説明

作業車輌の原動部構造

【課題】外気濾過用の濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去効率に優れる手段を提供する。
【解決手段】濾過体(24)とラジエータ(21)の間に排気用の排塵ファン(27)を配置すると共に、ラジエータ(21)の機体内側には外気吸入用のラジエータファン(26)を配置し、ラジエータ(21)の機体外側に配置される排塵ファン(27)とラジエータ(21)の機体内側に配置されるラジエータファン(26)とを同一軸心上に設ける構成としたことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータの外側に設置された濾過体に付着する藁屑、塵埃を除去し、エンジンのオーバヒートを防止する作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車輌には水冷式エンジンが搭載されている。エンジンにより温度上昇した冷却水は、ラジエータを循環することにより冷却された後、再びエンジンを循環する。
コンバインは、穀稈の刈取、脱穀、選別、排藁処理を行う過程で、前部の刈取装置からは、立毛穀稈の切断や搬送によって藁屑や塵埃が発生し、後部からは、脱穀処理や脱穀後の排稈切断処理によって発生した藁屑、塵埃等を排出するので、コンバインの機体周囲には多量の藁屑や塵埃が巻き上げられる。この巻き上げられた藁屑等がエンジンカバーやラジエータカバーの濾過体に付着し、これらの濾過体が目詰まった場合、濾過体の外側から内側に十分な外気を吸入することができなくなり、冷却器の冷却効率が低下し、場合によってはエンジンがオーバヒートする恐れがある。
【0003】
上記問題を解決するため、特許文献1には、テンション操作体を移動することによりラジエータの内側に設けたファンの正転状態と逆転状態を切換え、ラジエータの冷却及びラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去を行なう構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術において、ファンの逆転状態時に内側から外側に向かう排気風はラジエータカバーとファンの間に配置されたラジエータにより抵抗を受け、濾過体に付着した塵埃の除去能力が低下する。このため、ファンの排気風によりラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等を十分除去することができず、除去できない藁屑、塵埃等により濾過体が目詰まりする。
したがって、ファンの正転状態時に濾過体の外側から機体内側に外気を十分に吸引できなくなり、ラジエータ等の冷却効率が低下し、その結果、エンジンがオーバヒートすると云う問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、該ラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(24)を備え、
該濾過体(24)とラジエータ(21)の間に排気用の排塵ファン(27)を配置すると共に、前記ラジエータ(21)の機体内側には外気吸入用のラジエータファン(26)を配置し、
該ラジエータ(21)の機体外側に配置される排塵ファン(27)とラジエータ(21)の機体内側に配置されるラジエータファン(26)とを同一軸心上に設けたことを特徴とする作業車輌の原動部構造である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)とを駆動状態と非駆動状態とに互いに背反的に切換える駆動状態切換手段(45)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、該ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで両側に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、
前記各ラジエータの端部に配置した縦軸(25R、25L)を中心に、該各ラジエータを機体外側に向けて観音開きする構成としたことを特徴とする請求項3記載の作業車輌の原動部構造である。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、該ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで上下両側に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、
前記各ラジエータの端部に配置した横軸(25U、25S)を中心に、該各ラジエータを機体外側に向けて上下に観音開きする構成としたことを特徴とする請求項5記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記ラジエータ(21)の中心部に貫通孔(20B)を形成し、前記排塵ファン(27)の回転軸(27A)を該貫通孔(20B)に貫通させて配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26A)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0014】
請求項9に係る発明は、機体に備えた作業部を駆動する作業クラッチ(104,115)が接続された後に前記駆動状態切換手段(45)が切換作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0015】
請求項10に係る発明は、機体に備えた作業部を駆動する作業クラッチ(104,115)が接続された場合に、ラジエータファン(26)を駆動状態から非駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を非駆動状態から駆動状態へ切り換える排塵モードを第1設定時間に亘り継続し、該第1設定時間経過後に、ラジエータファン(26)を非駆動状態から駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を駆動状態から非駆動状態へ切り換える冷却モードを第2設定時間に亘り継続し、以後、該排塵モードの実行と冷却モードの実行とを背反的に反復して実行するように前記駆動状態切換手段(45)を制御する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、濾過体(24)とラジエータ(21)の間に排気用の排塵ファン(27)を配置すると共に、ラジエータ(21)の機体内側には外気吸入用のラジエータファン(26)を配置していることから、濾過体(24)に接近して排塵ファン(27)を配置でき、排塵ファン(27)の逆転駆動状態において、ラジエータ(21)及びラジエータファン(26)が排塵ファン(27)の排気風の抵抗になりにくいため、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を高めることができる。また、ラジエータ(21)の内側面に接近してラジエータファン(26)を配置でき、ラジエータファン(26)の正転駆動状態において、ラジエータ(21)に対して広域に濾過後の吸入風があたるため、ラジエータファン(26)による冷却効率を高めることができる。
しかも、ラジエータ(21)の機体外側に配置される排塵ファン(27)とラジエータ(21)の機体内側に配置されるラジエータファン(26)とを同一軸心上に設けたことから、ラジエータファン(26)及び排塵ファン(27)の支持構造または伝動構造を簡素化してコンパクトに配置することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、駆動状態切換手段(45)によってラジエータファン(26)と排塵ファン(27)とを駆動状態と非駆動状態とに互いに背反的に切換えることで、ラジエータファン(26)による吸入風と排塵ファン(27)による排気風とがぶつかりにくく、ラジエータファン(26)による冷却効率および排塵ファン(27)による塵埃除去効率を高めることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで両側に配置したことから、濾過体(24)の中央部に接近した部位に排塵ファン(27)を配置できるため、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を更に高めることができ、さらに、ラジエータファン(26)の正転駆動状態において、複数のラジエータに対して広域に吸入風があたるため、ラジエータファン(26)によるラジエータの冷却効率が更に高まり、エンジン(11)のオーバヒートを更に効果的に防止できる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、各ラジエータの端部に配置した縦軸(25R、25L)を中心に、各ラジエータを機体外側に向けて観音開きする構成としたことから、排塵ファン(27)の羽根(27B)を回転軸(27A)から取り外すことで、この排塵ファン(27)の機体内側に配置された各ラジエータを機体外側に向けて容易に開くことができ、これらのラジエータの機体内側に配置されたラジエータファン(26)及び駆動状態切換手段(45)等の保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで上下両側に配置したことから、濾過体(24)の中央部に接近した部位に排塵ファン(27)を配置でき、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を更に高めることができ、さらに、ラジエータファン(26)の正転駆動状態において、複数のラジエータに対して広域に吸入風があたるため、ラジエータファン(26)によるラジエータの冷却効率が更に高まり、エンジン(11)のオーバヒートを更に効果的に防止できる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、各ラジエータの端部に配置した横軸(25U、25S)を中心に、各ラジエータを機体外側に向けて上下に観音開きする構成としたことから、排塵ファン(27)の羽根(27B)を回転軸(27A)から取り外すことで、この排塵ファン(27)の機体内側に配置された各ラジエータを機体外側に向けて容易に開くことができ、これらのラジエータの機体内側に位置するラジエータファン(26)及び駆動状態切換手段(45)等の保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(21)の中心部に貫通孔(20B)を形成し、排塵ファン(27)の回転軸(27A)を該貫通孔(20B)に貫通させて配置したことから、濾過体(24)の中央部に接近した部位に排塵ファン(27)を配置できるため、濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の除去能力を更に高めることができ、エンジン(11)のオーバヒートを更に効果的に防止できる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26A)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことから、排塵ファン(27)とラジエータファン(26)を同一軸心上に配置しながら互いに異なった速度で回転させることができ、エンジン(11)のオーバヒートを更に効果的に防止できる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、機体に備えた作業部を駆動する作業クラッチ(104,115)が接続された後に駆動状態切換手段(45)が切換作動する構成としたことから、外気濾過用の濾過体(24)に多量の藁屑、塵埃等が付着する作業時にのみ駆動状態切換手段(45)が作動するため、この駆動状態切換手段(45)の耐久性が向上し、ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)との切換時に発生する駆動音も低減することができる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、排塵モードの実行と冷却モードの実行とを背反的に反復して実行するように駆動状態切換手段(45)を制御する構成としたことから、ラジエータ(21)の冷却性能を維持しながら、作業時に濾過体(24)に付着する塵埃等を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のコンバインの右側面図である。
【図2】第1実施形態のコンバインの左側面図である。
【図3】第1実施形態のコンバインの平面図である。
【図4】第1実施形態のコンバインの背面図である。
【図5】第1実施形態のラジエータと排塵ファンの要部拡大右側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】第1実施形態のラジエータファンと排塵ファンの動力伝達図である。
【図8】第1実施形態のラジエータファンの動作説明図である。
【図9】第1実施形態の排塵ファンの動作説明図である。
【図10】第1実施形態のコンプレッサの動作説明図である。
【図11】第2実施形態のラジエータと排塵ファンの要部拡大右側面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】第3実施形態のラジエータと排塵ファンの要部拡大正面図である。
【図14】図12のA−A断面図である。
【図15】第1〜第3実施形態のエンジンルームの要部拡大右側面図である。
【図16】第1〜第3実施形態のエンジンルームの要部拡大平面図である。
【図17】第1〜第3実施形態のエンジンルームの要部拡大正面図である。
【図18】図16の拡大平面図である。
【図19】図17の拡大正面図である。
【図20】別実施形態のエンジンルームの要部拡大右側面図である。
【図21】第1吸気装置の平面図である。
【図22】第1吸気装置の右側面図である。
【図23】第2吸気装置の平面図である。
【図24】第2吸気装置の右側面図である。
【図25】第3吸気装置の平面図である。
【図26】第3吸気装置の右側面図である。
【図27】プレクリーナの正面図である。
【図28】図27のB−B断面図である。
【図29】図27のC−C断面図である。
【図30】第1〜第3実施形態のコントローラのブロック線図である。
【図31】第1〜第3実施形態のコントローラのフローチャートである。
【図32】第1〜第3実施形態のコンバインの動力図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の作業車輌の原動部構造の第1実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態は、作業車輌としてコンバインを例示してあるがコンバインに限定されるものではなく、トラクター、田植機等の農業用作業車輌にも適用できるものである。
【0028】
以下の説明において、コンバイン1の機体内側を「内側」、機体外側を「外側」といい、キャビン9内の操作席(図示省略)に着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0029】
「正転駆動状態」とは機体外側から機体内側に向かい外気を吸入するファンの回転方向をいい、「逆転駆動状態」とは機体内側から機体外側に向かい内気を送風するファンの回転方向をいい、「非駆動状態」とはファンが正転および逆転していないファンの休止状態をいうものとする。
【0030】
すなわち、後述するラジエータファン26における「正転駆動状態」とは、図6、図12、図14にS1で示すように、ラジエータカバー22の目抜き鉄板などからなる濾過体24を介して機体外側からラジエータ21に向かって外気を吸入し送風するラジエータファン26の回転方向をいう。また、図30で示すように、ラジエータファン26(電動モータ45)は、コントローラ84により正転駆動状態および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0031】
排塵ファン27における「逆転駆動状態」とは、図6、図12、図14にS2で示すように、ラジエータカバー22の濾過体24を介して機体内側から機体外側に向かって内気を排気し送風する排塵ファン27の回転方向をいう。また、図30で示すように、排塵ファン27は、コントローラ84により逆転駆動状態および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0032】
クーリングファン14における「正転駆動状態」とは、図16のS3で示すように、エンジンカバー15の目抜き鉄板などからなる外気濾過用の濾過体16を介して機体外側からエンジン11に向かって外気を吸入し送風するクーリングファン14の回転方向をいい、「逆転駆動状態」とは、図16にS4で示すように、エンジンカバー15の濾過体16を介して機体内側から機体外側に向かい内気を送風するクーリングファン14の回転方向をいう。また、クーリングファン14は、図30で示すように、コントローラ84により正転駆動状態、逆転駆動状態および非駆動状態の切換が行なわれる。
【0033】
図1〜図4には、本発明の原動部構造を有するコンバイン1が示されている。コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀および選別をする為の脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前側には刈取装置6が設けられ、刈取装置6の前側には穀稈掻込用のリール5が設けられている。
【0034】
リール5で掻き込まれた刈稈は刈取装置6に備えた刈刃(図示省略)で刈り取られ脱穀装置4に送られる。脱穀装置4で脱穀および選別された穀粒は脱穀装置4の右側に設けられたグレンタンク7に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒8により外部へ排出される。
【0035】
車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席を備えたキャビン9が設けられ、操作席の下方後側にはエンジンルーム10が設けられている。
図15〜図17に示すように、エンジンルーム10の後側にはコンバイン1の駆動源であるエンジン11設けられ、エンジン11の上方には、グレンタンク7に取付けられたエアクリーナ160が設けられている。
エンジン11の前側にはエンジン11の燃焼用の混合気を冷却するインタークーラ12、昇降用シリンダ及びミッション駆動用オイルを冷却するオイルクーラ57A,57B、エンジン11の冷却水が循環するラジエータ21が、ラジエータカバー22の内側に順に配置されている。
インタークーラ12はエンジン11の吸気経路であるマニホールド13に接続されており、オイルクーラ57A,57Bはオイルタンク89の供給口に接続されている。
なお、保守・点検作業を容易にするため、一対の小型機種のインタークーラ12を、後述する排塵ファン27の回転軸27Aを挟んで左右両側又は上下両側に配置することができ、オイルクーラ57A,57Bも同様に後述する排塵ファン27の回転軸27Aを挟んで左右両側又は上下両側に配置することができる。
エンジンルーム10の外側後方には、燃料タンク157が配置され、燃料タンク157とエンジン11は、燃料中の不純物を除去する燃料フィルタ156と、エンジン11に燃料を供給する燃料ポンプ155とを介し接続されている。なお、エンジン11で燃焼された燃料は排気配管170及びマフラ171を通過しコンバイン1の外側に排気される。
【0036】
エンジン11とエンジンカバー15との間には、正逆転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のクーリングファン14が設けられている。クーリングファン14はクーリングファン用羽根14Bとクーリングファン用羽根14Bの基部を支持するクーリングファン用中心部14Cとにより構成され、クーリングファン用中心部14Cはクーリングファン用モータ14Aの回転軸に軸支されている。なお、クーリングファン用モータ14Aは支持部材18により支持され、車台2に取付けられている。
【0037】
エンジン11の駆動時にあっては、エンジン11を冷却するため、クーリングファン14は正転し、エンジンカバー15の濾過体16を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。一方、後述する排塵ファン27の逆転時には、エンジンカバー15の濾過体16に付着した藁屑、塵埃等を除去するため、クーリングファン14は逆転し、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
【0038】
保守、点検作業時の安全を高めるため、クーリングファン14とエンジンカバー15との間には、クーリングファン14の外周を囲む濾過目合いの小さい保護カバー94が設けられ、保護カバー94はエンジンリアフレーム91と操作フレーム92とに脱着自在に取付けられている。また、保護カバー94の内側には、金属繊維を編体にした保護ネット97が設けられ、保護ネット97は、エンジンリアフレーム91と操作フレーム92とに両端部が固定された上部補強フレーム98と下部補強フレーム99とに脱着自在に取付けられている。さらに、保守、点検作業時の安全を高めるため、エンジン各部の潤滑用オイルの油量低下や劣化を調べるオイルレベルゲージの把持部(図示省略)を保護カバー94の上方に臨む位置に設けている。
【0039】
エンジン11の発熱部を効率的に冷却するため、エンジン11の外周部には、クーリングファン14により吸入された外気をエンジン11の外周部に導く薄板状の鋼板により成形された導風体(シュラウド)150が一定の間隔を空けて取付けられている。
導風体(シュラウド)150は、エンジン11とグレンタンク7を区画するエンジン11の上方に配置された上方導風体150Aと、エンジン11とグレンタンク7を区画するエンジン11の後側に配置された後側導風体150Bと、エンジン11とラジエータ21等を区画するエンジン11の前側に配置された前側導風体150Cとにより構成され、上方導風体150Aの前後側部に設けられたブラケットによりそれぞれエンジンルーム10の前後フレームに取付けられている。
後側導風体150Bは、上方導風体150Aの後側端部からクーリングファン14の中心部に対向する位置まで下方に延在し、前側導風体150Cは、上方導風体150Aの前側端部からクーリングファン14の中心部に対向する位置まで下方に延在している。
【0040】
クーリングファン14により吸入された外気の一部は、エンジン11の発熱部を冷却した後、エンジン11の上方に張り出したグレンタンク7と脱穀機4の隙間を通過してコンバイン1の外側に放出される。
また、クーリングファン14により吸入された外気の一部は、後側導風体150Bの下方を通りエンジンルーム10の外側後方に向かって送風され、燃料ポンプ155、燃料フィルタ156及び燃料タンク157を冷却した後、コンバイン1の外側に放出される。その結果、エンジン11に供給される燃料の温度は低下し、エンジン11の出力の安定性を高めることができる。
さらに、クーリングファン14により吸入された外気の一部は、前側導風体150Cの下方を通りエンジンルーム10の前側に向かって送風され、インタークーラ12、オイルクーラ57A,57B及びラジエータ21を冷却した後、コンバイン1の外側に放出される。その結果、インタークーラ12、オイルクーラ57A,57B及びラジエータ21の冷却効果が高まり、エンジン11のオーバヒートを抑制することができる。
【0041】
図18、図19に示すように、エアクリーナ160のエア排出口162とエンジン11のエア取込口165は、ターボ164を介してエアクリーナ配管163で接続されている。
エア挿入口161及びエア排出口162をエンジンカバー15とは反対側に位置させエアクリーナ160をグレンタンク7に取付け、エアクリーナ配管163の曲率半径R1を190〜210mm、曲率半径R2を170〜190mmに設定することにより、最短長さのエアクリーナ配管163によりエアクリーナ160のエア排出口162とエンジン11のエア取込口165を接続することができる。
【0042】
図20に示すように、エンジンルーム10の前側には、ラジエータカバー22の内側に外側から内側に向かいエンジン11の燃焼用の混合気を冷却するインタークーラ12、昇降用シリンダ駆動用オイルを冷却するオイルクーラ57A、ミッション潤滑用オイルを冷却するオイルクーラ57B及びエンジン11の冷却水が循環するラジエータ21が一定の間隔を空けて設けられ、オイルクーラ57Aはオイルクーラ57Bの上方に一定の間隔を空けて設けられている。
後述するラジエータファン26の正転時に、インタークーラ12の冷却効率を高めるため、インタークーラ12のインタークーラ配管31Aを上方に向かい真っ直ぐに配置している。
【0043】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第1実施形態について説明する。
【0044】
図5、図6に示すように、第1実施形態は、排塵ファン27の回転軸27Aを挟んで後側と前側にそれぞれ小型ラジエータ21A,21Aが配置され、ラジエータカバー22の濾過体24と小型ラジエータ21A,21Aの間に逆転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられ、小型ラジエータ21A,21Aの内側に正転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26が設けられている。
なお、第1実施形態にあっては、部品の共有化を図るため同一容量の小型ラジエータ21A,21Aを用いているが、後側と前側にそれぞれ異なる容量の小型ラジエータを配置することもできる。
【0045】
排塵ファン27の回転軸27Aの前側に配置された小型ラジエータ21Aの前側側面には取付けピン29Rが固定されている。取付けピン29Rは車台2に取付けられた縦軸25Rに軸支され、縦軸25Rを中心に反時計方向に回転する。一方、排塵ファン27の回転軸27Aの後側に配置された小型ラジエータ21Aの後側側面には取付けピン29Lが固定されている。取付けピン29Lは車台2に取付けられた縦軸25Lに軸支され、縦軸25Rを中心に時計方向に回転する。よって、小型ラジエータ21A,21Aの機体内側に配置されたラジエータファン26等の保守・点検時には、小型ラジエータ21A,21Aを機体外側に向かって前後側に観音開きすることにより保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0046】
それぞれ小型ラジエータ21Aの上面には注水口23が設けられ、ラジエータ用配管(図示省略)によりエンジン11に接属されている。エンジン11の冷却水は、注水口23から小型ラジエータ21Aに注入され、ラジエータファン26により吸入された外気により冷却される小型ラジエータ21Aの冷却パス(図示省略)の循環した後、再び注水口23から注出しエンジン11に循環される。
【0047】
排塵ファン27は、排塵用羽根27Bと排塵用羽根27Bの基部を支持する排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cはラジエータファン26の筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aの内側を貫通する回転軸27Aに軸支されている。また、排塵ファン27は、取付けナットにより回転軸27Aに着脱自在とされている。なお、排塵ファン27の有効外径はラジエータファン26の有効外径と同じであるが、図20に示すように、排塵ファン27の有効外径はラジエータファン26の有効外径よりも小さくすることができる。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用羽根26Bの基部を支持するラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aに軸支されている。
【0048】
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転駆動し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及び作動プーリ64を介し伝動され逆転駆動する。また、ラジエータファン26が軸支された筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aと排塵ファン27が軸支された排塵用回転軸27Aは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。即ち、筒状のラジエータ用回転軸26Aの内部に排塵用回転軸27Aを回転自在に挿通して二重軸状に形成している。これによって、ラジエータファン26及び排塵ファン27の支持構造および伝動構造が簡素化されてコンパクトに配置することができ、ラジエータファン26よる吸入風や排塵ファン27による排塵風の通風抵抗になりにくく、ラジエータ26による冷却効率および排塵ファン27による塵埃除去効率を高めることができる。
【0049】
ラジエータファン26による外気の吸入により小型ラジエータ21A,21Aを効率的に冷却するため、ラジエータファン26のラジエータ用羽根26Bの外周部位を小型ラジエータ21A,21Aの内側面の外周部位に取付けられた第1シュラウド(図示省略)により囲むことができる。
第1シュラウドの形状は、ラジエータファン26の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ラジエータファン26による外気の吸入の抵抗を小さくするため、第1シュラウドは薄板状の鋼板により成形加工する。
【0050】
また、排塵ファン27の内部から外側への送風によりラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等を効率的に除去するため、排塵ファン27の排塵用羽根27Bの外周部位をラジエータ21の外側面に取付けられた第2シュラウド(図示省略)により囲むことができる。
第2シュラウドの形状は、排塵ファン27の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ラジエータファン26による外気の吸入の抵抗を小さくするため、第2シュラウドは薄板状の鋼板により成形加工する。
【0051】
図7に示すように、エンジン11のクランク軸31Aの回転をラジエータファン26に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Cに対向する位置に設けられたラジエータ用回転軸26Aに軸支されラジエータ用回転軸26Aと一体となって回転するプーリ62には、それぞれベルト35,72がベルト掛けされている。なお、クラッチ部材38は、コントローラ84により作動状態の切換が行なわれる。
【0052】
エンジン11のクランク軸31Aの回転を排塵ファン27に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられたギアボックス64の中間軸65Aに軸支され中間軸65Aと一体となって回転するプーリ64Aと、ギアボックス64の中間軸65Bに軸支され中間軸65Bと一体となって回転するプーリ64Bに対向する位置に設けられた排塵用回転軸27Aに軸支され排塵用回転軸27Aと一体となって回転するプーリ63には、それぞれベルト35,71,73がベルト掛けされている。
ギアボックス64は、入力側の中間軸65Aに軸支されたギア64Cと出力側の中間軸65Bに軸支されたギア64Dとが噛合い、例えば、入力側のプーリ64Aが時計方向に回転する場合、出力側のプーリ64Bは反時計方向に回転する。
なお、ギア64Cと中間軸65A及びギア64Dと中間軸65Bは一体に形成することもできる。また、排塵ファン27に換え、反対方向に傾斜した排塵羽根27Bを有する排塵ファン27を用いた場合、ギアボックス64を介在させる必要はなく部品点数を削減することができる。
【0053】
エンジン11のクランク軸31Aの回転をコンプレッサ66に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Aと、中間軸33Eに軸支され中間軸33Eと一体となって回転するプーリ33Bと、プーリ33Bに対向する位置に設けられた入力軸66Aに軸支され入力軸65Aと一体となって回転するプーリ67には、それぞれベルト35,71,がベルト掛けされている。
【0054】
図8に示すように、ラジエータファン26を正転駆動状態にし、排塵ファン27を非駆動状態にする場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72に押圧しベルト72を緊張させ、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ62が軸支された回転軸26Aに伝動する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73から離間させベルト73のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ63が軸支された回転軸27Aへの伝動を遮断する。
【0055】
アーム42は、電動モータ(駆動状態切換手段)45で回動される円板46により直動される圧縮スプリングを有する連動リンク74により時計方向または反時計方向に回転され、アーム42Aは、アーム42を回転させる同一の電動モータ45で回動される円板46により直動される圧縮スプリングを有する連動リンク74Aにより時計方向または反時計方向に回転される。
なお、電動モータ45は後述するコントローラ84により制御されており、脱穀装置4を起動する作業クラッチ(脱穀クラッチ)104または刈取装置6を起動する作業クラッチ(刈取クラッチ)115が入力されていない場合、操作者が誤って電動モータ45の駆動入力操作をしても電動モータ45は作動しない。また、ラジエータファン26の慣性による正転、排塵ファン27の慣性による逆転を強制的に停止するため、アーム42,42Aにそれぞれブレーキ板(図示省略)を設けることができる。
【0056】
図9に示すように、ラジエータファン26を非駆動状態にし、排塵ファン27を正転駆動状態にする場合、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を反時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33Cとプーリ62にベルト掛けされたベルト72から離間させベルト72のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ62が軸支された回転軸26Aへの伝動を遮断する。
一方、回転軸41Aに軸支され回転軸41Aを中心に回転するアーム42Aを反時計方向に回転させ、アーム42Aの先端部に設けられたテンションローラ37Aをプーリ64Bとプーリ63にベルト掛けされたベルト73に押圧しベルト73緊張させ、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ63が軸支された回転軸27Aに伝動する。
【0057】
ラジエータファン26の正転駆動状態/非駆動状態の切換えをラジエータファン26が軸支された回転軸26Aのプーリ62と中間軸に軸支されたプーリ33Cとに掛け回されているベルト72のテンションで行なうことから、ラジエータファン26の正転駆動状態/非駆動状態の切換えを短時間で行なうことができる。
排塵ファン27の逆転駆動状態/非駆動状態の切換えを排塵ファン27が軸支された回転軸27Aのプーリ63と別の中間軸に軸支されたプーリ64Bとに軸架されているベルト73のテンションで行なうことから、排塵ファン27の逆転駆動状態/非駆動状態の切換えを短時間で行なうことができる。
また、ラジエータファン26の正転駆動状態/非駆動状態を切換えるアーム42および排塵ファン27の逆転駆動状態/非駆動状態の切換えるアーム42Aが一つの電動モータ45により行なわれていることから、切換え構造を簡易にでき信頼性が高まる。
【0058】
図10に示すように、コンプレッサ66はエンジン11からの駆動力により駆動されるプーリ33Bと、ギアボックス64のプーリ64Aとコンプレッサ66に駆動力を入力するプーリ67とに掛け回したベルト71を緊張状態に保つテンションローラ37Bによって常時駆動する。
なお、以下のようにコンプレッサ66の作動を任意に停止する構成としても良い。コンプレッサ66を作動させる場合、回転軸41Bに軸支され回転軸41Bを中心に回転するアーム42Bを時計方向に回転させ、アーム42Bの先端部に設けられたテンションローラ37Bをプーリ33Bとプーリ67にベルト掛けされたベルト71に押圧しベルト71のテンションを強め、エンジン11のクランク軸31Aの回転をプーリ67が軸支された入力軸66Aに伝動する。
一方、コンプレッサ66を停止させる場合、テンションローラ37Bをプーリ33Bとプーリ67にベルト掛けされたベルト71から離間させベルト71のテンションを弱め、エンジン11のクランク軸31Aの回転のプーリ67が軸支された入力軸66Aへの伝動を遮断する。
【0059】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0060】
図11、図12に示すように、第2実施形態は、排塵ファン27の回転軸27Aを挟んで上方と下方にそれぞれ小型ラジエータ21B,21Bが配置され、ラジエータカバー22の濾過体24と小型ラジエータ21B,21Bの間に逆転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられ、小型ラジエータ21B,21Bの内側に正転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26が設けられている。
なお、第2実施形態にあっては、部品の共有化を図るため同一容量の小型ラジエータ21B,21Bを用いているが、上方と下方にそれぞれ異なる容量の小型ラジエータを配置することもできる。
【0061】
排塵ファン27の回転軸27Aの上方に配置された小型ラジエータ21Bの上方側面には取付けピン29Uが固定されている。取付けピン29Uは車台2に取付けられた横軸25Uに軸支され、横軸25Uを中心に上方方向に回転する。一方、排塵ファン27の回転軸27Aの下方に配置された小型ラジエータ21Bの下方側面には取付けピン29Sが固定されている。取付けピン29Sは車台2に取付けられた横軸25Sに軸支され、横軸25Sを中心に下方方向に回転する。よって、小型ラジエータ21B,21Bの機体内側に配置されたラジエータファン26、電動モータ45等の保守・点検時には、小型ラジエータ21B,21Bを機体外側に向かって上下方向に観音開きすることにより保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0062】
それぞれ小型ラジエータ21Bの上面右側部には注水口23が設けられ、ラジエータ用配管(図示省略)によりエンジン11に接属されている。エンジン11の冷却水は、注水口23から小型ラジエータ21Bに注入され、ラジエータファン26により吸入された外気により冷却される小型ラジエータ21Bの冷却パス(図示省略)の循環した後、再び注水口23から注出しエンジン11に循環される。
【0063】
排塵ファン27は排塵用羽根27Bと排塵用羽根27Bの基部を支持する排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cはラジエータファン26の筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aの内側を貫通する回転軸27Aに軸支されている。また、排塵ファン27は、取付けナットにより回転軸27Aに着脱自在とされている。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用羽根26Bの基部を支持するラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aに軸支されている。
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転駆動し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及び作動プーリ64を介し伝動され逆転駆動する。また、ラジエータファン26が軸支された筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aと排塵ファン27が軸支された排塵用回転軸27Aは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。
【0064】
次に、本発明の作業車輌の原動部構造の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0065】
図13、図14に示すように、第3実施形態は、排塵ファン27の回転軸27Aがラジエータ21Cの冷却パス20Aの間に形成された貫通孔20Bの内部を貫通して配置され、ラジエータカバー22の濾過体24とラジエータ21Cの間に逆転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な排塵ファン27が設けられ、ラジエータ21Cの内側に正転駆動状態と非駆動状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26が設けられている。
【0066】
排塵ファン27の回転軸27Aをラジエータ21Cの冷却パス20Aの間に形成された貫通孔20Bを貫通して配置することから、第1,2実施形態と異なりラジエータ21Cの使用数は1個となり、ラジエータ21Cとエンジン11を接続するラジエータ用配管(図示省略)の使用本数が少なく保守・点検作業を容易に行なうことができる。
【0067】
ラジエータ21Cの上面には注水口23が設けられ、ラジエータ用配管(図示省略)によりエンジン11に接属されている。エンジン11の冷却水は、注水口23からラジエータ21Cに注入され、ラジエータファン26により吸入された外気により冷却されるラジエータ21Cの冷却パス20Aの循環した後、再び注水口23から注出しエンジン11に循環される。
【0068】
排塵ファン27は排塵用羽根27Bと排塵用羽根27Bの基部を支持する排塵用中心部27Cとにより構成され、排塵用中心部27Cはラジエータファン26の筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aの内側を貫通する回転軸27Aに軸支されている。
ラジエータファン26はラジエータ用羽根26Bとラジエータ用羽根26Bの基部を支持するラジエータ用中心部26Cとにより構成され、ラジエータ用中心部26Cは、筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aに軸支されている。
ラジエータファン26はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,62を介し伝動され正転駆動し、排塵ファン27はエンジン11の出力軸であるクランク軸31Aの回転がプーリ31,33,63及び作動プーリ64を介し伝動され逆転駆動する。また、ラジエータファン26が軸支された筒状回転軸であるラジエータ用回転軸26Aと排塵ファン27が軸支された排塵用回転軸27Aは、相互にベアリング61を介し同一軸心上に設けられている。
【0069】
次に、第1〜第3実施形態のエアクリーナ160のエア挿入口161に接続される吸気装置について説明する。
【0070】
(第1吸気装置)
図21、図22に示すように、エアクリーナ160のエア挿入口161に接続される第1吸気装置19Aは、外気に含まれる粉塵等を除去するプレクリーナ17と、プレクリーナ17の下側に取付けられた金属繊維を編体にした防塵ネット140と、プレクリーナ17の下方部に接続された吸気配管143と、グレンタンク7に固定する吸気配管143の中間部に設けられたブラケット144により構成されている。
【0071】
プレクリーナ17は、図27〜図29に示すように、集塵室148が形成された上部ケース145と、下部ケース146と、上部ケース145に軸支された回転羽根147により構成されている。上部ケース145と下部ケース146の隙間から外気を吸入し、回転羽根147を一定の速度で回転させ吸引した外気を渦流状態にし、外気に含まれる粉塵等を集塵室148の内方に形成された集塵口149から集塵室148に集塵し、外気に含まれる粉塵等を除去する。なお、粉塵等が除去された外気は、下部ケース146及び吸気配管143を通り、エアクリーナ160に送風される。
【0072】
防塵ネット140は、下部ケース146に取付けられ、プレクリーナ17の上部ケース145と下部ケース146の隙間を覆い、外気に含まれる大きな藁屑、塵埃等を除去し、プレクリーナ17の排塵効率を高める。
【0073】
(第2吸気装置)
図23、図24に示すように、エアクリーナ160のエア挿入口161に接続される第2吸気装置19Bは、外気に含まれる粉塵等を除去するプレクリーナ17と、プレクリーナ17の下方部に接続された吸気配管143と、吸気配管143の上部に取付けられた鋼板の遮風板141Aと、グレンタンク7に固定する吸気配管143の中間部に設けられたブラケット144により構成されている。
遮風板141Aは、吸気配管143の上部に取付けられ、プレクリーナ17の上部ケース145と下部ケース146の隙間を覆い、エンジン11の発熱部等で加熱され、グレンタンク7と脱穀機4の隙間を上昇する高温空気Fのプレクリーナ17への吸入を遮断し、プレクリーナ17及びエアクリーナ160に吸入される外気の吸入温度の上昇を抑制する。なお、第2吸気装置19Bに前述した防塵ネット140を取付けた場合、外気に含まれる大きな藁屑、塵埃等を除去することができ好適である。
【0074】
(第3吸気装置)
図25、図26に示すように、エアクリーナ160のエア挿入口161に接続される第2吸気装置19Cは、外気に含まれる粉塵等を除去するプレクリーナ17と、プレクリーナ17の下方部に接続された吸気配管143と、吸気配管143の上部に傾斜して取付けられた鋼板の遮風板141Bと、グレンタンク7に固定する吸気配管143の中間部に設けられたブラケット144により構成されている。
遮風板141Bは、吸気配管143の上部に前側部より後側部が高くなるように傾斜角度30度で取付けられ、プレクリーナ17の上部ケース145と下部ケース146の隙間を覆い、エンジン11の発熱部等で加熱され、グレンタンク7と脱穀機4の隙間を上昇する高温空気Fの遮断し、プレクリーナ17及びエアクリーナ160に吸入される外気の吸入温度の上昇を抑制する。また、コンバイン1の前側進行時には、高温空気Fは後側に送風され、プレクリーナ17及びエアクリーナ160に吸入される外気の吸入温度の上昇を更に抑制する。なお、第2吸気装置19Cに前述した防塵ネット140を取付けた場合、外気に含まれる大きな藁屑、塵埃等を除去することができ好適である。
【0075】
次に、第1〜第3実施形態の制御装置について説明する。
【0076】
図30に示すように、コントローラ84には、作業クラッチ(脱穀クラッチ)104の接続状態を検出する脱穀クラッチセンサ104a,104bと、作業クラッチ(刈取クラッチ)115の接続状態を検出する刈取クラッチセンサ115aを入力する。コントローラ84の出力側には電動モータ45を接続している。
手動操作によってラジエータファン26と排塵ファン27を冷却モードから排塵モードに切替えるキャビン9内に逆転スイッチを設けてもよい。
なお、脱穀クラッチ104は扱胴106等の脱穀部のクラッチ104Aと唐箕123等の選別部のクラッチ104Bとからなり、脱穀クラッチセンサ104a,104bは脱穀クラッチ104A,104Bが接続状態となることで夫々ONするように構成し、刈取クラッチセンサ115aは刈取クラッチ115が接続状態となることでONするように構成している。
【0077】
図31に示すように、脱穀クラッチセンサ104a,104bの入力状態を判断し、脱穀クラッチセンサ104a,104bが共にON状態である場合には、刈取クラッチセンサ115aの入力状態を判断する。一方、脱穀クラッチセンサ104a,104bのいずれか一方または両方がOFF状態である場合には、電動モータ45を正転側に駆動しラジエータファン26を正転駆動状態にし、排塵ファン27を非駆動状態にする。
次に、刈取クラッチセンサ115aの入力状態を判断し、刈取クラッチセンサ115aがON状態である場合には、排塵モードと冷却モードを反復して実行する反復モードを開始する。一方、脱穀クラッチセンサ104a,104bと刈取クラッチセンサ115aがいずれもOFF状態である場合には、電動モータ45を正転側に駆動しラジエータファン26を正転駆動状態にし、排塵ファン27を非駆動状態にする。
なお、排塵モード及び冷却モードの設定時間は、コンバインの使用環境等により任意に設定できる。
【0078】
次に、第1〜第3実施形態の動力系について説明する。
【0079】
図32に示すように、エンジン11の動力はプーリ31,プーリ103を介し作業クラッチ104、ギアボックス105、扱胴106に伝動され扱胴106を回転させる。また、ベルト109を介しコンベア111、オプションであるスプレッタ110またはセカンドモア112に伝動される。なお、スプレッタ110とセカンドモア112とはいずれか一方を選択し使用する。
【0080】
エンジン11の動力はプーリ31,プーリ33を介しラジエータファン26、コンプレッサ66に伝動され、ラジエータファン26、コンプレッサ66を稼働させる。また、プーリ33に伝動された動力は、中間軸107、ベルト108、プーリ101Aを介しランスミッション101、HST102に伝動され、さらに、中間軸107、プーリ113を介しギアボックス114に伝動される。
【0081】
ギアボックス114に伝動された動力は、作業クラッチ115を介しフィーダチェン116、オーガドラム117、刈刃118、リール119に伝動され、オーガドラム117、刈刃118、リール119を回転させる。また、ギアボックス114に伝動された動力は、該ギアボックス114に内蔵されたクラッチ104Bを介し、ギアボックス114に軸支された選別駆動別の軸121によってプレファン122、塵埃ファン123、1番コンベア124、2番コンベア125、セカンドファン126に伝動され、1番コンベア124、2番コンベア125を稼働させる。
【0082】
1番コンベア124に伝動された動力は、パケット下軸131を介しレベリング軸132に伝動され、2番コンベア125に伝動された動力は、2番コンベア軸127を介し2番縦コンベア128、2番上コンベア129に伝動され、2番縦コンベア128、2番上コンベア129を稼働させる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 コンバイン
2 車台
10 エンジンルーム
11 エンジン
12 インタークーラ
14 クーリングファン
19A 吸気装置
20A 冷却パス(配管)
20B 貫通孔
21 ラジエータ
22 ラジエータカバー
24 濾過体
25R 縦軸
25L 縦軸
25U 横軸
25S 横軸
26 ラジエータファン
26A ラジエータ用回転軸(筒状回転軸)
27 排塵ファン
27A 排塵用回転軸
27B 排塵用羽根
27C 排塵用中心部
29R 取付けピン
29L 取付けピン
29U 取付けピン
29S 取付けピン
45 駆動状態切換手段(電動モータ)
57A オイルクーラ
57B オイルクーラ
62 プーリ
63 プーリ
104 作業クラッチ(脱穀クラッチ)
115 作業クラッチ(刈取クラッチ)
150 導風体(シュラウド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、該ラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(24)を備え、
該濾過体(24)とラジエータ(21)の間に排気用の排塵ファン(27)を配置すると共に、前記ラジエータ(21)の機体内側には外気吸入用のラジエータファン(26)を配置し、
該ラジエータ(21)の機体外側に配置される排塵ファン(27)とラジエータ(21)の機体内側に配置されるラジエータファン(26)とを同一軸心上に設けたことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記ラジエータファン(26)と排塵ファン(27)とを駆動状態と非駆動状態とに互いに背反的に切換える駆動状態切換手段(45)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、該ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで両側に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、
前記各ラジエータの端部に配置した縦軸(25R、25L)を中心に、該各ラジエータを機体外側に向けて観音開きする構成としたことを特徴とする請求項3記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
前記ラジエータ(21)を複数のラジエータで構成し、該ラジエータを排塵ファン(27)の回転軸(27A)を挟んで上下両側に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
前記排塵ファン(27)の羽根(27B)の基部を支持する中心部(27C)を回転軸(27A)に着脱自在な構成とし、
前記各ラジエータの端部に配置した横軸(25U、25S)を中心に、該各ラジエータを機体外側に向けて上下に観音開きする構成としたことを特徴とする請求項5記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項7】
前記ラジエータ(21)の中心部に貫通孔(20B)を形成し、前記排塵ファン(27)の回転軸(27A)を該貫通孔(20B)に貫通させて配置したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項8】
前記ラジエータファン(26)を支持する筒状回転軸(26A)内を貫通して排塵ファン(27)の回転軸(27A)を設け、排塵ファン(27)及びラジエータファン(26)をエンジン(11)の出力により駆動する構成としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項9】
機体に備えた作業部を駆動する作業クラッチ(104,115)が接続された後に前記駆動状態切換手段(45)が切換作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項10】
機体に備えた作業部を駆動する作業クラッチ(104,115)が接続された場合に、ラジエータファン(26)を駆動状態から非駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を非駆動状態から駆動状態へ切り換える排塵モードを第1設定時間に亘り継続し、該第1設定時間経過後に、ラジエータファン(26)を非駆動状態から駆動状態へ切り換えると共に排塵ファン(27)を駆動状態から非駆動状態へ切り換える冷却モードを第2設定時間に亘り継続し、以後、該排塵モードの実行と冷却モードの実行とを背反的に反復して実行するように前記駆動状態切換手段(45)を制御する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−92808(P2012−92808A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242684(P2010−242684)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】