説明

使用湯量演算装置

【課題】安価な方法にて、各使用者が実際に使用した温水の量を正確に求めることで、使用者間における公平性を保つ。
【解決手段】ベース流量センサSN101は、分岐される前の第1経路L21にて温水の流量を計測する。複数の個別流量センサSN102a〜SN102cは、分岐後の複数の第2経路L22a〜L22cそれぞれにおいて温水の流量を計測する。相関関係算出部141aは、給湯システム200の試運転時におけるベース流量センサSN101の計測結果及び個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果に基づいて、これらの計測結果の相関関係を各個別流量センサSN102a〜SN102c毎に算出する。計測結果補正部141bは、給湯システム200の通常運転時における各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を、各個別流量センサSN102a〜SN102c毎に算出された相関関係に基づき補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用湯量演算装置に関する。特に、本発明は、温水を貯留する貯湯タンクと、貯湯タンク内の温水を途中で分岐させて複数の住宅それぞれに設置された給湯端末に送る給湯経路とを有する給湯装置において、各住宅にて使用された温水の量を演算する使用湯量演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の住宅で構成されるマンション等の建物においては、例えば特許文献1(特開2004−340457号公報)に開示されているように、個々の住宅に温水を供給する給湯装置が備えられている。特に、単身者用マンションの場合、当該マンションには複数の住宅があり、各住宅には水栓や浴槽等の給湯端末が設置されることとなる。この場合、各住宅にて使用される温水は比較的少量と考えられるため、1台の貯湯タンクからの温水が各住宅に分配して使用される構成が採用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、温水の使用者に対しては、各使用者が個々の住宅において使用した温水の量に相当する使用料金の請求が行われる。そのため、給湯タンクの温水吐出管から分岐して各住宅の給湯端末に接続された複数の分岐管それぞれには、各住宅において使用された温水の量を計測する流量計が設けられている。しかしながら、この流量計には個体差があり、計測結果にはバラツキがある。そのため、バラツキを含めた計測結果(つまり、使用された温水の量)に対する使用料金が各使用者に請求されることとなり、必ずしも公平性が担保できていない現状がある。
【0004】
そこで、本発明の課題は、安価な方法にて、各使用者が実際に使用した温水の量を正確に求めることで、使用者間における公平性を保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る使用湯量演算装置は、貯湯タンクと給湯経路とを有する給湯装置において、各住宅にて使用された温水の量を演算する装置である。貯湯タンクは、温水を貯留する。給湯経路は、貯湯タンク内の温水を途中で分岐させて複数の住宅それぞれに設置された給湯端末に送る。この使用湯量演算装置は、第1流量計測部と、複数の第2流量計測部と、相関関係算出部と、計測結果補正部とを備える。第1流量計測部は、給湯経路のうち、分岐される前の温水が流れる第1経路に設けられており、第1経路を流れる温水の流量を計測する。複数の第2流量計測部は、給湯経路のうち、分岐され各給湯端末に送られる温水が流れる複数の第2経路それぞれに設けられており、各第2経路を流れる温水の流量を計測する。相関関係算出部は、給湯装置の試運転時における第1流量計測部の第1計測結果及び第2流量計測部の第2計測結果に基づいて、第1計測結果と第2計測結果との相関関係を各第2流量計測部毎に算出する。計測結果補正部は、給湯装置の通常運転時における各第2流量計測部の第2計測結果を、各第2流量計測部毎に算出された相関関係に基づき補正する。
【0006】
この使用湯量演算装置では、給湯装置の通常運転時の各第2流量計測部の結果は、試運転時に求められた、ベースの流量計である第1流量計測部の計測結果との相関関係によって補正される。そのため、各第2経路に設けられた個別の流量計である第2流量計測部の各第2計測結果、即ち各住宅毎の使用された温水の量は、正確な値となって求められることとなる。従って、安価な方法にて、各住宅において実際に使用された温水の量を正確に求めることができ、これによって各住宅の使用者間における公平性を保つことができる。
【0007】
本発明の第2観点に係る使用湯量演算装置は、第1観点に係る使用湯量演算装置において、相関関係算出部は、第1計測結果を基準として各第2計測結果を補正するための演算式を、相関関係として、第2流量計測部毎に求める。
【0008】
この使用湯量演算装置によると、個別の流量計である第2流量計測部の各第2計測結果、即ち各第2経路上における温水の流量は、上記演算式によって、当該流量をベースとなる第1流量計測部が計測したと仮定した場合の値に換算されるようになる。そのため、各住宅の給湯端末にて使用された温水の量それぞれが異なる第2流量計測部によって計測されたとしても、個々の演算式によって換算されるために、各第2流量計測部の個体差を含まない値となる。従って、換算後の第2計測結果同士を比較することができ、また各住宅の使用者への温水の使用料金を請求する際にも公平性を保つことができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る使用湯量演算装置は、第1観点または第2観点に係る使用湯量演算装置において、流量遮断部を更に備える。流量遮断部は、各第2経路における温水の流れを遮断可能である。そして、相関関係の算出においては、複数の第2経路のうち、相関関係の算出対象となる第2流量計測部が設けられた第2経路を除く他の第2経路において、温水の流れが流量遮断部によって遮断された状態での、第1計測結果及び第2計測結果が用いられる。更に、相関関係の算出においては、相関関係の算出対象となる第2流量計測部が異なる毎に、流量遮断部によって温水の流れが遮断される第2経路が異なる。
【0010】
この使用湯量演算装置によると、相関関係の算出の際、第1計測結果との相関関係を求める対象となる第2流量計測部が設けられた第2経路のみ、温水の流れが許容され、他の第2経路は温水の流れが遮断されるようになる。これにより、第1経路上を流れる温水の量は、相関関係を求める対象となる第2流量計測部が設けられた第2経路上を流れる温水の量と等しくなる。従って、相関関係を精度良く求めることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る使用湯量演算装置は、第1観点から第3観点のうちいずれか1つに係る使用湯量演算装置において、相関関係算出部は、更に、第2経路に流れる温水の流量レベル毎に相関関係を算出する。
【0012】
例えば流量レベルが“大”“中”“小”のように複数存在する場合、第1計測結果と各第2計測結果との相関関係は、流量レベル毎に異なっていることも考えられなくはない。しかし、この使用湯量演算装置によると、更に流量レベル毎に相関関係が算出されるため、より正確な相関関係が求められるようになる。
【0013】
本発明の第5観点に係る使用湯量演算装置は、第1観点から第4観点のうちいずれか1つに係る使用湯量演算装置において、相関関係算出部は、給湯装置の通常運転時における第1計測結果及び第2計測結果に基づいて、相関関係を各第2流量計測部毎に更に算出する。
【0014】
この使用湯量演算装置によると、給湯装置の試運転時のみならず、通常運転時においても相関関係が算出される。そのため、例えば試運転時に算出した相関関係と通常運転時に算出した相関関係とを比較することで、第1流量計測部や第2流量計測部において不具合が生じた場合には、これを把握することが可能となる。更に、相関関係が正しいかを、適宜確認することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1観点に係る使用湯量演算装置によると、安価な方法にて、各住宅において実際に使用された温水の量を正確に求めることができ、これによって各住宅の使用者間における公平性を保つことができる。
【0016】
本発明の第2観点に係る使用湯量演算装置によると、換算後の第2計測結果同士を比較することができ、また各住宅の使用者への温水の使用料金を請求する際にも公平性を保つことができる。
【0017】
本発明の第3観点に係る使用湯量演算装置によると、相関関係を精度良く求めることができる。
【0018】
本発明の第4観点に係る使用湯量演算装置によると、より正確な相関関係が求められるようになる。
【0019】
本発明の第5観点に係る使用湯量演算装置によると、第1流量計測部や第2流量計測部において不具合が生じた場合には、これを把握することが可能となる。更に、相関関係が正しいかを、適宜確認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る使用湯量演算装置が採用された給湯システムの全体構成図。
【図2】図1の給湯システムの構成を詳細に示した図。
【図3】図1の熱源ユニットの構成を簡単に示した図。
【図4】本実施形態に係る使用湯量演算装置の構成を模式的に示す図。
【図5】実際の第1経路上の流量(流量レベル)に対する、各個別流量センサの計測結果及びベース流量センサの計測結果の関係の一例を示す図。
【図6】本実施形態に係る使用湯量演算装置が搭載された給湯システムの全体的な動作を示すフロー図。
【図7】本実施形態に係る使用湯量演算装置が搭載された給湯システムの全体的な動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る使用湯量演算装置について、図面を参照しつつ詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)概要
図1は、本発明の一実施形態に係る使用湯量演算装置100が搭載された給湯システム200(給湯装置に相当)の全体構成図である。図2は、給湯システム200の詳細な構成を示す図である。図1,2の給湯システム200は、いわゆるヒートポンプ式の貯湯給湯システムであって、熱源ユニット10により沸き上げられた温度の高い温水を一旦貯湯タンク30に貯留し、該タンク30内に貯留された温水を各住宅co1〜co3に設置された水栓91a,91b,91cや浴槽92a,92b,92c等の給湯端末を介して使用者に供給するシステムである。本実施形態においては、各住宅co1〜co3にて使用された温水の量を正確に求めるべく、使用湯量演算装置100が給湯システム200内に搭載されている。
【0023】
特に、本実施形態に係る給湯システム200は、例えば単身者用マンションのように、比較的少人数が住居する複数の住宅co1〜co3からなるマンションに設置されている場合を例に取る。各住宅co1〜co3には、台所や浴室などの様々な箇所に給湯端末(具体的には、水栓91a〜91cや浴槽92a〜92c)が設置されており、各住宅co1〜co3の入居者は、該端末の使用により給湯システム200から出湯される温水を利用することができる。なお、以下では、説明の便宜上、各住宅co1〜co3の入居者を「使用者」と言う。
【0024】
本実施形態に係る給湯システム200は、使用湯量演算装置100を除き、図1,2に示すように、主として熱源ユニット10、貯湯タンクユニット20、給湯経路L20及び使用湯量演算装置100を備える。
【0025】
なお、給湯経路L20は、1つの貯湯タンク30と各住宅co1〜co3における水栓91a〜91cや浴槽92a〜92c等の給湯端末とを繋いでいる。給湯経路L20は、貯湯タンク30内の温水を各住宅co1〜co3の数だけ途中で分岐させ、当該温水を各給湯端末に送るための経路である(図2参照)。図1に示すように、給湯経路L20は、第1経路L21と第2経路L22a,L22b,L22cとを有する。第1経路L21は、給湯経路L20のうち、分岐される前の貯湯タンク30内の温水が流れる経路を言う。具体的に、第1経路L21は、一端が貯湯タンク30の上部吐出口32に接続され、他端が温水の流れ方向において最初に第2経路L22a〜L22cに分岐される点に接続されている。つまり、第1経路L21は、以下に述べる図2に係る給湯路L7のうち、上部吐出口32から住宅co1〜co3側への最初の分岐点までの間に相当する。第2経路L22a〜L22cは、給湯経路L20のうち、第1経路L21から各住宅co1〜co2に向けて分岐された経路を言う。具体的に、第2経路L22a〜L22cは、一端が第1経路L21に接続され、他端が対応する住宅co1〜co3における給湯端末(水栓91a〜91cや浴槽92a〜92c等)に接続されている。つまり、第2経路L22a〜L22cは、以下に述べる図2において、温水の流れ方向において最初の住宅co1〜co3側への分岐点から下流側にあたる給湯路L7の部分、水栓給湯路L8及び浴槽給湯路L9に相当する。
【0026】
以下では、本実施形態に係る熱源ユニット10、貯湯タンクユニット20及び使用湯量演算装置100の各構成について詳細に説明する。
【0027】
(2)熱源ユニットの構成
熱源ユニット10は、水を加熱するものである。熱源ユニット10は、図3に示すように、圧縮機11、水熱交換器12,膨張弁13及び蒸発器14を有している。圧縮機11、水熱交換器12、膨張弁13及び蒸発器14は、順次接続されて冷凍サイクルを構成している。圧縮機11は、冷凍サイクル内を循環する冷媒を圧縮する。水熱交換器12には、貯湯タンクユニット20か送られてくる水が通る熱交換水路15が設けられており、熱交換水路15中を流れる水と冷媒との間で熱交換を行うことができる。膨張弁13は、電気的に制御される電動弁であって、冷凍サイクル内を循環する冷媒を減圧する。蒸発器14は、冷凍サイクル内の冷媒と空気との間で熱交換を行わせ、冷媒を蒸発させるためのものである。
【0028】
この熱源ユニット10では、圧縮機11を駆動して冷媒を循環させることにより、水熱交換器12を凝縮器として機能させ、熱交換水路15中を通る水を加熱することができる。
【0029】
また、図示はしていないが、熱源ユニット10は、圧縮機11及び膨張弁13の制御を行う制御部を有する。制御部は、リモートコントローラ(図示せず)から送られてくる各種制御信号に基づいて、これらの機器の制御を行う。
【0030】
(3)貯湯タンクユニット
貯湯タンクユニット20は、図2に示すように、熱源ユニット10によって加熱された水を蓄えておき、蓄えた水を水栓91a〜91cや浴槽92a〜92cそれぞれに供給する際に用いられる機能部である。貯湯タンクユニット20は、貯湯タンク30、水源取水部40、沸き上げ部50、給湯部60及び追い炊き部70を有している。
【0031】
なお、主として、貯湯タンク30、水源取水部40及び沸き上げ部50については、各住宅co1〜co3にて共通して使用される構成のため、該ユニット20に1つのみ設けられている。その他の構成である給湯部60及び追い炊き部70については、各住宅co1〜co3毎に対応するようにして、該ユニット20に設けられている。図2では、説明を簡単にするため、各住宅co1〜co3毎に設けられている給湯部60及び追い炊き部70のうち、住宅co1用の給湯部60及び追い炊き部70を表している。
【0032】
(3−1)貯湯タンクの構成
貯湯タンク30は、熱源ユニット10によって加熱された温水を貯留する。貯湯タンク30の下部には、第1下部取水口31が設けられており、貯湯タンク30の上部には上部吐出口32が設けられている。第1下部取水口31は、水道等の水源からの水を貯湯タンク30に取り入れるための部分である。上部吐出口32は、貯湯タンク30に貯留された温水を貯湯タンク30から吐出して給湯部60に供給するための部分である。また、貯湯タンク30の下部には下部吐出口33が設けられており、貯湯タンク30の上部には上部取水口34が設けられている。下部吐出口33は、貯湯タンク30内に貯留された温水を貯湯タンク30から吐出して沸き上げ部50に供給するための部分である。上部取水口34は、熱源ユニット10によって加熱された温水を貯湯タンク30の上部から貯湯タンク30内に取り入れるための部分である。更に、貯湯タンク30の下部には、下部循環入口35が設けられ、貯湯タンク30の上部には上部循環出口36が設けられている。上部循環出口36は、追い炊き部70による追い炊き運転時に、貯湯タンク30から貯湯タンク循環路L1に吐出される温水が通る出口である。下部循環入口35は、追い炊き運転時に、貯湯タンク循環路L1から貯湯タンク30に戻される温水が通る入口である。
【0033】
そして、貯湯タンク30の下部には、排水口37及び第2下部取水口38が設けられている。排水口37は、タンク排水路L2に接続されており、貯湯タンク30内から排出される温水が通過する。第2下部取水口38は、熱源ユニット10によって加熱された温水を貯湯タンク30の下部から貯湯タンク30内に取り入れるための部分である。
【0034】
また、貯湯タンク30内には、5つのサーミスタTh1,Th2,Th3,Th4,Th5が取り付けられている。これらのサーミスタTh1〜Th5は、貯湯タンク30内に蓄えられた水の温度を検出するためのものであって、高さの異なる複数位置での水の温度を検出することができる。
【0035】
(3−2)水源取水部
水源取水部40は、水源からの水を貯湯タンク30や給湯部60に供給するための部分であって、水源取水路L3及び減圧逆止弁41を有している。水源取水路L3は、水源に接続される外部取水口42、貯湯タンク30の第1下部取水口31、水栓給湯部61の第1混合弁63、及び浴槽給湯部62の第2混合弁64を繋いでいる。減圧逆止弁41は、水源取水路L3に設けられており、貯湯タンク30、水栓給湯部61、浴槽給湯部62に供給される温水の量を制御可能であると共に、水源への水の逆流を防止する。
【0036】
(3−3)沸き上げ部
沸き上げ部50は、貯湯タンク30に貯留されている温水を熱源ユニット10に送り、熱源ユニット10により加熱された温水を貯湯タンク30に戻す部分であって、第1沸き上げ水路L4、第2沸き上げ水路L5、第3沸き上げ水路L6、沸き上げポンプ51及び三方切替弁52を有する。第1沸き上げ水路L4は、貯湯タンク30の下部吐出口33と、熱源ユニット10における熱交換水路15の上流側とを繋いでいる。第2沸き上げ水路L5及び第3沸き上げ水路L6は、熱交換水路15の下流側と貯湯タンク30の上部取水口34とを繋いでいる。沸き上げポンプ51は、第1沸き上げ水路L4に設けられており、貯湯タンク30から第1沸き上げ水路L4、熱交換水路15、第2沸き上げ水路L5、第3沸き上げ水路L6を経て貯湯タンク30に戻る温水の流れを生成する。三方切替弁52は、第2沸き上げ水路L5、第3沸き上げ水路L6及び第2下部取水口38に接続されている。三方切替弁52は、電気的に制御される電磁弁であって、第2沸き上げ水路L5及び第3沸き上げ水路L6を接続した状態と、第2沸き上げ水路L5及び第2下部取水口38を接続した状態とに切り替え可能である。
【0037】
(3−4)給湯部
給湯部60は、貯湯タンク30に貯留された温水を水栓91aや浴槽92a等の給湯端末に供給するためのものであって、水栓給湯部61及び浴槽給湯部62を有する。
【0038】
水栓給湯部61は、貯湯タンク30に貯留された温水や水源からの水を水栓91a〜91cに供給するためのものであって、第1混合弁63を有する。第1混合弁63は、電気的に制御される電磁弁であって、給湯路L7と水栓給湯路L8とを接続した状態、または水源取水路L3と水栓給湯路L8とを接続した状態に切り換えることができる。また、第1混合弁63は、給湯路L7を通過してきた温水と、水源取水路L3を通過してきた水とを混合し、利用者が所望する温度の温水を水栓給湯路L8に送ることもできる。尚、水栓給湯路L8は、第1混合弁63を介して給湯路L7及び水源取水路L3に接続されており、給湯路L7及び水源取水路L3と水栓91aとを繋ぐ水路である。給湯路L7は、貯湯タンク30の上部吐出口32と水栓給湯部61とを繋ぐと共に、上部吐出口32と浴槽給湯部62とを繋ぐ水路である。また、第1混合弁63と給湯路L7との接続部分、及び第1混合弁63と水源取水路L3との接続部分には、貯湯タンク30への逆流及び水源への逆流をそれぞれ防ぐための逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0039】
尚、水栓給湯路L8には、サーミスタTh6及び給湯水量センサSN1が設けられている。サーミスタTh6は、水栓給湯路L8内を通過する水または温水、つまりは住宅co1の水栓91aに供給される水または温水の温度を検出するためのものである。給湯水量センサSN1は、水栓給湯路L8により水栓91aに供給される水または温水の量を検出するためのものである。
【0040】
浴槽給湯部62は、貯湯タンク30内の温水や水源からの水を浴槽92aに供給するためのものであって、第2混合弁64を有する。第2混合弁64は、電気的に制御される電磁弁であって、給湯路L7と浴槽給湯路L9とを接続した状態、または水源取水路L3と浴槽給湯路L9とを接続した状態に切り換えることができる。また、第2混合弁64は、給湯路L7を通過した温水と水源取水路L3を通過した水とを混合し、利用者が所望する温度の温水を浴槽給湯路L9に送ることもできる。尚、浴槽給湯路L9は、第2混合弁64を介して給湯路L7と水源取水路L3とに接続されており、給湯路L7と浴槽92aとを繋ぐと共に、水源取水路L3と浴槽92aとを繋ぐ水路である。そして、第2混合弁64と給湯路L7との接続部分、及び第2混合弁64と水源取水路L3との接続部分には、貯湯タンク30への逆流を防ぐための逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0041】
また、浴槽給湯路L9には、流量調節弁65、浴槽湯水量センサSN2及びサーミスタTh7が設けられている。流量調節弁65は、浴槽92aに供給する温水の量を調整するためのものであって、浴槽湯水量センサSN2は、浴槽給湯部62により浴槽92aに供給される温水の量を検出するためのものである。サーミスタTh7は、浴槽92aに温水が供給される場合に、浴槽給湯路L9内を流れる温水の温度を検知するためのものである。
【0042】
(3−5)追い炊き部
追い炊き部70は、浴槽92aに蓄えられた温水(または水)を回収して貯湯タンク30に貯留された温水と熱交換を行わせた後に浴槽92aに戻すための部分であって、貯湯タンク循環路L1、タンク循環ポンプ71、浴槽循環ポンプ72及び追い炊き熱交換部73を有している。
【0043】
貯湯タンク循環路L1は、貯湯タンク30の上部循環出口36と、追い炊き熱交換部73と、下部循環入口35とを繋ぐ水路である。タンク循環ポンプ71は、貯湯タンク30の内部から上部循環出口36を通って吐出され貯湯タンク循環路L1を通過し、下部循環入口35を経て貯湯タンク30に戻される温水の流れを生成する。浴槽循環ポンプ72は、浴槽92a内から浴槽回収口92aaを通り、浴槽循環路L10を経て浴槽吐出口92abから浴槽92aに戻される温水の流れを生成する。追い炊き熱交換部73は、貯湯タンク循環路L1を通る高温の温水と、浴槽循環路L10を通る温水(又は水)との間で熱交換を行わせることで、浴槽92a中の温水(または水)を加熱可能な熱交換器である。尚、貯湯タンク循環路L1のうち追い炊き熱交換部73の下流であり、且つ浴槽循環ポンプ72の上流である部分には、浴槽給湯路L9が接続されている。このため、浴槽給湯部62によって浴槽92aに供給される温水は、浴槽給湯路L9から浴槽循環路L10に入り、浴槽循環路L10の一部を経て浴槽92aに供給される。尚、浴槽循環路L10は、浴槽92aから回収される温水(または水)が通過する浴槽回収口92aaと、追い炊き熱交換部73と、浴槽92aに吐出される温水が通る浴槽吐出口92abとを繋ぐ水路であって、浴槽92a中の温水(または水)が追い炊き熱交換部73により熱交換され、浴槽吐出口92abを介して浴槽92aに戻されるように設けられている。
【0044】
そして、浴槽循環路L10のうち、浴槽回収口92aaと追い炊き熱交換部73とを繋ぐ浴槽循環路L10には、水位センサ74a、水流スイッチ74b及びサーミスタTh8が設けられている。水位センサ74aは、浴槽92aの水位を検出するためのものであって、具体的には、浴槽回収口92aaの圧力値に応じて浴槽92aの水位を検出可能ないわゆる圧力センサである。水流スイッチ74bは、浴槽循環路L10内における水の流れを検出するためのものであって、浴槽循環路L10内を流れる温水(または水)の量が所定量以上である時にはオンし、所定量未満の時にはオフする。サーミスタTh8は、追い炊き熱交換部73で加熱される前の、浴槽92a内の温水(または水)の温度を検出する。
【0045】
また、図示はしていないが、貯湯タンクユニット20は、当該ユニット20を構成する機能部の制御を行う制御部を有する。この制御部は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータであって、主として、第1及び第2混合弁63,64、サーミスタTh1〜Th8、タンク循環ポンプ71,浴槽循環ポンプ72、水位センサ74a、水流スイッチ74b、及び各種水量センサSN1,SN2と接続されている。制御部は、サーミスタTh1〜Th8や各種センサSN1,SN2,74aから送られてくる検出結果やリモートコントローラ(図示せず)から送られてくる制御信号に基づいて、接続された各種機能部(具体的には、第1及び第2混合弁63,64、水流スイッチ74b)の制御を行う。
【0046】
(4)使用湯量演算装置の構成
次に、本実施形態に係る使用湯量演算装置100の構成について説明する。使用湯量演算装置100は、図1、図2及び図4に示すように、ベース流量センサSN101(第1流量計測部に相当)、複数の個別流量センサSN102a,SN102b,SN102c(第2流量計測部に相当)、複数の流量遮断弁111a,111b,111c、表示部121、操作部122、記憶部123及び制御部141を備える。
【0047】
特に、本実施形態においては、表示部121、操作部122、記憶部123及び制御部141は、図1,4に示すように、パーソナルコンピュータPC1内に設けられている。このパーソナルコンピュータPC1は、例えば各住宅co1〜co3を管理する管理者が所有している。
【0048】
(4−1)ベース流量センサ
ベース流量センサSN101は、第1経路L21上、即ち、給湯経路L20のうち各住宅co1〜co3の給湯端末に向けて分岐される前の温水が流れる第1経路L21上に、1つのみ設けられている。ベース流量センサSN101は、この第1経路L21を流れる温水の流量を計測する。つまり、本実施形態に係るベース流量センサSN101は、各住宅co1〜co3における給湯端末それぞれに供給される温水全てが流れている第1経路L21上において、貯湯タンク30内の温水の供給先となる住宅co1〜co3の数に関係なく、1つのみ設けられている。従って、ベース流量センサSN101は、各住宅co1〜co3の給湯端末それぞれに供給される温水のトータルの流量を計測することができる。
【0049】
(4−2)個別流量センサ
複数の個別流量センサSN102a〜SN102cは、住宅co1〜co3の数に対応して、各住宅co1〜co3への第2経路L22a〜L22c上に1つずつ設けられている。個別流量センサSN102a〜SN102cは、設けられた第2経路L22a〜L22cを流れる温水、即ち分岐され各給湯端末に送られる温水の水量を計測する。つまり、個別流量センサSN102a〜SN102cは、水栓91a〜91cや浴槽92a〜92c等の給湯端末を介して各住宅co1〜co3における使用者によって使用された温水の量を、各住宅co1〜co3毎に計測することができる。
【0050】
(4−3)流量遮断弁
複数の流量遮断弁111a〜111cは、それぞれ電磁弁で構成されており、住宅co1〜co3の数に対応して設けられている。本実施形態では、流量遮断弁111a〜111cは、各住宅co1〜co3への第2経路L22a〜L22c上に1つずつ設けられている。特に、流量遮断弁111a〜111cは、第2経路L22a〜L22c上において、個別流量センサSN102a〜SN102cの取り付けられている位置よりも温水の流れ方向の上流側に位置している。
【0051】
流量遮断弁111a〜111cは、対応する第2経路L22a〜L22cにおける温水の流れを遮断することができる。例えば、流量遮断弁111a〜111cは、給湯システム200が実際に使用され通常運転を開始する場合には、全て”開”の状態を採る。また、流量遮断弁111a〜111cは、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果の補正の際に利用される関数算出の際には、開”または“閉”の状態を採る。
【0052】
(4−4)表示部
表示部121は、例えば液晶ディスプレイからなり、給湯システム200に関する各種画面を表示する。表示部121が表示する各種画面としては、給湯システム200が正常に運転しているか否かを運転状態確認画面、沸き上げ時間及び沸き上げられる温水の量等を設定する設定画面等が挙げられる。
【0053】
また、本実施形態に係る表示部121は、後述する制御部141によって演算された各住宅co1〜co3における温水の使用量及び使用料金を表す画面も、表示することができる。
【0054】
(4−5)操作部
操作部122は、例えば文字キーやテンキー等を備えたキーボードとマウス等のポインティングデバイスとからなり、表示部121に表示された各種画面に基づいて作業者が各種指示を行う場合等に用いられる。例えば、表示部121に設定画面が表示されていれば、パーソナルコンピュータPC1の利用者である給湯システム200の管理者は、操作部122を介して、沸き上げ時間及び沸き上げられる温水の量等を設定することができる。
【0055】
また、給湯システム200の管理者は、操作部122を介して、運転状態確認画面や各住宅co1〜co3における温水の使用量及び使用料金を表す画面の表示を指示することができる。更に、給湯システム200の管理者は、給湯システム200の点検作業の際等に、操作部122を介して給湯システム200の運転停止/運転開始を指示することも可能である。
【0056】
(4−6)記憶部
記憶部123は、例えばHDDやフラッシュメモリ等からなる構成を有しており、制御部141によって読み出されて実行される各種プログラムを記憶している。特に、記憶部123は、制御部141が後述する相関関係算出部141a、計測結果補正部141b、及び開閉制御部141cとして機能するためのプログラムを記憶している。
【0057】
また、記憶部123は、制御部141によって算出された、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果の補正の際に利用される関数を記憶することができる。更に、記憶部123は、制御部141によって求められた各住宅co1〜co3における温水の使用量及び使用料金を記憶することができる。
【0058】
(4−7)制御部
制御部141は、ワークメモリとして用いられるRAMとCPUとからなる構成を有しており、図4に示すように、表示部121、操作部122及び記憶部123と接続されている。制御部141は、記憶部123内に記憶されている各種プログラム及び操作部122を介してなされた給湯システム200の管理者からの各種指示に基づいて、表示部121に表示される画面の制御等を行う。
【0059】
特に、制御部141は、各センサSN101,SN102a〜SN102c、流量遮断弁111a〜111cとも接続されている。制御部141は、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果の補正の際に利用される関数を求めると共に、当該センサSN102a〜SN102cの計測結果の補正を行うことで、各住宅co1〜co3において使用された温水の量を正確に演算することができる。更に、制御部141は、流量遮断弁111a〜111cの開閉制御も行う。このような動作を行うため、本実施形態に係る制御部141は、相関関係算出部141a、計測結果補正部141b及び開閉制御部141cとして機能する。
【0060】
(4−7−1)相関関係算出部
相関関係算出部141aは、給湯システム200の試運転時、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果の補正の際に利用される関数を算出する。具体的には、相関関係算出部141aは、給湯システム200の試運転時におけるベース流量センサSN101の計測結果(第1計測結果に相当)及び個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果(第2計測結果に相当)に基づいて、ベース流量センサSN101の計測結果と個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果との相関関係を個別流量センサSN102a〜SN102c毎に算出する。ここでいう相関関係とは、ベース流量センサSN101の計測結果を基準として、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を補正するための演算式(即ち、関数)であって、更に、第2経路L22a〜L22cに流れる流量のレベル毎に算出される。
【0061】
ここで、相関関係算出部141aが上記相関関係を算出する手法の一例について、主に図1及び図5を用いて説明する。図5は、上記相関関係の算出の際、第1経路L21上を実際に流れる流量及び流量レベルと、当該流量に対する各センサSN101,SN102a〜SN102cの計測結果との関係を表した図である。ここでは、第1経路L21の流量“100”“200”“300”は、順に流量レベル“小”“中”“大”に該当している。
【0062】
給湯システム200の試運転時、個別流量センサSN102aについての相関関係を求める際には、図1に係る複数の第2経路L22a〜L22cのうち、第2経路L22b,L22cにおける温水の流れが流量遮断弁111b,111cによってせき止められ、第2経路L22aにおける温水の流れのみが流量遮断弁111aによって許容される。すると、貯湯タンク30から吐出され第1経路L21を流れてきた温水は、分岐点にて分岐されることなく全てが第2経路L22aに流れることとなる。この状態で、先ずは流量レベル“小”(つまり、流量“100”)の状態にて、ベース流量センサSN101及び個別流量センサSN102aがそれぞれ計測した各計測結果を、相関関係算出部141aは取得する。この時、ベース流量センサSN101の計測結果が“101”であり、個別流量センサSN102aの計測結果が“94”であったとする。この場合、相関関係算出部141aは、ベース流量センサSN101の計測結果を基準とすると個別流量センサSN102aの計測結果が約93.069%の値となっていることから、流量レベル“小”での個別流量センサSN102aに対する相関関係の演算式を、「Mx’=1/0.93069×Mx」と求めることができる。ここで、「Mx」は変数であって、給湯システム200が通常運転している場合に、流量レベル“小”において個別流量センサSN102aが計測した流量の値(計測結果)を表している。「Mx’」は、給湯システム200の通常運転時における個別流量センサSN102aの計測結果が補正された後の値を表している。
【0063】
相関関係算出部141aは、第2経路L22b,L22cによる温水の流れがせき止められたままの状態で、流量レベル“中”“大”それぞれについても、上述した流量レベル“小”の場合と同様にしてベース流量センサSN101の計測結果と個別流量センサSN102aの計測結果との相関関係である演算式を求める。これにより、図5の一例では、流量レベル“中”“大”の場合のベース流量センサSN101の計測結果がそれぞれ“201”“302“であるとした場合、個別流量センサSN102aにおける相関関係は、流量レベル“中”にて「Mx’=1/0.94527×Mx」、流量レベル“大”にて「Mx’=1/0.95033×Mx」と算出されうる。
【0064】
次に、個別流量センサSN102bについての相関関係を求める場合、図1に係る複数の第2経路L22a〜L22cのうち、第2経路L22a,L22cにおける温水の流れが流量遮断弁111a,111cによってせき止められ、第2経路L22bにおける温水の流れのみが流量遮断弁111bによって許容される。すると、貯湯タンク30から吐出され第1経路L21を流れてきた温水は、分岐されることなく全てが第2経路L22bに流れることとなる。この状態で、相関関係算出部141aは、上述した個別流量センサSN102aの相関関係の算出の場合と同様にして、流量レベル“小”“中”“大”の各場合におけるベース流量センサSN101の計測結果と個別流量センサSN102bの計測結果との演算式を相関関係として求めていく。
【0065】
同様にして、個別流量センサSN102cについて相関関係を求める場合、図1に係る複数の第2経路L22a〜L22cのうち、第2経路L22a,L22bにおける温水の流れが流量遮断弁111a,111bによってせき止められ、第2経路L22cにおける温水の流れのみが流量遮断弁111cによって許容される。すると、貯湯タンク30から吐出され第1経路L21を流れてきた温水は、分岐されることなく全てが第2経路L22cに流れることとなる。この状態で、相関関係算出部141aは、上述した個別流量センサSN102aの相関関係の算出の場合と同様にして、流量レベル“小”“中”“大”の各場合におけるベース流量センサSN101の計測結果と個別流量センサSN102cの計測結果との演算式を相関関係として求めていく。
【0066】
まとめると、相関関係算出部141aは、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cに対して流量レベルを変化させ、各流量レベル毎に演算式を算出する。更に、相関関係算出部141aは、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cを1つずつ変えていく。これにより、相関関係算出部141aは、個々の個別流量センサSN102a〜SN102cに対し、当該センサSN102a〜SN102cの計測結果をベース流量センサSN101の計測結果として換算するための演算式を相関関係として、求めることができる。このようにして、給湯システム200の試運転時に相関関係算出部141aによって求められた相関関係は、記憶部123内に格納される。
【0067】
また、本実施形態に係る相関関係算出部141aは、給湯システム200の通常運転時においても、所定のタイミングで相関関係(具体的には、演算式)の算出を各個別流量センサSN102a〜SN102c毎に行う。所定のタイミングとしては、給湯システム200が通常運転しているものの、各住宅co1〜co3において温水の使用がなされていない(または、強制的に禁止されている場合)等が挙げられる。この場合においても、相関関係算出部141aは、相関関係を、上述した相関関係の算出手法と同様にして求めることができる。
【0068】
そして、相関関係算出部141aは、通常運転時に新たに求めた相関関係と、記憶部123内の相関関係(つまり、試運転時に求めた相関関係)とを比較し、新たに求めた相関関係と記憶部123内の相関関係とが異なる場合には、ベース流量センサSN101または個別流量センサSN102a〜SN102cのいずれかが故障であると判断する。例えば、新たに求めた各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係全てが、記憶部123内の各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係と異なっている場合には、相関関係算出部141aは、全ての相関関係に関係しているベース流量センサSN101が故障していると判断する。一方で、新たに求めた相関関係のうち、特定の個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係のみが、記憶部123内の相関関係と異なる場合には、相関関係算出部141aは、該当する個別流量センサSN102a〜SN102cのみが故障していると判断する。この故障の判断結果は、表示部121に表示されると良い。
【0069】
更に、新たに求めた相関関係と記憶部123内の相関関係との比較により、記憶部123内の相関関係が正しい内容であるかを、適宜確認することもできる。
【0070】
(4−7−2)計測結果補正部
計測結果補正部141bは、給湯システム200の通常運転時における各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を、上記相関関係算出部141aにて算出された各個別流量センサSN102a〜N102c毎の相関関係に基づいて、補正する。例えば、取得した個別流量センサSN102aの計測結果が流量レベル“小”の場合の結果であれば、計測結果補正部141bは、記憶部123内から、流量レベル“小”での個別流量センサSN102aにおける相関関係(つまりは、演算式)を抽出する。そして、計測結果補正部141bは、この相関関係中の変数「Mx」に、取得した個別流量センサSN102aの計測結果を代入し、個別流量センサSN102aの計測結果を、ベース流量センサSN101が計測したと仮定した場合に得られる結果「Mx’」に換算する。
【0071】
このようにして、計測結果補正部141bは、給湯システム200の通常運転時、各個別流量センサSN102a〜SN102cが計測した計測結果全てに対し、個々に対応する相関関係を用いて補正を行う。これにより、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果全ては、ベース流量センサSN101の計測結果を基準として換算されることとなり、公平な観点で互いに比較できるようになる。
【0072】
(4−7−3)開閉制御部
開閉制御部141cは、相関関係算出部141aが各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係を算出する際に、各流量遮断弁111a〜111cに対し通電制御を行うことで、各流量遮断弁111a〜111cを“開”または“閉”の状態にさせる。例えば、相関関係算出部141aが個別流量センサSN102aにおける相関関係を算出する際には、開閉制御部141cは、個別流量センサSN102aが設けられている第2経路L22a上の流量調節弁111aのみを“開”状態にし、他の流量調節弁111b,111cを“閉”状態にする。
【0073】
つまり、開閉制御部141cは、相関関係の算出対象となる個別流量センサ(例えば、SN102a)が設けられた第2経路(この場合、L22)のみの、温水の流れを許容しつつ、他の第2経路、つまりは相関関係の算出対象ではない個別流量センサ(この場合、SN102b,SN102c)が設けられた第2経路(L22b,L22c)において、温水の流れを遮断させる。そして、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cが異なる毎に、開閉制御部141cは、“開”状態を採る流量調節弁並びに“閉”状態を採る流量調節弁を変えていくことで、温水の流れが遮断される第2経路L22a〜L22cを変えていく。これは、算出対象となる個別流量センサ(例えば、SN102a)が設けられた第2経路(この場合、L22a)以外の第2経路(この場合、L22b,L22c)についても温水の流れを許容してしまうと、第1経路L21上の温水の流量と算出対象である個別流量センサ(この場合、SN102a)の温水の流量とが一致せず、また算出対象の個別流量センサ(この場合、SN102a)のみならず算出対象外の個別流量センサ(この場合、SN102b,SN102c)の影響までをも考慮して個別流量センサ(この場合、SN102a)における相関関係を算出しなければならなくなり、相関関係の算出が事実上複雑になってしまうためである。
【0074】
また、開閉制御部141cは、給湯システム200の通常運転時にも、例えば暖房や冷房等の通常運転の種類や各種設定等に基づいて、各流量遮断弁111a〜111cの通電制御を行う。更に、開閉制御部141cは、給湯システム200の運転開始指示及び運転停止指示等に基づいても、各流量遮断弁111a〜111cの通電制御を行う。
【0075】
(5)使用湯量演算装置の動作
図6,7は、本実施形態に係る使用湯量演算装置100が搭載された給湯システム200の全体的な流れを示すフロー図である。
【0076】
ステップS1〜S2:始めに、給湯システム200は、住宅co1〜co3からなるマンションに設置され(S1)、試運転が開始される(S2)。
【0077】
ステップS3:開閉制御部141cとして機能する制御部141は、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cが設けられた第2経路L22a〜L22c上の流量遮断弁111a〜111cを“開”の状態にし、対象外の個別流量センサSN102a〜102cが設けられた第2経路L22a〜L22c上の流量遮断弁111a〜111cを、共に“閉”の状態にする。
【0078】
ステップS4:ステップS3の状態で、ベース流量センサSN101は、第1経路L21上の温水の流量を計測し、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cは、第2経路L22a〜L22c上の温水の流量を計測する。
【0079】
ステップS5:相関関係算出部141aとして機能する制御部141は、ステップS4におけるベース流量センサSN101の検出結果と、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果とに基づいて、これらの計測結果の相関関係を表す演算式を算出し、記憶部123に格納する。
【0080】
ステップS6〜S7:全ての個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係が算出されていない限り(S6のNo)、相関関係の算出対象となる個別流量センサSN102a〜SN102cが変更され(S7)、ステップS3以降の動作が繰り返される。
【0081】
ステップS8〜S10:ステップS6において、全ての個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係が算出された後(S6のYes)、給湯システム200の運転開始指示があれば(S8のYes)、開閉制御部141cとして機能する制御部141は、全ての流量遮断弁111a〜111cを“開”の状態にし(S9)、給湯システム200は、通常運転を開始する(S10)。
【0082】
ステップS11:各個別流量センサSN102a〜SN102cそれぞれは、各第2経路L22a〜L22cを流れる温水の流量の計測を開始する。
【0083】
ステップS12〜S13:計測結果補正部141bとして機能する制御部141は、各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を、対応する相関関係に基づいて補正する。補正後の個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果は、各住宅co1〜co3にて使用された温水の量に相当する。そして、制御部141は、各住宅co1〜co3にて使用された温水の量に基づく使用料金を演算する(S13)。
【0084】
ステップS14〜S15:パーソナルコンピュータPC1の操作部122を介して、各住宅co1〜co3にて使用された温水の量及び使用料金の表示が指示された場合には(S14のYes)、表示部121は、各住宅co1〜co3にて使用された温水の量及び各住宅co1〜co3毎の使用料金を表す画面を表示する(S15)。
【0085】
ステップS16〜S18:相関関係を算出するタイミングとなった場合には(S16のYes)、制御部141は、ステップS3〜S5と同様にして相関関係の算出を行い(S17)、各センサSN101、SN102a〜SN102cが異常であるか否かの判断等を行う。表示部121は、この制御部141の判断結果を表示する(S18)。
【0086】
ステップS19:パーソナルコンピュータPC1の操作部122を介して、給湯システム200の運転終了指示がなされない限り(S19のNo)、ステップS12以降の動作が繰り返される。給湯システム200の運転終了指示がなされた場合には(S19のYes)、給湯システム200及び当該システム200に搭載されている使用湯量演算装置100は、運転を終了する。
【0087】
(6)特徴
(6−1)
本実施形態に係る使用湯量演算装置100では、給湯経路L20のうち、分岐される前の温水が流れる第1経路L21には、ベース流量センサSN101が設けられており、分岐され各給湯端末に送られる温水が流れる複数の第2経路L22a〜L22cそれぞれには、個別流量センサSN102a〜SN102cが設けられている。この状態で、相関関係算出部141aとして機能する制御部141は、給湯システム200の試運転時におけるベース流量センサSN101の計測結果と各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果との相関関係を、各個別流量センサSN102a〜SN102c毎に算出する。計測結果補正部141bとして機能する制御部141は、給湯システム200の通常運転時における各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を、各個別流量センサSN102a〜SN102c毎に算出された相関関係に基づき補正する。そのため、各第2経路L22a〜L22cに設けられた個別流量センサSN102a〜SN102cの各計測結果、即ち各住宅co1〜co3毎の使用された温水の量は、正確な値となって求められることとなる。従って、安価な方法にて、各住宅co1〜co3において実際に使用された温水の量を正確に求めることができ、これによって各住宅co1〜co3の住宅者間における公平性を保つことができる。
【0088】
(6−2)
また、本実施形態に係る使用湯量演算装置100では、ベース流量センサSN101の計測結果を基準として各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果を補正するための演算式が、相関関係として、個別流量センサSN102a〜102c毎に求められる。そのため、個別流量センサSN102a〜SN102cの各計測結果、即ち各第2経路L22a〜L22c上における温水の流量は、この演算式によって、当該流量をベース流量センサSN101が計測したと仮定した場合の値に換算されるようになる。そのため、各住宅co1〜co3の給湯端末にて使用された温水の量それぞれが異なる個別流量センサSN102a〜SN102cによって計測されたとしても、個々の演算式によって換算されるために、各個別流量センサSN102a〜SN102cの個体差を含まない値となる。従って、換算後の各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果同士を比較することができ、また各住宅co1〜co3の使用者への温水の使用料金を請求する際には、公平性を保つことができる。
【0089】
(6−3)
また、本実施形態に係る使用湯量演算装置100では、相関関係の算出の際、ベース流量センサSN101の計測結果との相関関係を求める対象となる個別流量センサ(例えば、SN102a)が設けられた第2経路L22aのみ、温水の流れが許容され、他の第2経路L22b,L22cは温水の流れが遮断されるようになる。これにより、第1経路L21上を流れる温水の量は、相関関係を求める対象となる個別流量センサSN102aが設けられた第2経路L22a上を流れる温水の量と等しくなる。従って、相関関係を精度良く求めることができる。
【0090】
(6−4)
例えば流量レベルが“大”“中”“小”のように複数存在する場合、ベース流量センサSN101の計測結果と各個別流量センサSN102a〜SN102cの計測結果との相関関係は、流量レベル毎に異なっていることも考えらなくはない。しかし、本実施形態に係る使用湯量演算装置100によると、相関関係は更に流量レベル毎に算出されるため、より正確な相関関係が求められるようになる。
【0091】
(6−5)
更に、本実施形態に係る使用湯量演算装置100によると、給湯システム200の試運転時のみならず、通常運転時においても相関関係が算出される。そのため、例えば試運転時に算出した相関関係と通常運転時に算出した相関関係とを比較することで、ベース流量センサSN101や個別流量センサSN102a〜SN102cにおいて不具合が生じた場合には、これを把握することが可能となる。更に、相関関係が正しいかを、適宜確認することができるようになる。
【0092】
(7)変形例
(7−1)変形例A
上記実施形態において、給湯システム200の試運転時に使用したベース流量センサSN101は、各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係を求めた後に、第1経路L21から取り外されてもよい。
【0093】
(7−2)変形例B
また、上記実施形態では、給湯システム200の通常運転時にも、各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係が適宜求められると説明した。しかし、各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係は、給湯システム200の試運転時にのみ求められても良い。
【0094】
また、各センサSN101,SN102a〜SN102cが故障などにより新たなセンサに取り替えられた際には、取り替えられたセンサSN101,SN102a〜SN102cにおける相関関係のみが求められてもよい。
【0095】
(7−3)変形例C
また、上記実施形態では、相関関係の算出の手法を、図5を用いて概念的に説明した。しかし、本発明では、ベース流量センサSN101を基準として各個別流量センサSN102a〜SN102cにおける相関関係が求められればよいため、相関関係の算出の手法は、これに限定されない。
【0096】
(7−4)変形例D
また、上記実施形態では、給湯システム200の運転の開始及び終了の指示が、住宅co1〜co3の管理者によってパーソナルコンピュータPC1を介してなされる場合について説明した。しかし、給湯システム200の運転の開始及び終了の指示は、給湯システム200のリモートコントローラを介してなされてもよい。また、パーソナルコンピュータPC1は、住宅co1〜co3を有するマンションとは別の建物に設置されており、各種指示がネットワークを介してなされても良い。
【0097】
また、パーソナルコンピュータPC1の表示部121上に表示される各種画面についても、パーソナルコンピュータPC1上ではなく、給湯システム200のリモートコントローラや、別の建物に設置されている端末上に表示されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る使用湯量演算装置は、安価な方法にて、各住宅において実際に使用された温水の量を正確に求めることができ、これによって使用者間における公平性を保つことができる。従って、本発明に係る使用湯量演算装置は、貯湯タンク内の温水を途中で分岐させて複数の住宅それぞれに設置された給湯端末へと送る構成の給湯システムにおいて、各住宅にて使用された温水の量を演算する装置として適用できる。
【符号の説明】
【0099】
10 加熱ユニット
20 貯湯タンクユニット
30 貯湯タンク
40 水源取水部
50 沸き上げ部
60 給湯部
70 追い炊き部
100 使用湯量演算装置
111a〜111c 流量遮断弁
121 表示部
122 操作受付部
123 記憶部
141 制御部
141a 相関関係算出部
141b 計測結果補正部
141c 開閉制御部
200 給湯システム
L20 給湯経路
L21 第1経路
L22a〜L22c 第2経路
SN101 ベース流量センサ
SN102a〜SN102c 個別流量センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2004−340457号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯留する貯湯タンク(30)と、前記貯湯タンク内の温水を途中で分岐させて複数の住宅(co1〜co3)それぞれに設置された給湯端末(91a〜91c,92a〜92c)に送る給湯経路(L20)とを有する給湯装置(200)において、各前記住宅にて使用された温水の量を演算する使用湯量演算装置(100)であって、
前記給湯経路のうち、分岐される前の温水が流れる第1経路(L21)に設けられており、前記第1経路を流れる温水の流量を計測する第1流量計測部(SN101)と、
前記給湯経路のうち、分岐され各前記給湯端末に送られる温水が流れる複数の第2経路(L22a〜L22c)それぞれに設けられており、各前記第2経路を流れる温水の流量を計測する複数の第2流量計測部(SN102a〜SN102c)と、
前記給湯装置の試運転時における前記第1流量計測部の第1計測結果及び前記第2流量計測部の第2計測結果に基づいて、前記第1計測結果と前記第2計測結果との相関関係を各前記第2流量計測部毎に算出する相関関係算出部(141a)と、
前記給湯装置の通常運転時における各前記第2流量計測部の前記第2計測結果を、各前記第2流量計測部毎に算出された前記相関関係に基づき補正する計測結果補正部(141b)と、
を備える、使用湯量演算装置(100)。
【請求項2】
前記相関関係算出部(141a)は、前記第1計測結果を基準として各前記第2計測結果を補正するための演算式を、前記相関関係として、前記第2流量計測部毎に求める、
請求項1に記載の使用湯量演算装置(100)。
【請求項3】
各前記第2経路における温水の流れを遮断可能な流量遮断部(111a〜111c)、
を更に備え、
前記相関関係の算出においては、
複数の前記第2経路のうち、前記相関関係の算出対象となる前記第2流量計測部が設けられた前記第2経路を除く他の前記第2経路において、温水の流れが前記流量遮断部によって遮断された状態での、前記第1計測結果及び前記第2計測結果が用いられ、
前記相関関係の算出対象となる前記第2流量計測部が異なる毎に、前記流量遮断部によって温水の流れが遮断される前記第2経路が異なる、
請求項1または2に記載の使用湯量演算装置(100)。
【請求項4】
前記相関関係算出部(141a)は、更に、前記第2経路に流れる温水の流量レベル毎に前記相関関係を算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の使用湯量演算装置(100)。
【請求項5】
前記相関関係算出部(141a)は、前記給湯装置の通常運転時における前記第1計測結果及び前記第2計測結果に基づいて、前記相関関係を各前記第2流量計測部毎に更に算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の使用湯量演算装置(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate