説明

作業車両のエンジン制御装置

【課題】制御精度を向上させるとともに、簡単な構成の制御回路を有する作業車両のエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラ32が、スタートスイッチ14bの投入により、エンジン6を予熱するグローランプ44に電流を供給するグローリレー43およびエンジンストップソレノイド46に電流を供給するソレノイドリレー45を一定時間励磁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラがシートスイッチの検出による作業者の離席情報に基づき、エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させ、エンジンの駆動を停止する安全機構を備える作業車両のエンジン制御装置に関し、より詳細には、コントローラが、スタートスイッチの投入により、エンジンを予熱するグローランプに電流を供給するグローリレーおよびエンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーを一定時間励磁させる作業車両のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車両のエンジン制御装置には、コントローラの各入力ポートに、作業者の着座検知を行うシートスイッチと、PTO軸の動力伝達の検知を行うPTOスイッチと、走行系主変速装置の中立状態を検出する走行スイッチとを等価関係に接続し、PTO軸が非伝動状態の検知と、走行系が中立状態の検知とのアンド条件を持たせないことで、着座検知をエンジン始動条件の1つとしたエンジン制御装置を構成できるとともに、走行系が中立であることを検知したアンド条件を持つ構成とすることで、このアンド条件が成立することが、エンジン始動条件の1つとなり、着座検知をエンジン始動条件から外すことができるなど、エンジン始動条件を変更自在とするエンジン制御装置(例えば、特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような作業車両のエンジン制御装置では、作業者によるスタートスイッチ投入の際、コントローラは、エンジンを暖気するためのグロープラグに電流の供給を行うグローリレーに、バッテリから電流を、回路内に設けたタイマーにより、所定時間通電させているが、温度条件などによってタイマーが誤作動や故障を生じるため、グローリレーへの電流供給が過不足の状態になるおそれがあり、正常なエンジンの始動操作が行えないという問題があった。
また、従来の上記エンジン制御装置における制御回路内では、ソレノイドリレーやグローリレーなどのパワーリレーが、コントローラの外部に設置されているため、複雑な制御回路構成となり、メンテナンス性などの作業性が悪いという問題もあった。
そこで、この発明の目的は、制御精度を向上させるとともに、簡単な構成の制御回路を有する作業車両のエンジン制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、エンジンのスタートスイッチの投入および、走行系の動力伝達状態を検出するシフトニュートラルスイッチによる前記走行系動力の非伝達と、PTO軸の動力伝達状態を検出するPTOスイッチによる前記PTO軸の動力非伝達状態と、作業者のシートへの離着席状態を検出するシートスイッチによる作業者の前記シート着席情報との全ての検出情報に基づき、コントローラは、スタータソレノイドを介してスターティングモータを作動させ、エンジンを始動し、かつエンジンストップソレノイドに電流を供給することで、エンジンを駆動するとともに、前記コントローラは、前記シートスイッチの検出による作業者の離席情報に基づき、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させ、前記エンジンの駆動を停止する安全機構を備える作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記スタートスイッチの投入により、前記エンジンを予熱するグローランプに電流を供給するグローリレーおよび前記エンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーを一定時間励磁させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラは、前記グローリレーと、前記ソレノイドリレーとを内蔵することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記シートスイッチは、オフディレー回路を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の作業車両のエンジン制御装置において、前記コントローラには、さらに車両のパーキングブレーキの作動を検出するパーキングブレーキスイッチを接続するとともに、前記コントローラは、前記シフトニュートラルスイッチの検出による走行系の動力非伝達状態と、前記パーキングブレーキスイッチの検出による前記パーキングブレーキの作動状態に基づいて、前記シートスイッチの検出による作業者のシート離席状態を検出しても、前記ソレノイドリレーを介して前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンのスタートスイッチの投入および、走行系の動力伝達状態を検出するシフトニュートラルスイッチによる走行系動力の非伝達と、PTO軸の動力伝達状態を検出するPTOスイッチによるPTO軸の動力非伝達状態と、作業者のシートへの離着席状態を検出するシートスイッチによる作業者のシート着席情報との全ての検出情報に基づき、コントローラは、スタータソレノイドを介してスターティングモータを作動させ、エンジンを始動し、かつエンジンストップソレノイドに電流を供給することで、エンジンを駆動するとともに、コントローラは、シートスイッチの検出による作業者の離席情報に基づき、エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させ、エンジンの駆動を停止する安全機構を備える作業車両のエンジン制御装置において、コントローラは、スタートスイッチの投入により、エンジンを予熱するグローランプに電流を供給するグローリレーおよびエンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーを一定時間励磁させるので、エンジン始動の際、予め励磁させておいたグローリレーによりグロープラグを介してエンジンが予熱されているため、スターティングモータの作動によりエンジンが点火し易くなるため、エンジンの始動性が向上するとともに、予め励磁させておいたソレノイドリレーにより、エンジン始動とともに、直ちにソレノイドリレーからエンジンストップソレノイドに供給された電流により、エンジンに燃料が供給されるため、エンジンが安定駆動する。また、コントローラが、グローリレーへの励磁時間を制御しているため、従来のようなエンジン制御装置の回路内に、別途タイマーなどを設けた場合と比べて、温度条件などの条件変化に左右されず、常にグローリレーを所定の時間だけ正確に励磁させることができるとともに、回路構成を簡単にすることができる。従って、作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、コントローラは、グローリレーと、ソレノイドリレーとを内蔵するので、従来のようにコントローラ外部に、グローリレーやソレノイドリレーといったパワーリレーを接続配置させることなく、エンジン制御装置31の回路を簡単な構成にすることができる。従って、メンテナンス性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、シートスイッチは、オフディレー回路を備えるので、作業者の姿勢変更や車両の振動により、作業者がシートからわずかに離れて、シートスイッチの検出状態が瞬時に切り替わり、シートの作業者が設定した時間内で離席状態となっても、コントローラによる不要なエンジンの停止を防ぐことができる。従って、作業性および安全性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、コントローラには、さらに車両のパーキングブレーキの作動を検出するパーキングブレーキスイッチを接続するとともに、コントローラは、シフトニュートラルスイッチの検出による走行系の動力非伝達状態と、パーキングブレーキスイッチの検出によるパーキングブレーキの作動状態に基づいて、シートスイッチの検出による作業者のシート離席状態を検出しても、ソレノイドリレーを介してエンジンストップソレノイドへの電流供給を維持するので、作業者が、例えば、車両から降車して作業を行う場合に、主変速レバーがニュートラル位置であるとともにパーキングブレーキを作動させた、車両が移動しない条件において、作業者が降車シートから離席しても、エンジンの駆動を維持することができる。従って作業性を向上させた作業車両のエンジン制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエンジン制御装置を備える作業車両の一例を示した、ホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】トラクタの操縦部を後方から見た斜視図である。
【図3】エンジン制御装置の電気回路図である。
【図4】エンジン制御装置のブロック制御図である。
【図5】パワーリレーを内蔵したコントローラを備えるエンジン制御装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明のエンジン制御装置を備える作業車両の一例を示した、ホイール式トラクタの左側面図、図2はトラクタの操縦部を後方から見た斜視図である。なお、図1に例示した作業車両としてのトラクタは、キャビン仕様のホイール式トラクタに限定されず、ロプス仕様や、クローラ式などであってもよく、さらには、トラクタに限定されず、コンバインや除雪車、建設作業車両など、エンジン制御装置を備える作業車両であればよい。
【0015】
この例の作業車両であるトラクタ1は、図1に示すように、機体フレーム2の前後に前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6およびエンジン6の後方にクラッチハウジング7が配置され、さらに、このクラッチハウジング7の後方には、ミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。そして、ボンネット5の後部に連続して、機体フレーム2上には、外周にそれぞれフロントガラス19、リヤガラス20、ドア21、屋根22などを取付けキャビン9が設けられる。
【0016】
次に、図2に示すように、キャビン9内には、車両の操縦部として、ブレーキペダル10やクラッチペダル11などの操作ペダル、ステアリングハンドル12、シート13などが設けられる。また、ステアリングハンドル12近傍におけるステアリングコラムの適宜位置には、キースイッチ14が設けられる。
【0017】
さらに、シート13の両側方に有する左右フェンダ15には、例えば、主変速レバー16や副変速レバー17、PTO変速レバー18などの各種操作レバーが突設される。なお、トラクタ1は、上述したキャビン仕様に限定されず、ロプス仕様であってもよい。
【0018】
そして、エンジン6からの動力は、ミッションケース8から突出した不図示のPTO軸からや、不図示の油圧ケースなどを介して、車両後部では、ユニバーサルジョイントや三点リンク式などの作業機装着装置を介して装着された図示しない後部作業機を駆動させることができるほか、車両前部では、機体の前部に設置した左右一対の図示しないヒッチを介して装着された前部作業機が駆動される。
【0019】
次に、本願発明の特徴である、作業車両のエンジン制御装置について、その具体的構成を説明する。図3はエンジン制御装置の電気回路図、図4はエンジン制御装置のブロック制御図である。
【0020】
コントローラ32を備えるエンジン制御装置31は、図3に示すように、まず、コントローラ31の入力側として、キースイッチ14と、車両走行系である主変速レバー15のニュートラル位置(走行系のシフト位置が非伝達状態であること)を検出するシフトニュートラルスイッチ34と、車両中央近傍に備えられる図示しないミッドPTO軸への動力伝達がニュートラル(非伝達)状態であることを検出するミッドPTOニュートラルスイッチ35と、車両後部に備えられる図示しないPTO軸に動力を伝達させるために、油圧クラッチを接続するリヤPTOニュートラルスイッチ36と、作業者のシート13着座を検出するシートスイッチ37とが、コントローラ31に接続される。
【0021】
また、車両の図示しないパーキングブレーキの作動を検出するパーキングスイッチ38もコントローラ32に接続される。なお、符号39は、前記パーキングブレーキがかかった状態であることを運転者に報知するランプ、符号40は、主変速レバー15がニュートラル状態であることを運転者に報知するランプ、符号41は、○○○するPTOソレノイド、符号42は、前記PTO軸が動力伝達状態により回転中であることを運転者に報知するランプである。
【0022】
前記キースイッチ14は、図示しないバッテリに接続されるとともに、このキースイッチ14は、回路内の全ての電源をオンオフするメインスイッチ14aおよびエンジン6 を、図示しないスターティングモータの作動を介して始動させるスタートスイッチ14bから構成される。
【0023】
なお、上述したシフトニュートラルスイッチ34や、ミッドPTOニュートラルスイッチ35、PTOニュートラルスイッチ36、シートスイッチ37は、例えば、特開2007−230417や、特開2004−190636他に記載される周知技術であるため、それらの詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、コントローラ32の出力側として、エンジン6の予熱装置としてのグロープラグ44に電流を供給するパワーリレーであるグローリレー43と、エンジン6に燃料を供給するためのエンジンストップソレノイド46に電流を供給するパワーリレーであるソレノイドリレー45とが、コントローラ32に接続される。また、前記スターティングモータ内の接点を励磁するためのスタータソレノイド48に電流を供給するスタータリレー47もコントローラ31に接続される。
【0025】
なお、符号49は、エンジン6始動のために、エンジン6に予熱を与えていることを作業者に報知するランプである。
【0026】
上記エンジンストップソレノイド46は、ソレノイドリレー45から得る大電流を吸引する吸引部46aと、吸引された電流を保持することで、エンジン6に燃料を供給可能とする保持部46bとから構成される。
【0027】
ここで、作業者が、図4に示すように、車両のエンジン6を始動および駆動させるために、キースイッチ14のメインスイッチ14aを介してスタートスイッチ14bを投入した際に、コントローラ32は、このスタートスイッチ14bが投入されたことにより、グローリレー43には、例えば15秒間(限定されない)などの一定時間、前記バッテリから得られた電流を供給して、このグローリレー43を励磁させるとともに、ソレノイドリレー45にも、例えば1秒間(限定されない)などの一定時間、前記バッテリから得られた電流を供給して、このソレノイドリレー45を励磁させる。
【0028】
次いで、コントローラ32に、シフトニュートラルスイッチ34の検出による主変速レバー15がニュートラル位置であることと、ミッドPTOニュートラルスイッチ35およびリヤPTOニュートラルスイッチ36の検出による前記PTO軸への動力非伝達状態と、シートスイッチ37の検出による作業者のシート13着座状態との、これら全ての検出情報が入力されると、コントローラ32は、スタータリレー47を通電させ、スタータソレノイド48に電流を供給することで、前記スターティングモータが作動し、エンジン6が始動される。
【0029】
さらに、予め励磁させておいたソレノイドリレー45により、上述したエンジン6の始動とともに、直ちにソレノイドリレー45からエンジンストップソレノイド46の吸引部46aを介して保持部46bに供給された電流により、エンジン6に燃料が供給される結果、エンジン6が安定駆動される。このため、エンジン6を始動させてもエンジン6が駆動しない、または駆動がすぐに停止してしまうようなことはなく、エンジン6を始動から駆動まで連続して確実に行うことができる。
【0030】
このエンジン6の始動の際、予め励磁させておいたグローリレー43によりグロープラグ44を介してエンジン6が予熱されているため、前記スターティングモータの作動によりエンジン6が点火し易くなる結果、エンジン6の始動性が向上される。
【0031】
また、メインスイッチ14a投入の際、グローリレー43の励磁時間を、本発明の例では15秒程度としているため、グローリレー43への電流供給を、エンジン6の予熱に必要最小限とすることができ、電流の無駄な浪費を抑制することができる。
【0032】
さらに、ソレノイドリレー45の励磁時間を、本発明の例では1秒程度としているため、エンジンストップソレノイド46が熱消耗することなく、エンジンストップソレノイド46の損傷を防止することができる。
【0033】
そして、コントローラ32が、グローリレー43への励磁時間を制御しているため、従来のようなエンジン制御装置の回路内に、別途タイマーなどを設けた場合と比べて、温度条件などの条件変化に左右されず、常にグローリレー43を所定の時間だけ正確に励磁させることができるとともに、回路構成を簡単にすることができる。
【0034】
次に、エンジン6の駆動中に、作業者がシート13を離席した場合には、シートスイッチ37が検出した作業者の離席状態がコントローラ32に入力されると、コントローラ32は、ソレノイドリレー45の通電を遮断させることで、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止して、エンジン6の駆動を停止させる、安全機構Sが設けられる。
【0035】
また、この安全機構Sにおける、シートスイッチ37には、図2に示すようなオフディレー回路37aが備えられており、このオフディレー37aを作動させた場合には、設定した一定の時間(本発明では、例えば1秒間に設定した例を説明するが、設定時間は適宜変更可能とする。)だけ作業者がシート13から離席しても、コントローラ32はソレノイドリレー45に対して、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止しない構成とされる。
【0036】
つまり、エンジン6の駆動中に、作業者がシート13から1秒を超えて離席した場合には、シートスイッチ37が作業者の離席状態を検出して、コントローラ32に伝達することで、コントローラ32は、ソレノイドリレー45の通電を遮断させ、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止して、エンジン6の駆動を停止させることにより、シート13に作業者が着座していない状態ではエンジン6を停止して安全性を向上させるものである。
【0037】
しかし、エンジン6の駆動中に、シート13に着座している作業者の姿勢変更などや、車両の走行状態や作業状態などの振動に伴う、一時的な体重移動による離席状態が、例えば1秒以内で生じても、シートスイッチ37は、作業者の離席状態をコントローラ32に伝達しないため、コントローラ32はソレノイドリレー45の通電を維持し、エンジン6を停止させることはない。
【0038】
このような構成にすることで、作業者の姿勢変更や車両の振動により、作業者がシート13からわずかに離れて、シートスイッチ37の検出状態が瞬時に切り替わり、シート13の作業者が設定した時間内で離席状態となっても、コントローラ32による不要なエンジン6の停止を防ぐことができる。
【0039】
次に、エンジン6の駆動中に、作業状況などに対応して作業者が比較的長い時間離席しても、エンジン6を停止させない構成にすることもできる。この場合、図5のパターン1に示すように、エンジン6の駆動中に、主変速レバー15がニュートラル位置であることを検出したシフトニュートラルスイッチ34の検出と、前記パーキングブレーキの作動を検出したパーキングスイッチ38の検出との情報に基づき、コントローラ32は、シートスイッチ37が作業者の離席を検出した情報を有していても、ソレノイドリレー45の通電を維持させる。
【0040】
つまり、エンジン6の駆動中に、車両を移動させない条件とし、作業者がシート13から、例えば1秒以上、1分〜10分程度の比較的長い時間離れても、コントローラ32は、ソレノイドリレー45の通電を維持し、エンジン6を停止させることはない。
【0041】
なお、コントローラ32は、シフトニュートラルスイッチ34による主変速レバー15のニュートラル位置およびパーキングスイッチ38による前記パーキングブレーキの作動のいずれかもしくは双方が検出されなかった際、シートスイッチ37が作業者の離席を検出した情報を得ることで、ソレノイドリレー45の通電を遮断してエンジン6の駆動を停止させる。
【0042】
このような構成にすることで、例えば、作業者が、車両から降車して作業を行う場合に、主変速レバー15がニュートラル位置であるとともに、前記パーキングブレーキを作動させた、車両が移動しない条件において、作業者がシート13から離席しても、エンジン6の駆動を維持するため、降車のための離席の都度、エンジン6の駆動を停止させる必要がなく、作業性を向上させることができる。
【0043】
次に、本願発明のエンジン制御装置では、パワーリレーをコントローラに内蔵させて、エンジン制御装置31の回路構成を簡単にすることができる。図5はパワーリレーを内蔵したコントローラを備えるエンジン制御装置の電気回路図である。
【0044】
このエンジン制御装置31´は、図5に示すように、上述した、パワーリレーとしてのグローリレーおよびソレノイドリレーを、コントローラ32´に内蔵させる。従って、グロープラグ44およびエンジンストップソレノイド46は、コントローラ32´内におけるグローリレー43´およびソレノイドリレー45´に接続される。
【0045】
このような構成にすることで、コントローラ32´外部にパワーリレーを接続配置させることなく、エンジン制御装置31´の回路全体の構成が簡単となり、メンテナンス性が向上する。
【0046】
以上詳述したように、この例の作業車両のエンジン制御装置31は、エンジン6のスタートスイッチ14bの投入および、走行系の動力伝達状態を検出するシフトニュートラルスイッチ34による走行系動力の非伝達と、PTO軸の動力伝達状態を検出するミッドPTOニュートラルスイッチ35およびリヤPTOニュートラルスイッチ36(PTOニュートラルスイッチ)によるPTO軸の動力非伝達状態と、作業者のシート13への離着席状態を検出するシートスイッチ37による作業者のシート13着席情報との全ての検出情報に基づき、コントローラ32は、スタータソレノイド48を介してスターティングモータを作動させ、エンジン6を始動し、かつエンジンストップソレノイド46に電流を供給することで、エンジン6を駆動するとともに、コントローラ32は、シートスイッチ37の検出による作業者の離席情報に基づき、エンジンストップソレノイド46への電流供給を停止させ、エンジン6の駆動を停止するものであって、コントローラ32は、スタートスイッチ14bの投入により、エンジン6を予熱するグローランプ44に電流を供給するグローリレー43およびエンジンストップソレノイド46に電流を供給するソレノイドリレー45を一定時間励磁させるものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
なお、上述の例では、エンジン制御装置を備える作業車両の一例としてホイール式トラクタについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタなどの農作業車両や、建設作業車両など、エンジン制御装置を備えるあらゆる作業車両に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
14b スタートスイッチ
31,31´ エンジン制御装置
32,32´ コントローラ
34 シフトニュートラルスイッチ
35 ミッドPTOニュートラルスイッチ
36 リヤPTOニュートラルスイッチ
37 シートスイッチ
37a オフディレー
38 パーキングスイッチ
43,43´ グローリレー
44 グローランプ
45,45´ ソレノイドリレー
46 エンジンストップソレノイド
46a 吸引部
46b 保持部
47 スタータリレー
48 スタータソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのスタートスイッチの投入および、走行系の動力伝達状態を検出するシフトニュートラルスイッチによる前記走行系動力の非伝達と、PTO軸の動力伝達状態を検出するPTOニュートラルスイッチによる前記PTO軸の動力非伝達状態と、作業者のシートへの離着席状態を検出するシートスイッチによる作業者の前記シート着席情報との全ての検出情報に基づき、コントローラは、スタータソレノイドを介してスターティングモータを作動させ、エンジンを始動し、かつエンジンストップソレノイドに電流を供給することで、エンジンを駆動するとともに、
前記コントローラは、前記シートスイッチの検出による作業者の離席情報に基づき、前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を停止させ、前記エンジンの駆動を停止する安全機構を備える作業車両のエンジン制御装置において、
前記コントローラは、前記スタートスイッチの投入により、前記エンジンを予熱するグローランプに電流を供給するグローリレーおよび前記エンジンストップソレノイドに電流を供給するソレノイドリレーを一定時間励磁させることを特徴とする作業車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記グローリレーと、前記ソレノイドリレーとを内蔵することを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記シートスイッチは、オフディレー回路を備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記コントローラには、さらに車両のパーキングブレーキの作動を検出するパーキングブレーキスイッチを接続するとともに、前記コントローラは、前記シフトニュートラルスイッチの検出による走行系の動力非伝達状態と、前記パーキングブレーキスイッチの検出による前記パーキングブレーキの作動状態に基づいて、前記シートスイッチの検出による作業者のシート離席状態を検出しても、前記ソレノイドリレーを介して前記エンジンストップソレノイドへの電流供給を維持することを特徴とする、請求項1〜3に記載の作業車両のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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