説明

依存性薬物渇望抑制器具およびその使用方法

【課題】依存性薬物の依存者に所定の方法で実際に投与しても安全で治療に悪影響を及ぼすことがなく、それらの行為により一連の行動を完結させることができ、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる依存性薬物渇望抑制器具を提供する。
【解決手段】依存性薬物渇望抑制器具11は、偽容器21の中に偽注射剤31が封入されて構成されている。偽容器21は、依存性薬物Xの容器に類似した外観及び構造を有するアンプル型の容器であり、その外面には、「偽」という文字が付された以外は依存性薬物Xの容器の製品ラベルとほぼ同一の構成を有する偽注射剤ラベル41が貼られている。また、偽注射剤31は、依存性薬物Xの注射剤に類似した外観を有しており、依存性薬物Xの有効成分を含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は依存性薬物渇望抑制器具およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、覚せい剤を始めとする様々な依存性薬物の反復乱用による薬物依存者の数が増加の一途を辿っており、これまで薬物依存者に対する種々の治療方法が試みられている。このような治療方法の1つとして、先に本発明者は、覚せい剤の依存者に対して覚せい剤の使用を意識させる条件刺激を与えておいて、実際には覚せい剤を摂取させないことを反復することにより、覚せい剤依存者における条件刺激の意義を消失させ、条件反射を抑制しようとする治療方法を提案した(非特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、覚せい剤依存者にあっては、覚せい剤を入手してから実際に摂取するまでの過程を反復したことにより、その過程で認知する覚せい剤の売人の顔、覚せい剤の入ったパック、覚せい剤を注射する際に用いるシリンジ等は、覚せい剤を探索し、摂取する一連の行動を構成する各動作を司るそれぞれの条件反射回路の刺激となる。このため覚せい剤依存者は、売人の顔、覚せい剤入りパック、シリンジ等のいずれかを見るだけで条件反射が生じ、その条件反射が司る動作が始まろうとして、これを覚せい剤への欲求として感じるものと考えられる。そこで、上記治療方法では、覚せい剤依存者にこのような条件刺激を与えるが、あるいは条件刺激により反射を生じさせて一連の動作の一部を再現させるが、覚せい剤を摂取させないことを反復することにより消去を起こさせ、条件刺激を与えても条件反射が作動しないようにして、覚せい剤への渇望を抑制しようとするものである。
【0004】
しかし、上記治療方法では、本物の覚せい剤を用いた場合にこれを注射することができないので、条件反射の連鎖による一連の行動を完結させることができず、結果的に渇望を効果的に抑制できないという問題があった。そこで、本発明者らは、針が備わっておらず、針を血管に穿刺せずとも疑似的な血液の逆流を視認することができ、注射行為に近似した条件刺激を得ることができる疑似注射器を開発し(特許文献1参照)、上記治療方法に適用することによりかなりの程度の治療効果を得られるようになった。
【0005】
しかし、かかる疑似注射器を使用した治療方法では、一旦覚せい剤の溶液を本物の注射器で吸引した後上記疑似注射器に持ち替える必要があり、つまり、覚せい剤溶液を吸引した注射器を用いてそのまま注射を行うことができないので、このことが一連の覚せい剤の接取動作を阻害する要素となり、摂取動作の流動性を乱し摂取動作の完全な再現とはなっていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2007−268142号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】平井愼二、「覚せい剤反復接取に対する条件反射抑制療法」、精神科、2008年、13(1)、p.1−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、覚せい剤以外にも麻薬や幻覚剤等多数の依存性薬物が存在する。上述した治療方法は、かかる依存性薬物の依存者に対しても適用することができるが、本物の上記依存性薬物を用いたのでは依存者に実際に投与することができず、覚せい剤の依存者の場合と同様に十分な治療効果が期待できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、依存性薬物の依存者に所定の方法で実際に投与しても安全で治療に悪影響を及ぼすことがなく、それらの行為により一連の行動を完結させることができ、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる依存性薬物渇望抑制器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0011】
(1)すなわち、本発明は、依存性薬物の依存者が通常使用する前記依存性薬物の形態に類似した外観を有し、前記依存性薬物の有効成分を含んでいない偽依存性薬物からなる、依存性薬物渇望抑制器具である。
【0012】
(2)本発明はまた、前記依存性薬物は、抗精神病薬、抗不安薬、抗躁薬、中枢神経刺激薬、睡眠導入剤、鎮静催眠薬、抗ヒスタミン薬、麻酔薬、鎮痛剤、幻覚剤、覚せい剤、煙草、禁煙補助剤、ホルモン剤、アルコール飲料、有機溶剤または有機燃料である、(1)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0013】
(3)本発明はまた、前記偽依存性薬物は、生理食塩水、ブドウ糖液、蒸留水、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、デンプン、デキストリンまたは白糖を含んでなる、(1)または(2)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0014】
(4)本発明はまた、前記偽依存性薬物は、前記依存性薬物の製剤に類似した外観を有する偽製剤からなる、(1)〜(3)の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0015】
(5)本発明はまた、前記偽製剤は、エアゾール剤、内服液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収型製剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、貼布剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤、散布剤、パスタ剤、含嗽剤、罨法剤、塗布剤、洗浄剤、浣腸剤、浴剤、茶剤または舐剤である、(4)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0016】
(6)本発明はまた、前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽製剤の表面に付されていることを特徴とする、(4)または(5)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0017】
(7)本発明はまた、前記偽依存性薬物は、前記依存性薬物の容器に類似した外観および構造を有する偽容器に封入されてなる、(1)〜(6)の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0018】
(8)前記偽容器は、アンプル、バイアル、ボトル、バッグ、シリンジ、シート、スティック、チューブ、コンテナ、袋または薬包紙である、請求項7に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0019】
(9)本発明はまた、前記偽容器は、ガラス製、硬質プラスチック製、軟質プラスチック製、金属製もしくは紙またはこれらの組み合わせからなる、(7)または(8)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0020】
(10)本発明はまた、前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽容器の外面に付されていることを特徴とする、(7)〜(9)の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0021】
(11)本発明はまた、前記容器に施された包装に類似した外観および構造を有する偽包装が前記偽容器に施されたことを特徴とする、(7)〜(10)の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0022】
(12)本発明はまた、前記偽包装は、紙またはプラスチック製の袋、箱またはシートである、(11)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0023】
(13)本発明はまた、前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽包装の外面に付されていることを特徴とする、(11)または(12)に記載の依存性薬物渇望抑制器具である。
【0024】
(14)また、本発明は、依存性薬物の依存者が通常使用する前記依存性薬物の形態に類似した外観を有し、前記依存性薬物の有効成分を含んでいない偽依存性薬物からなる、依存性薬物渇望抑制器具の使用方法であって、前記偽依存性薬物を所定の方法で摂取する第1の手順を含む、依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【0025】
(15)本発明はまた、前記偽依存性薬物が前記依存性薬物の容器に類似した外観および構造を有する偽容器に封入されている場合に、前記偽容器を開封する第2の手順をさらに含む、(14)に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【0026】
(16)本発明はまた、前記偽容器に前記容器の包装に類似した外観および構造を有する偽包装が施された場合に、前記偽包装を解く第3の手順をさらに含む、(15)に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【0027】
(17)本発明はまた、前記第1の手順は、前記偽依存性薬物が注射剤である場合に、前記第2の手順により開封された偽容器に注射器の注射針を挿入して前記偽容器中の前記偽依存性薬物を前記注射器で吸い上げる第4の手順を含む、(15)または(16)に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【0028】
(18)本発明はまた、前記第1の手順は、前記第3の手順により前記偽依存性薬物を吸い上げた前記注射器の前記注射針を自己の身体に穿刺して前記偽依存性薬物を注射する第5の手順をさらに含む、(17)に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【0029】
(19)本発明はまた、前記第1〜5の手順の一部または全部を、一定期間または定常的に繰り返して行うことを特徴とする、(14)〜(18)の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記依存性薬物の容器に類似した外観および構造を有する偽容器が用いられているので、依存性薬物の依存者が本発明の依存性薬物渇望抑制器具の偽容器を見たり、手に取ったり、開封したりすることにより、本物の依存性薬物の容器を見たり、手に取ったり、開封したりした場合と全く変わらない条件刺激を得ることができ、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる。
【0031】
また、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記偽容器に前記依存性薬物の製剤に類似した外観を有する偽製剤が封入されているので、例えば、依存性薬物の依存者が本発明の依存性薬物渇望抑制器具の開封した注射剤の偽容器に注射針を挿入して偽注射剤容器中の偽注射剤を注射器で吸い上げることにより、本物の依存性薬物の注射剤を注射器で吸い上げた場合や、錠剤の偽容器を開封してそれを取り出して口の中に入れる場合、顆粒剤の偽製剤を所定の溶媒に溶かして飲んだり、その溶液を所定の器具を用いて吸引する場合、あるいは坐剤の偽容器を開封して坐剤の偽製剤を取り出して肛門や膣等に挿入する場合等と全く変わらない条件刺激を得ることができ、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記製剤の有効成分を含んでいない偽製剤が封入されてなるので、本発明の依存性薬物渇望抑制器具の偽製剤を摂取しても安全で治療に悪影響を及ぼすことがなく、依存性薬物の依存者に実際に所定の方法で投与することにより、条件反射による一連の行動を完結させることができ、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる。
【0033】
さらに、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記製剤の有効成分を含んでいない偽製剤が封入されてなるので、本物の依存性薬物よりも安価に製造することができ、本物の依存性薬物を使用した場合よりも低費用で依存性薬物の渇望抑制の治療を行うことができる。
【0034】
また、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記容器に施された包装に類似した外観および構造を有する偽包装が前記偽容器に施されているので、依存性薬物の依存者が本発明の依存性薬物渇望抑制器具の偽容器に施された偽包装を解くことにより、本物の依存性薬物の容器に施された包装を解く場合と全く変わらない条件刺激を得ることができ、依存性薬物の渇望抑制に対して優れた治療効果を得ることができる。
【0035】
また、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、前記製剤が偽物であることを示す表示が、前記依存性薬物の表面または前記偽容器もしくは前記偽包装の外面に付されているので、依存性薬物の依存者が医療従事者であっても、本発明の依存性薬物渇望抑制器具と本物の依存性薬物とを取り違えることがなく、医療事故等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具11の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】偽容器21の外観構成を示す概略正面図である。
【図3】偽注射剤ラベル41の構成を示す概略正面図である。
【図4】偽包装51の構成を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具12の外観構成を示す図であり、(A)はその概略正面図、(B)はその概略背面図である。
【図6】偽錠剤32の外観構成を示す概略正面図である。
【図7】偽容器の他の例を示す概略正面図である。
【図8】偽注射剤ラベルの他の例を示す概略正面図である。
【図9】注射剤ラベルの更に他の例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具11の全体構成を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具11は、偽容器21の中に偽注射剤31が封入されて構成されている。
【0039】
偽容器21は、依存性薬物(依存性薬物X)の容器に類似した外観および構造を有するアンプル型の容器である。すなわち、偽容器21は、依存性薬物Xの注射容器(アンプル型)に類似した形状、色彩、模様、大きさ、重量等を有しており、類似した構造を備えている。これにより、依存性薬物の依存者が、依存性薬物渇望抑制器具11の偽容器21を見たり、手に取ったり、開封したりすることにより、本物の依存性薬物Xの注射容器を見たり、手に取ったり、開封したりした際に得られる条件刺激とほぼ同一の条件刺激を得ることができる。また、偽容器21の素材は特に限定されるものではなく、例えば、ガラス、硬質プラスチック、軟質プラスチック等を用いることができるが、同様の理由から依存性薬物Xの注射容器に類似した素材を用いることが好ましい。
【0040】
図2は、偽容器21の外観構成を示す概略正面図である。図2に示すように、偽容器21の外面には、偽注射剤ラベル41が貼られている。図3に示すように、この偽注射剤ラベル41は、依存性薬物Xの注射容器に貼られた製品ラベルに類似した外観を有するものであり、依存性薬物Xの製品名「○○○」の前に「偽」という文字が付された以外は、依存性薬物Xの注射容器に貼られた製品ラベルとほぼ同一の構成を有している。この「偽」という文字は、依存性薬物渇望抑制器具11の偽容器21に封入されている偽注射剤31が、依存性薬物Xの本物の注射剤ではなく偽物の注射剤であることを示すものである。これにより、依存性薬物の依存者が医療従事者であっても、依存性薬物渇望抑制器具11と本物の依存性薬物Xとを取り違えることがなくなるので、依存者が依存性薬物の渇望抑制治療を行う際に依存性薬物渇望抑制器具11と間違えて本物の依存性薬物Xを自己に使用してしまったり、逆に依存者が医療行為を行う際に本物の依存性薬物Xと間違えて依存性薬物渇望抑制器具11を患者に使用してしまったりする等の医療事故を未然に防止することができる。また、依存性薬物の依存者は、元々依存性薬物渇望抑制器具11が偽物であることを知ってこれを依存性薬物の渇望抑制治療に使用するものであるから、偽容器21に偽物であることを示す表示があっても治療効果に影響を及ぼすこともない。
【0041】
偽注射剤31は、液状であり、色彩や粘性等も含めて依存性薬物Xの注射剤に類似した外観を有している。これにより、依存性薬物の依存者が、依存性薬物渇望抑制器具11の開封した偽容器21に注射針を挿入して偽注射剤31を注射器で吸い上げることにより、本物の依存性薬物Xの注射剤を注射器で吸い上げた際に得られる条件刺激とほぼ同一の条件刺激を得ることができる。
【0042】
また、偽注射剤31は、依存性薬物Xの注射剤の有効成分を含んでおらず、人体に無害な生理的に許容される成分で構成されている。これにより、偽注射剤31を摂取しても安全で治療に悪影響を及ぼすことがないので、依存性薬物の依存者に実際に偽注射剤31を注射することが可能となり、条件反射による一連の行動を完結させることができるので、依存性薬物の渇望抑制治療に対して優れた効果を得ることができる。このような偽注射剤31としては、依存性薬物Xの有効成分以外の成分と同様の成分からなるもの、生理食塩水、ブドウ糖液等の依存性薬物Xの有効成分の代替溶液、蒸留水に添加剤等を混ぜたもの等が挙げられる。
【0043】
なお、依存性薬物Xの注射容器に包装が施されている場合は、偽容器21に、当該包装に類似した外観および構造を有する偽包装を施してもよい。これにより、依存性薬物の依存者が、偽容器21に施された偽包装を解くことにより、本物の依存性薬物Xの注射容器に施された包装を解いた場合とほぼ同様の条件刺激を得ることができる。このような偽包装としては、紙、プラスチック等からなる箱、袋、結束帯(偽容器21の全体または一部を結束する)等が挙げられ、図4に示すような複数個の偽注射容器を収容した集合包装であってもよいし、偽注射容器ごとの個包装(図示せず)であってもよい。なお、図4に示すように、偽包装には、偽注射剤ラベル41における場合と同様に、内包する偽注射剤31が偽物であることを示す表示が付されていてもよい。
【0044】
次に、依存性薬物渇望抑制器具11の使用方法について説明する。まず、依存性薬物の依存者が、依存性薬物渇望抑制器具11を手に取り、その偽包装を解いて偽容器21を取り出す(手順1)。次いで、取り出した偽容器21の胴体部と頭部との接続部分にガラス切り等で傷を付け、頭部を折って取り除くことにより偽容器21を開封する(手順2)。次に、開封した偽容器21に注射器の針を挿入して偽容器21中の偽注射剤31を注射器で吸い上げる(手順3)。そして、医師が依存者の腕等の静脈に注射器の針を穿刺して偽注射剤31を注射し、注射が完了したら注射針を身体から抜く(手順4)。最後に、手順1〜4で使用した器具全てを片付ける。
【0045】
依存性薬物の依存者は、依存性薬物の入手と摂取を反復することにより、一連の行動を成立させる動作を制御した思考と当該動作に伴う知覚とが学習されて記憶として定着している。従って、依存性薬物の依存者は、上記動作の一つ(例えば、依存性薬物を見たり、手に取ったり、開封したりする動作)を行うことにより条件刺激が与えられると、大脳に形成されている条件反射の回路が作動して条件反射の連鎖により一連の依存性薬物の接取行動に至るものと考えられる。そこで、依存性薬物の依存者が、依存性薬物を反復して使用してきたことにより大脳生理学的に記憶している一連の行動を、依存性薬物渇望抑制器具11を用いて反復して再現することにより、依存性薬物渇望抑制器具11の使用によっては本物の依存性薬物を摂取した場合に得られる依存性薬物の有効成分による報酬を得ることができないために、条件反射の連鎖が次第に消去されていき、最終的には条件反射による依存性薬物への渇望が抑制されていくものである。
【0046】
依存性薬物の渇望抑制治療においては、まずは、手順1〜4を、渇望が生じるため社会から隔離された入院等の環境で、集中的に連日5回から15回の頻度で、300回から500回程度反復して行うことが好ましい。但し、治療初期段階では、薬物を探索し、入手し、摂取する一連の行動は、動作の開始から薬物による報酬を得る直前の動作までを行うために、手順1〜4の全てを反復して行うことが好ましいが、条件反射の駆動性が低減してきた治療中期〜後期段階では、手順1〜4の途中で行為を中断させたり、一部の行為のみを行ったりして刺激の質および量を調整してもよい。なお、手順1〜4は、一定の集中的治療期間中に反復するのみならず、その後も依存性薬物への渇望の予防や再発防止のため、所定のタイミングで定常的に繰り返すことが好ましい。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具12の外観構成を示す図であり、(A)はその概略正面図であり、(B)はその概略背面図である。図5(A)および(B)に示すように、本実施形態にかかる依存性薬物渇望抑制器具12は、偽容器22の中に偽錠剤32が封入されて構成されている。
【0048】
偽容器22は、依存性薬物Yの錠剤容器に類似した外観および構造を有するシート型の製剤容器である。具体的には、複数の凸部を設けたプラスチックシート221の前記凸部に偽錠剤32を収納し、その上からからアルミ箔222を積層することにより偽錠剤32を封入してなる。すなわち、偽容器22は、依存性薬物Yの錠剤容器(シート型)に類似した形状、色彩、模様、大きさ、重量等を有しており、類似した構造を備えている。これにより、依存性薬物渇望抑制器具12は、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして、依存性薬物Yの錠剤容器により得られる条件刺激とほぼ同一の条件刺激を得ることができる。また、偽容器22の素材は特に限定されるものではなく、例えば、軟質プラスチック、金属、紙、等やこれらを組み合わせたもの等を用いることができるが、同様の理由から依存性薬物Yの錠剤容器に類似した素材を用いることが好ましい。
【0049】
図6は、偽錠剤32の外観構成を示す概略正面図である。図6に示すように、偽容器22の表面および裏面には、依存性薬物Yの錠剤容器に印刷された製品名「○○○」の前に「偽」という文字が付された以外は、依存性薬物Yの錠剤容器に印刷されたものとほぼ同一の構成を有している。この「偽」という文字は、依存性薬物渇望抑制器具11と同様の効果を奏するものである。
【0050】
偽錠剤32は、固形であり、偽錠剤32の上面に「偽」という文字が刻印された以外は、色彩や硬度等も含めて依存性薬物Yの錠剤に類似した外観を有している。これにより、依存性薬物渇望抑制器具12は、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして、依存性薬物Yの錠剤により得られる条件刺激とほぼ同一の条件刺激を得ることができる。なお、偽錠剤32の上面に「偽」という文字が刻印されていなくてもよい。
【0051】
また、偽錠剤32は、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして、依存性薬物Yの有効成分を含んでおらず、依存性薬物渇望抑制器具11と同様の効果を奏するものである。このような偽錠剤32としては、依存性薬物Yの有効成分以外の成分と同様の成分からなるもの、またはブドウ糖、ショ糖等の依存性薬物Yの有効成分の代替物質および乳糖、デンプン、デキストリン、白糖等の賦形剤等の添加剤からなるものが挙げられる。
【0052】
なお、この依存性薬物Yの錠剤容器に包装が施されている場合は、依存性薬物渇望抑制器具12には、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして、偽包装が施されてもよい。これにより、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして、偽包装により得られる条件刺激とほぼ同一の条件刺激を得ることができる。
【0053】
次に、依存性薬物渇望抑制器具12の使用方法について説明する。まず、依存性薬物の依存者が、依存性薬物渇望抑制器具12を手に取り、その偽包装を解いて偽容器22を取り出す(手順5)。次いで、取り出した偽容器22の偽錠剤32の入っているプラスチックシート221の凸部を指先で強く押し、裏面のアルミ箔222を破って偽容器22を開封する(手順6)。次に、偽容器22の凸部から偽錠剤32を取り出す(手順7)。そして、偽錠剤32を口の中に入れる(手順8)。最後に、手順5〜8で使用したものを全て片付ける。
【0054】
また、依存性薬物渇望抑制器具12を用いた治療については、依存性薬物渇望抑制器具11と同様にして行う。
【0055】
本発明の依存性薬物渇望抑制器具の模倣対象となる依存性薬物Xおよび依存性薬物Yとしては、クロルプロマジン、レボメプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、プロペリシアジン等のペルフェナジンフェノチアジン系、ハロペリドール、ブロムペリドール、チミペロン、スピペロン、ピモジド等のブチロフェノン系、スルピリド、スルトプリド、ネモナプリド等のベンズアミド系、オキシペルチン等のインドール系、ゾテピン、モサプラミン、クロカプラミン等の定型抗精神病薬、リスペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、ジプラシドン、セルチンドール、オランザピン、クエチアピン等のセロトニンドパミン拮抗薬(SDA)、クエチアピン等のジベンゾチアゼピン系、オランザピン等の多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)、アリピプラゾール等のドパミン系安定剤(DSS)等の非定型抗精神病薬等の抗精神病薬、エチゾラム、クロチアゼパム、フルタゾラム、ロラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、オキサゼパム、フルジアゼパム、メキソゾラム、ジアゼパム、クロキサゾラム、クロルジアゼポキシド、メダゼパム、オキサゾラム、フルトプラマゼパム、ロフラゼプ酸エチル、プラゼパム等のベンゾジアゼピン系、ヒドロキシジン、メプロバメート、タンドスピロン等の非ベンゾジアゼピン系等の抗不安薬、炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、塩酸スルトプリド等の抗躁薬、塩酸メタンフェタミン(フェニルメチルアミノプロパン)、アンフェタミン、デキストロ・アンフェタミン(d-アンフェタミン)、塩酸ピプラドロール、塩酸メチルフェニデート、デキサメチルフェニデート、ペモリン、アドラフィニル、モダフィニル等の中枢神経刺激薬、トリアゾラム、ゾピクロン、酒石酸ゾルピデム等の超短時間作用型の鎮静睡眠薬、エチゾラム、ブロチゾラム、ロルメタゼパム、ブロムワレリル尿素等の短‐中時間作用型の鎮静睡眠薬、フルニトラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム、エスタゾラム、クアゼパム、アモバルビタール、抱水クロラール等の中時間作用型の鎮静睡眠薬、フルラゼパム、フェノバルビタール、ハロキサゾラム等の長時間作用型の鎮静睡眠薬、ベゲタミンA/B、ラメルテオン等の睡眠導入剤、バルビタール、ベンゾジアゼピン等の鎮静催眠薬、塩酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン等のジフェンヒドラミン系、テオクル酸ジフェニルピラリン等のジフェニルピラリン系、フマル酸クレマスチン、塩酸トリプロリジン等のトリペレナミン系、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸プロメタジン、酒石酸アリメマジン等のフェノチアジン系、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン等の抗アレルギー性緩和精神安定剤、塩酸ホモクロルシクリジン、塩酸シプロヘプタジン等のピレリジン系、メキタジン、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、エバスチン、塩酸セチリジン、ベシル酸ベポタスチン、塩酸フェキソフェナジン、塩酸オロパタジン、ロラタジン等の抗ヒスタミン薬(総合感冒薬や鎮咳剤等も含む)、コカイン、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカイン等のエステル型の麻酔薬、リドカイン、メピバカイン、ジブカイン、ブピバカイン等のアミド型等の麻酔薬、モルヒネ、カロナール、イソプロビルアンチピリン、イブプロフェン、アスピリン、エテンザミド、ロキソニン、ボルタレン等の鎮痛剤、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、フェンサイクリジン(PCP)等のケミカルドラッグ、シロシビン、メスカリン、ハルマリン、ジメチルトリプタミン(DMT)、サルビノリンA、イボテン酸、ムッシモール、ジメチルトリプタミン(DMT)、リゼルグ酸アミド(LSA)、イボガイン等のナチュラルドラッグ、メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、MDA、2C−B、2C−T−2、2C−T−4、2C−T−7、2C−I、α−メチルトリプタミン(AMT)、メチロン(METHYLONE)、5−MeO−DMT、2,5−ジメトキシ−4−エチルアンフェタミン(TMA)、TMA−2等のデザイナーズドラッグ等の幻覚剤、フェニルアミノプロパン(アンフェタミン)、フェニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン)、これらの各塩類等の覚せい剤、煙草、ニコチンパッチ、ニコチンタブレット、ニコチンガム等の禁煙補助剤、アナストロゾール、エキセメスタン、エストラムスチン、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、ゴセレリン、タモキシフェン、デキサメタゾン、トレミフェン、ビカルタミド、フルタミド、プレドニゾロン、ホスフェストロール、ミトタン、メチルテストステロン、メドロキシプロゲステロン、メピチオスタン、リュープロレリン、レトロゾール、クエン酸シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル等の勃起障害治療薬、ダイエット、美容、肉体改造、性機能改善等に用いられるプロテイン等のサプリメント等のホルモン剤、日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウォッカ、ウィスキー、リキュール等のアルコール飲料、シンナー、トルエン、ボンド、ペンキ等の有機溶剤、カセットコンロガス、ライターガス、ガスパン、ガソリン、ライターオイル等の有機燃料等が挙げられる。
【0056】
本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0057】
例えば、上記第1の実施形態では、本発明の依存性薬物渇望抑制器具をアンプル型の偽注射容器の例で説明したが、偽注射容器の構造はこれに限定されるものではなく、模倣する依存性医薬の注射容器の構造に合わせて適宜選択されるものである。本発明の依存性薬物渇望抑制器具における偽注射容器の構造としては、アンプル型以外にも、例えば、図7に示すようなバイアル型の構造や、ボトル型、バッグ型、シリンジ型等が挙げられる。また、シート型の偽錠剤容器以外にも、スティック型、チューブ型、コンテナ型、袋型、薬包紙型等が挙げられる。
【0058】
また、偽注射剤ラベルにおける「偽」の文字は、上記実施形態で示したように必ずしも製品名の前に付されている必要はなく、例えば、ラベルの任意の空白部分に付されていてもよいし、図8に示すように透かし文字等としてラベルの他の文字に重ねて表示されていてもよい。また、「偽」の文字は、必ずしも偽注射剤ラベルに印刷されていなくてもよく、図9に示すように、例えば「偽」の文字を偽注射剤ラベルとは別にラベル、シール、スタンプ等として構成して、これを偽注射剤ラベル上、または偽注射容器の偽注射剤ラベル以外の任意の部分に貼付等することにより表示するものであってもよい。
【0059】
さらに、本発明の依存性薬物渇望抑制器具において、偽注射剤が偽物であることを示す表示は、使用者(依存者)が本物の依存性薬物と本発明の依存性薬物渇望抑制器具とを区別できるようにする表示であれば特に限定されるものではなく、上述した「偽」の文字以外にも、例えば、「にせ」、「ニセ」、「偽物」、「FAKE」等の文字や、「○」、「●」、「◎」、「□」、「■」、「◇」、「◆」、「△」、「▲」、「▽」、「▼」、「☆」、「★」、「×」、「※」、「*」、「?」、「!」等の記号や、特定の図形等であってもよいし、偽注射剤ラベルの文字の色や台紙の色を本物の依存性薬物の製品ラベルと異なる色に構成して区別させるものであってもよい。
【0060】
上記第1の実施形態では、本物の依存性薬物の注射容器に製品ラベルが貼られている場合の偽注射容器の例について説明したが、本物の依存性薬物の注射容器に製品ラベルが貼られておらず、例えば注射容器に直接製品名等が印刷されている場合は、本発明にかかる偽注射容器も同様に構成されるものであることはいうまでもない。
【0061】
また、上記第1の実施形態では、本発明の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法について静脈注射の例で説明したが、他の注射方法、例えば点滴注射等により使用するものであってもよい。また、本発明にかかる偽注射剤を、注射器を用いて実際に注射する替わりに、例えば、特許文献1に記載の薬物渇望抑制器具を用いて偽注射行為を行うものであってもよい。
【0062】
また、上記第1および第2の実施形態では、本発明の依存性薬物渇望抑制器具の剤形について注射剤および錠剤の例でそれぞれ説明したが、他の剤形、例えばエアゾール剤、内服液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収型製剤、坐剤、散剤、酒精剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、貼布剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤、散布剤、パスタ剤、含嗽剤、罨法剤、塗布剤、洗浄剤、浣腸剤、浴剤、茶剤、舐剤等のものであってもよい。また、本発明の依存性薬物渇望抑制器具にかかる偽依存性薬物は、必ずしも製剤されている必要はなく、非製剤の依存性薬物を模倣したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上述したように、依存性薬物の依存者が、本発明の依存性薬物渇望抑制器具を用いて、偽包装を解く行為、偽容器を開封する行為、開封した偽容器から所定の方法で偽製剤を取り出す行為、取り出した偽製剤を所定の方法で摂取する行為等を行うことにより、本物の依存性薬物を使用した場合と全く変わらない条件刺激を得ることができ、さらに、実際に依存者に偽製剤を所定の方法で投与することにより、条件刺激による一連の摂取行動を完結させることができる。従って、本発明の依存性薬物渇望抑制器具は、依存性薬物の依存者に使用して上記行為を一定期間または定常的に繰り返すことにより、抗精神病薬、抗不安薬、抗躁薬、中枢神経刺激薬、睡眠導入剤、鎮静催眠薬、抗ヒスタミン薬(総合感冒薬や鎮咳剤等も含む)、麻酔薬、鎮痛剤、幻覚剤、覚せい剤、煙草、禁煙補助剤、ホルモン剤、アルコール飲料、有機溶剤、有機燃料等の渇望抑制治療、予防および再発防止に対して極めて優れた効果を発揮するものである。
【符号の説明】
【0064】
11,12・・・依存性薬物渇望抑制器具
21,22,23・・・偽容器
221・・・プラスチックシート
222・・・アルミ箔
31・・・偽注射剤
32・・・偽錠剤
41,42,43,44・・・偽注射剤ラベル
51・・・偽包装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
依存性薬物の依存者が通常使用する前記依存性薬物の形態に類似した外観を有し、前記依存性薬物の有効成分を含んでいない偽依存性薬物からなる、依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項2】
前記依存性薬物は、抗精神病薬、抗不安薬、抗躁薬、中枢神経刺激薬、睡眠導入剤、鎮静催眠薬、抗ヒスタミン薬、総合感冒薬、鎮咳剤、麻酔薬、鎮痛剤、幻覚剤、覚せい剤、煙草、禁煙補助剤、ホルモン剤、アルコール飲料、有機溶剤または有機燃料である、請求項1に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項3】
前記偽依存性薬物は、生理食塩水、ブドウ糖液、蒸留水、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、デンプン、デキストリンまたは白糖を含んでなる、請求項1または2に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項4】
前記偽依存性薬物は、前記依存性薬物の製剤に類似した外観を有する偽製剤からなる、請求項1〜3の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項5】
前記偽製剤は、エアゾール剤、内服液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収型製剤、坐剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、貼布剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤、散布剤、パスタ剤、含嗽剤、罨法剤、塗布剤、洗浄剤、浣腸剤、浴剤、茶剤または舐剤である、請求項4に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項6】
前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽製剤の表面に付されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項7】
前記偽依存性薬物は、前記依存性薬物の容器に類似した外観および構造を有する偽容器に封入されてなる、請求項1〜6の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項8】
前記偽容器は、アンプル、バイアル、ボトル、バッグ、シリンジ、シート、スティック、チューブ、コンテナ、袋または薬包紙である、請求項7に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項9】
前記偽容器は、ガラス製、硬質プラスチック製、軟質プラスチック製、金属製もしくは紙またはこれらの組み合わせからなる、請求項7または8に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項10】
前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽容器の外面に付されていることを特徴とする、請求項7〜9の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項11】
前記容器に施された包装に類似した外観および構造を有する偽包装が前記偽容器に施されたことを特徴とする、請求項7〜10の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項12】
前記偽包装は、紙またはプラスチック製の袋、箱またはシートである、請求項11に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項13】
前記偽依存性薬物が偽物であることを示す表示が前記偽包装の外面に付されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の依存性薬物渇望抑制器具。
【請求項14】
依存性薬物の依存者が通常使用する前記依存性薬物の形態に類似した外観を有し、前記依存性薬物の有効成分を含んでいない偽依存性薬物からなる、依存性薬物渇望抑制器具の使用方法であって、
前記偽依存性薬物を所定の方法で摂取する第1の手順を含む、依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。
【請求項15】
前記偽依存性薬物が前記依存性薬物の容器に類似した外観および構造を有する偽容器に封入されている場合に、前記偽容器を開封する第2の手順をさらに含む、請求項14に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。
【請求項16】
前記偽容器に前記容器の包装に類似した外観および構造を有する偽包装が施された場合に、前記偽包装を解く第3の手順をさらに含む、請求項15に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。
【請求項17】
前記第1の手順は、前記偽依存性薬物が注射剤である場合に、前記第2の手順により開封された偽容器に注射器の注射針を挿入して前記偽容器中の前記偽依存性薬物を前記注射器で吸い上げる第4の手順を含む、請求項15または16に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。
【請求項18】
前記第1の手順は、前記第3の手順により前記偽依存性薬物を吸い上げた前記注射器の前記注射針を自己の身体に穿刺して前記偽依存性薬物を注射する第5の手順をさらに含む、請求項17に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。
【請求項19】
前記第1〜5の手順の一部または全部を、一定期間または定常的に繰り返して行うことを特徴とする、請求項14〜18の何れか1項に記載の依存性薬物渇望抑制器具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−155046(P2010−155046A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31262(P2009−31262)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】