説明

作業車両

【課題】本発明の課題は、従来のものでは、機体の全長が長くなって枕地旋回での小回りが効きにくくなる問題、また、作業中、機体が傾くと、刈刃部が水平に維持できないため、隣接する作物の切断高さが不揃いとなる問題を解消することにある。
【解決手段】本発明は、自走しながら作物の先端部を切断処理するバリカン式刈刃10と、このバリカン式刈刃10を駆動する原動機11を備えた摘心作業装置12を、走行車体1の前部に装着された昇降可能な昇降リンク機構8部の前部直下に吊り下げ状態に支持させて設け、該摘心作業装置12は、前記昇降リンク機構8部に架設された前後方向のローリング軸19芯周りに左右ローリング制御可能に装備してあることを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走しながら作物の摘心作業が行える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成育した大豆の茎の最上端部を剪定する摘心手段を備えた歩行型剪定機は、例えば、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−267018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摘心作業装置が機体前部に装着された昇降可能な昇降リンク機構部に設置されたものでは、この摘心作業装置が昇降リンク機構部の前端部より前方に大きくはみ出た構成になっているため、機体前方へのオーバーハング量が大きくなり、機体の全長が長くなって枕地旋回では小回りが効きにくくなる問題があった。また、作業中、機体が傾くと、刈刃部が水平に維持できないため、隣接する作物の切断高さが不揃いとなる問題があった。更には、切断された被切断物が刈刃上に残留し、切断性能の低下を招く問題も発生していた。
本発明はかかる問題点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、自走しながら作物の先端部を切断処理するバリカン式刈刃(10)と、このバリカン式刈刃(10)を駆動する原動機(11)を備えた摘心作業装置(12)を、走行車体(1)の前部に装着された昇降可能な昇降リンク機構(8)部の前部直下に吊り下げ状態に支持させて設け、該摘心作業装置(12)は、前記昇降リンク機構(8)部に架設された前後方向のローリング軸(19)芯周りに左右ローリング制御可能に装備してあることを特徴とする作業車両としたものである。
自走しながら圃場の作物に対して左右に往復動するバリカン式刈刃(10)が作用し、作物の先端部が適宜の位置で切断処理される。作業中、機体が左右に傾いても、刈刃はローリング軸(19)を中心として左右にローリングし水平状態に保持される。
摘心作業装置(12)が昇降リンク機構(8)部の前部直下に吊り下げ状態に支持されるので、機体前方へのオーバーハング量が小さくなり、機体全長が短くなってコンパクト化され、小回りの枕地旋回が行える。
また、機体が傾いても、刈刃部が常に水平に保持されるので、作物の切断高さがムラなく揃えられる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記摘心作業装置(12)の後方上部には、バリカン式刈刃(10)上に強制風を吹き付けて被切断物を排除する送風手段(23),(26)を設けてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両としたものである。
バリカン式刈刃(10)上には送風機(23)からの強制風が送風ノズル(26)から吹き出され、バリカン式刈刃(10)上全面にわたって後方上方から常時吹き付けられ、刈刃上に残る葉や茎などの被切断物が前方に吹き飛ばされて排除される。
【発明の効果】
【0007】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、摘心作業装置が昇降リンク機構部の前部直下に吊り下げ状態に装着支持されるので、機体前方へのオーバーハング量を小さくでき、機体全長が短くなってコンパクト化でき、枕地での小回り旋回が行える。
また、作業中、機体が傾いても、刈刃部を常に水平に保持できるので、隣接する作物の切断高さをムラなく一定高さに揃えることができる。
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、強制風を刈刃の後方上方から刈刃上全面にわたって吹き付けるので、刈刃上での被切断物の除去作用が的確に行え、切断性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】作物摘心作業装置を備えた作業車両の側面図
【図2】同上平面図
【図3】別例作業車両の側面図
【図4】別例作業車両の平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、大豆作物等の摘心作業装置を備えた乗用型作業車両を示すものであり、この走行車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力を走行ミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。機体後部側中央に運転席5が、その前方にはステアリングハンドル6が装備されている。
車体1の前方側には、昇降シリンダ7の伸縮作動により対地面対して略平行姿勢を保って昇降する昇降リンク機構8が装備されている。昇降リンク機構8には、作物の先端部を切断処理するバリカン式刈刃10と、この刈刃10を駆動する原動機(リコイル式エンジン)11を備えた摘心作業装置12が装備されている。
また、前記昇降リンク機構8部には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズル13、散布ホース14、散布ブームランス15等を有した薬液散布装置16が備えられている。
機体後部に搭載された薬液タンク18内の薬液は、ポンプにより散布ホ−ス14を通じて散布ノズル13から噴出されるようになっている。
前記昇降リンク機構8は、回動軸芯Q1,Q2を支点として上下動する上リンク8uと下リンク8dと前リンク(前フレーム)8f等からなる。
摘心作業装置12の刈刃10は、固定受刃10aと左右に往復動する可動刈刃10bとからなり、そして、可動刈刃10bは、左右両端に設置された原動機11により刈刃駆動ケース11a内の駆動機構を介して左右に往復駆動する構成としている。
また、前記摘心作業装置12は、前フレーム8fの前側接近位置に支持されたブームローリングフレーム17の直下で、且つ、前フレーム8fの下端よりも下方位置へ吊り下げ状態に支持ステー9を介して支持させた構成としている。これにより、機体前方へのオーバーハング量が少なくて済み、運転席から摘心作業装置の刃部が良く見えることになり、安心して作業を継続することができる。
また、昇降リンク機構8の前面に設けられた前フレーム8fには、ブームローリングフレーム17を前後方向に沿うローリング軸19を介して左右ローリング自在に装着し、ブームローリングフレーム17と前フレーム8fを自動水平用シリンダ20にて連結し、そして、このローリング可能なブームローリングフレーム17に散布ブームランス15と摘心作業装置12を装備した構成としている。
ブームローリングフレーム17は、機体が傾いても水平状態を保持するので、これに装備された摘心作業装置の作物に対する摘心位置が正確に決まり、作物の切断高さを一定高さに揃えることができる。
前記ローリング軸19は、機体の左右幅中心線Y上に設定してあり、この中心線Yの左右対称位置に摘心作業装置12を配置することで、昇降リンク機構8の左右バランスが良くなり、昇降リンク機構がふらつかないので切断高さが安定する。
なお、前記原動機11は、2サイクルエンジンを使用し、機体の左右横方向外側に配置することで、刈刃の刃部を一直線状に配置することができ、刃部を連続化することで切断ミスを低減することができる。
薬液タンク18の後方部には送風手段として送風機(送風ファン)23が設置されている。そして、その送風機23により発生する強制風は、機体前方に向けて送風すべく配管された縦送風管24と、この縦送風管24より刈刃10の後側上部で左右横方向に配管された横送風管25と、この横送風管25より刈刃10上を前方に向けて送風すべく開口された数個の送風ノズル26…を介して刈刃の全面にわたって吹き付けられるようになっており、刈刃後方上部から刈刃前方に向けて送風しながら摘心作業が行えるように構成している。
図3及び図4に示すように、散布ブームランス15の前側には、安全装置として摘心作業装置12の作業幅全域にわたって緊急停止用アクチュエータ27が設けられている。
作業中、圃場作業者が誤ってアクチュエータ27部に衝突したりすると、このアクチュエータの変位動作によりマイクロスイッチ28がONされて原動機11が緊急停止し、刈刃の駆動が自動停止するように構成されている。このように高速で往復動する刈刃が緊急停止するので、作業者が刈刃に接触して切傷等の人身事故を招くことがなく安全性が確保される。
また、このアクチュエータ27は弾性素材を使用すると、アクチュエータが塑性変形を起こさないので、復帰力があり、繰り返し安全装置を利用でき、小さな外的負荷でも安全装置が働き、より安全性を確保することができる。
なお、アクチュエータの安全装置の変形例として、散布ブームランスの全面部にフイルム形態の圧電素子を設けるものであってもよい。これによれば、軽量な安全装置が得られるばかりでなく、規定の振動以上で原動機を停止させることができ、バリカン部の異常による強振動の検出等にも利用でき、装置の異常検出手段としても活用できる利点がある。
【符号の説明】
【0010】
1 走行車体
8 昇降リンク機構
10 バリカン式刈刃
11 原動機
12 摘心作業装置
19 ローリング軸
23 送風手段(送風機)
26 送風手段(送風ノズル)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走しながら作物の先端部を切断処理するバリカン式刈刃(10)と、このバリカン式刈刃(10)を駆動する原動機(11)を備えた摘心作業装置(12)を、走行車体(1)の前部に装着された昇降可能な昇降リンク機構(8)部の前部直下に吊り下げ状態に支持させて設け、該摘心作業装置(12)は、前記昇降リンク機構(8)部に架設された前後方向のローリング軸(19)芯周りに左右ローリング制御可能に装備してあることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記摘心作業装置(12)の後方上部には、バリカン式刈刃(10)上に強制風を吹き付けて被切断物を排除する送風手段(23),(26)を設けてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−172534(P2011−172534A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40684(P2010−40684)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】