説明

使用

【課題】
【解決手段】本発明は、癌、癌に伴って発生する感染症の光動力学的治療もしくは診断または非癌性症状の治療もしくは診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用に関する。本発明はまた、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む、このような方法において用いられる固形医薬品、例えば、坐剤、膣坐剤、錠剤、ペレット剤およびカプセル剤に関する。このような製品は、下部消化器系または女性生殖器系における癌性または非癌性症状の光動力学的治療または診断、例えば、結腸癌または子宮頸癌の治療または診断に用いられるのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌等の症状の光動力学的治療および診断方法、特に、このような方法における、5−アミノレブリン酸(5−ALA)またはその前駆体もしくは誘導体(例えば、5−ALAエステル)である光増感剤を含む固形医薬品の使用に関する。本明細書に記載される医薬品は、下部消化器系(特に、下部小腸、結腸および直腸)および女性生殖器系(すなわち、子宮、子宮頸部、膣)における癌および非癌性症状の治療または診断における使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
光動力学的治療(PDT)は、様々な癌やその他の疾患の治療に用いられている比較的新しい技術である。PDTでは、光増感剤を投与した後、光活性化光に露光することで光増感剤を活性化し、それらを細胞毒性形態に変換することで、細胞を破壊して疾患を治療する。5−アミノレブリン酸(5−ALA)およびその特定の誘導体、例えば、5−ALAエステルを含むいくつかの光増感剤が知られており、文献に記載されている。
【0003】
現在、5−ALAまたはそのエステルを含む3つの医薬品が、PDTおよび光動力学的診断(PDD)において臨床的に使用されている。これらは、フォトキュア・エーエスエー(Photocure ASA)社(ノルウェー、オスロ)により開発されたメトヴィックス(Metvix)(登録商標)およびへクスヴィックス(Hexvix)(登録商標)ならびにドゥサ・ファーマシューティカルズ(DUSA Pharmaceuticals)社(カナダ)により開発されたレヴラン・ケラスティック(Levulan Kerastick)(登録商標)である。メトヴィックス(登録商標)は、光線性角化症および基底細胞癌の治療のための、乳剤(クリーム)にメチルALAエステルを含む皮膚剤である。へクスヴィックス(登録商標)は、膀胱癌の診断のため膀胱に滴注される、へキシルALAを含む水溶液である。レヴラン・ケラスティック(登録商標)は、塗布直前に5−ALAの溶液を調製するために用いられる、2成分からなる(2-compartment)製剤である。この製品は、皮膚疾患の治療に用いることができる。
【0004】
これらの製品は臨床的に有用であるが、いずれにおいても、5−ALAが不安定であるという欠点がある。5−ALAおよびそのエステルは、それらが含まれる医薬品の貯蔵寿命を制限する広範囲の分解反応を受ける。
【0005】
この問題を克服しようと、多くの異なる方策が採られてきた。例えば、製品メトヴィックス(登録商標)に関しては、クリームを低温状態で保存することで不安定性の問題に対処しており、製品レヴラン・ケラスティック(登録商標)に関しては、被験者に投与される溶液が使用直前にのみ調製されるよう、5−ALAをその希釈剤とは別に供給している。へクスヴィックス(登録商標)は、凍結乾燥粉末剤として供給され、使用直前に水溶液に溶解させている。
【0006】
しかしながら、これらの手法には欠点がある。例えば、薬剤を低温状態で輸送および保存することは、必ずしも便利であるとは限らない。さらに、医薬組成物をすぐに使用できる形態で提供することが、医師にとって最も便利であり、一般的に好ましい。すぐに使用できる形態で提供することで、組成物を確実かつ正確な濃度で調製することも可能になる。これは、正確な量の治療用物質を投与することが重大であり得る、癌を含む大部分の疾患の治療および診断において、特に重要である。
【0007】
US2003/125388(特許文献1)は、25℃での誘電率が80未満で安定剤の働きをする非水性液剤に、5−ALAまたはその誘導体を溶解または分散させた、安定した5−ALA製剤を提供する別の手法を記載している。非水性液剤を使用することで、5−ALAのエノール形の形成が促進され、それによりその崩壊が防止されるものと仮定される。US2003/125388に言及されている適切な非水性液剤は、例えば、アルコール、エーテル、エステル、ポリ(アルキレングリコール)、リン脂質、DMSO、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドである。この組成物は、治療または診断に用いられるキットの一部分を形成し得る。キットの他部分は、水を含む組成物である。この場合、キットの2つの部分を使用前に混合させる。
【0008】
したがって、実際に投与される医薬品を医師が調剤する必要のある形態で治療用物質を提供することは一般的に望ましくないという点で、US2003/125388の手法にはレヴラン・ケラスティック(登録商標)と同様の欠点がある。さらに、非水性液剤の動物への投与は、必ずしも望ましいとは限らないことがある。
【0009】
上記方策の全てにおけるさらなる欠点は、液剤およびクリーム剤は、身体の多くの部位の治療、特に、局所治療に使用することが困難なことである。癌は身体の至る所に発生するため、これは癌治療の場合に特に不都合である。
【0010】
従来のPDTまたはPDD法を用いた治療が困難な身体の部位として、下部消化器系および女性生殖器系(すなわち、子宮、子宮頸部および膣)が挙げられる。現在、身体のこれらの部分の光動力学的診断または治療において臨床使用が可能な製品は存在しない。これは、特に、結腸炎、結腸癌、クローン病、過敏性腸疾患および様々な局所感染症等の重大かつ生命を脅かすいくつかの疾患と関連し得る結腸および直腸、ならびに子宮頸部感染症および子宮頸癌と関連し得る子宮頸部に関し、重大な問題となっている。これらの疾患、特に、結腸癌および子宮頸癌をより早期に診断する方法が医学的に必要となっている。
【0011】
現在の結腸癌の診断方法として、血便、下腹部痛または体重減少等の臨床症状のモニタリング、結腸鏡検査およびX線ベースのイメージング法が挙げられる。結腸癌患者の予後は、その他大部分の癌形態と同様に、診断時の病期、および特に遠隔転移が患者に見られるかどうかに左右される。今日、結腸癌の治療のため臨床的に使用されている治療薬剤はいくつか存在するが、現在の薬剤には臨床的限界があり、さらなる治療養生法および別の早期診断法が医学的に必要となっている。
【0012】
子宮頸部の最も重大な感染症の一つは、子宮頸癌に変わり得るヒトパピローマウイルス(HPV)である。HPV感染症は、ほぼ全ての子宮頸癌症例が発症する際の共通因子である。HPV感染症の推定罹患率は様々であるが、通常、全女性の約30%であり得る。近年、ガーダシル(Gardasil)(登録商標)やセルヴァリックス(Cervarix)(登録商標)等のHPVワクチンが開発されている。しかしながら、子宮頸癌が生命を脅かす疾患であることに変わりはない。残念ながら、癌は、末期になるまで症状が現れないことがあるため、末期になって診断されることが多い。考えられる子宮頸癌の早期徴候の一つは、膣出血である。子宮頸癌は、生検法に基づき診断される。主な治療は手術であるが、疾患の末期においては、放射線および化学療法を用いることができる。子宮頸癌患者の予後は、診断時の病気の段階に左右される。
【0013】
(水性製剤を含む)水剤、懸濁剤、伝統的な錠剤およびカプセル剤等の5−ALAおよびその誘導体を含む経口製剤は、下部消化管における癌および非癌性疾患の診断および/または治療処置に用いられる場合、いくつかの欠点がある。これらは、医薬品の貯蔵寿命安定性、全ての消化器系を通過する際の製品のインビボ安定性および5−ALAまたはその誘導体を吸収することによる全身毒性と関連がある。そして、全身吸収により所望の治療部位における臨床的有効性が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/125388号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、例えば、癌等の症状を光動力学的に治療および/または診断する別の方法が依然として必要である。特に、下部消化器系における癌および非癌性病変、特に、下部小腸、結腸および直腸における症状の診断および/または治療方法の改善が必要である。また、女性生殖器系(すなわち、子宮、子宮頸部および膣)、特に、子宮頸部における癌および非癌性病変の診断および/または治療方法の改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚いたことに、5−ALAまたはその誘導体(例えば、ALAエステル)を含むある固形医薬品が従来技術のこれらの問題を克服することが分かった。これらの固形医薬品は、室温で安定性を有し、取り扱いが容易で使用し易く、下部消化器系、特に、小腸の最下部、全結腸および直腸にもすぐに運ばれ得る。これらは、局所的に、女性生殖器系、特に、子宮頸部にもすぐに運ばれ得る。このような製品も、概して、身体のこれらの部位を治療する際に有効性が減少してしまうという周知の製剤の問題に対処するものである。具体的には、これらは、(例えば、下部消化管または女性生殖器系における)所望の治療部位において、効果的な濃度の5−ALAまたはその誘導体を提供することが可能である。これらはまた、目的部位において、活性光増感剤を実質的に均質(すなわち、均一)に分布させ得るため、PDTまたはPDD治療をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】HALの安定性を示した図である。(実施例39)
【図2】ミグリオールおよび混合ゲルシレにおけるHAL HCl製剤のインビトロ溶解特性を示した図である。(実施例40)
【発明を実施するための形態】
【0018】
よって、一局面から見ると、本発明は、癌、癌に伴って発生する感染症の光動力学的治療もしくは診断(例えば、治療)または非癌性症状の治療もしくは診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。この製品は、下部消化器系または女性生殖器系における癌性または非癌性症状の光動力学的治療または診断に用いられることが好ましい。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、下部消化器系における癌の光動力学的治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、下部消化器系における癌の光動力学的診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、下部消化器系における非癌性症状の光動力学的診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0022】
さらなる局面において、本発明は、下部消化器系における非癌性症状の光動力学的治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0023】
別の局面において、本発明は、女性生殖器系における癌(例えば、子宮頸癌)の光動力学的治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、女性生殖器系における癌(例えば、子宮頸癌)の光動力学的診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0025】
さらなる局面において、本発明は、女性生殖器系における非癌性症状の光動力学的診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0026】
さらなる局面において、本発明は、女性生殖器系における非癌性症状の光動力学的治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0027】
本明細書に記載された診断方法は、診断用薬が患者に与えられた後、青色光の下で手術が行われる手術の際に実施しても良い。青色光の下で病変または疾患が蛍光を発することは、外科医が「外科的境界(surgical border)」を定める助けとなり、これにより疾患部位(例えば、腫瘍)はより選択的に切除され得る。本明細書に記載される光増感剤の手術方法における使用は、本発明のさらなる局面を形成する。
【0028】
本明細書に記載される治療および診断方法は、併用療法の形態で用いても良い。例えば、癌性または非癌性症状に関し、本明細書に記載される方法のいずれかを用いて行われる1クールのPDTの後、(例えば、PDTの有効性の程度の決定および/または症状の再発の発見のため)PDD法を行っても良い。
【0029】
よって、さらなる局面において、本発明は、(i)患者の下部消化器系または女性生殖器系における癌または非癌性症状の光動力学的治療を行う工程と、(ii)前記患者の光動力学的診断を行う工程とを含む方法において用いられる固形である医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用を提供する。工程(i)および(ii)の少なくとも1つは、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤を前記患者に投与した後に行われる。工程(i)および(ii)は共に、このような光増感剤を投与した後に行われることが好ましい。
【0030】
さらなる局面において、本発明は、癌、癌に伴って発生する感染症または非癌性症状を光動力学的に治療または診断する方法であって、(a)上記で定義した医薬品を身体に投与する工程と、(b)光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度を得るのに必要な期間、任意に待機する工程と、(c)前記光増感剤を光活性化する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0031】
さらなる局面において、本発明は、上記で定義した医薬品を用いて予め投与された動物における癌、癌に伴って発生する感染症または非癌性症状を診断する光動力学的方法であって、(i)光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度を得るのに必要な期間、任意に待機する工程と、(ii)前記光増感剤を光活性化する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体である光増感剤と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む固形医薬品であって、前記医薬品は、坐剤、カプセル剤、ペレット剤、膣坐剤または錠剤であることを特徴とする固形医薬品を提供する。前記医薬品は、坐剤、ペレット剤または錠剤の形態であることが好ましい。
【0033】
医学に用いられる上記で定義した固形医薬品は、本発明のさらなる局面を形成する。
【0034】
本明細書で用いられる「医薬品」という用語は、実際に被験者に投与される物を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる「固形」という用語は、記載されている物の物理的状態(すなわち、液体や気体ではなく、固体)を意味する。したがって、液剤、水剤、ゲル剤およびクリーム剤は、この用語に含まれない。本発明に含まれる固形医薬品の代表例として、カプセル剤、錠剤、ペレット剤、膣坐剤および坐剤が挙げられる。
【0036】
本発明の医薬品は、投与される際、固形である。本発明の固形医薬品は、少なくとも20℃の温度、より好ましくは少なくとも30℃の温度、さらにより好ましくは少なくとも37℃の温度(すなわち、体温)、さらにより好ましくは少なくとも40℃の温度で固形であることが好ましい。
【0037】
本明細書で用いられる「医薬品」という用語は、少なくとも2つの異なる成分の混合物を意味する。よって、5−ALA酸または5−ALA誘導体単独では、医薬品を構成しない。医薬品は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含むことが好ましい。
【0038】
本明細書で用いられる「治療」という用語は、治療処置および予防的治療を含む。
【0039】
本明細書で用いられる「前駆体」という用語は、代謝的に5−ALAに変換されることで本質的に5−ALAと同等である5−ALAの前駆体を意味する。よって、「前駆体」という用語は、ヘム生合成の代謝経路におけるプロトポルフィリンの生物学的前駆体を含む。「誘導体」という用語は、薬学的に許容可能な塩および化学的に修飾された作用物質、例えば、5−ALAエステル等のエステルを含む。
【0040】
PDTにおいて5−ALAおよびその誘導体(例えば、5−ALAエステル)を用いることは、科学および特許文献(例えば、WO 2006/051269、WO 2005/092838、WO 03/011265、WO 02/09690、WO 02/10120およびUS 6,034,267参照;これらの内容を本願に引用して援用する)において、よく知られている。このような5−ALAの誘導体の全ておよびそれらの薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載される方法に用いられるのに適している。
【0041】
本発明による有用な5−ALAの誘導体は、インビボにおいて、プロトポルフィリンIX(PpIX)またはその他の光増感剤(例えば、PpIX誘導体)を形成することが可能な5−ALAの任意の誘導体であっても良い。通常、このような誘導体は、ヘムの生合成経路におけるPpIXまたはPpIX誘導体(例えば、PpIXエステル)の前駆体であるため、インビボにおける投与後に疾患の部位においてPpIXの蓄積を誘導することが可能である。PpIXまたはPpIX誘導体の適切な前駆体として、PpIXの生合成において中間体としてインビボで5−ALAを形成することが可能であるか、または中間体として5−ALAを形成せずに(例えば、酵素作用によって)ポルフィリンに変換され得る5−ALAプロドラッグが挙げられる。5−ALAエステルおよび薬学的に許容可能なその塩は、本明細書に記載される方法に用いられる好ましい化合物に含まれる。
【0042】
5−アミノレブリン酸のエステルおよびそのN置換誘導体は、本発明で用いられる好ましい光増感剤である。5−アミノ基が置換されていない化合物(すなわち、ALAエステル)が特に好ましい。このような化合物は、一般的に周知であり、文献(例えば、フォトキュア・エーエスエー社のWO 96/28412およびWO 02/10120参照;これらの内容を本願に引用して援用する)に記載されている。
【0043】
置換または非置換、好ましくは置換アルカノールを有する5−アミノレブリン酸のエステル、すなわち、アルキルエステル、またはより好ましくは置換アルキルエステルは、本発明で用いられる特に好ましい光増感剤である。このような化合物は、例えば、一般式Iの化合物および薬学的に許容可能なその塩である。
【0044】
22N−CH2COCH2−CH2CO−OR1 (I)
式中、R1は、置換または非置換、好ましくは置換直鎖状、分岐状または環状アルキル基(例えば、置換直鎖状アルキル基)であり、各R2は、独立して、水素原子または任意に置換されたアルキル基(例えば、R1基)である。
【0045】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、特に指定のない限り、任意の長鎖状もしくは短鎖状、環状、直鎖状または分岐状脂肪族飽和または不飽和炭化水素基を含む。不飽和アルキル基は、モノ不飽和またはポリ不飽和であり、アルケニル基およびアルキニル基の両方を含み得る。特に指定のない限り、このような基は、40個までの原子を含み得る。しかしながら、30個まで、好ましくは10個まで、特に好ましくは8個まで、特に好ましくは6個まで、例えば、4個までの炭素原子を含むアルキル基が好ましい。
【0046】
置換アルキルR1およびR2基は、モノ置換またはポリ置換されていてもよい。適切な置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、ニトロ、オキソ、フルオロ、−SR3、−NR32および−PR32基から選択され、各アルキル基には、任意に、1つ以上の−O−、−NR3−、−S−または−PR3−基(R3は、水素原子またはC1-6アルキル基である)が割り込まれていても良い。
【0047】
好ましい置換アルキルR1基として、1つ以上のオキソ基を有する基、好ましくは1、2または3つ(好ましくは、2または3つ)のオキソ基で置換された直鎖状C4-12アルキル(例えば、C8-10アルキル)基が挙げられる。このような基は、例えば、3,6−ジオキサ−1−オクチルおよび3,6,9−トリオキサ−1−デシル基である。
【0048】
本発明で用いられるのに特に好ましいのは、少なくとも1つのR2が水素原子である式Iの化合物である。特に好ましい化合物において、各R2は水素原子である。
【0049】
1が、非置換アルキル基(好ましくは、C1-8アルキル、例えば、C1-6アルキル)、またはより好ましくは上記で定義した置換基(例えば、フェニル等のアリール基またはメトキシ等のアルコキシ基)で置換されたアルキル基(例えば、C1-2アルキル、特に、C1アルキル)である式Iの化合物も好ましい。
【0050】
本発明で用いられ得る非置換アルキル基として、分岐状および直鎖状炭化水素基が挙げられる。R1が、1つ以上のC1-6(例えば、C1-2アルキル)基で分岐した、C4-8(好ましくはC5-8)の直鎖状アルキル基である式Iの化合物が好ましい。適切な非置換分岐状アルキル基の代表例として、2−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチルおよび3,3−ジメチル−1−ブチルが挙げられる。4−メチルペンチルが特に好ましい。
【0051】
1が、C1-10直鎖状アルキル基である式Iの化合物も好ましい。適切な非置換アルキル基の代表的例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびオクチル(例えば、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルおよびn−オクチル)が挙げられる。ヘキシル、特に、n−ヘキシルが特に好ましい基である。メチルも特に好ましい。
【0052】
本発明で用いられるのに特に好ましいのは、R1が、アリール基で任意に置換されたC1-2アルキル基(好ましくは、C1アルキル基)である式Iの化合物である。
【0053】
本発明で用いられるのにさらに好ましいのは、R1が、アリール基(例えば、フェニル)で置換されたアルキル基(例えば、C1-2アルキル、特に、C1アルキル)である式Iの化合物である。式Iの化合物中に存在し得る好ましい置換アルキルR1基として、任意に置換されたアリール基で置換(好ましくは、末端置換)されたC1-6アルキル、好ましくはC1-4アルキル、特に好ましくはC1またはC2アルキル(例えば、C1アルキル)が挙げられる。
【0054】
「アリール基」は、芳香族の基を意味する。アリール基は、20個までの炭素原子、より好ましくは12個までの炭素原子、例えば、10または6個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0055】
本発明の化合物中に存在し得るアリール基は、複素芳香環(例えば、5〜7員環の複素芳香環)であっても良いが、非複素芳香環であることが好ましい。「非複素芳香環」は、炭素原子のみから由来する電子を含む芳香族系を有するアリール基を意味する。好ましいアリール基として、フェニルおよびナフチル、特に、フェニルが挙げられる。本発明で用いられるのに好ましい化合物中には、1または2つ(好ましくは、1つ)のアリール基が存在し得る。
【0056】
好ましい局面において、本発明は、R1が、アリール置換C1-4アルキル基(好ましくは、C1-2、例えば、C1)であり、好ましくは前記アリール基が20個までの炭素原子(例えば、12個まで、特に、6個の炭素原子)を含み、それ自体が任意に置換され、各R2が、上記で定義したものである(例えば、各R2が水素である)式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩である光増感剤の、座瘡の予防または治療に用いられる薬剤の製造における使用を提供する。
【0057】
本発明の化合物中に存在し得るアリール基は、1つ以上(例えば、1〜5つ)、より好ましくは1または2つの基(例えば、1つの基)で任意に置換され得る。アリール基は、メタ位またはパラ位、最も好ましくはパラ位で置換されることが好ましい。適切な置換基として、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アルコキシ(すなわち、Rが好ましくはC1-6アルキル基である−OR基)、ハロ(例えば、ヨード、ブロモ、さらに特に、クロロおよびフルオロ)、ニトロおよびC1-6アルキル(好ましくは、C1-4アルキル)が挙げられる。好ましいC1-6アルキル基として、メチル、イソプロピルおよびt−ブチル、特に、メチルが挙げられる。特に好ましい置換基として、クロロおよびニトロが挙げられる。アリール基は、置換されていないことがさらにより好ましい。
【0058】
本発明で用いられる好ましい化合物として、メチルALAエステル、エチルALAエステル、プロピルALAエステル、ブチルALAエステル、ペンチルALAエステル、ヘキシルALAエステル、オクチルALAエステル、2−メトキシエチルALAエステル、2−メチルペンチルALAエステル、4−メチルペンチルALAエステル、1−エチルブチルALAエステル、3,3−ジメチル−1−ブチルALAエステル、ベンジルALAエステル、4−イソプロピルベンジルALAエステル、4−メチルベンジルALAエステル、2−メチルベンジルALAエステル、3−メチルベンジルALAエステル、4−[t−ブチル]ベンジルALAエステル、4−[トリフルオロメチル]ベンジルALAエステル、4−メトキシベンジルALAエステル、3,4−[ジ−クロロ]ベンジルALAエステル、4−クロロベンジルALAエステル、4−フルオロベンジルALAエステル、2−フルオロベンジルALAエステル、3−フルオロベンジルALAエステル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルALAエステル、3−ニトロベンジルALAエステル、4−ニトロベンジルALAエステル、2−フェニルエチルALAエステル、4−フェニルブチルALAエステル、3−ピリジニル−メチルALAエステル、4−ジフェニル−メチルALAエステルおよびベンジル−5−[(1−アセチルオキシエトキシ)−カルボニル]アミノレブリネートが挙げられる。
【0059】
本発明で用いられるさらに好ましい化合物として、メチルALAエステル、エチルALAエステル、2−メトキシエチルALAエステル、ベンジルALAエステル、4−イソプロピルベンジルALAエステル、4−メチルベンジルALAエステル、2−メチルベンジルALAエステル、3−メチルベンジルALAエステル、4−[t−ブチル]ベンジルALAエステル、4−[トリフルオロメチル]ベンジルALAエステル、4−メトキシベンジルALAエステル、3,4−[ジ−クロロ]ベンジルALAエステル、4−クロロベンジルALAエステル、4−フルオロベンジルALAエステル、2−フルオロベンジルALAエステル、3−フルオロベンジルALAエステル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルALAエステル、3−ニトロベンジルALAエステル、4−ニトロベンジルALAエステル、2−フェニルエチルALAエステル、4−フェニルブチルALAエステル、3−ピリジニル−メチルALAエステル、4−ジフェニル−メチルALAエステルおよびベンジル−5−[(1−アセチルオキシエトキシ)−カルボニル]アミノレブリネートが挙げられる。
【0060】
本発明で用いられるのに特に好ましい化合物として、ベンジルALAエステル、4−イソプロピルベンジルALAエステル、4−メチルベンジルALAエステル、2−メチルベンジルALAエステル、3−メチルベンジルALAエステル、4−[t−ブチル]ベンジルALAエステル、4−[トリフルオロメチル]ベンジルALAエステル、4−メトキシベンジルALAエステル、3,4−[ジ−クロロ]ベンジルALAエステル、4−クロロベンジルALAエステル、4−フルオロベンジルALAエステル、2−フルオロベンジルALAエステル、3−フルオロベンジルALAエステル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルALAエステル、3−ニトロベンジルALAエステル、4−ニトロベンジルALAエステル、2−フェニルエチルALAエステル、4−フェニルブチルALAエステル、3−ピリジニル−メチルALAエステル、4−ジフェニル−メチルALAエステルおよびベンジル−5−[(1−アセチルオキシエトキシ)−カルボニル]アミノレブリネートが挙げられる。
【0061】
本明細書に記載される方法に用いられるのに特に好ましい化合物として、ベンジルALAエステル、4−イソプロピルベンジルALAエステルおよび4−メチルベンジルALAエステル、特に、ベンジルALAエステルが挙げられる。4−ニトロベンジルALAエステル、4−クロロベンジルALAエステルおよびベンジルALAエステルが特に好ましい。
【0062】
本発明により用いられるのにさらにより好ましい化合物は、5−ALA、5−ALAメチルエステル、5−ALAへキシルエステル、5−ALAベンジルエステルおよび生理学的に許容可能なそれらの塩である。これらのうち、5−ALAへキシルエステルおよび生理学的に許容できるその塩、例えば、HCl塩の形態の5−ALAへキシルエステルが特に好ましい。
【0063】
本発明で用いられる化合物は、(例えば、フォトキュア・エーエスエー社のWO 02/10120に記載されている)当該技術分野で利用可能な任意の従来の手法により調製され得る。例えば、5−ALAのエステルは、塩基の存在下で5−ALAを適切なアルコールと反応させることにより調製され得る。あるいは、本発明で用いられる化合物は、(例えば、フォトキュア・エーエスエー社、ノルウェーから)市販されているものでも良い。
【0064】
本発明の方法により用いられる化合物は、遊離アミン(例えば、−NH2、−NHR2または−NR22)の形態、または好ましくは生理学的に許容可能な塩の形態であり得る。このような塩は、生理学的に許容可能な有機酸または無機酸を有する酸付加塩であることが好ましい。適切な酸として、例えば、塩酸、硝酸、臭化水素酸、燐酸、硫酸、スルホン酸およびスルホン酸誘導体が挙げられる。特に好ましい塩は、フォトキュア・エーエスエー社のWO 2005/092838(その全内容を本願に引用して援用する)に記載されているスルホン酸またはスルホン酸誘導体を有する酸付加塩である。塩形成のための手法は、当該技術分野で従来から用いられているものである。
【0065】
上記化合物は、任意の従来の方法で固形医薬品を製造するために用いられ得る。本発明の医薬品における光増感剤の所望の濃度は、化合物の性質、これが含まれる製品の性質および形態、意図される投与様式、治療または診断対象の癌の性質ならびに治療対象の被験者を含むいくつかの要因により異なる。しかしながら、一般的に、光増感剤の濃度は、医薬品の総重量の1〜50重量%の範囲であることが好都合で、1〜40重量%、例えば、2〜25重量%の範囲であることが好ましく、5〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0066】
本発明で用いられる医薬品は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含むことが好ましい。熟練者であれば、例えば、選択された投与経路や治療または診断対象の癌に基づき、適切な担体および賦形剤を選択することが可能であろう。医薬品に用いられ得る賦形剤および担体の代表例として、寒天、アルギン酸、アスコルビン酸、アミノ酸、カルシウム塩(例えば、リン酸水素カルシウム)、アンモニウム塩(例えば、酢酸アンモニウム)、カルボマー、カルボポール、セルロース化合物および誘導体(例えば、微結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、クエン酸、澱粉化合物および誘導体(例えば、コーンスターチ、クロスカラメロース、クロスポビドン、βシクロデキストリン等のシクロデキストリン、無水ラクトースや含水ラクトース等のラクトース、マルトデキストリン、マンニトール)、メントール、合成ポリマー(例えば、メタクリル酸共重合体)、ポリエチレングリコール誘導体(例えば、ポリソルベート)、カリウム塩(例えば、燐酸カリウム)、ナトリウム塩(例えば、炭酸ナトリウム)、ポピドン、ソルビタン誘導体、タルク、ワックス、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、中鎖トリグリセリド、C8-18脂肪酸のグリセリド(例えば、硬質脂肪)ならびにこれらの混合物が挙げられる。飽和ヤシ油およびパーム核油由来のカプリル酸ならびにカプリン脂肪酸とグリセリンまたはプロピレングリコールとのエステルであるミグリオール(Miglyol)(登録商標)油が、本発明で用いられるのに特に好ましい。これらは、例えば、光増感剤を含む液体含有カプセル剤を形成する際に用いられ得る。
【0067】
本明細書に記載される医薬品に用いられ得るさらなる医薬賦形剤および担体は、様々なハンドブック(例えば、D.E.Bugay、W.P.Findlay(編集)、医薬品賦形剤(Marcel Dekker、ニューヨーク、1999)、E−M Hoepfner、A.Reng、P.C.Schmidt(編集)、フィードラーの医薬品、化粧品および関連分野の賦形剤百科事典(Editio Cantor、ミュンヘン、2002)およびH.P.Fielder(編集)、医薬品、化粧品および関連分野の賦形剤百科事典(Editio Cantor、オーレンドルフ、1989))に記載されている。
【0068】
浸透促進剤は、本発明の医薬品に含まれる光増感剤の光増感効果を向上させる上で有益な効果をもたらし得る。したがって、表面浸透助剤、特に、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のジアルキルスルホキシドが、製品に含まれ得る。表面浸透助剤は、製薬文献に記載される皮膚浸透助剤、例えば、キレート剤(例えば、EDTA)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、非界面活性剤、胆汁酸塩(デオキシコール酸ナトリウム)および脂肪酸(例えば、オレイン酸)のいずれであっても良い。適切な表面浸透助剤は、例えば、イソプロパノール、HPE−101(久光(Hisamitsu)より入手可能)、DMSOおよびその他のジアルキルスルホキシド、特に、n−デシルメチルスルホキシド(NDMS)、ジメチルスルファセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMFA)、ジメチルアセトアミド、グリコール、様々なピロリドン誘導体(Woodfordら、J.Toxicol.Cut.&Ocular Toxicology、1986、:167〜177)およびアゾン(Azone)(登録商標)(Stoughtonら、Drug Dpv.Ind.Pharm.、1983、:725〜744)またはこれらの混合物である。本明細書に記載される製剤に用いられるのに好ましいのは、周囲温度で固形である表面浸透助剤である。
【0069】
表面浸透剤は、それが含まれる医薬品の総重量の0.2〜50重量%、例えば、それが含まれる医薬品の総重量の約10重量%の濃度範囲で提供されることが好都合であり得る。
【0070】
キレート剤も、本発明の医薬品に含まれる光増感剤の光増感効果を向上させる上で有益な効果をもたらし得る。キレート剤による鉄のキレート化により、ヘムを形成するためのPpへの鉄の取り込みが酵素フェロケラターゼの作用で妨げられ、これによりPpの蓄積が生じるため、例えば、Ppの蓄積を増強するためにキレート剤を含めても良い。その結果、光増感効果が向上する。
【0071】
本発明の医薬品に含まれ得る適切なキレート剤として、アミノポリカルボン酸が挙げられ、金属の解毒または磁気共鳴画像造影剤における常磁性金属イオンのキレート化に関して文献に記載されるあらゆるキレート剤が含まれる。特に、EDTA、CDTA(シクロヘキサントリアミン四酢酸)、DTPAおよびDOTAならびにこれらの周知の誘導体および類似体が挙げられる。EDTAおよびDTPAが特に好ましい。鉄のキレート化効果を得るため、例えば、EDTA等のアミノポリカルボン酸キレート剤と共に、デスフェリオキサミンおよびその他のシデロフォアを用いてもよい。
【0072】
キレート剤が含まれる場合、キレート剤は、それが含まれる医薬品に基づき、0.05〜20重量%、例えば、0.1〜10重量%の濃度で用いられることが好都合であり得る。
【0073】
本発明の医薬品はさらに、抗癌剤を含み得る。よって、さらなる局面から見ると、本発明は、癌または癌に伴って発生する感染症の治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、5−ALAエステル)である光増感剤の抗癌剤との組み合わせによる使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用を提供する。
【0074】
さらなる局面から見ると、本発明は、癌または癌に伴って発生する感染症の治療方法において同時、別個または連続的に用いられる、上記で定義した医薬品および、別個に、抗癌剤を含むキットまたはパックを提供する。
【0075】
本発明の医薬品およびキットに含まれる好ましい抗癌剤は、抗新生物剤である。抗新生物剤の代表例として、アルカロイド(例えば、ビンクリスチン(incristine)、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、テニポシド(teniposiode)、パクリタクセル、エトポシドおよびドセタキセル)、アルキル化剤(例えば、ブスルファン等のアルキルスルホン酸)、アジリジン(例えば、カルボコン、エチレンイミンおよびメチルメラミン)、窒素マスタード(例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミドおよびメルファラン)、ニトロソ尿素誘導体(例えば、カルムスチンおよびロムスチン)、抗生剤(例えば、マイトマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンおよびブレオマイシン)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセートおよびラルチトレキセド等の葉酸類似体および拮抗体)、プリン類似体(例えば、6−メルカプトプリン)、ピリミジン類似体(例えば、テガフール、ゲムシタビン、フルオロウラシルおよびシタラビン)、サイトカイン、酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ(L-asparginase)、ランピルナーゼ)、免疫調節剤(例えば、インターフェロン、イムノトキシン、モノクローナル抗体)、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、白金錯体(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチンおよびシスプラチン)、ホルモン剤(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン)およびアロマターゼ阻害剤が挙げられる。本発明で用いられるその他の抗新生物剤として、イミキモド、イリノテカン(irenotecan)、ロイコボリン、レバミゾール、エトポシド(etopisde)およびヒドロキシ尿素が挙げられる。
【0076】
本発明で用いられる特に好ましい(referred)抗癌剤として、5−フルオロウラシル、イミキモド、サイトカイン、マイトマイシンC、エピルビシン、イリノテカン(irenotecan)、オキサリパチン、ロイコボリン、レバミゾール、ドキソルビシン、シスプラチン、エトポシド、ドキシルビシン、メトトレキセート、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ヒドロキシ尿素およびビノレルビンが挙げられる。抗癌剤として用いられるのにさらにより好ましいのは、マイトマイシン等の抗生剤および5−フルオロウラシル等のピリミジン類似体である。
【0077】
医薬品はさらに、潤滑剤、湿潤剤、防腐剤、着香剤および/または芳香添加剤を含み得る。本発明の方法に用いられる医薬品は、当該技術分野で周知の手法を用いることで、患者への投与後、光増感剤が迅速、持続的または遅延的に放出されるように調剤され得る。これらが下部消化管における症状の治療に当たり経口投与されることを目的とする場合、遅延放出製剤が好ましい。
【0078】
しかしながら、本発明の医薬品は、25℃での誘電率が80未満の非水性液剤を含まないことが好ましい。医薬品は、アルコール、エーテル、エステル、ポリ(アルキレングリコール)、リン脂質、DMSO、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物から選択される非水性液剤を含まないことが特に好ましい。
【0079】
本発明の方法に用いられる固形医薬品は、任意の従来の固形形態、例えば、粉末剤、顆粒剤、ペレット剤、錠剤、膣坐剤、坐剤またはカプセル剤であり得る。
【0080】
本発明で用いられる固形医薬品は、上記光増感剤を固形組成物の形態で含むことが特に好ましい。よって、本発明で用いられる医薬品は、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ペレット剤、坐剤および膣坐剤であることが好ましい。粉末剤、ペレット剤または顆粒剤組成物を含むカプセル剤も、好ましい医薬品である。半固形剤または液剤(好ましくは、非水性液剤)を含むカプセル剤も、本発明で用いられるのに適している。カプセル剤は、コーティングされていても良い。好ましいコーティングを以下に示す。
【0081】
本発明の固形医薬品は、錠剤、坐剤、ペレット剤、カプセル剤または膣坐剤の形態であることが好ましい。これらの製品は、少なくとも1つの上記光増感剤を固形組成物の形態で含むことが好ましい。このような製品は、それ自体新規であり、本発明のさらなる局面を形成する。
【0082】
製品がペレット剤(例えば、小丸剤)の形態で提供される場合、これらはそれ自体で投与され得る。あるいは、ペレット剤を錠剤またはカプセル剤に組み込んでも良い。複数のペレット剤を含む錠剤またはカプセル剤は、本明細書に記載される方法に用いられるのに特に好ましく、本発明のさらなる局面を形成する。同様に、製品が錠剤の形態で提供される場合、これをそれ自体で投与しても、あるいはカプセル剤に組み込んで複数の小型錠剤を含むカプセル剤単位用量を提供しても良い。
【0083】
本明細書に記載される製剤、特に、経口投与に適合した製剤は、特に、下部消化管における症状の治療または診断に用いられることを目的とする場合、光増感剤を遅延的に放出することが好ましい。遅延(例えば、持続)放出は、例えば、pHの変化に応じて光増感剤を放出するように設計されたpH依存システムや、所定の時間後に光増感剤を放出するように設計された時間依存(または徐放)システム等の技術において記載されている周知の従来の方法のいずれかを用いて実現され得る。
【0084】
本明細書に記載される固形製剤(例えば、錠剤、カプセル剤およびペレット剤)は、活性光増感剤の放出を遷延する1つ以上の追加的成分を含み得ることが好ましい。このような遅延放出剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、グアーゴム等のゴムを含み得る。固形製剤におけるこのような成分(例えば、ゴム)の所望の含有量は、当業者によって容易に決定可能であり、例えば、10〜70重量%の範囲、通常、約50重量%であり得る。
【0085】
本明細書に記載される組成物に用いられるのに特に適している遅延放出剤は、ゲルシレ(Gelucire)組成物である。これらは、両親媒性で、様々な物理的特性で利用可能な不活性半固形ワックス材料である。それらは、融点/HLB値により特定される。融点は、摂氏温度で表され、HLB(親水性−親油性バランス)は、0〜約20にまで及ぶ数字目盛である。HLB値が低いと、より親油性かつ疎水性物質であることを示し、値が高いと、より親水性かつ撥油性物質であることを示す。ゲルシレ組成物は、一般的に、グリセロールの脂肪酸エステルおよびPEGエステルまたはポリグリコール化グリセリドであると考えられる。ゲルシレ組成物のファミリーは、約33℃〜約64℃、通常、約35℃〜約55℃の広範囲の融点と、約1〜約14、通常、約7〜約14の様々なHLB値とを特徴とする。例えば、ゲルシレ44/14は、融点が約44℃で、HLB値が約14であることを示す。ゲルシレまたはゲルシレ組成物の混合物の融点/HLB値を適切に選択することで、持続放出のための所望のデリバリー特性が得られ得る。ゲルシレ44/14およびゲルシレ50/02が、単独または組み合わせのいずれかで、本発明で用いられるのに特に適していることが分かった。組み合わせで用いられる場合、ゲルシレ44/14とゲルシレ50/02との50:50(w/w)および75:25(w/w)混合物が、所望の遅延放出特性を得るのに特に効果的であることを分かった。
【0086】
光増感剤の放出特性を調整するその他の方法として、(例えば、下部消化器系における)治療の目的部位または診断が行われる場所において崩壊するさらなる賦形剤を使用することが挙げられる。このようにして、光増感剤は、所望の治療または診断地点に直接運ばれる。例えば、光増感剤は、下部消化器系において崩壊する基質と共に調剤され(例えば、基質に組み込まれ)ても良い。例えば、溶解の閾値pHが比較的高い腸溶性ポリマーを用いた製剤を設計しても良い。適切な基質形成剤は、例えば、炭水化物、例えば、二糖、オリゴ糖および多糖である。その他の適切な基質材料として、アルギナート、アミラーゼ、セルロース、キサンタンガム、トラガカントゴム、澱粉、ペクチン、デキストラン、シクロデキストリン、ラクトース、マルトースおよびキトサンが挙げられる。
【0087】
コーティングされた固形製剤も、所望の遅延放出特性を提供し得るものであり、コーティングは、体内で所定の期間の後または胃腸管内で所望の標的部位のpHにおいて崩壊する。本発明により用いられる典型的なコーティング材料として、合成、半合成または合成ポリマーが挙げられる。ポリマーは、酢酸フタル酸セルロース、トリメリト酸酢酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、オイドラギット(Eudragit)(登録商標)等のメタクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ペクチンおよびペクチン塩ならびに架橋ポリマーおよび共重合体、例えば、ジビニルベンゼンおよびN,N’−ビス(βスチレンスルホニル−4,4’−ジアミノベンゼンと架橋した2−ヒドロキシ−エチルメタクリレートであることが好ましい。
【0088】
その他の製剤および投与方法を用いることで、光増感剤を所望されるように遷延または遅延的に放出するだけでなく、下部消化器系における5−ALAまたはその誘導体の濃度を高く実質的に均質(すなわち、均一)にしても良い。PDTまたはPDDを行う場合、全結腸を光増感剤で被覆することが好ましい。結腸における作用物質の放出時間および場所を調整することで、所望の均一な被覆を実現し得る。この点に関して用いられるのに適しているのは、投与後に異なる速度および/または異なる時間間隔で活性成分を放出することが可能な複数の個々の用量(例えば、錠剤、カプセル剤またはペレット剤の混合物)を含む投薬剤形または投薬計画である。個々の用量は、単一の投薬剤形内に含まれていても良く、例えば、単一の錠剤またはカプセル剤内に複数のペレット剤、小丸剤、顆粒剤または小型錠剤を設け、その個々のペレット剤、丸剤、顆粒剤または小型錠剤により活性光増感剤の異なる放出特性を実現可能にしても良い。これらは、一般的に、「多微粒子系」と称される。あるいは、投薬用量が、別個または同時に投与されることを目的とする1つ以上(好ましくは、いくつか)の単一用量形態(例えば、1つ以上の錠剤またはカプセル剤)を含み、その個々の単一用量形態の放出特性が異なっていても良い。患者の治療に当たり、光増感剤を含み、異なる放出特性を有する2つ以上の異なる用量(例えば、カプセル剤または錠剤)が投与されることが予想される。例えば、3つの異なるカプセル剤が用いられる場合、結腸の先端部、中央部および末端部を標的にすることができる。結腸の蠕動運動により、異なる用量がその内容物を放出する前に結腸下部へとさらに移動することで、結腸壁をより良く(すなわち、より均一に)「コーティング」することができる。臨床用量が2つ以上の単位用量を含む場合、異なる単位用量を同時にまたは異なる時間間隔で投与することができる。
【0089】
(単一の投薬剤形内の個々の微粒子、例えば、ペレット剤によるものであれ、複数の単一用量形態によるものであれ)異なる放出特性は、上記のいずれかの手段、例えば、任意の放出剤の性質および/または濃度を変更したり、適切なコーティングを設けたりすることにより実現され得る。コーティングを用いる場合、コーティング材料の性質、その厚さおよび/またはコーティング内の成分の濃度は、所望の遅延放出を得るため、必要に応じて変更しても良い。同じコーティング材料を用いて複数のペレット剤、錠剤またはカプセル剤をコーティングする場合、個々の用量のコーティングに用いられるコーティング剤の濃度を徐々に増加させることで遅延放出が実行され得る。コーティングされたペレット剤または顆粒剤をカプセル材に充填したり、従来の賦形剤と共に打錠して錠剤を形成したりする場合、製剤は、多微粒子投薬剤形であると考えられる。これらにおいて、コーティングされたペレット剤または顆粒剤を含む錠剤またはカプセル剤を、ペレット剤および顆粒剤のコーティングに用いられたものと同じまたは異なり得る適切な腸溶コーティングでさらにコーティングすることができる。
【0090】
あるいは、速放剤および徐放剤を組み合わせて用いて所望の放出特性を得ても良い。適切な投薬計画は、例えば、異なる放出剤を含む複数のカプセル剤または錠剤の投与を含み得る。この点に関し、ミグリオールを含むカプセル剤は、光増感剤の比較的迅速な放出に適していることが分かったのに対し、ゲルシレを含むものは、徐(遅延)放出を促進する。したがって、これらのカプセル剤を組み合わせて投与することで、全結腸粘膜のコーティングを向上し得る。
【0091】
よって、本発明の好ましい局面は、下部消化器系において崩壊する成分を含む複数の錠剤、カプセル剤またはペレット剤の混合物を含む5−ALAまたはその誘導体(例えば、5−ALAエステル)の経口治療または診断用量に関し、その個々の錠剤、カプセル剤またはペレット剤が運動特性により崩壊することで下部消化器系において5−ALAまたは5−ALA誘導体が高度かつ均質に分布することに関する。総用量は、例えば、1つのカプセル剤に数種類のペレット剤を含み、そのペレット剤が、5−ALAまたは5−ALA誘導体の放出を遷延する異なる運動特性により崩壊し得る。別の選択肢として、治療または診断用量は、いくつかの単一用量形態(2つ以上の錠剤またはカプセル剤)を含み、その単一用量形態が、異なる運動崩壊特性を有する。
【0092】
本明細書に記載される経口用量製剤は、例えば、異なる放出特性を有する複数の個々の用量が含まれるパックに設けても良い。使い易くするため、個々の用量(例えば、カプセル剤)は、異なる色で色分けされていても良い。このようなパックも本発明の一部を形成する。
【0093】
本発明で用いられる錠剤、カプセル剤およびペレット剤は、任意の従来の方法により調製され得る。しかしながら、錠剤は、上記組成物の直接打錠または顆粒化後の打錠により調製されることが好ましい。
【0094】
本発明の方法において用いられる錠剤は、本明細書に記載されるようにコーティングされ得る。錠剤およびカプセル剤に用いられるコーティングは、腸溶性かつ胃耐性であることが特に好ましい。このようなコーティングにより、錠剤またはカプセル剤は、胃のpHに対して安定するため、錠剤/カプセル剤は、腸管系、例えば、結腸への侵入後ようやく、その中に含まれる光増感剤の放出を開始する。このようなコーティングとして用いられるのに適した材料の代表例として、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル(methacryclic)酸およびメタクリルエステルの共重合体ならびにポリビニルアセトフタレートが挙げられる。その他の適切なコーティングとして、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、エチルセルロース、フタル酸(phatalate)ジブチルおよびフタル酸(phatalate)ジエチルが挙げられる。持続放出が可能なオイドラギット(登録商標)級のポリマーもコーティング材料として用いられるのに特に適している。これらは、官能基として四級アンモニウム基を有するアクリレートおよびメタクリレートの共重合体ならびに中性エステル基を有するアクリル酸エチルメタクリル酸メチル共重合体に基づくものである。このようなポリマーは、不溶性かつ透過性で、混合比および/またはコーティングの厚さを変えることで、それらの放出特性を変更することができる。このようなコーティングは、胃内(低pH)で崩壊することなく、pHが一般的に約6.5である結腸内で崩壊することが好ましい。適切なオイドラギット(登録商標)ポリマーとして、オイドラギット(登録商標)S−およびL−タイプが挙げられる。
【0095】
本発明で用いられる坐剤および膣坐剤は、任意の従来の方法、例えば、上記光増感剤を含む組成物の直接打錠、顆粒化後の打錠または成形により調製され得る。坐剤は、子宮、膣または子宮頸部への挿入に適合していることが好ましい。
【0096】
坐剤および膣坐剤は、上記賦形剤および担体、例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはクロスポビドンのいずれかを用いて調剤され得る。水溶性坐剤および膣坐剤は、マクロゴール、プロピレングリコール、グリセロール、ゼラチンまたはこれらの混合物からなり得る。このように調剤された坐剤および膣坐剤は、身体への投与後に溶融および溶解することで、その中に含まれる光増感剤を放出することが好ましい。本明細書に記載される坐剤および膣坐剤はさらに、生体接着剤、例えば、粘膜接着剤を含み、粘膜、例えば、膣上皮に対する組成物の接着性そして長期にわたる接触を促進しても良い。
【0097】
あるいは、坐剤および膣坐剤は、脂肪または脂肪状化合物、例えば、硬質脂肪(例えば、C8-18脂肪酸のグリセリド)、硬質脂肪および添加剤の混合物、脂肪、パラフィン、グリセロールおよび合成ポリマーと共に調剤され得る。材料は、様々な割合のモノグリセリドおよびジグリセリドと共に、主に、高級脂肪酸のトリグリセリドエステルの混合物からなる硬質脂肪であることが好ましい。適切な硬質脂肪は、例えば、ウイテプゾール(Witepsol)という商品名で販売されている製品群(例えば、ウイテプゾールS55、ウイテプゾールS58、ウイテプゾールH32、ウイテプゾールH35およびウイテプゾールH37)である。このように調剤された坐剤および膣坐剤は、身体への投与後に溶融することで、その中に含まれる光増感剤を放出することが好ましい。したがって、この種の坐剤および膣坐剤は、融点が30〜37℃であることが好ましい。
【0098】
本発明の医薬品の利点は、それらが安定性を有することである。特に、本発明の医薬品に含まれる光増感剤は、崩壊および/または分解しにくい。その結果、医薬品は、例えば、室温および室内湿度において、少なくとも6ヶ月間、より好ましくは少なくとも12ヶ月間、さらにより好ましくは少なくとも24ヶ月間以上(例えば、36ヶ月間まで)保存することができる。
【0099】
本発明の固形医薬品は、(例えば、膣または直腸への挿入により)経口または局所投与されることが好ましい。好ましい投与経路は、治療または診断対象の癌の重篤度および性質、癌の場所および光増感剤の性質を含む多数の要因に左右される。経口投与が要求される場合、医薬品は、錠剤の形態またはカプセル剤(例えば、錠剤)に含まれた粉末剤、顆粒剤またはペレット剤であることが好ましい。局所投与が要求される場合、医薬品は、坐剤または膣坐剤の形態であることが好ましい。
【0100】
単数または複数の光増感剤を含む医薬品の投与後、治療または診断対象の部位を露光して所望の光増感効果を得る。投与後に露光を行う時間の長さは、医薬品の性質、治療または診断対象の症状および投与形態に左右される。一般的に、光増感剤が光活性化前に癌の部位において有効な組織濃度に到達することが必要である。これには、一般的に、0.5〜24時間(例えば、1〜3時間)かかり得る。
【0101】
治療または診断手順において、単数または複数の光増感剤を疾患部位に適用した後、(例えば、約3時間後に)照射することが好ましい。(例えば、治療中)必要に応じ、この手順を、例えば、さらに3回まで、30日(例えば、7〜30日)までの間隔で繰り返しても良い。この手順により癌が十分に減少しなかったり、完全に治癒しない場合には、さらなる治療を数ヶ月後に実施しても良い。
【0102】
治療目的で、例えば、ランプまたはレーザにより身体の異なる部位を照射する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Van den Bergh、Chemistry in Britain、1986年5月、430〜439頁参照)。照射に用いられる光の波長は、有効な光増感効果が得られるように選択され得る。最も効果的な光は、光が比較的深く浸透することが分かっている波長範囲300〜800nm、通常、400〜700nmの光である。一般的に、レーザを用いる場合は、強度20〜200mW/cm2で10〜100ジュール/cm2の線量レベルで照射し、ランプを用いる場合は、強度50〜150mW/cm2で10〜100ジュール/cm2の線量で照射する。照射は、5〜30分間行うことが好ましく、15分間行うことが好ましい。照射は1回行っても、あるいは光線量が多分割されて、例えば、数分〜数時間の照射間隔で送られる光分割線量を用いても良い。照射は複数回行っても良い。
【0103】
診断に用いるため、まず部位を白色光を用いて検査することが好ましい。そして、疑わしい部位を青色光(通常、400〜450nm)に露光する。そして、発せられた蛍光(635nm)を用いて罹患癌性組織を選択的に検出する。選択性の理由は分かっていないが、正常な細胞に対する癌細胞における代謝活性が高いことに依拠するものと思われる。
【0104】
本発明の方法および使用は、あらゆる癌または癌に伴って発生するあらゆる感染症の治療および/または診断に用いられ得る。本明細書で用いられる「癌に伴って発生する感染症」という用語は、発癌と明確に関連するあらゆる感染症を意味する。このような感染症は、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症である。
【0105】
治療および/または診断され得る癌および癌に伴って発生する感染症は、身体のあらゆる部位(例えば、皮膚、口腔、咽頭、食道、胃、腸、直腸、肛門管、鼻咽腔、気管、気管支、細気管支、尿道、膀胱、卵巣、尿道、膣、子宮頸部、子宮等)に存在し得る。
【0106】
しかしながら、本発明の方法および使用は、子宮、子宮頸部、膣、直腸および結腸の癌の治療および診断に特に有用である。本発明の方法および使用は、子宮頸癌および結腸癌の治療または診断に用いられることが特に好ましい。結腸における症状(例えば、結腸癌)の治療または診断において、光増感剤(例えば、5−ALAのへキシルエステル)を含む腸溶性カプセル剤が特に効果的であることが分かった。子宮頸癌の治療のためには、光増感剤(例えば、5−ALAのへキシルエステル)を含む坐剤が好ましい。
【0107】
添付の図面を参照し、以下の非限定的実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0108】
[実施例1− 5−ALAへキシルエステルを含む坐剤]
各坐剤(2g)は、以下を含む:
へキシル5−アミノレブリン酸塩酸塩(HAL HCl)100mg、10mgまたは0.8mg
エデト酸ナトリウム(EDTA)40mg
ウイテプゾールS55またはS58十分量

坐剤は、HAL HClおよびエデト酸ナトリウムを液状ウイテプゾール中に懸濁させて調製した。その混合物を坐剤型に充填して冷却した。
【0109】
[実施例2− ウイテプゾールS55ベースの坐剤における5−ALAのへキシルエステルの安定性]
へキシル5−アミノレブリン酸塩酸塩(HAL HCl)を含む坐剤は、実施例1に記載したように調製した。ウイテプゾールS55ベースの坐剤におけるHAL HClの安定性は、HPLC分析により調査した。室温(25℃)および冷蔵温度(2〜8℃)の両方における安定性を検査した。その結果を以下の表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1の結果により、HAL HClを含むウイテプゾールS55ベースの坐剤は、室温および冷蔵温度の両方において、少なくとも3ヶ月間安定であったことが分かる。
【0112】
[実施例3− ウイテプゾールS58ベースの坐剤における5−ALAのへキシルエステルの安定性]
へキシル5−アミノレブリン酸塩酸塩(HAL HCl)を含む坐剤は、実施例1に記載したように調製した。ウイテプゾールS58ベースの坐剤におけるHAL HClの安定性は、HPLC分析により調査した。室温(25℃)および冷蔵温度(2〜8℃)の両方における安定性を検査した。その結果を以下の表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
表2の結果により、HAL HClを含むウイテプゾールS58ベースの坐剤は、室温および冷蔵温度の両方において、少なくとも3ヶ月間安定であったことが分かる。
【0115】
[参考例]
メチル5−アミノレブリン酸(MAL)160mg/gを含む含水クリームのバッチを4つ、室温(25℃)で3ヶ月間設置し、それらのMALの含有量を異なる時点において分析した。3ヶ月で27±4%(平均±SD)の損失が確認された。
【0116】
このクリーム実験は、HALではなくMALを用いて行ったが、その結果は、固形医薬品においてALAエステルを調剤することの利点を示している。
【0117】
[実施例4− 5−ALAのへキシルエステルを含む腸溶コーティングされた経口錠剤]
HAL HClを含む錠剤コアは、以下に記載する成分を混合した後、直接打錠により調製した。
【0118】
各錠剤コアは以下を含む:
【0119】
【表3】

【0120】
錠剤コアは、CAPのアセトン溶液を用い、数層の酢酸フタル酸(phatalate)セルロース(CAP)でコーティングした。最終的な錠剤の重量は、540〜700mgであった。
【0121】
[実施例5− 膣坐剤]
錠剤コアは、実施例4に記載したように調製した。コアに以下の溶液を噴霧する:
エチルセルロース(2%)
フタル酸ジブチル(1%)
アルコール(エチルアルコールおよびイソプロピルアルコール)(97%)。
【0122】
[実施例6− 5−ALAエステルを含むエアロゾルデリバリー製剤]
HAL HClは、ラクトースと混合して微粉砕する。粒径は、約2〜10ミクロンである。活性材料の量は、約4重量%である(HAL HCl)。この組成物を吸入装置で用いられるカプセル剤に充填する。各カプセル剤は、HAL HClを10mg含む。1回分の用量は、1〜10カプセル剤である。
【0123】
[実施例7− 5−ALAエステルを含む膣坐剤]
錠剤コアは、以下から調製する:
【0124】
【表4】

【0125】
HAL HCl、ラクトースおよび澱粉は、20分間混合する。PVPの水溶液を添加し、その結果得られた顆粒をふるい分け、摂氏50度で24時間乾燥させる。この材料をステアリン酸マグネシウムと混合し、錠剤を調製する。錠剤の直径は、5mmである。
【0126】
錠剤コアは、オイドラギットS100(10%w/v)およびジエチルフタレート(3%w/v)を含むエタノール溶液を噴霧することで、オイドラギットS100およびジエチルフタレートでコーティングする。
【0127】
[実施例8− 5−ALAエステルを含むコーティングされた錠剤]
コア、半透過層および腸溶コーティングを含む錠剤は、従来の錠剤調製方法を用い、以下に記載する材料から調製する。
【0128】
各錠剤は、以下を含む:
錠剤コア:
【0129】
【表5】

【0130】
半透過層:
【0131】
【表6】

【0132】
腸溶コーティング:
【0133】
【表7】

【0134】
[実施例9〜12− 5−ALAまたは5−ALAエステルを含むコーティングされたカプセル製剤]
以下の組成物をそれらの融点を超える温度で混合した。その混合物をカプセル剤に注入して結合した。そして、カプセル剤を2階級のオイドラギット(SおよびN)の混合物でコーティングし、pH感受性膜を得る。
【0135】
【表8】

【0136】
[実施例13− 5−ALAへキシルエステルHCl塩を含むペレット剤の調製]
2つの異なるペレット製剤を以下のように調製した。
ペレット製剤Aの組成:
【0137】
【表9】

【0138】
ペレット製剤Bの組成:
【0139】
【表10】

【0140】
ペレット剤の平均直径は、1mmであった。

[実施例14− ペレット剤に5−ALAへキシルエステルHClを含むコーティングされていな錠剤]
【0141】
【表11】

【0142】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。

[実施例15− コーティングされた錠剤(2%CAP)]
錠剤は、実施例14により調製した。錠剤は、アセトン中の酢酸フタル酸セルロース(CAP)(2重量%)の溶液で2回および3回コーティングした。錠剤は、30分間空気乾燥させ、5分間80℃で乾燥させた。
【0143】
[実施例16− コーティングされたHMPCペレット剤(2%CAP)]
ペレット剤(製剤B、実施例13)は、アセトン中のCAP(2重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0144】
[実施例17− コーティングされたカルボポールペレット剤(2%CAP)]
ペレット剤(製剤A、実施例13)は、アセトン中のCAP(2重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0145】
[実施例18− コーティングされたカルボポールペレット剤(4%CAP)]
ペレット剤(製剤A、実施例13)は、アセトン中のCAP(4重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0146】
[実施例19− コーティングされたカルボポールペレット剤(6%CAP)]
ペレット剤(製剤A、実施例13)は、アセトン中のCAP(6重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0147】
[実施例20− コーティングされたカルボポールペレット剤(8%CAP)]
ペレット剤(製剤A、実施例13)は、アセトン中のCAP(8重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0148】
[実施例21− コーティングされたカルボポールペレット剤(10%CAP)]
ペレット剤(製剤A、実施例13)は、アセトン中のCAP(10重量%)の溶液で入念に洗浄した。余分な溶剤を除去した。ペレット剤は、30分間室温で乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0149】
[実施例22− コーティングされた様々なペレット剤を含むコーティングされた錠剤]
各錠剤は、以下を含む:
【0150】
【表12】

【0151】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤は、CAP(アセトン中で6重量%)でコーティングし、30分間空気乾燥させ、5分間80℃で乾燥させた。錠剤の直径は、13mmである。
【0152】
[実施例23− コーティングされていないペレット剤および5−ALAへキシルエステルHClによるコーティングされた錠剤]
各錠剤は、以下を含む:
【0153】
【表13】

【0154】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤は、CAP(アセトン中で8重量%)でコーティングし、30分間空気乾燥させ、5分間80℃で乾燥させた。錠剤の直径は、13mmである。
【0155】
[実施例24− コーティングされていないペレット剤を含むコーティングされたゼラチンカプセル剤]
コーティングされていないペレット剤(製剤実施例13A)(273mg)を硬質ゼラチンカプセルに充填した。カプセル剤の大きさは17mmで、直径は6mmであった。ゼラチンカプセル剤は、CAP(アセトン中で4%溶液)で2回入念にコーティングした。カプセル製品は、30分間空気乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0156】
[実施例25− 5−ALAへキシルエステルHClを含むコーティングされたゼラチンカプセル剤]
5−ALAへキシルエステルHCl(237mg)を硬質ゼラチンカプセル剤に充填した。カプセル剤は、CAP(アセトン中で10%溶液)で2回入念にコーティングし、実施例24に記載したように乾燥させた。
【0157】
[実施例26− 2種類のコーティングされたペレット剤を含むコーティングされていないゼラチンカプセル剤]
【0158】
【表14】

【0159】
これらのペレット剤を混合して硬質ゼラチンカプセル剤に充填し、実施例24に記載したように乾燥させた。
【0160】
[実施例27− 5−ALAへキシルエステルHClを含むキトサン錠剤]
【0161】
【表15】

【0162】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0163】
[実施例28− 5−ALAへキシルエステルHClを含むキトサン錠剤]
【0164】
【表16】

【0165】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0166】
[実施例29− オイドラギット(登録商標)でコーティングされたキトサン錠剤]
錠剤は、実施例27により調製した。錠剤は、オイドラギット(登録商標)(オイドラギット(登録商標)RS30D)の分散液で2回コーティングした。錠剤は、30分間空気乾燥させた後、5分間80℃で乾燥させた。
【0167】
[実施例30− CAPでコーティングされたキトサン錠剤]
錠剤は、実施例28により調製した。錠剤は、CAP(アセトン中で6重量%)で2回コーティングした。錠剤は、30分間空気乾燥させ、5分間80℃で乾燥させた。
【0168】
[実施例31− 5−ALAへキシルエステルを含むオイドラギット(登録商標)でコーティングされたペレット剤]
ペレット剤(実施例13Bより)は、オイドラギット(登録商標)(オイドラギットRS30D分散液)でコーティングした。ペレット剤は、30分間空気乾燥させ、15分間80℃で乾燥させた。
【0169】
[実施例32− 5−ALAへキシルエステルを含むオイドラギット(登録商標)(1.0%)でコーティングされたペレット剤]
ペレット剤(実施例13Bより)は、オイドラギット(登録商標)(オイドラギット(登録商標)S100、アセトン中で1.0重量%)でコーティングした。ペレット剤は、30分間空気乾燥させ、15分間80℃で乾燥させた。
【0170】
[実施例33− 5−ALAへキシルエステルを含むオイドラギット(登録商標)(2.5%)でコーティングされたペレット剤]
ペレット剤(実施例13Bより)は、オイドラギット(登録商標)(オイドラギット(登録商標)S100、アセトン中で2.5重量%)でコーティングした。ペレット剤は、30分間空気乾燥させ、15分間80℃で乾燥させた。
【0171】
[実施例34− 5−ALAへキシルエステルを含むオイドラギット(登録商標)(2.5%)でコーティングされたペレット剤]
ペレット剤(実施例13Bより)は、オイドラギット(登録商標)(オイドラギット(登録商標)S100、アセトン中で2.5重量%)でコーティングした。ペレット剤は、30分間空気乾燥させ、15分間80℃で乾燥させた。
【0172】
[実施例35− 5−ALAへキシルエステルHClを含むコーティングされた様々なペレット剤を含む錠剤]
各錠剤は、以下を含む:
【0173】
【表17】

【0174】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0175】
[実施例36− 5−ALAへキシルエステルHClを含むコーティングされた様々なペレット剤を含むコーティングされた錠剤]
錠剤は、実施例35により調製した。錠剤は、オイドラギットS−100(アセトン中でオイドラギット(登録商標)3重量%およびクエン酸トリエチル1%)でコーティングした。錠剤は、30分間空気乾燥させ、5分間80℃で乾燥させた。
【0176】
[実施例37− 結腸で放出される腸溶性カプセル剤]
サイズ1号のHPMCカプセル剤は、オイドラギットL30D−55、オイドラギットFS30Dおよびクエン酸トリエチルでコーティングした。カプセル剤は、へキシル5−アミノレブリン酸HCl(HAL−HCl)100mgと、賦形剤300mgとを含んでいた。これらには、ポロキサマー188、ゲルシレ44/14、ゲルシレ混合物(44/14:50/02=50:50w/w)およびミグリオール812Nが含まれた。賦形剤は、カプセル剤の溶解後、結腸への薬剤放出に影響を及ぼすよう含められた。カプセル剤は、腸溶コーティングでコーティングされた。
【0177】
[実施例38− 安定性の表示]
様々な賦形剤の存在下におけるHALの安定性の表示を得るため、80℃での応力研究を行った。HAL HCl(100mg)+賦形剤(300mg)(ポロキサマー188、ゲルシレ44/14、ゲルシレ混合物(44/14:50/02=50:50w/w)およびミグリオール812N)を混合し、20時間後の結果をHPLCで分析した。各不純物のレベルは、ピラジンを基準として計算した。その結果を以下の表に示す。ミグリオールを賦形剤として用いた場合、不純物はほとんど検出不可能であったが、その他の賦形剤は、多数かつ高レベルの不純物をもたらしたことが分かる。ミグリオールを含む試料は、HAL HCl試料自体よりも、含まれる不純物のレベルが低かった。
【0178】
【表18】

【0179】
[実施例39− 安定性研究]
HAL HCl(100mg)+賦形剤(300mg)(ゲルシレ混合物(44/14:50/02=50:50w/w)またはミグリオール812N)を含むカプセル剤は、実施37に記載したように調製し、25℃/相対湿度60%で安定性をモニターした。安定性のモニタリングのため、(HALの加水分解により形成された)5−アミノレブリン酸(5−ALA)の濃度を安定性の指標として用いた。その結果を図1に示す。加水分解の結果、5−ALAがHALから遊離することが示されている。ミグリオール812Nは、5−ALA値がほとんど増加することなく、最も安定した製品を提供するものであると判明したことが分かる。ゲルシレ混合物に関しては、25℃/相対湿度60%で3ヵ月後に5−ALAの増加が見られた。相応する5−ALAの増加は、ポロキサマー188(図示せず)にも見られた。また、この賦形剤により、2つの未知のピラジン不純物が相当量形成された。
【0180】
[実施例40− 溶解研究]
カプセル剤は、実施例37に記載したようにコーティングし、HAL HCl(100mg)と賦形剤(300mg)(ミグリオールまたは混合ゲルシレ(44/14:50/02=50:50w/w))とを混合したものを充填して結合した。これらは、欧州薬局方2.9.3に基づき、タイプ2のUSP溶解装置(パドル付)を用いたインビトロ溶解研究において使用した。カプセル剤は、(胃内における酸性条件を反映させるため)まず0.1MのHClに1時間浸漬させ、その後リン酸緩衝液(pH6.5)に移動させた。初期研究により、両製剤は共に脂肪性かつ疎水性材料に基づくものであるため、溶出溶媒に2%のラウリル硫酸ナトリウムを添加する必要があることが示された。試料を取り出し、HALを異なる時点において分析した。
【0181】
図2は、ミグリオールおよび混合ゲルシレ製剤(44/14:50/02=50:50w/w)の溶解特性を示している。これは、HALが0.1MのHClに放出されなかったことを示している。リン酸緩衝液(pH6.5)への移動後、HALは、混合ゲルシレ製剤に比べ、ミグリオール製剤から迅速に放出され、より遷延的な放出が行われた。
【0182】
[実施例41− 子宮頸部用の坐剤]
硬質脂肪を有する多数の坐剤バッチ−ウイテプゾールH32(融点31〜33℃)、H35(融点33.5〜35.5℃)およびH37(融点36〜38℃)−は、溶融した脂肪1.8gにHAL−HCl200mgを溶解させた後、成形することにより製造した(実施例1参照)。
【0183】
(5℃および25℃での)安定性検査により、安定性に特に問題がないことが示された−実施例2および3参照。
【0184】
HAL−HClを100mg含むウイテプゾールH35およびウイテプゾールH32から形成された坐剤に関し、溶解研究を行った(欧州薬局方2.9.3、バスケット装置)。37℃でのリン酸緩衝液(pH4.0)を溶出溶媒として用い、放出された薬剤をHPLCで分析した。この研究により、ウイテプゾールH32坐剤は、HALが1時間以内に迅速かつほぼ完全に放出されたが、ウイテプゾールH35坐剤は、6%のHALが8時間以内に放出されたに過ぎなかったことが示された。H37のように融点が高いウイテプゾール基剤は、薬剤放出に関しては不向きであることが判明した。溶出速度の違いは、おそらく、硬質脂肪の融点の違いによるものであろう。
【0185】
[実施例42− 5−ALAベンジルエステルHClを含む錠剤]
【0186】
【表19】

【0187】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0188】
[実施例43− オイドラギット(登録商標)でコーティングされた5−ALAベンジルエステルを含む錠剤]
錠剤は、実施例42により調製した。錠剤は、オイドラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。
【0189】
[実施例44− 5−ALAメチルエステルHClを含む錠剤]
【0190】
【表20】

【0191】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0192】
[実施例45− オイドラギット(登録商標)でコーティングされた5−ALAメチルエステルを含む錠剤]
錠剤は、実施例44により調製した。錠剤は、オイドラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。
【0193】
[実施例46− 5−ALA HClおよびペクチンを含む錠剤]
【0194】
【表21】

【0195】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0196】
[実施例47− オイドラギット(登録商標)でコーティングされた5−ALAおよびペクチンを含む錠剤]
錠剤は、実施例46により調製した。錠剤は、オイドラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。
【0197】
[実施例48− 5−ALAメチルエステルを含むコーティングされたカプセル剤]
5−ALAメチルエステルHCl(90mg)を硬質ゼラチンカプセル剤に充填し、ゼラチンカプセル剤を、オイドラギット(登録商標)S−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。
カプセル剤の大きさ:長さ:17mm、直径:6mm
[実施例49− 5−ALAへキシルエステルを含むペレット剤の安定性]
5−ALAへキシルエステルを含むペレット剤(実施例13より、製剤AおよびB)は、40℃および相対湿度70%で約3週間、気候キャビネット内の開封容器に保存した。
HPLC分析により、高温および高湿度のため5−ALAへキシルエステルの崩壊が増加することは示されなかった。
【0198】
[実施例50− ペレット剤からの5−ALAへキシルエステルHClの持続放出]
5−ALAへキシルエステルを含むペレット剤(実施例13より、製剤AおよびB)(1.0グラム)は、水(10ml)中に懸濁させ、37℃で数時間保存した。時間経過に伴う5−ALAへキシルエステルに関し、この水溶液を分析した。5−ALAへキシルエステルの放出は、数時間にわたり、10%未満であった。
【0199】
[実施例51− 5−ALAメチルエステルおよびDMSOを含む錠剤]
DMSO(200mg)を微結晶性セルロース(500mg)と混合して粉末剤(DMSO/MCC粉末剤)を得た。
【0200】
【表22】

【0201】
これらの成分を混合し、直接打錠により錠剤を調製した。錠剤の直径は、13mmである。
【0202】
[実施例52− 5−ALAメチルエステルおよびDMSOを含むコーティングされた錠剤]
錠剤は、実施例51により調製した。錠剤は、オイドラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。
【0203】
[実施例53− 5−ALAおよびDMSOを含むカプセル剤]
DMSO(19mg)を微結晶性セルロース(72mg)および5−ALA HCl(9mg)と混合して粉末剤を得た。粉末剤は、ゼラチンカプセル剤に充填した。
【0204】
[実施例54− 5−ALAおよびDMSOを含むコーティングされたカプセル剤]
カプセル剤は、実施例53により調製した。カプセル剤は、オイドラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液でコーティングし、乾燥させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌、癌に伴って発生する感染症の光動力学的治療もしくは診断(例えば、治療)または非癌性症状の治療もしくは診断に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用。
【請求項2】
前記製品は、下部消化器系における癌性または非癌性症状の光動力学的治療または診断、例えば、結腸癌の治療または診断に用いられる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記製品は、女性生殖器系における癌性または非癌性症状の光動力学的治療または診断、例えば、子宮頸癌の治療または診断に用いられる請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記光増感剤は、5−ALAエステルまたは薬学的に許容可能なその塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記光増感剤は、一般式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩である先行する請求項のいずれかに記載の使用。
22N−CH2COCH2−CH2CO−OR1 (I)
式中、R1は、置換または非置換、好ましくは置換直鎖状、分岐状または環状アルキル基であり、各R2は、独立して、水素原子もしくは任意に置換されたアルキル基(例えば、R1基)である。
【請求項6】
式Iにおいて、各R2は、水素原子である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
式Iにおいて、R1は、非置換アルキル基(好ましくは、C1-8アルキル、例えば、C1-6アルキル)またはアリール基で置換されたアルキル基(例えば、C1-2アルキル、特に、C1アルキル)である請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
式Iにおいて、R1は、アリール基で任意に置換されたC1-2アルキル基(好ましくは、C1アルキル基)である請求項5または6に記載の使用。
【請求項9】
前記化合物は、メチルALAエステル、ベンジルALAエステルまたは置換ベンジルALAエステルから選択される請求項8に記載の使用。
【請求項10】
式Iにおいて、R1は、アリール基(例えば、フェニル)で置換されたアルキル基(例えば、C1-2アルキル、特に、C1)である請求項5〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記化合物は、ベンジルALAエステル、4−イソプロピルベンジルALAエステル、4−メチルベンジルALAエステル、2−メチルベンジルALAエステル、3−メチルベンジルALAエステル、4−[t−ブチル]ベンジルALAエステル、4−[トリフルオロメチル]ベンジルALAエステル、4−メトキシベンジルALAエステル、3,4−[ジ−クロロ]ベンジルALAエステル、4−クロロベンジルALAエステル、4−フルオロベンジルALAエステル、2−フルオロベンジルALAエステル、3−フルオロベンジルALAエステル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルALAエステル、3−ニトロベンジルALAエステル、4−ニトロベンジルALAエステル、2−フェニルエチルALAエステル、4−フェニルブチルALAエステル、3−ピリジニル−メチルALAエステル、4−ジフェニル−メチルALAエステルおよびベンジル−5−[(1−アセチルオキシエトキシ)−カルボニル]アミノレブリネートから選択される請求項5に記載の使用。
【請求項12】
前記化合物は、ベンジルALAエステルである請求項5に記載の使用。
【請求項13】
式Iにおいて、R1は、非置換アルキル基(好ましくは、C1-8アルキル、例えば、C1-6アルキル)である請求項5〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記化合物は、メチルALAエステル、エチルALAエステル、プロピルALAエステル、ブチルALAエステル、ペンチルALAエステル、ヘキシルALAエステル、オクチルALAエステル、2−メチルペンチルALAエステル、4−メチルペンチルALAエステル、1−エチルブチルALAエステル、3,3−ジメチル−1−ブチルALAエステルから選択される請求項5に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物は、メチルALAエステル、ヘキシルALAエステルおよび4−メチルペンチルALAエステル(好ましくは、メチルALAエステル)から選択される請求項5に記載の使用。
【請求項16】
前記化合物は、ヘキシルALAエステルまたは薬学的に許容可能なその塩、例えば、塩酸塩である請求項5に記載の使用。
【請求項17】
前記固形医薬品は、経口投与される先行する請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記固形医薬品は、錠剤の形態で提供される先行する請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記固形医薬品は、局所投与される請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記固形医薬品は、坐剤または膣坐剤の形態で提供される請求項1〜16または19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記医薬品は、子宮、子宮頸部、膣、直腸または結腸の癌を治療または診断するためのものである先行する請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記癌に伴って発生する感染症は、ヒトパピローマウイルスにより生じる請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
癌または癌に伴って発生する感染症の光動力学的治療に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体である光増感剤の抗癌剤との組み合わせによる使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用。
【請求項24】
癌または癌に伴って発生する感染症を治療する光動力学的方法において同時、別個または連続的に用いられる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の医薬品および、別個に、抗癌剤を含むキットまたはパック。
【請求項25】
癌または癌に伴って発生する感染症を治療または診断する光動力学的方法であって、
(a)請求項1〜20のいずれか1項に記載の医薬品を動物に投与する工程と、
(b)光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度を得るのに必要な期間、任意に待機する工程と、
(c)前記光増感剤を光活性化する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の医薬品を用いて予め投与された動物における癌または癌に伴って発生する感染症を診断する光動力学的方法であって、
(i)光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度を得るのに必要な期間、任意に待機する工程と、
(ii)前記光増感剤を光活性化する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
手術方法に用いられる医薬品の製造における、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、ALAエステル)である光増感剤の使用であって、前記医薬品は、固形であることを特徴とする使用。
【請求項28】
5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体(例えば、5−ALAエステル)である光増感剤と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または賦形剤とを含む固形医薬品であって、前記医薬品は、坐剤、膣坐剤、錠剤、ペレット剤またはカプセル剤の形態で提供されることを特徴とする固形医薬品。
【請求項29】
前記光増感剤は、錠剤またはカプセル剤内に設けられた複数のペレット剤、顆粒剤、丸剤または小型錠剤に組み込まれている請求項28に記載の製品。
【請求項30】
前記光増感剤の遅延放出が可能なカプセル剤、錠剤またはペレット剤の形態で提供される請求項28または29に記載の製品。
【請求項31】
医学、好ましくは癌、癌に伴って発生する感染症の光動力学的治療もしくは診断(例えば、治療)または非癌性症状の治療もしくは診断に用いられる請求項27〜30のいずれか1項に記載の固形医薬品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507808(P2011−507808A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537516(P2010−537516)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004113
【国際公開番号】WO2009/074811
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501361529)フォトキュア エイエスエイ (6)
【Fターム(参考)】