説明

使い捨て着用物品

【課題】インジケータが吸液構造体へと移行するのを防止するとともに、体液が排泄された際には速やかにインジケータを変色させる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】
おむつ1は、内面シート11と、外面シート12と、これら内外面シート11,12の間に位置する吸液構造体20とを有する。第1外面シート13の吸液構造体20と対向する面には、インジケータ15が形成されている。インジケータ15は、熱溶融性のポリマーと、呈色反応を示す指示薬と、可塑化オイルとを含む。吸液構造体20は、吸液性の芯材21と、芯材21を覆う液拡散性の被覆シート22とを有する。芯材21の底面21bと、被覆シート22の底面領域24との間には、親水性の底面シート40が配置されている。底面シート40の横方向Xの長さ寸法W1は、インジケータ15が形成された領域15aの横方向Xの長さ寸法W2よりも大きく、芯材21のその寸法W3よりも小さくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、クロッチ域に水分または体液との接触によって呈色反応を示すインジケータを備えた使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域と、これら前後ウエスト域との間に位置するクロッチ域とを有し、クロッチ域に尿を検出するインジケータが形成された使い捨ておむつは公知である。例えば、特許文献1および2には、表裏面シートと、これら表裏面シート間に介在される吸収体とを有する使い捨ておむつが開示され、裏面シートの内側に変化剤を含むホットメルト組成物が塗布されて、インジケータが形成されている。裏面シートと吸収体との間には、液透過性のシートが配置され、これらシートによって、ホットメルト組成物の変化剤が吸収体の吸収性コアに移行するのを防止している。
【0003】
吸収性コアに変化剤が移行すると、吸収性コアに僅かに吸収された大気中の水蒸気で変化剤の色が変化する可能性があるが、これを防止することによって、特に着用前において、おむつのインジケータが変化するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−252659公報(JP 2007−252659 A)
【特許文献2】特開2004−337386公報(JP 2004−337386 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような特許文献1および2では、吸収体と裏面シートとの間に配置された液透過性のシートの横方向の長さ寸法は、吸収体のそれとほぼ等しくされている。したがって、表面シート側から排泄された尿は、吸収体および透液性のシートを透過してインジケータに到達する。透液性のシートを介して尿がインジケータに接触するので、その分、インジケータが変色するまでに時間を要し、排尿時の速やかな変色の妨げになる。
【0006】
この発明では、インジケータが吸液構造体へと移行するのを防止するとともに、体液が排泄された際には速やかにインジケータを変色させる使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側である非身体側と、前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記身体側に位置する透液性の内面シートと、前記非身体側に位置する不透液性の外面シートと、これら内外面シートの間に位置するとともに少なくとも前記クロッチ域に配置される吸液構造体とを含み、前記外面シートの前記吸液構造体に対向する面には、水分および体液の少なくともいずれかとの接触により呈色反応を示すインジケータが形成された使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0008】
この発明は、前記使い捨て着用物品において、前記吸液構造体は、吸液性の芯材と、前記芯材の前記身体側に位置する面および前記非身体側に位置する面を覆うとともに、前記芯材の前記横方向外側で連続される液拡散性の被覆シートとを有し、前記芯材の前記非身体側に位置する面と前記被覆シートとの間には、前記インジケータと対応する位置に親水性の繊維不織布によって形成される底面シートが配置され、前記底面シートの前記横方向の長さ寸法は、前記芯材のそれよりも小さくされ、前記インジケータは、熱溶融性のポリマーと呈色反応を示す指示薬と可塑化オイルとを含み、前記被覆シートに直接接触するとともに、前記被覆シートの前記オイルに対する吸収度が、前記底面シートのそれよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
この発明の実施態様のひとつとして、前記被覆シートのクレム吸水度が、前記底面シートのそれよりも大きい。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記底面シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向性を有し、前記底面シートの繊維配向性に沿って前記インジケータが形成された領域が延びる。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記被覆シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向性を有し、前記被覆シートおよび前記底面シートの繊維配向性が一致して積層される。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記芯材は、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含み、前記高吸収性ポリマー粒子の含有量は、前記芯材の全重量に対して35〜70重量%である。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記内面シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向を有する繊維不織布によって形成され、前記インジケータが形成された領域は、前記縦方向および前記横方向のいずれかに向かって延びるとともに、前記インジケータが形成された領域が延びる方向と前記内面シートの繊維配向とが一致する。
【発明の効果】
【0014】
この発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、内外面シートの間に吸液構造体が配置され、吸液構造体の芯材の底面とこれを覆う被覆シートとの間に、親水性の底面シートが配置される。外面シートには、インジケータが形成され、インジケータと被覆シートとが直接接触するようにしている。被覆シートのオイルに対する吸収度を、底面シートのそれよりも大きくすることによって、インジケータが吸液構造体へと移行するのを防止することができる。また、体液が排泄された際には、被覆シートを介して速やかにインジケータを変色させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】使い捨て着用物品の一実施形態であるおむつの斜視図。
【図2】おむつの展開図。
【図3】図2のIII−III線端面図。
【図4】おむつの分解斜視図。
【図5】内面シートの他の例を示す平面図。
【図6】図5の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつ1の斜視図、図2は、おむつ1の展開平面図であって身体側から見た図、図3は、図2のIII−III線端面図、図4は、おむつ1の分解斜視図である。図2〜4において、各弾性要素は、その収縮力に抗して伸長させた状態で示している。おむつ1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P−P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q−Qを有し、仮想縦中心線P−Pに関してほぼ対称とされている。
【0017】
おむつ1は、着用者の身体側およびその反対側である非身体側(着衣側)と、前ウエスト域2と、後ウエスト域3と、前後ウエスト域2,3間に位置するクロッチ域4と、両側縁5と、前後ウエスト域2,3において横方向Xに延びる前後端縁6,7とを有する。おむつ1は、身体側に位置する透液性の内面シート11と、非身体側に位置する外面シート12と、これら内外面シート11,12の間に位置する吸液構造体20とを有する。
【0018】
内面シート11としては、透液性の繊維不織布を用いることができ、単位面積当たりの質量が約15〜35g/m、この実施形態では約25g/mのエアスルー繊維不織布を用いている。外面シート12としては、第1および第2外面シート13,14のラミネートシートを用いることができ、第2外面シート14で第1外面シート13の外面を覆うようにしている。第2外面シート14は、内面シート11とほぼ同形同大であり、第1外面シート13は第2外面シート14よりも小さくすることができる。第1外面シート13としては、例えば単位面積当たりの質量が約10〜25g/m、この実施形態では約18g/mの通気性かつ不透液性のプラスチックフィルムを用いることができ、第2外面シート14としては、単位面積当たりの質量が約15〜35g/m、この実施形態では約17g/mのスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布を用いることができる。第2外面シート14で第1外面シート13を覆うことによって、外面シート12の肌触りを向上させることができる。
【0019】
第1外面シート13の吸液構造体20と対向する面には、水分および体液の少なくともいずれかとの接触により呈色反応を示すインジケータ15が形成されている。インジケータ15は、縦方向Yに延びるとともに、横方向Xに離間して複数条配置されている。インジケータ15は、少なくともクロッチ域4に形成され、クロッチ域4から前後ウエスト域2,3に向かって延びていてもよい。このように複数のインジケータ15が形成された領域15aは、縦方向Yに延びている。領域15aは、両側に位置するインジケータ15間の長さ寸法W2と、インジケータ15の縦方向Yの長さ寸法L2とによって区画された領域である。このような領域15aが縦方向Yに延びるとは、横方向Xの長さ寸法W2よりも縦方向Yの長さ寸法L2の方が大きくされていることをいう。
【0020】
インジケータ15は、熱溶融性のポリマーと、呈色反応を示す指示薬と、可塑化オイルとを含む。ポリマーとしては、ポリエチレングリコールのような一般的なホットメルト接着剤に使用されるものを用いることができ、指示薬としては、ブロモクレゾールグリーン、エチルレッド、ブロモフェノールブルーまたはレゾアズリン等のpH指示薬を用いることができる。可塑化オイルとしては、一般的なホットメルト接着剤に使用されるパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、脂肪酸系化合物、または、芳香族カルボン酸系化合物等を用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。なお、インジケータ15は、増粘レジンやワックス希釈液等を含むものであってもよい。
【0021】
内外面シート11,12の間には、縦方向Yに延びる複数条のレッグ弾性体16が取り付けられている。レッグ弾性体16は、おむつ1の両側縁5に沿って取り付けられるとともに、少なくともクロッチ域4に位置し、縦方向Yに伸長状態で収縮可能にされている。レッグ弾性体16は、図示しないホットメルト接着剤等の接着手段によって、内外面シート11,12の少なくともいずれか一方に接合されている。このようにレッグ弾性体16を取り付けることによって、おむつ1の両側縁が着用者の鼠蹊部近傍に密着し、そこから尿等が漏れるのを防止することができる。
【0022】
外面シート12の非身体側には、一対の第1係合手段31が形成されている。第1係合手段31は、後ウエスト域3に取り付けられるとともに、外面シート12からその横方向X外側へと延出するテープタブ32と、テープタブ32の延出部分に取り付けられたフック要素33とを有する。外面シート12の非身体側であって、前ウエスト域2には、第1係合手段31に係合可能な第2係合手段34が形成されている。第2係合手段34は、フック要素33に係合可能なループ要素を含み、両側縁5の間で横方向Xに延びている。第1係合手段31を第2係合手段34に係合することによって、図1に例示したように、おむつ1をパンツ型にすることができる。
【0023】
図3,4に例示したように、吸液構造体20は、吸液性の芯材21と、芯材21を覆う液拡散性の被覆シート22とを有する。芯材21は、身体側すなわち内面シート11側に位置する吸収面21aと、非身体側すなわち外面シート12側に位置する底面21bとを有する。芯材21としては、フラッフパルプ、高吸収性ポリマー粒子等を用いることができ、この実施形態ではフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物を用いている。高吸収性ポリマー粒子の含有量は、芯材21の全重量に対して約35〜70重量%、好ましくは約45〜55重量%とすることができる。
【0024】
被覆シート22は、横方向Xに延びる前後端縁22a,22bと、縦方向Yに延びる両側縁22cとを有し、両側縁22cが吸収面21aにおいて互いに重ねあわされている。被覆シート22は、芯材21の吸収面21aを覆う吸収領域23と、底面21bを覆う底面領域24とに区画され、これら吸収領域23と底面領域24とは、芯材21の横方向X外側で折り曲げられた一枚のシートによって形成され、それらが一体的に連続されている。被覆シート22としては、例えば単位面積当たりの質量が約10〜25g/mのティッシュペーパを用いることができる。
【0025】
芯材21の底面21bと、被覆シート22の底面領域24との間には、親水性の底面シート40が配置されている。底面シート40としては、油剤等で親水処理を施した繊維不織布を用いることができ、例えば、単位面積当たりの質量が約10〜50g/mのスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布や単位面積当たりの質量が約15〜50g/mのスパンボンド繊維不織布等を用いることができる。
【0026】
底面シート40の横方向Xの長さ寸法W1は、インジケータ15が形成された領域15aの横方向Xの長さ寸法W2よりも大きく、芯材21のその寸法W3よりも小さくされている。また、底面シート40の縦方向Yの長さ寸法L1は、インジケータ15が形成された領域15aの寸法L2よりも大きくされている。
【0027】
被覆シート22および底面シート40は、その形成時のカード工程等によって、一方向に繊維の配向性を有する。この実施形態では、縦方向Yに沿って配向性を有するように、被覆シート22および底面シート40が配置される。被覆シート22の縦方向Yにおけるクレム吸水度は、約30〜45mm、好ましくは約33〜45mm、この実施形態では約38mmであり、横方向Xにおけるクレム吸水度は、約25〜40mm、好ましくは約30〜40mm、この実施形態では約35mmである。底面シート40の縦方向Yにおけるクレム吸水度は、約10〜35mm、好ましくは約12〜30mm、この実施形態では約15mmであり、横方向Xにおけるクレム吸水度は、約7〜25mm、好ましくは約10〜20mm、この実施形態では約10mmである。被覆シート22および底面シート40のクレム吸水度は、繊維の配向性によって、縦方向Yよりも横方向Xにおいて小さくなっている。クレム吸水度は、JIS−P8141に準じて測定した。
【0028】
被覆シート22は、縦方向Yおよび横方向Xのクレム吸水度の少なくともいずれかが、底面シート40のそれよりも大きくされている。すなわち、被覆シート22は底面シート40よりも、液拡散性が高い。したがって、おむつ1内に尿が排泄された場合には、尿は透液性の内面シート11を透過し、液拡散性の被覆シート22に到達し、被覆シート22の吸収領域23から底面領域24に拡散される。底面領域24にはインジケータ15が隣接されているから被覆シート22を拡散した尿は、速やかにインジケータ15を変色させることができる。
【0029】
被覆シート22において拡散可能な量以上の尿が排泄された場合には、その尿は被覆シート22を透過し、芯材21の吸収面21aから底面21bに向かって吸収される。底面21bには底面シート40が隣接されているから、尿は底面シート40を透過し、被覆シート22の底面領域24を透過し、インジケータ15に到達する。また、底面シート40の横方向Xの長さ寸法W1は、芯材21のその長さ寸法W3よりも小さくされているので、底面シート40の横方向X外側においては、底面シート40を介さずに尿が被覆シート22の底面領域24へと移行し、インジケータ15に到達する。したがって、比較的多量の尿が排泄された場合には、インジケータ15は、被覆シート22を拡散した尿と、芯材21および底面シート40を透過した尿と、底面シート40の外側で芯材21を透過した尿とによって変色可能である。なお、尿は、芯材21の吸収面21aから吸収されるほか、底面21bからも吸収可能である。
【0030】
上記のようなおむつ1によれば、液拡散性の被覆シート22とインジケータ15とを直接接触させることとしたので、尿が底面シート40を透過する前にインジケータ15を速やかに変色させることができる。また、少量の尿でも、被覆シート22を拡散してインジケータ15を変色させることができる。
【0031】
上記のようなおむつ1において、芯材21は、特に高い吸水力を有する高吸収性ポリマー粒子を含むから、空気中の水蒸気を吸収する可能性がある。しかし、芯材21とインジケータ15との間には、底面シート40が存在しているから、芯材21に吸収された水蒸気の透過を防止することができ、この水蒸気によってインジケータ15が変色するのを防止することができる。
【0032】
被覆シート22の縦方向Yにおけるオイルに対する吸収度は、約10〜25mm、好ましくは約15〜25mm、この実施形態では約17mmであり、横方向Xにおける吸収度は、約10〜25mm、好ましくは約15〜25mm、この実施形態では約18mmである。底面シート40の縦方向Yにおけるオイルに対する吸収度は、約6〜12mm、好ましくは約6〜9mm、この実施形態では約8mmであり、横方向Xにおける吸収度は、約6〜12mm、好ましくは約6〜9mm、この実施形態では約7mmである。また、被覆シート22の縦方向Yおよび横方向Xのいずれかの吸収度が、底面シート40の吸収度よりも大きくなればよい。換言すれば、被覆シート22および底面シート40の縦方向Yおよび横方向Xの吸収度のうち、最も高い値を示すものが被覆シート22に含まれていればよい。
【0033】
オイルに対する吸収度は、JIS−P8141のクレム吸水度の測定方法を基本に測定した。JIS−P8141では、浸せき容器を水で満たし、試験片の下端をこの水の中に浸せきさせるが、オイルに対する吸収度を測定する場合には、パラフィンオイルを浸せき容器に満たし、試験片の下端をこのパラフィンオイル中に浸せきさせることとしている。この試験において、37.8℃における粘度が、40〜85mm/Sのパラフィンオイルを用いた。その他の試験条件は、クレム吸水度の方法と同様である。
【0034】
上記のように被覆シート22のオイルに対する吸収度が、底面シート40のそれよりも大きくされている。インジケータ15にはオイルが含まれるが、上記吸収度にすることによって、オイルが芯材21に移行するのを防止することができる。すなわち、被覆シート22の吸収度は比較的大きいから、インジケータ15のオイルは被覆シート22の底面領域24には移行し、オイルに含まれる指示薬によって底面領域24が着色される。しかし、底面シート40の吸収度は被覆シート22よりも小さいので、オイルは被覆シート22から底面シート40には移行しにくく、被覆シート22で保持される。したがって、オイルが芯材21に移行するのを防止することができる。オイルが芯材21に移行しないので、芯材21に吸収された大気中の水蒸気で移行したオイルに含まれる指示薬が変色するのを防止することができ、特に着用前のおむつ1の指示薬が変色してしまうのを防止することができる。
【0035】
表1に示したのは、インジケータと芯材との間に配置したシートによって、インジケータが芯材側に移行するか否かを実験した結果である。実験は、この実施形態で用いられる第1外面シートにインジケータ(単位面積当たりの質量約30g/m)を塗布し、実験試料1〜7のようにシートを積層させ、最上部のシートの上にろ紙を載せ、約40g/mの加圧条件下にて、温度50℃、湿度0%で一日放置する。その後、ろ紙に到達したインジケータを目視で確認した。各シートは、インジケータに隣接する方から、第1層目、第2層目、第3層目としている。各層に用いられたシートとして、この実施形態の被覆シートとして用いられるティッシュペーパ、または底面シートとして用いられる透液性のSMS繊維不織布を用いた。この実験で用いたティッシュペーの単位面積当たりの質量は、約17g/mであり、SMS繊維不織布の単位面積当たりの質量は、約10g/mである。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示したように、ティッシュペーパのみ、および、SMS繊維不織布のみの場合には、ろ紙へのインジケータの移行が認められた(実験試料1および2)。また、SMS繊維不織布を2枚または3枚積層させた場合もろ紙への移行が認められた(実験試料3および4)。ティッシュペーパにSMS繊維不織布を積層させた場合にはろ紙への移行が認められず(実験試料5)、この実施形態における効果を実証する結果となった。また、ティッシュペーパにSMS繊維不織布を積層させた後、第3層目にティッシュペーパまたはSMS繊維不織布を積層させた場合には、いずれもろ紙への移行は認められなかった(実験試料6および7)。これらの結果から、インジケータに接触するように被覆シートを配置し、被覆シートに底面シートを積層させることが、インジケータがろ紙に移行しないために重要であって、さらに底面シートに他のシートを積層させても、この効果が喪失することはないことが理解される。
【0038】
インジケータ15は、熱溶融性のポリマーを有し、加熱溶融させた状態で第1外面シート13に塗布されるとともに、冷めて固化する前の溶融状態で吸液構造体20が積層される。溶融状態のインジケータ15は、固化した状態に比べて被覆シート22の底面領域24に移行しやすいが、上記構成によって確実に芯材21への移行を防止することができる。また、底面領域24にインジケータ15が移行することによって、この移行したインジケータ15の変色が可能となる。底面領域24からインジケータ15が塗布された第1外面シート13に尿が到達する前に、底面領域24に移行したインジケータ15が変色されることとなるので、より一層速やかに尿の排泄を検知することができる。
【0039】
インジケータ15は、縦方向Yに延びるとともに、横方向Xに離間して並べられている。したがって、排尿が少量だった場合には、尿は被覆シート22の吸収領域23から底面領域24へと移行されるのみで、芯材21にはほとんど吸収されないこともある。このような場合には、横方向X両側のインジケータ15のみが変色し、中央のインジケータ15は変色しないこともあり、横方向Xに離間して並んだインジケータ15の変色の程度によって、排尿の量を判断することもできる。この実施形態において、インジケータ15は複数本形成されることとしているが、これが一本であってもよく、また、線状に形成されるほか、図形や文字等によって形成されていてもよい。さらに、インジケータ15は、横方向Xに延びるようにしてもよい。
【0040】
この実施形態では、底面領域24と外面シート12とは、図示しないホットメルト接着剤等の接合手段によって互いに接合されているが、これら接合手段が尿の流れを妨げないように、間欠的に塗布することが好ましい。
【0041】
芯材21の高吸収性ポリマー粒子の重量比率を約35〜70%としているが、このように高吸収性ポリマー粒子を比較的多くすることによって、芯材21の厚さ寸法を約1.0〜3.5mmと薄くすることができる。また、高吸収性ポリマー粒子の割合を多くすると、芯材21は、空気中の水蒸気を吸収しやすくなるが、底面シート22を用いることによって、使用前のおむつ1において芯材21に吸収された水蒸気によってインジケータ15が変色するのを確実に防止することができる。また、高吸収性ポリマー粒子がフラッフパルプの繊維間に保持されるように、これらを混合させるが、高吸収性ポリマー粒子が多くなると、フラッフパルプの間で保持されずに、外側へとこぼれ出てくることがある。こぼれ出た高吸収性ポリマー粒子が底面領域24側に偏在するような場合であって、これに空気中の水蒸気が吸収された場合であっても、この水蒸気によってインジケータ15が変色するのを防止することができる。
【0042】
被覆シート22および底面シート40は、その繊維配向性が同一となるように積層されているが、互いに交差するようにしてもよい。また、これら繊維配向性が縦方向Yに沿うようにされているが、このように縦方向Yに沿って配向することによって、縦方向Yへの尿の拡散が向上する。吸液構造体20は、縦方向Yに延びる矩形を有しているので、芯材21のより広い範囲で体液を吸収するために、縦方向Yに沿った繊維配向性としている。しかし、被覆シート22および底面シート40の繊維配向性は、これに限ったものではない。特に、繊維配向性が、横方向Xに沿うようにした場合には、横方向Xに尿が拡散しやすくなるので、より一層インジケータ15への到達時間を短縮することができ、排尿時における速やかな変色が可能となる。
【0043】
この実施形態では、底面シート40は、被覆シート22と芯材21との間に一枚のみ隣接されているが、これが2枚以上積層されるようにしてもよい。複数枚の底面シート40が積層された場合には、その分、芯材21に含まれる水蒸気がインジケータ15に接触するのを防止することができるとともに、インジケータ15のオイルが芯材21へと移行するのを防止することができる。
【0044】
被覆シート22は、吸収領域23と底面領域24とが、芯材21の横方向X外側で折り曲げられた一枚のシートによって形成されることとしているが、これに限ったものではない。例えば、芯材21の吸収面21aを覆う第1の被覆シートと、底面21bを覆う第2の被覆シートとを有し、これら2枚のシートが、ホットメルト接着剤、ヒートシール、ソニックシール等によって、少なくとも芯材21の横方向外側で連続されるようにしてもよい。
【0045】
図5,6は、この実施形態の他の態様を示したものであり、図5は、内面シート11の平面図であって、その一部を破断した図、図6は、図5の内面シート11の中央シート11aの一部拡大斜視図である。この態様では、内面シート11は、縦方向Yに延びる略矩形の中央シート11aと、中央シート11aの横方向X外側に位置する両側シート11bとを有する。少なくとも中央シート11aは、液透過性を有する繊維不織布から形成され、縦方向Yに延びる複数の凸条部61と、これら凸条部61の間に位置するとともに縦方向Yに延びる複数の凹条部62とを有することを特徴とする。両側シート11bは、透液性または不透液性の繊維不織布によって形成することができる。その他の構成は、図1〜4に示したおむつ1と同様である。
【0046】
中央シート11aは、たとえば、凹条部62の形成部分に向かって主に気体からなる熱風などの流体を吹き付けることによって、凸条部61および凹条部62を形成することができる。上記のように流体を吹き付けることによって、凹条部62の繊維がその両側に吹き寄せられるから、凹条部62における繊維は縦方向Yに配向される。このような中央シート11aにおいては、横方向Xに配向する繊維よりも、縦方向Yに配向する繊維が多くなり、全体として縦方向Yに沿った繊維配向性をより顕著にすることができる。
【0047】
中央シート11aの横方向Xの長さ寸法は、芯材21の横方向Xの長さ寸法と等しいか、それよりも大きくすることが好ましい。また、中央シート11aの繊維配向の測定は、例えば株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−100等のマイクロスコープを用いておこなうことができる。具体的には、マイクロスコープによって観察された画像データの一定範囲内において、縦方向に平行する仮想線に対して、+45度から−45度の範囲内にある繊維の場合に縦方向に配向していると判断し、横方向に平行する仮想線に対して、+45度から−45度の範囲にある繊維の場合に横方向に配向していると判断する。縦方向に配向する繊維本数と、横方向に配向する繊維本数との割合を計算することによって、繊維配向性を測定・算出することができる。例えば、全繊維本数を100%とした場合に、縦方向に配向する繊維本数の割合が55%以上である場合に、縦方向Yに沿った繊維配向を有するということができる。なお、繊維配向を判断するためには、この測定のほかに、シートの引張強度を測定することによって判断することも可能である。具体的には、シートの縦方向Yおよび横方向Xに沿って延びるサンプルをそれぞれ作成し、一定の伸長時における引張強度を引張試験機によって測定する。縦方向Yに沿って延びるサンプルの引張強度の方が、横方向Xに沿って延びるサンプルよりも大きい場合には、縦方向Yに沿った繊維配向であると判断することができる。
【0048】
内面シート11は、中央シート11aの繊維配向が縦方向Yに沿うように配置され、インジケータ15が形成された領域15aも縦方向Yに延びるようにされている。すなわち、中央シート11aの繊維配向の向きと、インジケータ15が形成された領域15aの延びる向きとを一致させている。中央シート11aに排泄された尿は、その繊維配向に沿って縦方向Yに拡散される。拡散された尿は吸液構造体20を介してインジケータ15に到達するが、インジケータ15が形成された領域15aも縦方向Yに延びているので、より広い領域15aにおいて尿が付着し、これを変色させることができる。インジケータ15が広い範囲で変色することによって、視認性を向上させることができる。特に、縦方向Yの長さ寸法が、横方向Xよりも大きいおむつ1においては、中央シート11aの繊維配向およびインジケータ15が形成された領域15aを縦方向Yに延びるようにすることで、インジケータ15の視認性をより一層向上させることができる。
【0049】
おむつ1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、本発明の明細書において、用語「第1」および「第2」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。おむつ1として、いわゆるオープンタイプのものを用い説明しているが、プルオンパンツタイプのおむつに適用することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 おむつ(使い捨ての着用物品)
2 前ウエスト域
3 後ウエスト域
4 クロッチ域
11 内面シート
12 外面シート
15 インジケータ
20 吸液構造体
21 芯材
21a 吸収面
21b 底面
22 被覆シート
40 底面シート
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側である非身体側と、前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記身体側に位置する透液性の内面シートと、前記非身体側に位置する不透液性の外面シートと、これら内外面シートの間に位置するとともに少なくとも前記クロッチ域に配置される吸液構造体とを含み、前記外面シートの前記吸液構造体に対向する面には、水分および体液の少なくともいずれかとの接触により呈色反応を示すインジケータが形成された使い捨て着用物品において、
前記吸液構造体は、吸液性の芯材と、前記芯材の前記身体側に位置する面および前記非身体側に位置する面を覆うとともに、前記芯材の前記横方向外側で連続される液拡散性の被覆シートとを有し、
前記芯材の前記非身体側に位置する面と前記被覆シートとの間には、前記インジケータと対応する位置に親水性の繊維不織布によって形成される底面シートが配置され、前記底面シートの前記横方向の長さ寸法は、前記芯材のそれよりも小さくされ、前記インジケータは、熱溶融性のポリマーと呈色反応を示す指示薬と可塑化オイルとを含み、前記被覆シートに直接接触するとともに、前記被覆シートの前記オイルに対する吸収度が、前記底面シートのそれよりも大きいことを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記被覆シートのクレム吸水度が、前記底面シートのそれよりも大きい請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記底面シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向性を有し、前記底面シートの繊維配向性に沿って前記インジケータが形成された領域が延びる請求項1または2のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記被覆シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向性を有し、前記被覆シートおよび前記底面シートの繊維配向性が一致して積層される請求項3記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記芯材は、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含み、前記高吸収性ポリマー粒子の含有量は、前記芯材の全重量に対して35〜70重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記内面シートは、前記縦方向および前記横方向のいずれかに沿った繊維配向を有する繊維不織布によって形成され、前記インジケータが形成された領域は、前記縦方向および前記横方向のいずれかに向かって延びるとともに、前記インジケータが形成された領域が延びる方向と前記内面シートの繊維配向とが一致する請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−34969(P2012−34969A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179818(P2010−179818)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】