説明

作業車両用ツインヘッダ

【課題】ツインヘッダにおいて、一対の切削ドラムの間の切削不能部分をなくし、切削ドラムの全幅にわたる切削作業ができるようにする。ケーシングによる妨げをなくして、より深い切削作業を行えるようにする。
【解決手段】基体11の先端部に配設される一対の切削ドラム15,15の間に、ケーシングの先端部を覆って複数の切削カッター17を配設する。動力伝達機構24をチェーン式とし、切削カッター17を、動力伝達機構24チェーン16に設ける。切削カッター17に、切削ドラム15と同じ切削ピック27を用い、チェーン16の外側に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホーのような作業用車両のアーム部の先端に取り付けて、土木工事における地盤の切削やはつり,地盤改良のための攪拌等に用いられる作業車両用ツインヘッダに関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事で地盤の切削や地盤改良等を行う場合に、アーム部の先端に例えば特許第2984703号公報に示すようなツインヘッダを取り付けた作業車両が用いられる。このツインヘッダは、図7に示すように、作業用車両のアーム部先端側に設けられたブラケットに基体1を延設し、基体1の基端側に駆動モータ2を収容配置し、基体1の先端部にドラム軸3を横方向に配設して、このドラム軸3の基体1の両側部における突出端に一対の切削ドラム4,4を装着したものである。
【0003】
そして、駆動モータ2の回転5軸とドラム軸3とに配置した駆動スプロケット6と従動スプロケット7とに懸装させたチェーン8により切削ドラム4,4の回転により、切削ドラム4,4の外面に設けた複数の切削ピック9にて切削や攪拌作業を行なう。
【特許文献1】特許第2984703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の切削ドラム4,4の間には基体1の先端部が位置するため、切削作業では、図8に示すごとく、切削不能部分W1を残すこととなる。このため、ツインヘッダを横方向へ半ピッチほどずらして、未切削部分を切削する後工程をその都度行なう必要があり、工事全体では多大な作業工数を要する効率のわるいものとなっていた。さらに、切削ドラム4,4で削り進めていくうちに、基体1の先端部が地盤に突き当たってそれ以上の切削を阻害するため、切削深さは、切削ピック3と基体1の先端部間の距離に相当する深さL1の僅かな量に限られていた。
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、一対の切削ドラムの間の切削不能部分をなくして、一度に切削ドラムの全幅にわたる切削作業を可能とし、また深さ制限のない切削作業を行うことのできる作業車両用ツインヘッダを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、作業車両に設置されるアーム部の先端に取り付けられる基台の基端に駆動モータにより駆動される駆動軸を、前記基台の先端に前記基台の両側部から突出する両端部に一対の切削ドラムをそれぞれ装着した従動軸とを配置し、前記駆動軸と従動軸との幅方向のほぼ中央部にそれぞれ配置した駆動スプロケットと従動スプロケットにチェーンを懸装させて前記一対の切削ドラムを回転させる作業車両用ツインヘッダにおいて、少なくとも前記駆動スプロケットと従動スプロケットのチェーン懸装部とを前記基台から露出させて配置するとともに前記チェーンの外側部に沿って前記両切削ドラムの間に配置されるリング状の切削カッターを配設したことを特徴とする。
【0007】
一対の切削ドラム間に存在する基体分の間隙を埋めて設けられる切削カッターとともに切削作業を行う。これにより、切削ドラム間に未切削部分を残すことがなくなり、一対の切削ドラムの外端間にわたる長さの切削作業が一度に行えるようになる。また、従来未切削部分に要していた後工程が不要となるので、工事作業を短期間に効率よく行える。さらに切削カッターは、基体の先端部を覆って設けられるため、切削時の深さ制限がなくなって、一度に効率のよい作業を行えるようになる。
【0008】
切削カッターが、動力伝達機構部品であるチェーンを利用して設けられるため、より一層のコンパクト化と低コスト化が図れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業車両用ツインヘッダによれば、従来の駆動軸の両端に設けられていた一対の切削ドラムの間に残されていた基体分の切削不能部分を切削カッターが作業するので、切削ドラムの外端間にわたる長さの切削が一回の作業工程で行えるようになる。また、従来未切削部分に要していた後工程が不要となるので、作業工期を大幅に短縮できて経済性の向上を図ることができる。さらに切削カッターは、基体の先端部を覆って設けられるため、深さ制限のない切削作業を一度に効率よく行うことができ、作業効率が格段に向上する。
【0010】
また、切削ドラムと切削カッターの作動をチェーン式の動力伝達機構がまかなうので、組み付け工数と部品点数を削減でき、さらにコンパクト化と低コスト化が図れる。また、チェーンやスプロケットが基礎体の外側に目視可能に配設されるので、切削カッターはもちろんのこと、動力伝達機構部品のメンテナンスも外から容易に行えるようになる。また、切削カッターを動力伝達機構部品であるチェーンを利用して設けることにより、なお一層のコンパクト化と低コスト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に好適な一形態例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1乃至図3において、作業車両用のツインヘッダ1は、作業用車両のアーム部先端にブラケットを介して装着される縦長の基体11を有し、該基体11の上部一側には駆動モータ12が付設される。基体11の先端部両側に突出して設けられたハブ11a,11aに軸受13,13を介して支持されるドラム軸14の両端に一対の切削ドラム15,15が換装自在に装着されている。
【0013】
また、基体11の上部には、駆動モータ12の出力軸20が、軸受21を用いてドラム軸14と平行に支持されており、出力軸20には左右一対の駆動スプロケット22,22が固着され、またドラム軸14には左右一対の従動スプロケット23,23が固着されている。スプロケット22,22,23,23間には2本のチェーン16,16が懸装され、チェーン16,16と、ドラム軸14,出力軸20,駆動スプロケット22,22,従動スプロケット23,23とで、ダブルチェーン式の動力伝達機構24が構成されている。
【0014】
更に、従動スプロケット23,23は、基体11の先端部と切削ドラム15,15との間に配設され、その外周歯は基体11の先端部よりも外側に位置している。このため、従動スプロケット23,23の外周歯と歯合するチェーン16,16は、基体11の先端部の外側を覆うように設けられており、従動スプロケット23,23は切削ドラム15,15に近似した直径を有していると好ましい。
【0015】
各チェーン16は、図4に示すように、複数のリンクチェーン16aとシャックル16bとを交互に連結してエンドレスに構成されており、基体11を挟んで左右同位相に位置するシャックル16b,16b間に断面T字状のチェーンバー25を架設し、該チェーンバー25の外面に前記切削カッター17を2個ずつ突設している。
【0016】
図2に示すように、前記各切削ドラム15は、ドラム軸14を中心軸上に収容して配設される円筒体15aと、ドラム軸14の外端外側で円筒体15aの外側縁を塞ぐ外側板15bとの有底円筒状に形成されている。円筒体15aの外周面と外側板15bの外面には、ピックホルダ26に保持される複数の切削ピック27が突設されており、チェーン16,16に設けられる前記切削カッター17には、このピックホルダ26と切削ピック27とを組み合わせた同一構成のものが用いられている。
【0017】
殊に、切削カッター17は、縦方向に2列で配設され、さらに切削効率等を勘案して互いを外向きに傾斜させている。また、切削ドラム15,15の間に形成されるスペースを埋めるように、切削ドラム15の円筒体15aにドラム軸方向へ並ぶ切削ピック27と略同ピッチに配設されている。
【0018】
更に、図1及び図2において、切削カッター17の取り付け板となる前記チェーンバー25は基体11の先端部で、切削ドラム15の円筒体15aと同一の円周D1上に位置しており、チェーンバー25上の切削カッター17と円筒体15a上の切削ピック27の先端同士は、同一の円周D2上に位置している。したがって、切削カッター17と切削ピック27とは同位相に配設され、駆動モータ12の駆動で一体に回転して、同一の切削作業を行うように設定されている。
【0019】
このように構成される本形態例のツインヘッダ10は、図1乃至図3において、駆動モータ12をON状態にすると、出力軸20と駆動スプロケット22とが一体に回転し、さらにチェーン16,16を通して従動スプロケット23と切削ドラム15,15とが一体に回転し、チェーン16,16の切削カッター17と切削ドラム15,15の切削ピック27とは同期して一体に回転し、切削ドラム15,15の外端間にわたる長さW2(図6参照)の切削を一回の作業工程で行うことができる。
【0020】
したがって、本形態例のツインヘッダ10によれば、切削ドラム15,15の間に従来のような未切削部分を残すことがなくなるので、未切削部分に要していた後工程が不要となり、作業工期を大幅に短縮できて経済性の向上を図ることができる。さらに、切削カッター17で基体11の先端部を覆って、該先端部が地盤に当たらないようにしたから、切削作業をベースマシンのアーム部が届く範囲の深さL2(図6参照)で一度に効率よく行うことができるようになり、作業効率が格段に向上する。
【0021】
また、切削ドラム15,15と切削カッター17の作動をチェーン式の動力伝達機構24がまかなうので、組み付け工数と部品点数を削減でき、さらにツインヘッダ10のコンパクト化と低コスト化が図れる。また、チェーン16や従動スプロケット23がケーシング11の外側に目視可能に配設されるので、切削カッター17はもちろんのこと、動力伝達機構24の構成部品のメンテナンスも容易に行える。さらに、切削カッター17を動力伝達機構24の構成部品であるチェーン16を利用して設けたので、より一層のコンパクト化と低コスト化とを図ることができる。
【0022】
尚、前述の形態例では地盤の切削を例に説明したが、本発明のツインヘッダは、地盤改良等における攪拌その他に用いることができる。また、切削カッターと切削ドラムの切削ピックは、前記形態例と異なる形状であってもよく、その配列も任意である。チェーン式以外の動力伝達機構として、ベルト式やギア式等がある。また動力伝達機構は、前記形態例で例示したように、切削ドラムと切削カッターの双方に兼用することが、製作的にもコスト的にも望ましいが、それぞれが専用の動力源と動力伝達機構を持つことも妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一形態例を示すツインヘッダの正面図である。
【図2】本発明の一形態例を示すツインヘッダの正面縦断面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】本発明の一形態例を示すチェーンとチェーンバーの連結状態を内側から見た図である。
【図5】本発明の一形態例を示すチェーンバーの斜視図である。
【図6】本発明の一形態例を示す切削状態を示す図である。
【図7】従来のツインヘッダの正面縦断面図である。
【図8】従来のツインヘッダを用いた切削状態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ツインヘッダ、 11 基体、 12 駆動モータ、 14 ドラム軸、 15 切削ドラム、 15a 円筒体、 15b 外側板、 16 チェーン、 16a リンクチェーン、 16b シャックル、 17 切削カッター、 20出力軸、 22 駆動スプロケット、 23 従動スプロケット、 24 動力伝達機構、 25 チェーンバー、 26 ピックホルダ、 27 切削ピック、 D1,D2 円周、 W1 切削不能部分、 W2 切削ドラム15,15の外端間の長さ、 L1 従来のツインヘッダを用いた切削深さ、 L2 本形態例のツインヘッダを用いた切削深さ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に設置されるアーム部の先端に取り付けられる基台の基端に駆動モータにより駆動される駆動軸を、前記基台の先端に前記基台の両側部から突出する両端部に一対の切削ドラムをそれぞれ装着した従動軸とを配置し、前記駆動軸と従動軸との幅方向のほぼ中央部にそれぞれ配置した駆動スプロケットと従動スプロケットにチェーンを懸装させて前記一対の切削ドラムを回転させる作業車両用ツインヘッダにおいて、少なくとも前記駆動スプロケットと従動スプロケットのチェーン懸装部とを前記基台から露出させて配置するとともに前記チェーンの外側部に沿って前記両切削ドラムの間に配置されるリング状の切削カッターを配設したことを特徴とする作業車両用ツインヘッダ。
【請求項2】
前記駆動スプロケットと従動スプロケットは両端にチェーンを懸装させたダブルチェーン式で、両チェーンの間に架設したチェーンバーに切削ピックが突設されている請求項1記載の作業車両用ツインヘッダ。

































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−28904(P2006−28904A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209775(P2004−209775)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(398050869)大石インターナショナルシスコム株式会社 (1)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】