説明

作業車

【課題】機体フレームの下方にクローラを掛け回した走行フレームを備え、この走行フレームをアクチュエータ及びリンク機構を介して上下揺動させることにより、クローラ走行装置のピッチング制御を可能にした作業車において、当該リンク機構の強度アップとコンパクト化を図る。
【解決手段】機体フレーム18の左右両側に横軸心回りに揺動する前後一対の支持アーム33,34と、両支持アーム33,34と共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アーム37,38とを設け、両支持アーム33,34を走行フレーム26L,26Rに枢支すると共に、両操作アーム37,38間で横軸心回りに揺動する中間アーム42を機体フレーム18に支持し、該機体フレーム18と中間アーム42とをローリング制御用のアクチュエータ43を介して連結する一方、中間アーム42と前後一方の操作アーム37とをピッチング制御用のアクチュエータ45を介して連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のクローラ走行装置を備えたコンバイン等の作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対のクローラ走行装置を備えるコンバインにおいては、機体フレームの左右両側に横軸心周りに上下揺動可能な前後一対の支持アームを設け、これらの支持アームをトラックフレームに枢支すると共に、両支持アームと共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アームとを設け、且つ前側の操作アームと機体フレームとをローリング制御用のアクチュエータを介して連結する一方、前側の操作アームと後側の操作アームとをピッチング制御用のアクチュエータを備えた連係リンクを介して連結することによって、クローラ走行装置の接地部を昇降可能に構成すると共に、機体前部のトランスミッションケースや刈取部を地面に接触させないようにしながら、機体の後下がりを修正できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、コンバインのグレンタンクに穀粒が貯留されて機体の重心位置が後方になった場合、特に湿田においては、機体後部が沈下するように傾斜して高刈りによる稈長の不揃いによって扱ぎ残しが発生する虞があり、このような機体の後方向の傾斜に対処するために、機体フレーム側に枢着した前後の揺動リンクを走行フレームに枢支すると共に、後側の揺動リンクを前側の揺動リンクよりも長く構成し、且つ両揺動リンクと一体に揺動する前後の揺動リンクアームの間に中間揺動リンクアームを設け、この中間揺動リンクアームと前後の揺動リンクアームとを連結ロッドを介して連結し、更に当該中間揺動リンクアームと前側の揺動リンクアームとを機体昇降用アクチュエータを介して連結することによって、機体フレームを上昇させる時の走行フレームの前後における上下移動量の差を利用して、機体の前後バランスを積極的に前バランスに保つことができるように構成したものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2567477号公報(第3頁、図1−図5)
【特許文献2】特許第3165694号公報(第3−4頁、図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に提案されているものは、機体フレームの左右両側の横軸心周りに上下揺動可能に支持されている前後一対の支持アームの支持間隔、即ち両支持アームと共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アームの間隔が長いので、両操作アーム間に介装するピッチング制御用のアクチュエータを備えた連係リンクの強度上の不安を有していた。
【0005】
また、特許文献2に提案されているものは、機体の前後バランスを前バランスに保つ方向にしか制御することができないので、ピッチング制御としては不十分なものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、機体フレームの下方にクローラを掛け回した左右一対の走行フレームを備え、且つ機体フレームに対して左右の走行フレームを独立して昇降させるローリング制御機構と、機体フレームに対して左右の走行フレームを同時に傾斜させるピッチング制御機構を設けた作業車において、前記機体フレームの左右両側に横軸心回りに揺動する前後一対の支持アームと、両支持アームと共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アームとを設け、両支持アームを走行フレームに枢支すると共に、両操作アーム間で横軸心回りに揺動する中間アームを機体フレームに支持し、該機体フレームと中間アームとをローリング制御用のアクチュエータを介して連結する一方、中間アームと前後一方の操作アームとをピッチング制御用のアクチュエータを介して連結し、更に当該中間アームと前後他方の操作アームとを連係リンクを介して連結したことを第1の特徴としている。
【0007】
そして、前記ローリング制御用のアクチュエータとピッチング制御用のアクチュエータとを平面視で重合させて配置したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、機体フレームの左右両側に横軸心回りに揺動する前後一対の支持アームと、両支持アームと共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アームとを設け、両支持アームを走行フレームに枢支すると共に、両操作アーム間で横軸心回りに揺動する中間アームを機体フレームに支持し、該機体フレームと中間アームとをローリング制御用のアクチュエータを介して連結する一方、中間アームと前後一方の操作アームとをピッチング制御用のアクチュエータを介して連結し、更に当該中間アームと前後他方の操作アームとを連係リンクを介して連結したことによって、機体フレームの左右両側に設ける前後一対の支持アームの支持間隔、即ち両支持アームと共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アームの間隔を短くすることができるので、両操作アーム間に介装するピッチング制御用のアクチュエータを備えたリンク系の強度上の不安を解消することができると共に、ローリング制御機構及びピッチング制御機構を構成する装置全体のコンパクト化が図れる。
【0009】
そして、請求項2の発明によれば、前記ローリング制御用のアクチュエータとピッチング制御用のアクチュエータとを平面視で重合させて配置したことによって、両アクチュエータを集中配置できるので、ローリング制御機構及びピッチング制御機構を構成する装置全体のメンテナンス性の向上とコンパクト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用される作業車の一例であるコンバイン10の側面図であって、該コンバイン10は、植立穀稈を刈取る前処理部11と、刈取った穀稈から穀粒を脱穀し、この穀粒を選別する脱穀装置12と、選別済みの穀粒を貯留する穀粒タンク13と、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部14と、オペレーターが着座する運転席と各種の操作具とを備える操縦部15と、この操縦部15を覆うキャビン16と、左右一対のクローラ走行装置17L,17Rを走行方向に沿わせて配設した機体フレーム18を有し、該機体フレーム18の前側中央には、トランスミッションケース19(図3参照)を配置すると共に、該トランスミッションケース19の左右両側に延出するパイプフレーム21の先端には、駆動スプロケット22を設けている。
【0011】
次に、クローラ走行装置17L,17Rについて説明する。クローラ走行装置17L,17Rは、図2及び図3に示すように、機体フレーム18の下方にクローラ23を掛け回すための複数の転輪24、及び誘導スプロケット25を支持した左右一対の走行フレーム26L,26Rを備えている。尚、クローラ走行装置17L,17Rは左右同一の構成であり、以下左側のクローラ走行装置17Lについて説明する。
【0012】
そして、機体フレーム18の左右両側の前側及び前後方向の略中間部には、前後一対の支持軸(横軸)31,32を回動自在に支持すると共に、両支持軸31,32の外側端に機体後向きの支持アーム33,34が固設してあって、この前側の支持アーム33の後端を走行フレーム26Lの前側に枢支する一方、後側の支持アーム34の後端を補助リンク35を介して走行フレーム26Lの略中間部に枢支している。尚、後側の支持アーム34は前側の支持アーム33よりもアーム長を長く設定してある。
【0013】
また、前記支持軸31,32の内側端には、機体上向きの操作アーム37,38が固設してあり、この前後一対の操作アーム37,38と支持アーム33,34とが共通の横軸心回りに一体揺動する構成になっている。
【0014】
そして、前記操作アーム37,38間において、支持軸(横軸)41、即ち横軸心回りに揺動する中間アーム42を機体フレーム18に支持すると共に、この機体フレーム18と中間アーム42の先端とをローリング制御用のアクチュエータ43を介して連結する一方、中間アーム42の中途部の前側と前後一方の操作アーム37の先端とをピッチング制御用のアクチュエータ45を介して連結し、更に当該中間アーム42の中途部の後側と前後他方の操作アーム38の先端とを連係リンク46を介して連結している。
【0015】
上述した構成によれば、機体フレーム18の左右両側に設ける前後一対の支持アーム33,34の支持間隔、即ち両支持アーム33,34と共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アーム37,38の間隔を短くすることが可能になり、両操作アーム37,38間に介装するピッチング制御用のアクチュエータ45を備えたリンク系の強度上の不安を解消することができると共に、ローリング制御機構及びピッチング制御機構を構成する装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0016】
更に、ローリング制御用のアクチュエータ43とピッチング制御用のアクチュエータ45とを平面視で重合させて配置したことによって、両アクチュエータ43,45を集中配置できるので、ローリング制御機構及びピッチング制御機構を構成する装置全体のメンテナンス性の向上とコンパクト化が図れる。
【0017】
以上説明したクローラ走行装置17L,17Rによって、例えば機体姿勢が前下がりになった時は、図4に示すように、ローリング制御用のアクチュエータ43を所定位置に固定した状態、即ち中間アーム42を固定した状態でピッチング制御用のアクチュエータ45をA矢印方向に縮作動させると、それに伴って前側の支持アーム33がB矢印方向に揺動し、次いで後側の支持アーム34と補助リンク35とを連結する連結軸51を回動支点点として走行フレーム26Lの前側を下方に揺動させることができ、これによって機体の前下がり姿勢を修正することができるようになっている。この時、補助リンク35は、支持アーム33のB矢印方向への揺動がスムーズに行われるように、機体フレーム18と走行フレーム26Lとを連結する前後の連結軸50,51間の距離変化を許容する融通機構として作用する。
【0018】
逆に、機体姿勢が後下がりになった時は、ローリング制御用のアクチュエータ43を所定位置に固定した状態で、ピッチング制御用のアクチュエータ45を伸作動させることによって、後側の支持アーム34と補助リンク35とを連結する連結軸51を基点として走行フレーム26Lの前側を上方に揺動させることができ、これによって機体の後下がり姿勢を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】クローラ走行装置の側面図。
【図3】クローラ走行装置の平面図。
【図4】機体の前下がり姿勢を修正した状態を示すクローラ走行装置の側面図。
【符号の説明】
【0020】
10 作業車(コンバイン)
18 機体フレーム
23 クローラ
26L 走行フレーム(左)
26R 走行フレーム(右)
33 支持アーム(前)
34 支持アーム(後)
37 操作アーム(前)
38 操作アーム(後)
42 中間アーム
43 ローリング制御用のアクチュエータ
45 ピッチング制御用のアクチュエータ
46 連係リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(18)の下方にクローラ(23)を掛け回した左右一対の走行フレーム(26L,26R)を備え、且つ機体フレーム(18)に対して左右の走行フレーム(26L,26R)を独立して昇降させるローリング制御機構と、機体フレーム(18)に対して左右の走行フレーム(26L,26R)を同時に傾斜させるピッチング制御機構を設けた作業車(10)において、前記機体フレーム(18)の左右両側に横軸心回りに揺動する前後一対の支持アーム(33,34)と、両支持アーム(33,34)と共通の横軸心回りに一体揺動する前後一対の操作アーム(37,38)とを設け、両支持アーム(33,34)を走行フレーム(26L,26R)に枢支すると共に、両操作アーム(37,38)間で横軸心回りに揺動する中間アーム(42)を機体フレーム(18)に支持し、該機体フレーム(18)と中間アーム(42)とをローリング制御用のアクチュエータ(43)を介して連結する一方、中間アーム(42)と前後一方の操作アーム(37)とをピッチング制御用のアクチュエータ(45)を介して連結し、更に当該中間アーム(42)と前後他方の操作アーム(38)とを連係リンク(46)を介して連結したことを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記ローリング制御用のアクチュエータ(43)とピッチング制御用のアクチュエータ(45)とを平面視で重合させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−96064(P2006−96064A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281247(P2004−281247)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】