を介してエンジンストップソレノイド46への電流供給を遮断するとともに、警報装置Kを作動させる。
【0052】
次いで、コントローラ32は、警報装置Kの作動後に、シートスイッチ37が作業者の着座を検出した場合など、安全喚起モードS状態が解除された場合、警報装置Kを予め設定しておいた所定の時間だけ作動させた後、ソレノイドリレー45(およびエンジン停止リレー50)を介してエンジンストップソレノイド46への電流供給を再開するとともに、警報装置Kの作動を停止させる。
【0053】
このような構成により、車両が安全喚起モードSの状態になり、作業者が安全喚起モードS状態を解除させた場合、コントローラ32は、警報装置Kを所定の時間だけ作動させた後、警報装置Kの作動を停止するため、作業者に警報装置Kによる長時間の報知で必要以上の不快感を与えることがないとともに、警報装置Kを作動させるための電力使用を抑えることができる。なお、警報装置Kの作動時間は、予め設定するとともに、その設定時間は変更可能とされる。
【0054】
また、車両が安全喚起モードSの状態となっても、コントローラ32が、エンジン6の駆動または停止を制御する必要がない機種においては、図10に示すように、コントローラ32に警報装置Kを接続するとともに、エンジンストップソレノイド46の保持部46bを、キースイッチ14の下流に接続する。
【0055】
このような構成により、例えば、ミッドPTO軸を備えない車両などで、作業者がシート13から離席すると、コントローラ32は、エンジンストップソレノイド46の保持部46bに電流供給を続けて、エンジン6を駆動させたまま、警報装置Kを作動させて、安全喚起モードSの状態を作業者に報知することができる。従って、本願発明のエンジン制御装置31´´は、このようなエンジン6の駆動および停止の制御機能を有しない機種にも、コントローラ32を共用して、回路を構成することができる。
【0056】
以上詳述したように、この例の作業車両のエンジン制御装置31は、エンジン6の始動操作を行うスタートスイッチ14と、このスタートスイッチ14に連係し、エンジン6始動用のスターティングモータMを駆動させるスターティングソレノイドに電流を供給するスタータリレーと、エンジンを駆動または停止させるエンジンストップソレノイド46に電流を供給するソレノイドリレー45と、走行系動力伝達部材のシフト位置を検出するシフトニュートラルスイッチ34と、作業機を駆動させるPTO軸への動力伝達状況を検出するPTOスイッチ35,36と、作業者の、車両操縦部に設置したシート13への着座状況を検出するシートスイッチ37とをコントローラ32に接続するとともに、コントローラ32は、スタートスイッチ14の投入により、スタータリレー47を通電させて、スタータソレノイド48に電流を供給し、スターティングモータMの駆動により、エンジン6を始動させるとともに、コントローラ32は、ソレノイドリレー45を通電させて、エンジンストップソレノイド46に電流を供給し、エンジン6を駆動させ、コントローラ32の1の出力ポートPには、エンジンストップソレノイド46と、警報装置Kからなる安全機構Sとを接続するものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
なお、上述の例では、エンジン制御装置を備える作業車両の一例としてホイール式トラクタについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタなどの農作業車両や、建設作業車両など、エンジン制御装置を備えるあらゆる作業車両に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
14b スタートスイッチ
31,31´,31´´ エンジン制御装置
32 コントローラ
34 シフトニュートラルスイッチ
35 ミッドPTOニュートラルスイッチ
36 リヤPTOニュートラルスイッチ
37 シートスイッチ
45 ソレノイドリレー
47 スタータリレー
48 スタータソレノイド
50 エンジン停止リレー
K 警報装置
M スターティングモータ
P,P´ 出力ポート
T1,T2,T3 トランスファ接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの始動操作を行うスタートスイッチと、
該スタートスイッチに連係し、前記エンジン始動用のスターティングモータを駆動させるスターティングソレノイドに電流を供給するスタータリレーと、
前記エンジンを駆動または停止させるエンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーと、
走行系動力伝達部材のシフト位置を検出するシフト検出器と、
作業機を駆動させるPTO軸への動力伝達状況を検出するPTO検出器と、
作業者の、車両操縦部に設置したシートへの着座状況を検出するシート検出器と、
をコントローラに接続するとともに、
前記コントローラは、前記スタートスイッチの投入により、前記スタータリレーを通電させて、前記スターティングソレノイドに電流を供給し、前記スターティングモータの駆動により、前記エンジンを始動させるとともに、
前記コントローラは、前記ソレノイドリレーを通電させて、前記エンジンストップソレノイドに電流を供給し、前記エンジンを駆動させる作業車両のエンジン制御装置において、
前記コントローラの1の出力ポートには、前記エンジンストップソレノイドへの出力と、前記警報装置からなる安全機構とを接続することを特徴とする作業車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記エンジンの駆動時に、前記シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、前記PTO検出器による前記PTO軸への動力非伝達と、前記シート検出器による作業者の前記シート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、前記ソレノイドリレーへの通電を停止し、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、前記警報装置を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記エンジンの始動時に、前記シフト検出器による駆動系への動力非伝達と、前記PTO検出器による前記PTO軸への動力非伝達と、前記シート検出器による作業者の前記シート着座とのいずれか1以上の検出情報が得られない安全喚起モードになると、前記スタータリレーへの通電を停止させ、前記エンジンの始動を牽制し、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させるとともに、前記警報装置を作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御装置は、前記コントローラの外部に、トランスファ接点リレーを備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記安全喚起モード時に、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給の有無を所定の時間間隔で切替えることにより、前記警報装置を、断続的に作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記安全喚起モードにより、前記警報装置を所定時間作動させることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−17271(P2011−17271A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161565(P2009−161565)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】