説明

使用済み紙オムツの処理方法

【課題】大量の水を必要とすることなく消毒することができ、処理することのできる使用済み紙オムツの処理方法を提供する。
【解決手段】石灰1と、1000ppm若しくは1500ppmの次亜塩素2と、使用済み紙オムツ4を処理槽3内に投入し、処理槽3内に撹拌可能な最低限の水5を供給しながら、石灰1により分解された使用済み紙オムツ4に吸収されていた水分を用いて、所定の時間にわたり撹拌し、処理槽3内の液体6を処理槽3の外へ排出させると共に脱水し、処理槽3から排出された廃水7を回収し水質処理を施して破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙オムツの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に紙オムツは、パルプ等からなる吸収体と、吸収体が吸収した水分を保持する高分子吸収体(高分子ポリマー)と、これらを包む防水材(プラスチック)などの素材から構成されている。
【0003】
従来、使い捨てオムツの処理(処分)は、衛生的な理由から焼却処分が最善とされていたが、水分を多く含んでいるため焼却する際に多量の熱量を必要とし、無駄にエネルギーを消費している。また、資源の有効利用の観点から使用済み紙オムツの構成素材は回収して再利用することが望ましい。
【0004】
構成素材の回収方法としては、例えば紙オムツを構成するパルプ等を薬品を用いて分離して、回収して再利用する分離回収処理がある。この分離回収処理では、前処理として紙オムツを回転する刃などで破砕し、その後の分離や回収を行っていた。
【0005】
一方、使用済み紙オムツには、使用状態から大便や小便が付着しており細菌も含まれる場合もあることから、使用済み紙オムツを処理する場合には、消毒剤を含有する水流で洗い、汚れの一部を消毒する紙オムツの処理方法が特許文献1で提案されている。
【0006】
この処理方法によれば、消毒剤として例えば、オゾン、塩素、次亜塩素酸ナトリウム等が用いられ、洗った水は水質処理して廃棄されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−292304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された紙オムツの処理方法では、消毒剤を含有する水流で使用済み紙オムツを洗うため、大量の水を必要とし、しかも、洗うために使用した水を廃棄する場合にも大量の廃水を水質処理しなければならないので大がかりな設備を必要とする。
【0009】
そこで、本発明は、大量の水を必要とすることなく消毒することができ、処理することのできる使用済み紙オムツの処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の使用済み紙オムツの処理方法では、使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって、石灰と1000ppm若しくは1500ppmの使用済み紙オムツを処理槽内に投入し、前記処理槽内に撹拌可能な最低限の水を供給しながら、前記石灰により分解された前記使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて、所定の時間にわたり撹拌し、前記処理槽内の液体を前記処理槽の外へ排出させると共に脱水し、前記処理槽から排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明の使用済み紙オムツの処理方法では、使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって、石灰と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し、前記処理槽内に撹拌可能な最低限の水を供給しながら、前記石灰により分解された前記使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて、最低限の水の供給後に1000ppm若しくは1500ppmの次亜塩素を前記処理槽内に投入して所定時間にわたり撹拌し、前記処理槽内の液体を前記処理槽の外へ排出させると共に脱水し、前記処理槽から排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄することを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明の使用済み紙オムツの処理方法によれば、処理槽内に使用済み紙オムツを投入し、これと共に石灰、次亜塩素を投入する。そして、これらの使用済み紙オムツ及び石灰、次亜塩素を撹拌し得る程度の、最低限の水を処理槽内に給水する。この状態で撹拌を開始すると、石灰によって使用済み紙オムツの特に高分子ポリマーが分解されて、吸収している水分が処理槽内に混ざり、処理槽内に最低限の量だけ供給した水と共に、使用済み紙オムツを撹拌する。このとき、次亜塩素によって分解された使用済み紙オムツから放出される細菌等が消毒される。このような状態で所定時間撹拌した後に、処理槽内の液体を処理槽の外へ排出させると共に、分解した使用済み紙オムツの固形物を脱水し、排出された廃水及び脱水したときの廃水を回収し、水質処理を施して破棄する。
【0013】
なお、処理槽内へ石灰、次亜塩素を投入する場合、石灰は使用済み紙オムツを処理槽内へ投入する前に処理槽内に入れても良く、使用済み紙オムツを処理槽内に投入した後に処理槽内に入れても良い。さらに、次亜塩素は、石灰、使用済み紙オムツを処理槽内に投入する際に同時に入れても良く、処理槽内の石灰、使用済み紙オムツを撹拌し得る程度の水を供給した後に処理槽内に加えても良い。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の使用済み紙オムツの処理方法によれば、石灰、次亜塩素と共に、処理槽内に投入した使用済み紙オムツが吸収している水分を用いて、撹拌するので、必要最低限の水を処理槽内に供給するだけでよく、無駄に水を使用することがなく、また処理後には、廃水も少なく、廃水も少ないので水質処理を行う施設も大がかりなものになることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る使用済み紙オムツの処理方法の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態の使用済み紙オムツの処理方法は、図1(a)に示すように、石灰1と、次亜塩素2を入れた処理槽3内に使用済み紙オムツ4を投入し、図1(b)、(c)に示すように、処理槽3内に撹拌可能な最低限の水5を給水しながら所定の時間にわたり撹拌し、図1(d)に示すように処理槽3内の液体6を処理槽3の外へ排出させると共に脱水し、排出された廃水7を回収し水質処理を施して破棄する。
【0018】
撹拌可能な最低限の水5は、処理槽3内で使用済み紙オムツ4を撹拌、すなわち液体中で使用済み紙オムツ4が動き回ることが可能な量であり、撹拌させるための最低限の量に設定する。この場合、給水しながら撹拌している間に、使用済み紙オムツ4の高分子ポリマーが石灰1によって分解し、内部の水分が処理槽3内に出てくるので、処理槽3内の水分量が次第に増えるので、処理槽3内で撹拌可能な、すなわち使用済み紙オムツ4を分解し、殺菌可能な程度の水分量になったときに給水を停止する。なお、使用済み紙オムツ4からの水分中には、細菌等が含有されているが、次亜塩素2によって消毒されるので、撹拌によって細菌が処理槽3に撒き散らされても、処理後に廃水を水質処理することで充分に殺菌することができる。
【0019】
従って、従来のように、消毒剤を含有した水流で使用済み紙オムツ4を処理する方法に比較して、無駄に水を使用することがなく、必要最低限の水によって使用済み紙オムツを殺菌、処理することができる。
【0020】
なお、処理槽3内に石灰1、次亜塩素2、使用済み紙オムツ4を投入する順序は、処理槽3内に使用済み紙オムツ4を投入する前に石灰1を処理槽3内に投入しても良く、処理槽3内に使用済み紙オムツ4を投入した後に石灰1を処理槽3内に投入しても良い。さらに、次亜塩素2を処理槽3内に投入する順番についても、使用済み紙オムツ4を処理槽3内に投入する前後でも良く、処理槽3内への給水後に処理槽3内に加えても良い。
【0021】
また、従来の処理方法では、使用済み紙オムツ20tを処理する場合、1000立方メートルの水(水道水、工業用水等)を必要としていたが、本発明の処理方法では、20tの使用済み紙オムツ4を処理する場合、53〜106立方メートルの水(給水による)で処理することができる。
【0022】
なお、使用済み紙オムツ4に含まれる平均の水分量について、未使用の紙オムツの重さは約60グラムであり、一回の紙オムツの交換で尿を吸収した使用済み紙オムツ4の重さは210グラム〜310グラムになり、紙オムツの重さを除くと150グラム〜250グラムの水分が含有されている。本実施形態では、この高分子ポリマーに吸収されている水分を利用することで、使用済み紙オムツ4の分解と消毒を行っている。
【0023】
なお、上記の説明では、給水しながら撹拌する工程を1回とした場合について説明したが、この工程は複数回行ってもよく、すすぎ工程を含め2回程度行っても良い。
【0024】
次ぎに、本実施形態における薬剤の投入量、消毒時間、水の使用量について説明する。
【0025】
1.薬剤の投入量について
(a)石灰(分解剤)
使用済み紙オムツ4の処理槽3内への投入量の3〜10%
実験段階では、例えば投入量120kgに対して6kg
(b)次亜塩素(消毒剤)
次亜塩素濃度は、取り扱う紙オムツの種類により変わる。
感染性廃棄物(特別管理廃棄物)の場合:1000ppm若しくは1500ppm
一般廃棄物及び産業廃棄物の場合:250ppm
消毒効果については、一般廃棄物及び産業廃棄物の場合は、温水による消毒も可能(80℃で10分)
【0026】
2.消毒時間について
(a)消毒時間
洗濯時間(撹拌時間)は、取り扱う紙オムツの種類により変わる。
感染性廃棄物の場合:60分
一般廃棄物及び産業廃棄物の場合:10分
【0027】
3.水の使用量について
(a)水使用量
消毒工程1回に付き320リットル(処理槽3内への使用済み紙オムツ4の投入120kgに対して)
【0028】
以上説明した本実施形態における使用済み紙オムツ4の処理方法によれば、使用する水の量が少ないので、例えば、給水費用、消毒費用、排水費用(下水道費用)の負担が軽減され、給水温度を上げるときに無駄なエネルギーを使う必要がなくなり、ひいてはコストの大幅な削減が可能となる。
【0029】
なお、上記消毒費用は、使用する水の量が少ないので、給水費用、排水費用と共に、消毒剤を使う量も少量になることにより消毒剤にかかる費用も低減することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の処理方法を、病院、施設等に導入した場合、風呂の残り湯や、一次排水(飲み水、洗面には使用できないが、トイレ等には使用可能な水)を使用することも可能になり、この場合には大幅なコストの低減を行うことが可能となる。
【0031】
また、通常、リサイクルを行う場合、リサイクルを行う物自体に着眼点が行われる場合が多い。例えば、紙オムツのリサイクル事業は、紙オムツのリサイクルのために、水を1000トン使用し、更にそこからの排水1000トンのうち800トンの水をリサイクルするシステムになっている。このことは、そもそも、リサイクル自体にリサイクル後に環境負荷をかけている状況となっている。上記した本発明では、使用する水の量が少ないということは、資源循環型社会の構築の上で、一番のポイントとなる環境負荷の発生を抑制することであり、それに伴い、リサイクル後の環境負荷の低減を図ることができる。
【0032】
また、排水費用については、使用する水の量が少ない場合、下水道費用(公共下水道費用)が削減されると共に、水質処理施設(水処理施設)の規模も小さくて済み、さらに、水質処理施設の規模が小さくなるために、施設に係る土地の面積も少なくなり、費用の削減になる。
【0033】
なお、上記実施形態において石灰は、生石灰、消石灰のいずれも含む物であって、使用済み紙オムツにおける高分子ポリマーを分解し得る石灰であれば良い。
【0034】
また、消毒剤としての次亜塩素は、処理する使用済み紙オムツの種類によって選択される。
【0035】
また、本発明における「消毒し処理する方法」は、水の使用量は必要最低限であり、本方法を行うことにより消毒を行うための設備、施設自体を通常のものよりも小さくすることが出来、設備、施設の規模を小さくできるので設備費用の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 石灰
2 次亜塩素
3 処理槽
4 使用済み紙オムツ
5 水
6 液体
7 廃水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって、
石灰と1000ppm若しくは1500ppmの次亜塩素と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し、
前記処理槽内に撹拌可能な最低限の水を供給しながら、前記石灰により分解された前記使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて、所定の時間にわたり撹拌し、
前記処理槽内の液体を前記処理槽の外へ排出させると共に脱水し、
前記処理槽から排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄する、
ことを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法。
【請求項2】
使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって、
石灰と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し、
前記処理槽内に撹拌可能な最低限の水を供給しながら、前記石灰により分解された前記使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて、最低限の水の供給後に1000ppm若しくは1500ppmの次亜塩素を前記処理槽内に投入して所定時間にわたり撹拌し、
前記処理槽内の液体を前記処理槽の外へ排出させると共に脱水し、
前記処理槽から排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄する、
ことを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−79396(P2013−79396A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286915(P2012−286915)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−255220(P2008−255220)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(507394639)株式会社サムズ (3)
【Fターム(参考)】