説明

使用済燃料の高密度貯蔵システム

【課題】 使用済燃料の貯蔵密度を向上し、且つ使用済燃料の崩壊熱を有効活用する。
【解決手段】 貯蔵システムは、使用済燃料7が収納される複数の密閉容器2と、密閉容器2内に設置される冷却管3と、密閉容器2内に充填され、使用済燃料7の崩壊熱を冷却管3に伝える固体粒子4の群と、冷却管3内で冷却流体5を強制流動させるポンプ手段と、使用済燃料7から伝えられた冷却流体5が有する熱エネルギを利用する熱利用システムを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済燃料を貯蔵する技術に関する。さらに詳述すると、本発明は、使用済燃料を高密度に貯蔵し且つ使用済燃料の崩壊熱を有効利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の使用済燃料の貯蔵方式としては、水プールを利用する湿式貯蔵方式と、金属キャスクやコンクリートモジュールを用いる乾式貯蔵方式がある(非特許文献1参照)。従来の金属キャスクやコンクリートモジュール貯蔵のキャニスタ内にはHe(ヘリウム)ガスが密封されている。
【0003】
【非特許文献1】竹田知幸、中間貯蔵施設の必要性とその実現に向けた取り組み、日本原子力学会誌、VOL.45, NO.9 PAGE.540-546 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の使用済燃料の貯蔵方式では、大量の使用済燃料を貯蔵するためには、膨大な敷地面積を必要とする。即ち、湿式貯蔵方式では広大な水プールを必要とし、乾式貯蔵方式では使用済燃料の崩壊熱を除去するための自然対流の空冷流路を必要とするため膨大な敷地面積を必要とし、従来の使用済燃料の貯蔵方式では使用済燃料の貯蔵密度の向上に限界があった。
【0005】
ここで、キャスクやキャニスタ内に冷却管を設置し、冷却水などの冷却流体を冷却管内で強制流動させて、使用済燃料の崩壊熱を除去することが考えられる。しかし、従来の乾式貯蔵方式に用いられるキャスクやキャニスタ内に単純に冷却管を設置しても、使用済燃料の崩壊熱はHeガスの熱伝熱あるいは自然対流でしか冷却管に伝わらない。このため、冷却管を長くするか冷却フィンなどを設置する必要があり、この結果、使用済燃料の貯蔵密度が低下してしまう。
【0006】
また、従来の貯蔵方式は使用済燃料を安全に貯蔵することだけを目的としており、使用済燃料の崩壊熱を積極的に有効活用しようとする発想は無かった。
【0007】
そこで本発明は、使用済燃料の貯蔵密度を向上できる貯蔵システムを提供することを目的とする。さらに本発明は、使用済燃料の崩壊熱を有効活用できる貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の使用済燃料の高密度貯蔵システムは、使用済燃料が収納される密閉容器と、前記密閉容器内に設置される冷却管と、前記密閉容器内に充填され、前記使用済燃料の崩壊熱を前記冷却管に伝える固体粒子群と、前記冷却管内で冷却流体を強制流動させるポンプ手段とを備えるようにしている。
【0009】
したがって、ポンプ手段が冷却流体を圧送し、冷却管内を流動させる。これにより、密閉容器内に設置された冷却管内を冷却流体が流動して使用済燃料の崩壊熱を除去する強制冷却が実現される。この構造によれば、従来の乾式貯蔵方式におけるような空冷流路を、密閉容器の個々の周囲にそれぞれ設ける必要はない。さらに、各密閉容器内に伝熱性の高い固体粒子を充填することで伝熱性能が向上し、冷却管を特に長くしたり冷却フィンなどを設置したりする必要がなく、例えば使用済燃料の収納ラック部分に冷却管を設置する程度で使用済燃料の崩壊熱を効果的に除去できる。したがって、密閉容器の個々の大型化を抑えつつ、より多くの使用済燃料を密閉容器に収納でき、また、密閉容器の個々に要する設置スペースを省スペース化して、貯蔵エリアにより多くの密閉容器を設置できる。即ち、使用済燃料の貯蔵密度を向上でき、コンパクトな敷地面積で使用済燃料の大容量貯蔵が可能となる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の使用済燃料の高密度貯蔵システムにおいて、前記使用済燃料から伝えられた前記冷却流体が有する熱エネルギを利用する熱利用システムを更に備えるようにしている。この場合、使用済燃料の崩壊熱を熱利用システムの作動エネルギとして有効に活用できる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の使用済燃料の高密度貯蔵システムにおいて、隣接する前記密閉容器の前記冷却管同士を接続する連結管を更に備え、前記ポンプ手段は、複数の前記冷却管および前記連結管とで構成される冷却流路に前記冷却流体を強制流動させ、前記熱利用システムは、前記冷却流路の出口側に設けられて前記冷却流体が有する熱エネルギを利用するようにしている。この場合、複数の密閉容器を巡ってきた冷却流体から大きな熱量を得ることができ、大規模な熱利用システムを作動させることができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の使用済燃料の高密度貯蔵システムにおいて、前記熱利用システムは、前記冷却流体が有する熱エネルギにより駆動され発電を行うタービンであるものとしている。この場合、使用済燃料の崩壊熱を利用して、タービンを駆動し、発電することができる。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1つに記載の使用済燃料の高密度貯蔵システムにおいて、前記密閉容器は、中性子発生源の周囲に設置され、前記中性子発生源より発生する中性子により前記使用済燃料の核分裂反応を誘起するようにしている。
【0014】
したがって、中性子発生源から発生する中性子により、密閉容器に収納されている使用済燃料の核分裂反応が誘起され、冷却流体から得られる熱量を増加することができる。さらに、使用済燃料中のプルトニウムやネプツニウムを燃焼することにより、使用済燃料の長期的な放射性毒性を低減することが可能となる。また、使用済燃料を発電等のための燃料資源と位置付け得るため、使用済燃料の貯蔵の概念を変えることが期待できる。
【発明の効果】
【0015】
しかして請求項1記載の使用済燃料の貯蔵システムによれば、使用済燃料を高密度に貯蔵できる。これにより、使用済燃料の貯蔵に必要な管理コストを削減でき、使用済燃料の貯蔵に対する社会の受容性の向上が期待できる。
【0016】
さらに請求項2記載の貯蔵システムによれば、使用済燃料の崩壊熱を熱利用システムの作動エネルギとして有効に活用できる。
【0017】
さらに請求項3記載の貯蔵システムによれば、複数の密閉容器を巡ってきた冷却流体から大きな熱量を得ることができ、大規模な熱利用システムを作動させることができる。
【0018】
さらに請求項4記載の貯蔵システムによれば、使用済燃料の崩壊熱を利用して、タービンを駆動し、発電することができる。
【0019】
さらに請求項5記載の貯蔵システムによれば、中性子発生源から発生する中性子により、密閉容器に収納されている使用済燃料の核分裂反応が誘起され、冷却流体から得られる熱量を増加することができる。さらに、使用済燃料中のプルトニウムやネプツニウムを燃焼することにより、使用済燃料の長期的な放射性毒性を低減することが可能となる。また、使用済燃料を発電等のための燃料資源と位置付け得るため、使用済燃料の貯蔵の概念を変えることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1から図8に本発明の使用済燃料貯蔵システムの実施の一形態を示す。この貯蔵システム1は、使用済燃料7が収納される密閉容器2と、密閉容器2内に設置される冷却管3と、密閉容器2内に充填され、使用済燃料7の崩壊熱を冷却管3に伝える固体粒子4の群と、冷却管3内で冷却流体5を強制流動させるポンプ手段6とを備え、使用済燃料7の高密度貯蔵を可能にしている。
【0022】
さらに本実施形態の貯蔵システム1では、使用済燃料7から伝えられた冷却流体5が有する熱エネルギを利用する熱利用システム8を更に備え、使用済燃料7の崩壊熱を有効に活用できるようにしている。
【0023】
また、例えば本実施形態の貯蔵システム1では、隣接する密閉容器2の冷却管3,3同士を接続する連結管9を更に備え、ポンプ手段6は、複数の冷却管3および連結管9とで構成される冷却流路10に冷却流体5を強制流動させ、熱利用システム8は、冷却流路10の出口側に設けられている。このように構成することによって、複数の密閉容器2を巡ってきた冷却流体5から大きな熱量を得ることができ、大規模な熱利用システム8を作動させることができる。
【0024】
尚、図7に示すように、熱利用システム8に熱を与えることによって冷却された冷却流体5を再び冷却流路10に送り込む循環式の構成としても良く、或いは図8に示すように、冷却流体源11から常に新しい冷却流体5を冷却流路10に送り込む非循環式の構成としても良い。また、図7に示す循環式の場合において、熱利用システム8に熱を与えることで冷やされた冷却流体5を、図示を省略する冷却手段によってさらに一定温度域となるまで冷却してから再び冷却流路10に送り込むようにしても良い。
【0025】
また、貯蔵システム1が備えるすべての密閉容器2の冷却管3を直列に接続して1つの冷却流路10を形成する構成には限定されず、例えば、貯蔵システム1が備える複数の密閉容器2を幾つかのグループに分けて、グループごとに密閉容器2の冷却管3を直列に接続して複数の冷却流路10を形成する構成としても良い。冷却流路10は、各密閉容器2内の使用済燃料7を安全に貯蔵するために必要とされる冷却能力を達成でき、且つ熱利用システム8を作動させるために必要な熱量が得られるように、構成される。
【0026】
本実施形態における熱利用システム8は、例えば冷却流体5が有する熱エネルギにより駆動され発電を行うタービンとしている。以下、本実施形態では熱利用システムをタービン8と表記する。また、本実施形態では冷却流体5として冷却水を利用しており、タービン8は水蒸気を作動流体とする蒸気タービンとしている。尚、冷却流路10の出口から得られる冷却流体5をそのままタービン8の作動流体として利用しても良く、或いは図示を省略する熱交換器などを介して、冷却流路10の出口から得られる冷却流体5の熱をタービン8の作動流体に伝えるようにしても良い。
【0027】
密閉容器2は、例えばステンレス鋼などの金属製のキャニスタであり、容器本体2aと蓋部材2bとより構成され、容器本体2aの内部には予め冷却管3が取り付けられている。例えば容器本体2aの底部には、冷却流体5の供給用開口12と排出用開口13とが設けられており、これら供給用開口12と排出用開口13とに、冷却管3が溶接等の手段により密着固定される。冷却管3は、例えば図示を省略する使用済燃料7の収納ラック部分に設置され、容器本体2aの底部から天井部さらに天井部から底部へと折り返す形状となっている。この密閉容器2には、例えば1〜21体程度の使用済燃料7が収納される。使用済燃料7は、例えばジルカロイ被覆管などの燃料被覆管7aにより被覆されている。ここで本実施形態の使用済燃料7は、例えば、原子炉内で一定期間使用したのち取り出された燃料棒であり、貯蔵システム1において一定期間貯蔵した後、再処理工場などに輸送して化学処理その他のプロセスにより有用物質を回収し、再使用を図ったり、放射線源として使用するなどの処理がとられるものとしている。
【0028】
図2に示すように使用済燃料7が容器本体2aに装荷された後、図3に示すように容器本体2a内に固体粒子4が充填される。この固体粒子4には、使用済燃料7の崩壊熱を冷却管3に良好に伝えるべく伝熱性の高い物質が選択される。例えば伝熱性能に優れた黒鉛粒子や金属粒子の利用が望ましい。また、固体粒子4は、使用済燃料7の隙間にも良好に充填できるように、微細であること、具体的には粒径が数mm径以下(例えば10mm以下)であることが望ましい。また、固体粒子4を密閉容器2内に良好に充填するために、振動充填法などを利用して、容器本体2a内に固体粒子4を充填することが好ましい。
【0029】
固体粒子4の容器本体2aへの充填後、容器本体2aに蓋部材2bが溶接等の手段により密着固定される。蓋部材2bは容器本体2aに密着固定され、冷却管3は容器本体2aの底部の供給用開口12と排出用開口13とに密着固定されるので、使用済燃料7は密閉容器2内に密閉される。従って、万が一、使用済燃料7の被覆管7aが破損した場合でも、放射性物質は密封性の高い密閉容器2内に閉じ込められる。ここで、固体粒子4と共に密閉容器2内に封入される気体は、使用済燃料7の酸化などの劣化を防止するため、ヘリウムガスなどの不活性ガスとすることが望ましい。
【0030】
また、万が一、冷却管3から冷却流体5が漏洩した場合に対応できるように、密閉容器2には図示を省略する安全弁などを設けることが好ましい。この場合、冷却管3から冷却流体5が漏洩してしまった場合でも、上記安全弁より密閉容器2の内部の圧力を逃がして、密閉容器2の内圧が異常に上昇することを防ぎ、密閉容器2が破損してしまうことを防止できる。さらに、密閉容器2の内部に冷却流体5の漏洩を検知する手段(例えばモニターなど)を設けることが好ましい。この場合、密閉容器2の内部における冷却流体5の漏洩を早期に検知して、例えば漏洩した冷却流体5(冷却水)によりジルカロイ被覆管7aが腐食してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0031】
図6の符号14で示す領域は、上述した容器本体2aへの使用済燃料7の装荷(図2参照)、容器本体2aへの固体粒子4の充填および容器本体2aへの蓋部材2bの取り付け(図3参照)を行う使用済燃料取扱エリアを示す。容器本体2aへ蓋部材2bを取り付けた後、密閉容器2を例えばクレーンなどで図6に示す貯蔵エリア15に移動する。貯蔵エリア15には予め連結管9が敷設されている。図4および図5に示すように、密閉容器2に設けられた冷却管3と連結管9とは、例えばフランジ16などを介して、溶接等の手段により密着固定される。これにより、冷却流路10が形成される。また、冷却流路10の入口部を構成する連結管9にはポンプ手段6が接続され、冷却流路10の出口部を構成する連結管9にはタービン8が接続される。図6の符号17で示す領域は、ポンプ手段6とタービン8が設置される熱利用エリアである。
【0032】
ここで、貯蔵エリア15は、例えばコンクリート製の建造物などで構成して密封構造とすることが望ましい。貯蔵エリア15を密封構造とすることで、万が一、使用済燃料7の被覆管7aが破損し、且つ、密閉容器2の密封性が破れ、放射性物質が密閉容器2から漏れ出しても、放射性物質の環境への漏洩を防止できる。また、貯蔵エリア15における各密閉容器2の設置スペースや密閉容器2,2間の間隔などは、ポンプ手段6やタービン8が停止した場合でも、貯蔵エリア15内に存在する気体(例えば自然空気)により使用済燃料7の崩壊熱が密閉容器2の表面で自然冷却され、例えば空気により自然空冷され、少なくとも一定期間(例えば数時間ないし1日程度)は、使用済燃料7を安全に貯蔵できる一定温度以下に維持できるように、設定することが望ましい。これにより、ポンプ手段6やタービン8が停止した場合でも、使用済燃料7の崩壊熱は密閉容器2の表面で自然冷却され、少なくとも運転員等がポンプ手段6やタービン8の再起動などの対応が出来る程度の時間内おいては、密閉容器2等の温度が許容限界以上に上昇してしまうことを防止するようにできる。また、密閉容器2に充填する固体粒子4として、黒鉛などの熱容量が大きいものを選択することで、ポンプ手段6やタービン8が停止した場合における密閉容器2等の温度上昇を緩やかにできる。尚、通常時の密閉容器2の表面温度は、冷却流体5としての冷却水が複数の密閉容器2を巡回するため密閉容器2毎に異なり得るが、例えば100℃〜300℃の範囲としている。
【0033】
以上のように構成された貯蔵システム1によれば、ポンプ手段6が冷却流体5を圧送し、冷却流路10内を流動させる。これにより、密閉容器2内に設置された冷却管3内を冷却流体5が流動して使用済燃料7の崩壊熱を除去する強制冷却が実現される。この構造によれば、従来の乾式貯蔵方式におけるような自然対流用空冷流路を、密閉容器2の個々の周囲にそれぞれ設ける必要はない。さらに、各密閉容器2内には黒鉛粒や金属粒などの伝熱性の高い固体粒子4が充填されているので、伝熱性能が向上し、冷却管3を特に長くしたり冷却フィンなどを設置したりする必要がなく、例えば使用済燃料7の収納ラック部分に冷却管3を設置する程度で使用済燃料7の崩壊熱を効果的に除去できる。したがって、密閉容器(キャニスタ)2の個々の大型化を抑えつつ、より多くの使用済燃料7を密閉容器2に収納でき、且つ密閉容器(キャニスタ)2の個々に要する設置スペースを省スペース化して、貯蔵エリア15により多くの密閉容器2を設置できる。即ち、使用済燃料7の貯蔵密度を向上でき、コンパクトな敷地面積で使用済燃料7の大容量貯蔵が可能となる。
【0034】
また、複数の密閉容器2を巡回した冷却流体5は、タービン8へと送られる。ここで、密閉容器2に使用済燃料7を21体収納した場合でも、当該1個の密閉容器2内で生じ得る崩壊熱は20kW程度であり、蒸気タービン8を駆動するには不充分であるが、本発明の貯蔵システム1において、例えば貯蔵エリア15に500基の密閉容器2を設置すれば崩壊熱の合計量は実に10MWとなり、蒸気タービン8を駆動するのに充分な熱量が得られる。従って、使用済燃料7の崩壊熱を利用して、高温の蒸気を発生させ、蒸気タービン8を駆動し、発電することができる。
【0035】
以上のように本発明によれば、使用済燃料7を高密度に貯蔵でき、尚且つ使用済燃料7の崩壊熱を発電などに有効活用できる。これにより、使用済燃料7の貯蔵に必要な管理コストを削減でき、また、使用済燃料7の貯蔵に対する社会の受容性の向上が期待できる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、以下に説明する第2の実施形態において上述の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0037】
この貯蔵システム1’では、例えば図9に示すように、複数の密閉容器2を中性子発生源18の周囲に設置し、中性子発生源18より発生する中性子により使用済燃料7の核分裂反応を誘起するようにしている。尚、中性子発生源18は、例えば原子炉や加速器のターゲットなどである。尚、密閉容器2に充填する固体粒子4として、黒鉛を用いた場合、当該黒鉛を減速材として機能させることもできる。中性子発生源18は、図示を省略するが、例えば必要に応じて自身を冷却するための冷却系を備えている。また、中性子発生源18および複数の密閉容器2が設置される貯蔵エリア15は例えば水19などで満たして水没した状態とすることが望ましい。この場合、中性子発生源18や密閉容器2の周囲の水が放射線を遮蔽する作用を奏し、放射性物質の環境への漏洩をより確実に防止できる。また、ポンプ手段6やタービン8が停止した場合でも、密閉容器2の周囲の水が除熱の作用を奏するので、例えば運転員等がポンプ手段6やタービン8の再起動などの対応が出来る程度の一定時間内において密閉容器2等の温度が許容限界以上に上昇してしまうことを防止するようにできる。
【0038】
この貯蔵システム1’によれば、中性子発生源18である原子炉や加速器ターゲットなどから発生する中性子により、密閉容器2に収納されている使用済燃料7の核分裂反応が誘起され、冷却流体5から得られる熱量を増加することができる。図9中の点線の矢印は中性子発生源18から発生する中性子を示している。さらに、使用済燃料7中のプルトニウムやネプツニウムを燃焼することにより、使用済燃料7の長期的な放射性毒性を低減することが可能となる。また、使用済燃料7を発電のための燃料資源と位置付け得るため、使用済燃料7の貯蔵の概念を変えることが期待できる。尚、本実施形態における使用済燃料7は、例えば、貯蔵システム1において一定期間貯蔵した後、再処理工場などに輸送して化学処理その他のプロセスにより有用物質を回収し、再使用を図ったり放射線源として使用するなどの処理がとられるものとしてもよく、或いは廃棄処分としても構わない。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、例えば冷却流体5は冷却水に限定されず、他の液体であっても良く、或いはヘリウムガス、炭酸ガス、空気などの気体であっても構わない。この場合であっても、冷却管3を利用した強制冷却構造により、使用済燃料7の貯蔵密度を高め、コンパクトな敷地面積での使用済燃料7の大容量貯蔵を実現できる。また、冷却流体5が気体である場合、熱利用システム8をガスタービンとしても良い。
【0040】
また、熱利用システム8はタービンに限定されない。例えば冷却流体5が有する熱を熱交換器などを介して清浄な水や空気に伝え、温水や温風を供給するシステムであっても良い。或いは、タービンと上記温水または温風供給手段を組み合わせても良い。例えば、貯蔵システム1が設置された施設の内外における熱需要に対して使用済燃料7の崩壊熱を利用して温水や温風等を供給するようにしても良い。
【0041】
また、上述の実施形態では、複数の密閉容器2としてのキャニスタを連結管9を用いて直列に接続し、蒸気タービンを駆動できるような大きな熱量を得るようにしたが、必ずしも複数の密閉容器2,2間を接続する構成には限定されず、例えば各密閉容器2ごとに熱利用システム8またはポンプ手段6を接続しても良い。また、図9の構成において貯蔵エリア15を水没させる構成としたが、図6の構成においても貯蔵エリア15を水没させる構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の使用済燃料の高密度貯蔵システムの実施の一形態を示し、連結管で接続された密閉容器の断面を示す図である。
【図2】上記密閉容器に使用済燃料を収納する様子を示す図である。
【図3】上記密閉容器に固体粒子を充填する様子を示す図である。
【図4】上記密閉容器を連結管に取り付ける様子を示す図である。
【図5】冷却管内を流動する冷却流体により使用済燃料の崩壊熱が除去される様子を示す図である。
【図6】本発明の使用済燃料の高密度貯蔵システムの全体の一例を示す構成図である。
【図7】冷却流路の構成例を示す構成図である。
【図8】冷却流路の他の構成例を示す構成図である。
【図9】本発明の使用済燃料の高密度貯蔵システムの他の実施形態の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 貯蔵システム
2 密閉容器(キャニスタ)
3 冷却管
4 固体粒子
5 冷却流体(冷却水)
6 ポンプ手段
7 使用済燃料
8 熱利用システム(タービン)
9 連結管
10 冷却流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済燃料が収納される密閉容器と、前記密閉容器内に設置される冷却管と、前記密閉容器内に充填され、前記使用済燃料の崩壊熱を前記冷却管に伝える固体粒子群と、前記冷却管内で冷却流体を強制流動させるポンプ手段とを備えることを特徴とする使用済燃料の高密度貯蔵システム。
【請求項2】
前記使用済燃料から伝えられた前記冷却流体が有する熱エネルギを利用する熱利用システムを更に備えることを特徴とする請求項1記載の使用済燃料の高密度貯蔵システム。
【請求項3】
隣接する前記密閉容器の前記冷却管同士を接続する連結管を更に備え、前記ポンプ手段は、複数の前記冷却管および前記連結管とで構成される冷却流路に前記冷却流体を強制流動させ、前記熱利用システムは、前記冷却流路の出口側に設けられて前記冷却流体が有する熱エネルギを利用することを特徴とする請求項2記載の使用済燃料の高密度貯蔵システム。
【請求項4】
前記熱利用システムは、前記冷却流体が有する熱エネルギにより駆動され発電を行うタービンであることを特徴とする請求項3記載の使用済燃料の高密度貯蔵システム。
【請求項5】
前記密閉容器は、中性子発生源の周囲に設置され、前記中性子発生源より発生する中性子により前記使用済燃料の核分裂反応を誘起することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の使用済燃料の高密度貯蔵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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