説明

作物列検知装置、作物列追従装置および農業用作業機

【課題】 根菜類収穫機や除草機等の農業用作業機に対する作物列の位置ズレを高精度に検知できることはもとより、畝および作物列に対する追従性を向上させて接触アームに対する農業用作業機の振動やブレの影響を抑制することができ、なおかつ、農業用作業機の後退時に接触アームが畝に突き刺さって破損するのを防止することができる作物列検知装置、作物列追従装置および農業用作業機を提供する。
【解決手段】 作業機3に対し上下平行リンク機構41によって上下動自在に支持される上下動支持部材4と、この上下動支持部材4の下端部に揺動自在に軸支される揺動フレーム5と、固定ブラケット61、回動垂下ブラケット62および揺動ブラケット63から構成される左右平行リンク6と、各回動垂下ブラケットの下端部に固定される一対の接触アーム7,7と、これら接触アーム7,7の左右方向の変位を検出する左右変位センサ8とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根菜類等の農作物収穫機や除草機等の農業用作業機に対する作物列の位置ズレを検知する作物列検知装置、作物列追従装置および農業用作業機に関し、特に、畝および作物列に対する追従性および後退時の破損防止に好適な作物列検知装置、作物列追従装置およびこれらの装置を搭載した農業用作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビート等の根菜類を収穫する場合、図7に示すような根菜類収穫機11が使用されている。この根菜類収穫機11は、ヒッチ12を介してトラクタ(図示せず)に連結されているとともに、前記ヒッチ12と機体とが方向変換装置である油圧シリンダ13で連結されている。また、機体の下方には根菜類を掘り取るための堀取口14が設けられており、この堀取口14の前方に根菜類列を検知するセンサ15が設けられている。そして、このセンサ15が畝から露出した根菜類の頭部に接触して押動され、根菜類列に対する機体のズレを検知すると、油圧シリンダ13を伸縮させて機体の進行方向を変更し、堀取口14を根菜類列に位置合わせするようになっている。
【0003】
前述した根菜類列のセンサに関する技術として、例えば、特許第3564452号公報に記載のビートハーベスタのビート列感知装置が挙げられる(特許文献1)。このビート列感知装置では、センサ杆を枢着したスイッチボックス全体が平行リンクによって上下動自在に支持されている。そして、センサ杆がビートの側頭部に接触した場合には、リミットスイッチをONさせるとともに、センサ杆が畝に接地した場合には、接地抵抗でON位置に回動する前に地面からの負荷に反発して平行リンクを上方へ浮かせることによりリミットスイッチをOFF状態に維持して、畝との接触による誤作動を防止するものであるとされる。
【0004】
【特許文献1】特許第3564452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたビート列感知装置においては、センサ杆を畝に接地させない構成であるため不安定であり、根菜類収穫機の振動やブレがセンサ杆に伝わり、誤作動するおそれがある。その一方で、従来の接地式センサにおいては、畝に対する追従性能が悪いため接地抵抗によって誤作動し、誤って根菜類収穫機の進行方向を変更してしまうおそれがある。
【0006】
また、特許文献1においては、センサ杆が所定の下向傾斜角で進行方向に対して後方側に突出された構成である。このため、根菜類収穫機を後退させる場合、その先端部が畝に突き刺さり、後退の妨げになったり、センサ杆が変形・破損してしまうおそれがある。
【0007】
さらに、特許文献1で採用しているスイッチボックスは、単にON状態かOFF状態のいずれかしか検出しないため、根菜類列のズレ量に関わらず、油圧シリンダに同一の作動信号を出力している。このため、進行方向が変更される際の衝撃や振動が激しく、根菜類収穫機の操縦者にとっては不快であるし、必要以上に進行方向が変更されるため、摩耗や金属疲労によって根菜類収穫機とトラクタの連結部が破損し易くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、根菜類収穫機や除草機等の農業用作業機に対する作物列の位置ズレを高精度に検知できることはもとより、畝および作物列に対する追従性を向上させて接触アームに対する農業用作業機の振動やブレの影響を抑制することができ、なおかつ、農業用作業機の後退時に接触アームが畝に突き刺さって破損するのを防止することができる作物列検知装置、作物列追従装置および農業用作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る作物列検知装置の特徴は、農作物収穫機や除草機等の作業機の作物列に対する位置ズレを検知する作物列検知装置であって、前記作業機に対し上下平行リンク機構によって上下動自在に支持され、追従用付勢部材によって所定の高さ位置を保持するように上方向に付勢される上下動支持部材と、この上下動支持部材の下端部に揺動自在に軸支され、その一端部が安全用付勢部材によって上方に付勢されるとともに、他端部が下方に付勢される揺動フレームと、この揺動フレームの前記他端部に固定される固定ブラケット、この固定ブラケットの左右端部に垂下されて回動自在に軸支される一対の回動垂下ブラケット、およびこれら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットから構成される左右平行リンクと、前記各回動垂下ブラケットの下端部に固定されて作物列の両側に配置され、前記追従用付勢部材によって所定の接地圧を保持するように接地される一対の接触アームと、これら接触アームの左右方向の変位を検出する左右変位センサとを有している点にある。
【0010】
また、本発明において、前記回動ブラケットは、前記作業機の進行方向と略平行な回転軸回りに軸支されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、前記揺動ブラケットは、その左右方向の略中心位置に押動ピンを有しているとともに、この押動ピンの左右両側には、この押動ピンによって押し動かされる一対の押動ブラケットが前記固定ブラケットに回動自在に軸支されており、それら押動ブラケットには、前記押動ピンを初期位置に戻す方向に付勢する復帰用付勢部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る作物列追従装置の特徴は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の作物列検知装置を用いた作物列追従装置であって、前記作業機の進行方向を変更するとともに、その動作速度および動作量を無段階に調節可能な無段階アクチュエータと、前記左右変位センサの検出信号に基づいて前記接触アームの変位方向および変位量を取得し、その変位方向に基づいて前記作業機の修正方向を決定し、前記変位量の大きさに比例させて前記無段階アクチュエータの動作速度および動作量を無段階に制御する制御手段とを有している点にある。
【0013】
また、本発明に係る農業用作業機の特徴は、請求項4に記載の作物列追従装置を搭載し、前記接触アームの検出信号に基づき変位方向および変位量を取得し、前記変位方向に基づいてトラクタとの連結部分に設けた前記無段階アクチュエータの動作方向を決定するとともに、前記変位量の大きさに比例させて前記無段階アクチュエータの動作速度および動作量を無段階に制御して作物列との位置ズレを修正する点にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、農業用作業機に対する作物列の位置ズレを高精度に検知できることはもとより、畝および作物列に対する追従性を向上させて接触アームに対する農業用作業機の振動やブレの影響を抑制することができ、なおかつ、農業用作業機の後退時に接触アームが畝に突き刺さって破損等するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る作物列検知装置1、作物列追従装置2および農業用作業機3の一実施形態について根菜類収穫機3を例として図面を用いて説明する。なお、根菜類収穫機3の構成のうち、従来の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明に係る作物列検知装置1および作物列追従装置2を搭載した根菜類収穫機3の実施形態を示す側面図であり、図2から図4は、それぞれ本実施形態の作物列検知装置1の斜視図、正面図および側面図である。
【0017】
本実施形態の作物列検知装置1は、図1に示すように、根菜類収穫機3の進行方向において、堀取口14の前方に設けられている。そして、作物列検知装置1は、図2から図4に示すように、主として、根菜類収穫機3に対し上下動自在に支持される上下動支持部材4と、この上下動支持部材4の下端部に設けられる揺動フレーム5と、この揺動フレーム5の一端部に設けられる左右平行リンク6と、この左右平行リンク6に設けられる一対の接触アーム7,7と、これら接触アーム7,7の左右方向の変位を検出する左右変位センサ8とを有している。
【0018】
上下動支持部材4は、上下平行リンク機構41によって根菜類収穫機3に連結されており、略鉛直方向に沿った状態で上下動自在に設けられている。本実施形態において、上下平行リンク機構41は、上下方向に平行状態で設けられる一対のリンク部材42,42から構成されており、上下動支持部材4の左右両側に一対で設けられている。
【0019】
また、本実施形態では、引張バネからなる追従用付勢部材9の一端が、根菜類収穫機3の機体側に設けられた機体側掛止部材91に掛止されており、他端が上下動支持部材4に設けられた掛止穴43に掛止されている。機体側掛止部材91は、根菜類収穫機3に螺合する雄ネジ部92を有しており、機体に対する螺合位置を調節することで、追従用付勢部材9の張力を調節しうるようになっている。
【0020】
本実施形態において、追従用付勢部材9は、図2および図4に示すように、上下動支持部材4を最下位置からやや持ち上げた高さ位置で保持するとともに、後述する接触アーム7,7が所定の接地圧を保持するように、その張力が設定されている。このため、追従用付勢部材9は、上下動支持部材4およびこれに付属する各部材の自重による下向きの力を吸収して畝や作物列に対する追従性を向上させるとともに、上方向の衝撃を緩衝する役割を果たすようになっている。
【0021】
揺動フレーム5は、上下動支持部材4の下端部を平行に挟むように設けられた一対のフレーム部材51,51から構成されている。揺動フレーム5は、その略中央部が上下動支持部材4の下端部と回動軸52によって連通されており、当該回動軸52を中心に揺動するようになっている。また、本実施形態では、引張バネ等から構成される安全用付勢部材10の一端が上下動支持部材4に設けられた掛止穴44に掛止されており、他端が揺動フレーム5の一端部に設けられたフレーム側掛止部材101に掛止されている。
【0022】
フレーム側掛止部材101は、揺動フレーム5に螺合する雄ネジ部102を有しており、揺動フレーム5に対する螺合位置を調節することで、安全用付勢部材10の張力を調節しうるようになっている。また、本実施形態では、図2から図4に示すように、上下動支持部材4の下端部近傍に、揺動フレーム5に当接する位置規制部材53が固定されている。この位置規制部材53は、ボルトから構成されており、揺動フレーム5の一端部側の上縁部に当接するように設けられている。
【0023】
このため、本実施形態の揺動フレーム5は、通常状態においては、安全用付勢部材10と位置規制部材53によって、図4に示すような略水平状態に保持される。一方、根菜類収穫機3を後退させる場合等、各接触アーム7,7の先端部に畝からの荷重を受けると、他端部を回動軸52回りに上方に回動させ、各接触アーム7,7に過度の荷重がかかって破損するのを防止するようになっている。
【0024】
左右平行リンク6は、図3および図5に示すように、揺動フレーム5の他端部に固定される固定ブラケット61と、この固定ブラケット61の左右端部に垂下されて回動自在に軸支される一対の回動垂下ブラケット62,62と、これら回動垂下ブラケット62,62に軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケット63とから構成されている。そして、各回動垂下ブラケット62,62の下端部には、一対の接触アーム7,7の基端部がボルト等によって固定されている。
【0025】
したがって、一対の接触アーム7,7は、作物列や畝の両側に配置され、左右の回動垂下ブラケット62,62および揺動ブラケット63を介して一体的に左右方向に平行移動するようになっている。また、本実施形態において、回動垂下ブラケット62,62の回転軸64は、根菜類収穫機3の進行方向に沿って略水平に設けられている。このため、各接触アーム7,7は、畝との接触により前後方向の力を受けても左右方向に移動するのを抑制され、誤検出を防止するようになっている。また、一対の接触アーム7,7のうち一方が作物に当接して回動すると、作物に接触していない他方の接触アーム7,7も左右平行リンク6によって地面に突き刺さることなくスムーズに回動するようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、図5に示すように、揺動ブラケット63の左右方向の略中心位置に押動ピン65が突設されているとともに、この押動ピン65の左右両側に一対の押動ブラケット66,66が配置されている。これら押動ブラケット66,66は、左右対称な略くの字形状に形成されており、下方に延出された当接部66aを有している。これら当接部66aは、左右に揺動する揺動ブラケット63の押動ピン65によって押し動かされるようになっている。
【0027】
また、固定ブラケット61には、一対の押動ブラケット66,66を上下に重ねて回動自在に軸支する回動ピン67が突設されている。そして、この回動ピン67の下方位置には、押動ブラケット66,66の当接部66aに当接して各押動ブラケット66,66の回動範囲を規制するストッパーピン68が突設されている。また、各押動ブラケット66,66と固定ブラケット61とは、引張バネからなる復帰用付勢部材69により連結されており、常に押動ピン65を左右の中心位置である初期位置に戻す方向に当接部66aを付勢している。
【0028】
一対の接触アーム7,7は、左右対称に形成されており、図2から図4に示すように、左右の外側方向に屈曲された屈曲部71と、この屈曲部71から後方に延出された先端部72とを有している。屈曲部71は、その形状によって作物列や畝を誘い込みうるようになっている。また、先端部72は、やや上方に屈曲されており、先端部72を接地させたまま根菜類収穫機3を後退させた場合でも、畝に突き刺さり難くなっている。
【0029】
左右変位センサ8は、接触アーム7,7の変位を検出するものであり、アナログセンサやアブソリュート型ロータリーエンコーダ等から構成されている。本実施形態において、左右変位センサ8は、図3および図5に示すように、固定ブラケット61に対する各回動垂下ブラケット62,62の回転軸64のうち、いずれか一方の回転軸64に設けられている。そして、この回転軸64の回転量および回転方向に応じて位相の異なるパルスを発生させ、このパルス信号を後述する制御手段に出力するようになっている。
【0030】
なお、本実施形態では、図2から図4に示すように、上下動支持部材4の上下方向の変位を検出する上下変位センサ45が設けられている。この上下変位センサ45は、左右変位センサ8と同様、アナログセンサ等から構成されており、上下平行リンク機構41におけるリンク部材42と連動するように設けられている。そして、このリンク部材42の回転量に基づいて、上下動支持部材4の上下方向の変位を検出するようになっている。
【0031】
つぎに、以上のような本実施形態の作物列検知装置1を備えた作物列追従装置2および根菜類収穫機3の実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態の作物列追従装置2は、図1および図6に示すように、主として、根菜類収穫機3の進行方向を変更する無段階アクチュエータ21と、この無段階アクチュエータ21を制御する制御手段(図示せず)とを有している。なお、本実施形態において制御手段は根菜類収穫機3に搭載しているが、トラクタ側に搭載するようにしてもよい。
【0033】
無段階アクチュエータ21は、油圧シリンダ21aと油圧比例弁(図示せず)とから構成されており、その動作速度および動作量が無段階に調節しうるようになっている。本実施形態では、油圧シリンダ21aの基端部が根菜類収穫機3の機体側に連結されるとともに、伸縮する先端部がヒッチ12に連結され、作業機の進行方向を変更するように構成されている。なお、無段階アクチュエータ21を構成する油圧比例弁としては、高速応答弁やサーボバルブ等を使用してもよい。
【0034】
制御手段は、コンピュータ等から構成されており、左右変位センサ8の検出信号に基づいて無段階アクチュエータ21を制御するものである。本実施形態において、制御手段は、左右変位センサ8から取得した接触アーム7,7の変位方向に基づいて、根菜類収穫機3の進行方向を作物列に沿う方向に修正するように設定されている。具体的には、接触アーム7,7が左に変位した場合、根菜類収穫機3の進行方向を左方向に変更させ、接触アーム7,7が右に変位した場合、根菜類収穫機3の進行方向を右方向に変更させる。
【0035】
また、本実施形態において、制御手段は、左右変位センサ8から取得した接触アーム7,7の変位量に比例させて、無段階アクチュエータ21の動作速度および動作量を無段階に制御するように設定されている。具体的には、接触アーム7,7の変位量が大きい場合には、油圧シリンダ21aを高速度かつ大幅で伸縮させる。一方、変位量が小さい場合には、油圧シリンダ21aを低速度かつ小幅で伸縮させる。このため、段階的な制御によって生じる振動を防止することができる。なお、取得した変位量に対する油圧シリンダ21aの伸縮速度および伸縮量の関係は、予め制御手段に設定されている。
【0036】
さらに、本実施形態において、制御手段は、上下変位センサ45から取得した上下動支持部材4の変位量に基づいて、収穫作業時の適切な深さをモニターしうるようになっている。具体的には、接触アーム7,7が地面から離れている場合には、無段階アクチュエータ21による畦合わせ機能をオフするように設定されている。これにより、根菜類収穫機3を単に移動させる場合には、接触アーム7,7を地面から離すだけで、自動畦合わせ機能が停止するため、接触アーム7,7に作物等が接触しても誤作動することがない。
【0037】
つぎに、本実施形態における作物列検知装置1、作物列追従装置2および根菜類収穫機3による作用を説明する。
【0038】
まず、本実施形態の根菜類収穫機3によりビート等の収穫作業を行う場合、左右の接触アーム7,7が作物列の両側に位置するように根菜類収穫機3を配置する。これにより、機体の進行方向において、堀取口14が根菜類のほぼ後方に配置される。また、機体側掛止部材91およびフレーム側掛止部材101によって追従用付勢部材9および安全用付勢部材10の張力を調節し、各接触アーム7,7の先端部72が所定の接地圧を保持するように設定する。このため、各接触アーム7,7が安定し、根菜類収穫機3の振動やブレによって揺動することがなく、誤作動が防止される。
【0039】
つづいて、トラクタの走行を開始し、根菜類収穫機3を作物列に沿って牽引させる。このとき、その進行方向が作物列に沿っている場合には、各接触アーム7,7の先端部72が根菜類の頭部に接触することなく、その両側を通過する。このため、作物列検知装置1は作動せず、根菜類収穫機3はその進行方向を変更することなく直進し、根菜類を収穫する。
【0040】
また、上下動支持部材4が、上下平行リンク機構41を介して所定の高さ位置で上方に付勢されているため、凹凸やうねりの激しい地表面に対しても接触アーム7,7を滑らかに上下動させて追従性を向上させる。これにより、接地抵抗による変位を吸収して左右変位センサ8に伝達しないため、誤検知が防止されるようになっている。また、大きな石等に乗り上げて、各接触アーム7,7に急激な上向きの外力がかかっても、その衝撃を吸収して緩衝し、作物列検知装置1が破損してしまうのを防止する。
【0041】
一方、畝の曲折地点あるいは作物列のズレなどによって、作物列の向きが根菜類収穫機3の進行方向とずれた場合、左右の接触アーム7,7のいずれかが根菜類の頭部に接触する。例えば、図5に示すように、作物列が進行方向に対して左側にずれた場合、左側の接触アーム7の先端部72が根菜類の頭部に当接する。これにより、当該先端部72は左外側方向の押圧力を受けて左側の回動垂下ブラケット62を時計回りに回動させる。
【0042】
上記のように左側の回動垂下ブラケット62が回動されると、揺動ブラケット63を介して右側の回動垂下ブラケット62の回転軸64が回転する。これにより、左右変位センサ8が回転軸64の回転方向および回転量を各接触アーム7,7の変位として取得し、制御手段に出力する。また、このとき、左右平行リンク6が、各接触アーム7,7を地表面に沿うように略水平方向に移動させるため、各接触アーム7,7の先端部72が畝の中に刺さり込むのを防止する。
【0043】
左右変位センサ8からの検出信号を取得した制御手段は、当該検出信号に含まれる回転方向および回転量に応じて無段階アクチュエータ21を動作させ、根菜類収穫機3の進行方向を作物列に沿う方向に変更させる。具体的には、回動垂下ブラケット62,62が反時計回りに回動された場合、作物列が右方向にずれていること検知し、取得した回転量に応じた速度および角度で根菜類収穫機3を右方向へ方向変更する。同様に、回動垂下ブラケット62,62が時計回りに回動された場合、作物列が左方向にずれていること検知し、取得した回転量に応じた速度および角度で根菜類収穫機3を左方向へ方向変更する。
【0044】
これにより、根菜類収穫機3の進行方向が、自動的に作物列に位置合わせされるため、堀取口14によって根菜類を確実に掘り出せるようになっている。また、接触アーム7,7のズレ量に応じて無段階アクチュエータ21の動作速度および動作量を調節するため、根菜類収穫機3の方向変更動作が迅速かつ滑らかになり、操縦者に不快な衝撃や振動等を感じさせ難くなる。さらに、必要以上に進行方向を変更してしまうことがないため、根菜類収穫機3とトラクタの連結部における摩耗や金属疲労を最小限に抑制し、破損し難くさせる。
【0045】
また、本実施形態では、揺動ブラケット63が左右方向に平行移動すると、押動ピン65に押動された押動ブラケット66が復帰用付勢部材69のバネ力に対抗しつつ回動する。このため、復帰用付勢部材69の復元力により、揺動ブラケット63が迅速に初期位置に戻るようになっている。また、このとき、当接部66aの回動方向にストッパーピン68が設けられているため、押動ブラケット66の過回動が防止される。
【0046】
また、本実施形態のような作物列検知装置1を備えた根菜類収穫機3においては、根菜類収穫機3を後退させる場合、接触アーム7,7が畝などに突き刺さるのを防止するため、作物列検知装置1を上方に持ち上げておくのが好ましい。しかしながら、本実施形態では、操縦者のミスで作物列検知装置1を下方位置に残したまま後退させた場合でも、上述した接触アーム7,7の突き刺さりが防止される。
【0047】
具体的には、根菜類収穫機3を後退させ、各接触アーム7,7の先端部72が畝に突き刺さろうとした場合、上方に屈曲された先端部72に畝から上方向の外力が働く。この外力によって回動垂下ブラケット62,62の他端部が上方に回動するため、各接触アーム7,7の先端部72が畝に突き刺さるのを防止し、根菜類収穫機3の後退の妨げになったり、各接触アーム7,7が変形したり破損してしまうのを防止する。また、揺動フレーム5は、安全用付勢部材10および位置規制部材53によって初期位置に復帰するようになっている。
【0048】
以上のような本実施形態によれば、
1.上下平行リンク機構41と追従用付勢部材9によって上下方向の追従性を高めるとともに、左右平行リンク6と復帰用付勢部材69により左右方向の追従性も高められるため、誤作動を防止しつつ高精度に作物列を検知することができ、正確に作物列をトレースすることができる。
2.不用意に根菜類収穫機3を後退させても、接触アーム7,7が畝に突き刺さるのを防止し、根菜類収穫機3をスムーズに後退させるとともに、接触アーム7,7の変形や破損を防止することができる。
3.作物列のズレ量に応じて無段階アクチュエータ21の動作速度および動作量を無段階に調節できるため、円滑かつ高精度に根菜類収穫機3の進行方向を変更することができる等の効果を奏する。
【0049】
なお、本発明に係る作物列検知装置1、作物列追従装置2および農業用作業機3は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、本実施形態では、左右変位センサ8としてアナログセンサを使用しているが、これに限られるものではなく、高速な収穫作業を要求されない根菜類収穫機3においては、リミットスイッチ等のように単にON/OFF信号を出力するセンサを使用してもよい。
【0050】
また、上下変位センサ45により、各接触アーム7,7が地面に接触しているか否かを検出し、この検出結果に基づいて根菜類収穫機3のコンベア16を制御するようにしてもよい。具体的には、制御手段は、各接触アーム7,7が地面に接触している間は、根菜類収穫機3のコンベア16を作動させ、各接触アーム7,7が地面から離れたとき、コンベア16を停止させるように制御する。これにより、コンベア16の操作が簡素化される。
【0051】
また、本実施形態では根菜類収穫機3を例に説明したが、作物列検知装置1および作物列追従装置2は除草機などの農業用作業機3にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る作物列検知装置および作物列追従装置を搭載した農業用作業機の実施形態を示す側面図である。
【図2】本実施形態の作物列検知装置を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の作物列検知装置を示す正面図である。
【図4】本実施形態の作物列検知装置を示す側面図である。
【図5】本実施形態において、接触アームが進行方向に対して左側に移動した状態を示す図である。
【図6】本実施形態の農業用作業機を示す平面図である。
【図7】従来の根菜類収穫機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 作物列検知装置
2 作物列追従装置
3 農業用作業機(根菜類収穫機)
4 上下動支持部材
5 揺動フレーム
6 左右平行リンク
7 接触アーム
8 左右変位センサ
9 追従用付勢部材
10 安全用付勢部材
11 従来の根菜類収穫機
12 ヒッチ
13 油圧シリンダ
14 堀取口
15 センサ
16 コンベア
21 無段階アクチュエータ
21a 油圧シリンダ
41 上下平行リンク機構
42 リンク部材
43 掛止穴(追従用付勢部材用)
44 掛止穴(安全用付勢部材用)
45 上下変位センサ
51 フレーム部材
52 回動軸
53 位置規制部材
61 固定ブラケット
62 回動垂下ブラケット
63 揺動ブラケット
64 回転軸
65 押動ピン
66 押動ブラケット
66a 当接部
67 回動ピン
68 ストッパーピン
69 復帰用付勢部材
71 屈曲部
72 先端部
91 機体側掛止部材
92 雄ネジ部
101 フレーム側掛止部材
102 雄ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物収穫機や除草機等の作業機の作物列に対する位置ズレを検知する作物列検知装置であって、
前記作業機に対し上下平行リンク機構によって上下動自在に支持され、追従用付勢部材によって所定の高さ位置を保持するように上方向に付勢される上下動支持部材と、
この上下動支持部材の下端部に揺動自在に軸支され、その一端部が安全用付勢部材によって上方に付勢されるとともに、他端部が下方に付勢される揺動フレームと、
この揺動フレームの前記他端部に固定される固定ブラケット、この固定ブラケットの左右端部に垂下されて回動自在に軸支される一対の回動垂下ブラケット、およびこれら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットから構成される左右平行リンクと、
前記各回動垂下ブラケットの下端部に固定されて作物列の両側に配置され、前記追従用付勢部材によって所定の接地圧を保持するように接地される一対の接触アームと、
これら接触アームの左右方向の変位を検出する左右変位センサと
を有していることを特徴とする作物列検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回動ブラケットは、前記作業機の進行方向と略平行な回転軸回りに軸支されていることを特徴とする作物列検知装置。
【請求項3】
請求項1において、前記揺動ブラケットは、その左右方向の略中心位置に押動ピンを有しているとともに、この押動ピンの左右両側には、この押動ピンによって押し動かされる一対の押動ブラケットが前記固定ブラケットに回動自在に軸支されており、それら押動ブラケットには、前記押動ピンを初期位置に戻す方向に付勢する復帰用付勢部材が設けられていることを特徴とする作物列検知装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の作物列検知装置を用いた作物列追従装置であって、
前記作業機の進行方向を変更するとともに、その動作速度および動作量を無段階に調節可能な無段階アクチュエータと、
前記左右変位センサの検出信号に基づいて前記接触アームの変位方向および変位量を取得し、その変位方向に基づいて前記作業機の修正方向を決定し、前記変位量の大きさに比例させて前記無段階アクチュエータの動作速度および動作量を無段階に制御する制御手段と
を有していることを特徴とする作物列追従装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作物列追従装置を搭載し、前記接触アームの検出信号に基づき変位方向および変位量を取得し、前記変位方向に基づいてトラクタとの連結部分に設けた前記無段階アクチュエータの動作方向を決定するとともに、前記変位量の大きさに比例させて前記無段階アクチュエータの動作速度および動作量を無段階に制御して作物列との位置ズレを修正することを特徴とする農業用作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−319049(P2007−319049A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151132(P2006−151132)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】